説明

チボロンを製造するための方法

【課題】17β-ヒドロキシ-7α-メチル-19-ノル-17α-プレグヌ-5(10)-エン-20-イン-3-オン(チボロン)および該化合物の合成に有用な中間体の製造方法を提供する。
【解決手段】(i)式(5)の化合物(R=アルキル、アリール、シクロアルキル,アラルキル、アルカリール)の7位の炭素をメチル化して、式(5a)の化合物を形成する工程、および(ii)式(5a)の化合物のC=C二重結合を異性化する工程を含む、式(6)の化合物の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、17β-ヒドロキシ-7α-メチル-19-ノル-17-α-プレグヌ-5(10)-エン-20-イン-3-オン(チボロン)の合成およびチボロンの合成に有用な中間体ならびにそれらの精製に係る。チボロンは、以下の構造式:
【0002】
【化1】

【0003】
を有する。
【背景技術】
【0004】
チボロンは、弱いエストロゲン活性、アンドロゲン活性およびプロゲストゲン活性を有する合成19-ノルアンドロステロンであり、更年期症候群の処置に有用である。
チボロンの合成法は、当分野にて開示されている。例えば、US3,340,279は、7α-メチル-エストラジオール-3-メチルエステルから出発する方法を開示している:
【0005】
【化2】

【0006】
US3,340,279は、出発物質7α-メチル-エストラジオール-3-メチルエーテルを得る方法を開示していない。この従来技術方法にて、7α-メチルエストラジオール-3-メチルエーテルは、液体アンモニア中リチウムを使用するBirch還元法によって還元されて、3-メトキシエストラ-2,5-(10)ジエンを生成する。生成物の17-ヒドロキシ基は、酸化されて、対応するケトンを生成する。このケトンのカリウムアセチリドとの反応、続く、メタノール中シュウ酸水溶液による加水分解は、生成物チボロンを生成する。
【0007】
上記方法には幾つかの欠点がある。開示された方法に従えば、2回のクロマトグラフィー処理が要求される。特に、酸化工程から単離される生成物は、シリカゲル上でのクロマトグラフィーによる精製を必要とする。生成物チボロンを精製するためには、第2のクロマトグラフィー工程が要求される。クロマトグラフィーによる精製処理が要求されることは、生成物の比較的少量のみが一時に精製され、大量の廃棄物が溶剤およびシリカの形で発生するので、大規模操作では望ましくない。このことは、安全な処理の観点についての配慮が必要とされることを意味する。
【0008】
上記方法に伴うさらなる欠点は、エチニレーション反応がカリウムアセチリドの使用を必要とし、カリウムアセチリドは、カリウム金属とアセチレンとから形成されることである。カリウム金属は、非常に反応性であり、カリウムアセチリドは、極めて腐食性である。したがって、大規模操作におけるこれらの試薬の使用は、望ましくない。
【0009】
Van Vliet et alは、Recl.Trav.Chim.Pays-Bas,105,111-115(1986)にて、17β,19-ジヒドロキシ-アンドロスタ-4,6-ジエン-3-オン17,19-ジアセテートから出発するチボロンの合成法を開示している:
【0010】
【化3】

【0011】
かくして、上記方法にて、出発物質は、3β-ヒドロキシアンドロスト-5-エン-17-オン-3-アセテートから多工程で製造され、メチル-マグネシウムヨーダイドとの-40℃における銅触媒共役付加反応にかけられて、7α-および7β-メチルアンドロスト-4-エン-3-オンのエピマー混合物を形成する。
【0012】
生ずるエピマー混合物は、鹸化にかけると、7α:7β比が約4:1となるアルコールの対応するエピマー混合物を生成する。エステルとアルコールとの両方のエピマー混合物は、クロマトグラフィーによる分離が困難であり、反復結晶化によるアルコールの7α-異性体を単離する試みは、低収率という結果に終わった。
【0013】
次の工程にて、アルコールのエピマー混合物は、クロム酸で酸化すると、対応するアルデヒドのエピマー混合物を生成する。所望されるアルデヒドの7α-異性体は、反応混合物から単離することができ、わずかに約30%の収率が達成されるだけである。アルデヒドの7β-異性体は、他方、7α-異性体から分離することができず、4:1の比で7α:7βの混合物のみを生成した。分離した7α-アルデヒドは、次に、液体アンモニア中マグネシウムメトキシドで処理することによって還元反応にかけると、ジオンを形成する。ジオンをメタノールおよびマロン酸で処理すると、3,3-ジメチルアセタール化合物を形成する。17-炭素のエチニレーション、続く、シュウ酸水溶液を使用する保護基の除去は、チボロンを生成する。
【0014】
上記考察から、この方法は、それをチボロンの大規模製造に不適当とする幾つかの欠点を有することが理解されるであろう。van Vliet et alの方法における主要な問題は、メチル化工程に起因し、この工程は、約4:1の比で7αおよび7βエピマーの混合物を生ずる。これらのエピマーを分離することが極めて困難であるという事実に加えて、望ましくない7βエピマーが、2つの逐次反応工程にて有意な量存在する。このことは、7α-配置を有するチボロンを合成する際にこの方法を用いると、試薬が7β-エピマーに変換されて不必要に消費されることを意味する。
【0015】
さらに、7α-アルデヒドがその7βエピマーから分離可能であることが報告されているが、この分離は、所望される7α-アルデヒドの有意な部分の損失を払ってのみ達成可能であるようであり、わずか30%の収率が報告されている。さらに、分離は、カラムクロマトグラフィー法を必要とする。
【0016】
この方法に伴うさらなる欠点は、酸化工程が三酸化クロムの使用を必要とすることである。大規模製造法におけるクロム塩の使用は、クロム含有廃棄物の安全な処理を考慮しなければならないので、望ましくない。これは、操作全体のコストを高める。
【0017】
かくして、上記考察したvan Vliet法は、チボロンの大規模製造に不適当である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従来技術に鑑み、チボロンの製造に有用な中間体を製造するための優れた方法およびチボロンを製造するための方法を提供することが望ましい。さらに、その方法が容易に入手可能な出発物質を使用することが望ましい。その方法が中間体および生成物チボロンの容易な単離を可能とし、複雑な精製法の必要性を減少させることもまた望ましい。特に、可能であれば、その方法がカラムクロマトグラフィーによる中間体およびチボロン生成物の精製の必要性を回避することは好ましい。その方法はチボロン(例えば、数十キログラムの量)の大規模製造が可能となるようにスケールアップできることもまた望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の1つの態様に従えば、式(6):
【0020】
【化4】

【0021】
[式中、Rは、C1-C20アルキル、C6-C10アリール、C7-C20アラルキル、C-CシクロアルキルおよびC7-C20シクロアルキルを表す。]
で表される化合物を製造するための方法であって、該方法が、
(i) 式(5):
【0022】
【化5】

【0023】
で表される化合物の7-位の炭素原子をメチル化して、式(5a):
【0024】
【化6】

【0025】
で表される化合物を形成する工程;および
(ii) 式(5a)で表される化合物のC=C二重結合を異性化する工程;
を含む方法が提供される。
【0026】
好ましくは、Rは、C1-C10アルキルを表す。なおさらに好ましくは、Rは、C1-C6アルキル(とりわけ、メチル)を表す。
式(6)で表される化合物は、チボロンの製造におけるキー中間体である。メチル化反応は、7-位の炭素におけるアルキルグリニヤールメチル化試薬の共役付加を含む。この方法のための好ましいメチル化剤は、メチルマグネシウムハライド、特に、メチルマグネシウムクロライドである。メチルマグネシウムハライドは、種々の溶剤、例えば、テトラヒドロフラン(THF)およびジエチルエーテル中の溶液(例えば、10〜30%の溶液)として容易に入手可能である。特に、メチルマグネシウムクロライドは、テトラヒドロフラン溶液として容易に入手可能である。
【0027】
典型的には、メチル化剤は、化合物(5)という出発物質に対して1.2〜1.8当量加えられる。メチル化剤の特に好ましい量は、1.5〜1.7当量の範囲内である。約1.5当量のメチルマグネシウムハライド(特にクロライド)を使用する時、良好な結果が得られた。
【0028】
メチル化反応は、触媒として銅(II)塩の存在下で実施される。適した銅(II)塩の例としては、ハロゲン化銅(II)[例えば、塩化第2銅(II)]、および、酢酸銅(II)が挙げられる。酢酸銅(II)が特に好ましい。
【0029】
銅(II)触媒の量は、化合物(5)という出発物質に対して、0.05〜0.5当量、好ましくは、0.1〜0.3当量、なおさらに好ましくは、0.15〜0.25当量で変化させることができる。
本発明に従えば、メチル化反応は、好ましくは、非プロトン性溶剤の存在下で実施される。適した溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジクロロメタンおよびジメチルホルムアミドが挙げられる。テトラヒドロフランが特に好ましい溶剤である。
【0030】
メチル化反応は、好ましくは、低温で実施される。これは、7β-位の攻撃を最小化する利点を有する。低温で反応を実施するさらなる利点は、これが、出発物質内のその他の官能基への攻撃、特に、起こり得るジエノンシステム上での競合的な1,4-および1,2攻撃により形成される副生物を最少量にすることができる点である。
【0031】
メチル化反応は、0℃未満の温度、さらに好ましくは、-80℃〜0℃の温度範囲、なおさらに好ましくは、-60℃〜-15℃の温度範囲で実施される。-50℃〜-30℃の温度範囲、特に、-45℃〜-35℃の温度範囲で、特に良好な結果が得られた。
【0032】
メチル化法の典型的な反応時間は、1.5時間〜7時間までである。反応時間3〜5時間で、良好な結果が達成しうることが見出された。しかし、出発物質のほぼ完全な変換が達成されるまで[例えば、出発物質(5)の残りが、0.8%未満、好ましくは、0.5%未満、なおさらに好ましくは、0.1%以下となるまで]、反応を継続するのがよい。
【0033】
式(5a)で表される化合物は、異性化工程(ii)の前に単離することができる。しかし、工程(i)および工程(ii)をワンポットで実施するのが便利であり、このことは、異性化工程(ii)を実施する前に、式(5a)で表される化合物が単離および精製されないことを意味する。
【0034】
これは、反応混合物に直接鉱酸水溶液(例えば、塩化水素酸)を添加することによって達成することができる。異性化工程(ii)は、20℃より下の、好ましくは、15℃より下の、なおさらに好ましくは、10℃より下の温度範囲で実施するのが好ましい。良好な結果は、0℃〜10℃の温度範囲で達成することができる。
【0035】
生ずる生成物化合物(6)は、次に、有機溶剤、特に、アルカン溶剤、例えば、ヘキサンまたはヘプタンを使用して反応混合物から抽出することができる。
好都合なことに、生成物(6)は、ヘプタンおよびt-ブチルメチルエーテルの混合物から結晶化により簡単に精製することができ、かくして、クロマトグラフィー処理の必要性を回避することができる。あるいは、溶液は、精製することなく、次の工程に直接使用することができる。
【0036】
本メチル化法を使用することにより、98:2という高い7α/7βエピマー選択比が達成され得ることは予想だにしえない発見であった。これは、Van VlietらによりRecl. Trav.Chim.Pays-Bas,105,111-115(1986)にて、化合物(5)の10-CH2OAc誘導体の反応で、わずか4:1の7α/7β選択比しか達成できない手段を大幅に改善するものである。また、本方法は、所望の1,6-攻撃対所望でない1,2-攻撃の高い選択性のために、有利である。場合によっては、1,6-攻撃について95%より大なる選択性が認められた。
【0037】
本方法によって達成しうる高い7α/7β選択比のみならず、本発明に従う方法は、それが所望の7α生成物から所望でない7β異性体のクロマトグラフィーによる分離の必要性を回避するので特に有利であることに注目されよう。いずれのクロマトグラフィーを使用する精製法をも回避すること、および、式(6)で表される化合物の高い7α/7β選択性を考慮すると、高い収率を達成することができる。本発明の方法を実施する時、70〜80%の間およびそれ以上の収率が達成されることが見出された。したがって、本方法は、大規模の商業的製造運転に対する適合可能性がある。
【0038】
式(5a):
【0039】
【化7】

【0040】
[式中、Rは、C1-C20アルキル、C6-C10アリール、C7-C20アラルキル、C3-C8シクロアルキルおよびC7-C20アルカリールを表す。]
で表される化合物は、新規であり、本発明のさらなる実施態様を表す。
【0041】
好ましくは、式(5a)で表される化合物にて、Rは、C1-C6アルキルまたはC6-C10アリールを表し、C1-C3アルキル(特にメチル)が特に好ましい。
上記方法についての出発物質、すなわち、化合物(5)は、9-ノルテストステロン(ナンドロロン)から、都合よく、
(i)
【0042】
【化8】

【0043】
で表されるナンドロロン(1)の3-ケトおよび17-ヒドロキシ基を保護して、式(3):
【0044】
【化9】

【0045】
[式中、RおよびR1は、同一または異なっていてもよく、各々が、C1-C20アルキル、C6-C10アリール、C3-C8シクロアルキル、C7-C20アラルキルまたはC7-C20アルカリールを表す。]
で表される化合物を生成させる工程;
(ii) ハロゲン化剤を使用して式(3)で表される化合物の6-位の炭素原子をハロゲン化して、式(4):
【0046】
【化10】

【0047】
[式中、Xは、F、Cl、BrまたはIを表す。]
で表される化合物を形成する工程;および
(iii) 式(4)で表される化合物を脱ハロゲン化水素する工程;
を含む方法にて製造することができる。
【0048】
ナンドロロンは、同化活性を有する市販入手可能なステロイドである。
ナンドロロンは、
(a) ナンドロロン(1)を化合物(RCO)2Oと反応させて、式(2):
【0049】
【化11】

【0050】
で表される化合物を生成させる工程;および
(b) 式(2)で表される化合物をR1-CO-X(式中、Xは、F、Cl、BrまたはIである)と反応させて、式(3)で表される化合物を生成させる工程;
を含む方法により、式(3)で表される化合物に変換することができる。
【0051】
あるいは、工程(a)と工程(b)とは、逆であってもよく、すなわち、ナンドロロンを最初にR1-CO-Xと反応させ、続いて、かくして形成された生成物を(RCO)2Oと接触させてもよい。好ましい方法にては、ナンドロロンは、R1-CO-Xおよび(RCO)2Oを含有する混合物と接触される。
【0052】
第2の好ましい方法にては、ナンドロロン(1)は、式:
【0053】
【化12】

【0054】
で表される化合物との、酸触媒、例えば、パラ-トルエンスルホン酸の存在下での反応によって、式(3)で表されるジエステル化合物に変換することができる。上記式の基Rは、C1-C20アルキル、C6-C10アリール、C7-C20アラルキル、C3-C8シクロアルキルまたはC7-C20アルカリールを表すのがよい。好ましくは、Rは、C1-C6アルキル、特に、メチルを表す。特に好ましい方法にて、イソプロペニルアセテートは、市販入手可能であり、アセチル化剤として使用される。
【0055】
エステル化剤は、通常、過剰に使用され、典型的には、ナンドロロン出発材料に対して、2.5〜4当量使用される。好ましくは、2.8〜3.5当量のエステル化剤が使用される。
パラ-トルエンスルホン酸は、触媒量使用される。典型的には、0.01〜0.1当量の範囲の量を使用するのがよく、0.03〜0.07当量が特に好ましい。
【0056】
反応は、典型的には、還流温度で実施される。反応は、好ましくは、適当な溶剤、例えば、アルキルアセテート中で実施され、アルキル基は、C1-C20直鎖または分枝状であるのがよく、C1-C6アルキルが好ましい。特に好ましい方法では、イソプロピルアセテートが使用される。かくして、好ましい方法に従えば、ナンドロロン(1)、パラ-トルエンスルホン酸および溶剤(例えば、イソプロピルアセテート)が組み合わせられる。混合物は、還流温度まで加熱してよく、その直後に、エステル化剤(例えば、イソプロペニルアセテート)を滴下する。
【0057】
都合よく、ジエステル生成物(3)は、固体として反応混合物から単離することができ、固体は、容易に濾去することができる。
好ましい方法を使用することにより、80%より高い収率が極普通に達成される。有益なことに、この好ましい方法にて、ジエステル生成物(3)が反応混合物から高純度(典型的には、95%より大であり、99%より大の純度も達成可能である)で単離されうることが見出された。また、エステル化試薬(例えば、イソプロペニルアセテート)も腐食されない。
【0058】
式(4)で表せる6-ハロ化合物は、ハロゲン化剤(例えば、臭素またはN-ハロコハク酸イミド)と反応させることによってジエステル(3)から製造することができる。工程(ii)における好ましいハロゲン化剤は、N-ハロコハク酸イミド(例えば、N-フルオロ-コハク酸イミド、N-クロロコハク酸イミド、N-ブロモ-コハク酸イミドおよびN-ヨードコハク酸イミド、これらの後者の2つが好ましい)。この反応についての良好な結果は、特に、ハロゲン化剤としてN-ブロモコハク酸イミド(NBS)を使用して達成される。
【0059】
ハロゲン化剤は、所望されるジエステル出発物質(3)に対してわずかにモル過剰量で使用される。典型的には、ハロゲン化剤の1.01〜1.1当量使用される。
典型的な方法にて、式(3)で表されるジエステルは、10℃以下の温度範囲、好ましくは、0℃以下の温度範囲でハロゲン化剤と接触させられる。特に好ましい反応温度は、-20℃〜-5℃の範囲であり、優れた結果は、-10℃〜-5℃で得られる。混合物は、次に、好ましくは、加熱手段を適用することなく、周囲温度(例えば、15℃〜30℃、好ましくは、18℃〜28℃)に温める。反応は、非プロトン溶剤、例えば、ジメチルホルムアミド中で実施するのが適している。
【0060】
次に、式(4)で表される6-ハロ化合物(4)を反応混合物から単離してから、脱ハロゲン化水素工程(iii)を実施する。しかし、好ましい方法にて、工程(ii)および工程(iii)は、式(4)で表される6-ハロ化合物を単離することなくワンポットで逐次実施される。
【0061】
脱ハロゲン化水素工程にて、式(4)で表される化合物は、[これは、工程(3)からの反応混合物として存在してもよく、または、これは、単離形であってもよく、適当な溶剤、例えば、ジメチルホルムアミドに溶解されていてもよい]、炭酸リチウムおよびハロゲン化リチウム(例えば、塩化リチウム、臭化リチウムおよびヨウ化リチウムであるが、臭化リチウムが特に好ましい)。
【0062】
脱ハロゲン化水素反応は、50〜120℃の間の温度、好ましくは、60〜100℃の間の温度で実施してよく、そして反応を完結させる。70〜90℃の温度範囲が、とりわけ、好ましい。
有益なことに、生成物は、反応混合物から固体として単離することができ、これは、濾過により容易に収集することができる。化合物(5)を含有する反応生成物は、アルコール性溶液(例えば、イソプロパノール)から水を使用して沈殿させることによって精製することができる。
【0063】
本発明に従えば、チボロン、すなわち、化合物(6)の合成におけるキー中間体は、チボロンの合成におけるもう1つの有用な中間体、すなわち、式(7)で表される芳香族3-エーテル誘導体に変換することができる。かくして、本発明のさらなる態様にて、式(7):
【0064】
【化13】

【0065】
で表される化合物を製造するための方法であって、
(i) 式(6):
【0066】
【化14】

【0067】
で表される化合物を、アルコールR2-OH(式中、R2は、C1-C10アルキル、C6-C10アリール、C3-C6シクロアルキル、C7-C20アラルキルまたはC7-C20アルカリールを表す)の存在下で、銅塩(II)と反応させて、式(7)で表される化合物を含む生成物混合物を形成させる工程;および、場合によっては、
(ii) 生成物混合物を塩基と接触させる工程;
を含む方法を提供する。
【0068】
R2が、C1-C10(好ましくは、C1-C6)アルキルを表す。メチルが特に好ましい。
この方法にて、ステロイド骨格のA環が芳香族化され、17-位の保護基が除去され、3-ケト基が保護される。
【0069】
興味深いことに、3-ケト官能基のエーテル化は、アルコキシル化反応によって生じ、ここで、メタノールからのCH3O-が、アルコキシル化剤として作用すると考えられる。有益なことに、3-ケト官能基のとりわけエーテル化についての上記方法は、従来のアルキル化剤、例えば、発癌性のジメチルサルフェートの使用を必要としない。
【0070】
上記方法にて、好ましい銅(II)塩は、ハロゲン化銅(II)である[例えば、塩化銅(II)、臭化銅(II)およびヨウ化銅(II)であり、臭化銅(II)が特に好ましい]。銅(II)塩は、典型的には、出発化合物(6)に関して1.5〜3(好ましくは、2〜2.5)モル当量使用される。
【0071】
この方法にて、R2は、C1-C4アルキル基を表す。特に好ましい方法にて、使用されるアルコールは、メタノールである(すなわち、R2は、メチルを表す)。
アルコールR2-OHは、典型的には、それが反応溶剤としての機能を更に果たすように、過剰量使用される。さらなる溶剤成分、例えば、トルエン、キシレンまたはアセトニトリルもまた使用することができる。
【0072】
反応は、10℃〜40℃の範囲の温度で実施される。15℃〜30℃の範囲の反応温度を使用すると、良好な結果が得られる。
上記考察した条件下での式(6)で表される化合物の臭化銅(II)との反応[工程(i)]は、副生物(7):
【0073】
【化15】

【0074】
の形成を導く。
生成物(7)は、式(7)で表される所望化合物の17-エステル誘導体であり、典型的には、反応混合物中に比較的少量存在する。
【0075】
しかし、式(7)で表される化合物は、鹸化反応によって所望される化合物(7)に容易に変換することができる。かくして、式(7)で表される化合物は、(例えば、結晶化により)反応混合物から分離することができ、いずれかの適当な塩基(例えば、水酸化ナトリウムまたはカリウム)と接触させられる。あるいは、さらに好ましくは、式(7)で表される化合物は、反応混合物から単離する必要がない。かくして、鹸化反応は、化合物(7)と(7)との混合物について実施することができる。
【0076】
典型的な方法にて、芳香族化反応から形成されるいずれの副生物(7)も、芳香族化工程後(ワークアップ後)直接所望される生成物(7)に変換することができる。かくして、芳香族化反応の完了後、化合物(7)および(7)を含有する生成物混合物は、有機溶剤(例えば、トルエン)に抽出される。化合物(7)および(7)を含有する有機抽出物は、塩基水溶液(好ましくは、水酸化カリウム)で抽出される。アルコール溶剤もまた加えられる。化合物(7)中のエステルを鹸化するために、次に、2相混合物は、還流温度に加熱することができる。
【0077】
このワンポット法、すなわち、化合物(7)の鹸化を(7)および(7)の分離なしで実施する方法が選択される方法である。
生成物(7)は、有益には、鹸化工程から結晶化により単離することができる(例えば、トルエン-アルコール混合物から。イソプロパノールが、好ましい結晶化補助溶剤である。)
鹸化工程を含む化合物(6)の化合物(7)への変換について78%を上回る収率が、本方法に従い、達成できる。
【0078】
本発明のもう1つの態様にて、式(9):
【0079】
【化16】

【0080】
で表される化合物を製造するための方法であって、該方法が、式(8):
【0081】
【化17】

【0082】
で表される化合物を、アルミニウムアルコキシドと、プロトン受容体化合物、例えば、アルデヒドまたはケトンの存在下で反応させる工程を含む方法が提供される。ベンズアルデヒドが、この方法についての特に適したアルデヒドである。シクロヘキサノンもまた使用することができる。
【0083】
式(9)で表される化合物は、さらに、チボロンの合成における中間体である。
本発明に従う上記方法にて、出発物質(8)(これは、以降に記載する方法によって合成することができる)の17-ヒドロキシル基が酸化され、対応する17-ケト誘導体(9)が生じる。
【0084】
化合物(8)の化合物(9)への変換に使用することのできる適当なアルミニウムアルコキシド試薬としては、式:Al(O-Ra)3[式中、少なくとも1つのRa基は、分枝(例えば、C3-C20、好ましくは、C3-C10)アルキル基(すなわち、アルキル基は、例えば、1つ以上の第2級および/または第3級アルキル基を含む)、シクロアルキル(例えば、C3-C7)基またはアリール(例えば、C6-C10)基を含む。]を有するものが挙げられる。例えば、アルミニウムアルコキシド試薬としては、
Al(O-Ra)3
[式中、各Raは、同一または異なっていてもよく、各々が、分枝C3-C10(好ましくはC3-C6)アルキル基、C6-C10アリール基、C3-C7シクロアルキル基、C7-C20アラルキル基またはC7-C20アルカリールを表す。]
を有するものが挙げられる。各Raが同一または異なり、各々が、C3-C6アルキル基を表す上記式を有するアルミニウムアルコキシド試薬が好ましい。好ましくは、各Raは、同一である。例えば、Raは、iso-プロピル、t-ブチルおよびsec-ブチル(1-メチルプロピル)から選択することができる。
【0085】
特に好ましいアルミニウムアルコキシドとしては、Al(Ot-Bu)3およびAl(Oi-Pr)3が挙げられる。Al(Ot-Bu)3が特に好ましい試薬である。
アルミニウムアルコキシド試薬は、出発物質(8)に関して、0.05〜0.5当量、好ましくは、0.1〜0.3当量使用するのがよい。
【0086】
反応は、都合よく、室温(すなわち、15℃〜30℃の温度範囲))で実施してよい。
反応は、エーテル溶剤、例えば、式:Rb-O-Rc(式中、RbおよびRcは、同一または異なっていてもよく、各々が、C1-C8アルキル基を表す)によって表されるエーテルの存在下で実施される。好ましくは、RbおよびRcは、各々、C1-C4アルキル基を表す。好ましいエーテル溶剤は、t-ブチルメチルエーテルである。
【0087】
上記方法にて、いずれかの適当なアルデヒドまたはケトン(例えば、ベンズアルデヒド、シクロヘキサノン等)は、プロトン受容体化合物として使用される。アルデヒドまたはケトンの同一性は、化合物がプロトン受容体機能を果たす限り、重要ではない。特に好ましいプロトン受容体としては、ベンズアルデヒドを含む。プロトン受容体、例えば、ベンズアルデヒドは、好ましくは、出発物質(8)に対して、1〜3当量の間の量使用される。1〜2当量で、良好な結果が達成された。
【0088】
酸化工程は、抗酸化剤を添加する時、なおさらにスムーズに進行することが見出された。抗酸化剤化合物の典型的な例としては、ブチル化されたヒドロキシトルエン(BHTまたは2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール)およびブチル化されたヒドロキシアニソール(BHA,すなわち、これは、異性体3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソールおよび2-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソールの混合物を含む)が挙げられるが、そのうち、BHTが好ましい。本方法におけるこのような抗酸化剤の使用は、ステロイドA環の強力な芳香族化を阻害すると考えられる。
【0089】
生成物、すなわち、化合物(9)は、都合よく、反応混合物から結晶化により固体として単離できる。反応混合物から化合物(9)を単離するための特に好ましい方法は、有機酸水溶液、例えば、乳酸を使用するが、ここで乳酸は反応の完了後に、反応混合物に加えられ、2相層を形成する。10分〜120分間の攪拌後、有機層は、分離され、塩化ナトリウム水溶液および炭酸水素ナトリウム水溶液ならびに水で逐次洗浄することができる。エーテル溶剤の部分的除去、それに続くメタノールの添加、および、、その後の冷却によって、固体として生成物を容易にかつ清浄に回収可能でき、固体は、濾去することができる。
【0090】
7α-メチル-17-βΔ2,5(10)-エストラジエンの7α-メチル-17-ケト-3-メトキシ-Δ2,5(10)-エストラジエンへの変換についての上記考察したUS3,340,279に開示されている処理法では、アルミニウムイソプロピレートおよびシクロヘキサノンが使用され、反応は、溶剤としてのトルエン中で実施される。この従来技術処理法は、生成物を単離するために水蒸気蒸留を必要とする。最終生成物は、続いて、シリカゲル上でクロマトグラフィーにより精製する必要がある。有益なことに、化合物(8)を化合物(9)に変換するための本方法では、最終生成物は、簡単な抽出および濾過処理により単離することができ、かくして、クロマトグラフィーの必要性を回避する。
【0091】
本方法についての出発物質、すなわち、化合物(8)は、Birch還元条件下での還元によって中間体メチルエーテル化合物(7)から得ることができる。反応は、水素の1,4-付加を含む:
【0092】
【化18】

【0093】
この変換は、液体アンモニア中アルカリ/アルカリ土類金属を使用して、プロトン源の存在下で達成することができる。適した金属としては、カリウム、ナトリウム、リチウムおよびカルシウムが挙げられる。カルシウム金属を使用すると、特に良好な結果が得られる。これは、例えば、高反応性であるカリウムよりもはるかに取り扱いやすいという利点を有する。
【0094】
プロトン源は、典型的には、アルコールである。いずれの適した(例えば、C1-C6)アルキルアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)も使用することができる。反応は、好ましくは、低温、すなわち、-10℃未満の温度で実施される。好ましくは、反応は、-70℃〜-20℃の間の温度範囲で実施される。なおさらに好ましくは、反応は、-48℃〜-30℃の温度範囲で実施することができる。
【0095】
都合よく、生ずる生成物、すなわち、化合物(8)は、反応混合物から抽出法によって単離することができる。この方法は、生成物の高収率(典型的には、70%より上)を導き出す。
【0096】
本発明のさらなる態様にて、式(10):
【0097】
【化19】

【0098】
で表される化合物を製造するための方法であって、該方法が、式(9):
【0099】
【化20】

【0100】
で表される化合物を、エチニルマグネシウムハライド(例えば、エチニルマグネシウムクロライド、エチニルマグネシウムブロマイドおよびエチニルマグネシウムヨーダイド)との反応にかける工程を含む方法が提供される。
【0101】
式(10)で表される化合物は、チボロンの前駆体である。
エチニルマグネシウムクロライドおよびエチニルマグネシウムブロマイドが本発明の本方法にて特に好ましく、これらは、典型的には、テトラヒドロフラン溶液として市販入手可能である。エチニルマグネシウムハライドは、出発化合物(9)に対して、2.5〜5モル当量添加される。好ましくは、約3モル当量が使用される。
【0102】
エチニル化処理は、典型的には、非プロトン性溶剤、例えば、テトラヒドロフランの存在下で実施される。
15℃〜50℃の間の反応温度(好ましくは、20℃〜40℃、および、なおさらに好ましくは20℃〜30℃)を使用することができる。
【0103】
典型的には、反応混合物は、塩化アンモニウムでクエンチされ、生成物は、沈殿によって単離され、続いて、濾過することにより、粗製の固体を生ずる。乾燥後、固体は、結晶化によって精製することができる。
【0104】
化合物(10)を形成するための化合物(9)のエチニル化は、また、化合物(9)をナトリウムアセチリドとの反応にかけることによっても実施することができる。
エチニル化剤としてナトリウムアセチリドを使用する時、反応は、抗酸化剤化合物、例えば、ブチル化されたヒドロキシトルエン(BHT)またはブチル化されたヒドロキシアニソール(BHA)の存在下で実施することができる。反応は、いずれかの適した非プロトン性溶剤、特に、エーテル溶剤、例えば、t-ブチルメチルエーテルおよびテトラヒドロフラン中で実施することができる。好ましくは、反応は、N-メチルピロリジノンを含有する溶剤の存在下で実施される。
【0105】
ナトリウムアセチリドは、例えば、キシレン溶液として市販入手可能である。ナトリウムアセチリドは、好ましくは、出発化合物(9)に対して、2〜3モル当量、好ましくは、2〜2.5モル当量加える。
【0106】
10〜40℃の間の反応温度(好ましくは、15℃〜30℃、なおさらに好ましくは、20℃〜25℃)を使用できる。
典型的には、反応混合物は、塩化アンモニウムでクエンチし、沈殿により生成物を単離し、続いて、濾過すると、粗製の固体を生成する。乾燥後、固体は、結晶化によって精製することができる。
【0107】
上記考察したエチニル化処理は、従来技術の処理に優る幾つかの利点を有する。特に、US 3,340,279は、エチニル化剤としてカリウムアセチリドの使用を開示している。カリウムアセチリドは、カリウム金属とアセチレンとの反応によって形成される。カリウムは、非常に反応性であるが、安全性の観点から大規模合成のために勧められない。さらに、生成物7α-メチル17α-エチニル-17β-ヒドロキシ-3-ケト-Δ5(10)-エストレンを、水蒸気蒸留およびシリカゲル上クロマトグラフィーを含め、比較的さらに複雑な処理法により単離する必要がある。
【0108】
Van VlietらによりRecl.Trav.Chim.Pays-Bas,105,111-115(1986)に開示された方法では、3,3-ジメトキシ-7α-メチルエステル-5(10)−エン-17-オンのエチニル化による対応する3,3-ジメトキシ-7α-メチル-19-ノル-17α-プレグ-5(10)-エン-20-イン-17β-オールの形成は、カリウムt-ブトキシドおよびアセチレンを使用して達成される。この場合も、これら引火性および爆発性試薬の使用は、大規模操作では勧められない。
【0109】
本発明のさらなる態様にて、チボロン(11):
【0110】
【化21】

【0111】
を製造するための方法であって、該方法が、式(10):
【0112】
【化22】

【0113】
で表される化合物のヒドロキシル保護基を鉱酸で脱保護する工程を含む方法が提供される。
鉱酸は、好ましくは、硫酸、硝酸および塩化水素酸である。塩化水素酸水溶液が特に好ましい試薬である。
【0114】
鉱酸は、概して、希釈水溶液である。--好ましくは、鉱酸は、濃度範囲0.05M〜0.5M、さらに好ましくは、約0.1Mで水溶液として使用される。反応は、典型的には、C1-C6アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノール;エタノールが好ましい)を含む溶剤中で実施される。
【0115】
これまで、3-ケト基を脱保護するための従来法は、有機酸、通常、水とメタノールとの混合物中シュウ酸を使用してきた。
予想だにしえなかったことに、少量の抗酸化剤化合物(例えば、アスコルビン酸)を出発物質のアルコール溶液に加えた後鉱酸を添加することによって、最終生成物の純度が改善されることが見出された。抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)は、エタノールの溶液として、反応混合物に、出発物質(10)に対して、0.1〜1%w/w(好ましくは、0.3〜0.7%w/w)の量添加される。
【0116】
本発明のさらなる態様にて、チボロン(11):
【0117】
【化23】

【0118】
を合成するための方法が提供される。
概して、本発明に従うチボロンを合成するための方法は、以下のスキームにて示される。
【0119】
【化24】

【0120】
かくして、本発明のこの態様に従えば、ナンドロロン(1):
【0121】
【化25】

【0122】
からチボロンを合成するための方法であって、該方法が、
(i) ナンドロロン(1)の17-ヒドロキシ基および3-ケト基を保護して、式(3):
【0123】
【化26】

【0124】
[式中、RおよびR1は、同一または異なっていてもよく、各々が、独立に、C1-C20アルキル、C6-C10アリール、C3-C8シクロアルキル、C7-C20アラルキルまたはC7-C20アルカリール(好ましくは、RおよびR1は、各々、C1-C20アルキルを表し、C1-C6アルキル、とりわけ、メチルが特に好ましい)を表す。]
で表される化合物を生成させる工程;
(ii) ハロゲン化剤を使用し、式(3)で表される化合物の6-位の炭素をハロゲン化して、式(4):
【0125】
【化27】

【0126】
[式中、Xは、F、Cl、BrまたはIを表す。]
で表される化合物を生成させる工程;
(iii) 式(4)で表される化合物を脱ハロゲン化水素して、式(5):
【0127】
【化28】

【0128】
で表される化合物を生成させる工程;
(iv) 式(5)で表される化合物の7-位の炭素原子をメチル化して、式(5a)
【0129】
【化29】

【0130】
で表される化合物を生成させる工程;
(v) 式(5a)で表される化合物のC=C二重結合を異性化させて、式(6):
【0131】
【化39】

【0132】
で表される化合物を生成させる工程;
(vi) アルコールR2-OHの存在下で、CuBr2を使用して、式(6)で表される化合物を脱水素して、式(7):
【0133】
【化31】

【0134】
[式中、R2は、C1-C20アルキル、C6-C10アリール、C3-C6シクロアルキル、C7-C20アラルキルまたはC7-C20アルカリールを表す(好ましくは、R2は、C1-C6アルキルを表し、メチルがとりわけ好ましい)。]
で表される化合物を生成させ;場合によっては、同時形成される式(7)で表されるいずれの化合物をも所望される化合物(7)に変換するために、上記考察したように、生成物混合物を塩基(例えば、水酸化カリウム水溶液)と接触させる工程;
(viii) 式(7)で表される化合物を還元して、式(8):
【0135】
【化32】

【0136】
で表される化合物を生成させる工程;
(viii) 式(8)で表される化合物の17-ヒドロキシル基を酸化して、式(9):
【0137】
【化33】

【0138】
で表される化合物を生成させる工程;
(ix) 式(9)で表される化合物の17-位の炭素をエチニル化させて、式(10):
【0139】
【化34】

【0140】
で表される化合物を生成させる工程;および
(x) 式(10)で表される化合物中の保護基R2を除去して、チボロン(11):
【0141】
【化35】

【0142】
を生成する工程;
を含む方法が提供される。
工程(i)は、以下の工程(a)および(b):
(a) 式(RCO)2O[式中、Rは、C1-C20アルキル、C6-C10アリール、C3-C8シクロアルキル、C7-C20アラルキルまたはC7-C20アルカリールを表す(好ましくは、Rは、C1-C20アルキルを表し、C1-C6アルキル、とりわけ、メチルが、特に好ましい)]を有するアルカノイル化剤とナンドロロン(1)とを反応させて、式(2):
【0143】
【化36】

【0144】
で表される化合物を生成させる工程;および
(b) 式R1-CO-X[式中、R1は、C1-C20アルキル、C6-C10アリール、C3-C8シクロアルキル、C7-C20アラルキルまたはC7-C20アルカリールを表し(好ましくは、R1は、C1-C20アルキルを表しC1-C6アルキル、とりわけ、メチルが、特に好ましい)、Xはハロ(好ましくは、Cl、BrまたはIを表し、Clが、特に好ましい)を表す]を有するアセチル化剤と式(2)で表される化合物とを反応させる工程;
を含む。
【0145】
好ましくは、工程(i)は、ナンドロロン(1)を、パラ-トルエンスルホン酸の存在下で、式:
【0146】
【化37】

【0147】
[式中、Rは、C1-C20アルキル、C6-C10アリール、C3-C8シクロアルキル、C7-C20アラルキルまたはC7-C20アルカリールを表し(好ましくは、RおよびR1は、各々、C1-C20アルキルを表し、C1-C6アルキル、とりわけ、メチルが、特に好ましい)]を有する化合物と反応させる工程を含む。
【0148】
工程(ii)は、好ましくは、式(3)で表される化合物を、N-ハロコハク酸イミド(ここで、ハロは、好ましくは、F、Cl、BrまたはIを表し、N-ブロモコハク酸イミドが特に好ましい)と反応させる工程を含む。
【0149】
工程(iii)は、好ましくは、式(4)で表される化合物をハロゲン化リチウムおよび炭酸リチウムと反応させる工程を含む。
工程(iv)は、好ましくは、式(5)で表される化合物を、酢酸銅(II)の存在下で、メチルマグネシウムハライド(好ましくは、ハライドは、クロライド、ブロマイドまたはヨーダイドであり、クロライドが、特に好ましい)と反応させる工程を含む。
【0150】
工程(v)は、好ましくは、式(6)で表される化合物を鉱酸水溶液(例えば、塩酸)と反応させる工程を含む。
工程(vi)は、好ましくは、同時形成化合物(7)を所望される生成物(7)に変換するために、芳香族化反応からの生成物混合物を塩基(好ましくは、水酸化カリウム水溶液)と接触させる工程を含む。
【0151】
工程(vii)は、好ましくは、式(7)で表される化合物をカルシウムおよび液体アンモニアと反応させる工程を含む。
工程(viii)は、好ましくは、アルデヒドまたはケトンプロトン受容体(例えば、ベンズアルデヒド)の存在下で、式(8)で表される化合物をアルミニウムアルコキシド試薬と反応させる工程を含む。アルミニウムアルコキシド試薬は、式:Al(O-Ra)3[式中、少なくとも1つのRaは、分枝(例えば、C3-C20、好ましくは、C3-C10)アルキル基(すなわち、アルキル基は、例えば、1つ以上の第2級および/または第3級アルキル基を含む)、シクロアルキル(例えば、C3-C7)基またはアリール(例えば、C6-C10)基を含有する]を有する。例えば、アルミニウムアルコキシド試薬としては、式:
Al(O-Ra)3
[式中、各Raは、同一または異なっていてもよく、各々が、分枝C3-C10(好ましくは、C3-C6)アルキル基、C6-C10アリール基、C3-C7シクロアルキル基、C7-C20アラルキル基またはC7-C20アルカリール基を表す。]
を有するものが挙げられる。各Raが、同一または異なり、各々が、C3-C6アルキル基を表す上記式のアルミニウムアルコキシド試薬が好ましい。好ましくは、各Raは、同一である。例えば、Raは、iso-プロピル、t-ブチル、sec-ブチル(1-メチルプロピル)から選択される。好ましくは、工程(viii)は、ベンズアルデヒドの存在下で、式(8)で表される化合物とAl(iPrO)3またはAl(OtBu)3とを反応させる工程を含む。上記示したように、抗酸化剤化合物、例えば、BHTまたはBHAは、好ましくは、工程(viii)における反応混合物に加えられる。
【0152】
工程(ix)は、好ましくは、式(9)で表される化合物をエチニルマグネシウムハライド(ここで、ハライドは、好ましくは、クロライドまたはブロマイドであり、クロライドが、特に好ましい)と反応させる工程を含む。工程(ix)は、また、都合よく、式(9)で表される化合物をナトリウムアセチリドと反応させることによって実施することもできる。
【0153】
工程(x)は、好ましくは、式(10)で表される化合物を、鉱酸水溶液、好ましくは、塩酸水溶液と接触させる工程を含む。
工程(i)〜(x)についての好ましい条件および試薬は、上記記載した。
【0154】
本明細書に記載したいずれの方法および中間体において、好ましくは、基R、R1およびR2は、各々、独立に、C1-C6アルキルを表し、C1-C3アルキルが、特に好ましい。R、R1およびR2が、各々、独立に、未置換C1-C6(好ましくは、C1-C3)アルキルを表す先のパラグラフのいずれかに定義した方法は、なおさらに好ましい。R、R1およびR2が、各々、メチルを表す先のパラグラフのいずれかに記載した方法が特に好ましい。
【0155】
以下の実施例により、本発明をさらに示す。
【実施例】
【0156】
実施例
以下の実施例は、本発明に従う方法を示す。安全対策として、反応は、窒素雰囲気下で実施した。
【0157】
実施例1
【0158】
【化38】

【0159】
イソプロピルアセテート(0.785kg)、ナンドロロン(1)(0.200kg)および触媒量のp-トルエンスルホン酸・1水和物(0.007kg)を窒素下周囲温度で合わせた。懸濁液を攪拌し、加熱還流した。次に、イソプロペニルアセテート(0.236kg)を10〜30分間かけて滴下し、還流を継続した。完了するまで、HPLC分析により60分間隔で、反応をモニターした。完了したら、(ナンドロロン投入量に対して)2体積分の溶剤を大気圧での蒸留により混合物から除去した。反応混合物を75〜78℃まで冷却し、トリエチルアミン(0.0005kg)を加えた。混合物を75℃まで冷却し、イソプロパノール(0.314kg)を加えた。添加の完了後、混合物を-5℃と-15℃との間まで冷却し、濾過により、生成物を単離した。生成物を、フィルター上、冷イソプロパノールで洗浄し、減圧オーブン内で恒量となるまで乾燥させた(収率85%)。
【0160】
実施例2
【0161】
【化39】

【0162】
DMF(0.755kg)および水(0.0124kg)中化合物(3A)(0.200kg)の懸濁液に、-10℃〜-5℃でジメチルホルムアミド(DMF)(0.330kg)中N-ブロモコハク酸イミド(0.107kg)の溶液を2時間かけて滴下し、その間、温度を0℃よりも下の温度に維持した。反応混合物を30分間かけて20〜25℃まで温め、HPLCによりモニターした。反応が完了したら、十分に攪拌しながら炭酸リチウム(0.099kg)および臭化リチウム(0.051kg)を逐次加えた。反応混合物を80℃まで1時間かけてゆっくりと加熱し、反応が完了するまで、80±5℃に2〜3時間維持した。次に、加熱を止め、ベージュ/褐色の懸濁液を20〜25℃まで冷却した。酢酸水溶液(1.11kgの水中に0.177kg)の滴下により、混合物をクエンチした。添加開始後短時間で、混合物に化合物(5A)(0.001kg)を加えた。最後に、残りの酢酸水溶液を加え、混合物を室温で一晩攪拌した。濾過により、固体を単離し、濾過ケーキを、最初に、DMFおよび精製水の1:1混合物(水0.150kg中DMF0.142kg)で洗浄し、最後に、精製水(3×0.200kg)で洗浄した。粗製の固体をイソプロパノール(0.365kg)に懸濁させ、45℃まで加熱して褐色の溶液を形成した。精製水を少なくとも30分間かけて滴下し、生成物を沈殿させた。スラリーを1時間かけて0〜50℃まで冷却し、この温度で1時間攪拌した。濾過により、生成物を単離し、濾過ケーキをイソプロパノール(0.04kg)と精製水(0.60kg)との冷(0〜5℃)混合物で洗浄すると、淡黄色に着色した粉末を与えた。精製した固体を乾燥させて減圧下40〜50℃で恒量とした(収率:79%)。
【0163】
実施例3
【0164】
【化40】

【0165】
テトラヒドロフラン(717.6g)、化合物(5A)(204g)および無水酢酸銅(II)(23.6g)を適当な容器に装填した。スラリーを攪拌し、-45℃と-35℃との間まで冷却した。メチル-マグネシウムクロライド溶液(THF中23%,アッセイして22.6%,346.1g)を、次に、反応温度-45℃〜-35℃を最短3時間かけて維持するような速度でゆっくりと加えた。添加の完了後、反応混合物を-45℃〜-35℃で攪拌し、HPLCによりモニターした。次に、混合物を37%塩酸(128.1g)でクエンチし、その温度を10℃より下に保った。混合物を10℃より下に30分間維持した。水(408g)を約20分間かけてゆっくりと加えた。ヘプタン(428.2g)を加え、混合物を周囲温度まで温めた。水層を分離し、生成物をヘプタンで抽出した。合わせた有機抽出物を25%水酸化アンモニウム溶液および精製水で洗浄した。ほぼ3体積分[化合物(5A)の投入重量に対して]が残るまで、周囲大気圧下、溶剤を蒸留した。t-ブチルメチルエーテルを加え、混合物を冷却して、生成物を結晶化させた。濾過により、生成物を単離し、40〜50℃で乾燥させた(収率:78%;α:β比=99)。
【0166】
実施例4
【0167】
【化41】

【0168】
窒素下、トルエン/メタノール(121.0kgのメタノール中87.0kgのトルエン)中、化合物(6A)(52.35kg)の溶液を17〜23℃で小分けしつつ2.2モル当量の臭化銅(II)(75.09kg)で処理した。反応が完了したら、混合物は、トルエン(132kg)で希釈し、約15℃まで冷却した。硫酸水溶液(351.0kg)を加えた。3相混合物を濾過して、銅(I)塩を除き、有機相を分離した。有機相を14%硫酸水溶液と13%塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を分離し、水酸化カリウム水溶液(50%,12.1kg)およびメタノール(20.5kg)をトルエン相に加えた。HPLCが化合物(7A)の化合物(7A)への完全な変換を示すまで、2相混合物を加熱し還流させた。精製水(35kg)を加え、水相を分離した。トルエン溶液をEDTAジナトリウム水溶液(230.0kgの水中に12.0kg)で洗浄した。ポット残渣中の溶剤の体積が化合物(6A)の投入量に対して2v/wとなるまで、大気圧で、有機相を濃縮した。イソプロパノール(276kg)を加え、反応ポット中の体積が、再度、化合物(6A)の投入量に対して2v/wとなるまで、蒸留を継続した。イソプロパノール(118.0kg)を次に加え、混合物を加熱し還流させた。溶液をゆっくりと冷却して、結晶化を起こさせた。生ずる懸濁液を2〜5℃まで1.5時間冷却した。固体を濾過し、濾過ケーキをイソプロパノール(2〜5℃)で洗浄した。生成物を55〜60℃/50〜100ミリバールで乾燥させて恒量(および、イソプロパノール含量は、5.0w/w)とした(収率:80%)。
【0169】
実施例5
【0170】
【化42】

【0171】
テトラヒドロフラン(266.70g)、t-ブチルメチルエーテル(888g)および2-プロパノール(235.5g)中化合物(7A)(150g)のスラリーを含有する反応容器に、液体アンモニア(383.51g)を-38±5℃で加えた。次に、カルシウム金属(60.12g)を小分けしつつ加え、青色の着色が完全に消えるまで、反応混合物を-38±5℃で加えた。反応は、HPLCにより、モニターする。完了直後、塩化アンモニウム(179.51g)の添加により反応をクエンチし、次に、-10〜0℃まで温めた。蒸留されるアンモニアは、ウオータースクラバーでトラップした。生ずるオフ-ホワイト色の懸濁液に水(1.2kg)を加え、混合物を周囲温度まで温めた。有機層を分離し、水層をヘプタンで再抽出した。合わせた有機抽出物を5%w/v塩化アンモニウム水溶液、1%w/v炭酸水素ナトリウム水溶液および水で洗浄した。有機相を、減圧下、化合物(7)の投入重量に対して、6体積分まで濃縮した。ヘプタン(153.9g)およびt-ブタノール(58.5g)の混合物を加え、t-ブチルメチルエーテルのレベルが≦12.5%w/wとなるまで蒸留を継続した。生ずる懸濁液を0~5℃に冷却し、濾過し、生成物をヘプタンで洗浄し、25~30℃で恒量となるまで乾燥させた(収率:75%)。
【0172】
実施例6
【0173】
【化43】

【0174】
t-ブチルメチルエーテル(222.0g)、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(0.50g)、化合物(8A)(50g)とベンズアルデヒド(26.3g)とを周囲温度で混合し、窒素で減圧脱気した。アルミニウムトリ-t-ブトキシド(8.14g)を次に加え、曇った溶液を60分間攪拌した。この期間後、反応物を採取し、次に、HPLC分析により完了するまで30分間隔で採取した。一度完了したら、乳酸の水溶液(250gの水中に16.92g)を加え、生ずる2相溶液を少なくとも15分間攪拌した。有機層を分離し、塩化ナトリウム5%w/w溶液(263.2g)、炭酸水素ナトリウム5%w/w溶液(105.0g)で逐次洗浄し、最終的に、水で洗浄した。化合物(8A)の投入重量に対して2体積分のメチルt-ブチルエーテルが集められるまで、蒸留により、溶液を濃縮した。メタノール(197.8g)を次に加え、蒸留物の5体積分[化合物(8A)の投入重量に対して]が集められるまで、蒸留を継続した。次に、溶液を46〜54℃に冷却し、結晶化を開始した。懸濁液を、次に、0〜-5℃で、さらに、60分間冷却した。濾過により、生成物を単離し、最初に、メタノールで、次に、メタノール水溶液で洗浄した。生成物は、減圧オーブン内で恒量となるまで乾燥させた(収率:84.5%)。
【0175】
実施例7A
【0176】
【化44】

【0177】
工程1
窒素下周囲温度で化合物(9A)(30.0g)をテトラヒドロフラン(90mL)に溶解させた。溶液をテトラヒドロフラン中(325mL,d=0.921,モル濃度0.48M)中エチニルマグネシウムクロライドの減圧脱気した溶液に窒素下25〜30℃で少なくとも30分間かけて加えた。反応混合物を25〜30℃で、HPLCにより確認して完了するまで攪拌した。反応混合物を窒素下クエンチ混合物の温度を20〜30℃に維持する速度で水(300mL)中塩化アンモニウムの13%w/w溶液に移した。Celite(6.0g)を、次に、2相混合物に加え、これを、次に、30±2℃で30分間攪拌した。生ずるスラリーを濾過し、上方有機層を分離した。有機層を30%w/w塩化ナトリウム溶液(150mL)で洗浄した。有機溶液を減圧下化合物(9A)投入重量に基づき6体積分まで濃縮した。脱イオン水を滴下して、沈殿を完了させ、生ずるスラリーを0〜5℃に冷却し、少なくとも1時間攪拌した。濾過により、固体を集めた。濾過ケーキをTHF/水の1:1混合物で洗浄し、最終的に、水およびピリジン溶液で洗浄した。含水率がKarl Fisher滴定法で判定して5%より下になるまで、減圧オーブン内で減圧下30〜35℃で固体を乾燥させた。
【0178】
工程2
工程1からの粗製の乾燥固体(33.9g)を窒素下55±2℃でメタノール(160mL)およびピリジン(0.38mL)の混合物に溶解させて透明な溶液を形成させた。水(14mL)を55±2℃で滴下し、混合物を冷却した。結晶化は、50±5℃で生じた。スラリーを0〜5℃まで冷却し、この温度で少なくとも1時間攪拌した。濾過により固体を単離させ、減圧下、恒量となるまで30〜35℃で乾燥させた(収率:82%)。
【0179】
実施例7B
【0180】
【化45】

【0181】
工程1
化合物(9A)(30g)および2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)(0.15g)を、周囲温度でt-ブチルメチルエーテル(111g)とN-メチルピロリジノン(45.9g)との減圧脱気した混合物に溶解させた。この溶液をN-メチルピロリジノン(107.1g)中ナトリウムアセチリド(キシレン中21%w/w,50.05g)の減圧脱気したスラリーに窒素下20〜25℃で少なくとも30分間かけて加えた。反応物を20〜25℃で2時間攪拌し、その後、少量の水(0.18g)を加えた。混合物をさらに1時間攪拌し、次に、HPLCにより分析した。さらに部分量の水(2×0.18g)を加え、HPLCにより反応が完了したことを確認した。クエンチ混合物の温度を20〜30℃に維持するような速度で、反応混合物を、窒素下、水中塩化アンモニウムの13%w/w溶液(19.5gの塩化アンモニウムおよび130.5gの水)に移した。Celite(3g)を、次に、2相反応混合物に加え、混合物を20〜25℃の温度で15分間攪拌した。生ずるスラリーを濾過し、上方有機層を分離した。有機層を水で2回洗浄した(2×90g)。この有機溶液に、痕跡量のピリジン(0.16g)を加え、混合物を、減圧下、化合物(9A)投入量の重量に対して4体積分にまで濃縮した。痕跡量のピリジン(0.16g)を含有する水(30g)およびメタノール(118.5g)を加え、化合物(9A)投入量の重量に対して4体積分に濃縮されるまで、減圧蒸留を継続した。さらに部分量のメタノール(118.5g)およびピリジン(0.16g)を加え、化合物(9A)投入量の重量に対して4体積分まで濃縮した。脱イオン水(15g)を滴下して沈殿を完了させ、生ずるスラリーを0〜-5℃まで冷却し、少なくとも1時間攪拌し、次に、濾過により、固体を集めた。メタノールと水との冷50%混合物(120mL)でケーキを洗浄した。含水率が6.3%w/w未満となるまで、固体を、減圧下、減圧オーブン内35℃で乾燥させた。
【0182】
工程2
工程1からの粗製の乾燥固体(10g)を、窒素下、55±5℃でメタノール(36.1g)とピリジン(0.11g)との混合物に溶解させて、透明な溶液を形成させた。水(3.93g)を55±5℃で滴下し、次に、混合物を冷却した。結晶化は50±5℃で起きた。スラリーを0〜5℃まで冷却し、この温度で少なくとも1時間攪拌した。濾過により、固体を単離し、含水率が2.4%以下となるまで、減圧下、30〜35℃で乾燥させた。
【0183】
実施例8
【0184】
【化46】

【0185】
エタノール(96%,658g)中化合物(10A)およびアスコルビン酸(99%,195mg)の脱気した溶液に活性炭Darco G60(3.90g)を加えた。懸濁液を、窒素下、20〜30℃で1時間攪拌し、濾過により、透明とした。生ずる透明な溶液に、水(13.3mL)および塩酸(0.1N,29.64g)を加え、窒素下、攪拌した。反応物を20〜25℃に維持し、HPLCにより、モニターし;反応が完了するまでに必要とされるさらなる分量の塩酸を加えた。完了直後、酢酸カリウム水溶液(0.1M,585mL)を加えて、反応をクエンチする。反応混合物を、次に、0〜5℃まで1時間冷却した。生ずる懸濁液を濾過し、濾過ケーキを水で洗浄した。生成物(11)は、恒量となるまで、減圧下、30〜35℃で乾燥させた(収率:78%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(6):
【化1】

[式中、Rは、C1-C20アルキル、C6-C10アリール、C3-C8シクロアルキル、C7-C20アラルキルまたはC7-C20アルカリールを表す。]
で表される化合物を製造するための方法であって、該方法が、
(i) 式(5):
【化2】

で表される化合物の7-位の炭素原子をメチル化して、式(5a):
【化3】

で表される化合物を形成する工程;および
(ii) 式(5a)で表される化合物のC=C二重結合を異性化する工程;
を含む方法。
【請求項2】
式(5)で表される化合物を銅(II)塩の存在下でメチルマグネシウムハライドとの反応にかける工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
銅(II)塩が、酢酸銅(II)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(i)が、非プロトン性溶剤の存在下で実施される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程(i)が、テトラヒドロフランを含む溶剤中で実施される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(i)が、0℃以下の温度で実施される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(i)が、-80℃〜0℃の温度範囲で実施される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程(i)が、-45℃〜-35℃の温度範囲で実施される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(ii)が、化合物(5a)を鉱酸との反応にかけることによって実施される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
鉱酸が、塩酸である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(i)および工程(ii)が、式(5a)で表される化合物を単離することなくワンポットで実施される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
式(5)で表される化合物が、
(i) ナンドロロン(1):
【化4】

の3-ケトおよび17-ヒドロキシ基を保護して、式(3):
【化5】

[式中、RおよびR1は、同一または異なっていてもよく、各々が、C1-C20アルキル、C6-C10アリール、C3-C8シクロアルキル、C7-C20アラルキルまたはC7-C20アルカリールを表す。]
で表される化合物を生成させる工程;
(ii) ハロゲン化剤を使用して式(3)で表される化合物の6-位の炭素原子をハロゲン化して、式(4):
【化6】

[式中、Xは、F、Cl、BrまたはIを表す。]
で表される化合物を形成する工程;および
(iii) 式(4)で表される化合物を脱ハロゲン化水素する工程;
によって製造される、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程(i)が、
(a) ナンドロロンを化合物(RCO)2Oと反応させて、式(2):
【化7】

で表される化合物を生成させる工程;および
(b) 式(2)で表される化合物をR1-CO-X(式中、Xは、Cl、BrまたはIである)と反応させて、式(3)で表される化合物を生成させる工程;
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程(i)が、ナンドロロン(1)を、パラ-トルエンスルホン酸の存在下で、式:
【化8】

で表される化合物と反応させるによって実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
工程(ii)および工程(iii)が、式(4)で表される化合物を単離することなくワンポットで逐次実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
工程(ii)におけるハロゲン化剤が、N-ハロ-コハク酸イミドである、請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
工程(ii)におけるハロゲン化剤が、N-ブロモコハク酸イミドである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程(ii)が、ジメチルホルムアミドを含む溶剤の存在下で実施される、請求項12〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
工程(ii)が10℃未満の温度で実施される、請求項12〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
工程(i)が、0℃未満の温度で実施される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
工程(ii)が、50〜120℃の範囲の温度で実施される、請求項12〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
工程(ii)が、70〜90℃の範囲の温度で実施される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
式(7):
【化9】

で表される化合物を製造するための方法であって、
(i) 式(6):
【化10】

で表される化合物を、アルコールR2-OH(式中、R2は、C1-C10アルキル、C6-C10アリール、C3-C6シクロアルキル、C7-C20アラルキルまたはC7-C20アルカリールを表す)の存在下で、臭化銅(II)と反応させて、式(7)で表される化合物を含む生成物混合物を形成させる工程;および、場合によっては、
(ii) 生成物混合物を塩基と接触させる工程;
を含む方法。
【請求項24】
R2が、C1-C6アルキルを表す、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
2が、メチルを表す、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
溶剤が、さらに、トルエン、キシレンまたはアセトニトリルを含む、請求項23〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
工程(i)が、15〜30℃の範囲内の温度で実施される、請求項23〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
工程(ii)が、工程(i)からの生成物混合物中の生成物を分離することなく実施される、請求項23〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
式(7)で表される化合物が、再結晶によって単離される、請求項23〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
式(9):
【化11】

で表される化合物を製造するための方法であって、該方法が、式(8):
【化12】

で表される化合物を、式:
Al(O-Ra)3
[式中、各Raは、同一または異なっていてもよく、各々が、分枝C3-C10アルキル基、C6-C10アリール基、C3-C7シクロアルキル基、C7-C20アラルキル基またはC7-C20アルカリール基を表す。]
で表される化合物と、ベンズアルデヒドの存在下で反応させる工程を含む方法。
【請求項31】
各Raが、分枝C3-C6アルキル基を表す、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
Raが、iso-プロピルまたはt-ブチルから選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
反応が、エーテル溶剤の存在下で実施される、請求項30〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
溶剤が、式Ra-O-Rbによって表され、RaおよびRbが同一または異なり、各々が、C1-C8アルキル基を表す、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
Raが、t-ブチルを表し、Rbが、メチルを表す、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
反応が、抗酸化剤の存在下で実施される、請求項30〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
抗酸化剤が、ブチル化されたヒドロキシトルエンまたはブチル化されたヒドロキシアニソールを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
式(10):
【化13】

で表される化合物を製造するための方法であって、該方法が、式(9):
【化14】

で表される化合物を、エチニルマグネシウムハライドまたはナトリウムアセチリドとの反応にかける工程を含む方法。
【請求項39】
式(9)で表される化合物をエチニルマグネシウムクロライドまたはエチニルマグネシウムブロマイドとの反応にかける、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
反応が、非プロトン性溶剤の存在下で実施される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
溶剤が、テトラヒドロフランを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
反応が、15〜50℃の温度範囲で実施される、請求項38〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
反応が、20〜40℃の温度範囲で実施される、請求項38〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
式(9)で表される化合物が、ナトリウムアセチリドとの反応にかける、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
チボロンの製造における請求項1〜44のいずれか1項に記載の方法の使用。
【請求項46】
チボロン(11):
【化15】

を製造するための方法であって、該方法が、式(10):
【化16】

で表される化合物のヒドロキシル保護基を鉱酸で脱保護する工程を含む方法。
【請求項47】
鉱酸が、硫酸、硝酸および塩酸から選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
鉱酸が、塩酸である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
鉱酸が、濃度範囲0.05M〜0.5Mで水溶液として使用される、請求項45〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
反応が、(アスコルビン酸のような)抗酸化剤の存在下で実施される、請求項45〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
チボロン(11):
【化17】

の合成のための方法であって、該方法が、
(i) ナンドロロン(1)の17-ヒドロキシ基および3-ケト基を保護して、式(3):
【化18】

[式中、RおよびR1は、同一または異なっていてもよく、各々が独立に、C1-C20アルキル、C6-C10アリール、C3-C8シクロアルキル、C7-C20アラルキルまたはC7-C20アルカリールを表す。]
で表される化合物を生成させる工程;
(ii) 式(3)で表される化合物の6-位の炭素をハロゲン化して、式(4):
【化19】

[式中、Xは、F、Cl、BrまたはIを表す。]
で表される化合物を生成させる工程;
(iii) 式(4)で表される化合物を脱ハロゲン化水素して、式(5):
【化20】

で表される化合物を生成させる工程;
(iv) 式(5)で表される化合物の7-位の炭素原子をメチル化して、式(5a)
【化21】

で表される化合物を生成させる工程;
(v) 式(5a)で表される化合物のC=C二重結合を異性化させて、式(6):
【化22】

で表される化合物を生成させる工程;
(vi) アルコールR2-OHの存在下で、CuBr2を使用して、式(6)で表される化合物を脱水素して、式(7)で表される化合物と式(7)で表される化合物:
【化23】

[式中、R2は、C1-C10アルキル、C6-C10アリール、C3-C6シクロアルキル、C7-C20アラルキルまたはC7-C20アルカリールを表す。]
を含む生成物混合物を生成させる工程;および、 場合によっては、生成物混合物を塩基と接触させる工程;
(vii) 式(7)で表される化合物を還元して、式(8):
【化24】

で表される化合物を生成させる工程;
(viii) 式(8)で表される化合物の17-ヒドロキシル基を酸化して、式(9):
【化25】

で表される化合物を生成させる工程;
(ix) 式(9)で表される化合物の17-位の炭素をエチニル化させて、式(10):
【化26】

で表される化合物を生成させる工程;並びに、
(x) 式(10)で表される化合物中の保護基R2を除去する工程;
を含む方法。
【請求項52】
工程(i)が、
(a) 式(RCO)2O(式中、Rは、C1-C20アルキル、C6-C10アリール、C3-C8シクロアルキル、C7-C20アラルキルまたはC7-C20アルカリールを表す)を有するアルカノイル化剤とナンドロロン(1)とを反応させて、式(2):
【化27】

で表される化合物を生成させる工程;および、
(b) 式R1-CO-X(式中、R1は、C1-C20アルキル、C6-C10アリール、C3-C8シクロアルキル、C7-C20アラルキルまたはC7-C20アルカリールを表し、Xは、Cl、BrまたはIを表す)を有するアセチル化剤と式(2)で表される化合物とを反応させて、式(3)で表される化合物を生成させる工程;
を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
工程(i)が、ナンドロロン(1)を、パラ-トルエンスルホン酸の存在下で、式:
【化28】

で表される化合物と反応させて、式(3)で表される化合物を生成させる工程を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
工程(ii)が、式(3)で表される化合物をN-ハロコハク酸イミド(ここで、ハロは、Cl、BrまたはIを表す)と反応させる工程を含む、請求項51〜53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
工程(iii)が、式(4)で表される化合物とハロゲン化リチウムおよび炭酸リチウムと反応させる工程を含む、請求項51〜54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
工程(iv)が、式(5)で表される化合物を、酢酸銅(II)の存在下で、メチルマグネシウムハライドと反応させる工程を含む、請求項51〜55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
工程(v)が、式(6)で表される化合物と鉱酸水溶液とを反応させる工程を含む、請求項51〜56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
工程(vii)が、式(7)で表される化合物と、カルシウムおよび液体アンモニアとを反応させる工程を含む、請求項51〜57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
工程(viii)が、式(8)で表される化合物と、式:
Al(O-Ra)3
[式中、各Raは、同一または異なっていてもよく、各々が、分枝C3-C10(好ましくは、C3-C6)アルキル基、C6-C10アリール基、C3-C7シクロアルキル基、C7-C20アラルキル基またはC7-C20アルカリール基を表す。]
を有するアルミニウムアルコキシドとを、アルデヒドまたはケトンプロトン受容体の存在下で、反応させる工程を含む、請求項51〜58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
アルミニウムアルコキシド試薬が、Al(iPrO)3またはAl(OtBu)3を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
工程(ix)が、式(9)で表される化合物とエチルマグネシウムハライドとを反応させる工程を含む、請求項51〜60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
工程(ix)が、式(9)で表される化合物とナトリウムアセチリドとを反応させる工程を含む、請求項51〜60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
工程(ix)におけるプロトン受容体化合物が、ベンズアルデヒドを含む、請求項51〜62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
工程(x)が、式(10)で表される化合物と鉱酸水溶液とを反応させる工程を含む、請求項51〜63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
R、R1およびR2が、メチルを表す、請求項1〜64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
チボロンの合成のための中間体であって、該中間体が、式(5a):
【化29】

[式中、Rは、C1-C20アルキル、C6-C10アリール、C3-C8シクロアルキル、C7-C20アラルキルまたはC7-C20アルカリールを表す。]
を有する中間体。

【公表番号】特表2006−519248(P2006−519248A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505910(P2006−505910)
【出願日】平成16年3月3日(2004.3.3)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000887
【国際公開番号】WO2004/078774
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(503429076)レゾリューション ケミカルズ リミテッド (8)
【Fターム(参考)】