説明

チゲサイクリンのグルクロニド代謝産物およびそのエピマー

チゲサイクリンのグルクロニド代謝産物、およびその対応するエピマーは、チゲサイクリンで処理されたヒトにおいて同定された。質量スペクトルデータを用いて、これらの構造が特定された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルクロニドに関し、さらに詳細には、チゲサイクリンのグルクロニド誘導体、その調製法およびこれを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
チゲサイクリン(GAR−936)はグリシルサイクリン抗生物質および半合成テトラサイクリン、ミノサイクリンの類似体である。これは抗生物質に対して新たに発生する耐性の世界的な脅威に対して開発された。チゲサイクリンは、インビトロおよびインビボのどちらにおいても広範囲に及ぶ抗菌活性を有する。グリシルサイクリン抗生物質、例えばテトラサイクリン抗生物質は、細菌におけるタンパク質翻訳を阻害することにより作用する。
【0003】
グリシルサイクリン、例えばチゲサイクリンは、多くの抗生物質耐性グラム陽性病原菌 、例えば、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、ペニシリン耐性ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)およびバンコマイシン耐性腸球菌に対して活性である(Weissら、1995;Fraiseら、1995)。大変重要なのは、排出およびリボソーム保護というテトラサイクリン耐性の2つの主な形態を有する細菌種に対するチゲサイクリンの活性である(SchnappingerおよびHillen、1995)。
【0004】
テトラサイクリン抗生物質は、代謝をほとんどまたは全く受けない。ミノサイクリン9−ヒドロキシル化およびN−脱メチル化がヒトにおいて報告されているが、ごく限られた程度である(NelisおよびDeLeenheer、1982)。C4位でのエピマー化がほとんどのテトラサイクリン抗生物質について報告されており、一般に、代謝経路ではなく分解と見なされている(Remmersら、1963)。健康な男性ボランティアに静脈内投与した後の[14C]チゲサイクリンの代謝動態を分析し、本研究から得られた結果をラットよびイヌにおける臨床前代謝研究において得られた結果と比較した。
【0005】
14C]チゲサイクリンを健康な男性ボランティアに静脈内投与した後、血清、尿および大便中の放射標識されたチゲサイクリンベースの化合物に関して分析を行った。非放射性チゲサイクリンを男性ボランティアに静脈内投与した後のヒト血清および尿の分析後に同様の結果が報告され、この場合、最小代謝が報告された。非標識実験は、ラットおよびイヌを用いた代謝実験からの結果と一致し、この場合、チゲサイクリンは、静脈内投与後の血漿および尿中の主な化合物関連成分であった。
【0006】
チゲサイクリンおよびM3a(t−ブチルアミノ酢酸)のエピマーも各マトリックスにおいて観察された。チゲサイクリンのエピマーは、代謝物であるよりも分解物であることが証明されており、ラットおよびイヌ、血漿および尿、ならびにヒト血清および尿において観察されている。チゲサイクリンの多くはこれらのマトリックスについて用いられる抽出手順の代打にエピマーに変換されるので、血清および大便サンプル中のチゲサイクリンエピマーの量は過大評価されがちである。初期に溶出されるクロマトグラフィーピークは、M3aと推定され、これもラット、イヌ、血漿および尿において観察される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本研究から得られた血清、尿および大便中で検出されたチゲサイクリン関連化合物をスキーム1において示す。
スキーム1 ヒト血清、尿および大便中で検出された[14C]チゲサイクリン関連化合物
【化1】

【0008】
M6(チゲサイクリングルクロニドのエピマー)およびM7(チゲサイクリングルクロニド)はどちらも血清および大便サンプルラジオクロマトグラムにおいて観察された。グルクロン酸化部位は未知のままである。代謝産物およびそのエピマーの可能な構造を以下に示す:
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【0009】
M6でなくM7が尿サンプルのラジオクロマトグラムにおいて観察された。チゲサイクリンのグルクロン酸化は、ヒト肝臓ミクロソームまたはヒト肝細胞を用いてインビトロで、あるいはラット、イヌまたはヒトにおいてインビボではこれまでに報告されていない。ヒト血清および尿の従来の分析は、標識されていないチゲサイクリンを用い、チゲサイクリン代謝の予備的評価のためにLC/MSによるサンプル分析を用いて行われた。この実験の間、グルクロニド代謝産物は特に調査されなかった。[14C]チゲサイクリンを用いてインビボのラットよびイヌサンプルの分析を行い、グルクロン酸化は観察されなかった。テトラサイクリン抗生物質についての代謝経路としてグルクロン酸化を特定する科学文献において周知の報告はない。
【0010】
代謝産物M6およびM7は、チゲサイクリンのプロドラッグとして使用することができる。投与されると、β−グルクロニダーゼ酵素はM6およびM7を開裂させて、チゲサイクリンを放出することができる。チゲサイクリンの直接投与でなく、M6またはM7としての投与は、薬剤の吸収、分布、代謝、排出および/または副作用を変更し得る。さらに、これらの化合物は抗菌剤として直接役立つ。
【0011】
図面の簡単な説明
図1は、ヒトにおいて50mg用量の[14C]チゲサイクリンを1回静脈内投与した後の尿および大便中の放射能の削減にための平均(ISD)である。
【0012】
図2は、長時間にわたる血清中の平均(ISD)チゲサイクリンおよび放射能濃度である。
【0013】
図3Aは、[14C]チゲサイクリン投与後1時間で対象1から抽出されたヒト血清のHPLCラジオクロマトグラムを示す。
【0014】
図3Bは、[14C]チゲサイクリン投与後8時間で対象1から抽出されたヒト血清のHPLCラジオクロマトグラムを示す。
【0015】
図4は、[14C] チゲサイクリンの投与後8時間で対象1から抽出されたヒト血清の複合LC/SRMクロマトグラムである。
【0016】
図5Aは、[14C]チゲサイクリン投与後0〜4時間で集められた対象4からのヒト尿のHPLCラジオクロマトグラムである。
【0017】
図5Bは、[14C]チゲサイクリン投与後24〜48時間で集められた対象4からのヒト尿のHPLCラジオクロマトグラムである。
【0018】
図5Cは、[14C]チゲサイクリン投与後24〜48時間で集められた対象4からのヒト大便のHPLCラジオクロマトグラムである。
【0019】
図6は、ヒト尿中、37℃でインキュベートされた[14C]チゲサイクリンの安定性である。
【0020】
図7は、[14C]チゲサイクリン投与後0〜4時間で集められた対象8からのヒト尿の複合質量クロマトグラムである。
【0021】
図8は、[14C]チゲサイクリン投与後34.2時間で集められた対象8からの抽出されたヒト大便のHPLCラジオクロマトグラムである。
【0022】
図9は、チゲサイクリンのm/z586質量スペクトルのプロダクトイオンである。
【0023】
図10は、チゲサイクリンのエピマーのm/z586質量スペクトルのプロダクトイオンである。
【0024】
図11は、M2のm/z602質量スペクトルのプロダクトイオンである。
【0025】
図12Aは、ヒト尿から単離されたM3aのラジオクロマトグラムである。
【0026】
図12Bは、ヒト尿から単離されたM3aの質量クロマトグラムである。
【0027】
図13は、M3aのLC/MS質量スペクトルである。
【0028】
図14は、ヒト血清におけるM3(9−アミノミノサイクリン)についてのm/z473→456SRM遷移のLC/SRMクロマトグラムである。
【0029】
図15は、M6のM/Z762質量スペクトルのプロダクトイオンである。
【0030】
図16は、M7のM/Z762質量スペクトルのプロダクトイオンである。
【0031】
図17は、M9のM/Z762質量スペクトルのプロダクトイオンである。
【0032】
図18は、チゲサイクリングルクロニドの提案された構造および質量スペクトルフラグメンテーションスキームである。
【0033】
図19Aは、チゲサイクリンを投与された対象からのヒト尿のLC/MS分析から得られたUVクロマトグラムである。
【0034】
図19Bは、チゲサイクリンを投与された対象からのヒト尿のLC/MS分析からの選択された質量クロマトグラムである。
【0035】
図19Cは、チゲサイクリンを投与された対象からのヒト尿のLC/MS分析からの選択された質量クロマトグラムである。
【0036】
図20Aは、チゲサイクリングルクロニドのm/z762質量スペクトルのプロダクトイオンのフルスケールプロットであり;(B)は強度が低いプロダクトイオンを示すために拡大されたプロットである。
【0037】
図20Bは、強度が低いプロダクトイオンを示すために拡大されたチゲサイクリングルクロニドのm/z762質量スペクトルのプロダクトイオンのプロットである。
【0038】
図21Aは、低強度プロダクトイオンを示す、チゲサイクリンを投与された対象からのヒト尿のm/z762分析のプロダクトイオンから得られるLC/MS/MSクロマトグラムである。
【0039】
図21Bは、低強度プロダクトイオンを示す、チゲサイクリンを投与された対象からのヒト尿のm/z762分析のプロダクトイオンから得られるLC/MS/MSクロマトグラムである。
【0040】
図21Cは、低強度プロダクトイオンを示す、チゲサイクリンを投与された対象からのヒト尿のm/z762分析のプロダクトイオンから得られるLC/MS/MSクロマトグラムである。
【0041】
図21Dは、全イオンクロマトグラムを示す、チゲサイクリンを投与された対象からのヒト尿のm/z762分析のプロダクトイオンから得られるLC/MS/MSクロマトグラムである。
【0042】
図22は、ヒト血清中、37℃でインキュベートされた[14C]チゲサイクリンの安定性である。
【0043】
図23Aは、ヒト尿から集められたHPLCフラクションの直接注入から得られるチゲサイクリングルクロニドのプロダクトイオンを示す。
【0044】
図23Bは、ヒト尿から集められたHPLCフラクションの直接注入から得られるm/z762質量スペクトルのプロダクトイオンを示すチゲサイクリングルクロニドの質量スペクトルである。
【0045】
図24Aは、ヒト尿から単離されたチゲサイクリングルクロニドLC/MS分析から得られたチゲサイクリングルクロニドのLC/MSスペクトルである。
【0046】
図24Bは、ヒト尿から単離されたチゲサイクリングルクロニドのLC/MS分析から得られたチゲサイクリングルクロニドのm/z762質量スペクトルのMS2である。
【0047】
図24Cは、ヒト尿から単離されたチゲサイクリングルクロニドLC/MS分析から得られたチゲサイクリングルクロニドのm/z762質量スペクトルのMS2である。
【0048】
図24Dは、ヒト尿から単離されたチゲサイクリングルクロニドのLC/MS分析から得られるチゲサイクリングルクロニドのプロダクトイオンを示す。
【0049】
図25は、合成N−アセチル−9−アミノミノサイクリン(M9)のHPLC分析から得られるUVクロマトグラムである。
【0050】
図26Aは、チゲサイクリンのm/z586の衝突活性化解離から得られるMS/MSスペクトルの提案されたフラグメンテーションスキームである。
【0051】
図26Bは、チゲサイクリンのm/z586の衝突活性化解離から得られるMS/MSスペクトルである。
【0052】
図27Aは、チゲサイクリンのエピマーのm/z586質量スペクトルのプロダクトイオンを示す。
【0053】
図27Bは、チゲサイクリンのエピマーのm/z586質量スペクトルである。
【0054】
図28Aは、M3のm/z473質量スペクトルのプロダクトイオンを示す。
【0055】
図28Bは、M3のm/z473質量スペクトルである。
【0056】
図29Aは、M7のm/z762質量スペクトルのプロダクトイオンを示す。
【0057】
図29Bは、M7のm/z762質量スペクトルである。
【0058】
図30は、m/z515→498トレースにおいて示されるM9を有するウサギ血清におけるチゲサイクリンとその代謝産物のLC/SRMクロマトグラムを示す。
【0059】
図31は、ウサギ血清の複合LC/SRMクロマトグラムである。
【0060】
図32は、マウス、ラット、ウサギ、イヌおよびヒトにおけるチゲサイクリンの提案された代謝経路を示すスキームである。
【0061】
ヒトをチゲサイクリンで処理することにより、チゲサイクリンのグルクロニド代謝産物がそのエピマーとともに産生されることが見出された。代謝物およびそのエピマーはどちらもヒト血清、尿、および大便中で見出され、その後抽出され、分析された。本発明の詳細な実験態様は、比較例1〜3および実施例1〜10において記載され、6人の健康な男性ボランティアに投与されたチゲサイクリンの質量バランスおよび代謝産物特性を説明する。比較例1〜3は、これらの媒体におけるチゲサイクリンの相対的安定性を決定するのを助けるために使用される血清、尿および大便における対照実験を検討する。一方、実施例1〜10は、前記の6人のボランティアに対して行われた実験に関する。
【0062】
スキーム1を参照して、代謝産物M3(9−アミノミノサイクリン)、M8(N−アセチル−9−アミノミノサイクリンのエピマー)およびM9(N−アセチル−9−アミノミノサイクリン)も血清および尿のLC/MS分析により検出された。これらの代謝産物がt−ブチルアミノアセチルアミノ側鎖のアミド加水分解後に形成されたので、これらは放射標識されなかった。従って、血清および尿中のこれらの代謝産物の濃度は、LC/MSデータからのみ評価できた。これらのデータに基づいて、M3およびM8は血清および尿中の副次的な代謝産物であるようであり、一方、M9は血清においては副次的な代謝産物であるようであるが、尿中ではM7と匹敵する濃度で存在する。M3はラット、イヌおよびヒト尿および血漿(ヒトについては血清)において報告されているが、N−アセチル代謝物(M8およびM9)は以前には報告されていない。代謝産物M8およびM9は放射標識されなかったので、従来のラットおよびイヌ代謝研究からのサンプル中に存在していたが、LC/MSにより特異的に調査されなかったので検出されなかった。
【0063】
ヒト排泄物中の放射能の平均合計回収率は91.8%であり(±5.6、n=3)、尿中に33.2±1.9%、大便中に58.6%±4.4%排出された(図1)。これらのデータは、ラットおよびイヌからえられたデータと一致し、1回の静脈内[14C]チゲサイクリン投与の約89%(ケージリンスを含む)が各試験片中に回収された。ラットにおいて、34%が尿中に、53%が大便中に回収され、一方、イヌにおいては、36%が尿中に、47%が大便中に回収された。
【0064】
血清中の放射能は、血清中のチゲサイクリン濃度よりもはるかに急速に減少した(図2)。この違いは、[14C]チゲサイクリンの投与前に組織に分布する有意量の未標識チゲサイクリンにより引き起こされやすいが、これは[14C] チゲサイクリンの組織内取り込みの一部を制限する。この「後入れ先出し(last−in、first−out)」現象は、おそらくはチゲサイクリンと比較した全放射能について遙かに少ない体積の分布および遙かに高いクリアランスをもたらす可能性が最も高かった。
【0065】
14C]チゲサイクリン投与量の約50%が最初の48時間で回収された(尿中27%、大便中24%)。分析された尿サンプルにおいて、投与量の15%が未変化チゲサイクリンとして、2.0%がチゲサイクリンのエピマーとして、4.1%がM7として、6.3%がM3aとして排出された。大便ホモジネートサンプルにおいて、投与量の9.9%が未変化チゲサイクリンとして、5.5%がチゲサイクリンエピマーとして、5.4%がグルクロニド(M6+M7)として、1.5%がM3aとして排出された。M3aとして排出された放射能は、形成されたM3、M8およびM9の量と等しいとみなされ、これは投与量の約8%であった。しかしながら、代謝産物M3、M8およびM9は放射標識を含有しなかったので、その血清、尿および大便中の濃度は、正確に評価できなかった。
【0066】
LC/MSを使用して、微量のヒドロキシチゲサイクリン代謝産物(M1、M2およびM4)が尿中で検出されたが、ラジオクロマトグラフィーにより検出されなかった。これらのヒドロキシチゲサイクリン代謝産物は以前にラットおよびイヌ、血漿および尿、ならびにヒト血清および尿における微量の代謝産物として報告されていない。しかしながら、従来報告され、評価されたこれらの代謝産物のヒト血清および尿中の濃度は、本研究におけるラジオクロマトグラフィーの検出の下限より低い。チゲサイクリンのN−デスメチル代謝産物はラット血漿および尿、ならびに従来の研究から得られたヒト尿サンプルにおいて微量代謝産物として報告された。この代謝産物は本研究において分析されたサンプルのいずれにおいても検出されなかった。
【0067】
本研究は、[14C]標識されたチゲサイクリン用量の体内動態のみを評価し、未標識用量から残存するチゲサイクリン関連生成物を明らかにしなかった。したがって、本明細書において報告されている、チゲサイクリン関連生成物の推定濃度は、血清、尿および大便中のこれらの成分の実際の濃度を過小評価すると予想された。実際、本研究から得られた血清および尿サンプル中の全チゲサイクリン(放射標識されたものおよび未標識のもの)の濃度は、[14C]チゲサイクリン用量の放射能濃度および比活性度を用いて同じサンプルについて計算された濃度よりも一貫して大きかった(一般に10〜300%大きかった)。これは、本研究において用いられる投与計画(未標識用量を複数回、それに続いて[14C]標識用量を1回)およびチゲサイクリンについて報告されている長い半減期に基づくと予想されないものではなかった。
【0068】
従って、チゲサイクリンを複数回静脈内投与し、それに続いて[14C]標識チゲサイクリン投与量を1回健康な男性ボランティアに投与した後、血清、尿および大便中の主な放射標識された成分は未変化チゲサイクリンであった。チゲサイクリンの主な代謝経路は、グルクロン酸化およびアミド加水分解とそれに続くN−アセチル化であった。分解生成物であるチゲサイクリンのエピマーも各サンプルにおいて検出された。
【0069】
血清、尿および大便中のチゲサイクリン関連成分の濃度を他の場所で報告されている全放射能濃度に基づいて計算した。投与量の比活性度(1.00μCi/mg)を用いてこれらの濃度をng−チゲサイクリン当量に換算した。この値を用いて、特異成分の濃度を次にラジオクロマトグラムにおける放射能の分布に基づいて評価した。これらの濃度は、[14C]標識されたチゲサイクリン用量の体内動態のみを反映し、未標識用量から残存する任意のチゲサイクリン関連生成物の原因でない。
【0070】
投与後1時間および8時間での対象1からの血清抽出物の代表的HPLCラジオクロマトグラムを図3Aおよび3Bに示す。血清抽出物についての代謝産物プロファイルは、異なる対象および異なる時点について類似していた。表1は、血清抽出物中の放射能の相対分布および各[14C]チゲサイクリン関連成分の推定濃度を示す。
【表1】


a.相対分布は、重複サンプルから得られたHPLCラジオクロマトグラムにおけるピークの面積積分により決定された。
b.かっこ内で、ng−チゲサイクリン当量/mLとしての相対濃度は、血清放射能濃度(ng−チゲサイクリン当量/mLとして)にHPLCラジオクロマトグラムからの分布(%)をかけることにより推定された。
c.検出の限界は、1ng当量/mLであった。
d.血清抽出物中で観察されるチゲサイクリンエピマーの多くは、おそらくは抽出プロセスの結果であった、
ND.は代謝産物が検出されず、0が割り当てられたことを示す。
【0071】
濃度は、投与量溶液の比活性度、他の場所で報告された血清放射能濃度、および各サンプル中の放射能の相対分布に基づいて推定された。すべての時点での全患者について、チゲサイクリンは検出された主な薬剤関連成分であり、1時間で放射能の63%を占め、4時間および8時間でそれぞれ48%および46%まで減少した(表1)。
【0072】
チゲサイクリンのエピマーは、存在する次に最も豊富な薬剤関連成分であり、放射能の約20%に相当した。しかしながら、血清抽出物中のチゲサイクリンの大部分は抽出プロセスの間に形成され得る。抽出中に形成されたエピマーを補正した後、血清サンプル中のエピマーの量は5から8%の間に減少し、チゲサイクリンの量は59から80%に増加する。チゲサイクリングルクロニド(M7)は1時間での放射能の1%未満に相当するが、4および8時間で9および12%に増加した。チゲサイクリンエピマーのグルクロニド(M6)は分析された血清サンプルの約半分において検出され、放射能の4%未満を占めた。初期に溶出するクロマトグラフィーピーク(M3a、t−ブチルアミノ酢酸)(保持時間4〜7分)はすべての血清サンプルにおいて検出され、放射能の10から20%を占めた。図4は、選択反応モニタリング(SRM)モードにおいて、LC/MS/MSを用いて集められた、血清中で検出されたチゲサイクリン関連化合物、例えば、9−アミノミノサイクリン(M3)、N−アセチル−9−アミノミノサイクリンのエピマー(M8)およびN−アセチル−9−アミノミノサイクリン(M9)の複合LC/SRMクロマトグラムを示す。t−ブチルアミノアセチルアミノ側鎖が開裂され、放射能フロー検出を用いて定量化できなかったので、これらの代謝産物は放射標識されなかった。LC/MS分析に基づくと、これらは血清中の副次的代謝産物であった。
【0073】
放射活性用量の約27%は、[14C]チゲサイクリン投与後48時間以内に尿中に排出された。投与後0〜4時間および24〜48時間で集められた対象4からの尿の代表的なラジオクロマトグラムを図5A〜5Cに示す。尿の代謝産物プロファイルは、患者間および異なる時点で類似していた。尿サンプル中の放射能の相対分布および尿中の各[14C]チゲサイクリン関連成分の推定濃度を表2に示す。
【表2】

a.相対分布は、重複サンプルから得られたHPLCラジオクロマトグラムにおけるピークの面積積分により決定された。
b.かっこ内で、μg−チゲサイクリン当量/収集としての相対的濃度は、全尿放射能(μg−チゲサイクリン当量)にHPLCラジオクロマトグラムから得られた分布(%)をかけることにより推定された。
c.検出限界は90ng当量/mLであった。
d.対象6について、24〜48時間収集は部分的収集であった。
e.NDは、代謝産物が検出されず、0を割り当てられたことを示す。
【0074】
濃度は投与量溶液の比活性度、他の場所において報告された尿放射能濃度、および各サンプルにおける放射能の相対分布に基づいて推定された。[14C]チゲサイクリン関連成分のそれぞれとして尿および大便中に排出された[14C]チゲサイクリン用量のパーセントを表3に示す。
【表3】

a.対象#6からの尿および大便収集は不完全であったために、24〜48時間の尿、合計尿、大便サンプルおよび合計について、n=5であった。
b.大便ホモジネート抽出物中で観察されるチゲサイクリンエピマーの多くは抽出プロセスの結果である可能性が高かった。
NDは代謝産物が検出されなかったことを示す。
【0075】
すべての対象について、チゲサイクリンは表2の尿中に排出された主な薬剤関連成分であり、用量の約15%は最初の48時間以内に未変化薬剤として尿中に排出された(表3)。チゲサイクリンのエピマーとして同定される尿放射能の量は、0〜4時間収集における放射能の5%から24〜48時間収集における11%まで増加した。安定性分析は尿中37℃でインキュベートされた場合にチゲサイクリンが分解してエピマーになることを証明しているので、エピマーの一部は、膀胱において形成され得る(図6)。放射活性用量の合計2%は最初の48時間以内にチゲサイクリンのエピマーとして尿中に排出された。代謝産物M7は、0〜4時間収集においては副次的成分にすぎなかったが、4〜8時間、8〜24時間および24〜48時間に集められたサンプルにおいて尿放射能の約20%に相当した。M3aは尿中の放射能の約15〜37%に相当し、時間とともにチゲサイクリンに比べて増加した。
【0076】
48時間以内に尿中に排出される代謝産物M3aおよびM7の量は、放射活性用量のそれぞれ6および4%を占めた。図7は、尿中で検出されたチゲサイクリン関連化合物の複合クロマトグラムを示す。放射標識されたヒドロキシチゲサイクリン代謝産物(M1、M2およびM4)、ならびにM6は、尿中の放射能の1%未満を占める微量の尿代謝産物であると見なされた。代謝産物M3、M8およびM9は放射標識されず、したがって相対量はLC/MS分析に基づいてしか評価できなかった。LC/MSデータに基づいて、M3およびM8は副次的な代謝産物であり、一方、M9はM7と類似した濃度で存在した。
【0077】
放射活性投与の48時間以内に、放射能の約24%が大便中に回収された。投与後約34時間で集められた対象8からの大便抽出物の代表的なHPLCラジオクロマトグラムを図8に示す。大便の代謝産物プロファイルは対象間および集められたすべてのサンプルについて類似していた。大便抽出物中の放射能の相対分布および大便中の各[14C]チゲサイクリン関連成分の推定濃度を表3に示す。
【表4】

a.相対分布は、重複サンプルから得られたHPLCラジオクロマトグラムにおけるピークの面積積分により決定された。
b.かっこにおいて、全大便放射能(mg−チゲサイクリン当量として)にHPLCラジオクロマトグラムから得られた分布(%)をかけることによりmg−チゲサイクリン当量/収集としての相対的濃度を推定した。
c.検出の限界は、ホモジネート1gあたり0.15μg当量であった。
d.大便ホモジネート抽出物において観察されるチゲサイクリンエピマーの多くは、抽出プロセスの結果である可能性が高い。
e.他のクロマトグラフィーピークは、41から46分の間の保持時間を有していた。
NDは代謝産物が検出されなかったことを示す。
対象6からは大便サンプルを受け取らなかった。
【0078】
投与量溶液の比活性度、他の場所で報告されている大便放射能濃度、および各サンプル中の放射能の相対分布に基づいて濃度を推定した。すべての大便サンプルについて、チゲサイクリンは主な薬剤関連成分であり、大便放射能の28〜51%を占めていた(表3)。これは48時間以内の大便において未変化薬剤として排出された放射活性用量の10%に相当した(表2)。チゲサイクリンのエピマーは大便放射能の12〜27%に相当し、放射活性用量の5.5%に相当していた。血清に関して、有意な量のチゲサイクリンエピマーが抽出プロセスの間に形成された。抽出プロセスの間に形成されたエピマーについて補正すると、エピマーの量はサンプルすべてにおいて12%未満に減少し、一方、チゲサイクリンの量は39から66%の間に増加した。代謝産物M7は大便中の放射能の10〜26%に相当し、一方、M6は最高9%までに相当した。0〜48時間の大便サンプル中のグルクロニド代謝産物は放射活性用量の約5.5%に相当した。M3は大便中の放射能の4から14%の間に相当し、用量の2%未満が大便中にM3aとして排出された。大便放射能の最高16%までに相当し、用量の約2%に相当するさらなるピークがいくつかの大便サンプルにおいて観察された。大便サンプルのLC/MS分析は追加の代謝産物を検出しなかった。
【0079】
血清、尿および大便において観察されるチゲサイクリン関連化合物のまとめを表4に示す。
【表5】

【0080】
ヒト血清、尿および大便における特性化されたチゲサイクリン代謝産物についての質量スペクトルデータを以下で検討する。
【0081】
LC/MS分析を用いて、ヒト血清、尿および大便、ならびにラットおよびイヌ血漿および尿におけるチゲサイクリン代謝産物の特性化を行った(表5)。これらの代謝産物の構造をスキーム1に示す。標準的クロマトグラフィー技術を用いて実質的に純粋なM6またはM7を単離できることが期待される。たとえば、実施例7、8および9において用いられるHPLCパラメータはM6およびM7の実質的に純粋なアリコートを提供することが期待される。
【0082】
従って、さらなる態様において、本発明は、本明細書に記載されたようなチゲサイクリン代謝産物を実質的に純粋な形態、例えば、≧約90%、好ましくは≧約95%またはそれ以上、例えば、98%の純度を有する形態で提供する。
【表6】

【0083】
チゲサイクリンは、血清、尿および大便において観察された。チゲサイクリン真正標準のマススペクトル特性を代謝産物との比較のために調べた。チゲサイクリンのLC/MSスペクトルにおいて、プロトン化分子イオン、[M+H]がm/z 586で観察された。チゲサイクリンのm/z 586の衝突活性化解離から得られたMS/MSスペクトルおよび提案されたフラグメンテーションスキームを図9に示す。m/z 586からのNHの欠失は、m/z569プロダクトイオンを生成した。m/z 513でのプロダクトイオンはt−ブチルアミノアセチルアミノ(TBAAA)側鎖からのt−ブチルアミノ基の欠失を表す。全TBAAA側鎖の欠失およびそれに続く4−ジメチルアミノ基の欠失は、それぞれm/z 456および411でプロダクトイオンを生成した。m/z 211でのプロダクトイオンは、フラグメンテーションスキームにおいて示すように、テトラサイクリン環のD環に由来していた。m/z 86イオンは、t−ブチルアミノメチレン基を表していた。
【0084】
チゲサイクリンのエピマーは、血清、尿および大便において観察された。この生成物は、[M+H]をm/z 586で生成した。図10において示されるm/z 586質量スペクトルのプロダクトイオンは、m/z 569、513、456、411、211、154および86を包含し、これらはチゲサイクリンについても存在していた。エピマーとしての同定は、チゲサイクリンよりも短いその相対的保持時間に基づいて行われた。
【0085】
代謝産物M1、M2およびM4は、尿において微量で観察された。これらの代謝産物は、[M+H]をm/z 602で産生した。提案されたフラグメンテーションスキームおよびM2のm/z602質量スペクトルのプロダクトイオンを図11に示す。m/z 529および472でのプロダクトイオンは、チゲサイクリンについて、それぞれm/z513および456での対応するイオンよりも16 Da大きかった。このことは、t−ブチルアミノ−アセチルアミノ基ではなく、テトラサイクリン環が代謝の部位であることを示す。m/z211でのプロダクトイオンの存在は、チゲサイクリンについても観察され、代謝の部位としてのテトラサイクリンのD環を排除した。M1およびM4についての質量スペクトルデータは、m/z211プロダクトイオンがM1またはM4のいずれかについて観察されない以外は、M2についてと同様であった。従って、M1、M2およびM4代謝産物は、テトラサイクリン部分の酸化の生成物であった。
【0086】
代謝産物M3aは、血清、尿および大便において、初期に溶出するラジオクロマトグラムピークとして観察された。この初期に溶出するM3aピークをヒト尿から単離し、その後、通常相HPLCを用いてLC/MS分析して、図12Aおよび12Bにおいて示すラジオクロマトグラムおよび質量クロマトグラムを得た。M3aについての[M+H]および[MH+CHCN]はそれぞれ、図13において示すようにm/z 132および173で観察された。これは、131の分子量を示した。代謝産物M3は放射標識の欠失のためにLC/MSによってのみ微量で血清および尿において観察された。代謝産物M3の[M+H] は、m/z 473で観察された。m/z 473質量スペクトルのプロダクトイオンは、NHの欠失から生成したm/z 456(データは省略)を包含し、これはチゲサイクリン関連化合物に特徴的であった。血清サンプルにおいて、この代謝産物は、図14において示されるようなm/z 473→456 SRM遷移をモニターすることにより観察された。M3のCL−318614(9−アミノミノサイクリン)としての同定は、イヌの代謝研究において行われた。代謝産物M3は、TBAAA側鎖の放射標識されたt−ブチルアミノ酢酸(M3a)でのアミド加水分解により副生成物として生成することが提案された。
【0087】
代謝産物M6およびM7は血清、尿および大便において観察された。M6およびM7の[M+H]はm/z 762で観察され、これはチゲサイクリンよりも176 Da大きかった。M6およびM7の質量スペクトルデータは類似していた。m/z762でのプロトン化分子イオンピークは、チゲサイクリンのグルクロニド代謝産物またはその対応するエピマーの存在を示す。M6およびM7のm/z 762質量スペクトルのプロダクトイオンをそれぞれ図15および16に示す。M6およびM7のプロダクトイオンはm/z 586、569、513、211、および86、ならびにM7については154で存在していた。M6およびM7について、176 Daのニュートラルロスはm/z 586を生成し、これはチゲサイクリンについての[M+H]であり、チゲサイクリンのグルクロニドを示した。m/z 569、513、456、211、154(m/z 154はM7については観察されたが、M6については観察されなかった)および86でのプロダクトイオンもチゲサイクリンについて観察された。代謝産物M6は、M7よりも早いHPLC保持時間に基づいてM7のエピマーであることが提案された。これはチゲサイクリンよりも早期に溶出するチゲサイクリンエピマーと一致した。したがって、M6およびM7はそれぞれチゲサイクリンエピマーおよびチゲサイクリンのグルクロニドであることが提案された。
【0088】
代謝産物M8およびM9は、血清および尿中で、LC/MSによってのみ観察された。M8およびM9の[M+H]はm/z 515(MW 514)で観察され、これはチゲサイクリンより71 Da小さかった。M8およびM9の質量スペクトルデータは類似していた。M9のm/z 515質量スペクトルのプロダクトイオンを図17に示す。m/z515からのNHの欠失は、m/z 498生成物を生成した。m/z 456、411および154でのプロダクトイオンも、チゲサイクリンについて観察され、テトラサイクリン環が変わっていないことを示した。M8およびM9のラジオクロマトグラフィーピークの欠損は、TBAAA側鎖の放射標識されたカルボニル基の欠失と一致した。M9の形成について最もおこりやすいメカニズムは、アミド加水分解であって、t−ブチルアミノ酢酸(M3a、放射標識を含有していた)および9−アミノミノサイクリン(M3、14C標識なし)を生成した。9−アミノミノサイクリンのN−アセチル化は、M9を生成することが提案された。m/z 456プロダクトイオンおよび分子量(514)間の58 Daの差は、非放射標識アセチルアミノ基の存在と一致した。これらの代謝産物の確認は、合成N−アセチル−9−アミノミノサイクリン(WAY−188749)でスパイクされた尿抽出物の同時クロマトグラフィーにより得られた(データは省略)。代謝産物 M8は、M9よりも早いそのHPLC保持時間に基づいてM9のエピマーであることが提案された。これは、チゲサイクリンより早期に溶出するチゲサイクリンエピマーと一致した。したがって、M8およびM9はそれぞれ、N−アセチル−9−アミノミノサイクリンおよびN−アセチル−9−アミノミノサイクリンのエピマーであることが確認された。
【0089】
図18〜21は、チゲサイクリングルクロニドのさらなる分析に関する。図18は、構造I、IIエピマー、IIIおよびIVエピマーと対応することができるチゲサイクリングルクロニドの提案された構造および質量スペクトルフラグメンテーションである。図19AはUVクロマトグラムであり、図19Bおよび19Cはチゲサイクリンを投与された対象からのヒト尿のLC/MS分析から得られた、選択された質量クロマトグラムである。図20Aおよび20Bは、チゲサイクリングルクロニドのm/z 762質量スペクトルのプロダクトイオンを示し、ここにおいて、図20Aはフルスケールプロットであり、図20Bは強度の低いプロダクトイオンを示すために拡大されたプロットである。図21A〜21Dは、チゲサイクリンを投与された対象からのヒト尿のm/z 762分析のプロダクトイオンから得られたLC/MS/MSクロマトグラムを示し、ここにおいて、図21A〜21Cは、強度の低いプロダクトイオンの選択された質量クロマトグラムであり、図21Dは全イオンクロマトグラムである。したがって、代謝産物およびそのエピマーの可能な構造は、本明細書においてすでに開示されている、I、IIエピマー、III、およびIVエピマーから選択される少なくとも1つの化合物を包含する。
【0090】
一実施態様において、本明細書において開示されている化合物は、薬剤耐性菌に対する治療薬として用いることができ、他の抗生物質が効かない場合に効くことが証明されている。例えば、これはメチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、ペニシリン耐性ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、バンコマイシン耐性腸球菌(D.J. Beidenbachら、Diagnostic Microbiology and Infectious Disease 40:173−177(2001);H.W. Boucherら、Antimicrobial Agents & Chemotherapy 44:2225−2229 (2000);P.A.Bradford Clin. Microbiol. Newslett. 26:163−168 (2004); D. Milatovicら、Antimicrob. Agents Chemother. 47:400−404 (2003); R. Patelら、Diagnostic Microbiology and Infectious Disease 38:177−179 (2000); P.J. Petersenら、Antimicrob. Agents Chemother. 46:2595−2601 (2002);およびP.J. Petersenら、Antimicrob. Agents Chemother. 43:738−744(1999)、およびテトラサイクリン耐性の2つの主な形態:排出およびリボソーム保護のいずれかを有する生物(C. Betriuら、Antimicrob. Agents Chemother. 48:323−325 (2004); T. Hirataら、Antimicrob. Agents Chemother. 48:2179−2184 (2004);およびP.J. Petersen et. al., Antimicrob. Agents Chemother. 43:738−744(1999)に対して耐性であり得る。
【0091】
一実施態様において、本明細書において開示される化合物は、多くの細菌感染症、例えば、合併症を伴う腹腔内感染症(cIAI)、複合皮膚および皮膚組織感染症(cSSSI)、市中肺炎(CAP)、ならびに院内感染性肺炎(HAP)適応症(グラム陰性およびグラム陽性病原体、嫌気性菌、およびスタフィロコッカス・アウレウスのメチシリン感受性およびメチシリン耐性株(MSSAおよびMRSA)の両方により引き起こされ得るもの)の治療において用いることができる。さらに、本明細書において開示される化合物は、温血動物において、TetMおよびTetK耐性決定因子を有する細菌により引き起こされる感染症を治療または抑制するために用いることができる。さらに、本明細書において開示される化合物は、骨および関節感染症、カテーテル関連好中球減少症、産科および産婦人科感染症を治療するために、あるいは他の耐性病原体、例えば、VRE、ESBL、腸、急速発育性マイコバクテリアなどを治療するために用いることができる。
【0092】
したがって、本明細書にいて開示されているのは、少なくとも1つの細菌感染症を治療する方法であって、これを必要とする対象に、治療上有効な量の少なくとも1つの本発明において開示された化合物およびその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物を投与することを含む方法である。
【0093】
一実施態様において、本発明において開示された化合物は、例えば、チゲサイクリンと比較して、吐き気を軽減し得る。
【0094】
本明細書において用いられる「医薬組成物」とは、薬効のある組成物を意味する。医薬組成物は、少なくとも1つの医薬的に許容される担体を含有することができる。
【0095】
本明細書において用いられる「医薬的に許容される賦形剤」とは、特定の投与様式に好適であることが当業者に公知の任意の担体を含む、本発明において提供される化合物の投与に適した医薬担体またはビヒクルを意味する。例えば、非経口、皮内、皮下、局所適用に用いられる溶液または懸濁液は、無菌希釈剤(例えば、注射用水、塩溶液、不揮発性油など);天然に存在する植物性油(例えば、ゴマ油、ココナツ油、ピーナッツ油、綿実油など);合成脂肪族ビヒクル(例えば、オレイン酸エチル,ポリエチレングリコール、グリセリン,プロピレングリコールなど、例えば、合成溶媒を包含する);抗菌剤(例えば、ベンジルアルコール、メチルパラベンなど);酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム、など);キレート化剤(例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)など);緩衝剤(例えば、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩など);および/または張性を調節するための試薬(例えば、塩化ナトリウム、デキストロースなど);あるいはその混合物を含むことができる。さらなる例として、静脈内投与される場合、適当な担体としては、生理食塩水、リン酸塩緩衝塩溶液(PBS)、ならびに増粘剤および可溶化剤、例えば、グルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを含有する溶液、およびその混合物が挙げられる。
【0096】
非制限的例として、本明細書において開示された化合物を任意に1以上の医薬的に許容される賦形剤として組み合わせることができ、錠剤、カプセル、分散性粉末、顆粒剤、または例えば約0.05〜5%の懸濁化剤を含有する懸濁剤、例えば約10〜50%の糖を含有するシロップ、ならびに例えば約20〜50%のエタノールを含有するエリキシルなどの形態で経口的に、あるいは約0.05〜5%の懸濁化剤を等張媒体中に含有する無菌注射溶液または懸濁液の形態で非経口的に投与することができる。このような医薬製剤は、例えば、約25〜約90%の活性成分を担体と、さらに一般的には約5重量%から約60重量%で組み合わせて含有することができる。他の処方は、米国特許第5,494,903号および第5,529,990号においてさらに検討されており、この特許は本発明の一部として参照される。
【0097】
「医薬的に許容される塩」なる用語は、本開示の化合物の酸付加塩または塩基付加塩を意味する。医薬的に許容される塩は、親化合物の活性を保持し、これが投与される対象に対して、またこれが投与されるという状況で有害または望ましくない影響を及ぼさない任意の塩である。医薬的に許容される塩としては、無機および有機酸両方の金属錯体および塩が挙げられる。医薬的に許容される塩としては、金属塩、例えば、アルミニウム、カルシウム、鉄、マグネシウム、マンガンおよび錯塩が挙げられる。医薬的に許容される塩としては、酸塩、例えば、酢酸塩、アスパラギン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、アキセチル、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、酪酸塩、エデト酸カルシウム、カムシル酸塩、炭酸塩、クロロ安息香酸塩、シレキセチル、クエン酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩、エシル、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキサミン酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムコ酸塩、ムコン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、p−ニトロメタンスルホン酸塩、パモン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、フタル酸塩、ポリガラクトウロン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、スルファミン酸塩、スルファニリン酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクリン酸塩、トルエンスルホン酸塩などが挙げられる。医薬的に許容される塩は、例えばシステインを包含するが、これに限定されないアミノ酸から誘導される。他の許容される塩は、例えば、Stahlら、Pharmaceutical Salts: Properties、Selection、and Use、Wiley−VCH; 1st edition (June 15、2002)において見出すことができる。
【0098】
一実施態様において、「治療上有効な量」とは、患者において症状の予防または緩和、あるいは所望の生物学的結果、例えば、改善された臨床的兆候、疾患の開始の遅延、リンパ球および/または抗体のレベルの低下/上昇などをもたらす化合物の量を意味する。有効な量は、本明細書において記載されているようにして決定できる。選択された投与レベルは、特定の化合物の活性、投与経路、治療される状態の重さ、および治療される患者の状態および以前の病歴に依存するであろう。しかしながら、所望の治療効果を達成し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させるために必要であるよりも少ないレベルで化合物の投与を開始することは当業者の技術範囲内である。一実施態様において、検定から得られるデータをヒトにおいて用いられる投与量範囲の処方において用いることができる。
【0099】
比較例1
14C]チゲサイクリンの安定性を、37℃で24時間までインキュベートされた対象において調べた。スパイクされた対照血清の抽出物中の[14C]チゲサイクリンと関連する放射能(%)は24時間にわたって約9%、0時で90%から24時で81%まで減少した(図22)。0時でのエピマーのパーセントは7%であり、24時間まで一定のままであった。テトラサイクリンについて報告されているように(Remmers EG、Sieger GM、Doerschuk AP. Some observations on the kinetics of the C.4 epimerization of tetracycline. J Pharm Sci. 1963;52;752−756; Nelis H、DeLeenheer A. Metabolism of minocycline in humans. Drug Metab Dispos. 1982;10:142−146)、チゲサイクリンのエピマーはエピマー化の生成物であり、代謝産物とは見なされなかった。他の生成物の量は、約8%、0時で3%から24時で11%まで増大した。他の生成物に含まれるのは、保持時間が約4分の、初期に溶出するクロマトグラフィーピーク(M3a、t−ブチルアミノ酢酸)であった。このピークは、従来、ラットおよびイヌ血漿および尿において観察された。スパイクされた対照から得られる放射能の回収は0から24時間までの試験サンプルについて完了した。
【0100】
比較例2
尿において、[14C]チゲサイクリンは37℃でインキュベートされた場合、血清中よりも安定性が低かった(図6)。スパイクされた対照尿中の[14C]チゲサイクリンのパーセントは18%、0時の92%から24時の74%まで減少した。エピマーは16%、0時の放射能7%から24時の23%まで増大した。他の副次的な生成物は、0時で1%から24時で3%まで増大した。
【0101】
実験サンプルについて用いられる抽出法の間、[14C]チゲサイクリンの安定性を対照血清および大便ホモジネートにおいて調べた。血清サンプル中、[14C]チゲサイクリンはサンプルのスパイキングおよび抽出前の放射能の94%を占めた。抽出プロセス後、[14C]チゲサイクリンの量は、放射能の24%から70%まで減少した。対応して、他の放射活性成分、主にチゲサイクリンのエピマーが増大し、これは抽出前の4%から抽出後の22%まで増大した。M3aを包含する他の副次的な生成物は、抽出前の2%から抽出後の8%まで増大した。
【0102】
比較例3
14C]チゲサイクリンを対照大便ホモジネートから抽出した後に、同様の結果が観察された。これらのサンプルにおいて、[14C]チゲサイクリンは抽出前の放射能の94%、抽出後の放射能の68%を占めた。対応してチゲサイクリンのエピマーが増大し、抽出前の放射能の4%、抽出後の放射能の23%に相当した。M3aの量も抽出の間に4%(1%から5%まで)増大した。他の副次的な生成物は抽出前の放射能の1%、抽出後の放射能の4%に相当した。
【0103】
実施例
実施例1
非盲検、入院患者、繰り返し投与チゲサイクリン、単回投与[14C]チゲサイクリン代謝動態および質量バランス研究を、6人の健康な男性ボランティアにおいて行った。臨床プロトコルは12人の患者を必要とした。これらの12人のうち、6人(対象1、4、5、6、7、および8、対象8は後に研究から脱落)が放射性投与を受けた。試験対象者基準/除外基準、病歴、健康診断およびさらなる研究プロトコルにおいて概要を説明された追加の手順に基づいて、適格対象が選択された。各対象は、100mgの負荷量を第1日の朝に投与され、続いて12時間おきにさらに5回、50mgの維持量を投与された。研究の第4日の朝、6人の対象は、50mgの[14C]チゲサイクリン(50μCi)を1回投与された。各チゲサイクリン用量は、30分の静脈内注入により投与された。6人の健康な男性ボランティアは[14C]標識チゲサイクリンを、平均用量45.9±0.9μCi(44.3〜47.0 μCiの範囲)で投与された。[14C]チゲサイクリンの放射化学的純度は、投与時で98.6%と報告され、放射能の0.4%はチゲサイクリンエピマーと特定され、比活性度は1.00μCi/mgであった。
【0104】
チゲサイクリン投与前、および[14C]標識投薬後1、4、8、24および48時間に、代謝産物プロファイリングのために血清サンプルを集めた。代謝産物プロファイリングのために、尿サンプルを0〜4、4〜8、8〜24および24〜48時間で集め、大便サンプルを[14C]標識投薬後最高48時間まで集めた。血清および尿サンプル、ならびに大便ホモジネートをドライアイス上で、Biotransformation Division of Drug Safety and Metabolism、Wyeth Research、Collegeville, PAまで輸送した。サンプル収集およびサンプル貯蔵の詳細は、研究の質量バランスの部分に記載されている。対象#6の24〜48時間の尿および大便サンプルは、対象が研究から脱退したので不完全であった。この対象から得たサンプルを代謝産物プロファイリングに使用したが、このサンプルは質量バランス計算には含まれなかった。
【0105】
研究の臨床部分において用いられる非標識および[14C]標識チゲサイクリン、ならびに用量の調製およびこれらのバッチの分析の詳細は、研究の質量バランスバッチにおいて記載されている。対象に投与された[14C]チゲサイクリン(処方番号0931854J、ロット番号7981703)は1.00μCi/mg(50μCi/50 mg用量)の比活性度を有していた。血清、尿および大便ホモジネート中の[14C]チゲサイクリンの安定性を評価するために使用される[14C]チゲサイクリンのさらなるバッチ(バッチCFQ13389、95.3μCiμCi/mg、97.2%放射化学的純度)は、Amersham Pharmacia Biotech、Buckinghamshire(英国)から入手した。チゲサイクリン標準品(バッチRS 738−4、純度98.4%)、9−アミノミノサイクリン標準品(CL−318614、バッチ14800B−89A)およびN−アセチル−9−アミノミノサイクリン(WAY−188749、バッチL23566−162)をWyeth Research、Pearl River, NYから入手した。[14C]チゲサイクリンの構造を、放射標識の部位を特定(*)して以下に示す。
【化6】

【0106】
アセトン、アセトニトリル、氷酢酸およびメタノールをEMD Chemicals, Inc(Gibbstown, NJ)から入手した。エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)およびトリフルオロ酢酸をSigma Chemical Co.(St. Louis, MO)から入手した。酢酸アンモニウムをMallinckrodt Baker (Phillipsburg, NJ)から入手した。すべての試薬を分析グレードまたはそれ以上であった。
【0107】
100mgの単回用量としてチゲサイクリンを静脈内投与し、続いて5回、50mg、そして1回、50mgの[14C]チゲサイクリンを投与することは、一般に安全かつ十分に許容された。もっとも頻繁に(>10%)報告される副作用は、吐き気(75%)、嘔吐(50%)、消化不良(17%)、および注射部位の炎症(17%)であった。
【0108】
実施例2
抽出効率を計算するための放射能測定は、Ultima GoldTMシンチレーション流体(Perkin Elmer)およびUltima GoldTM標準曲線を用いたTri−Carb Model 3100TR液体シンチレーションカウンター(Perkin Elmer、Wellesley, MA)を用いて行った。既知の放射能を有する外部標準を使用することにより、カウント/分(CPM)を分解/分(DPM)に変換した。各標準のクエンチは、外部放射活性標準の変換されたスペクトル指数(tSIE)により決定した。TopCount NXT放射計マイクロプレートリーダー(Perkin Elmer)を用いて、96深穴Lumaプレート(Perkin Elmer)中に集められたHPLCフラクションを分析した。
実施例3
【0109】
14C]標識チゲサイクリン投与後1、4および8時間で集められた個々の血清サンプルを代謝産物プロファイルについて分析した。放射能の濃度が低すぎたので(0〜18 ng当量/mLの範囲)、24および48時間サンプルは分析しなかった。サンプル体積を最小にするために、各血清サンプルを等しい体積(それぞれ約9ml)の2サンプルに分け、抽出し、別々に分析した。EDTA(1mLのサンプルあたり0.5 M EDTAを80μL)を各サンプルに添加し、サンプルを撹拌混合した。3体積のアセトンを各サンプルに添加し、サンプルを次に1分間、マルチチューブボルテックスミキサーを用いて混合した。サンプルを2500rpm、4℃でSorvall Super T21遠心分離機(Sorvall Inc.、Newtown, MA)中で15分間遠心分離した。20μL氷酢酸を含有する新しい試験管に上清を移した。ペレットを2mL水、160μLの0.2M EDTAおよび6mLのアセトンで2回再抽出し、前記のように処理した。各サンプルから得られた上清を合し、Turbovap Model LVエバポレーター(Zymark、Hopkinton、MA)を用いて窒素流下で蒸発乾固させた。残留物を300μLのアセトニトリル/水(1:9)で再構成し、10分間14000rpm、室温でModel 5415Eppendorf遠心分離機(Brinkmann Instruments、Westbury, NY)を用いて遠心分離し、放射能について、HPLCにより分析した。選択されたサンプルはまたLC/MSにより分析した。
【0110】
14C]チゲサイクリンの安定性は、[14C]チゲサイクリン(3μg/mL)でスパイクされ、37℃でインキュベートされた対照ヒト血清において決定された。この濃度は本研究において報告されているCmax値に近かったので、この濃度を用いた。アリコート(500μL)を0、1、4、8および24時間で取り出し、新しいバイアル中に入れた。EDTA(0.5Mを40μL)を添加し、サンプルを14000rpm、室温で10分間遠心分離した(Eppendorf遠心分離機、Model 5415C)。上清をHPLCバイアルに移し、放射能フロー検出を用いたHPLCにより分析した。
【0111】
追加の血清サンプルを前記のようにして調製し、抽出した。これは、もしあるならば、抽出プロセスが[14C]チゲサイクリンの安定性に及ぼす影響を測定するために行われた。実施例6において記載されるように、放射能フロー検出を用いたHPLCによりこれらのサンプルを分析した。
【0112】
実施例4
以前に開発され、ラットおよびイヌ尿サンプルについて使用された方法を用いて、代謝産物プロファイリング用尿サンプルを以下で論議するように抽出した。様々な間隔で[14C]チゲサイクリンの投与後最高48時間まで集められた尿サンプルを抽出前に氷上で解凍した。個々の尿サンプルのアリコート(1 mL)を清浄な試験管に移し、0.2 M EDTA(最終濃度、40 mM EDTA)を添加した。pHはpH4.5〜5.5で一定であった。サンプルを混合し、遠心分離し、上清をHPLCラジオクロマトグラフィーにより代謝産物について分析し、選択されたサンプルもLC/MSにより分析した。
【0113】
対照#8から得られた追加の尿を用いて代謝産物M3aを単離した。前述と同じ方法を用いてこの尿サンプルを処理した。HPLC法を用い、サンプル注入後2から5.5分までHPLCフローを集めてM3aピークを単離した。Turbovap Model LVを用いて、プールされたフラクションを窒素流下で濃縮した。サンプルを次いで遠心分離し、LC/MSにより分析した。
【0114】
14C]チゲサイクリンの安定性を、[14C]チゲサイクリン(5μg/mL)でスパイクされ、37℃でインキュベートされた対照ヒト尿において決定した。本研究の尿中の[14C]チゲサイクリン濃度の範囲内であったので、この濃度を使用した。アリコート(500μL)を0、1、4、8および24時間で取り出し、新しいバイアル中に入れた。これらの尿サンプルを比較例2において血清について記載したようにして処理し、分析した。
【0115】
実施例5
8000dpm/gより多く含有していた、[14C]チゲサイクリン投与後48時間まで集められた各大便サンプルから調製された個々の大便サンプルホモジネートを代謝産物プロファイルについて分析した。大便サンプルホモジネートの調製は、研究の質量バランスの部分において詳細に記載されている。簡単に説明すると、大便サンプルをABC実験室(Columbia, MO)にて、3〜4体積の氷冷された水中で重量によって均質化し、凍結してBiotransformation Division of Drug Safety and Metabolism、Wyeth Research、Collegeville, PAに輸送した。放射能の抽出のために、大便ホモジネートを氷上で解凍し、アリコート(約1g)を15mL試験管に移した。3体積のアセトンを添加し、マルチチューブボルテックスミキサーを用いてサンプルを1分間混合した。サンプルをSorvall Super T21遠心分離機中、15分間2500rpm、4℃で遠心分離した。上清を新しい試験管に移し、ペレットを1mLの水および80μLの0.5M EDTAで再懸濁させ、前記のようにして再抽出した。ペレットをこのようにして合計3回再抽出し、上清をプールした。Turbovap Model LVを用いて、上清を窒素流下、蒸発乾固させた。残留物を500μLの水中に再懸濁させ、Model 5415C Eppendorf遠心分離機を用いて10分間14000rpm、室温で遠心分離した。上清をHPLCバイアルに移し、放射能検出を伴うHPLCを用いて放射能および代謝産物プロファイルについて分析した。選択されたサンプルをさらにLD/MSにより分析した。
【0116】
抽出プロセスの間の[14C]チゲサイクリンの安定性を[14C]チゲサイクリン(5μg/gホモジネート)でスパイクされた対照ヒト大便ホモジネートにおいて決定した。この濃度は本研究から得られた大便ホモジネート中の[14C]チゲサイクリン濃度の範囲内であったので、この濃度を使用した。サンプルを抽出し、放射能フロー検出を用いたHPLCにより分析した。
【0117】
実施例6
Waters 2695 Alliance Separation Module(Waters Corp.、Milford, MA)、Waters Model 2487二波長UV吸収検出器(350nmをモニターするために設定され、20秒間隔でフラクションを集めるために装備されたGilson215液体ハンドラー(Gilson、Middleton, WI)と直列)を用いてHPLC分析を行った。フラクションを96深穴Lumaプレート中に集め、TopCount NXTを用いて分析した。オートサンプラー温度を4℃に設定した。2つの移動相AおよびBの直線的勾配を使用したPhenomenex SecurityGuardTMガードカートリッジ(5μm)を備えたPhenomenex Luna C18(2)カラム(150 x 2.0 mm、5μm;Phenomenex、Torrance, CA)上でチゲサイクリンおよび薬剤誘導生成物の分離を行った。カラムは約20℃の周囲温度であった。移動相Aは水中10 mM酢酸アンモニウムであり、移動相Bはアセトニトリルであった。移動相の流量は0.2 mL/分であり、以下に示すように供給された。
【表7】

【0118】
実施例7〜9
液体クロマトグラフィー/質量分析
質量分析に用いられたHPLCシステムは、Waters Alliance Model 2695 HPLCシステムであった。これは、内蔵式オートサンプラーおよびModel 996ダイオードアレイUV検出器を装備していた。この研究において、LC/MS分析の間、3つのHPLC条件を使用した。LC/MS条件1を代謝産物特性化のための大部分のサンプル分析および尿から代謝産物M3aを単離するために使用した。グルクロニド代謝産物の保持時間を増大させ、代謝産物M8およびM9の同一性を確認するための同時クロマトグラフィー実験のために、選択されたサンプルに関してLC/MS条件2を使用した。LC/MS条件3を使用して、ヒト尿から単離された極性代謝産物M3aを分析した。
【0119】
実施例7
LC/MS条件1
340〜360nmをモニターするためにUV検出器を設定した。Uniguard C18ガードカラム(10 x 2 mm)(ThermoHypersil−Keystone、Bellefonte, PA)を備えたPhenomenex Luna C18(2)カラム(150 x 2.0 mm、5μm)上で代謝産物特性化のための分離を行った。流量は0.2mL/分であった。LC/MSサンプル分析の間、代謝産物の評価の前に、2分までの初期流れを質量分析計からそらした。移動相Aは水中10mM酢酸アンモニウムであり、移動相Bはアセトニトリルであった。直線的移動相勾配を以下に示す。
【表8】

【0120】
同様のHPLC条件を使用して、代謝産物M3aを含有するフラクションを集めた。移動相および直線勾配は同じであった。使用されたカラムはSupelco Discovery C18カラム(25 cm x 10 mm、5μm;Supelco、Bellefonte、PA)であり、流量は4.7 mL/分であった。Gilsonフラクションコレクター、Model FC204(Gilson)を用いてフラクションを集めた。
【0121】
実施例8
LC/MS条件2
210〜400nmをモニターするためにUV検出器を設定した。Uniguard C18ガードカラム(10 x 2 mm)(ThermoHypersil−Keystone)を備えたPhenomenex Luna C18(2)カラム(250 x 2.0 mm、5μm)上で分離を行った。流量は0.2 mL/分であった。LC/MSサンプル分析の間、代謝産物の評価の前に0.5 分までの初期流れを質量分析計からそらせた。移動相Aは水中0.02%トリフルオロ酢酸(v/v)であり、移動相Bはアセトニトリル中0.02%トリフルオロ酢酸(v/v)であった。直線的移動相勾配を以下に示す。
【表9】

【0122】
実施例9
LC/MS条件3
Waters Atlantis HILIC Silicaカラム(150 x 2.1 mm、5μm)上で分離を行った。流量は0.2 mL/分であった。移動相Aはアセトニトリル中0.02%トリフルオロ酢酸(v/v)であり、移動相Bは水中0.02%トリフルオロ酢酸(v/v)であった。直線的移動相勾配を以下に示す。
【表10】

【0123】
実施例10
質量分析
Micromass Quattro Ultimaトリプル四重極質量分析計(Waters Corp.)を陽イオン化モードで操作した。Z−スプレーインターフェースを用いて、エレクトロスプレーイオン化(ESI)でLC/MS分析を行った。ナノスプレーインターフェース中に直接注入することにより、選択されたサンプルからの個々のフラクションのESI−MS分析を行った。質量分析計の設定を以下に示す。
【表11】

【0124】
尿および大便サンプルをチゲサイクリンに特徴的なプロダクトイオンの前駆体についてのLC/MS/MS分析によりチゲサイクリン代謝産物について分析した。さらに、チゲサイクリンの潜在的代謝産物を、動物およびヒトにおける従来の研究から得られた結果に基づいたLC/MSデータにおいて検索した。
【0125】
血清抽出物をチゲサイクリンおよび選択された代謝産物について、内部成分からの干渉を軽減するために選択された反応モニタリング(SRM)モード(LC/SRM)においてLC/MS/MSにより分析した。これらの実験を、200msの滞留時間設定で行った。次のチゲサイクリン関連成分をモニターした。
【表12】

【0126】
Flo−One分析ソフトウェア(バージョン 3.65)を利用して、安定性分析および代謝産物プロファイルのために放射活性ピークを積分した。Microsoft Excel(登録商標) 2000表計算を用いて平均および標準偏差を計算した。LC/MSデータ分析に使用されたソフトウェアはMicromass MassLynx(バージョン4.0、Waters Corp.)であった。
【0127】
実施例11
材料
酢酸アンモニウムをSigma−Aldrich (St. Louis、MO)およびFisher Scientific(Fairlawn、NJ)から購入した。HPLCグレード水および溶媒をEMD Chemicals(Gibbstown, NJ)から購入した。
【0128】
方法
尿サンプル調製
VirTis Sentry 35XL Freezemobile(VirTis Company、Gardiner、NY)を用いて、チゲサイクリンを投与された対象から得られた尿サンプル(300 mL)を凍結乾固させた。残留物を水中に再懸濁させ、容器を水で洗浄した。最終体積は3.5 mLであった。Model 5415C Eppendorf遠心分離機(Brinkmann Instruments、Westbury, NY)を用いて、サンプルを10分間14000rpm、室温で遠心分離した。次いで、0.2または0.45μm孔サイズのCostar Spin X HPLCナイロン製ミクロ遠心フィルター(Corning Incorporated、Corning、NY)を用いてサンプルを濾過した。2400rpmで作動するIEC Centra Model GP8R遠心分離機(Thermo Electron Corp)を用いて、濾過のための遠心分離を行った。得られた粗尿抽出物を前記のようなフラクション収集でHPLCにより処理した。
半調製的HPLCによるチゲサイクリングルクロニドの単離
【0129】
チゲサイクリングルクロニドを含有する尿抽出物を4mLのオートランプラーバイアルに移した。代謝産物単離用HPLC装置は、Waters Prep 4000 HPLC システム、Waters 2767 Sample Manager、Waters Column Fluidics OrganizerおよびWaters 996ダイオードアレイUV検出器(Waters Corp.、Milford、MA)を含んでいた。分離は、Discovery C18カラム(200 x 10mm、5 μm)(Supelco、Bellefonte、PA)を用いて行われた。210および450nmをモニターするためにUV検出器を設定した。移動相Aは水中10mM酢酸アンモニウムであり、移動相Bはアセトニトリルであった。直線的移動相は表12に記載されているように供給された。
【表13】

【0130】
フラクション収集のためのHPLC装置をFractionLynx moduleのMicromass MassLynxソフトウェア(バージョン4.0、Waters Corp)により制御した。FractionLynxを用いて、代謝産物フラクションの収集は350nmでのUV吸収のモニタリングに基づいた。フラクション収集後、選択されたフラクションのアリコートを以下に記載するようにしてMSにより分析して、チゲサイクリングルクロニドの存在を確認した。チゲサイクリングルクロニドを含有するフラクションを次いで前述のように凍結乾固させ、再構成し、LC/MSにより分析して、チゲサイクリングルクロニドが単離されたことを確認した。
【0131】
液体クロマトグラフィー/質量分析
チゲサイクリン代謝産物分析に用いられるHPLCシステムは、バイナリーポンプおよびダイオードアレイUV検出器を含むAgilent Model 1100 HPLCシステムを含んでいた。HPLC分離条件は、流量が0.2mL/分であり、HPLCカラムの内径が2.1mmである以外は、代謝産物単離のためのフラクション収集について前述の通りであった。凍結乾燥前の代謝産物フラクションの分析は、HPLCカラムを使用せず、フラクションのアリコートを質量分析計に直接注入することにより行われた。
【0132】
代謝産物特性化に用いられた質量分析計は、Finnigan LCQイオントラップ質量分析計(Thermo Electron Corp.、San Jose, CA)であった。これは、エレクトロスプレーイオン化(ESI)インターフェースを備え、陽イオン化モードで操作された。LC/MSデータをXcaliburソフトウェア(バージョン1.3、Thermo Electron Corp.)で分析した。
【0133】
チゲサイクリングルクロニド質量スペクトル
ヒト尿のHPLCフラグメンテーションにより集められたチゲサイクリングルクロニド。チゲサイクリングルクロニドの[M+H]はm/z 762で観察され、これはチゲサイクリンよりも176Da大きかった。チゲサイクリングルクロニドのm/z 762質量スペクトルのプロダクトイオンを図23Aおよび23Bに示す。176Daのニュートラルロスは、m/z 586、さらにはチゲサイクリンの[M+H]を生成し、これはチゲサイクリンのグルクロニドを示していた。凍結乾燥および再構成後のチゲサイクリングルクロニドフラクションのLC/MS分析は図24A〜24Dに示されるMSおよびMSnスペクトルをもたらした。これらの質量スペクトルデータもチゲサイクリングルクロニドを示すものであった。
【0134】
この実施例は、IV量のチゲサイクリンを投与されたヒト対象の尿からチゲサイクリングルクロニドを単離できることを示す。
【0135】
実施例12
この実施例は、2つのチゲサイクリン代謝経路、親化合物のグルクロニド化および9−アミノミノサイクリンのN−アセチル化が、チゲサイクリンを1回静脈内投与した後のマウスおよびウサギにおいて存在する可能性を調査した。各種から得た血清サンプルを集め、LC/MSにより分析して、これらの代謝物の存在または不在を確認し、可能ならば、その濃度を評価した。マウスからの尿サンプルも集めて、チゲサイクリン代謝産物の存在を調べた。
【0136】
材料
マウスおよびウサギの静脈内投与用溶液を調製するために使用されたチゲサイクリン(ロットA96559、純度100%)、チゲサイクリン標準品(バッチRS 738−4、純度98.4%)、重水素化(t−ブチル−d9)チゲサイクリン(WFQ0159;内部標準として使用)、9−アミノミノサイクリン標準品およびN−アセチル−9−アミノミノサイクリンはWyeth Research、Pearl River, NYから入手した。
【0137】
対照ウサギおよびマウス血清をBioreclamation Inc.(Hicksville、NY)から入手した。アセトニトリルおよびメタノールをEMD Chemicals, Inc.(Gibbstown, NJ)から入手した。エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)をSigma Chemical Co.(St. Louis, MO)から入手した。酢酸アンモニウムをMallinckrodt Baker(Phillipsburg, NJ)から入手した。すべての試薬は分析グレードまたはそれ以上であった。
【0138】
マウスおよびウサギ研究デザイン
動物
15匹のオスCD−1マウス(投与時の平均体重31.3g)を使用した。動物に食物および水を自由に与えた。0.5および2時間血液採取群のマウスを標準的ケージに入れ、一方、4時間血液採取群の動物は尿を収集するための代謝ケージ中に入れた。Bioresources Department at Wyeth Research、Collegeville、PAによりマウスに投薬した。
【0139】
3匹のメスニュージーランドホワイトウサギ(投与時の体重3.9kgから4.3kgの間)を使用した。動物に食物および水を自由に与えた。動物を個々に標準的ケージに入れた。Wyeth Research、Chazy、NYによりウサギに投薬し、サンプルをWyeth Research Bioresources Department、Collegeville、PAに凍結輸送した。
【0140】
投薬
マウスおよびウサギについて、50mgのチゲサイクリンを5.0mLの0.9%無菌塩溶液中に溶解させて希釈標準ストック溶液を調製することにより、静脈内投与用溶液を調製した。希釈標準ストック溶液を0.9%無菌溶液でマウスについては0.5mg/mL、ウサギについては4mg/mLまで希釈した。マウス用量(5 mg/kg、10 mL/kg)を尾静脈からボーラス注入法により投与した。ウサギ用量(4 mg/kg、1 mL/kg)をボーラス注入法により耳周辺静脈から投与した。
【0141】
サンプル収集
マウス(n=5/時点)について、チゲサイクリン投与後0.5、2および4時間で心臓穿刺により血液(約0.7 mL)を集めた。ウサギについて、チゲサイクリン投与後0.5、2および6時間で耳静脈から血液(約7 mL)を集めた。血餅形成後、血清を室温で分離し、15分間、4℃、3000rpmで遠心分離した。血清を新しい試験管に移し、「LC/MS分析用血清サンプル調製」の項目で以下に記載するように、分析まで約−70℃で保存した。加えて、尿を4時間血液採取群のマウスから集め、「LC/MS分析用尿サンプル調製」の項目で以下に記載するように、分析まで約−70℃で保存した。
【0142】
N−アセチル−9−アミノミノサイクリンM9の純度の評価
この研究において使用されたN−アセチル−9−アミノミノサイクリン、M9の純度を、「液体クロマトグラフィー/質量分析」の項目で以下に記載するように、UV検出を備えたHPLCにより評価した。100ng/μLサンプル中のM9関連成分の全UVクロマトグラフィーピーク面積のパーセンテージとしてのUVクロマトグラフィーピーク面積に基づいて、M9純度を測定した。M9および他の関連する成分は同じUVモル吸収率を有し、他のM9関連物質は存在しないと仮定された。37.6分ピークよりも少ない相対量(合計2.8%)で存在する個々の成分を微量成分と見なし、純度の概算に含めなかった。合成物質において、M9およびそのエピマーのみがLC/MSにより特性化され;他の分解物は特性化されなかった。各標準曲線サンプル中のM9の実際の濃度を、この方法により得られたM9純度の概算に基づいて調節した。
【0143】
LC/MS分析用尿サンプル調製
マウス尿を解凍し、アリコート(1 mL)を新しい試験管に移した。Model 5415C Eppendorf遠心分離機(Brinkmann Instruments、Westbury, NY)を用いて、サンプルを14000rpm、室温で10分間遠心分離して、粒子状物質を除去した。サンプルを次いで新しい試験管に移し、「液体クロマトグラフィー/質量分析」の項目において以下に記載するようにして、LC/MSにより分析した。
【0144】
LC/MS用血清サンプル調製。
マウスおよびウサギ血清サンプルを各収集時間にプールし、チゲサイクリン、そのエピマー、チゲサイクリングルクロニド(M7およびそのエピマーM6)、9−アミノミノサイクリン(M3)およびN−アセチル−9−アミノミノサイクリン(M9およびそのエピマーM8)について分析した。血清のアリコート(500μL)を新しい試験管に移し、重水素化チゲサイクリン(30 ng/mL最終濃度)を内部標準(定量分析のみ)として添加した。EDTA(0.5 M EDTAを40μL)を各サンプルに添加し、サンプルを撹拌混合した。アセトニトリル(500μL)を各サンプルに添加し、サンプルを撹拌混合し、Model 5415C Eppendorf遠心分離機(Brinkmann Instruments)を用いて14000rpm、室温で10分間遠心分離することにより、変性タンパク質を分離した。上清を新しい試験管に移し、Turbovap Model LVエバポレーター(Caliper Life Sciences、Hopkinton、MA)を用いて、溶媒を窒素流下で蒸発させた。「液体クロマトグラフィー/質量分析」の項目において以下に記載するように残存する水溶液をLC/MSにより分析した。幾つかのウサギ血清サンプルを対照ウサギ血清で5倍または50倍に希釈して、検体反応が標準曲線の範囲内にあることを保証した。
【0145】
チゲサイクリン、M3およびM9の標準曲線をウサギ血清において作成した。内部標準および合成チゲサイクリンおよび代謝産物標準を対照血漿に添加することにより標準曲線を作成した。0、10、20、50、100、200、500および1000ng/mLのチゲサイクリン濃度、直線範囲が5〜200ng/mLで、標準曲線サンプルを調製した。9−アミノミノサイクリン(M3)について、濃度は0、1、5、10、20、50、100および200ng/mLであり、直線範囲は10〜200ng/mLであった。N−アセチル−9−アミノミノサイクリン(M9)について、濃度は、1.6、3.2、6.4、16、32、64および96ng/mLであり、直線範囲は3.2〜96ng/mLであった。これらのサンプルを前記のように処理し、分析した。
【0146】
M7(チゲサイクリングルクロニド)を含有するヒト尿サンプルのアリコートをプールされた2時間ウサギ血清抽出物に添加して、ウサギにおいて観察されるグルクロニドがヒトにおいて観察されるものと同じかどうかを確認した。このサンプルを「液体クロマトグラフィー/質量分析」の項目において以下に記載するようにしてLC/MSにより分析した。
【0147】
液体クロマトグラフィー/質量分析
質量分析に使用したHPLCシステムは、Waters Alliance Model 2695 HPLCシステム(Waters Corp.、Milford、MA)であった。これは内蔵式オートサンプラーおよびModel 996ダイオードアレイUV検出器を備えていた。210〜400nmをモニターするためにUV検出器を設定した。Keystone Uniguard C18ガードカラム(10 x 2.1 mm)(Thermo Electron Corp.、Bellefonte、PA)を備えたPhenomenex Luna C18(2)カラム(150 x 2.1 mm、5μm)(Phenomenex、Torrance、CA)上で代謝産物特性化のための分離を行った。カラム温度は25℃であった。流量は0.2 mL/分であった。移動相Aは水中10 mM酢酸アンモニウムであり、移動相Bはアセトニトリルであった。2つの直線的移動相勾配を使用し、表2.2.5−1および2.2.5−2に示した。勾配1は代謝産物同定(定量分析)のために使用した。勾配2は、ウサギ血清サンプルの半定量分析のために使用した。LC/MSサンプル分析の間、10分までの初期流れを代謝産物の評価前に質量分析計からそらせた。勾配1および勾配2のLC/MS HPLCデータを表13および14に示す。
【表14】

【表15】

【0148】
使用された質量分析器はMicromass Quattro Ultimaトリプル四重極質量分析計(Waters Corp.)であった。これは、エレクトロスプレーインターフェースを備え、陽イオン化モードで操作された。質量分析計の設定を表15に示す。
【表16】

【0149】
選択された反応モニタリング(SRM)モードにおけるLC/MS/MS分析(LC/SRM)も血清抽出物に関して行って、チゲサイクリン代謝産物のサンプルをスクリーンし、チゲサイクリン代謝産物の推定濃度を得た。これらの実験は、200msの滞留時間設定で行った。SRM分析条件を表16にまとめる。内部標準は使用しないか、または定量化分析のためにモニターしなかった。
【表17】

【0150】
データ分析および計算
Micromass MassLynx(バージョン4.0、Waters Corp.)をLC/MSデータの分析に使用した。チゲサイクリン、9−アミノミノサイクリン(M3)およびN−アセチル−9−アミノミノサイクリン(M9)の血清中の濃度をウサギ血清において作成された標準曲線と比較して、サンプルにおける検体対内部標準ピーク面積比に基づいて計算した。
【0151】
N−アセチル−9−アミノミノサイクリン(M9)合成標準の純度
合成N−アセチル−9−アミノミノサイクリン(M9)のHPLC分析から得られたUVクロマトグラムを図25に示す。M9およびその分解物のUVクロマトグラムピーク面積を表17に示す。
【表18】

【0152】
M9エピマーは最も豊富な化合物関連成分であり、合成N−アセチル−9−アミノミノサイクリンの約51%を占めていた。N−アセチル−9−アミノミノサイクリンの推定純度は32%であった。
マウス血清および尿ならびにウサギ血清における代謝産物
【0153】
マウス血清において、チゲサイクリン、チゲサイクリンのエピマー、9−アミノミノサイクリン(M3)およびチゲサイクリングルクロニド(M7およびそのエピマーM6)がLC/MS分析により観察された。これらの成分のマウス血清中の濃度は調べなかった。マウス血清においてはN−アセチル−9−アミノミノサイクリンは観察されなかった。同じチゲサイクリン関連成分がマウス尿において観察された。
【0154】
ウサギ血清において、チゲサイクリン、チゲサイクリンのエピマー、9−アミノミノサイクリン(M3)、チゲサイクリングルクロニド(M7およびそのエピマーM6)およびN−アセチル−9−アミノミノサイクリン(M9)がLC/MS分析により観察された。ヒトにおいて観察されるものと同じであるウサギにおけるチゲサイクリングルクロニドの特性化は、M7を含有していることが公知のヒト尿を用いて行われた同時クロマトグラフィー実験により立証された(データは省略)。ウサギ血清中のチゲサイクリンの推定濃度は、1時間での2020 ng/mLから2時間での1040 ng/mLそして6時間での287 ng/mLに減少した(表18)。M3の濃度も時間とともに減少し、0.5、2および6時間で、それぞれ、545、312および90.2 ng/mLであった。しかしながら、M9濃度は時間とともに増大し、0.5時間での5.5 ng/mLから2時間および6時間でのそれぞれ8.1および20 ng/mLに増大した。
【表19】

【0155】
液体クロマトグラフィー/質量分析による代謝産物特性化
LC/MS分析をCD−1マウスおよびウサギから得られた血清ならびにCD−1マウスから得られた尿の抽出物に対して行った。これらのサンプル中で観察されるチゲサイクリン関連化合物のまとめを表19に示す。チゲサイクリンおよびその代謝産物の質量スペクトルデータを以下で考察する。
【表20】

a.LC/MSデータファイルUL_063005_0006およびUL_070105_0005から得られる保持時間
b.TBAAA=t−ブチルアミノアセチルアミノ
M:マウス; R:ウサギ; S:血清; U:尿
【0156】
チゲサイクリン
チゲサイクリンはマウス血清および尿、ならびにウサギ血清において観察された。チゲサイクリン真正標準のスペクトル特性を代謝産物との比較のために調べた。チゲサイクリンのLC/MSスペクトルにおいて、プロトン化分子イオン[M+H]がm/z 586で観察された。チゲサイクリンのm/z 586の衝突活性化解離から得られたMS/MSスペクトルを図26Aに示し、提案されたフラグメンテーションスキームを図26Bに示す。提案されたフラグメンテーションスキームは、Kamelおよび共同研究者により関連するテトラサイクリン構成物質について提案されたスキームと一致していた(A. M. Kamelら、エレクトロスプレーイオン化、H/D交換、および多段質量分析によるテトラサイクリンの質量スペクトル特性化(Mass spectral characterization of テトラサイクリンs by electrospray ionization、H/D exchange、and multiple stage mass spectrometry) J Am Soc Mass Spectrom、13:543557、2002)。m/z 586からのNHの欠失は、m/z 569を生成した。m/z 513でのプロダクトイオンは、t−ブチルアミノアセチルアミノ(TBAAA)側鎖からのt−ブチルアミノ基の欠失を表す。全TBAAA側鎖の欠失はm/z 456を生成した。m/z 211および154でのプロダクトイオンは、図26Bのフラグメンテーションスキームにおいて示されるようなテトラサイクリン環系のD環起源であった。m/z 86イオンはt−ブチルアミノメチレン基を表していた。
【0157】
チゲサイクリンエピマー
チゲサイクリンのエピマーは、マウス血清および尿、ならびにウサギ血清において観察され、m/z586で[M+H]を生成した。図27Aおよび27Bにおいて示されるm/z 586質量スペクトルのプロダクトイオンは、m/z 569、513、456および86を含み、これはチゲサイクリンについても存在していた。エピマーとしての同定は、その相対保持時間がチゲサイクリンよりも短いことに基づいて行われた。
【0158】
代謝産物M3
代謝産物M3はマウス血清および尿、ならびにウサギ血清において観察された。代謝産物M3の[M+H]はm/z 473で観察された。M3のm/z 473質量スペクトルのプロダクトイオンを図28Aおよび28Bにおいて示す。m/z 473質量スペクトルのプロダクトイオンは、それぞれメチル基およびNH基の欠失から生成するm/z 458および456を含んでいた。m/z 154でのプロダクトイオンもチゲサイクリンについて観察され、これは未変化D環を示す。m/z458からのHOおよびNHの欠失は、m/z 423を生成した。その後の2つのCO分子の欠失はm/z 367を生成した。COおよびCH−N=CHの両方の欠失は、m/z 352を生成した。このフラグメンテーション挙動は、ミノサイクリン関連物質(A. M. Kamelら、エレクトロスプレーイオン化、H/D交換、および多段質量分析によるテトラサイクリンの質量スペクトル特性化(Mass spectral characterization of テトラサイクリンs by electrospray ionization、H/D exchange、and multiple stage mass spectrometry) J Am Soc Mass Spectrom、13:543−557、2002)およびM3が9−アミノサイクリンであることと一致していた。M3のHPLC保持時間およびMS/MSスペクトルデータを9−アミノミノサイクリンのものとマッチングすることにより確認した(データは省略)。
【0159】
代謝産物M6およびM7
代謝産物M6およびM7はマウス血清および尿、ならびにウサギ血清において観察された。M6およびM7の[M+H]はm/z 762で観察され、これはチゲサイクリンよりも176 Da大きかった。M6およびM7の質量スペクトルデータは類似していた。M7のm/z 762質量スペクトルのプロダクトイオンを図29Aおよび29Bに示す。176 Daのニュートラルロスはm/z 586を生成し、またチゲサイクリンについて[M+H]を生成し、これはチゲサイクリンのグルクロニドを示した。m/z 569、513、456および154でのプロダクトイオンもチゲサイクリンについて観察されたが、接合の部位を示さなかった。551でのプロダクトイオンは、フラグメンテーションスキームにおいて示されるようにC環のフラグメンテーションにより形成され、このことはA環またはC環のいずれかの上のヒドロキシ基がグルクロン酸化の部位であったことを示す。チゲサイクリンのA環と類似したフェノール環を有する三環式化合物であるロソキサントロンを代謝させて、フェノールグルクロニドを得た(Renner UD、Piperopoulos G、Gebhardt R、Ehninger G、Zeller KP. The oxidative biotransformation of losoxantrone (CI−941). Drug Metab Dispos 30:464478、2002)。これは、A環のヒドロキシ基がチゲサイクリンのグルクロン酸化部位である確率が最も高いことを示す。代謝産物M6はHPLC保持時間がM7よりも早いことに基づいてM7のエピマーであることが提案された。これは、チゲサイクリンよりも早期に溶出するチゲサイクリンエピマーと一致した(前述の「チゲサイクリンエピマー」の項を参照)。ウサギ血清抽出物のヒト尿抽出物との同時クロマトグラフィーは、両サンプルが同じチゲサイクリングルクロニド(M7)を含有していたことを示す(データは省略)。従って、M6およびM7はそれぞれチゲサイクリンエピマーおよびチゲサイクリンのグルクロニドであることが提案された。
【0160】
代謝産物M9
代謝産物M9はLC/SRM分析によりウサギ血清において観察された。この代謝産物 はマウス血清または尿において観察されなかった。図30は、m/z 515→498トレースにおいて示される、M9を含むウサギ血清におけるチゲサイクリンおよびその代謝産物の個々のLC/SRMクロマトグラムを示す。ウサギ血清の複合LC/SRM分析を図31に示す。
【0161】
14C]チゲサイクリンを健康な男性ボランティアに静脈内投与した後、チゲサイクリンは血清中の主な放射標識された成分であった。しかしながら、ヒトにおけるチゲサイクリン代謝の2つの経路、9−アミノミノサイクリンのN−アセチル化および親化合物のグルクロン酸化はラットまたはイヌにおいて観察されなかった。この実施例における研究は、チゲサイクリン代謝のこれらの経路がマウスおよび/またはウサギにおいて存在するかどうかを調べた。従来の代謝データおよび本研究から得られたデータに基づいて、マウス、ラット、ウサギ、イヌおよびヒトにおけるチゲサイクリンの提案された代謝経路を図32に示す。
【0162】
ウサギおよびマウスの両方において、チゲサイクリンのグルクロン酸化が観察された。合成標準を入手できなかったので、存在するグルクロニド代謝産物の量は測定できなかった。チゲサイクリンの投与後に集められたヒト尿を用いた同時クロマトグラフィー実験において、ヒト尿におけるグルクロニドおよびウサギ血清におけるグルクロニドは同じ保持時間を有していたことが示された。マウス血清を用いて同時クロマトグラフィーを行わなかったが、マウス血清中のグルクロニドはウサギおよびヒトにおいて観察されるものと類似した保持時間を有し、M7であると推定される。
【0163】
N−アセチル−9−アミノミノサイクリン(M9)はウサギ血清において観察されたが、マウス血清においては観察されなかった。M9のウサギ血清中の推定濃度は5.5 ng/mLから20 ng/mLに、投与後0.5から6時間で増大した。これらの濃度は、チゲサイクリンの繰り返し投与後のヒト血清中のM8について従来報告されているもの(3−15 ng/mL)と類似していた。さらに、ウサギ血清において、9−アミノミノサイクリン(M3)は545ng/mLもの高い濃度で観察された。代謝産物はマウス、ラット、イヌおよびヒトからの血清において観察されるが、これらの種においてはごく微量の代謝産物であった。M3はウサギにおける主な代謝産物であるようで、チゲサイクリンに対して最高30%までの濃度である。
【0164】
まとめると、マウスおよびウサギにチゲサイクリンを1回静脈内投与し、次いで尿(マウスのみ)および血液を血清の調製のために投与後様々な時点で集めた。オスCD−1マウスに5mg/kg投与し、投与後0.5、2および4時間で血液を集め、一方、尿を投与後0〜4時間で集めた。メスニュージーランドホワイトウサギに4mg/kgのチゲサイクリンを投与し、血液を投与後0.5、2および6時間で集めた。選択されたモニタリングモードにおいてLC/MSにより分析される前の時点および種により血清サンプルをプールした。チゲサイクリン(およびそのエピマー)、9−アミノミノサイクリン(M3)、チゲサイクリングルクロニド(M7およびそのエピマー、M6)ならびにN−アセチル−9−アミノミノサイクリン(M9およびそのエピマー、M8)の存在を調べた。非有効LC/MS法、合成標準および内部標準を用いてウサギ血清中のM3、M9およびチゲサイクリンの濃度を推定した。
【0165】
ウサギ血清において、チゲサイクリン、チゲサイクリンのエピマー、M3、M6、M7 およびM9が検出された。チゲサイクリンの0.5、2および6時間血清サンプル中の推定濃度はそれぞれ2020、1040および287ng/mLであった。M3の濃度も時間とともに、0.5時間の545ng/mLから6時間の90.2ng/mLまで減少した。M9の濃度は長時間にわたり、0.5時間の5.5ng/mLから2時間の8.1ng/mL、そして6時間の20ng/mLまで増加した。M6およびM7の濃度は合成標準がないために測定できなかった。
【0166】
マウス血清および尿において、チゲサイクリン、チゲサイクリンのエピマー、M3、M6およびM7が検出された。これらの化合物のマウス血清および尿中の濃度は測定されなかった。M9はマウス血清および尿において観察されなかった。
【0167】
まとめると、チゲサイクリンをウサギおよびマウスに1回静脈内投与した後、チゲサイクリン、そのエピマー、9−アミノミノサイクリン(M3)およびチゲサイクリングルクロニド(M7、およびそのエピマーM6)が両種から得られる血清において観察された。加えて、N−アセチル−9−アミノミノサイクリン(M9)はウサギ血清において観察された。チゲサイクリンのM7へのグルクロン酸化およびM3のM9へのN−アセチル化もヒトにおいて観察されたが、ラットまたはイヌにおいては観察されなかった。これらの化合物は前記方法により単離することができる。
【0168】
本発明の他の実施態様は、本明細書および本明細書において開示された本発明の実施例を考慮すると当業者には明らかになるであろう。本明細書および実施例は例示のみとして見なされ、本発明の新の範囲および精神は以下の請求の範囲により示されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】ヒトにおいて50mg用量の[14C]チゲサイクリンを1回静脈内投与した後の尿および大便中の放射能の削減にための平均(ISD)である。
【図2】長時間にわたる血清中の平均(ISD)チゲサイクリンおよび放射能濃度である。
【図3A】[14C]チゲサイクリン投与後1時間で対象1から抽出されたヒト血清のHPLCラジオクロマトグラムを示す。
【図3B】[14C]チゲサイクリン投与後8時間で対象1から抽出されたヒト血清のHPLCラジオクロマトグラムを示す。
【図4】[14C] チゲサイクリンの投与後8時間で対象1から抽出されたヒト血清の複合LC/SRMクロマトグラムである。
【図5A】[14C]チゲサイクリン投与後0〜4時間で集められた対象4からのヒト尿のHPLCラジオクロマトグラムである。
【図5B】[14C]チゲサイクリン投与後24〜48時間で集められた対象4からのヒト尿のHPLCラジオクロマトグラムである。
【図5C】[14C]チゲサイクリン投与後24〜48時間で集められた対象4からのヒト大便のHPLCラジオクロマトグラムである。
【図6】ヒト尿中、37℃でインキュベートされた[14C]チゲサイクリンの安定性である。
【図7】[14C]チゲサイクリン投与後0〜4時間で集められた対象8からのヒト尿の複合質量クロマトグラムである。
【図8】[14C]チゲサイクリン投与後34.2時間で集められた対象8からの抽出されたヒト大便のHPLCラジオクロマトグラムである。
【図9】チゲサイクリンのm/z586質量スペクトルのプロダクトイオンである。
【図10】チゲサイクリンのエピマーのm/z586質量スペクトルのプロダクトイオンである。
【図11】M2のm/z602質量スペクトルのプロダクトイオンである。
【図12A】ヒト尿から単離されたM3aのラジオクロマトグラムである。
【図12B】ヒト尿から単離されたM3aの質量クロマトグラムである。
【図13】M3aのLC/MS質量スペクトルである。
【図14】ヒト血清におけるM3(9−アミノミノサイクリン)についてのm/z473→456SRM遷移のLC/SRMクロマトグラムである。
【0170】
【図15】M6のM/Z762質量スペクトルのプロダクトイオンである。
【図16】M7のM/Z762質量スペクトルのプロダクトイオンである。
【図17】M9のM/Z762質量スペクトルのプロダクトイオンである。
【図18】チゲサイクリングルクロニドの提案された構造および質量スペクトルフラグメンテーションスキームである。
【図19A】チゲサイクリンを投与された対象からのヒト尿のLC/MS分析から得られたUVクロマトグラムである。
【図19B】チゲサイクリンを投与された対象からのヒト尿のLC/MS分析からの選択された質量クロマトグラムである。
【図19C】チゲサイクリンを投与された対象からのヒト尿のLC/MS分析からの選択された質量クロマトグラムである。
【図20A】チゲサイクリングルクロニドのm/z762質量スペクトルのプロダクトイオンのフルスケールプロットであり;(B)は強度が低いプロダクトイオンを示すために拡大されたプロットである。
【図20B】強度が低いプロダクトイオンを示すために拡大されたチゲサイクリングルクロニドのm/z762質量スペクトルのプロダクトイオンのプロットである。
【図21A】低強度プロダクトイオンを示す、チゲサイクリンを投与された対象からのヒト尿のm/z762分析のプロダクトイオンから得られるLC/MS/MSクロマトグラムである。
【図21B】低強度プロダクトイオンを示す、チゲサイクリンを投与された対象からのヒト尿のm/z762分析のプロダクトイオンから得られるLC/MS/MSクロマトグラムである。
【図21C】低強度プロダクトイオンを示す、チゲサイクリンを投与された対象からのヒト尿のm/z762分析のプロダクトイオンから得られるLC/MS/MSクロマトグラムである。
【図21D】全イオンクロマトグラムを示す、チゲサイクリンを投与された対象からのヒト尿のm/z762分析のプロダクトイオンから得られるLC/MS/MSクロマトグラムである。
【図22】ヒト血清中、37℃でインキュベートされた[14C]チゲサイクリンの安定性である。
【図23A】ヒト尿から集められたHPLCフラクションの直接注入から得られるチゲサイクリングルクロニドのプロダクトイオンを示す。
【図23B】ヒト尿から集められたHPLCフラクションの直接注入から得られるm/z762質量スペクトルのプロダクトイオンを示すチゲサイクリングルクロニドの質量スペクトルである。
【図24A】ヒト尿から単離されたチゲサイクリングルクロニドLC/MS分析から得られたチゲサイクリングルクロニドのLC/MSスペクトルである。
【図24B】ヒト尿から単離されたチゲサイクリングルクロニドのLC/MS分析から得られたチゲサイクリングルクロニドのm/z762質量スペクトルのMS2である。
【図24C】ヒト尿から単離されたチゲサイクリングルクロニドLC/MS分析から得られたチゲサイクリングルクロニドのm/z762質量スペクトルのMS2である。
【図24D】ヒト尿から単離されたチゲサイクリングルクロニドのLC/MS分析から得られるチゲサイクリングルクロニドのプロダクトイオンを示す。
【図25】合成N−アセチル−9−アミノミノサイクリン(M9)のHPLC分析から得られるUVクロマトグラムである。
【図26A】チゲサイクリンのm/z586の衝突活性化解離から得られるMS/MSスペクトルの提案されたフラグメンテーションスキームである。
【図26B】チゲサイクリンのm/z586の衝突活性化解離から得られるMS/MSスペクトルである。
【図27A】チゲサイクリンのエピマーのm/z586質量スペクトルのプロダクトイオンを示す。
【図27B】チゲサイクリンのエピマーのm/z586質量スペクトルである。
【図28A】M3のm/z473質量スペクトルのプロダクトイオンを示す。
【図28B】M3のm/z473質量スペクトルである。
【図29A】M7のm/z762質量スペクトルのプロダクトイオンを示す。
【図29B】M7のm/z762質量スペクトルである。
【図30】m/z515→498トレースにおいて示されるM9を有するウサギ血清におけるチゲサイクリンとその代謝産物のLC/SRMクロマトグラムを示す。
【図31】ウサギ血清の複合LC/SRMクロマトグラムである。
【図32】マウス、ラット、ウサギ、イヌおよびヒトにおけるチゲサイクリンの提案された代謝経路を示すスキームである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトをチゲサイクリンで処理することにより産生されるチゲサイクリンのグルクロニド代謝産物。
【請求項2】
ヒトをチゲサイクリンで処理することにより産生されるチゲサイクリンのグルクロニド代謝産物のエピマー。
【請求項3】
m/z762で質量スペクトルピークを示す請求項1記載の代謝産物。
【請求項4】
m/z762で質量スペクトルピークを示す請求項2記載のエピマー代謝産物。
【請求項5】
さらに、586、569、513、211および86で質量スペクトルピークを示す請求項3記載のエピマー代謝産物。
【請求項6】
さらに、586、569、513、211および86で質量スペクトルピークを示す請求項4記載のエピマー代謝産物。
【請求項7】
a)ヒトに対してチゲサイクリンを投与する工程;
b)血清、尿または大便のサンプルを前記ヒトから得る工程;
c)前記サンプルを抽出して、チゲサイクリンのグルクロニド代謝産物を得る工程を含む、チゲサイクリンのグルクロニド代謝産物を調製する方法。
【請求項8】
代謝産物がm/z762で質量スペクトルピークを示す請求項7記載の方法。
【請求項9】
a)ヒトにチゲサイクリンを投与する工程;
b)大便または血清のサンプルを得る工程;
c)前記サンプルを抽出して、チゲサイクリンのグルクロニド代謝産物のエピマーを得る工程を含む、チゲサイクリンのグルクロニド代謝産物のエピマーを調製する方法。
【請求項10】
グルクロニドのエピマーがm/z762で質量スペクトルピークを示す請求項7記載の方法。
【請求項11】
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

から選択される化合物。
【請求項12】
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

から選択される化合物。
【請求項13】
チゲサイクリンで処理されたヒトの血清、尿または大便から抽出することにより得ることができるチゲサイクリン代謝産物であって、m/z762で質量スペクトルピークを示すことを特徴とするチゲサイクリン代謝産物。
【請求項14】
チゲサイクリンで処理されたヒトの血清、尿または大便から抽出することにより得ることができるチゲサイクリン代謝産物であって、m/z762、586、569、513、211、154および86で質量スペクトルピークを示すことを特徴とするチゲサイクリン代謝産物。
【請求項15】
実質的に純粋な形態における請求項1〜6および11〜14のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項16】
請求項1〜6および11〜15のいずれか1つに記載の化合物ならびに医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項17】
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

から選択される化合物。
【請求項18】
【化13】

および
【化14】

から選択される請求項17記載の化合物。
【請求項19】
【化15】

および
【化16】

から選択される請求項17記載の化合物。
【請求項20】
【化17】

から選択される請求項17記載の化合物。
【請求項21】
【化18】

から選択される請求項17記載の化合物。
【請求項22】
【化19】

から選択される請求項17記載の化合物。
【請求項23】
【化20】

から選択される請求項17記載の化合物。
【請求項24】
これを必要とする対象に、治療上有効量の:
【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

から選択される少なくとも1つの化合物またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物を投与することを含む、少なくとも1種の細菌感染症を治療する方法。
【請求項25】
少なくとも1つの化合物がI、IIエピマー、IIIおよびIVエピマーから選択される請求項24記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つの細菌感染症が、複合腹腔内感染症(cIAI)、複合皮膚および皮膚組織感染症(cSSSI)、市中肺炎(CAP)、院内感染性肺炎(HAP)適応症、TetMおよびTetK耐性決定因子を有する細菌により引き起こされる細菌感染症、骨および関節感染症、カテーテル関連好中球減少症、産科および産婦人科感染症、ならびにVRE、ESBL、腸、および急速発育性マイコバクテリアにより引き起こされる細菌感染症から選択される、請求項24記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図21D】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図24D】
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【図25】
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【図26A】
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【図26B】
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【図27A】
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【図27B】
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【図28A】
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【図28B】
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【図29A】
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【図29B】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公表番号】特表2008−519038(P2008−519038A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540063(P2007−540063)
【出願日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/039944
【国際公開番号】WO2006/052717
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】