説明

チタン酸アルミニウムセラミック製ウォールフロー型フィルタの製造に用いられる施栓材料

【課題】チタン酸アルミニウム系セラミック製ウォールフロー型フィルタの形成に適した、より安定で良好に結合した長期シールを提供できるチタン酸アルミニウム施栓混合物の提供。
【解決手段】チタン酸アルミニウムセラミック製ウォールフロー型フィルタのための施栓混合物であって、アルミナ源、シリカ源、およびチタニア源を含有するチタン酸アルミニウム前駆体反応性バッチ組成物、焼結助剤、有機結合剤、および液体ビヒクルを有してなる施栓混合物から形成された端部栓により構成されたセラミック製ウォールフロー型フィルタを1350℃から1500℃の範囲にある最高焼成温度で、より好ましくは1375℃から1425℃の範囲にある最高焼成温度で施栓材料を焼成することにより、ハニカム構造体の選択的に施栓されたチャンネル内に焼成栓を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質セラミック微粒子フィルタの製造に関し、より詳しくは、多孔質セラミックハニカムの選択されたチャンネルを封止して、それからウォールフロー型セラミックフィルタを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック製ウォールフロー型フィルタには、ディーゼルまたは他の燃焼エンジン排気流から微粒子汚染物を除去するための拡大しつつある用途が見出されている。多孔質セラミックから形成されたチャンネルを有するハニカム構造体からそのようなフィルタを製造するための数多くの異なる手法が知られている。最も広く行き渡った手法は、流体流がチャンネルを直接通るのを遮断し、その流体流を、フィルタから出る前に、ハニカムの多孔質チャンネル壁に押し通すことのできる封止材料の硬化栓を、そのような構造体の交互のチャンネルの端部に配置することにある。この手法が特許文献1に示されており、この文献には、そのような栓を形成するために、コージエライト形成(MgO−Al23−SiO2)セラミック粉末ブレンドおよび熱硬化性または熱可塑性結合剤系を含む封止材料の使用が記載されている。
【0003】
その製造の歴史のほとんどで、ディーゼル微粒子フィルタは、基礎となるセラミック材料としてコージエライト(アルミノケイ酸マグネシウム)を含んできた。しかしながら、コージエライトは、通常動作中にフィルタの未制御の再生が行われたときに、潜在的な欠点を有する。すなわち、その材料は、典型的に、約1435℃で溶融し、比較的低い熱容量を有する。極端な場合には、これにより、フィルタの母材(matrix)が溶融し、フィルタが破損することがある。このために、チタン酸アルミニウムが、コージエライトと比較して、比較的高い溶融温度および比較的高い熱容量のために、セラミック製ウォールフロー型フィルタを形成するための見込みのある代わりのセラミック材料として提案されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6809139号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、チタン酸アルミニウム材料は一般的にコージエライトには不適合であるので、チタン酸アルミニウムに適合する施栓材料が当該技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、チタン酸アルミニウム系セラミック製ウォールフロー型フィルタの形成に適したチタン酸アルミニウム施栓混合物が提供される。この混合物は、ウォールフロー型エンジン排ガスフィルタの湿った高応力環境において良好な物理的および化学的安定性を示す栓を提供できる。それゆえ、これらの混合物から形成された栓は、そのようなウォールフロー型フィルタ材料により安定で良好に結合した長期シールを提供する。
【0007】
本発明により提供された施栓材料は、一般に、アルミナ源、シリカ源、およびチタニア源を含むチタン酸アルミニウム前駆体反応性バッチ組成物、焼結助剤、有機結合剤、および液体ビヒクルを有してなる。
【0008】
本発明の別の実施の形態において、フィルタ体の選択されたチャンネルに焼成栓を含む多孔質セラミック製ウォールフロー型フィルタ体であって、栓がここに記載された施栓混合物から形成され、ウォールフロー型フィルタ材料と物理的および化学的に良好に適合し、フィルタ体のチャンネル壁と耐久性の永久シールを形成している、フィルタ体が提供される。
【0009】
さらに別の実施の形態において、本発明は、多孔質セラミック壁により境界が形成された複数のチャンネルを備えたセラミック製ハニカム構造体を有する多孔質セラミック製ウォールフロー型フィルタを製造する方法を提供する。この方法は、概して、平行な壁により境界が形成された複数のチャンネルを有するハニカム構造体を提供し、チタン酸アルミニウム前駆体反応性バッチ組成物、焼結助剤、有機結合剤、および液体ビヒクルを有してなる施栓混合物で少なくとも1つの所定のチャンネルを選択的に施栓して、選択的に施栓されたハニカム構造体を形成し、施栓混合物を焼成し、少なくとも1つの選択的に施栓されたチャンネル内に焼成栓を形成するのに効果的な条件下で、選択的に施栓されたハニカム構造体を焼成する各工程を有してなる。
【0010】
本発明の追加の実施の形態は、一部は、詳細な説明および後の特許請求の範囲に述べられており、一部は、詳細な説明から導き出されるか、または本発明の実施により分かる。先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、単なる例示と説明であり、開示された本発明を制限するものではないことが理解されよう。
【0011】
この明細書に含まれ、その一部を構成する添付の図面は、本発明の特定の態様を図示しており、その説明と共に、制限を意図せずに、本発明の原理を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の例示の第2焼成の施栓混合物の熱膨張係数および例示の焼成チタン酸アルミニウム製ハニカム母材組成物の熱膨張係数を比較したグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の以下の説明は、現在知られた材料の実施の形態において本発明の教示を可能にするものとして提供される。このために、当業者には、本発明の有益な結果を得ながら、ここに記載された本発明の様々な実施の形態に多くの変更を行えることが認識され理解されるであろう。本発明の所望の利点のいくつかは、本発明の特徴のいくつかを選択し、他の特徴を利用せずに得ることができるのが明らかである。したがって、当業者には、本発明への多くの改変および適合が、可能であり、ある状況においては望ましくさえあり得、本発明の一部であることが理解されよう。それゆえ、以下の説明は、本発明の原理の説明として提供され、それを限定するものではない。
【0014】
範囲は、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値まで、としてここに表すことができる。そのような範囲が表現されたときに、別の実施の形態は、1つの特定の値から、および/または他の特定の値まで、を含む。同様に、値が、「約」という先行詞の使用により近似として表される場合、特定の値は別の実施の形態を形成することが理解されよう。各々の範囲の端点は、他の端点に関してと、他の端点とは独立しての両方において有意である。
【0015】
ここに用いたように、特別に別記しない限り、成分の「質量%」、「質量パーセント」または「質量のパーセント」は、その成分が含まれる物品または組成の総質量に基づく。
【0016】
先に手短に要約したように、本発明は、チタン酸アルミニウムセラミック製ウォールフロー型フィルタの形成に使用するのに適した施栓混合物を提供する。ある実施の形態において、施栓混合物は、チタン酸アルミニウム系セラミック栓を提供するのに効果的な条件下で熱処理できる、チタン酸アルミニウム系セラミック形成混合物を含む。この実施の形態によれば、施栓混合物は、アルミナ源、シリカ源、およびチタニア源を含有する、特定の無機粉末原料から構成されたチタン酸アルミニウム前駆体反応性バッチ組成物を含む。
【0017】
アルミナ源は、他の原料の不在下で十分に高温に加熱されたときに、実質的に純粋な酸化アルミニウムを生成する粉末であり、その例として、アルファアルミナ、ガンマアルミナやローアルミナなどの遷移アルミナ、水和アルミナ、ギブサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、およびその混合物が挙げられる。アルミナ源のメジアン粒径は、例えば、45μmまでのメジアン粒径を含み、5μmより大きいことが好ましい。
【0018】
シリカ源としては、石英、溶融シリカやゾルゲルシリカなどの非結晶質シリカ、シリコーン樹脂、ゼオライト、珪藻土シリカ、およびカオリンが挙げられる。ある実施の形態において、シリカ源は、石英および溶融シリカからなる群より選択されることが好ましい。
【0019】
チタニア源は、以下に限られないが、ルチルおよびアナタース型チタニアからなる群より選択されることが好ましい。
【0020】
これらの無機粉末原料は、酸化物の質量パーセント基準で表して、約8から約15質量パーセントのSiO2、約45から約53質量パーセントのAl23、および約27から約33質量パーセントのTiO2を含む焼結相チタン酸アルミニウムセラミック組成物を提供するのに適した量で選択される。例示の無機チタン酸アルミニウム前駆体粉末バッチ組成物は、約10%の石英、約47%のアルミナ、約30%のチタニア、および約13%の追加の無機添加物を含んで差し支えない。チタン酸アルミニウムを形成するのに適した追加の例示の非限定的な無機バッチ成分混合物としては、米国特許第4483944号、同第4855265号、同第5290739号、同第6620751号、同第6942713号、同第6849181号、米国特許出願公開第2004/0020846号、同第2004/0092381号の各明細書、および国際公開第2006/015240号、同第2005/046840号、および同第2004/011386号の各パンフレットに開示されたものが挙げられる。
【0021】
次いで、先に述べた無機粉末原料を、焼結助剤、一時的有機結合剤、および液体ビヒクルと一緒にブレンドする。焼結助剤を添加すると、焼成後のセラミック栓構造体の強度を増強することができる。焼結助剤は、約5から15%のレベルで混合物中に含まれることが好ましい。適切な焼結助剤は、一般に、ストロンチウム、バリウム、鉄、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、アルミニウム、ランタン、イットリウム、チタン、ビスマス、またはタングステンなどの1種類以上の金属の酸化物源を含み得る。ある実施の形態において、焼結助剤は、酸化ストロンチウム源、酸化カルシウム源および酸化鉄源の混合物を含むことが好ましい。別の実施の形態において、焼結助剤は少なくとも1種類の希土類金属を含むことが好ましい。さらにまた、焼結助剤は、粉末形態および/または液体形態で施栓混合物に加えられることが理解されよう。
【0022】
これらの施栓混合物に流動性またはペースト状粘稠度を提供するための好ましい液体ビヒクルは水であるが、先に述べたように、適切な一時的結合剤に関して溶媒作用を示す他の液体ビヒクルを使用しても差し支えない。このために、セラミックバッチ混合物における他の成分との適合性および最適な取扱適性を与えるために、液体ビヒクル成分の量は様々であって差し支えない。一般に、液体ビヒクルの含有量は、通常、可塑化組成物の15質量%から60質量%の範囲の量で超過添加物として存在することが好ましく、可塑化組成物の20質量%から50質量%の範囲で存在することがより好ましい。
【0023】
好ましい水ビヒクルを含む施栓混合物に使用するのに適した一時的結合剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース誘導体、および/またはそれらの任意の組合せなどの水溶性セルロースエーテル結合剤が挙げられる。特に好ましい例としては、メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。一般に、有機結合剤は、チタン酸アルミニウム前駆体反応性バッチ組成物の0.1質量パーセントから5.0質量パーセントの範囲の量で超過添加として施栓混合物中に存在し、チタン酸アルミニウム前駆体反応性バッチ組成物の0.5質量パーセントから2.0質量パーセントの範囲の量で存在することがより好ましい。
【0024】
施栓材料は、必要に応じて、可塑剤、滑剤、界面活性剤、および/または細孔形成剤などの、追加の加工助剤を少なくとも1種類含んでも差し支えない。施栓混合物の調製に使用するための例示の可塑剤はグリセリンである。例示の滑剤は、炭化水素油またはトールオイルであって差し支えない。得られる施栓材料の気孔率およびメジアン粒径を最適にするために、細孔形成剤を必要に応じて使用してもよい。非限定的な例示の細孔形成剤としては、グラファイト、デンプン、ポリエチレンビーズ、および/または小麦粉が挙げられる。
【0025】
さらにまた、本発明の施栓混合物は、必要に応じて、この施栓材料をそれに用いることのできる一般的なウォールフロー型フィルタ材料の膨張係数にほどよく適合した膨張係数を有する予備反応無機耐火性充填剤を1種類以上含んでも差し支えない。例示の予備反応無機耐火性充填剤としては、炭化ケイ素、窒化ケイ素、コージエライト、チタン酸アルミニウム、アルミン酸カルシウム、ベータユークリプタイト、およびベータスポジュメンの粉末、並びに例えば、アルミノケイ酸塩粘土の処理により形成された耐火性アルミノケイ酸塩繊維が挙げられる。随意的な予備反応無機耐火性充填剤は、焼成プロセス中の施栓ペーストの収縮および/またはレオロジーを最適化または制御するために、施栓混合物に利用できる。
【0026】
ここに記載された施栓混合物は、チタン酸アルミニウム前駆体反応性バッチ組成物を反応させ、チタン酸アルミニウム施栓材料を形成するのに効果的な条件下で焼成できる。この効果的な焼成条件は、一般に、1350℃から1500℃の範囲にある最高焼成温度で、より好ましくは1375℃から1425℃の範囲にある最高焼成温度で施栓材料を焼成する工程を含む。
【0027】
先に要約したように、本発明の施栓混合物は、多孔質セラミック壁により境界が形成された複数のチャンネルを有する、端部が施栓された多孔質セラミック製ウォールフロー型フィルタを提供するために使用することができ、ここで、選択されたチャンネルの各々は、ここに記載された施栓混合物から形成された端部栓を備えており、チャンネル壁に封止されている。特に、これらの施栓混合物は、端部が施栓されたチタン酸アルミニウムハニカム体を提供するのによく適している。
【0028】
したがって、本発明は、多孔質セラミック壁により境界が形成された複数のチャンネルを備えたセラミック製ハニカム構造体を有する多孔質セラミック製ウォールフロー型フィルタを製造する方法をさらに提供し、ここで、選択されたチャンネルの各々は、チャンネル壁に封止された栓を備えている。この方法は、平行な壁により境界が形成された複数のチャンネルを有するハニカム構造体を提供し、上述した施栓混合物で少なくとも1つの所定のチャンネルを選択的に施栓して、選択的に施栓されたハニカム構造体を形成する各工程を有してなる。次いで、選択的に施栓されたハニカム構造体を、少なくとも1つの選択的に施栓されたチャンネル内に焼成栓を形成するのに効果的な条件下で焼成することができる。
【0029】
ある実施の形態において、前記方法は、「一回焼成」プロセスを含んで差し支えなく、それによって、提供されたハニカム構造体は、乾燥された可塑化チタン酸アルミニウム前駆体バッチ組成物から構成される素地体(green body)すなわち未焼成ハニカム体であって差し支えなく、よって、施栓混合物を焼成するのに効果的な条件は、素地体の乾燥されたチタン酸アルミニウムセラミック前駆体組成物を、チタン酸アルミニウムセラミック組成物に転化させるのに効果的でもある。このために、未焼成ハニカム素地体は、ハニカム素地体の無機組成物と実質的に等しい施栓混合物により選択的に施栓することができる。それゆえ、施栓材料は、同じ原料源または素地ハニカムの乾燥および焼成収縮と少なくとも実質的に一致するように選択された代わりの原料源いずれかを含んで差し支えない。
【0030】
上述したように、施栓混合物および素地体を同時に一回焼成するのに効果的な条件は、1350℃から1500℃の範囲にある最高焼成温度で、より好ましくは1375℃から1425℃の範囲にある最高焼成温度で、選択的に施栓されたハニカム構造体を焼成する工程を含んで差し支えない。焼成後、完成した栓は、ハニカム体のものと同様の熱的、化学的、および/または機械的性質を示すべきである。あるいは、弾性率の低い栓などの、栓と母材との間のさらに望ましい性質差をもたらす栓と母材との間の異なる原料の選択を行って差し支えない。
【実施例】
【0031】
例示の1つの焼成施栓混合物の配合が、以下の表1に示されている。
【表1】

【0032】
表1の例示の施栓混合物を調製するために、バッチの乾燥成分を一緒にドライブレンドして、緊密な混合物を提供することができる。次いで、液体添加物を加え、次いで、その組合せを混合して、おおよそピーナツバターまたはケーキの糖衣の粘稠度のペーストを形成することができる。次いで、このペーストを素地ハニカム母材の選択された開放セル中に、いくつかの従来より公知の施栓プロセス方法の内の1つにより、所望の施栓パターンで、かつ所望の深さまで、押し込むことができる。次いで、施栓されたハニカム構造体およびペーストを乾燥させると同時に、1350℃から1500℃の範囲にあるピーク温度まで焼成することができる。
【0033】
代わりの実施の形態において、前記方法は、それによって、提供されたハニカム構造体が既に焼成されたチタン酸アルミニウムセラミックハニカム構造体である「第2焼成」プロセスを含んで差し支えない。この実施の形態によれば、施栓混合物を焼成するのに効果的な条件は、施栓混合物をチタン酸アルミニウムセラミック組成物に転化するのに効果的である。さらにまた、この実施の形態によれば、ハニカムと類似の物理的性質を有する栓が得られるが、ハニカムの性質を変えずに焼成できる施栓混合物でハニカム体の1つ以上のチャンネルを選択的に施栓することが望ましい。例えば、この実施の形態による施栓混合物は、栓の焼成に必要なピーク焼成温度を、焼成セラミックハニカム体のピーク焼成温度よりも低い温度まで低下させるように選択することができる。さらにまた、施栓混合物は、乾燥および/または焼成中に生じる収縮のレベルを最小にするように選択することもできる。
【0034】
重ねて、施栓混合物および焼成ハニカム体を焼成するのに効果的な条件は、1350℃から1500℃の範囲にある最高焼成温度で、より好ましくは1375℃から1425℃の範囲にある最高焼成温度で、選択的に施栓されたハニカム構造体を焼成する工程を含んで差し支えない。焼成後、完成した栓は、ハニカム体のものと類似の熱的、化学的、および/または機械的性質を示すべきである。あるいは、栓の性質は異なってもよく、例えば、低いかまたは高い熱容量、低い弾性率、低いかまたは高い気孔率を有していてもよい。ある実施の形態において、施栓混合物をチタン酸アルミニウムセラミック組成物に転化するのに効果的な焼成条件が、ハニカム母材を焼成するのに必要な最高温度よりも低い最高温度で焼成する工程を含むことが望ましい。
【0035】
例示の「第2焼成」チタン酸アルミニウム施栓混合物が、以下の表2に示されいる。この例示の組成物は、ペーストのピーク焼成温度を1405〜1430℃に低下させるために、ストロンチウムをカルシウムで置き換える工程を含み、その温度は、カルシウム成分の不在下でハニカム体のピーク焼成温度よりも約50〜70℃低い。これにより、例示の施栓混合物を、焼成ハニカムの性質を変えずに焼成することが可能になる。
【表2】

【0036】
表2の例示の施栓混合物を調製するために、バッチの乾燥成分を一緒にドライブレンドして、緊密な混合物を提供しても差し支えない。次いで、水を加え、次いで、その組合せを混合して、おおよそピーナツバターまたはケーキの糖衣の粘稠度のペーストを形成することができる。次いで、このペーストを焼成ハニカムの選択された開放セル中に、いくつかの従来より公知の施栓プロセス方法の内の1つにより、所望の施栓パターンで、かつ所望の深さまで、押し込むことができる。次いで、施栓されたハニカム構造体およびペーストを乾燥させ、1時間以上の保持または均熱時間に亘りピーク温度で焼成することができる。
【0037】
第2の例示の「第2焼成」チタン酸アルミニウム施栓混合物が、以下の表3に示されている。この例示の組成物は、重ねて、ペーストのピーク焼成温度を低くするために、ストロンチウムがカルシウムで置き換えられている。
【表3】

【0038】
表3の例示の施栓混合物を調製するために、バッチの乾燥成分を一緒にドライブレンドして、緊密な混合物を提供した。次いで、15%のバレイショデンプン、20%の水、および0.5%のメトセルの超過添加物を加えた。次いで、この組合せを混合して、おおよそピーナツバターまたはケーキの糖衣の粘稠度のペーストを形成した。次いで、このペーストを焼成ハニカム母材の選択された開放セル中に、いくつかの従来より公知の施栓プロセス方法の内の1つにより、所望の施栓パターンで、かつ所望の深さまで、押し込むことができる。この実施例において、施栓材料のサンプルを、4時間に亘り約1390℃で乾燥させ、焼成した。比較の母材材料を8時間に亘り約1450℃で焼成した。次いで、施栓材料および母材材料の熱膨張をテストし、比較して、1390℃で焼成した施栓材料と1450℃で焼成した母材との間の適合を決定した。熱膨張研究の結果が図1に反映されており、ここで、施栓材料および母材材料の熱膨張は、平均でたった2×10-7/℃しか違わないことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質セラミック壁により境界が形成された複数のチャンネルを備えたセラミック製ハニカム構造体を有する多孔質セラミック製ウォールフロー型フィルタを製造する方法であって、
平行な壁により境界が形成された複数のチャンネルを有する第1のハニカム構造体を提供する工程であって、該ハニカム構造体が、第1のチタン酸アルミニウムバッチ組成物から形成され、1350℃から1500℃の範囲にあるピーク焼成温度で焼成される工程;
前記焼成されたハニカム構造体の前記第1のチタン酸アルミニウムバッチ組成物とは異なるチタン酸アルミニウムバッチ組成物、焼結助剤、有機結合剤、および液体ビヒクルを有してなる施栓混合物で少なくとも1つの所定のチャンネルを選択的に施栓して、選択的に施栓されたハニカム構造体を形成する工程;および
前記施栓混合物を焼成し、前記少なくとも1つの選択的に施栓されたチャンネル内に焼成栓を形成するのに効果的な条件下で、前記選択的に施栓されたハニカム構造体を焼成する工程であって、前記施栓混合物を焼成するのに効果的な条件が、前記ピーク焼成温度より少なくとも約50℃低い工程;
を有してなる方法。
【請求項2】
前記焼成されたハニカム構造体が、チタン酸アルミニウムセラミックハニカム構造体であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記施栓混合物を焼成するのに効果的な条件が、該施栓混合物をチタン酸アルミニウムセラミック組成物に転化するのに効果的であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記施栓混合物を焼成するのに効果的な条件が、1350℃から1500℃の範囲にある最大焼成温度で前記選択的に施栓されたハニカム構造体を焼成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記施栓混合物を焼成するのに効果的な条件が、1375℃から1425℃の範囲にある最大焼成温度で前記選択的に施栓されたハニカム構造体を焼成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−254923(P2012−254923A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−152141(P2012−152141)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【分割の表示】特願2009−520759(P2009−520759)の分割
【原出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】