説明

チェーン摩耗検出装置

【課題】簡易な構造で、チェーンの摩耗を検出することができるようにする。
【解決手段】チェーン摩耗検出装置50は、駆動装置から移動手摺に動力を伝達する動力伝達機構である第1スプロケット30及びチェーン32と、第1のスプロケット30に巻き掛けられたチェーン32の円周軌道Rの大きさが所定値より大きくなった場合、チェーン32の摩耗を検出する検出センサ52とを有する。この構成により、自動的にチェーンの摩耗を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータに用いられるチェーンの摩耗を検出するチェーン摩耗検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータは、一般的に、乗り口と降り口とからなる一対の乗降口の間を無端状に連結される複数の踏段と、踏段の両側に設けられた欄干上にスライド可能に取り付けられる無端状の移動手摺と、踏段と移動手摺をそれぞれ回動させる駆動装置とを有する。
【0003】
踏段と駆動装置、または移動手摺と駆動装置は、動力伝達機構を介してそれぞれ接続される。この動力伝達機構の一部を構成するチェーンは、使用により摩耗が生じて伸びることが知られている。チェーンの伸び具合は、エスカレータの使用時間や負荷条件によって異なるため、保守点検作業が必要となる。
【0004】
下記特許文献1には、搬送装置に用いられるチェーンの伸長度を検出するチェーン伸長度検出装置が記載されている。この検出装置においては、チェーンに標識を設け、この標識の通過を検出する検出部によりチェーンの単位あたりの長さ寸法を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−137976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示されるようなチェーンの検出装置においては、チェーンの伸び、言い換えればチェーンの摩耗を検出するため、チェーンに複数の標識を取り付ける必要がある。そうすると、既に、エレベータに使用されているチェーンに対しては、標識を新たに取り付けなければならず、多大な労力と時間がかかってしまう。また、予め標識が取り付けられた新規のチェーンを採用しようとすると、チェーンの調達コストが上昇してしまう。
【0007】
本発明の目的は、従来のチェーンの構成を変更せず、簡易な構造で、チェーンの摩耗を検出することができるチェーン摩耗検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、駆動装置から移動手摺または踏段に動力を伝達する動力伝達機構であるスプロケット及びチェーンと、スプロケットに巻き掛けられたチェーンの円周軌道の大きさが所定値より大きくなった場合、チェーンの摩耗を検出する検出センサと、を有することを特徴とする。
【0009】
また、検出センサは、スプロケットの径方向におけるチェーンの巻き掛け位置を検出することができる。
【0010】
また、検出センサは、スプロケットの外周部から径方向に離隔して設けられ、スプロケットに巻き掛けられたチェーンと当該センサとの接触を検出する接触式センサであることが好適である。
【0011】
また、検出センサは、スプロケットの外周部から径方向に離隔して設けられ、スプロケットに巻き掛けられたチェーンと当該センサとの間の距離を測定する非接触式センサであることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のチェーン摩耗検出装置によれば、従来のチェーンの構成を変更せず、簡易な構造で、チェーンの摩耗を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係るエスカレータの斜視図である。
【図2】本実施形態に係るエスカレータの部分構成図である。
【図3】チェーンの構成を示す図である。
【図4】図3のA−A線による断面図である。
【図5】本実施形態に係るチェーン摩耗検出装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るチェーン摩耗検出装置の実施形態について、図を用いて説明する。まず、この検出装置が設置されるエスカレータ10の構成について、図1及び2を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るエスカレータ10の斜視図であり、図2は、本実施形態に係るエスカレータ10の部分構成図である。
【0015】
エスカレータ10は、乗り口と降り口とからなる一対の乗降口12(図1には一方のみ示す)と、これらの乗降口12の間を無端状に連結されるとともに、ガイドレール(図示せず)等に沿って循環走行する複数の踏段14と、踏段14の幅方向の両側に立設された欄干16とを備えている。欄干16の外周には、踏段14の循環走行と同期してスライドする無端状の移動手摺18が掛け渡されている。
【0016】
また、エスカレータ10は、図2に示されるように、エスカレータ10の駆動源である駆動装置20と、駆動装置20の動力を移動手摺18に伝達する動力伝達機構22とを有する。
【0017】
動力伝達機構22は、スプロケットと、2つのスプロケットに巻き掛けられ動力を伝達するチェーンとを複数組有する。具体的には、動力伝達機構22は、駆動装置20の出力軸に接続される出力スプロケット24と、これにメインチェーン26を介して接続されるメインスプロケット28と、これと同軸で一体に回転する第1のスプロケット30と、これにチェーン32を介して接続される第2のスプロケット34と、これにチェーン36を介して接続される5個のスプロケット(図示せず)と、これらの5個のスプロケットとそれぞれ同軸で一体に回転するローラ38とを有する。ローラ38は、これの外周に移動手摺18が当接するように配置される。
【0018】
駆動装置20の動作により、駆動装置20から出力された動力が、複数のスプロケットとチェーンを介してローラ38に伝達される。ローラ38に伝達された動力が移動手摺18を一方向に送り出すことにより、移動手摺18が循環走行することとなる。
【0019】
また、エスカレータ10は、図示しないが、駆動装置20の動力を踏段14に伝達する動力伝達機構を有する。この動力伝達機構も、上述した動力伝達機構22と同様、スプロケットと、2つのスプロケットに巻き掛けられ動力を伝達するチェーンとを複数組有する。そして、駆動装置20の動作により、駆動装置20から出力された動力が、動力伝達機構22を介して踏段14に伝達され、踏段14が循環走行することとなる。
【0020】
次に、動力伝達機構22に用いられるチェーンの構成について、図3及び4を用いて説明する。一例として、チェーン32を挙げ、このチェーン32の構成について説明する。なお、以下に説明する構成は、チェーン32に限らず、エレベータ10に用いられる全てのチェーンにも適用することができる。
【0021】
図3は、チェーン32の構成を示す図であり、図4は、図3のA−A線による断面図である。チェーン32は、平行に配置された一対の内側リンクプレート40と、このリンクプレート40と同じ形状であり、一対の内側リンクプレート40より外側に平行に配置された一対の外側リンクプレート42とを有する。
【0022】
一対の内側リンクプレート40の間には、これらのリンクプレート40を所定の間隔に保つため、これらのリンクプレート40を連結する2本のブッシュ44が設けられる。ブッシュ44は、円筒状の形状である。ブッシュ44には、ピン46が回転可能に貫通する貫通孔44aが形成される。
【0023】
また、一対の内側リンクプレート40の間には、ブッシュ44の外周を覆うようにカラー48が設けられている。カラー48は、ブッシュ44と同軸の円筒状の形状である。環状のカラー48には、ブッシュ44が回転可能に貫通する貫通孔48aが形成される。
【0024】
外側リンクプレート42には、貫通孔42aが形成されている。この貫通孔42aに、軸方向に延びるピン46の両端を嵌めて、外側からその両端をかしめることにより、チェーン32が構成される。
【0025】
このように構成されるチェーン32は、使用により摩耗が生じて伸びる。具体的には、ブッシュ44とピン46の接触により、ブッシュ44の貫通孔44aが擦れてその断面積が大きくなるので、チェーン32全体の長さが伸びてしまう。このようなチェーン32の摩耗は、従来技術で述べたように、エスカレータ10の使用時間や負荷条件によって異なるため、作業員により検出しなければならない。
【0026】
そこで、本実施形態のエレベータ10は、作業員の手を煩わせることなく自動的に、チェーン32の摩耗を検出するチェーン摩耗検出装置50を有する。このチェーン摩耗検出装置50の構成について、図5を用いて説明する。一例として、チェーン32が巻き掛けられた第1のスプロケット30を挙げ、この第1のスプロケット30付近に設けられるチェーン摩耗検出装置50の構成について説明する。なお、以下に説明するチェーン摩耗検出装置50の構成は、第1のスプロケット30付近に設けられる場合に限らず、エレベータ10に用いられる他のスプロケット付近に設置する場合にも適用することができる。
【0027】
チェーン摩耗検出装置50は、チェーン32の摩耗を検出する検出センサ52と、検出センサ52に接続され、検出センサ52の検出結果を出力する出力部54とを有する。
【0028】
検出センサ52は、第1のスプロケット30に巻き掛けられたチェーン32の円周軌道Rの大きさが所定値より大きくなった場合、チェーン32の摩耗を検出する。以下、円周軌道Rについて具体的に説明する。
【0029】
チェーン32が正常である場合、第1のスプロケット30に巻き掛けられたチェーン32は、図中の一点鎖線で示される円周軌道R1を通る。この円周軌道R1とは、第1のスプロケット30の径方向において最も外側に位置するチェーン32の端部が通る軌道のことである。この端部は、内側及び外側リンクプレート40,42の端部である。
【0030】
チェーン32の使用により、チェーン32の摩耗が進行してチェーン32が伸びると、チェーン32が第1のスプロケット30の歯30aを登るようになる。そうすると、第1のスプロケット30に巻き掛けられたチェーン32は、円周軌道R1より大きい、図中の二点鎖線で示される円周軌道R2を通る。この円周軌道R2も、上述したように、第1のスプロケット30の径方向において最も外側に位置するチェーン32の端部が通る軌道のことである。
【0031】
したがって、検出センサ52は、第1のスプロケット30の径方向におけるチェーン32の巻き掛け位置を検出することにより、チェーン32の摩耗を検出することができる。具体的には、検出センサ52は、例えば接触式センサであり、第1のスプロケット30の外周部から径方向に離隔して設けられる。検出センサ52は、これの検知部が円周軌道R2上になるように設けられる。検出センサ52は、この検知部と第1のスプロケット30に巻き掛けられたチェーン32とが接触した場合、チェーン32の摩耗を検出する。
【0032】
そして、出力部54は、検出センサ32による検出結果を出力する。具体的には、出力部54は、検出結果を、表示ランプまたは音声等を通じて出力する。これにより、エレベータ10を管理する管理者が、チェーン32が摩耗していることを認識することができ、チェーン32の交換作業を作業員に依頼することができる。なお、本実施形態においては、出力部54が表示ランプまたは音声等を通じて摩耗の検出結果を出力する場合について説明したが、この構成に限定されない。出力部54が、通信回線を介して、管理者が待機する管理室の表示装置に、摩耗の検出結果を出力することができ、さらに、通信回線を介して、作業員を派遣する監視センタの表示装置に、摩耗の検出結果を出力することもできる。
【0033】
このような構成のチェーン摩耗検出装置50によれば、チェーン32の円周軌道Rの大きさに基づいてチェーン32の摩耗が自動的に検出されるので、作業員による保守点検作業の労力を省くことができる。また、このチェーン摩耗検出装置50によれば、従来のチェーンの構成が維持されるので、チェーンの構成の変更により生じる調達コストの上昇を防止することができる。
【0034】
本実施形態においては、検出センサ52が接触式センサである場合について説明したが、この構成に限定されない。検出センサ52が、第1のスプロケット30の径方向におけるチェーン32の巻き掛け位置を検出することができるのであれば、非接触式センサであってもよい。非接触式センサは、例えば変位センサであり、第1のスプロケット30の外周部から径方向に離隔して設けられ、第1のスプロケット30の巻き掛けられたチェーン32と、このセンサとの間の距離を測定することができる。そして、このセンサにより測定された距離が所定値以下まで小さくなった場合、チェーン32の摩耗を検出することができる。また、非接触式センサは、第1のスプロケット30の巻き掛けられたチェーン32の側面の位置を検出するように設けられてもよい。この場合、非接触式センサは、チェーン32の側面、特に、第1のスプロケット30の径方向において最も外側に位置するチェーン32の端部が、所定の軌道R2を通った場合、チェーン32の摩耗を検出することができる。
【0035】
また、本実施形態では、検出センサ52が、第1のスプロケット30の径方向において最も外側に位置するチェーン32の端部であって、内側及び外側リンクプレート40,42の端部が通る軌道を検出する場合について説明したが、この構成に限定されない。チェーン32の円周軌道であれば他の軌道でもよく、例えば、検出センサ52が、第1のスプロケット30の径方向において最も外側に位置するカラー48の端部が通る軌道を検出してもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 エスカレータ、14 踏段、18 移動手摺、20 駆動装置、22 動力伝達機構、30 第1のスプロケット、32 チェーン、40 内側リンクプレート、42 外側リンクプレート、44 ブッシュ、46 ピン、48 カラー、50 チェーン摩耗検出装置、52 検出センサ、54 出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置から移動手摺または踏段に動力を伝達する動力伝達機構であるスプロケット及びチェーンと、
スプロケットに巻き掛けられたチェーンの円周軌道の大きさが所定値より大きくなった場合、チェーンの摩耗を検出する検出センサと、
を有することを特徴とするチェーン摩耗検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のチェーン摩耗検出装置において、
検出センサは、スプロケットの径方向におけるチェーンの巻き掛け位置を検出する、
ことを特徴とするチェーン摩耗検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載のチェーン摩耗検出装置において、
検出センサは、スプロケットの外周部から径方向に離隔して設けられ、スプロケットに巻き掛けられたチェーンと当該センサとの接触を検出する接触式センサである、
ことを特徴とするチェーン摩耗検出装置。
【請求項4】
請求項2に記載のチェーン摩耗検出装置において、
検出センサは、スプロケットの外周部から径方向に離隔して設けられ、スプロケットに巻き掛けられたチェーンと当該センサとの間の距離を測定する非接触式センサである、
ことを特徴とするチェーン摩耗検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−173719(P2011−173719A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41187(P2010−41187)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】