説明

チェーン潤滑装置

【課題】簡易にしてチェーンの潤滑を自動化することができるチェーン潤滑装置を提供する。
【解決手段】潤滑剤が充填される本体(32)を有し、本体に対する退出及び進入により潤滑剤を本体からチェーン(10)に向けて吐出させるプランジャ(38)を有するポンプ(44)と、一端にプランジャの外端に枢支される枢軸(50)を有し、他端にチェーンの駆動に伴いチェーンローラ(28)に押圧されるローラ(52)を有し、チェーンローラによるローラの押圧時とチェーンローラによるローラの押圧解除時との間における傾動によりプランジャを本体に対して退出及び進入させるレバーアーム(46)と、一端が本体に枢支され、他端にローラと枢軸との間にてレバーアームを枢支する支軸(56)を有し、レバーアームをその傾動を許容しつつ支持するガイドアーム(48)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェーン潤滑装置に係り、詳しくは、低速で運転される長尺のチェーンコンベアのチェーンを潤滑するのに好適なチェーン潤滑装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場の製品製造ラインには、例えば大型のワークを搬送しながら加工するために低速で運転される長尺のチェーンコンベアが多数設置されることがある。コンベアはモータを動力源としたチェーンによって駆動され、チェーンは、外リンクと内リンクとを交互に組み合わせて連結して構成されている。外リンクは2枚の外プレートと2枚のピンとを圧入により結合して形成され、内リンクは2枚のプレートと2個のブッシュを圧入して結合して形成されている。ピンはブッシュの内側に回転自在に設けられ、ブッシュの外側にはチェーンローラが回転自在に設けられている。モータ負荷を低減しながらコンベアを良好に運転するためには、チェーン、特にチェーンローラの潤滑が不可欠である。
【0003】
コンベアが低速で運転される場合には、手差し給油によりチェーンローラに潤滑油を供給することも可能である。しかし、コンベアが低速運転且つ長尺で多数設置される場合には、給油作業の年間累積時間は数時間を要し、労務費が増大するとの問題がある。
また、重力式や内圧膨張式などの給油装置をコンベアに設け、給油作業を自動化することが考えられる。しかし、これら給油装置はコンベアの運転、停止に拘わらず連続的または定期的に給油を行うものであるため、コンベアの停止中にはチェーンへの過剰給油が発生し、潤滑油の油垂れにより設備が汚染され、清掃作業による労務費が増大するとの問題がある。
【0004】
更に、コンベアが低速で運転される場合には、潤滑油をチェーンローラに供給する以上、高粘度の潤滑油を使用したとしても、潤滑油の油垂れは回避できないとの問題もある。
そこで、特許文献1,2には、給油の開始及び停止を電気制御にて自動化する技術が開示されている。
具体的には、特許文献1には、給油ポンプからの潤滑油を無端チェーン4に対向配置されたノズル9により吹出させる電磁弁6と、無端チェーン4のピン4aの接離を感知する度に電気パルス信号を出力するセンサ11と、センサ11の電気パルス信号を計数するカウンタ12と、給油回数設定器14と給油休止時間設定タイマー15よりなるバルブ制御器13とを具備するチェーン給油装置が開示されている。
【0005】
このチェーン給油装置は、給油回数設定器14に予め設定された給油回数が満了するまではセンサ11から電気パルス信号が得られる度に弁6を所定時間開いて潤滑油を吐出させ、その後は継続的にセンサから電気パルス信号が得られているときのみ経過時間を計測してタイマー15に予め設定された給油休止時間が満了するまでは弁6を閉止状態に保ち、その後に繰り返しセンサ11からの電気パルス信号が得られる度に所定時間開いて潤滑油を吐出させる。
【0006】
また、特許文献2には、所定潤滑箇所を検出するフォトセンサ47をもった油噴射部11を自動制御する油噴射制御回路よりなり、要潤滑箇所を光検出して電磁弁10を開閉して要潤滑箇所に所定量に計量した油を油滴として噴射するように構成したコンベアチェーンの自動間歇潤滑装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−263876号公報
【特許文献2】特開平7−198028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記各従来技術は、給油するタイミングを検知するものとして、特許文献1ではセンサ11、特許文献2ではフォトセンサ47が必要なため、潤滑装置が複雑且つ高価になるとの問題がある。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、簡易にしてチェーンの潤滑を自動化することができるチェーン潤滑装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するべく、請求項1記載のチェーン潤滑装置は、動力源により駆動されるとともにチェーンローラが所定のピッチで配されるチェーンを潤滑するチェーン潤滑装置であって、潤滑剤が充填される本体を有し、本体に対する退出及び進入により潤滑剤を本体からチェーンに向けて吐出させるプランジャを有するポンプと、一端にプランジャの外端に枢支される枢軸を有し、他端にチェーンの駆動に伴いチェーンローラに押圧されるローラを有し、チェーンローラによるローラの押圧時とチェーンローラによるローラの押圧解除時との間における傾動によりプランジャを本体に対して退出及び進入させるレバーアームと、一端が本体に枢支され、他端にローラと枢軸との間にてレバーアームを枢支する支軸を有し、レバーアームをその傾動を許容しつつ支持するガイドアームとを備えることを特徴としている。
【0010】
また、請求項2記載の発明では、請求項1において、プランジャ及びレバーアームの長さと、レバーアームにおける支軸の位置とは、支軸を通過するとともにチェーンに対し垂直に延びる垂線をレバーアームの傾動範囲内に位置づけるべく設定されることを特徴としている。
更に、請求項3記載の発明では、請求項1または2において、本体とプランジャの外端とに係止され、ローラの押圧解除時に本体からプランジャを退出させる弾性部材を備えることを特徴としている。
【0011】
更にまた、請求項4記載の発明では、請求項3において、ポンプは、本体に対するプランジャの退出及び進入により潤滑剤を本体からチェーンに向けて吐出させるためのノズルを有し、ノズルは、その先端がチェーンローラの両端面にそれぞれ分離して延びる二股形状をなすことを特徴としている。
また、請求項5記載の発明では、請求項1乃至4の何れかにおいて、動力源は低速駆動されるモータであることを特徴としている。
【0012】
更に、請求項6記載の発明では、請求項1乃至5の何れかにおいて、潤滑剤はグリスであることを特徴としている。
更にまた、請求項7記載の発明では、請求項1乃至6の何れかにおいて、チェーンはハンガーコンベアを駆動することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の本発明のチェーン潤滑装置によれば、支軸を支点、ローラを力点、枢軸を作用点とし、チェーンの駆動力を利用した機構により、チェーンローラによるローラの押圧時と押圧解除時との間におけるレバーアームの傾動によりプランジャを本体に対して退出及び進入させ、ポンプからチェーンに潤滑剤を供給することができるため、簡易にして、チェーンの潤滑をチェーンの駆動に同期させて自動化することができる。
【0014】
また、請求項2記載の発明によれば、プランジャ及びガイドアームの長さと、レバーアームにおける支軸の位置とは、支軸を通過するとともにチェーンに対し垂直に延びる垂線をレバーアームの傾動範囲内に位置づけるべく設定される。これにより、レバーアームの傾動時に、機構の支点である支軸と、機構の力点であるローラ、及び機構の作用点である枢軸との離間距離が不必要に大きくなることが防止される。従って、ローラに対するチェーンローラの押圧力がレバーアームを介してプランジャに略180度変換した方向にスムーズに伝達され、プランジャを円滑にストロークさせることができる。
【0015】
更に、請求項3記載の発明によれば、本体とプランジャの外端とに係止され、ローラの押圧解除時に本体からプランジャを退出させる弾性部材を備えることにより、ローラの押圧解除時に本体からプランジャを速やかに且つ確実に退出させることができ、次のローラの押圧時に本体にプランジャを確実に進入させることができ、このことはプランジャの更なる円滑なストロークに寄与する。
【0016】
更にまた、請求項4記載の発明によれば、ポンプは、本体に対するプランジャの退出及び進入により潤滑剤を本体からチェーンに向けて吐出させるためのノズルを有し、ノズルは、その先端がチェーンローラの両端面にそれぞれ分離して延びる二股形状をなすことにより、チェーンローラの一端面に潤滑剤が過剰に供給されることが防止され、チェーンの潤滑効果をより一層高めることができる。
【0017】
また、請求項5記載の発明によれば、チェーンの動力源が低速駆動されるモータであることにより、低速で駆動されるチェーンの潤滑で生じがちな潤滑過剰による設備の汚染を確実に防止することができて好ましい。
更に、請求項6記載の発明によれば、一般に潤滑油よりも高粘度のグリスを潤滑剤として用いることにより、潤滑効果をより長期間に亘って保持することができるため、潤滑回数を減らすことができる。また、油垂れが生じにくいため、設備の汚染を確実に防止することができる。
【0018】
更にまた、請求項7記載の発明によれば、チェーンがハンガーコンベアを駆動する場合には、難作業となりがちな高所における潤滑作業を簡易にして自動化することができて好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ハンガーコンベアの斜視図である。
【図2】図1のチェーンを潤滑するためのチェーン潤滑装置の斜視図である。
【図3】図1のコンベアの運転時におけるチェーン潤滑装置の作動状態(通路に対するプランジャの進入時)を示す平面図である。
【図4】図1のコンベアの運転時におけるチェーン潤滑装置の作動状態(通路に対するプランジャの退出時)を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1はハンガーコンベア2の斜視図を示している。このコンベア2は、例えば100m以上に亘って延設される長尺のチェーンコンベアであって、例えば図示しないワークの塗装・乾燥工程で使用される。この工程では、ワークに塗料を焼き付けた後に高温の図示しない乾燥炉内を低速(例えば2m/min程度)で通過させて乾燥させる。
コンベア2は、ワークの搬送方向に沿って平行して延びる2本のガイドフレーム4A,4B(以下、代表してガイドフレーム4と云うこともある)と、対向するガイドフレーム4A,4B間に接続される複数のサブフレーム6とを有している。各ガイドフレーム4A,4Bの内側には、同軸をなす従動ギヤ8A,8B(以下、代表して従動ギヤ8と云うこともある)を含む複数組みの従動ギヤがそれぞれ各ガイドフレーム4A,4Bに沿って配置され、従動ギヤ8A,8Bを含む各組みの従動ギヤには、それぞれ無端状のチェーン10A,10B(以下、代表してチェーン10と云うこともある)が各ガイドフレーム4A,4Bに沿って掛け廻されている。
【0021】
コンベア2の一端部に設けられた従動ギヤ8Aは、ガイドフレーム8Aの外側に設けられた駆動ギヤ12と同軸にされ、駆動ギヤ12近傍のガイドフレーム8A上にはモータ(動力源)14が載置されている。モータ14の駆動力は、チェーン10A,10Bとは異なる無端状のチェーン16を介して駆動ギヤ12、従動ギヤ8A,8Bに順次伝達され、チェーン10A,10Bが駆動される。チェーン10A,10B間には所定のピッチでパイプ18が接続され、パイプ18に設けられた複数のホルダ20にワークを吊り下げることにより、ワークは上記低速で搬送され、搬送される過程で上記塗装や乾燥などの様々な加工が施される。
【0022】
図2は、チェーン潤滑装置22を示した斜視図であり、図3、4は、コンベア2の運転時におけるチェーン潤滑装置22の作動状態を示した平面図である。チェーン10は、外リンク24と内リンク26とを交互に組み合わせて連結して構成されている。外リンク24は2枚の外プレート24a,24aと2本のピン24b,24bとを圧入により結合して形成され、チェーン10A,10B間において対向する外プレート24aに上記パイプ18が接続される。内リンク26は2枚のプレート26a,26aと2個の図示しないブッシュを圧入して結合して形成されている。ピン24bはブッシュの内側に回転自在に位置づけられ、ブッシュの外側にはチェーンローラ28が回転自在に設けられている。
【0023】
装置22は、チェーン10の上方においてサブフレーム6にブラケット30を介して固定され、主として、チェーン10において所定のピッチで配されるチェーンローラ28を潤滑する。
装置22の本体32は、円筒状をなし、グリスが充填された蛇腹状の図示しないカートリッジがその開口部を本体32の底部34に向けて収容されている。本体32の底部34内には、横開口部36aと下開口部36bとを有するL字状のグリスの通路36が形成され、通路36に対して横開口部36aからプランジャ38が退出及び進入される。プランジャ38には、その外端に所定の弾性力を有するばね(弾性部材)40の一端が係止され、ばね40の他端は底部34に係止されている。
【0024】
下開口部36bからはチェーン10の直上までにはノズル42が延設され、ノズル42は通路36に連通されている。ノズル42は、その先端がチェーンローラ28の両端面28a,28bの直近までそれぞれ分離して延びる二股状に形成されている。プランジャ38の通路36からの退出によって通路36内が負圧状態になり、この負圧によってカートリッジからその開口部を介してグリスが通路36に引き出される。通路36に引き出されたグリスは、プランジャ38の通路36への進入によりノズル42内に押し出され、ノズル42の各先端からチェーンローラ28の両端面28a,28bに向けて押し出される。すなわち、上述した本体32、プランジャ38、及びノズル42はいわゆるグリスポンプ(ポンプ)44を構成している。
【0025】
装置22は、通路36に対してプランジャ38を退出及び進入させるレバーアーム46と、レバーアーム46の傾動を許容しつつレバーアーム46を支持するガイドアーム48とからなる機構49を更に備えている。
レバーアーム46は、その上端がプランジャ38の外端に枢軸(作用点)50によって枢支され、レバーアーム46の下端には、チェーン10の駆動に伴いチェーンローラ28に押圧されるローラ(力点)52が回転軸54を介して枢支されている。
【0026】
チェーン10においてチェーンローラ28が所定のピッチで配されていることにより、チェーン10の駆動に伴い、チェーンローラ28は図3、4の矢印方向に移動され、ローラ52に当接してローラ52を押圧する。チェーンローラ28によるローラ52の押圧時には通路36に対してプランジャ38が進入され(図3)、次にチェーンローラ28がローラ52を跨ぐことによりローラ52の押圧が解除される(図4)。すなわち、レバーアーム46は、チェーンローラ28によるローラ52の押圧時と押圧解除時との間における傾動により通路36に対してプランジャ38を退出及び進入させる。
【0027】
ガイドアーム48には、一端にローラ52と枢軸50との間にてレバーアーム46を枢支する支軸(支点)56が設けられ、ガイドアーム48の他端は本体32の底部34に形成されたリブ58に枢軸60で枢支されている。すなわち、ガイドアーム48は、レバーアーム46をその傾動を許容しつつ支持し、ガイドアーム48自体の若干の傾動、及び支軸の移動も許容されている。
【0028】
ここで、図3,4に示されるように、プランジャ38及びレバーアーム46の長さと、レバーアーム46における支軸56の位置とは、支軸56を通過するとともにチェーン10に対し垂直に延びる垂線62をレバーアーム46の傾動範囲内に位置づけるべく設定されている。
具体的には、レバーアーム46の傾動時に、機構46の支点である支軸56と、機構49の力点であるローラ52及び機構49の作用点である枢軸50との離間距離が不必要に大きくなることを防止するために、プランジャ38及びレバーアーム46の長さは、プランジャ38の退出及び進入、及びチェーンローラ28によるローラ52の押圧及び押圧解除が可能な範囲で極力短くされる。
【0029】
何故なら、プランジャ38の長さが長すぎる場合には、プランジャ38のストローク長を確保するために、レバーアーム46を長くし、ひいてはレバーアーム46の傾動角を大きくせざるを得ない。レバーアーム46の傾動角が大きいと、チェーンローラ28のローラ52押圧時においてローラ52に作用する力のモーメントの方向が斜め上方になるため、プランジャ38に作用する力のモーメントの方向は斜め下方向となる。また、レバーアーム46の傾動角が大きいと、ガイドアーム48の傾動及び支軸56の移動が顕著となり、機構49の動作が不安定になりやすい。これらにより、通路36に対するプランジャ38の咬み込みが発生し、プランジャ38の円滑なストロークが阻害されるからである。
【0030】
また、レバーアーム46の長さが長すぎる場合には、チェーンローラ28のローラ52押圧解除時においてもローラ52はチェーンローラ28を跨ぐことができず、プランジャ38の円滑なストロークが不可能になるからである。
一方、支軸56は、具体的には、レバーアーム46においてローラ52の回転軸54からの距離と枢軸50からの距離とが例えば5:1程度の距離比になる位置に設けられ、ガイドアーム48は、支軸56よりも枢軸50が若干上側に位置づけられて傾斜配置されている。このガイドアーム48の傾斜配置により、ローラ52の押圧時から押圧解除時に移行する際の若干のガイドアーム48の傾動、及び支軸56の下側への移動が許容されるため、レバーアーム46の傾動によりプランジャ38が上側へ押圧されることが防止される。また、上記距離比は、プランジャ38を通路36に進入させるのに必要な力を得るための力のモーメントを考慮して決定される。これに対し、プランジャ38を通路36から退出させるのに必要な力は、主としてばね40の弾性力により決定される。
【0031】
このように、プランジャ38及びレバーアーム46の長さをプランジャ38のストローク、及びチェーンローラ28によるローラ52の押圧及び押圧解除が可能な範囲で極力短くし、レバーアーム46における支軸56の位置を、プランジャ38のストロークが可能な力のモーメントを得られる位置で、且つ支軸56よりも枢軸50が若干上側になるようにガイドアーム48を傾斜配置可能な位置に設けることで、垂線62がレバーアーム46の傾動範囲内に位置づけられる。これにより、レバーアーム46の傾動時に支軸56とローラ52及び枢軸50との離間距離が不必要に大きくなることが防止されるため、上述したような機構49の作動不具合が確実に防止され、ローラ52に対するチェーンローラ28の押圧力がレバーアーム46を介して略180度変換されてプランジャ38のストローク方向にスムーズに伝達される。
【0032】
以上のように、本実施形態では、装置22は、チェーン10の駆動力を利用した機構49により、簡易にしてチェーン10の潤滑をチェーン10の駆動に同期させて自動化することができる。
具体的には、低速運転且つ長尺のコンベア2が多数設置される場合に、年間累積時間で数時間を要していた手差し給油の給油時間をほぼゼロにすることができ、給油作業の労務費を大幅に削減することができる。
【0033】
また、センサレスにて適切なタイミングでチェーン10の潤滑を行うことができ、コンベア2の停止時に油垂れを生じることがないため、コンベア2が設けられる設備の汚染が防止され、清掃作業に要する労務費を削減することができる。
更に、一般的なグリスポンプ44に用いられる安価なグリスカートリッジを使用することができるため、例えば内圧膨張式の使い捨てグリスカップを用いた場合に比して、数十分の一程度まで給油作業に係る費用を削減することができる。
【0034】
一方、装置22の機構上、通路36に対するプランジャ38の咬み込みが懸念されるものの、プランジャ38及びレバーアーム46の長さと、レバーアーム46における支軸56の位置とが垂線62をレバーアーム46の傾動範囲内に位置づけるべく設定されることにより、プランジャ38の咬み込みが確実に防止され、プランジャ38を円滑にストロークさせることができる。
【0035】
また、ばね40を備えることにより、通路36に対するプランジャ38の退出を速やかに且つ確実に行うことができ、次にローラ52が押圧された時に通路36にプランジャ38を確実に進入させることができ、このことはプランジャ36の更なる円滑なストロークに寄与する。
更に、ノズル42の先端がチェーンローラ28の両端面28a,28bにそれぞれ分離して延びる二股形状をなすことにより、チェーンローラ28の両端面28a,28bのうちの一端面のみにグリスが過剰に供給されることが防止され、チェーン10の潤滑効果をより一層高めることができる。
【0036】
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
例えば、グリスが充填される本体32の構造は本実施形態の構造に限定されないが、本実施形態の場合には、既製の手動グリスポンプの本体とグリスを圧送するためのレバーとを転用することができるため、装置22を安価に製造することができて好ましい。
【0037】
また、チェーン10の動力源はモータ14に限定されない。ただし、チェーン10の動力源が低速駆動されるモータ14であることにより、低速駆動されるチェーン10の潤滑で生じがちな潤滑過剰による設備の汚染を確実に防止することができて好ましい。
更に、装置22で使用する潤滑剤はグリスに限定されない。ただし、一般に潤滑油よりも高粘度のグリスを潤滑剤として用いることにより、チェーン10の潤滑効果をより長期間に亘って保持することができるため、潤滑回数を減らすことができる。また、油垂れが生じにくいため、設備の汚染を確実に防止することができて好ましい。
【0038】
ここで、油垂れが生じにくいグリスを使用することにより、ノズル42がチェーン10の直近まで延設されることにより、ノズル42の先端から押し出されたグリスはこの先端からぶら下がった状態で保持される。これにより、チェーン10の駆動に伴い次のチェーンローラ28がノズル42の直下を通過する際にグリスがチェーンローラ28に確実に塗布されて好適である。
【0039】
一方、潤滑油を使用する場合には、チェーン10においてチェーンローラ28が配されるピッチを考慮して、ローラ52押圧時のローラ52とノズル42との距離を設定する必要があるものの、グリスを使用する場合には、上述した理由により、このことを考慮しなくともグリスがチェーンローラ28に確実に塗布される。
更にまた、装置22が適用されるコンベア2は、ハンガーコンベアに限定されない。ただし、装置22をハンガーコンベアに使用する場合には、難作業となりがちな高所における給油作業を簡易にして自動化することができて好ましい。
【0040】
最後に、装置22はコンベア1を駆動するチェーン10の潤滑に限定されず、種々の設備、用途で使用される種々のタイプのチェーンの潤滑に使用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
2 ハンガーコンベア
10 チェーン
14 動力源(モータ)
22 チェーン潤滑装置
28 チェーンローラ
32 本体
38 プランジャ
40 ばね(弾性部材)
42 ノズル
44 グリスポンプ(ポンプ)
46 レバーアーム
48 ガイドアーム
50 枢軸
52 ローラ
56 支軸
62 垂線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源により駆動されるとともにチェーンローラが所定のピッチで配されるチェーンを潤滑するチェーン潤滑装置であって、
潤滑剤が充填される本体を有し、前記本体に対する退出及び進入により前記潤滑剤を前記本体から前記チェーンに向けて吐出させるプランジャを有するポンプと、
一端に前記プランジャの外端に枢支される枢軸を有し、他端に前記チェーンの駆動に伴い前記チェーンローラに押圧されるローラを有し、前記チェーンローラによる前記ローラの押圧時と前記チェーンローラによる前記ローラの押圧解除時との間における傾動により前記プランジャを前記本体に対して退出及び進入させるレバーアームと、
一端が前記本体に枢支され、他端に前記ローラと前記枢軸との間にて前記レバーアームを枢支する支軸を有し、前記レバーアームをその傾動を許容しつつ支持するガイドアームと
を備えることを特徴とするチェーン潤滑装置。
【請求項2】
前記プランジャ及び前記レバーアームの長さと、前記レバーアームにおける前記支軸の位置とは、前記支軸を通過するとともに前記チェーンに対し垂直に延びる垂線を前記レバーアームの傾動範囲内に位置づけるべく設定されることを特徴とする請求項1に記載のチェーン潤滑装置。
【請求項3】
前記本体と前記プランジャの外端とに係止され、前記ローラの押圧解除時に前記本体から前記プランジャを退出させる弾性部材を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のチェーン潤滑装置。
【請求項4】
前記ポンプは、前記本体に対する前記プランジャの退出及び進入により前記潤滑剤を前記本体から前記チェーンに向けて吐出させるためのノズルを有し、
前記ノズルは、その先端が前記チェーンローラの両端面にそれぞれ分離して延びる二股形状をなすことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のチェーン潤滑装置。
【請求項5】
前記動力源は低速駆動されるモータであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のチェーン潤滑装置。
【請求項6】
前記潤滑剤はグリスであることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のチェーン潤滑装置。
【請求項7】
前記チェーンはハンガーコンベアを駆動することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のチェーン潤滑装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−269892(P2010−269892A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123023(P2009−123023)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】