説明

チタンシートの製造方法

【課題】高温領域で使用される、片面にアルミニウム箔を圧延接合したチタンシートの製造方法を提供する。
【解決手段】高温耐熱性である成形素子を得るために、シート状のチタン2は、少なくとも片面がアルミニウム箔4で圧延接合される。このアルミニウム箔の厚みdは、シート状のチタン2の厚みと比較して薄い。圧延接合したシート状のチタン6は熱処理手段によって、チタンとアルミニウムとが、隣り合う領域でアルミニウム−チタン合金に変化される。形成されたシート状のチタン6の外側のチタン−アルミニウム合金層が、酸素と接触することによってチタン−アルミニウム混合酸化物層へと変化して、前記層が腐食に対して良好な耐性を有するシート状のチタン6を与える。好ましくは。成形形素子10は、圧延接合したシート状のチタン6が容易に成形できるように、合金形成のための熱処理以前に成形される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野及び背景技術】
【0001】
一般的に単一金属のシートは、あらゆる点において、特別な運用目的に対して、最適特性(強度、耐食性、変形能、軽量)を備えていないので、複合金属が開発され、それは種々の材料を圧延接合したシートからなる。特に、圧延接合したシート及びその製造方法が既知であり(米国特許出願第3,711,937−A号)、基板としてのアルミニウムシートとチタンのクラッド箔とからなる。圧延接合することによって互いに2種の部材を接合するために、約500℃で予備熱処理を施した後に、これらが圧延スタンドに送られ、それらは互いにしっかりと一つに接合され、厚みの50%以下の圧下率を伴う。境界層でチタン−アルミニウム接合の品質を改良するために、その後、熱後処理が約600℃以下の温度で実施される。この複合シートの特徴的な性質は、アルミニウムシートがその外側層を純チタン薄膜で覆われることである。このような複合材料は、航空機の製造、熱交換器及び電気化学装置のような種々の適用に適しているといえる。しかしながら、これらの材料は高温度の適用には適切でなく、例えば600℃以上の温度が一般的である内燃機関の排気ガス装置内における部材では、純アルミニウムが一般的な操作温度に耐えられず、且つ純チタンが充分な耐食性を与えない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の目的は、約800℃までの温度範囲で使用することができ、十分な耐食性を与えることができ、且つ成形部材に形作ることができるという、シートとその製造方法を開発することである。
【0003】
本発明の目的は、高温領域での作業用途のためのパネルまたはストリップの形態のチタンシートを使用することで解決され、チタンシートの厚みに比べて薄いアルミニウム箔がチタンシートの少なくとも片面を圧延接合する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このチタンシートは、次の製造工程によって製造される。
【0005】
a)チタンシートの少なくとも片面にアルミニウム箔(4)が圧延接合される工程、
b)隣り合う範囲のアルミニウムとチタンとを、圧延接合したチタンシートの熱処理によって、チタン−アルミニウム合金へと変化させる工程、及び
c)チタンシートの外側のチタン−アルミニウム合金層が、酸素と接触することによってチタン−アルミニウム混合酸化物層に変化する工程。
【発明の効果】
【0006】
チタンシートが、承認されたような作業に使用されるときだけ、チタン−アルミニウム合金とチタン−アルミニウム混合酸化物とから形成された層は、工作物からの直接のチタンよりも、実質的に優れた耐食性をチタンに与える。このチタンシートは、合金を形成した後、及びチタン−アルミニウム混合酸化物層を形成した後に、成形することが困難であり、この欠点は、この熱処理以前に、チタンシートを成形部材に形成する場合には回避することができる。例えば、内燃機関の排気ガス装置内に充満する熱によって、成形部材の作業使用状態でこの熱処理が実施できるならば特に利点となる。
【0007】
製造技術の点から正当化されるチタンシートの熱処理によって、充分な耐食性を達成するために、アルミニウム箔はチタンシートに比較して非常に薄くする必要がある。良好な実験値は、用いたアルミニウム箔と用いたチタンシートの厚み比率が10の累乗の範囲内で達成され、実際にチタンシートは1〜2.5mmであり、且つアルミニウム箔は0.01〜0.2mmである。アルミニウム箔の厚みの圧下に伴い圧延接合後には、アルミニウム層は0.02〜0.06mmの間にする必要がある。この薄いアルミニウム層は、いずれの問題も無くそれらの全厚みを合金化することができ、混合酸化物の形成後、内燃機関の排気ガス装置内のこれらの一般的な状態のような極端な作業条件のもとでさえも、チタンシートは、最適な永久耐食性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、本発明に従う方法を示す模式図を参照して次に詳細に説明する。
【0009】
0.01〜0.2mmの厚みを有するアルミニウム箔2はコイル1から引き込まれ、1〜2.5mmの厚みを有するストリップのアルミシート4はコイル3から引き込まれ、且つ周囲温度のロールスタンド5に送られる。上下のアルミニウム箔2とストリップ状のチタンシート4との圧延圧力と摩擦の結果、温度上昇が、アルミニウム箔2をストリップ状のチタンシート4に接合するために十分であるロール間隙に、生じる。接合に不利に作用するいずれの酸化物も、アルミニウム箔2とストリップ状のチタンシート4との摩擦によって十分に合金化することができる。ロールスタンド5を通過後、アルミニウムでクラッドしたチタンストリップ6は剪断機7に送られ、このストリップはパネル8の長さに切断される。このパネル8は積み重ねることができ、或いはさらに次の工程9に供給され、成形部材10へと切断及び形成のための装置に送られる。この時期まで熱処理の不足のために、ストリップ状のチタン4とアルミニウム箔2との間に合金の形成は起こらないので、アルミニウムでクラッドしたチタンストリップ6は、複合シートとして容易に変形することができる。最終的に、成形部材10は、合金状態を可能にする熱処理11に送られ、合金状態は温度及び時間制御によって調整される。一面に合金層を有する成形部材10は、その後酸素雰囲気にされされ、所望のチタン−アルミニウム混合酸化物層が耐食性層として形成される。
【0010】
アルミニウム箔は、チタンシート4の1面だけでなく、典型的な実施態様のように、両面に接合することができる。この場合、さらにアルミニウム箔のコイルが備えられる。
【0011】
本発明は、工作物を分割するのに特に良好である。アルミニウムでクラッドしたチタンシートの製造者は、これをパネル形態として供給するだけでなく、半製品及びその後それらからの成形部材10を製造する処理機へのコイルとして供給する。この処理機は、最終製品段階としての合金形成のために成形部材10の熱処理が実施できるだけでなく、その後実際に使用する際に、合金形成に充分な操作温度に曝されるときに、この熱処理が成される。
【0012】
総括すれば、本発明の結果として次の利点が達成される。すなわち、例えばチタンを材料として使用した結果の軽量化と高強度、チタン−アルミニウム混合酸化物層の結果の良好な耐食性、チタン−アルミニウム混合酸化物層の合金形成前のチタンシートの容易な変形能、及び高温度(600℃以上)での強度である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明に従う方法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0014】
1・・・コイル;
2・・・アルミニウム箔;
3・・・コイル;
4・・・チタンシート;
5・・・ロールスタンド;
6・・・チタンストリップ;
7・・・剪断機;
8・・・パネル;
9・・・次の工程;
10・・・成形部材;
11・・・熱処理;

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温領域での作業用途のためのパネルまたはストリップの形態のチタンシートであって、
チタンシート(2)の厚みに比べて薄いアルミニウム箔(4)が少なくとも片面に圧延接合されたチタンシート。
【請求項2】
請求項1にしたがうチタンシート(6)から作られた成形部材(10)。
【請求項3】
燃焼機関の排気ガス装置の部材としての成形部材(10)の使用。
【請求項4】
a)チタンシート(2)の少なくとも片面にアルミニウム箔(4)が圧延接合される工程、
b)隣り合う領域のアルミニウムとチタンとが、圧延接合したチタンシートの熱処理によって、チタン−アルミニウム合金へと変化する工程、及び
c)チタンシート(6)の外側のチタン−アルミニウム合金層が、酸素と接触することによってチタン−アルミニウム混合酸化物層に変化する工程、
を特徴とする請求項1または2に記載の圧延接合したチタンシート(6)の製造方法。
【請求項5】
使用するアルミニウム箔(4)と使用するチタンシート(2)との厚み比(d/D)が、10の累乗の範囲内にあることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
使用するチタンシート(2)の厚み(D)は、1〜2.5mmの間にあり、且つ使用するアルミニウムの箔(4)の厚み(d)は、0.1〜0.2mmの間にあることを特徴とする請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
圧延接合した後のアルミニウム層の厚みが、002〜0.06mmであることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項2記載の成形部材(10)を製造するため、合金を形成するための前記熱処理以前に、圧延接合したチタンシート(6)を成形部材(10)に形成することを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
承認されたような成形部材(10)の作業使用の際に、合金を形成するための前記熱処理が行なわれることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−207248(P2008−207248A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54085(P2008−54085)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【分割の表示】特願2002−559240(P2002−559240)の分割
【原出願日】平成14年1月24日(2002.1.24)
【出願人】(503267777)ティッセンクルップ ティタニウム ゲー エム ベー ハー (1)
【氏名又は名称原語表記】Thyssenkrupp Titanium GmbH
【Fターム(参考)】