説明

チェーンテンショナ

【課題】圧力室からのエアの排出性能を長期にわたって確保することができ、かつ、低コストなチェーンテンショナを提供する。
【解決手段】シリンダ9内にプランジャ10を軸方向に摺動可能に挿入し、そのプランジャ10を突出方向に付勢するリターンスプリング18を設け、プランジャ10とシリンダ9とで囲まれた圧力室20内に作動油を導入する給油通路21を設け、その給油通路21の出口に作動油の逆流を防止するチェックバルブ22を設けたチェーンテンショナ1において、圧力室20と外気とを連通する貫通孔24をシリンダ9に形成し、その貫通孔24の内周に形成した雌ねじ25に多孔質材料からなる雄ねじ部材26をねじ込み、圧力室20内に混入したエアを、雄ねじ部材26と雌ねじ25の間に形成される螺旋状のねじ隙間と、雄ねじ部材26の内部の連続気孔とで並行して外気に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車エンジンのカムシャフトを駆動するタイミングチェーンの張力保持に用いられるチェーンテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンは、一般に、クランクシャフトの回転をタイミングチェーンを介してカムシャフトに伝達し、そのカムシャフトの回転により燃焼室のバルブの開閉を行なう。ここで、チェーンの張力を適正範囲に保つために、支点軸を中心として揺動可能に設けたチェーンガイドと、そのチェーンガイドを介してチェーンを押圧するチェーンテンショナとからなる張力調整装置が多く用いられる。
【0003】
この張力調整装置に組み込まれるチェーンテンショナとして、一端が開口した有底筒状のシリンダ内にプランジャを軸方向に摺動可能に挿入し、そのプランジャをシリンダから突出する方向に付勢するリターンスプリングを設け、前記プランジャとシリンダとで囲まれた圧力室内に作動油を導入する給油通路を設け、その給油通路の出口に作動油の逆流を防止するチェックバルブを設けたものが知られている(特許文献1,2)。
【0004】
このチェーンテンショナは、エンジン作動中にチェーンの張力が大きくなると、そのチェーンの張力によって、プランジャがシリンダ内に押し込まれる方向(以下、「押し込み方向」という)に移動し、チェーンの緊張を吸収する。このとき、圧力室内の作動油が、プランジャとシリンダの摺動面間のリーク隙間を通って流出し、その作動油の粘性抵抗によってダンパ作用が生じるので、プランジャはゆっくりと移動する。
【0005】
一方、エンジン作動中にチェーンの張力が小さくなると、リターンスプリングの付勢力によって、プランジャがシリンダから突出する方向(以下、「突出方向」という)に移動し、チェーンの弛みを吸収する。このとき、チェックバルブが開いて、給油通路から圧力室に作動油が流入するので、プランジャは速やかに移動する。
【0006】
このようなチェーンテンショナにおいて、給油通路から圧力室に供給される作動油にエアが混入したり、圧力室内の圧力変動によってエアが析出したりすると、チェーンの張力が大きくなったときに、圧力室内のエアが圧縮することによってプランジャが移動するので、チェーンテンショナのダンパ作用が低下する。
【0007】
このダンパ作用の低下を防止するため、特許文献1に記載のチェーンテンショナにおいては、圧力室と外気とを連通する貫通孔をシリンダに形成し、その貫通孔の内周に形成した雌ねじに雄ねじ部材をねじ込んでおり、その雄ねじ部材と雌ねじの間に形成される螺旋状のねじ隙間を通じて、圧力室内に混入したエアを外気に排出するようにしている。
【0008】
また、特許文献2に記載のチェーンテンショナにおいては、圧力室と外気とを連通する貫通孔をシリンダに形成し、その貫通孔に多孔質材料からなる栓体を圧入しており、その栓体の内部の連続気孔を通じて、圧力室内に混入したエアを外気に排出するようにしている。
【特許文献1】特開2007−321899号公報
【特許文献2】特開2002−364720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、雄ねじ部材と雌ねじの間のねじ隙間は一本の細長い線状なので、特許文献1のように、ねじ隙間を通じて圧力室内のエアを排出するようにすると、ねじ隙間が詰まりやすい。特に、ディーゼルエンジンにおいては、給油通路から圧力室に供給される作動油にスーツ(すす)やコンタミなどの異物が混入することが多いので、ねじ隙間が詰まりやすかった。
【0010】
ねじ隙間が詰まると、圧力室内に混入したエアが排出されなくなるので、チェーンテンショナのダンパ作用が低下してチェーンの振幅が大きくなり、シリンダとプランジャの摺動面が異常摩耗したり、エンジンの異音が生じたりするおそれがある。
【0011】
また、特許文献2のように、多孔質材料からなる栓体を貫通孔に圧入すると、貫通孔の内径寸法と、栓体の外径寸法を高精度に管理する必要があり、加工コストが高くなる問題があった。
【0012】
この発明が解決しようとする課題は、圧力室からのエアの排出性能を長期にわたって確保することができ、かつ、低コストなチェーンテンショナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、前記圧力室と外気とを連通する貫通孔を前記シリンダに形成し、その貫通孔の内周に形成した雌ねじに、連続気孔を有する多孔質材料からなる雄ねじ部材をねじ込み、前記圧力室内に混入したエアを、前記雄ねじ部材と雌ねじの間に形成される螺旋状のねじ隙間と、前記雄ねじ部材の内部の連続気孔とで並行して外気に排出するようにした。
【0014】
このようにすると、雄ねじ部材の内部の連続気孔は、網目状に連なっているので目詰まりを起こしにくく、エアの排出性能を長期にわたって確保することができる。また、連続気孔を通じたエアの排出と並行して、雄ねじ部材と雌ねじの間のねじ隙間を通じてもエアを排出するので、エアの排出性能をより長期にわたって確保することができる。また、雄ねじ部材の取り付けは、圧入ではなくねじ込みによって行なうので、高精度での寸法管理が不要であり、低コストである。
【0015】
前記雄ねじ部材のねじは、多条ねじとすると好ましい。このようにすると、雄ねじ部材と雌ねじの間に、多条のねじ隙間が形成されるので、そのねじ隙間のうち、いずれかのねじ隙間が目詰まりした場合にも、他のねじ隙間を通じて、圧力室内のエアを排出することができる。そのため、長期にわたって安定したエアの排出が可能である。
【0016】
前記雄ねじ部材と雌ねじの間のねじ隙間と、前記雄ねじ部材の内部の連続気孔とを併せたエア抜き量は、例えば、0.1MPa負荷条件下で30秒あたり60〜600ccの範囲に設定することができる。
【0017】
また、この発明の発明者は、上記エア抜き量を400〜600ccの範囲に設定した場合にも、エア抜き量を60ccに設定した場合と比較して、ほとんどダンパ性能に影響がないことを見出した。このエア抜き量を400〜600ccの範囲に設定すると、エアの排出性能を極めて長期にわたって確保することが可能となる。
【0018】
前記多孔質材料としては、例えば、焼結金属や焼結樹脂を用いることができる。
【0019】
前記雄ねじ部材が前記貫通孔よりも大径の頭部を有する場合、その頭部と前記シリンダとの間に、円周の一部を切り離した形状のスプリングワッシャを組み込むと好ましい。このようにすると、雄ねじ部材の緩みを防止することができる。また、スプリングワッシャの円周の一部を切り離した部分をエアが通過する。
【0020】
前記雄ねじ部材のねじの呼び径は、例えば、M3〜M8の範囲に設定することができる。
【0021】
この発明は、例えば、次のチェーンテンショナに適用することができる。
1)前記プランジャをシリンダ内への挿入端が開口する有底筒状に形成し、そのプランジャの内周に形成した雌ねじにねじ係合する雄ねじを外周に有するスクリュロッドを設け、そのスクリュロッドの前記プランジャからの突出端を前記シリンダ内に設けたロッドシートで支持し、前記雄ねじと雌ねじは、プランジャをシリンダ内に押し込む方向の荷重が負荷されたときに圧力を受ける圧力側フランクのフランク角が、遊び側フランクのフランク角よりも大きい鋸歯状に形成されている鋸歯ねじ式のチェーンテンショナ。
2)前記シリンダの内周に形成された環状の収容溝内に前記プランジャの外周を弾性的に締め付けるレジスタリングを収容し、そのレジスタリングを、プランジャの外周に軸方向に一定の間隔をおいて形成された円周溝に係合させ、その各円周溝内には、前記プランジャをシリンダから突出させる方向の荷重が負荷されたときに、レジスタリングを拡径させてプランジャの移動を許容するテーパ面と、前記プランジャをシリンダ内に押し込む方向の荷重が負荷されたときに、レジスタリングを係止してプランジャの移動を制限するストッパ面とが設けられているリング式のチェーンテンショナ。
【発明の効果】
【0022】
この発明のチェーンテンショナは、雄ねじ部材と雌ねじの間のねじ隙間と、雄ねじ部材の内部の連続気孔とで並行してエアを排出するので、エアの排出性能を長期にわたって確保することができる。また、雄ねじ部材の取り付けは、圧入ではなくねじ込みによって行なうので、高精度での寸法管理が不要であり、低コストである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1に、この発明の第1実施形態のチェーンテンショナ1を組み込んだチェーン伝動装置を示す。このチェーン伝動装置は、エンジンのクランクシャフト2に固定されたスプロケット3と、カムシャフト4に固定されたスプロケット5とがチェーン6を介して連結されており、そのチェーン6がクランクシャフト2の回転をカムシャフト4に伝達し、そのカムシャフト4の回転により燃焼室のバルブ(図示せず)の開閉を行なう。
【0024】
チェーン6には、支点軸7を中心として揺動可能に支持されたチェーンガイド8が接触しており、チェーンテンショナ1は、そのチェーンガイド8を介してチェーン6を押圧している。
【0025】
チェーンテンショナ1は、一端が開口した有底筒状のシリンダ9と、シリンダ9内に軸方向に摺動可能に挿入されたプランジャ10とを有する。シリンダ9は、ボルト11でエンジンブロック(図示せず)に固定されている。
【0026】
図2に示すように、プランジャ10は、シリンダ9内への挿入端が開放する有底筒状に形成されており、その内周に雌ねじ12が形成されている。プランジャ10内には、雌ねじ12にねじ係合する雄ねじ13を外周に有する鉄製のスクリュロッド14が組み込まれている。スクリュロッド14は、一端がプランジャ10から突出しており、その突出端が、シリンダ9内に設けたロッドシート15で支持されている。
【0027】
雄ねじ13と雌ねじ12は、プランジャ10をシリンダ9内に押し込む方向の荷重が負荷されたときに圧力を受ける圧力側フランク16のフランク角が、遊び側フランク17のフランク角よりも大きい鋸歯状に形成されている。
【0028】
プランジャ10とスクリュロッド14の間には、リターンスプリング18が組み込まれている。リターンスプリング18は、一端がスクリュロッド14で支持され、他端がスプリングシート19を介してプランジャ10を押圧しており、その押圧によって、プランジャ10をシリンダ9から突出する方向に付勢している。
【0029】
シリンダ9には、シリンダ9とプランジャ10とで囲まれた圧力室20に連通する給油通路21が形成されている。給油通路21は、給油ポンプ(図示せず)に接続されており、その給油ポンプから送り出された作動油を、圧力室20内に導入するようになっている。給油通路21の出口には、作動油の逆流を防止するチェックバルブ22が設けられている。
【0030】
プランジャ10とシリンダ9の摺動面間にはリーク隙間23が形成されており、そのリーク隙間23を通って圧力室20内の作動油が流出するようになっている。
【0031】
また、シリンダ9には、圧力室20と外気とを連通する貫通孔24が形成され、その貫通孔24の内周に形成された雌ねじ25に、雄ねじ部材26がねじ込まれている。雄ねじ部材26は、連続気孔を有する多孔質材料(例えば、焼結金属や焼結樹脂)からなり、雄ねじ部材26の内部の連続気孔を通ってエアが透過できるようになっている。
【0032】
雄ねじ部材26と雌ねじ25の間には、螺旋状のねじ隙間が形成されている。そのため、圧力室20内に混入したエアは、雄ねじ部材26と雌ねじ25の間のねじ隙間と、雄ねじ部材26の内部の連続気孔とで並行して外気に排出される。ここで、雄ねじ部材26のねじは、図3(a)に示すように、1条ねじとしてもよいが、図3(b)に示すように、多条ねじ(図では2条ねじ)とすると、ねじ隙間が多条となるので好ましい。
【0033】
雄ねじ部材26は、貫通孔24よりも大径の頭部26aを有する。頭部26aとシリンダ9との間には、雄ねじ部材26の緩みを防止するために、スプリングワッシャ27が組み込まれている。スプリングワッシャ27は、円周の一部を切り離した形状となっており、この円周の一部を切り離した部分をエアが通過するようになっている。雄ねじ部材26のねじの呼び径は、M3〜M8の範囲で設定されている。
【0034】
次に、このチェーンテンショナ1の動作例を説明する。
【0035】
エンジン作動中にチェーン6の張力が小さくなると、リターンスプリング18の付勢力によってプランジャ10が突出方向に移動し、チェーン6の弛みを吸収する。このとき、オイルポンプから供給される作動油が、給油通路21を通って圧力室20に流入するので、プランジャ10は速やかに移動する。
【0036】
一方、エンジン作動中にチェーン6の張力が大きくなると、そのチェーン6の張力によって、プランジャ10が押し込み方向に移動し、チェーン6の緊張を吸収する。このとき、スクリュロッド14は、チェーン6の振動により、雌ねじ12と雄ねじ13の間の軸方向隙間の範囲内で前進と後退を繰り返しながら、プランジャ10に対して回転する。また、圧力室20内の作動油が、プランジャ10とシリンダ9の摺動面間のリーク隙間23を通って流出し、その作動油の粘性抵抗によってダンパ作用が生じるので、プランジャ10はゆっくりと移動する。
【0037】
エンジン停止時に、カムシャフト4に接続したカム(図示せず)の停止位置によってチェーン6の張力が大きくなる場合があるが、この場合、チェーン6が振動しないので、プランジャ10の雌ねじ12がスクリュロッド14の雄ねじ13で受け止められ、プランジャ10の位置が固定される。そのため、エンジンを再始動するときに、チェーン6の弛みを生じにくく、円滑なエンジン始動が可能である。
【0038】
給油通路21を通って圧力室20に供給される作動油にエアが混入したり、エンジン作動中の圧力室20内の圧力変動によってエアが析出したりする場合があるが、この場合、圧力室20内のエアは、雄ねじ部材26と雌ねじ25の間のねじ隙間と、雄ねじ部材26の内部の連続気孔とを通って、速やかに外気に排出される。そのため、圧力室20内のエアによるダンパ作用の低下が生じにくい。
【0039】
このチェーンテンショナ1において、雄ねじ部材26の内部の連続気孔は、網目状に連なっているので目詰まりを起こしにくく、エアの排出性能を長期にわたって確保することができる。また、連続気孔を通じたエアの排出と並行して、雄ねじ部材26と雌ねじ25の間のねじ隙間を通じてもエアを排出するので、エアの排出性能をより長期にわたって確保することができる。また、雄ねじ部材26の取り付けは、圧入ではなくねじ込みによって行なうので、高精度での寸法管理が不要であり、低コストである。
【0040】
雄ねじ部材26のねじは、図3(b)に示すように、多条ねじとすると好ましい。このようにすると、雄ねじ部材26と雌ねじ25の間に、多条のねじ隙間が形成されるので、そのねじ隙間のうち、いずれかのねじ隙間が目詰まりした場合にも、他のねじ隙間を通じて、圧力室20内のエアを排出することができる。そのため、長期にわたって安定したエアの排出が可能である。
【0041】
図4に、この発明の第2実施形態のチェーンテンショナ31を示す。第1実施形態に対応する部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
シリンダ9の内周には、環状の収容溝32が形成され、その収容溝32内にレジスタリング33が軸方向に移動可能に収容されている。レジスタリング33は、円周の一部を欠いたリング形状であり、径方向に弾性変形可能となっている。このレジスタリング33は、プランジャ10の外周を弾性的に締め付けており、プランジャ10の外周に軸方向に一定の間隔をおいて形成された複数の円周溝34のいずれかに係合している。
【0043】
各円周溝34内には、プランジャ10に突出方向の荷重が負荷されたときに、レジスタリング33を拡径させてプランジャ10の移動を許容するテーパ面35と、プランジャ10に押し込み方向の荷重が負荷されたときに、レジスタリング33を係止してプランジャ10の移動を制限するストッパ面36とが設けられており、エンジン停止時にチェーン6の張力が大きくなった場合に、円周溝34とレジスタリング33の係合によって、プランジャ10の押し込み方向の移動が制限されるようになっている。
【0044】
シリンダ9には、圧力室20と外気とを連通する貫通孔24が形成され、その貫通孔24の内周に形成された雌ねじ25に多孔質材料からなる雄ねじ部材26がねじ込まれている。
【0045】
第1実施形態と同様、このチェーンテンショナ31は、雄ねじ部材26と雌ねじ25の間のねじ隙間と、雄ねじ部材26の内部の連続気孔とで並行してエアを排出するので、エアの排出性能を長期にわたって確保することができる。また、雄ねじ部材26の取り付けは、圧入ではなくねじ込みによって行なうので、高精度での寸法管理が不要であり、低コストである。
【0046】
上記各実施形態において、雄ねじ部材26と雌ねじ25の間のねじ隙間と、雄ねじ部材26の内部の連続気孔とを併せたエア抜き量は、例えば、0.1MPa負荷条件下で30秒あたり60〜600ccの範囲に設定することができる。ここで、エア抜き量を400〜600ccの範囲に設定すると、エアの排出性能を極めて長期にわたって確保することが可能となる。
【0047】
ここで、エア抜き量を400〜600ccに拡大すると、ダンパ性能が低下する可能性が考えられるため、エア抜き量が異なる複数のチェーンテンショナのサンプルを準備し、その各サンプルのプランジャを一定の振幅で加振する試験を行なった。
【0048】
具体的には、エア抜き量を60cc、400cc、500cc、600ccにそれぞれ設定した複数のサンプルを準備し、その各サンプルのプランジャを加振機で加振し、このときチェーンテンショナのダンパ作用によって発生する荷重を、加振機に付属のロードセルで計測した。
【0049】
その結果、図5に示すように、エア抜き量を400〜600ccの範囲に設定しても、エア抜き量を60ccに設定した場合と比較して、ほとんどダンパ性能に影響がないことを確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明の第1実施形態のチェーンテンショナを組み込んだチェーン伝導装置を示す正面図
【図2】図1のチェーンテンショナ近傍の拡大断面図
【図3】(a)は、図2の雄ねじ部材のねじを1条ねじとした場合の雄ねじ部材近傍の拡大断面図、(b)は、図2の雄ねじ部材のねじを多条ねじとした場合の雄ねじ部材近傍の拡大断面図
【図4】この発明の第2実施形態のチェーンテンショナを示す拡大断面図
【図5】エア抜き量が異なる複数のチェーンテンショナのサンプルについてダンパ性能を比較する試験を行なった結果を示す図
【符号の説明】
【0051】
1 チェーンテンショナ
9 シリンダ
10 プランジャ
12 雌ねじ
13 雄ねじ
14 スクリュロッド
15 ロッドシート
16 圧力側フランク
17 遊び側フランク
18 リターンスプリング
20 圧力室
21 給油通路
22 チェックバルブ
24 貫通孔
25 雌ねじ
26 雄ねじ部材
26a 頭部
27 スプリングワッシャ
31 チェーンテンショナ
32 収容溝
33 レジスタリング
34 円周溝
35 テーパ面
36 ストッパ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口した有底筒状のシリンダ(9)内にプランジャ(10)を軸方向に摺動可能に挿入し、そのプランジャ(10)をシリンダ(9)から突出する方向に付勢するリターンスプリング(18)を設け、前記プランジャ(10)とシリンダ(9)とで囲まれた圧力室(20)内に作動油を導入する給油通路(21)を設け、その給油通路(21)の出口に作動油の逆流を防止するチェックバルブ(22)を設けたチェーンテンショナにおいて、
前記圧力室(20)と外気とを連通する貫通孔(24)を前記シリンダ(9)に形成し、その貫通孔(24)の内周に形成した雌ねじ(25)に、連続気孔を有する多孔質材料からなる雄ねじ部材(26)をねじ込み、前記圧力室(20)内に混入したエアを、前記雄ねじ部材(26)と雌ねじ(25)の間に形成される螺旋状のねじ隙間と、前記雄ねじ部材(26)の内部の連続気孔とで並行して外気に排出するようにしたことを特徴とするチェーンテンショナ。
【請求項2】
前記雄ねじ部材(26)のねじが多条ねじである請求項1に記載のチェーンテンショナ。
【請求項3】
前記雄ねじ部材(26)と雌ねじ(25)の間のねじ隙間と、前記雄ねじ部材(26)の内部の連続気孔とを併せたエア抜き量を、0.1MPa負荷条件下で30秒あたり60〜600ccの範囲に設定した請求項1または2に記載のチェーンテンショナ。
【請求項4】
前記エア抜き量を400〜600ccの範囲に設定した請求項3に記載のチェーンテンショナ。
【請求項5】
前記多孔質材料として焼結金属を用いた請求項1から4のいずれかに記載のチェーンテンショナ。
【請求項6】
前記多孔質材料として焼結樹脂を用いた請求項1から4のいずれかに記載のチェーンテンショナ。
【請求項7】
前記雄ねじ部材(26)が前記貫通孔(24)よりも大径の頭部(26a)を有し、その頭部(26a)と前記シリンダ(9)との間に、円周の一部を切り離した形状のスプリングワッシャ(27)を組み込んだ請求項1から6のいずれかに記載のチェーンテンショナ。
【請求項8】
前記雄ねじ部材(26)のねじの呼び径をM3〜M8の範囲に設定した請求項1から7のいずれかに記載のチェーンテンショナ。
【請求項9】
前記プランジャ(10)をシリンダ(9)内への挿入端が開口する有底筒状に形成し、そのプランジャ(10)の内周に形成した雌ねじ(12)にねじ係合する雄ねじ(13)を外周に有するスクリュロッド(14)を設け、そのスクリュロッド(14)の前記プランジャ(10)からの突出端を前記シリンダ(9)内に設けたロッドシート(15)で支持し、前記雄ねじ(13)と雌ねじ(12)は、プランジャ(10)をシリンダ(9)内に押し込む方向の荷重が負荷されたときに圧力を受ける圧力側フランク(16)のフランク角が、遊び側フランク(17)のフランク角よりも大きい鋸歯状に形成されている請求項1から8のいずれかに記載のチェーンテンショナ。
【請求項10】
前記シリンダ(9)の内周に形成された環状の収容溝(32)内に前記プランジャ(10)の外周を弾性的に締め付けるレジスタリング(33)を収容し、そのレジスタリング(33)を、プランジャ(10)の外周に軸方向に一定の間隔をおいて形成された円周溝(34)に係合させ、その各円周溝(34)内には、前記プランジャ(10)をシリンダ(9)から突出させる方向の荷重が負荷されたときに、レジスタリング(33)を拡径させてプランジャ(10)の移動を許容するテーパ面(35)と、前記プランジャ(10)をシリンダ(9)内に押し込む方向の荷重が負荷されたときに、レジスタリング(33)を係止してプランジャ(10)の移動を制限するストッパ面(36)とが設けられている請求項1から8のいずれかに記載のチェーンテンショナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate