説明

チタニア粒子から構成される多孔質薄膜電極及びその改質法

【課題】 光電変換効率の高い色素増感太陽電池を与えるチタニア薄膜電極を提供する。
【解決手段】 導電性透明基板上に一次粒子径が100nm以下のチタニア粒子からなる薄膜を形成させて多孔質チタニア薄膜電極を作製し、該チタニア薄膜電極を希ガス、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ケイ素、りん、硫黄、塩素、遷移金属又はこれらの化合物から選ばれる少なくとも1種を含む気体の中で、高圧放電処理することでプラズマを発生させ、チタニア粒子内部におけるチタニアとはチタンと酸素の元素組成比が異なるか又はチタンと酸素以外の他元素の含有率が異なるチタニア粒子表面層を有する多孔質チタニア薄膜とすることからなる改質された多孔質チタニア薄膜電極材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感太陽電池の重要な構成部材であるチタニア粒子及びチタニア粒子を含む薄膜電極の表面処理法及び表面処理したチタニア粒子及びチタニア薄膜電極材料に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2003-197282号公報
【特許文献2】特開2001-205103号公報
【特許文献3】WO2001/010552号公報
【特許文献4】特開2000-140636号公報
【特許文献5】特開2002-355562号公報
【特許文献6】WO2000-10706号公報
【特許文献7】特開2001-212457号公報
【特許文献8】特開2002-353483号公報
【特許文献9】特開2003-308893号公報
【特許文献10】特開2003-308889号公報
【特許文献11】特開2003-308890号公報
【非特許文献1】電気化学会第71回講演要旨集、134頁、2004年.
【非特許文献2】電気化学会第71回講演要旨集、123頁、2004年.
【非特許文献3】2003年日本化学会西日本大会講演予稿集、368頁、2003年.
【0003】
色素増感太陽電池の構成部材であるチタニア粒子からなる薄膜電極の表面改質を検討した例として、化学的処理法がある。例えば、非特許文献1には次のような記載がある。チタニア薄膜電極を色素吸着させた後、ブロック分子の1wt%トルエン溶液に浸漬させた。ブロック分子として、酢酸、t-ブチルピリジン、アルミニウムsec-ブトキシドが用いられた。いずれのブロック分子もチタニア上の電子と電解液中のI2との再結合を防止し、開放端電圧を増加させた。酢酸は光電流を増大させ、他のブロック分子と異なった効果を示した。
【0004】
また、チタニア層表面に高バンドギャップ酸化物を被覆して多層化することが検討された。例えば、非特許文献2には、色素吸着後のチタニア半導体層にZnO、MgO等の高バンドギャップ半導体の前駆体である酢酸塩で処理して表面修飾を行うことにより、短絡電流は減少するものの開放端電圧は向上したことが示されている。
【0005】
特許文献1は、色素増感太陽電池の製造において、金属酸化物半導体の電気伝導性向上、金属酸化物半導体形成法の低温化などを目的として、共蒸着により炭素を含む金属酸化物半導体層を形成させているが、金属酸化物半導体層の表面に炭素微粒子を付着させているに過ぎない。
【0006】
非特許文献3は、チタニア電極の物理的処理法として、チタニア電極にアルゴンプラズマ処理後に窒素プラズマ処理を行った例を開示している。しかし、色素増感太陽電池の光電変換効率が1%以下で、粒子径も100nmを超えるチタニア粒子を用いており、また作製状態の悪いチタニア電極を用いており、プラズマ処理効果の発現については明確にできていない。
【0007】
また、特許文献2、特許文献3、特許文献4は、チタニアに窒素を含有させた例を開示している。窒素を含む雰囲気中でチタン含有金属をスパッタリングする方法、チタニアを窒素原子を含むガスのプラズマ中で処理する方法によりチタニア中に窒素を含有させている。いずれの場合もチタニアの光触媒特性の改善を目的としたものであり、色素増感太陽電池への応用はなされていない。
【0008】
特許文献5、特許文献6、特許文献7は、チタニアに水素プラズマ処理又は希ガス類元素プラズマ処理を行い、酸素欠陥を有する可視光応答型光触媒を作製した例を開示している。酸素欠陥を有するチタニアからなる電極を湿式太陽電池に応用しているが、電極作製過程では300℃で焼結を行っており、これより酸素欠陥が消失するので、湿式太陽電池の特性に及ぼす酸素欠陥効果は発現してない。
【0009】
特許文献8は、色素増感太陽電池において、基板上の透明導電層に金属アルコキシド又は金属酸化物ゲルを塗布した後、これをプラズマ処理することにより金属酸化物半導体層を形成させることを開示しているが、プラズマ処理により形成させた場合には金属酸化物半導体全体に不純物が含有した状態となり、目的の純粋な金属酸化物を作製することは極めて困難であり、かつ本発明のように金属酸化物表面層の改質までには至っていない。
【0010】
特許文献9は、表面に透明電極を有する基板上に、金属酸化物微粒子がバインダに分散させた塗布液を塗布し、乾燥して金属酸化物含有塗布層を形成し、次いで該金属酸化物含有塗布膜をプラズマ処理してバインダを除去することにより表面積の大きな金属酸化物半導体膜を形成させることを開示しているが、プラズマ処理により有機ポリマーであるバインダの完全除去は困難であり、またプラズマ処理によりプラズマ生成物が不純物として金属酸化物微粒子表面に付着するので、色素増感太陽電池の特性を低減させる可能性がある。
【0011】
特許文献10、特許文献11は、コロナ放電、プラズマ放電、紫外線、オゾンにより基板上の透明導電層の親水化処理を行い、チタニア水溶液の濡れ性を向上させているが、本発明のようにチタニア多孔膜にプラズマ処理したものではない。
【0012】
ところで、低コストで製造可能な太陽電池として、例えば、チタニアのような酸化物半導体にルテニウム金属錯体のような光増感色素を吸着させた材料を用いた色素増感太陽電池が提案されている。
【0013】
色素増感太陽電池は具体的には、例えばITOのような透明導電層を設けた透明ガラス板あるいは透明樹脂板のような透明基板の透明導電層側に、例えばルテニウム錯体からなる色素を表面に吸着したチタニアなどを半導体層として形成した負極と、正極となる白金などの金属層あるいは導電層を設けた基板との間に電解質の液を封入したものがある。色素増感太陽電池に光が照射されると、負極では光を吸収した色素の電子が励起し、励起した電子が半導体層に移動し、更に透明電極へと導かれ、正極では導電層からくる電子により電解質を還元する。還元された電解質は色素に電子を伝えることで酸化され、このサイクルで色素増感太陽電池が発電すると考えられている。
【0014】
現在、色素増感太陽電池はシリコン太陽電池に比して照射光エネルギに対する発電エネルギ効率が低く、その効率を上げることが実効的な色素増感太陽電池を製造する上での重要な課題となっている。色素増感太陽電池の効率は、それを構成する各要素の特性や、更にそれら要素の組み合わせによっても影響を受けると考えられており、さまざまな試みがなされている。
【0015】
そこで、色素増感太陽電池のアノードの改良に関する研究が多数行われている。例えば、色素増感太陽電池に用いる光入射側電極としては、透過率が高く、面積抵抗の低い透明導電性材料として、錫をドープした酸化インジウム(ITO)やフッ素をドープした酸化錫膜(FTO)等が使用されているが、これらの性能を更に向上させる研究が行われている。また、アノードの主構成成分であるチタニアを改質することが、上記のように多数研究されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
色素増感太陽電池の光電変換効率を増大させるためには、チタニア電極の特性向上が重要であり、チタニア電極への吸着色素量の増大、チタニア粒子表面からの逆電子過程の抑制、チタニア粒子内及び粒子間の電子拡散性の増大をもたらす必要がある。本発明は高効率色素増感太陽電池の構成部材である改良されたチタニア電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記問題点を鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は次の発明からなる。
1) 導電性透明基板上に一次粒子径が100nm以下のチタニア粒子からなる薄膜を形成させて多孔質チタニア薄膜電極を作製し、該チタニア薄膜電極を希ガス、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ケイ素、りん、硫黄、塩素、遷移金属又はこれらの化合物から選ばれる少なくとも1種を含む気体の中で、高圧放電処理することでプラズマを発生させ、チタニア粒子内部におけるチタニアとはチタンと酸素の元素組成比が異なるか又はチタンと酸素以外の他元素の含有率が異なるチタニア粒子表面層を有する多孔質チタニア薄膜とすることを特徴とする改質された多孔質チタニア薄膜電極材料の製造方法。
2) 一次粒子径が100nm以下のチタニア粒子を希ガス、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ケイ素、りん、硫黄、塩素、遷移金属又はこれらの化合物から選ばれる少なくとも1種を含む気体の中で、高圧放電処理することでプラズマを発生させ、チタニア粒子内部におけるチタニアとはチタンと酸素の元素組成比が異なるか又はチタンと酸素以外の他元素の含有率が異なる表面層を有するチタニア粒子とすることを特徴とする改質されたチタニア粒子の製造方法。
3) 一次粒子径が100nm以下のチタニア粒子又は導電性透明基板上に一次粒子径が100nm以下のチタニア粒子からなる薄膜を形成させて多孔質チタニア薄膜電極を、ヘリウム、ネオン、アルゴン、水素、窒素、酸素、水、メタン、エタン、メタノール、エタノール、アンモニア、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素、四フッ化炭素、パーフルオロエタン、四塩化炭素、テトラメトキシシラン、テトラメチルシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、燐酸、六フッ化硫黄及び四塩化チタンから選ばれる少なくとも1種の気体の中で、高圧放電処理することでプラズマを発生させてプラズマ処理することを特徴とするチタニア粒子又は多孔質チタニア薄膜電極材料の処理方法。
4) 高圧放電処理を減圧、常圧又は高圧下のガス気流下で行う3)記載の処理方法。
5) チタニア粒子又は多孔質チタニア薄膜電極が、色素増感太陽電池用である3)又は4)記載の処理方法。
6) 1)に記載のチタニア薄膜電極の製造方法で得られたチタニア薄膜電極材料をアノードに用いた色素増感太陽電池。
【0018】
高圧放電処理することでプラズマを発生させチタニア粒子又はチタニア薄膜電極材料を処理(プラズマ処理という)することによりチタニアの表面改質が行われる。これにより、次のような作用が生じる。
【0019】
a) チタニア表面の水酸基濃度を増大させることにより、色素吸着量を増大させる。また色素分子が吸着できない表面部位におけるブロック分子の吸着量も増大させることができ、逆電子過程を抑制すると共に、表面欠陥の消失による電子拡散性を増大させる。
b) チタニア表面層で、構成元素である酸素又はチタンを、炭素、窒素、フッ素、ケイ素、りん、硫黄、塩素を含む陰性元素又は陽性元素と置換させることにより、表面荷電状態を変化させ、逆電子過程を抑制させる。
c) チタニア表面層で、構成元素であるチタンを、遷移金属、炭素、ケイ素、りん、硫黄を含む陽性元素と置換させることにより、表面バンド構造を変化させ、色素からの電子注入を増大させる。
d) チタニア表面層に構造不規則性をもたらすことにより、チタニア粒子凝集体の焼成を伴う多孔性チタニア電極の作製時に、チタニア粒子界面のネッキング性を向上させ、チタニア粒子間の電子拡散性を増大させる。
【0020】
次に本発明を詳細に説明する。
本発明に使用されるチタニア粒子は公知のものが特に制限なく使用できるが、一次粒子径が100nm以下であり、多孔質である必要がある。また、また、チタニアは、湿式法、例えば、硫酸法で製造した二酸化チタン及び乾式法で製造したアナターゼ型チタニアであることができる。なお、多孔質チタニア粒子は細孔容積の比が20vol%以上であることがよく、色素のサイズ(直径)が1.5nm程度であるので少なくとも5nm程度以上の細孔径を有することがよい。チタニア粒子としては、100nm以下のチタニアの一次粒子は市販品があるのでそれを使用してもよく、数nm〜30nm程度の一次粒子を水熱法で調製してもよい。色素増感太陽電池の高効率化を実現するためには、チタニア電極のチタニア粒径は通常数nm〜数10nmが好適であり、100nmを超えるものは好ましくない。
【0021】
チタニア粒子は、酢酸溶液等に縣濁させて超音波ホモジナイザー処理し、更にポリエチレングリコールを加えて超音波ホモジナイザー処理するなどして、粒子同士が凝集を減らし、空隙サイズを小さくすることがよい。また、このようにして得られたチタニアペーストは、スクリーン印刷法で複数回塗りを行うなどして、チタニア膜厚を6〜25μm程度とすることがよい。
【0022】
チタニアペーストを塗布後、乾燥、焼結を行う。焼結により、チタニア粒子間の接合状態が向上し(ネッキング現象が顕著に起こり)、電子拡散性が向上することが期待される。また、300℃以上で焼結を行うことにより、酸素欠陥がほぼなくなると考えられる。したがって、焼結温度は300℃では低くすぎ、チタニア結晶がアナターゼからルチルに変化しない程度、かつ透明導電膜の電気抵抗が増大しない程度で、出きるだけ高い温度が望ましいといえ、具体的には350〜450℃程度の温度が好ましい。これ以上高くすると、透明導電膜の抵抗が増大し、太陽電池の効率は低下する可能性がある。
【0023】
なお、本発明は、結晶化したチタニア粒子そのものをプラズマ処理するものであり、金属アルコキシド又は金属酸化物ゲルを塗布した後、これをプラズマ処理することで、チタニア薄膜を形成する方法、すなわち金属アルコキシド又は金属酸化物ゲルをプラズマ処理することにより、例えば結晶化したチタニア粒子化する方法とは区別される。また、プラズマ処理等により透明導電層を親水化処理することにより、チタニア水溶液の濡れ性を改善する方法とは区別される。
【0024】
プラズマ処理するに当たっては、チタニア粒子を処理する場合は粒子状のまま処理してもよいが、均一に処理するためには基材に薄膜状に塗布し、それを処理することが好ましい。チタニア薄膜電極を処理する場合は、ITOやFTO等の透明電極にチタニア分散液を塗布し、処理後はそのまま色素を含浸させることによりチタニア薄膜電極とすることができるものとすることがよい。
【0025】
プラズマ処理は、希ガス、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ケイ素、りん、硫黄、塩素、遷移金属又はこれらの化合物から選ばれる少なくとも1種を含む気体の中で、高圧放電処理することでプラズマを発生させ、チタニア粒子内部におけるチタニアとはチタンと酸素の元素組成比が異なるか又はチタンと酸素以外の他元素の含有率が異なるように行う。
【0026】
好適な気体としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、水素、窒素、酸素、水、メタン、エタン、メタノール、エタノール、アンモニア、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素、四フッ化炭素、パーフルオロエタン、四塩化炭素、テトラメトキシシラン、テトラメチルシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、燐酸、六フッ化硫黄及び四塩化チタンから選ばれる少なくとも1種の気体がある。これらは混合ガスであってもよく、多段階で異なる気体を使用してもよい。好ましくはアルゴン又は窒素であり、両者を使用する場合は、アルゴン、窒素の順にプラズマ処理することが望ましい。そして、これらの気体を減圧、常圧又は高圧下で流しながら、高圧放電処理することでプラズマを発生させてプラズマ処理することが望ましい。
【0027】
プラズマ処理は、処理系内への大気の侵入が実質的にない状態で行うことがよい。水素プラズマ処理は、高圧放電により行う。放電出力は処理する酸化物半導体の量やプラズマの発生状態を考慮して適宜決定できる。気体の導入量は、減圧状態やプラズマの発生状態を考慮して適宜決定できる。放電時間は、チタニアの酸素欠陥量等を考慮して適宜決定する。例えば、放電出力は100〜500W、放電時間は1〜30分程度である。圧力は、常圧又は高圧であってもよいが、例えば1〜100Paであることができる。水素プラズマ又は希ガスプラズマを用いれば、チタニアへの酸素欠陥の導入を効率的に行うことができる。
【0028】
プラズマ処理は2段階で行うことが好ましく、前段のプラズマ処理(前処理)はアルゴンプラズマ処理のような不活性ガスプラズマ処理であることがよい。この前処理は色素増感太陽電池の高効率化に重要であり、前処理をしないと、逆に効率が低下する場合もある。この理由については明確ではないが、この前処理によりチタニア粒子表面に吸着している水を除去する他、後段の窒素ガスのような活性ガスプラズマ処理に何らかの影響を与えるためと考えられる。後段のプラズマ処理は窒素プラズマ処理が特に優れる。
【0029】
色素増感太陽電池の基本構成は、基板上に、透明導電膜と色素吸着チタニア層の順に積層された表面電極(アノード)と、基板上に導電層が設けられた対向電極を有し、両電極間に電解質を配した構成である。そして、表面電極の内面側には色素吸着チタニア層がある。色素吸着チタニア層は、チタニア粒子等の金属酸化物粒子とこの粒子間の間隙を埋めるように又は粒子の表面を覆うように存在する増感色素からなっている。なお、光は表面電極側から入る。
【0030】
色素増感太陽電池に用いる基板としては、透明な絶縁材料であれば特に限定されるものではなく、例えば通常のガラス板やプラスチック板などが挙げられ、更に基材は屈曲性のあるものでも良く、例えばPET樹脂などが挙げられるが、好ましくは約500℃を上限にチタニアを基材に焼付ける工程に耐え得る耐熱材料であることであり、透明なガラス板が挙げられる。
【0031】
次に、この基板1の表面に、基材の透明性を損なわないような透明導電膜、例えばITO、FTO、ATO、TOあるいはこれらを組み合わせたものでよく、更には透明性を損なわない厚みの金属層であってもよい。透明導電膜2全体としての厚みは0.2〜1μm、好ましくは0.3〜0.8μmの範囲である。
【0032】
次に、色素吸着チタニア層を設ける。通常はチタニア層を形成したのち、これに増感色素を吸着させるが、本発明ではチタニア層を形成したのち、上記プラズマ処理を行うか、チタニア層を構成するチタニア粒子を予め上記プラズマ処理したのち、透明導電膜上にチタニア層を形成する。チタニアとしては、アナターゼ型、ルチル型等のチタニアの他、水チタニア、含水チタニア類であってもよい。また、Nb、V又はTaの各元素の少なくとも1つをチタニアに対して30ppm〜5%の重量濃度(金属元素として)になるようドーピングしてもよい。
【0033】
このようなチタニアであれば用いることが可能であるが、平均粒子径が5〜100nm、好ましくは10〜50nmの範囲の微粒子であることがよい。このような粒子径である場合、平滑化処理した導電性膜と金属酸化物粒子の接触面積が大きくなり、それによって抵抗が減少するだけでなく、チタニアの表面改質も十分に行える。
【0034】
チタニアの膜を、透明電極上に形成する方法については、特に限定されるものではなく、例えばペースト化した金属酸化物をスピンコート、印刷、スプレーコートなどの各手法を用いても良い。また、製膜後にチタニア等の金属酸化物の焼結などを目的に焼成することも可能である。
【0035】
次に、上記のようにして得られた多孔質チタニア薄膜電極材料を構成するチタニアに色素を吸着させて色素吸着チタニアとする。前記のようにこの吸着では色素は、金属酸化物粒子の周囲に入り込むが、金属酸化物粒子が多孔質であればその内部にも入り込む。増感色素の種類については特に限定されるものではないが、シス-L2-ビス(2,2'-ビピリジル-4,4'-ジカルボキシレート)ルテニウム(II)錯体(ここで、Lはハロゲン、CN又はSCNである)などのルテニウム錯体であることが好ましい。
【0036】
色素吸着の方法についても特に限定されるものではないが、適当な溶媒に色素を溶解した色素溶液中に、多孔質チタニア薄膜電極材料を浸す、いわゆる含浸法などを挙げることができる。
【0037】
含浸法などにより色素吸着金属酸化物層を形成し、必要によりこれを加熱又は乾燥して、基板上に導電膜及び色素吸着チタニア層を有する表面電極とする。この表面電極はアノードとして作用する。もう一方の正極として作用する電極(対向電極)は、表面電極と対向して配置する。正極となる電極は、導電性の金属などでよく、また、例えば通常のガラス板やプラスチック板などの基板に金属膜や炭素膜等の導電膜を施したものでもよい。
【0038】
表面電極と対向電極の間には、電解質層を設ける。この電解質層の種類は、光励起され半導体への電子注入を果した後の色素を還元するための酸化還元種を含んでいれば特に限定されず、液状の電解質であってもよく、これに公知のゲル化剤(高分子又は低分子のゲル化剤)を添加して得られるゲル状の電解質であってもよい。
【0039】
例えば、溶液電解質に用いる電解質の例としては、ヨウ素とヨウ化物(LiI、NaI、KI、CsI、CaI2等の金属ヨウ化物、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物ヨウ素塩等)の組み合わせ、臭素と臭化物(LiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2 等の金属臭化物、テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイド等の4級アンモニウム化合物臭素塩等)の組み合わせ、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール、アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン、キノン等が挙げられる。電解質は混合して用いてもよい。
【0040】
電解液に溶媒を使用する場合は、粘度が低く高イオン移動度を示し、優れたイオン伝導性を発現できる化合物であることが望ましい。このような溶媒の例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、3-メチル-2-オキサゾリジノン等の複素環化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物、ジメチルスルホキシド、スルフォラン等の非プロトン極性物質、水等が挙げられる。これらの溶媒は混合して用いることもできる。
【0041】
また、電解質としては、高沸点を有する溶融塩電解質も適する。半導体電極が色素吸着チタニア層からなる場合は、溶融塩電解質と組み合わせることにより、特に優れた電池特性を発揮する。溶融塩電解質組成物は溶融塩を含む。溶融塩電解質組成物は常温で液体であるのが好ましい。主成分である溶融塩は室温において液状であるか又は低融点の電解質であり、その一般的な例としては「電気化学」、1997年、第65巻、第11号、p.923 等に記載のピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等が挙げられる。溶融塩は単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。また、LiI、NaI、KI、LiBF4、CF3COOLi、CF3COONa、LiSCN、NaSCN等のアルカリ金属塩を併用することもできる。通常、溶融塩電解質組成物はヨウ素を含有する。溶融塩電解質組成物の揮発性は低いことが好ましく、溶媒を含まないことが好ましい。溶融塩電解質組成物はゲル化して使用してもよい。
【0042】
本発明の太陽電池は、上記負極とヨウ化メチルプロピルイミダゾリウム、ヨウ素、tert-ブチルピリジン、ヨウ化リチウムからなる溶融塩電解質と組み合わせることにより、優れた電池特性を発揮する。また、t-ブチルピリジンや、2-ピコリン、2,6-ルチジン等の塩基性化合物を前述の溶液電解質、溶融塩電解質組成物に添加することも好ましい電解質層を与える。
【0043】
このような電解質層を設ける方法は特に限定されるものではなく、例えば両電極の間にフィルム状のスペーサを配置して隙間を形成し、その隙間に電解質を注入する方法でも良く、また、負極内面に電解質を塗布などした後に正極を適当な間隔をおいて積載する方法でも良い。電解質が流出しないよう、両極とその周囲を封止することが望ましいが、封止の方法や封止材の材質については特に限定するものではない。
【発明の効果】
【0044】
チタニア表面への高圧放電処理により表面水酸基濃度を増大させる。チタニア表面の水酸基濃度が増大することにより、カルボキシル基を有するRu色素を密に吸着させると共に、吸着色素分子間又は空間的に色素分子が入ることができない表面部位にカルボキシル基を有するブロック分子を密に吸着させることが可能となる。また、電子供与性のブロック分子を用いれば、表面欠陥による電子トラップが抑制され電子拡散性を増加させる。これより色素増感太陽電池の光電変換効率が増大する。更に、チタニア表面への高圧放電処理により、構成元素である酸素を陰性元素と置換させ、表面荷電状態を負にすることにより、色素増感太陽電池の電解液成分であるI3-の吸着を抑制することが可能となり、逆電子過程が抑制できる。チタニア表面への高圧放電処理により、構成元素であるチタンを陽性元素と置換させ、チタニアの伝導帯付近に新たに陽性元素のエネルギー準位が形成させることが可能となり、色素増感太陽電池の色素からの光励起電子の移動が容易となる。これより色素増感太陽電池の光電変換効率が増大する。チタニア表面への高圧放電処理により、チタニア表面層に構造不規則性をもたらすことが可能であり、チタニア薄膜電極の作製時の焼成過程でネッキングが容易に起こる。これよりチタニア粒子間の電子移動が容易となり、色素増感太陽電池の光電変換効率が増大する。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
参考例1
チタニア粒子(一次粒子径:29nm)を1M 酢酸溶液に30wt%で懸濁させ、600Wホモジナイザーで2分間超音波処理を行った。この溶液にポリエチレングリコール(平均分子量20,000)をチタニアに対して10wt%〜60wt%まで変化させて加え、600Wホモジナイザーで2分間超音波処理を行い溶解させてチタニアペーストを作製した。サイズ5×20mmに型取りしたスクリーン印刷機にてFTO透明電極上にチタニアペーストを塗布し、加熱炉により空気中450℃、30分で焼結を行った。この塗布-焼結を計3回繰り返してチタニア薄膜電極材料を作製した。
このチタニア薄膜電極材料を300μM Ru色素(N719)エタノール溶液に48時間浸漬した後、アセトニトリルで洗浄し、室温にて乾燥させた。スペーサーにハイミラン、対極に白金スパッタリング電極を用い、電解液に0.58M t-ブチルピリジン、0.5Mヨウ化リチウム、0.04Mヨウ素をアセトニトリルに溶解させたものを用いて電池セルを構成した。電池セルに光強度100mW/cm2の擬似太陽光を照射して、電池セルの端子間電圧-電流特性を測定した。
【0047】
表1に電池セルの特性に及ぼすポリエチレングリコール含有率依存性を示す。ポリエチレングリコール含有率40%では、短絡電流とフィルファクター(ff)が増大し、光電変換効率は最大値を示した。図1に光電変換効率のポリエチレングリコール含有率依存性を示す。チタニア粒子凝集状態はポリエチレングリコール含有率に依存することにより、光電変換効率はポリエチレングリコール含有率20〜25%、40%付近で極大値を示した。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例1
参考例1に準じて作製したチタニア薄膜電極材料A(ポリエチレングリコール含有率約40%として得たチタニア薄膜電極材料をいう。以下の実施例においても同じ)を用いて、ベルジャー型低温プラズマ装置によりアルゴンプラズマ処理を行った。プラズマ装置内をアルゴン雰囲気15Paに保ち、放電出力100W〜400W、放電時間5分にてアルゴンプラズマ処理を行って、改質されたプラズマ処理チタニア薄膜電極材料を得た。
このプラズマ処理チタニア薄膜電極材料を使用して、参考例1と同様にして電池セルを構成し、光強度100mW/cm2の擬似太陽光を照射して、電池セルの端子電圧―電流特性を測定した。
表2にアルゴンプラズマ処理前後の太陽電池セル特性の比較を示す。アルゴンプラズマ処理により短絡電流が増加して、光電変換効率が増大した。放電出力300Wのアルゴンプラズマ処理により、色素吸着量はチタニア電極厚さ1μm当たり6.50×10-9mol/μmから6.77×10-9mol/μmに増加した。XPSによるO1sスペクトル解析により、533eV付近にOH基に起因するショルダーがアルゴンプラズマ処理後に明瞭に出現したことより、チタニアの表面水酸基濃度が増大することを確認した。
【0050】
【表2】

【0051】
実施例2
チタニア薄膜電極材料Aを用いて、ベルジャー型低温プラズマ装置により酸素プラズマ処理を行った。プラズマ装置内を酸素雰囲気10Paに保ち、放電出力100W、放電時間1分にて酸素プラズマ処理を行って、改質されたプラズマ処理チタニア薄膜電極材料を得た。
このプラズマ処理チタニア薄膜電極材料を使用して、参考例1と同様にして電池セルを構成し、光強度100mW/cm2の擬似太陽光を照射して、電池セルの端子電圧―電流特性を測定した。酸素プラズマ処理により短絡電流が10%増加して、光電変換効率が増大した。
【0052】
実施例3
チタニア薄膜電極材料Aを用いて、ベルジャー型低温プラズマ装置により水素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行った。ベルジャー内に導入する混合ガス(水素/アルゴン)流量比は1/1とした。プラズマ装置内を水素混合ガス雰囲気10Paに保ち、放電出力100W、放電時間1分にて水素混合ガスプラズマ処理を行って改質されたプラズマ処理チタニア薄膜電極材料を得た。
このプラズマ処理チタニア薄膜電極材料を使用して、参考例1と同様にして電池セルを構成し、電池セルの端子電圧―電流特性を測定した。水素混合ガスプラズマ処理により短絡電流が12%増加して、光電変換効率が増大した。
【0053】
実施例4
チタニア薄膜電極材料Aを用いて、ベルジャー型低温プラズマ装置により水素/酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行った。ベルジャー内に導入する混合ガス(水素/酸素/アルゴン)流量比は1/1/2とした。プラズマ装置内を水素混合ガス雰囲気10Paに保ち、放電出力100W、放電時間1分にて水素混合ガスプラズマ処理を行って改質されたプラズマ処理チタニア薄膜電極材料を得た。
このプラズマ処理チタニア薄膜電極材料を使用して、参考例1と同様にして電池セルを構成し、電池セルの端子電圧―電流特性を測定した。水素混合ガスプラズマ処理により短絡電流が11%増加して、光電変換効率が増大した。
【0054】
実施例5
チタニア薄膜電極材料Aを用いて、ベルジャー型低温プラズマ装置によりアルゴンプラズマ処理を行った後、引き続き窒素プラズマ処理を行った。プラズマ装置内をアルゴン雰囲気15Paに保ち、放電出力300W、放電時間5分にてアルゴンプラズマ処理を行った後、プラズマ装置内を窒素で置換し、窒素雰囲気30Paに保ち、放電出力300W、放電時間5分にて窒素プラズマ処理を行って改質されたプラズマ処理チタニア薄膜電極材料を得た。
このプラズマ処理チタニア薄膜電極材料を使用して、参考例1と同様にして電池セルを構成し、電池セルの端子電圧―電流特性を測定した。
表3に連続プラズマ処理前後の電池セル特性の比較を示す。連続プラズマ処理により、短絡電流及びフィルファクター(ff)が増加して光電変換効率が増大した。
図2にアルゴン/窒素連続プラズマ処理チタニアのXPSによるN1sスペクトルを示す。399〜402eV付近にN-N結合、C-N結合、N-H結合、N-O結合、N=O結合に起因するピーク、また396eV付近にTi-N結合に起因するピークが出現しており、連続プラズマ処理により窒素ドーピングが起こっている。チタニア表面層の全含有窒素に対するTi-N結合窒素の分率は15〜20%であるが、Ti-N結合の窒素はN3-の状態となり、I3-イオン吸着の抑制と電子拡散性の増大が起こり、短絡電流およびフィルファクターが増大し、開放端電圧の保持をもたらしたことがわかる。
【0055】
【表3】

【0056】
実施例6
チタニア薄膜電極材料Aを用いて、ベルジャー型低温プラズマ装置によりアルゴンプラズマ処理を行った後、引き続きアンモニアプラズマ処理を行った。プラズマ装置内をアルゴン雰囲気15Paに保ち、放電出力300W、放電時間5分にてアルゴンプラズマ処理を行った後、プラズマ装置内を窒素で置換し、アンモニア雰囲気30Paに保ち、放電出力300W、放電時間5分にてアンモニアプラズマ処理を行って改質されたプラズマ処理チタニア薄膜電極材料を得た。
このプラズマ処理チタニア薄膜電極材料を使用して、参考例1と同様にして電池セルを構成し、電池セルの端子電圧―電流特性を測定した。連続プラズマ処理により、短絡電流及びフィルファクターがそれぞれ8%及び10%増加して光電変換効率が増大した。
【0057】
実施例7
チタニア薄膜電極材料Aを用いて、実施例6と同様にして、CO2プラズマ処理、CCl4プラズマ処理、SF6プラズマ処理、CF4プラズマ処理、テトラメチルシラン/O2(ガス流量比1/1)混合ガスプラズマ処理を行った。いずれのプラズマ処理チタニア薄膜電極材料から構成した電池セルも、短絡電流が3〜11%、フィルファクターが5〜12%増加して光電変換効率が増大した。
【0058】
実施例8
チタニア薄膜電極材料Aを用いて、ベルジャー型低温プラズマ装置によりアルゴンプラズマ処理を行った後、引き続き窒素プラズマ処理を行った。プラズマ装置内をアルゴン雰囲気15Paに保ち、放電出力200W、放電時間5分にてアルゴンプラズマ処理を行った後、プラズマ装置内を窒素で置換し、窒素雰囲気30Paに保ち、放電出力200W、放電時間5分にて窒素プラズマ処理を行った。
参考例1と同様にしてアルゴン/窒素連続プラズマ処理チタニア薄膜電極材料にRu色素(N719)を吸着させた後、参考例1と同様にして電池セルを作製した。ただし、電解液として、0.58M t-ブチルピリジン(TBP)、0.5Mヨウ化リチウム、0.04Mヨウ素をアセトニトリルに溶解させたもの以外に、0.5Mジメチルプロピルイミダゾリウムヨウ素(DMPImI)、0.58M t-ブチルピリジン(TBP)、0.5Mヨウ化リチウム、0.04Mヨウ素をアセトニトリルに溶解させたものを用いた。
表4に連続プラズマ処理前後の電池セル特性の比較を示す。連続プラズマ処理により、電解液へのt-ブチルピリジン(TBP)及びジメチルプロピルイミダゾリウムヨウ素(DMPImI)の添加効果が大きく現れ、逆電子過程を抑制させて開放端電圧の上昇とフィルファクター(ff)の増加が起こり、光電変換効率が増大した。
【0059】
【表4】

【0060】

実施例9
チタニア粒子を充填したプラズマ反応器がプラズマ処理中に回転し、粒子表面を均質にプラズマ処理することが可能な粒子用低温プラズマ装置を用いて、アルゴンプラズマ処理を行った後、引き続き窒素プラズマ処理を行った。プラズマ反応器内をアルゴン雰囲気15Paに保ち、放電出力200W、放電時間45分にてアルゴンプラズマ処理を行った後、プラズマ装置内を窒素で置換し、窒素雰囲気30Paに保ち、放電出力200W、放電時間10分〜50分にて窒素プラズマ処理を行った。プラズマ処理中は反応器を70rpmにて回転させた。
このプラズマ処理チタニア粒子を使用して参考例1と同様にしてチタニア薄膜電極材料を作製し、電池セルを構成した。表5に電池セルの特性の窒素プラズマ処理時間依存性を示す。窒素プラズマ処理時間に伴って、短絡電流が増加し、開放端電圧は減少する傾向を示したが、光電変換効率は増加する傾向を示した。プラズマ処理チタニア粒子を用いることにより、チタニア粒子のネッキング性が向上して粒子間の電子拡散性が増大し、光電変換効率が増大したことがわかる。図3、図4にそれぞれチタニア薄膜電極の作製前後のXPSのN1sスペクトルを示す。電極作製前にチタニア表面にドーピングされていた窒素原子が電極作製後に消失しており、焼成過程でチタニア表面層の結晶化が促進されることがわかる。この結晶化に伴ってチタニア粒子間のネッキング性が向上する。
【0061】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】光電変換効率のポリエチレングリコール含有率依存性を示す。
【図2】連続プラズマ処理チタニアのXPSによるN1sスペクトルを示す。
【図3】チタニア薄膜電極の作製前のXPSのN1sスペクトルを示す。
【図4】チタニア薄膜電極の作製後のXPSのN1sスペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性透明基板上に一次粒子径が100nm以下のチタニア粒子からなる薄膜を形成させて多孔質チタニア薄膜電極を作製し、該チタニア薄膜電極を希ガス、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ケイ素、りん、硫黄、塩素、遷移金属又はこれらの化合物から選ばれる少なくとも1種を含む気体の中で、高圧放電処理することでプラズマを発生させ、チタニア粒子内部におけるチタニアとはチタンと酸素の元素組成比が異なるか又はチタンと酸素以外の他元素の含有率が異なるチタニア粒子表面層を有する多孔質チタニア薄膜とすることを特徴とする改質された多孔質チタニア薄膜電極材料の製造方法。
【請求項2】
一次粒子径が100nm以下のチタニア粒子を希ガス、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ケイ素、りん、硫黄、塩素、遷移金属又はこれらの化合物から選ばれる少なくとも1種を含む気体の中で、高圧放電処理することでプラズマを発生させ、チタニア粒子内部におけるチタニアとはチタンと酸素の元素組成比が異なるか又はチタンと酸素以外の他元素の含有率が異なる表面層を有するチタニア粒子とすることを特徴とする改質されたチタニア粒子の製造方法。
【請求項3】
一次粒子径が100nm以下のチタニア粒子又は導電性透明基板上に一次粒子径が100nm以下のチタニア粒子からなる薄膜を形成させて多孔質チタニア薄膜電極を、ヘリウム、ネオン、アルゴン、水素、窒素、酸素、水、メタン、エタン、メタノール、エタノール、アンモニア、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素、四フッ化炭素、パーフルオロエタン、四塩化炭素、テトラメトキシシラン、テトラメチルシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、燐酸、六フッ化硫黄及び四塩化チタンから選ばれる少なくとも1種の気体の中で、高圧放電処理することでプラズマを発生させてプラズマ処理することを特徴とするチタニア粒子又は多孔質チタニア薄膜電極材料の処理方法。
【請求項4】
高圧放電処理を減圧、常圧又は高圧下のガス気流下で行う請求項3記載の処理方法。
【請求項5】
チタニア粒子又は多孔質チタニア薄膜電極が、色素増感太陽電池用である請求項3又は4記載の処理方法。
【請求項6】
請求項1に記載のチタニア薄膜電極材料の製造方法で得られたチタニア薄膜電極材料をアノードに用いた色素増感太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−310134(P2006−310134A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132272(P2005−132272)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名 2004年日本化学会西日本大会 主催者名 日本化学会 中国四国支部・同九州支部 開催日 平成16年10月31日
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】