チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液からペプチドグリカン認識蛋白質を分離する方法
(a)一つ以上の合成ペプチドグリカンが結合された樹脂でカラムを充填して親和性クロマトグラフィカラムを準備する段階と、(b)チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用する段階と、(c)移動相(mobile phase)を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用し、前記親和性クロマトグラフィカラムから溶離されたペプチドグリカン認識蛋白質含有溶液を得る段階と、(d)前記溶離された溶液からペプチドグリカン認識蛋白質を精製する段階とを含む、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液からペプチドグリカン(PGN)認識蛋白質を分離する方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成ペプチドグリカンを利用し、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液からペプチドグリカンを認識する蛋白質(以下ペプチドグリカン認識蛋白質と略称する)を分離する方法、該方法により分離されたペプチドグリカン認識蛋白質、該ペプチドグリカン認識蛋白質をコーディングするポリヌクレオチド、及び該ペプチドグリカン認識蛋白質を含むキットに関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの生物体は、病原菌や寄生虫のような外部の有害環境因子から常に攻撃を受けているが、免疫システムによって前記外部の有害環境因子に対して自身を防御できる。免疫システムは、外部の異物を認識する方法によって、先天性(innate)と後天性(adaptive)との免疫システムに区分される。先天性免疫システムのみを有している無脊椎動物と異なり、人間のような脊椎動物は、先天性免疫システム及び後天性免疫システムをいずれも有している。脊椎動物でのみ観察される後天性免疫システムは、体内に侵入した有害異物(いわゆる抗原)それぞれの構造を認識し、抗原に特異的な抗体を選択的に生成することによって、持続的な免疫反応を誘導する記憶依存性免疫システムである。一方、脊椎動物及び無脊椎動物いずれでも観察される先天性免疫システムは、病原菌に共通して存在する要素(すなわち、パターン)を認識して迅速に反応する記憶非依存性免疫システムである。何年か前まででも、前記先天性免疫システムは、後天性免疫システムが抗体を生成するまで侵入した外部物質から生体を一次的に防御する、後天性免疫システムほど特異的ではなく、かつあまり発達していない防御メカニズムであると認識されてきた。
【0003】
しかし、分子レベルで免疫システムについての活発な研究が最近数年間行われてきており、先天性免疫システムは、後天性免疫システムの活性化にも重要な役割を行うということが明らかになり、先天性免疫システムの重要性が認識されている[Carroll, M. C. et al, Curr. Opin. Immunol. 10, 36-48(1998); Ruslan, M. et al, Cell 91, 295-298(1997)]。
かような事実は、先天性免疫システムの調節が後天性免疫システムにおいて変化を引き起こし得ることを示唆する。従って、先天性免疫システムに対する新しい概念的アプローチが疾病の治療及び新薬の開発側面で要求される。最近、先天性免疫システムが多くの国内外研究者らによって分子レベルで活発に研究されている[Medzhitov, R. et al, Nature 388, 394-397(1997)]。
【0004】
先天性免疫システムに対する研究は、主に先天性免疫システムを有する無脊椎動物を使用して行われてきた。特に、昆虫が先天性免疫システムに対する多くの研究で使われてきた。分子レベルでの最近の研究結果は、昆虫及び人間における先天性免疫系間に類似性が存在するということを示し、従って先天性免疫システムに対する研究が多様な昆虫を使用して活発に進められている[Medzhitov, R. et al,(1997) Nature 388, 394-397(1997); Hultmark, D. (1994), Nature 367, 116-117(1994); Wasserman, S. A. Mol. Biol. Cell. 4, 767-771(1993))]。
【0005】
昆虫の免疫システムは、細胞性免疫反応と体液性免疫反応とに分けられる。体液性免疫反応は、外部物質の侵入に対応し、体液で抗菌性蛋白質の分泌、侵入した外部物質における特定糖を認識するレクチンの誘導、メラニン生成等に関連すると知られているプロ・フェノールオキシダーゼ(以下、pro−POと称する)の活性化などを含む。
【0006】
昆虫でのpro−PO活性化システムにかかわる研究結果によれば、セリンプロテイナーゼ(serine proteinase)阻害剤がフェノールオキシダーゼ(PO)の活性を選択的に抑制するということが明らかになった[Ashida, M. et al, Biochem. Biophys. Res. Commun. 113, 562-568(1983)]。pro−POは、セリンプロテイナーゼ性質を有するpro−PO活性化因子(PPAFs)によって媒介されるpro−POカスケードによって活性化されるということが報告されている[Aspan A. et al, Insect Biochem., 21, 363-373(1991)]。また、前記PPAFsによって媒介されるpro−POカスケードは、真菌細胞壁の構成成分であるベータ−1,3−グルカン[Kwon, T. H. et al, Mol. Cells. 7, 90-97(1997); Saul, S. et al, Archs. Insect Biochem. Physiol. 7, 91-103(1988); Ashida, M., Bombyxi mori, Insect Biochem. 11, 57-65(1981)]、または細菌細胞壁の構成成分であるリポポリサッカライド(LPS)及びペプチドグリカン(PGN)[Saul, S. et al, Archs. Insect Biochem. Physiol. 7, 91-103(1988); Ashida, M., Bombyxi mori, Insect Biochem. 11, 57-65(1981); Pye, A. E., Nature 251, 610-613(1974)]などの、いわゆるパターン(pattern)によって開始されるということが報告されている。
【0007】
一般的にPOは、不活性の前酵素(チモーゲン)として存在する。POが活性化されれば、POは、ジフェノールのキノンへの酸化を触媒してメラニンを生成する。POは、分子内に銅を含むと知られている。特に、昆虫のPOは、昆虫表皮の褐変(browning)及び硬化(sclerotization)、傷治癒のための傷部位からの体液漏出、及び侵入する病原菌に対する生体の保護のような防御メカニズムにおいて重要な役割を行うと考えられる。
【0008】
昆虫の防御メカニズムと関連したpro−POは、これまでの数十年間多くの研究者によって活発に研究されてきたが、1995年になって初めてキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、カイコガ(Bombyx mori)、タバコスズメガ(Manduca sexta)の三種の昆虫幼虫からのpro−POが分離及び精製され、そのアミノ酸配列が究明されるまで、pro−POの分離、精製または配列分析が可能ではなかった[Saul S. et al, Archs. Insect Biochem. Physiol., 5, 1-11(1987); Fujimoto K. et al,, PNAS, 92, 7769-7773; Kawabata T. et al,, PNAS, 92, 7774-7778(1995)] 。
【0009】
昆虫の先天性免疫システムに関連する天然のパターン認識蛋白質が同定され、pro−POカスケードにおけるそれらの生物学的機能が部分的に同定された[Girardin SE, et al. J Biol Chem. 278: 803283(2003); Hugot JP et al, Curr Opin Immunol. 15: 593597(2003)]。また、β−1,3−グルカン認識蛋白質がコウチュウ目に属するチャイロゴミムシダマシ幼虫の体液から分離及び同定され、前記β−1,3−グルカン認識蛋白質と前記pro−POカスケードとの相関関係が報告された。また、β−1,3−グルカン認識蛋白質が韓国産のチョウセンクロコガネ(Holotrichia diomphalia)の幼虫の体液から分離及び同定され、β−1,3−グルカン認識蛋白質の生物学的機能が報告された[Lee MH, et al, J Biol Chem. 279(5):3218-27(2000); Zhang R et al, J Biol Chem. 278(43):42072-9.(2003)]。
【0010】
最近、前記同定されたパターン認識蛋白質のうち、チョウセンクロコガネ幼虫の体液から分離されたPGN−認識蛋白質(PGRPs)が、PGNではない、真菌のパターンであるβ−1,3−グルカンを特異的に認識し、pro−POカスケードを活性化させるということが報告された[Lee MH, et al, J Biol Chem. 279(5):3218-27(2000)]。かような結果は、天然のパターン認識蛋白質の分子メカニズム及びpro−POカスケードの活性化メカニズムの相関関係がまだ明確に究明されていないということを示す。
【0011】
チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液のpro−POカスケードは、真菌のパターンであるβ−1,3−グルカンによって活性化されると報告された。また、β−1,3−グルカンを特異的に認識する蛋白質がチャイロゴミムシダマシ幼虫の体液に存在することが発見された。かような結果は、真菌感染検出用の診断試薬の開発に対して新しい可能性を提示する[Zhang R et al, J Biol Chem. 278(43):42072-9(2003)]。
【0012】
PO活性化のためのカスケード経路を含むPO活性化システムは、病原菌あるいは外部物質の侵入またはホストの血液細胞の脱顆粒化に反応して活性化される内部因子によって容易に活性化され、pro−POをPOに変換させることによって、カテコールアミン類からメラニンを形成する。従って、前記PO活性化システムを誘発する(PGN及びβ−1,3−グルカンのような)パターンを特異的に認識するパターン認識蛋白質を分離し難い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記の問題点の観点から、本発明者らは、PGN−認識蛋白質と結合できるが、PO活性化の下位(subsequent)カスケードは活性化されられない合成PGNを利用し、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液からフェノールオキシダーゼ(PO)活性化システムに関与するペプチドグリカン(PGN)認識蛋白質の分離方法を開発した。
従って、本発明は、合成PGNを使用し、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液からPGN認識蛋白質を分離する方法を提供する。
【0014】
本発明はまた、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液からPGN認識蛋白質を除外したパターン認識蛋白質分画を分離する方法を提供する。
本発明はまた、前記方法を使用して分離されたPGN認識蛋白質及び前記PGN認識蛋白質をコーディングするポリヌクレオチドを提供する。
本発明はまた、前記PGN認識蛋白質を含むPGN検出キットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一様態によって、(a)下記化学式1ないし4で表示される化合物からなる群から選択された一つ以上の合成PGNが結合された樹脂でカラムを充填して親和性クロマトグラフィカラムを準備する段階と、(b)チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用する段階と、(c)移動相(mobile phase)を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用し、前記親和性クロマトグラフィカラムから溶離されたPGN認識蛋白質含有溶液を得る段階と、(d)前記溶離された溶液からPGN認識蛋白質を精製する段階とを含む、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液からペプチドグリカン(PGN)認識蛋白質を分離する方法が提供される:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
式中、Prはプロピルである。
【0016】
本発明の他の様態によって、(a)前記化学式1ないし4で表示される化合物からなる群から選択された一つ以上の合成PGNが結合された樹脂でカラムを充填して親和性クロマトグラフィカラムを準備する段階と、(b)チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用する段階と(c)洗浄溶液を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用し、前記親和性クロマトグラフィカラムから溶離されたPGN認識蛋白質を除外した他のパターン認識蛋白質の溶液を得る段階と、(d)前記溶離された溶液からPGN認識蛋白質を除外したパターン認識蛋白質の分画を精製する段階とを含む、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液からPGN認識蛋白質を除外したパターン認識蛋白質分画を分離する方法が提供される。
【0017】
本発明のさらに他の様態によって、前記方法を使用して分離されたPGN認識蛋白質、及び前記PGN認識蛋白質をコーディングするポリヌクレオチドが提供される。
本発明のさらに他の様態によって、前記PGN認識蛋白質を含むPGN検出キットが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の例示的具現例を示す下記添付図面を参照しつつ、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明は、合成PGNを使用してチャイロゴミムシダマシ幼虫の体液からペプチドグリカン(PGN)認識蛋白質を分離する方法を提供する。前記合成PGNは、下記化学式1ないし4で表示される化合物からなる群から選択され、化学式3の化合物がさらに望ましい:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
式中、Prはプロピルである。
【0019】
前記合成PGNは、グラム陽性菌の天然ペプチドグリカンとその構造が類似している。前記合成PGN及び天然のPGNは、PGN認識蛋白質に競争的に結合する。すなわち、前記合成PGNは、PGN認識蛋白質に結合することは可能であるが、フェノールオキシダーゼ(PO)活性化のための下位(subsequent)カスケードを活性化させられない。従って、前記合成PGNは、天然のPGNの競争的抑制剤として作用する。
【0020】
本発明によるPGN認識蛋白質の分離方法は、前記化学式1ないし4で表示される化合物からなる群から選択された一つ以上の合成PGNの結合された樹脂でカラムを充填し、親和性クロマトグラフィカラムを準備する段階を含む。前記樹脂は、セファローズ、セファデックスなどであって、セファローズ樹脂が望ましい。
【0021】
本発明によるPGN認識蛋白質の分離方法は、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液を前記で準備された親和性クロマトグラフィカラムに適用する段階を含む。この段階で、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液中のPGN認識蛋白質が前記親和性クロマトグラフィカラム内の合成PGNに結合される。
【0022】
本発明によるPGN認識蛋白質の分離方法は、移動相(mobile phase)を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用し、前記親和性クロマトグラフィカラムから溶離されたペプチドグリカン認識蛋白質含有溶液を得る段階を含む。前記移動相は、EDTA及びNaClを含有するTris−HCl溶液であって、望ましくは、1M NaCl及び3mM EDTAを含有する50mM Tris−HCl溶液(pH7.5)でありうる。
【0023】
本発明によるペプチドグリカン認識蛋白質分離方法は、前記溶離された溶液からPGN認識蛋白質を精製する段階を含む。すなわち、前記親和性クロマトグラフィカラムから溶離された溶液中の蛋白質をSDS−PAGEなどで分析し、SDS−PAGEによって決定されるPGN認識蛋白質含有の分画を精製する。
【0024】
前記PGN認識蛋白質の精製は、当業界に公知された多様な精製方法、例えばサイズ排除(size-excluision)クロマトグラフィ、イオン濃度勾配クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィなどを使用して遂行することができる。PGN認識蛋白質の精製効率を向上させるために、前記溶離された溶液は、前記精製前に濃縮させることができる。
本発明の一具現例によって、前記PGN認識蛋白質の精製は、前記溶離された溶液のサイズ排除カラムクロマトグラフィ、イオン濃度勾配カラムクロマトグラフィ及びイオン交換カラムクロマトグラフィの順次的実行によって遂行されうる。このとき、前記サイズ排除カラムクロマトグラフィ、前記イオン濃度勾配カラムクロマトグラフィ及び前記イオン交換カラムクロマトグラフィは、それぞれトヨパール(Toyopearl)Hw55Sカラム、ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)カラム及びモノ−QFPLCカラム上で遂行されうる。
【0025】
本発明はまた、(a)前記化学式1ないし4で表示される化合物からなる群から選択された一つ以上の合成PGNが結合された樹脂でカラムを充填して親和性クロマトグラフィカラムを準備する段階と、(b)チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用する段階と、(c)洗浄溶液を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用し、前記親和性クロマトグラフィカラムから溶離されたPGN認識蛋白質を除外した他のパターン認識蛋白質の溶液を得る段階と、(d)前記溶離された溶液からPGN認識蛋白質を除外したパターン認識蛋白質の分画を精製する段階とを含む、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液からPGN認識蛋白質を除外したパターン認識蛋白質分画を分離する方法を提供する。
【0026】
段階(a)、(b)及び(d)は、前述のPGN認識蛋白質の分離方法の各段階と類似した方法で遂行されうる。段階(c)で使われる前記洗浄溶液は、EDTA含有Tris緩衝液(pH6.0)であって、望ましくは、3mM EDTA含有の50mM Tris緩衝液(pH6.0)でありうる。
本発明はまた、前記PGN認識蛋白質の分離方法を使用して分離されたPGN認識蛋白質を提供する。本発明の一具現例によって、前記PGN認識蛋白質は、配列番号1のアミノ酸配列を有することができる。
【0027】
本発明はまた、前記PGN認識蛋白質を分離する方法をコーディングするポリヌクレオチドを提供する。本発明の一具現例によって、前記ポリヌクレオチドは、配列番号2のヌクレオチド配列を有することができる。
本発明はまた、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液から由来するPGN認識蛋白質を使用し、サンプル中のPGN検出用キットを提供する。
サンプル中のPGNは、バクテリアの細胞壁から由来しうる。従って、前記キットを使用すれば、サンプル中のバクテリアの存在が迅速であって便利に検出されうる。本発明の他の一具現例によって、前記PGN認識蛋白質は、配列番号1のアミノ酸配列を有することができる。
以下、実施例を介して本発明についてさらに詳細に説明する。下記実施例は、単に本発明について説明するためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0028】
実施例1:チャイロゴミムシダマシの幼虫の体液採取
チャイロゴミムシダマシの幼虫をソウル大公園の昆虫飼育室から得て飼育した。以下の実験に使用するために、幼虫が約2cmを超える大きさに育つまで室温(25℃)で麦ぬかとキャベツとを前記幼虫に食べさせた。
前記幼虫(平均重さ、0.1g/幼虫)に対して氷上で低温麻酔を施した。25G注射針が装着された5ml滅菌注射器に脱凝集緩衝液(NaCl 15mM、クエン酸三ナトリウム83mM、クエン酸26mM及びEDTA 20mM;pH5.0)を充填した。
前記脱凝集緩衝液1.4mlを滅菌されたエッペンドルフチューブに加え、注射針で幼虫の頭の第1節を刺し、前記幼虫から流出される体液を前記エッペンドルフチューブに入れた。1つのチューブ当たり15の幼虫から流出された体液を集めた。
【0029】
実施例2:天然PGNまたはβ−1,3−グルカンの準備
黄色ブドウ球菌(S.aureus)及びルテウス菌(M.luteus)由来のPGNは、Fluka社から、β−1,3−グルカン(Curdlan)は、和光純薬工業株式会社(日本)から購入した。
S.aureus及びM.luteus由来のPGNを超音波破砕した。このように得られた水溶性PGNを20mM Tris緩衝液(pH8.0)で処理して10%のPGN溶液を得て、反応溶液では、1μg PGNの含有量で使用した。
【0030】
実施例3:合成PGNの製造
(1)アリル6−O−ベンジル−4−(3−O−ベンジル−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−2−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニルアミノ)−β−D−グルコピラノシル)−3−O−((R)−1−(エトキシカルボニル)エチル)−2−デオキシ−グルコピラノシド(化合物4)の製造
−15℃で無水ジクロロメタン中に、N−Troc−グルコサミニルトリクロロアセトイミデート供与体(化合物2)(26.0g、38mmol)、N−ムラミル受容体(化合物3)(17.0g、30mmol)及びメンブレン・スパニング4Aファミリー(MS4A)の混合物にトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(TMSOTf)(340μl、3.0mmol)を加えた。
【0031】
【表1】
【0032】
反応混合物を−15℃で10分間撹拌した。反応溶液を冷却されたNaHCO3飽和水溶液(30mL)でクエンチング(quenching)し、CHCl3(250mL)で抽出した。有機層をNaHCO3(60mL)及び食塩水(60mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、真空濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(600g、トルエン:EtOAc=10:1)で精製し、標題の化合物(29.0mg、88%)を淡黄色固体で得た:
ESI-TOF-MS (positive) m/z 1119.2 [M + Na]+;
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ = 7.45-7.29 (15H, m, (C6H5)-CH2-), 5.85-5.78 (1H, m, -CH2-CH=CH2), 5.57 (1H, s, Ph-CH=), 5.28-5.13 (3H, m, H-1, -CH2-CH=CH2), 4.89-4.59 (10H, m, CCl3-CH2-OCO-, CH3-CH2-OCO-, Ph-CH2-), 4.43-4.39 (1H, m, H-6'), 4.26-4.04 (5H, m, Lac-αH, Ph-CH2-, H-1'. -CH2-CH=CH2), 3.98-3,93 (2H, m, -CH2-CH=CH2, H-3), 3.77-3.56 (6H, m, H-2, H-4, H-4', H-6, H-6'), 3.43-3.41 (2H, m, H-2', H-5), 3.25-3.21 (2H, m, H-3, H-5'), 1.34-1.25 (6H, m, Lac-CH3, CH3-CH2-OCO).実測値: C, 51.42; H, 4.90; N, 2.60. C47H54Cl6N2O15として計算値: C, 51.33; H, 4,95; N, 2.55%。
【0033】
(2)ジサッカライド1−O−トリクロロアセトイミデート(化合物12)の製造
無水THF(6mL)中の化合物4(3.0g、2.7mmol)の溶液を脱気し、H2活性化された[Ir(cod)(MePh2P)2]PF6(23mg、0.027mmol)を加えた。反応混合物を室温で窒素大気下で1時間撹拌した後、無水THF(3mL)中のH2活性化された[Ir(cod)(MePh2P)2]PF6(23mg、0.027mmol)の溶液を加えた。反応混合物を室温で窒素大気下で1時間撹拌し、ヨード(690mg、2.7mmol)及び水(10mL)を加えた。反応混合物をさらに10分間撹拌し、Na2SO3水溶液(5%、100mL)をすぐに加えた。得られた反応溶液をEtOAc(50mL)で抽出した。有機層を水性Na2S2O2水溶液(5%、50mLx2)、NaHCO3飽和水溶液(100mLx2)、食塩水(50mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、真空濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(180g、トルエン:EtOAc=4:1)で精製し、標題の化合物(2.72mg、93%)を淡黄色固体で得た:
[α]D23 = +8.4 (c 1.00, CHCl3);
ESI-MS (positive) m/z = 1079.0[M + Na]+; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 7.54.7.27 (m, 15H, (C6H5)-CH2-), 5.60 (br.s, 1H, H-1), 5.57 (s, 1H, Ph-CH=), 4.89-4.60 (m, 8H, CCl3-CH2-OCO-, CH3-CH2-OCO-, Ph-CH2-), 4.43-4.39 (m, 1H, H-6'''), 4.31-3.91 (m, 4H, Ph-CH2-, H-1', Lac-αH), 3.95-3.91 (m, 1H, H-3), 3.82-3.63 (m, 6H, H-2, H-4, H-6, H-4', H-6'), 3.43-3.41 (m, 2H, H-2', H-5), 3.22-3.21 (m, 2H, H-3', H-5'), 1.35.1.27 (m, 6H, Lac-Me, CH3-CH2-OCO). 実測値: C, 51.68; H, 5.33; N, 2.35. C44H50Cl6N2O15として計算値: C, 51.24; H, 5.12; N, 2.54%。
【0034】
(3)4’−O−ジサッカライド(化合物13)の製造
化合物4(1.5g、1.36mmol)を無水CH3CN(13mL)に溶解させ、トリエチルアミンボラン(150mg、2.05mmol)溶液を得た。ボラントリフルオライドジエチルエテレート(960mg、6.80mmol)を前記トリエチルアミンボラン溶液に0℃で滴加した。反応混合物を室温で30分間撹拌し、氷で冷却させた(ice-cooled)NaHCO3飽和水溶液(100mL)でクエンチング(quenching)し、EtOAc(100mLx2)で抽出した。有機層を10%クエン酸水溶液(15mLx4)、NaHCO3飽和水溶液(150mL)及び食塩水(100mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、真空濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(180g、トルエン:EtOAc=4:1)で精製し、標題の化合物(1.13g、73%)を無色固体で得た:
[α]D23 = +25.6 (c 1.00, CHCl3); ESI-TOF-MS (positive) m/z = 1121.6 [M + Na]+; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 7.43-7.27 (15H,m,(C6H5)-CH2-), 5.85-5.79 (1H, m, -CH2-CH=CH2), 5.26-5.13 (3H, m, -CH2-CH=CH2, H-1), 4.86-4.50 (9H, m, CCl3-CH2-OCO-, CH3-CH2-OCO-, Ph-CH2-), 4.33-4.04 (5H, m, Ph-CH2-, Lac-αH, H-1', -CH2-CH=CH2), 3.97-3.57 (10H, m, -CH2-CH=CH2, H-3, H-4, H-6, H-3', H-4', H-6'), 3.46-3.36 (2H, m, H-2', H-5), 3.27-3.23 (1H, m, H-5'), 1.29-1,20 (6H, m, Lac-CH3, CH3-CH2-OCO). 実測値: C, 51.68; H, 5.33; N, 2.35. C47H56Cl6N2O15として計算値: C, 51.24; H, 5.12; N, 2.54%。
【0035】
(4)完全に保護されたテトラサッカライド(化合物14)の製造
−15℃で、無水ジクロロメタン(75mL)中の化合物12(2.7g、38mmol)、化合物13(1.65g、30mmol)及びMS4Aの混合物にTMSOTf(18μl、0.15mmol)を加え、反応混合物を−15℃で10分間撹拌した。反応溶液を氷で冷却させた(ice-cooled)NaHCO3飽和水溶液(100mL)でクエンチング(quenching)し、CHCl3(100mL)で抽出した。有機層をNaHCO3(60mLx2)及び食塩水(60mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、真空濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(300g、トルエン:EtOAc=10:1)で精製し、標題の化合物(2.33g、79%)を淡黄色固体で得た:
[α]D23 = -1.7 (c 1.00, CHCl3); ESI-TOF-MS (positive) m/z = 2159.0 [M + Na]+; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ = 7.51-7.27 (30H, m, (C6H5)-CH2-), 5.86-5.76 (1H, m, -CH2-CH=CH2), 5.56 (1H, s, Ph-CH=), 5.25-4.98 (4H, m, -CH2-CH=CH2, Ph-CH2-, H-1), 4.88-4.33 (17H, m, CCl3-CH2-OCO-, CH3-CH2-OCO-, Ph-CH2-), 4.32-3.90 (12H, m, Ph-CH2-, Lac-αH, H-1'', H-1'', H-1''', H-6''', -CH2-CH=CH2), 3.87-3.01 (24H, m, Ph-CH2-, H-2, H-3, H-4, H-5, H-6, H-2', H-3', H-4', H-5', H-6', H-2'', H-3'', H-4'', H-5'', H-6'', H-2''', H-3''', H-4''', H-5''', H-6''' ), 1.32-1,27 (12H, m, Lac-CH3,CH3-CH2-OCO)。
【0036】
(5)2−N−アセチル−テトラサッカライド(化合物21)の製造
Zn−Cu(1gのZnから製造される)を化合物14(1.05g、0.46mmol)の酢酸溶液に加え、反応混合物を室温で1時間撹拌した。不溶性物質を濾過して除去し、濾液を真空濃縮した。残留溶媒をトルエン(5mLx3)で共蒸発(co-evaporation)させて除去した。粗生成物をピリジン(7mL)及び無水酢酸(7mL)に溶解させた。反応混合物を室温で30分間撹拌し、真空濃縮した。残留溶媒をトルエン(5mLx3)と共に共蒸発させて除去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(80g、CH3Cl:アセトン=3:1)で精製し、標題の化合物(750mg、quant.)を白色固体で得た:
[α]D23 = -7.4(c 1.00, CH3Cl); ESI-TOF-MS(positive) m/z=1609.2[M+H+], 1631.6[M+Na]+。
【0037】
(6)遊離カルボン酸を有するテトラサッカライド(化合物23)の製造
LiOH(28mg、0.66mmol)を、化合物21(180mg、0.11mmol)のジオキサン:THF:H2O(2:4:1、1.2mL)溶液に加え、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応溶液をDowex H+(Dowex 50W−x8 200−400メッシュH形態、ダウケミカル)で中和し、HP−20カラム(2cmx40cm)に適用した。有機及び無機の塩をH2O(300mL)で溶離して除去し、メタノールで溶離して標題化合物(170mg、quant.)を白色固体で回収した:
ESI-TOF-MS(positive) m/z=1575.1[M+Na]+ 。
【0038】
(7)保護されたテトラサッカライドジペプチド(化合物25)の製造
WSCI・HCl(37mg、0.25mmol)及びトリエチルアミン(48μl、0.47mmol)を、化合物23(122mg、0.078mmol)及びHOBt(33.5mg、0.25mmol)のジクロロメタン(14mL)溶液に0℃で加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、EtOAcで希釈し、濾過して不溶性物質を除去した。濾液を濃縮し、CHCl3に溶解させた。得られたCHCl3溶液を、クエン酸(1M、20mL)、H2O(20mL)、飽和NaHCO3(20mL)及び食塩水(20mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥し、真空濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(20g、CHCl3:メタノール=20:1)で精製し、標題の化合物(143mg、86%)を白色固体で得た:
ESI-TOF-MS (positive) m/z =2153.52[M + Na]+; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ =7.52-7.15 (40H, m), 5.58 (1H, m), 5.57 (1H, s), 5.56-5.07 (6H, m), 4.86 (1H, d, J =12.3 Hz), 4.83 (1H, d, J =3.7Hz), 4.74(1H.dd, J =12.1 Hz), 4.66-4.57 (4H, m), 4.35-4.24 (8H, m), 4.09-3.92 (6H, m), 3.83-3.59 (12H, m), 3.53-3.43 (10H, m), 3.39-3.35 (1H, m), 3.34-3.20 (1H, m), 2.56-2.41 (4H, m), 2.17-2.03 (7H, m), 1.93 (3H, s), 1.88 (3H, s), 1.73 (3H, s), 1.57-1.53 (3H, m), 1.43 (1H, d, J =6.9 Hz), 1.37-1.33 (3H, m), 1.26 (1H, m). 実測値: C, 62.03; H, 6.63; N, 6.38. C113H138N10O31 ・3H20として計算値: C, 62.08; H, 6.64; N, 6.41%。
【0039】
(8)テトラペプチド(化合物27)の製造
標題の化合物を化合物25の製造方法と類似した方法で製造した: ESI-TOF-MS(positive) m/z=1400.53[(M+2H)2+]。
【0040】
(9)テトラサッカライドジペプチド(化合物32、化学式1で表示される化合物)の製造
無水THF(6mL)中の化合物25(300mg、0.071mmol)溶液を脱気し、H2活性化された[Ir(cod)(MePh2P)2]PF6(23mg、0.027mmol)の無水THF(3mL)溶液を加えた。反応混合物を室温で窒素大気下で1時間撹拌し、H2活性化された[Ir(cod)(MePh2P)2]PF6(23mg、0.027mmol)の無水THF(3mL)溶液を加えた。反応混合物を室温で窒素大気下で1時間撹拌し、ヨード(35mg、0.142mmol)及び水(0.5mL)を加えた。反応混合物をさらに10分間撹拌し、水性Na2SO3(5%、100mL)でクエンチング(quenching)し、EtOAc(50mL)で抽出した。有機層を水性Na2S2O2(5%、10mLx2)、NaHCO3飽和水溶液(100mLx2)及び食塩水(50mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、真空濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(20g、トルエン:EtOAc=5:1)で精製し、1−遊離されたテトラサッカライド(260mg、88%)を淡黄色固体で得た: ESI-TOF-MS(positive) m/z=2113.6[M+Na]+ 。
【0041】
酢酸中に存在する炭素上の水酸化パラジウム(100mg)を1−遊離されたテトラサッカライド(86mg、0.04mmol)の酢酸(3mL)溶液に加え、反応混合物をH2(20atm)下で一日撹拌した。パラジウム触媒を濾過して除去して濾液を濃縮し、H2Oから凍結乾燥し、標題の化合物(39mg、70%)を白色固体で得た:
ESI-TOF-MS (positive) m/z = 685.3 [M-2H]2-; HRMS-ESI FT-ICR(negative): (M) C54H88N10O31としての計算値, 1372.561; 実測値1372.555; 1H NMR ((600 MHz, D2O): d = 5.16-5.15 (d, J = 3.0 Hz, 1H, H-1), 4.46-4.42 (m, 3H), 4.36-4.32 (m, 2H), 4.30-4.27 (m, 2H, iGln--CH), 4.26-4.19 (m, 2H), 3.86-3.30 (m, 24H), 2.31 (m, 4H, iGln-γ-CH2), 2.12-2.03 (m, 4H, iGln-β-CH2), 1.96-1.95 (s, 12H, NHC(O)CH3 X 4), 1.37-1.35 (m, 6H, Ala-β-CH3), 1.31-1.28 (m, 6H, Lac-β-CH3)。
【0042】
(10)テトラサッカライドトリペプチド(化合物33、化学式2で表示される化合物)の製造
水酸化パラジウム(100mg)の酢酸溶液を化合物27(95mg、0.036mmol)の酢酸(3mL)溶液に加え、反応混合物をH2(20atm)下で一日撹拌した。反応の経過を薄膜クロマトグラフィ(TLC)分析でモニターし、脱保護化が終了するまで水素化分解(hydrogenolysis)を持続した。パラジウム触媒をセライトパッド(cerite pad)を介して濾過して除去し、濾液を濃縮した。残渣をアセトニトリル−H2Oから凍結乾燥し、標題の化合物(39mg、50%)を白色粉末で得た:
ESI-TOF-MS (negative) m/z = 834.5 [M-2H]2-; HRMS-ESI FT-ICR (negative): (M) C69H118N14O33として計算値, 1670.798; 実測値, 1670.817; 1H NMR (500 MHz, D2O): δ= 4.86-4.80 (m, 1H, H-1) 4.46-4.40 (m, 3H), 4.36-4.05 (m, 8H, Lac-α-CH, Ala-α-CH, iGln-α-CH, Lys-α-CH), 3.86-3.30 (m, 26H), 3.00-2.90 (t, J = 11.4, 4H, Lys-ε-CH2), 2.37-2.31 (t, J = 9.5, 4H, iGln-γ-CH2), 2.09-2.0 (m, 4H, iGln-β-CH2), 2.02-1.81 (m, 18H, NHC(O)CH3 X 4, Lys-β-CH X 2, Lys-δ-CH X 2), 1.78-1.69 (m, 2H, Lys-δ-CH X 2), 1.58-1.70 (m, 4H, Lys-γ-CH2 X 2), 1.61-1.4 (m, 2H, Propyl CH3-CH2), 1.40-1.35 (m, 6H, Ala-β-CH3), 1.31-1.28 (m, 6H, Lac-β-CH3), 0.85-0.80 (t, J = 9.3, 3H, Propyl CH3)。
【0043】
(11)テトラサッカライドテトラペプチド(化合物35、化学式3で表示される化合物)の製造
標題の化合物を化合物27から化合物33の製造方法と類似した方法で製造した:
ESI-TOF-MS (negative) m/z = 905.1 [M-2H]2-; HRMS-ESI FT-ICR (negative): (M) C75H128N16O35として計算値, 1812.873; 実測値, 1812.896; 1H NMR (500 MHz, D2O): δ= 4.86-4.80 (m, 1H, H-1), 4.46-4.40 (m, 3H), 4.36-3.95 (m, 10H, Lac-α-CH, Ala-α-CH, D-iGln-α-CH, Lys-α-CH), 3.86-3.30 (m, 26H), 3.00-2.90 (t, J = 7.5, 4H, Lys-ε-CH2), 2.40-2.31 (t, 4H, iGln-γ-CH2), 2.09-1.82 (m, 22H, iGln-β-CH2 X 2, NHC(O)CH3 X 4, Lys-β-CH2 X 2, Lys-δ-CH X 2), 1.78-1.4 (m, 8H, Lys-δ-CH X 2, Lys-γ-CH2 X 2, Propyl CH3-CH2), 1.40-1.22 (m, 12H, Ala-β-CH3 X 4, Lac-β-CH3 X 2), 0.85-0.80 (m, 3H, Propyl CH3)。
【0044】
(12)テトラサッカライドペンタペプチド(化合物37、化学式4で表示される化合物)の製造
標題の化合物を化合物27から化合物33の製造方法と類似した方法で製造した:
ESI-TOF-MS (negative)m/z = 976.64 [M-2H]2-;;HRMSESI FT-ICR (negative): (M) C81H138N18O37として計算値, 1954.947; 実測値, 1954.939;1H NMR (500 MHz, D2O): δ = 4.86-4.80 (m, 1H, H-1), 4.46-4.40 (m, 3H), 4.36-4.0 (m, 12H, Lac-α-CH, Ala-α-CH, iGln-α-CH, Lys-α-CH), 3.86-3.30 (m, 26H), 2.95-2.91 (t, J = 7.5, 4H, Lys-ε-CH2), 2.40-2.31 (t, J = 7.0, 4H, iGln-γ-CH2), 2.09-1.82 (m, 22H, iGln-β-CH2 X 2, NHC(O)CH3 X 4, Lys-β-CH2 X 2, Lys-δ-CH X 2), 1.78-1.4 (m, 8H, Lys-δ-CH X 2, Lys-γ-CH2 X 2, Propyl CH3-CH2), 1.40-1.22 (m, 12H, Ala--CH3 X 6, Lac-β-CH3 X 2), 0.85-0.80 (m, 3H, Propyl CH3)。
【0045】
実施例4:PO活性化に対する天然または合成PGNの影響評価
本実施例では、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液内でのPOの活性化に対する天然または合成PGNの影響を評価した。
PO活性を基質溶液(4−メチルカテコール、及び4−ヒドロキシプロリンエチルエステルのHCl溶液)を使用し、Pye分光光度測定法(Pye-spectrophotometric method)によって分析した。4−メチルカテコールは、POによってキノンに酸化され、これは、4−ヒドロキシプロリンエチルエステルHCl溶液との非酵素的反応によって、520nmで最大の吸光度を有する安定した化合物である4−(4’−ヒドロキシル−2’−カルブエトキシ−1’−ピロリン)−5−メチル−o−ベンゾキノンに転換される(図2参照)。
10%β−1,3−グルカン溶液10μl(1μg)、10%S.aureus PGN溶液10μl(1μg)、10%M.luteus PGN溶液10μl(10ng)及び10%合成PGN(化学式1ないし4の化合物それぞれ)溶液10μl(1μg)それぞれを、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液30μl(蛋白質350μg)と共に30℃で5分間インキュベートした。その後、4−メチルカテコール(250mM)4μl、4−ヒドロキシプロリンエチルエステルHCl溶液(62.5mM)16μl及び1M CaCl2(10mM)5μlを加えた。20mM Tris−HCl(pH8.0)を最終容積が500μlになるように加えた。反応混合物を30℃でインキュベートした後、反応混合物の吸光度を520nmで測定した(図3参照)。
【0046】
β−1,3−グルカン溶液、S.aureus PGN溶液、M.luteus PGN溶液は、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液中でPGN依存のpro−POカスケードを活性化させたが、相対的に簡単な構造を有する合成PGNは、PGN依存のpro−POカスケードを活性化させられないことが発見された(図3参照)。
一方、S.aureus PGN 1μg及び合成PGN 1μgの存在下でPO活性を測定した。PGN活性の阻害程度は合成PGNによって異なるが、合成PGNは、PGN依存のPO活性を抑制することが発見された(図4参照)。特に、N−アセチルムラミン酸に4個のアミノ酸が連結された化学式3の化合物35が天然のPGN依存のPO活性の最も強力な競争的阻害剤として機能した。かような結果は、化学式3の合成PGNがチャイロゴミムシダマシ幼虫の体液に存在するPGN認識蛋白質によって最適に認識されるということを示す。
また、S.aureus PGN 1μg存在下で、化学式3の合成PGNを増加させつつ追加し(0.2、0.4、0.8及び1.5μg)、PO活性を測定した。PO活性が合成PGN濃度依存の様相で阻害されることが発見された(図5参照)。
【0047】
実施例5:アミダーゼ活性に対する天然または合成PGNの影響評価
10%のグラム陽性S.aureus PGN溶液(最終濃度:1μg)10μl及び10%の合成PGN(化学式3の化合物35)溶液10μlを、基質として40μMのトリプシンMCA(t−ブチルオキシカルボニル−ベンジル−L−フェニルアラニル−L−セリル−L−アルギニン−4−メチルクマリル−7−アミド;Boc−Phe−Ser−Arg−MCA)存在下で30℃でインキュベートした後、蛍光分光光度計(UV−160Aモデル、(株)島津製作所)を使用し、380nm(励起波長)及び460nm(放射波長)で蛍光を測定した。
その結果、アミダーゼ活性がPO活性と同じ阻害パターンを示すということが発見された(図6参照)。かような結果は、合成PGNが前記PGN認識のみに関与するということを示す。
【0048】
実施例6:チャイロゴミムシダマシ幼虫からのPGN認識蛋白質の精製
(1)合成PGN結合カラムの準備
まず、CNBrセファローズ4B樹脂を1mM HClで活性化させた。その後、化学式3の合成PGN20mgの結合緩衝液(0.1M NaHCO3、0.5M NaCl)(pH8.3)溶液を前記CNBrセファローズ4B樹脂に適用した。得られた混合物を室温で1時間インキュベートし、ブロッキング緩衝液(0.1M Tris溶液、pH8.0)と共に室温で2時間撹拌し、0.1Mアセテート緩衝液(pH4.0、0.5M NaCl)及び0.1M Tris−HCl緩衝液(pH8.0、0.5M NaCl)でそれぞれ3回洗浄し、PGN結合のセファローズ4B樹脂を製造した。
合成PGNが前記CNBrセファローズ4B樹脂に結合されているか否か確認するために、合成PGN結合緩衝液溶液、及び前記結合緩衝液と前記CNBrセファローズ4B樹脂との中で前記合成PGN溶液をインキュベートした後で得られた溶液に対し、218nmで吸光度測定を行い、吸光度低下率(%)を計算した。その結果、前記合成PGN及び前記CNBrセファローズ4B樹脂の結合反応によって、89%の収率でPGN結合の樹脂が生成されることによって、PGN(32ml)結合カラムが製造された。
一方、合成PGNを使用していないことを除いては、前記と同じ方法で対照群カラムを製造した。
【0049】
(2)20 kDaのPGN認識蛋白質の分離及び精製
(a)合成PGN結合カラムを使用した精製
0.5M DFP溶液を抗凝集緩衝液(pH5.0)で採取されたチャイロゴミムシダマシ幼虫の体液160mlに最終濃度が2mMになるように加えた。反応混合物を4℃で2時間インキュベートし、3mM EDTA含有の50mM Tris緩衝液(pH6.0)で5℃で12時間透析した。
開放カラム(ψ3cmx25cm)をPGN結合セファローズ樹脂約30mlで充填し、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液の透析された溶液約160mlを分当たり0.6mlの流速でPGN結合カラムにローディングした。
前記PGN結合カラムを3mM EDTA含有50mM Tris緩衝液(pH6.0)で分当たり0.6mlの流速で洗浄し、280nmでの吸光度測定を介して、蛋白質が検出されなくなるまで、3mM EDTA及び1M NaCl含有の50mM Tris緩衝液(pH6.0)を使用し、分当たり0.4mlの流速で前記PGN結合カラムから蛋白質を溶離させた。溶離された溶液中の蛋白質濃度を280nmでの吸光度測定によって決定し、蛋白質の純度及び含有量をSDS−PAGEで分析した。
パススルー(pass-through)溶液及び1M NaCl溶離溶液を前記PGN結合カラムから得て、分子量カットオフサイズ10,000のメンブレンの装着された限外濾過キット(ultrafiltration kit、Amicon社)を使用して濃縮した。
【0050】
透析前(図7のレーン1)及び透析後(図7のレーン2)のチャイロゴミムシダマシ幼虫の体液、前記PGN結合カラムからのパススルー溶液(図7のレーン3)、前記PGN結合カラムからの1M NaCl溶離溶液(図7のレーン4)、及び対照群カラムからの1M NaCl溶離溶液(図7のレーン5)をSDS−PAGEで分析した。約25μgの蛋白質をSDS−PAGEゲル上にローディングした。
対照群カラム及びPGN結合カラムの1M NaCl溶離溶液中の蛋白質のゲルパターンを比較分析した。前記SDS−PAGEの結果は、約20 kDaの蛋白質が前記PGN結合カラムで溶離された溶液でのみ特異的に存在するということを示す(図7参照)。
【0051】
(b)トヨパールHW55S FPLCカラムを使用した精製
(a)で前記PGN結合カラムからの1M NaCl溶離溶液を、分子量カットオフサイズ10,000のメンブレンの装着された限外濾過キット(ultrafiltration kit、Amicon社)を使用して濃縮し、濃縮されたサンプルを準備した。
FPLCカラム(ψ1.0cmx30cm)をトヨパールHW55S樹脂で充填し、3mM EDTA及び0.15M NaCl含有の50mM Tris溶液(pH6.0)で、分当たり0.2mlの流速で平衡化させた。
前記濃縮されたサンプルを、前記トヨパールHW55S FPLCカラムにローディングし、各ピーク別に分画した。総分画物をプロファイルパターン(profile pattern)別に集め、SDS−PAGEで分析して蛋白質バンドのパターンを同定した。
前記SDS−PAGE結果は、前記分画が(a)の分画より、約80%の他の蛋白質が除去された、さらに精製されたチャイロゴミムシダマシ幼虫のPGN認識蛋白質(すなわち、トランスメンブレンPGN認識蛋白質(Tm−PGRP))分画であることを示す。前記SDS−PAGEの結果はまた、前記カラムからの前記チャイロゴミムシダマシ幼虫のPGN認識蛋白質の溶離が、ローディングからおよそ55分後に始まるということを示す(図9参照)。前記よりさらに精製されたチャイロゴミムシダマシ幼虫のPGN認識蛋白質分画物を次の実験で使用した。
【0052】
(c)ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)カラムを使用した精製
FPLCカラム(ψ0.5cmx10cm)をリン酸基のイオン強度によって異なる分離効率を示すヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)樹脂で充填し、前記トヨパールHW55Sカラムから得た蛋白質分画を、前記ヒドロキシアパタイトカラムにローディングした。このとき、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)を緩衝液Aとして使用し、300mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)を緩衝液Bとして使用した。前記緩衝液A及びBをリン酸塩の濃度勾配(120分で最大75mM)によって、分当たり0.4mlの流速で流した。PGN依存のPO活性を示す分画を集め、次の精製過程を行った。
トヨパールHW55Sカラムから得られた分画物のヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィの結果は、図10に表した。
総分画物を溶離プロファイル(elution profile)のパターン別に分離及び回収し、SDS−PAGEで分析して蛋白質のパターンを確認した。図10から分かるように、Tm−PGRPが約24mMリン酸イオンの濃度で溶離され始めた。約54%の他の蛋白質が除去されたさらに精製されたTm−PGRPの分画物が得られ、次の精製過程で使用した。
【0053】
(d)モノ−Q FPLCカラムを使用した精製
前記ヒドロキシアパタイトカラムから分離した蛋白質からPGN認識蛋白質のみを精製するために、陰イオン交換樹脂であるモノ−Q樹脂を利用し、モノ−Q FPLCカラムクロマトグラフィを遂行した。緩衝液A(50mM Tris緩衝液(pH6.5))及び緩衝液B(緩衝液A+1M NaCl)を使用し、緩衝液A及び緩衝液Bの濃度勾配によって、モノ−Q FPLCカラムクロマトグラフィを遂行した。緩衝液Bの濃度を、次の通り順次に増加させた:最初の5分間0%、30分間30%、45分間100%。溶離された分画中の蛋白質濃度は、280nmでのUV吸光度を測定して測定し、蛋白質の純度及び含有量は、SDS−PAGEで分析した。
ヒドロキシアパタイトカラムから得られた蛋白質分画に対するモノ−Q FPLCカラムクロマトグラフィ溶離プロファイル(elution profile)は、図11の通りである。全体分画物を溶離プロファイルのパターン別に分離及び回収し、SDS−PAGEで分析して蛋白質バンドのパターンを決定した。図11から分かるように、Tm−PGRPが約120mMのNaClで溶離され始めた。
【0054】
実施例7:20 kDaのPGN認識蛋白質のN末端部位及び3つの断片のアミノ酸配列決定
N末端配列分析のために、実施例6で精製された蛋白質を12%SDS−PAGEを実施した後、転移緩衝液(CAPS 10mM、メタノール10%)中で300mAの一定の電流で1時間電気泳動し、PVDFメンブレンに転移させた。
前記PVDFメンブレンをCBB染色溶液(0.1%CBB R−250、50%メタノール)で染色し、脱色溶液(50%メタノール、10%酢酸)で脱色させ、水で数回洗浄し、減圧乾燥した。蛋白質バンドを切り、自動アミノ酸分析器に注入してPVDFメンブレン上で、ガス相(gas-phase)のアミノ酸配列分析を行った。
一方、実施例6で精製された蛋白質25μgを45mM DTTで還元させ、100mMヨードアセトアミド(Iodoacetoamide)溶液でアルキル化した後、リシル−エンドペプチダーゼ(lysyl-endopeptidase)を加えた。反応混合物を37℃で12時間インキュベートし、ペプチド断片をHPLC C18カラムにローディングして精製した。精製されたペプチドのアミノ酸配列を自動アミノ酸分析器で決定した。
このようにして、電気泳動によって精製された20 kDa蛋白質をPVDFメンブレンにブロッティングし、エドマン分解(Edman degradation)法によって、前記20 kDa蛋白質のN末端部位(配列番号3、図8A参照)及び3個の断片(配列番号4ないし6、図8B参照)のアミノ酸配列を決定した。
特に、NCBI blast分析結果は、前記20 kDaの蛋白質が多様な生物に存在する短いPGN認識蛋白質と高い配列相同性を有するということを示した。
【0055】
実施例8:20 kDaのPGN認識蛋白質のcDNAクローニング及び該PGN認識蛋白質をコーディングするポリヌクレオチドの配列分析
実施例8では、実施例7で得られた20 kDaのPGN認識蛋白質の部分アミノ酸配列情報を基にしてデザインされたDNAプローブを使用し、チャイロゴミムシダマシのcDNAライブラリをスクリーニングした。前記検索を一次スクリーニング及び二次スクリーニングに分け、前記スクリーニングはいずれも前記DNAプローブを使用してプラーク混成化(plaque hybridization)によって行った。
【0056】
(1)DNAプローブの合成
精製された蛋白質をリシル−エンドペプチダーゼで消化させて得られたペプチド断片のうち、相対的に数が小さく、可能性のあるヌクレオチド配列を定義するアミノ酸配列を有するペプチド断片を選択した。選択されたペプチド断片を基に、55−65℃の適切なTm(melting temperature)を有するヌクレオチド配列をDNAプローブとして製作した。
前記DNAプローブをGenotech精製法(Genotech purification tool)で精製した。20 kDaのPGN認識蛋白質のcDNAクローニングのために、配列番号7のヌクレオチド配列を有するDNAプローブを使用した。
【0057】
(2)宿主細胞の準備
LB/テトラサイクリンプレート上にXL−1−ブルーストック(Blue stock)溶液5μlを塗布し、37℃で12時間インキュベートした。LB/テトラサイクリンプレートから単一のコロニーをLBブロス(broth)5μl、20%マルトーズ50μl及び1M MgSO4 50μlの混合物に接種し、37℃でOD600が0.5−1になるまで振蘯培養し、500 xgで10分間遠心分離した。OD600が0.5になるように沈殿物を10mM MgSO4中に再懸濁した。
【0058】
(3)レプリカ(Replica)の製造
チャイロゴミムシダマシ幼虫由来の増幅されたcDNAライブラリ・レプリカ(Replica)を12個のプレートから取った(5,000プラーク/プレート)。すなわち、XL−1−Blue(OD600=0.5)200μlを、5,000プラークを生成するcDNAライブラリ溶液に加え、37℃で15分間振蘯培養した後、48℃にあらかじめ加温した3.5mlの軟寒天培地(top agar)と混合した。得られた混合物を迅速に数回撹拌した後、迅速にNZYプレートに塗布した。前記NZYプレートを37℃で13時間培養してレプリカを取った。
前記NZYプレートを4℃で1時間放置して反応を終結させた。その後、コロニー/プラークスクリーンメンブレン(NEF−978)を注意深く前記NZYプレートの上端に置き、注射針及び赤い油性ペンで標識した後、室温で5分間インキュベートした。第2のメンブレンを前記NZYプレートの上端に注意深く置き、黒色油性ペンで標識した後、15分間インキュベートし、空気中で1時間以上放置して前記メンブレンを完全に乾燥させた。その後、メンブレンをアルカリ(0.5N NaOH)で2分間処理し、5分間乾燥させ、1M Tris/HCl(pH7.5)で中和させた後、空気中で乾燥させた。前記メンブレンを前記と同じ方法でアルカリで再び処理して中和させた後、メンブレンが完全に乾燥されるように室温で1時間以上放置した。その後、スクリーニングのために前記メンブレンを洗浄した。すなわち、前記メンブレンを洗浄緩衝液(3X SSC/0.1%SDS)に浸した後、SDSを完全に除去するために吸収紙で絞った。
【0059】
(4)DNAプローブのキネーション(kination)
陽性クローンのスクリーニングのためのDNAプローブを次の通り表示した:蒸溜水(milli−Q、autoclave)21μl、10Xキナーゼ緩衝液18μl、DNAプローブ9μl(600pM)、γ−32P−dATP 90μl(約0.9 mCi)及びT4ポリヌクレオチドキナーゼ(PNK)(10ユニット/μl)12μl(40ユニット)をボルテックシングした後、スピンダウンさせた。
前記反応混合物を37℃で30分間インキュベートし、70℃のウォーターバス中で10分間熱処理した。E.coli tRNA(20μg/μl)10μlを加え、前記プローブをセファローズG−50カラム上で精製し、放射性同位元素が標識されたプローブのみを選択的に取った。
【0060】
(5)予備混成化
60℃にあらかじめ加温した予備混成化(prehybridization)溶液30mlを、メンブレンと共にビニールバッグに入れ、完全に脱気した後で密封し、60℃で5時間インキュベートした。前記予備混成化溶液は、20XSSC溶液22.5ml、50Xデンハーツ(Denhart’s)溶液30ml及び5mg/ml ssssDNA 1.5mlの混合物に蒸溜水を加え、全体体積を150mlとして製造した。
【0061】
(6)混成化
予備混成化が終了した後、前記メンブレンをビニールバッグから取り出した。γ−32P−ATP−標識されたDNAプローブ溶液を混成化溶液30mlに加えた(5ng DNA/ml)。前記反応混合物を、メンブレンと共にビニールバッグに入れて脱気した後で密封した後、Tm−5℃で恒温槽で一日インキュベートした。前記DNAプローブのTmは、アデニン(A)とチミン(T)との水素結合を2℃にし、グアニン(G)とシトシン(C)との結合を4℃にしてDNAのTmを計算する方法であるイタクラ法則(Itakura’s rule)を利用して選定した。
前記混成化溶液は、20XSSC溶液30ml、50X denhart’s溶液30ml、5mg/ml ssssDNA0.75mlの混合物に蒸溜水を加えて全体体積を150mlにして製造した。
混成化後、メンブレンをビニールバッグから取り出し、30℃であらかじめ加温した洗浄溶液(3X SSC/0.1%SDS)で5分ずつ3回洗浄し、55℃で5分間同じ洗浄液で1、2回洗浄した。その後、メンブレン上の放射線量をフィルタ当たり400cpmほどに維持しつつ、前記メンブレンをワットマン社の3MM濾過紙上に付け、カセットに装着した。前記メンブレン上にX線フィルムを固定し、カセットを−75℃で約12時間インキュベートした後、室温で解凍させた。暗室でX線フィルムをメンブレンから剥がし出して現像した。X線フィルムを前記メンブレンに整列させ、X線フィルム上にレプリカを表示した。
【0062】
(7)陽性クローンの選択
2枚のメンブレンに対するオートラジオグラフィ(autoradiography)標識を互いに整列させ、オーバーレイ(overlay)分析を行った。2枚のメンブレンで共通して検出される陽性シグナルを選択し、一次陽性クローンとして判定した。4℃に保管されたマスタープレート(master plate)上に陽性プラークをリスクリーン(rescreen)し、単一の陽性プラークを選択した。
【0063】
(8)二次スクリーニング
一次スクリーニングによって選択された単一の陽性プラークをLB液体培地で10倍ずつ3段階で希釈した。前記希釈液1μlを3μlのCHCl3含有SM緩衝液1mlに入れた後、NZYプレート上に塗布し、37℃で一晩インキュベートした。プレート当たり100個ほどのプラークを含有したプレートをマスタープレートとして使用した。前記マスタープレートに対し、レプリカプレーティング、DNA固定化、プラーク混成化、及び陽性プラーク選択を前記一次スクリーニングと同じ方法で行った。二次スクリーニングにより、一次スクリーニングによって選択された前記陽性クローンが正確であることを確認した。
【0064】
(9)ファージミド(Phagemid)の製造
二次スクリーニングによって検証された20 kDa蛋白質の陽性クローンの力価を計算し、2X105個のプラークを生成すると予想される量を算出した。これを基に、XL−1−Blue(OD600=1.0)200μl、二次スクリーニングによって確認された陽性プラークを含む溶液(2X105ファージ)200μl、及びExAssistヘルパーファージ(helperphage)1μlを50mlファルコンチューブ(falcon tube)に入れ、37℃で15分間インキュベートした。3mlのLBブロスを加え、得られた懸濁液を37℃で3時間振蘯培養した後、70℃で20分間熱処理し、1,000xgで15分間遠心分離した。上澄み液を15mlファルコンチューブに入れ、4℃で保管した。
【0065】
(10)ファージミド(Phagemid)の培養
20 kDaの蛋白質の遺伝子を含有するファージミド(phagemid)を精製するために、アンピシリン耐性部位(ampicillin resistant region)を含んでいないSOLR細胞に対し、アンピシリン耐性部位を含むファージミドに形質転換させ、LB/アンピシリンプレートで育てた。これについて詳細に説明すれば、次の通りである。
SOLR細胞(OD600=1.0)200μlにLBブロスで1,000倍希釈したファージミド10μl及び100μlをそれぞれ加え、37℃で15分間振蘯培養した。それぞれの培養液アリコット(aliquot)50μlをLB/アンピシリンプレートに塗布して37℃で12時間培養した。前記プレートから単一コロニーを取り、LBブロス5mlとアンピシリン(50mg/ml)10μlとを含有する50mlファルコンチューブ上にローディングし、37℃で12時間培養した。
【0066】
(11)ファージミドの分離、精製及び同定
(10)で製造された培養液を、DNA精製キット(Miniprep kit、Quiagen社)でメーカの指示(specification)によって精製し、対象になる蛋白質の遺伝子を含有するファージミドを得た。このように得られたファージミドの純度を確認するために、ファージミドDNA0.5μg、EcoRI 0.5μl(7.5U)、XhoI 0.5μl(6U)及び10XH緩衝液1μlを混合し、三次蒸溜水を前記混合物に加え、総体積を10μlにした。反応混合物を37℃で1時間培養し、6Xローディング緩衝液3μlと混合した。反応溶液アリコット10μlを1.5%アガロースゲル電気泳動で分析した。前記ゲルを臭化エチジウム溶液(160μg/100ml)に10分間浸した後、水で数回洗浄した。UV下で示されるバンドから抽出したファージミドDNAの純度及び濃度を確認した。
【0067】
(12)DNA配列分析のためのPCR
(11)で得られた20 kDa蛋白質の遺伝子を含有するファージミドDNA 1μgに三次蒸溜水を加え、総体積を10μlにした。ファージミドDNAの3’及び5’末端と結合できるユニバーサルプライマー(universal primer)であるT3(配列番号:8)とT7(配列番号:9)とを含むPerkin Elmer社のローダミンterminator cycle sequencing ready reaction mixtureを含むDNAシーケンシングキットを使用し、DNA配列分析溶液(最終濃度3.2pmole/μl)8μlと、前記で得られた溶液とを混合した。ミネラルオイル(mineral oil)を滴加し、PCRを次の通り行った:96℃で30秒、50℃で15秒、60℃で4分の24サイクル。その後、スピンカラム(spin column)でDNAサンプルを精製し、スピードバック(speed-vac)上で乾燥させた後、(脱イオン化ホルムアミド:ブルーデキストラン=5:1)溶液3μlに溶かし、95℃で2分間熱処理した後、自動配列分析器にローディングした。
【0068】
(13)20 kDaのPGN認識蛋白質のDNA配列分析
Sangerが開発したジデオキシ・チェーン・ターミネーション(dideoxy chain termination)法によって、市販されているDNA配列分析キット(Perkin Elmer社のローダミンterminator cycle sequencing ready reaction)を使用し、20 kDaのPGN認識蛋白質のDNA配列分析を行った。前記配列分析の結果、チャイロゴミムシダマシ幼虫のPGN認識蛋白質をコーディングするポリヌクレオチドは、配列番号1のヌクレオチド配列を有すると確認された。
【0069】
(14)20 kDaのPGN認識蛋白質の遺伝子配列及びアミノ酸配列の分析
一次スクリーニング後、20個のプレートいずれでも陽性プラークが生成された。二次スクリーニング後、15個の陽性クローンを得た。1.5%アガロースゲル電気泳動を行った結果、15個の陽性クローンのうち三種の20 kDaのPGN認識蛋白質の遺伝子を含有するということを確認した。それら3個のクローンの配列分析結果、前記クローンが実施例7で先に決定された部分アミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含有するということを確認した。前記cDNAクローンそれぞれは、シグナルペプチド(signal peptide)から停止コドン(stop codon)までの188個のアミノ酸に該当する564個のヌクレオチドオープンリーディングフレーム(nucleotide open reading frame)と同定された(図12参照)。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】フェノールオキシダーゼ(PO)活性化システムを示す概要図である。
【図2】PO活性測定のためのパイ分光光度分析法(Pye-spectrophotometric assay)の原理を示す図面である。
【図3】PO活性に対する天然ペプチドグリカン(PGN)、ベータ−1,3−グルカン及び合成ペプチドグリカンの効果を示すグラフである。
【図4】合成PGNによる天然PGN依存性PO活性の阻害程度を示すグラフである。
【図5】合成PGNの濃度に対し、天然PGN依存性PO活性の阻害程度を示すグラフである。
【図6】合成PGNの濃度に対し、アミダーゼ活性の阻害程度を示すグラフである。
【図7】透析前後のチャイロゴミムシダマシ幼虫の体液、そして合成PGNが結合されたカラム及び対照群カラムから溶離された溶液を使用して行われた、硫酸ドデシルナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)の結果を示すイメージである。
【図8】エドマン分解(Edman degradation)を使用して決定された、合成PGN結合カラムから溶離された20 kDaの蛋白質のN末端部位(A)及び3個の断片(B)のアミノ酸配列を示す図面である。
【図9】トヨパールHW55Sカラムクロマトグラフィによるチャイロゴミムシダマシ幼虫のPGN認識蛋白質の溶離プロファイル(elution profile)を示すグラフである。
【図10】ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)カラムクロマトグラフィによるチャイロゴミムシダマシ幼虫のPGN認識蛋白質の溶離プロファイルを示すグラフである。
【図11】モノ−Q−FPLCカラムクロマトグラフィによるチャイロゴミムシダマシ幼虫のPGN認識蛋白質の溶離プロファイルを示すグラフである。
【図12】20 kDaのPGN認識蛋白質をコーディングするcDNAの配列及び前記cDNAから発現されるアミノ酸配列を示す図面である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成ペプチドグリカンを利用し、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液からペプチドグリカンを認識する蛋白質(以下ペプチドグリカン認識蛋白質と略称する)を分離する方法、該方法により分離されたペプチドグリカン認識蛋白質、該ペプチドグリカン認識蛋白質をコーディングするポリヌクレオチド、及び該ペプチドグリカン認識蛋白質を含むキットに関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの生物体は、病原菌や寄生虫のような外部の有害環境因子から常に攻撃を受けているが、免疫システムによって前記外部の有害環境因子に対して自身を防御できる。免疫システムは、外部の異物を認識する方法によって、先天性(innate)と後天性(adaptive)との免疫システムに区分される。先天性免疫システムのみを有している無脊椎動物と異なり、人間のような脊椎動物は、先天性免疫システム及び後天性免疫システムをいずれも有している。脊椎動物でのみ観察される後天性免疫システムは、体内に侵入した有害異物(いわゆる抗原)それぞれの構造を認識し、抗原に特異的な抗体を選択的に生成することによって、持続的な免疫反応を誘導する記憶依存性免疫システムである。一方、脊椎動物及び無脊椎動物いずれでも観察される先天性免疫システムは、病原菌に共通して存在する要素(すなわち、パターン)を認識して迅速に反応する記憶非依存性免疫システムである。何年か前まででも、前記先天性免疫システムは、後天性免疫システムが抗体を生成するまで侵入した外部物質から生体を一次的に防御する、後天性免疫システムほど特異的ではなく、かつあまり発達していない防御メカニズムであると認識されてきた。
【0003】
しかし、分子レベルで免疫システムについての活発な研究が最近数年間行われてきており、先天性免疫システムは、後天性免疫システムの活性化にも重要な役割を行うということが明らかになり、先天性免疫システムの重要性が認識されている[Carroll, M. C. et al, Curr. Opin. Immunol. 10, 36-48(1998); Ruslan, M. et al, Cell 91, 295-298(1997)]。
かような事実は、先天性免疫システムの調節が後天性免疫システムにおいて変化を引き起こし得ることを示唆する。従って、先天性免疫システムに対する新しい概念的アプローチが疾病の治療及び新薬の開発側面で要求される。最近、先天性免疫システムが多くの国内外研究者らによって分子レベルで活発に研究されている[Medzhitov, R. et al, Nature 388, 394-397(1997)]。
【0004】
先天性免疫システムに対する研究は、主に先天性免疫システムを有する無脊椎動物を使用して行われてきた。特に、昆虫が先天性免疫システムに対する多くの研究で使われてきた。分子レベルでの最近の研究結果は、昆虫及び人間における先天性免疫系間に類似性が存在するということを示し、従って先天性免疫システムに対する研究が多様な昆虫を使用して活発に進められている[Medzhitov, R. et al,(1997) Nature 388, 394-397(1997); Hultmark, D. (1994), Nature 367, 116-117(1994); Wasserman, S. A. Mol. Biol. Cell. 4, 767-771(1993))]。
【0005】
昆虫の免疫システムは、細胞性免疫反応と体液性免疫反応とに分けられる。体液性免疫反応は、外部物質の侵入に対応し、体液で抗菌性蛋白質の分泌、侵入した外部物質における特定糖を認識するレクチンの誘導、メラニン生成等に関連すると知られているプロ・フェノールオキシダーゼ(以下、pro−POと称する)の活性化などを含む。
【0006】
昆虫でのpro−PO活性化システムにかかわる研究結果によれば、セリンプロテイナーゼ(serine proteinase)阻害剤がフェノールオキシダーゼ(PO)の活性を選択的に抑制するということが明らかになった[Ashida, M. et al, Biochem. Biophys. Res. Commun. 113, 562-568(1983)]。pro−POは、セリンプロテイナーゼ性質を有するpro−PO活性化因子(PPAFs)によって媒介されるpro−POカスケードによって活性化されるということが報告されている[Aspan A. et al, Insect Biochem., 21, 363-373(1991)]。また、前記PPAFsによって媒介されるpro−POカスケードは、真菌細胞壁の構成成分であるベータ−1,3−グルカン[Kwon, T. H. et al, Mol. Cells. 7, 90-97(1997); Saul, S. et al, Archs. Insect Biochem. Physiol. 7, 91-103(1988); Ashida, M., Bombyxi mori, Insect Biochem. 11, 57-65(1981)]、または細菌細胞壁の構成成分であるリポポリサッカライド(LPS)及びペプチドグリカン(PGN)[Saul, S. et al, Archs. Insect Biochem. Physiol. 7, 91-103(1988); Ashida, M., Bombyxi mori, Insect Biochem. 11, 57-65(1981); Pye, A. E., Nature 251, 610-613(1974)]などの、いわゆるパターン(pattern)によって開始されるということが報告されている。
【0007】
一般的にPOは、不活性の前酵素(チモーゲン)として存在する。POが活性化されれば、POは、ジフェノールのキノンへの酸化を触媒してメラニンを生成する。POは、分子内に銅を含むと知られている。特に、昆虫のPOは、昆虫表皮の褐変(browning)及び硬化(sclerotization)、傷治癒のための傷部位からの体液漏出、及び侵入する病原菌に対する生体の保護のような防御メカニズムにおいて重要な役割を行うと考えられる。
【0008】
昆虫の防御メカニズムと関連したpro−POは、これまでの数十年間多くの研究者によって活発に研究されてきたが、1995年になって初めてキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、カイコガ(Bombyx mori)、タバコスズメガ(Manduca sexta)の三種の昆虫幼虫からのpro−POが分離及び精製され、そのアミノ酸配列が究明されるまで、pro−POの分離、精製または配列分析が可能ではなかった[Saul S. et al, Archs. Insect Biochem. Physiol., 5, 1-11(1987); Fujimoto K. et al,, PNAS, 92, 7769-7773; Kawabata T. et al,, PNAS, 92, 7774-7778(1995)] 。
【0009】
昆虫の先天性免疫システムに関連する天然のパターン認識蛋白質が同定され、pro−POカスケードにおけるそれらの生物学的機能が部分的に同定された[Girardin SE, et al. J Biol Chem. 278: 803283(2003); Hugot JP et al, Curr Opin Immunol. 15: 593597(2003)]。また、β−1,3−グルカン認識蛋白質がコウチュウ目に属するチャイロゴミムシダマシ幼虫の体液から分離及び同定され、前記β−1,3−グルカン認識蛋白質と前記pro−POカスケードとの相関関係が報告された。また、β−1,3−グルカン認識蛋白質が韓国産のチョウセンクロコガネ(Holotrichia diomphalia)の幼虫の体液から分離及び同定され、β−1,3−グルカン認識蛋白質の生物学的機能が報告された[Lee MH, et al, J Biol Chem. 279(5):3218-27(2000); Zhang R et al, J Biol Chem. 278(43):42072-9.(2003)]。
【0010】
最近、前記同定されたパターン認識蛋白質のうち、チョウセンクロコガネ幼虫の体液から分離されたPGN−認識蛋白質(PGRPs)が、PGNではない、真菌のパターンであるβ−1,3−グルカンを特異的に認識し、pro−POカスケードを活性化させるということが報告された[Lee MH, et al, J Biol Chem. 279(5):3218-27(2000)]。かような結果は、天然のパターン認識蛋白質の分子メカニズム及びpro−POカスケードの活性化メカニズムの相関関係がまだ明確に究明されていないということを示す。
【0011】
チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液のpro−POカスケードは、真菌のパターンであるβ−1,3−グルカンによって活性化されると報告された。また、β−1,3−グルカンを特異的に認識する蛋白質がチャイロゴミムシダマシ幼虫の体液に存在することが発見された。かような結果は、真菌感染検出用の診断試薬の開発に対して新しい可能性を提示する[Zhang R et al, J Biol Chem. 278(43):42072-9(2003)]。
【0012】
PO活性化のためのカスケード経路を含むPO活性化システムは、病原菌あるいは外部物質の侵入またはホストの血液細胞の脱顆粒化に反応して活性化される内部因子によって容易に活性化され、pro−POをPOに変換させることによって、カテコールアミン類からメラニンを形成する。従って、前記PO活性化システムを誘発する(PGN及びβ−1,3−グルカンのような)パターンを特異的に認識するパターン認識蛋白質を分離し難い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記の問題点の観点から、本発明者らは、PGN−認識蛋白質と結合できるが、PO活性化の下位(subsequent)カスケードは活性化されられない合成PGNを利用し、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液からフェノールオキシダーゼ(PO)活性化システムに関与するペプチドグリカン(PGN)認識蛋白質の分離方法を開発した。
従って、本発明は、合成PGNを使用し、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液からPGN認識蛋白質を分離する方法を提供する。
【0014】
本発明はまた、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液からPGN認識蛋白質を除外したパターン認識蛋白質分画を分離する方法を提供する。
本発明はまた、前記方法を使用して分離されたPGN認識蛋白質及び前記PGN認識蛋白質をコーディングするポリヌクレオチドを提供する。
本発明はまた、前記PGN認識蛋白質を含むPGN検出キットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一様態によって、(a)下記化学式1ないし4で表示される化合物からなる群から選択された一つ以上の合成PGNが結合された樹脂でカラムを充填して親和性クロマトグラフィカラムを準備する段階と、(b)チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用する段階と、(c)移動相(mobile phase)を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用し、前記親和性クロマトグラフィカラムから溶離されたPGN認識蛋白質含有溶液を得る段階と、(d)前記溶離された溶液からPGN認識蛋白質を精製する段階とを含む、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液からペプチドグリカン(PGN)認識蛋白質を分離する方法が提供される:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
式中、Prはプロピルである。
【0016】
本発明の他の様態によって、(a)前記化学式1ないし4で表示される化合物からなる群から選択された一つ以上の合成PGNが結合された樹脂でカラムを充填して親和性クロマトグラフィカラムを準備する段階と、(b)チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用する段階と(c)洗浄溶液を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用し、前記親和性クロマトグラフィカラムから溶離されたPGN認識蛋白質を除外した他のパターン認識蛋白質の溶液を得る段階と、(d)前記溶離された溶液からPGN認識蛋白質を除外したパターン認識蛋白質の分画を精製する段階とを含む、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液からPGN認識蛋白質を除外したパターン認識蛋白質分画を分離する方法が提供される。
【0017】
本発明のさらに他の様態によって、前記方法を使用して分離されたPGN認識蛋白質、及び前記PGN認識蛋白質をコーディングするポリヌクレオチドが提供される。
本発明のさらに他の様態によって、前記PGN認識蛋白質を含むPGN検出キットが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の例示的具現例を示す下記添付図面を参照しつつ、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明は、合成PGNを使用してチャイロゴミムシダマシ幼虫の体液からペプチドグリカン(PGN)認識蛋白質を分離する方法を提供する。前記合成PGNは、下記化学式1ないし4で表示される化合物からなる群から選択され、化学式3の化合物がさらに望ましい:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
式中、Prはプロピルである。
【0019】
前記合成PGNは、グラム陽性菌の天然ペプチドグリカンとその構造が類似している。前記合成PGN及び天然のPGNは、PGN認識蛋白質に競争的に結合する。すなわち、前記合成PGNは、PGN認識蛋白質に結合することは可能であるが、フェノールオキシダーゼ(PO)活性化のための下位(subsequent)カスケードを活性化させられない。従って、前記合成PGNは、天然のPGNの競争的抑制剤として作用する。
【0020】
本発明によるPGN認識蛋白質の分離方法は、前記化学式1ないし4で表示される化合物からなる群から選択された一つ以上の合成PGNの結合された樹脂でカラムを充填し、親和性クロマトグラフィカラムを準備する段階を含む。前記樹脂は、セファローズ、セファデックスなどであって、セファローズ樹脂が望ましい。
【0021】
本発明によるPGN認識蛋白質の分離方法は、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液を前記で準備された親和性クロマトグラフィカラムに適用する段階を含む。この段階で、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液中のPGN認識蛋白質が前記親和性クロマトグラフィカラム内の合成PGNに結合される。
【0022】
本発明によるPGN認識蛋白質の分離方法は、移動相(mobile phase)を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用し、前記親和性クロマトグラフィカラムから溶離されたペプチドグリカン認識蛋白質含有溶液を得る段階を含む。前記移動相は、EDTA及びNaClを含有するTris−HCl溶液であって、望ましくは、1M NaCl及び3mM EDTAを含有する50mM Tris−HCl溶液(pH7.5)でありうる。
【0023】
本発明によるペプチドグリカン認識蛋白質分離方法は、前記溶離された溶液からPGN認識蛋白質を精製する段階を含む。すなわち、前記親和性クロマトグラフィカラムから溶離された溶液中の蛋白質をSDS−PAGEなどで分析し、SDS−PAGEによって決定されるPGN認識蛋白質含有の分画を精製する。
【0024】
前記PGN認識蛋白質の精製は、当業界に公知された多様な精製方法、例えばサイズ排除(size-excluision)クロマトグラフィ、イオン濃度勾配クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィなどを使用して遂行することができる。PGN認識蛋白質の精製効率を向上させるために、前記溶離された溶液は、前記精製前に濃縮させることができる。
本発明の一具現例によって、前記PGN認識蛋白質の精製は、前記溶離された溶液のサイズ排除カラムクロマトグラフィ、イオン濃度勾配カラムクロマトグラフィ及びイオン交換カラムクロマトグラフィの順次的実行によって遂行されうる。このとき、前記サイズ排除カラムクロマトグラフィ、前記イオン濃度勾配カラムクロマトグラフィ及び前記イオン交換カラムクロマトグラフィは、それぞれトヨパール(Toyopearl)Hw55Sカラム、ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)カラム及びモノ−QFPLCカラム上で遂行されうる。
【0025】
本発明はまた、(a)前記化学式1ないし4で表示される化合物からなる群から選択された一つ以上の合成PGNが結合された樹脂でカラムを充填して親和性クロマトグラフィカラムを準備する段階と、(b)チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用する段階と、(c)洗浄溶液を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用し、前記親和性クロマトグラフィカラムから溶離されたPGN認識蛋白質を除外した他のパターン認識蛋白質の溶液を得る段階と、(d)前記溶離された溶液からPGN認識蛋白質を除外したパターン認識蛋白質の分画を精製する段階とを含む、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液からPGN認識蛋白質を除外したパターン認識蛋白質分画を分離する方法を提供する。
【0026】
段階(a)、(b)及び(d)は、前述のPGN認識蛋白質の分離方法の各段階と類似した方法で遂行されうる。段階(c)で使われる前記洗浄溶液は、EDTA含有Tris緩衝液(pH6.0)であって、望ましくは、3mM EDTA含有の50mM Tris緩衝液(pH6.0)でありうる。
本発明はまた、前記PGN認識蛋白質の分離方法を使用して分離されたPGN認識蛋白質を提供する。本発明の一具現例によって、前記PGN認識蛋白質は、配列番号1のアミノ酸配列を有することができる。
【0027】
本発明はまた、前記PGN認識蛋白質を分離する方法をコーディングするポリヌクレオチドを提供する。本発明の一具現例によって、前記ポリヌクレオチドは、配列番号2のヌクレオチド配列を有することができる。
本発明はまた、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液から由来するPGN認識蛋白質を使用し、サンプル中のPGN検出用キットを提供する。
サンプル中のPGNは、バクテリアの細胞壁から由来しうる。従って、前記キットを使用すれば、サンプル中のバクテリアの存在が迅速であって便利に検出されうる。本発明の他の一具現例によって、前記PGN認識蛋白質は、配列番号1のアミノ酸配列を有することができる。
以下、実施例を介して本発明についてさらに詳細に説明する。下記実施例は、単に本発明について説明するためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0028】
実施例1:チャイロゴミムシダマシの幼虫の体液採取
チャイロゴミムシダマシの幼虫をソウル大公園の昆虫飼育室から得て飼育した。以下の実験に使用するために、幼虫が約2cmを超える大きさに育つまで室温(25℃)で麦ぬかとキャベツとを前記幼虫に食べさせた。
前記幼虫(平均重さ、0.1g/幼虫)に対して氷上で低温麻酔を施した。25G注射針が装着された5ml滅菌注射器に脱凝集緩衝液(NaCl 15mM、クエン酸三ナトリウム83mM、クエン酸26mM及びEDTA 20mM;pH5.0)を充填した。
前記脱凝集緩衝液1.4mlを滅菌されたエッペンドルフチューブに加え、注射針で幼虫の頭の第1節を刺し、前記幼虫から流出される体液を前記エッペンドルフチューブに入れた。1つのチューブ当たり15の幼虫から流出された体液を集めた。
【0029】
実施例2:天然PGNまたはβ−1,3−グルカンの準備
黄色ブドウ球菌(S.aureus)及びルテウス菌(M.luteus)由来のPGNは、Fluka社から、β−1,3−グルカン(Curdlan)は、和光純薬工業株式会社(日本)から購入した。
S.aureus及びM.luteus由来のPGNを超音波破砕した。このように得られた水溶性PGNを20mM Tris緩衝液(pH8.0)で処理して10%のPGN溶液を得て、反応溶液では、1μg PGNの含有量で使用した。
【0030】
実施例3:合成PGNの製造
(1)アリル6−O−ベンジル−4−(3−O−ベンジル−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−2−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニルアミノ)−β−D−グルコピラノシル)−3−O−((R)−1−(エトキシカルボニル)エチル)−2−デオキシ−グルコピラノシド(化合物4)の製造
−15℃で無水ジクロロメタン中に、N−Troc−グルコサミニルトリクロロアセトイミデート供与体(化合物2)(26.0g、38mmol)、N−ムラミル受容体(化合物3)(17.0g、30mmol)及びメンブレン・スパニング4Aファミリー(MS4A)の混合物にトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(TMSOTf)(340μl、3.0mmol)を加えた。
【0031】
【表1】
【0032】
反応混合物を−15℃で10分間撹拌した。反応溶液を冷却されたNaHCO3飽和水溶液(30mL)でクエンチング(quenching)し、CHCl3(250mL)で抽出した。有機層をNaHCO3(60mL)及び食塩水(60mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、真空濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(600g、トルエン:EtOAc=10:1)で精製し、標題の化合物(29.0mg、88%)を淡黄色固体で得た:
ESI-TOF-MS (positive) m/z 1119.2 [M + Na]+;
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ = 7.45-7.29 (15H, m, (C6H5)-CH2-), 5.85-5.78 (1H, m, -CH2-CH=CH2), 5.57 (1H, s, Ph-CH=), 5.28-5.13 (3H, m, H-1, -CH2-CH=CH2), 4.89-4.59 (10H, m, CCl3-CH2-OCO-, CH3-CH2-OCO-, Ph-CH2-), 4.43-4.39 (1H, m, H-6'), 4.26-4.04 (5H, m, Lac-αH, Ph-CH2-, H-1'. -CH2-CH=CH2), 3.98-3,93 (2H, m, -CH2-CH=CH2, H-3), 3.77-3.56 (6H, m, H-2, H-4, H-4', H-6, H-6'), 3.43-3.41 (2H, m, H-2', H-5), 3.25-3.21 (2H, m, H-3, H-5'), 1.34-1.25 (6H, m, Lac-CH3, CH3-CH2-OCO).実測値: C, 51.42; H, 4.90; N, 2.60. C47H54Cl6N2O15として計算値: C, 51.33; H, 4,95; N, 2.55%。
【0033】
(2)ジサッカライド1−O−トリクロロアセトイミデート(化合物12)の製造
無水THF(6mL)中の化合物4(3.0g、2.7mmol)の溶液を脱気し、H2活性化された[Ir(cod)(MePh2P)2]PF6(23mg、0.027mmol)を加えた。反応混合物を室温で窒素大気下で1時間撹拌した後、無水THF(3mL)中のH2活性化された[Ir(cod)(MePh2P)2]PF6(23mg、0.027mmol)の溶液を加えた。反応混合物を室温で窒素大気下で1時間撹拌し、ヨード(690mg、2.7mmol)及び水(10mL)を加えた。反応混合物をさらに10分間撹拌し、Na2SO3水溶液(5%、100mL)をすぐに加えた。得られた反応溶液をEtOAc(50mL)で抽出した。有機層を水性Na2S2O2水溶液(5%、50mLx2)、NaHCO3飽和水溶液(100mLx2)、食塩水(50mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、真空濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(180g、トルエン:EtOAc=4:1)で精製し、標題の化合物(2.72mg、93%)を淡黄色固体で得た:
[α]D23 = +8.4 (c 1.00, CHCl3);
ESI-MS (positive) m/z = 1079.0[M + Na]+; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 7.54.7.27 (m, 15H, (C6H5)-CH2-), 5.60 (br.s, 1H, H-1), 5.57 (s, 1H, Ph-CH=), 4.89-4.60 (m, 8H, CCl3-CH2-OCO-, CH3-CH2-OCO-, Ph-CH2-), 4.43-4.39 (m, 1H, H-6'''), 4.31-3.91 (m, 4H, Ph-CH2-, H-1', Lac-αH), 3.95-3.91 (m, 1H, H-3), 3.82-3.63 (m, 6H, H-2, H-4, H-6, H-4', H-6'), 3.43-3.41 (m, 2H, H-2', H-5), 3.22-3.21 (m, 2H, H-3', H-5'), 1.35.1.27 (m, 6H, Lac-Me, CH3-CH2-OCO). 実測値: C, 51.68; H, 5.33; N, 2.35. C44H50Cl6N2O15として計算値: C, 51.24; H, 5.12; N, 2.54%。
【0034】
(3)4’−O−ジサッカライド(化合物13)の製造
化合物4(1.5g、1.36mmol)を無水CH3CN(13mL)に溶解させ、トリエチルアミンボラン(150mg、2.05mmol)溶液を得た。ボラントリフルオライドジエチルエテレート(960mg、6.80mmol)を前記トリエチルアミンボラン溶液に0℃で滴加した。反応混合物を室温で30分間撹拌し、氷で冷却させた(ice-cooled)NaHCO3飽和水溶液(100mL)でクエンチング(quenching)し、EtOAc(100mLx2)で抽出した。有機層を10%クエン酸水溶液(15mLx4)、NaHCO3飽和水溶液(150mL)及び食塩水(100mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、真空濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(180g、トルエン:EtOAc=4:1)で精製し、標題の化合物(1.13g、73%)を無色固体で得た:
[α]D23 = +25.6 (c 1.00, CHCl3); ESI-TOF-MS (positive) m/z = 1121.6 [M + Na]+; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 7.43-7.27 (15H,m,(C6H5)-CH2-), 5.85-5.79 (1H, m, -CH2-CH=CH2), 5.26-5.13 (3H, m, -CH2-CH=CH2, H-1), 4.86-4.50 (9H, m, CCl3-CH2-OCO-, CH3-CH2-OCO-, Ph-CH2-), 4.33-4.04 (5H, m, Ph-CH2-, Lac-αH, H-1', -CH2-CH=CH2), 3.97-3.57 (10H, m, -CH2-CH=CH2, H-3, H-4, H-6, H-3', H-4', H-6'), 3.46-3.36 (2H, m, H-2', H-5), 3.27-3.23 (1H, m, H-5'), 1.29-1,20 (6H, m, Lac-CH3, CH3-CH2-OCO). 実測値: C, 51.68; H, 5.33; N, 2.35. C47H56Cl6N2O15として計算値: C, 51.24; H, 5.12; N, 2.54%。
【0035】
(4)完全に保護されたテトラサッカライド(化合物14)の製造
−15℃で、無水ジクロロメタン(75mL)中の化合物12(2.7g、38mmol)、化合物13(1.65g、30mmol)及びMS4Aの混合物にTMSOTf(18μl、0.15mmol)を加え、反応混合物を−15℃で10分間撹拌した。反応溶液を氷で冷却させた(ice-cooled)NaHCO3飽和水溶液(100mL)でクエンチング(quenching)し、CHCl3(100mL)で抽出した。有機層をNaHCO3(60mLx2)及び食塩水(60mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、真空濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(300g、トルエン:EtOAc=10:1)で精製し、標題の化合物(2.33g、79%)を淡黄色固体で得た:
[α]D23 = -1.7 (c 1.00, CHCl3); ESI-TOF-MS (positive) m/z = 2159.0 [M + Na]+; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ = 7.51-7.27 (30H, m, (C6H5)-CH2-), 5.86-5.76 (1H, m, -CH2-CH=CH2), 5.56 (1H, s, Ph-CH=), 5.25-4.98 (4H, m, -CH2-CH=CH2, Ph-CH2-, H-1), 4.88-4.33 (17H, m, CCl3-CH2-OCO-, CH3-CH2-OCO-, Ph-CH2-), 4.32-3.90 (12H, m, Ph-CH2-, Lac-αH, H-1'', H-1'', H-1''', H-6''', -CH2-CH=CH2), 3.87-3.01 (24H, m, Ph-CH2-, H-2, H-3, H-4, H-5, H-6, H-2', H-3', H-4', H-5', H-6', H-2'', H-3'', H-4'', H-5'', H-6'', H-2''', H-3''', H-4''', H-5''', H-6''' ), 1.32-1,27 (12H, m, Lac-CH3,CH3-CH2-OCO)。
【0036】
(5)2−N−アセチル−テトラサッカライド(化合物21)の製造
Zn−Cu(1gのZnから製造される)を化合物14(1.05g、0.46mmol)の酢酸溶液に加え、反応混合物を室温で1時間撹拌した。不溶性物質を濾過して除去し、濾液を真空濃縮した。残留溶媒をトルエン(5mLx3)で共蒸発(co-evaporation)させて除去した。粗生成物をピリジン(7mL)及び無水酢酸(7mL)に溶解させた。反応混合物を室温で30分間撹拌し、真空濃縮した。残留溶媒をトルエン(5mLx3)と共に共蒸発させて除去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(80g、CH3Cl:アセトン=3:1)で精製し、標題の化合物(750mg、quant.)を白色固体で得た:
[α]D23 = -7.4(c 1.00, CH3Cl); ESI-TOF-MS(positive) m/z=1609.2[M+H+], 1631.6[M+Na]+。
【0037】
(6)遊離カルボン酸を有するテトラサッカライド(化合物23)の製造
LiOH(28mg、0.66mmol)を、化合物21(180mg、0.11mmol)のジオキサン:THF:H2O(2:4:1、1.2mL)溶液に加え、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応溶液をDowex H+(Dowex 50W−x8 200−400メッシュH形態、ダウケミカル)で中和し、HP−20カラム(2cmx40cm)に適用した。有機及び無機の塩をH2O(300mL)で溶離して除去し、メタノールで溶離して標題化合物(170mg、quant.)を白色固体で回収した:
ESI-TOF-MS(positive) m/z=1575.1[M+Na]+ 。
【0038】
(7)保護されたテトラサッカライドジペプチド(化合物25)の製造
WSCI・HCl(37mg、0.25mmol)及びトリエチルアミン(48μl、0.47mmol)を、化合物23(122mg、0.078mmol)及びHOBt(33.5mg、0.25mmol)のジクロロメタン(14mL)溶液に0℃で加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、EtOAcで希釈し、濾過して不溶性物質を除去した。濾液を濃縮し、CHCl3に溶解させた。得られたCHCl3溶液を、クエン酸(1M、20mL)、H2O(20mL)、飽和NaHCO3(20mL)及び食塩水(20mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥し、真空濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(20g、CHCl3:メタノール=20:1)で精製し、標題の化合物(143mg、86%)を白色固体で得た:
ESI-TOF-MS (positive) m/z =2153.52[M + Na]+; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ =7.52-7.15 (40H, m), 5.58 (1H, m), 5.57 (1H, s), 5.56-5.07 (6H, m), 4.86 (1H, d, J =12.3 Hz), 4.83 (1H, d, J =3.7Hz), 4.74(1H.dd, J =12.1 Hz), 4.66-4.57 (4H, m), 4.35-4.24 (8H, m), 4.09-3.92 (6H, m), 3.83-3.59 (12H, m), 3.53-3.43 (10H, m), 3.39-3.35 (1H, m), 3.34-3.20 (1H, m), 2.56-2.41 (4H, m), 2.17-2.03 (7H, m), 1.93 (3H, s), 1.88 (3H, s), 1.73 (3H, s), 1.57-1.53 (3H, m), 1.43 (1H, d, J =6.9 Hz), 1.37-1.33 (3H, m), 1.26 (1H, m). 実測値: C, 62.03; H, 6.63; N, 6.38. C113H138N10O31 ・3H20として計算値: C, 62.08; H, 6.64; N, 6.41%。
【0039】
(8)テトラペプチド(化合物27)の製造
標題の化合物を化合物25の製造方法と類似した方法で製造した: ESI-TOF-MS(positive) m/z=1400.53[(M+2H)2+]。
【0040】
(9)テトラサッカライドジペプチド(化合物32、化学式1で表示される化合物)の製造
無水THF(6mL)中の化合物25(300mg、0.071mmol)溶液を脱気し、H2活性化された[Ir(cod)(MePh2P)2]PF6(23mg、0.027mmol)の無水THF(3mL)溶液を加えた。反応混合物を室温で窒素大気下で1時間撹拌し、H2活性化された[Ir(cod)(MePh2P)2]PF6(23mg、0.027mmol)の無水THF(3mL)溶液を加えた。反応混合物を室温で窒素大気下で1時間撹拌し、ヨード(35mg、0.142mmol)及び水(0.5mL)を加えた。反応混合物をさらに10分間撹拌し、水性Na2SO3(5%、100mL)でクエンチング(quenching)し、EtOAc(50mL)で抽出した。有機層を水性Na2S2O2(5%、10mLx2)、NaHCO3飽和水溶液(100mLx2)及び食塩水(50mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、真空濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(20g、トルエン:EtOAc=5:1)で精製し、1−遊離されたテトラサッカライド(260mg、88%)を淡黄色固体で得た: ESI-TOF-MS(positive) m/z=2113.6[M+Na]+ 。
【0041】
酢酸中に存在する炭素上の水酸化パラジウム(100mg)を1−遊離されたテトラサッカライド(86mg、0.04mmol)の酢酸(3mL)溶液に加え、反応混合物をH2(20atm)下で一日撹拌した。パラジウム触媒を濾過して除去して濾液を濃縮し、H2Oから凍結乾燥し、標題の化合物(39mg、70%)を白色固体で得た:
ESI-TOF-MS (positive) m/z = 685.3 [M-2H]2-; HRMS-ESI FT-ICR(negative): (M) C54H88N10O31としての計算値, 1372.561; 実測値1372.555; 1H NMR ((600 MHz, D2O): d = 5.16-5.15 (d, J = 3.0 Hz, 1H, H-1), 4.46-4.42 (m, 3H), 4.36-4.32 (m, 2H), 4.30-4.27 (m, 2H, iGln--CH), 4.26-4.19 (m, 2H), 3.86-3.30 (m, 24H), 2.31 (m, 4H, iGln-γ-CH2), 2.12-2.03 (m, 4H, iGln-β-CH2), 1.96-1.95 (s, 12H, NHC(O)CH3 X 4), 1.37-1.35 (m, 6H, Ala-β-CH3), 1.31-1.28 (m, 6H, Lac-β-CH3)。
【0042】
(10)テトラサッカライドトリペプチド(化合物33、化学式2で表示される化合物)の製造
水酸化パラジウム(100mg)の酢酸溶液を化合物27(95mg、0.036mmol)の酢酸(3mL)溶液に加え、反応混合物をH2(20atm)下で一日撹拌した。反応の経過を薄膜クロマトグラフィ(TLC)分析でモニターし、脱保護化が終了するまで水素化分解(hydrogenolysis)を持続した。パラジウム触媒をセライトパッド(cerite pad)を介して濾過して除去し、濾液を濃縮した。残渣をアセトニトリル−H2Oから凍結乾燥し、標題の化合物(39mg、50%)を白色粉末で得た:
ESI-TOF-MS (negative) m/z = 834.5 [M-2H]2-; HRMS-ESI FT-ICR (negative): (M) C69H118N14O33として計算値, 1670.798; 実測値, 1670.817; 1H NMR (500 MHz, D2O): δ= 4.86-4.80 (m, 1H, H-1) 4.46-4.40 (m, 3H), 4.36-4.05 (m, 8H, Lac-α-CH, Ala-α-CH, iGln-α-CH, Lys-α-CH), 3.86-3.30 (m, 26H), 3.00-2.90 (t, J = 11.4, 4H, Lys-ε-CH2), 2.37-2.31 (t, J = 9.5, 4H, iGln-γ-CH2), 2.09-2.0 (m, 4H, iGln-β-CH2), 2.02-1.81 (m, 18H, NHC(O)CH3 X 4, Lys-β-CH X 2, Lys-δ-CH X 2), 1.78-1.69 (m, 2H, Lys-δ-CH X 2), 1.58-1.70 (m, 4H, Lys-γ-CH2 X 2), 1.61-1.4 (m, 2H, Propyl CH3-CH2), 1.40-1.35 (m, 6H, Ala-β-CH3), 1.31-1.28 (m, 6H, Lac-β-CH3), 0.85-0.80 (t, J = 9.3, 3H, Propyl CH3)。
【0043】
(11)テトラサッカライドテトラペプチド(化合物35、化学式3で表示される化合物)の製造
標題の化合物を化合物27から化合物33の製造方法と類似した方法で製造した:
ESI-TOF-MS (negative) m/z = 905.1 [M-2H]2-; HRMS-ESI FT-ICR (negative): (M) C75H128N16O35として計算値, 1812.873; 実測値, 1812.896; 1H NMR (500 MHz, D2O): δ= 4.86-4.80 (m, 1H, H-1), 4.46-4.40 (m, 3H), 4.36-3.95 (m, 10H, Lac-α-CH, Ala-α-CH, D-iGln-α-CH, Lys-α-CH), 3.86-3.30 (m, 26H), 3.00-2.90 (t, J = 7.5, 4H, Lys-ε-CH2), 2.40-2.31 (t, 4H, iGln-γ-CH2), 2.09-1.82 (m, 22H, iGln-β-CH2 X 2, NHC(O)CH3 X 4, Lys-β-CH2 X 2, Lys-δ-CH X 2), 1.78-1.4 (m, 8H, Lys-δ-CH X 2, Lys-γ-CH2 X 2, Propyl CH3-CH2), 1.40-1.22 (m, 12H, Ala-β-CH3 X 4, Lac-β-CH3 X 2), 0.85-0.80 (m, 3H, Propyl CH3)。
【0044】
(12)テトラサッカライドペンタペプチド(化合物37、化学式4で表示される化合物)の製造
標題の化合物を化合物27から化合物33の製造方法と類似した方法で製造した:
ESI-TOF-MS (negative)m/z = 976.64 [M-2H]2-;;HRMSESI FT-ICR (negative): (M) C81H138N18O37として計算値, 1954.947; 実測値, 1954.939;1H NMR (500 MHz, D2O): δ = 4.86-4.80 (m, 1H, H-1), 4.46-4.40 (m, 3H), 4.36-4.0 (m, 12H, Lac-α-CH, Ala-α-CH, iGln-α-CH, Lys-α-CH), 3.86-3.30 (m, 26H), 2.95-2.91 (t, J = 7.5, 4H, Lys-ε-CH2), 2.40-2.31 (t, J = 7.0, 4H, iGln-γ-CH2), 2.09-1.82 (m, 22H, iGln-β-CH2 X 2, NHC(O)CH3 X 4, Lys-β-CH2 X 2, Lys-δ-CH X 2), 1.78-1.4 (m, 8H, Lys-δ-CH X 2, Lys-γ-CH2 X 2, Propyl CH3-CH2), 1.40-1.22 (m, 12H, Ala--CH3 X 6, Lac-β-CH3 X 2), 0.85-0.80 (m, 3H, Propyl CH3)。
【0045】
実施例4:PO活性化に対する天然または合成PGNの影響評価
本実施例では、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液内でのPOの活性化に対する天然または合成PGNの影響を評価した。
PO活性を基質溶液(4−メチルカテコール、及び4−ヒドロキシプロリンエチルエステルのHCl溶液)を使用し、Pye分光光度測定法(Pye-spectrophotometric method)によって分析した。4−メチルカテコールは、POによってキノンに酸化され、これは、4−ヒドロキシプロリンエチルエステルHCl溶液との非酵素的反応によって、520nmで最大の吸光度を有する安定した化合物である4−(4’−ヒドロキシル−2’−カルブエトキシ−1’−ピロリン)−5−メチル−o−ベンゾキノンに転換される(図2参照)。
10%β−1,3−グルカン溶液10μl(1μg)、10%S.aureus PGN溶液10μl(1μg)、10%M.luteus PGN溶液10μl(10ng)及び10%合成PGN(化学式1ないし4の化合物それぞれ)溶液10μl(1μg)それぞれを、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液30μl(蛋白質350μg)と共に30℃で5分間インキュベートした。その後、4−メチルカテコール(250mM)4μl、4−ヒドロキシプロリンエチルエステルHCl溶液(62.5mM)16μl及び1M CaCl2(10mM)5μlを加えた。20mM Tris−HCl(pH8.0)を最終容積が500μlになるように加えた。反応混合物を30℃でインキュベートした後、反応混合物の吸光度を520nmで測定した(図3参照)。
【0046】
β−1,3−グルカン溶液、S.aureus PGN溶液、M.luteus PGN溶液は、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液中でPGN依存のpro−POカスケードを活性化させたが、相対的に簡単な構造を有する合成PGNは、PGN依存のpro−POカスケードを活性化させられないことが発見された(図3参照)。
一方、S.aureus PGN 1μg及び合成PGN 1μgの存在下でPO活性を測定した。PGN活性の阻害程度は合成PGNによって異なるが、合成PGNは、PGN依存のPO活性を抑制することが発見された(図4参照)。特に、N−アセチルムラミン酸に4個のアミノ酸が連結された化学式3の化合物35が天然のPGN依存のPO活性の最も強力な競争的阻害剤として機能した。かような結果は、化学式3の合成PGNがチャイロゴミムシダマシ幼虫の体液に存在するPGN認識蛋白質によって最適に認識されるということを示す。
また、S.aureus PGN 1μg存在下で、化学式3の合成PGNを増加させつつ追加し(0.2、0.4、0.8及び1.5μg)、PO活性を測定した。PO活性が合成PGN濃度依存の様相で阻害されることが発見された(図5参照)。
【0047】
実施例5:アミダーゼ活性に対する天然または合成PGNの影響評価
10%のグラム陽性S.aureus PGN溶液(最終濃度:1μg)10μl及び10%の合成PGN(化学式3の化合物35)溶液10μlを、基質として40μMのトリプシンMCA(t−ブチルオキシカルボニル−ベンジル−L−フェニルアラニル−L−セリル−L−アルギニン−4−メチルクマリル−7−アミド;Boc−Phe−Ser−Arg−MCA)存在下で30℃でインキュベートした後、蛍光分光光度計(UV−160Aモデル、(株)島津製作所)を使用し、380nm(励起波長)及び460nm(放射波長)で蛍光を測定した。
その結果、アミダーゼ活性がPO活性と同じ阻害パターンを示すということが発見された(図6参照)。かような結果は、合成PGNが前記PGN認識のみに関与するということを示す。
【0048】
実施例6:チャイロゴミムシダマシ幼虫からのPGN認識蛋白質の精製
(1)合成PGN結合カラムの準備
まず、CNBrセファローズ4B樹脂を1mM HClで活性化させた。その後、化学式3の合成PGN20mgの結合緩衝液(0.1M NaHCO3、0.5M NaCl)(pH8.3)溶液を前記CNBrセファローズ4B樹脂に適用した。得られた混合物を室温で1時間インキュベートし、ブロッキング緩衝液(0.1M Tris溶液、pH8.0)と共に室温で2時間撹拌し、0.1Mアセテート緩衝液(pH4.0、0.5M NaCl)及び0.1M Tris−HCl緩衝液(pH8.0、0.5M NaCl)でそれぞれ3回洗浄し、PGN結合のセファローズ4B樹脂を製造した。
合成PGNが前記CNBrセファローズ4B樹脂に結合されているか否か確認するために、合成PGN結合緩衝液溶液、及び前記結合緩衝液と前記CNBrセファローズ4B樹脂との中で前記合成PGN溶液をインキュベートした後で得られた溶液に対し、218nmで吸光度測定を行い、吸光度低下率(%)を計算した。その結果、前記合成PGN及び前記CNBrセファローズ4B樹脂の結合反応によって、89%の収率でPGN結合の樹脂が生成されることによって、PGN(32ml)結合カラムが製造された。
一方、合成PGNを使用していないことを除いては、前記と同じ方法で対照群カラムを製造した。
【0049】
(2)20 kDaのPGN認識蛋白質の分離及び精製
(a)合成PGN結合カラムを使用した精製
0.5M DFP溶液を抗凝集緩衝液(pH5.0)で採取されたチャイロゴミムシダマシ幼虫の体液160mlに最終濃度が2mMになるように加えた。反応混合物を4℃で2時間インキュベートし、3mM EDTA含有の50mM Tris緩衝液(pH6.0)で5℃で12時間透析した。
開放カラム(ψ3cmx25cm)をPGN結合セファローズ樹脂約30mlで充填し、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液の透析された溶液約160mlを分当たり0.6mlの流速でPGN結合カラムにローディングした。
前記PGN結合カラムを3mM EDTA含有50mM Tris緩衝液(pH6.0)で分当たり0.6mlの流速で洗浄し、280nmでの吸光度測定を介して、蛋白質が検出されなくなるまで、3mM EDTA及び1M NaCl含有の50mM Tris緩衝液(pH6.0)を使用し、分当たり0.4mlの流速で前記PGN結合カラムから蛋白質を溶離させた。溶離された溶液中の蛋白質濃度を280nmでの吸光度測定によって決定し、蛋白質の純度及び含有量をSDS−PAGEで分析した。
パススルー(pass-through)溶液及び1M NaCl溶離溶液を前記PGN結合カラムから得て、分子量カットオフサイズ10,000のメンブレンの装着された限外濾過キット(ultrafiltration kit、Amicon社)を使用して濃縮した。
【0050】
透析前(図7のレーン1)及び透析後(図7のレーン2)のチャイロゴミムシダマシ幼虫の体液、前記PGN結合カラムからのパススルー溶液(図7のレーン3)、前記PGN結合カラムからの1M NaCl溶離溶液(図7のレーン4)、及び対照群カラムからの1M NaCl溶離溶液(図7のレーン5)をSDS−PAGEで分析した。約25μgの蛋白質をSDS−PAGEゲル上にローディングした。
対照群カラム及びPGN結合カラムの1M NaCl溶離溶液中の蛋白質のゲルパターンを比較分析した。前記SDS−PAGEの結果は、約20 kDaの蛋白質が前記PGN結合カラムで溶離された溶液でのみ特異的に存在するということを示す(図7参照)。
【0051】
(b)トヨパールHW55S FPLCカラムを使用した精製
(a)で前記PGN結合カラムからの1M NaCl溶離溶液を、分子量カットオフサイズ10,000のメンブレンの装着された限外濾過キット(ultrafiltration kit、Amicon社)を使用して濃縮し、濃縮されたサンプルを準備した。
FPLCカラム(ψ1.0cmx30cm)をトヨパールHW55S樹脂で充填し、3mM EDTA及び0.15M NaCl含有の50mM Tris溶液(pH6.0)で、分当たり0.2mlの流速で平衡化させた。
前記濃縮されたサンプルを、前記トヨパールHW55S FPLCカラムにローディングし、各ピーク別に分画した。総分画物をプロファイルパターン(profile pattern)別に集め、SDS−PAGEで分析して蛋白質バンドのパターンを同定した。
前記SDS−PAGE結果は、前記分画が(a)の分画より、約80%の他の蛋白質が除去された、さらに精製されたチャイロゴミムシダマシ幼虫のPGN認識蛋白質(すなわち、トランスメンブレンPGN認識蛋白質(Tm−PGRP))分画であることを示す。前記SDS−PAGEの結果はまた、前記カラムからの前記チャイロゴミムシダマシ幼虫のPGN認識蛋白質の溶離が、ローディングからおよそ55分後に始まるということを示す(図9参照)。前記よりさらに精製されたチャイロゴミムシダマシ幼虫のPGN認識蛋白質分画物を次の実験で使用した。
【0052】
(c)ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)カラムを使用した精製
FPLCカラム(ψ0.5cmx10cm)をリン酸基のイオン強度によって異なる分離効率を示すヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)樹脂で充填し、前記トヨパールHW55Sカラムから得た蛋白質分画を、前記ヒドロキシアパタイトカラムにローディングした。このとき、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)を緩衝液Aとして使用し、300mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)を緩衝液Bとして使用した。前記緩衝液A及びBをリン酸塩の濃度勾配(120分で最大75mM)によって、分当たり0.4mlの流速で流した。PGN依存のPO活性を示す分画を集め、次の精製過程を行った。
トヨパールHW55Sカラムから得られた分画物のヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィの結果は、図10に表した。
総分画物を溶離プロファイル(elution profile)のパターン別に分離及び回収し、SDS−PAGEで分析して蛋白質のパターンを確認した。図10から分かるように、Tm−PGRPが約24mMリン酸イオンの濃度で溶離され始めた。約54%の他の蛋白質が除去されたさらに精製されたTm−PGRPの分画物が得られ、次の精製過程で使用した。
【0053】
(d)モノ−Q FPLCカラムを使用した精製
前記ヒドロキシアパタイトカラムから分離した蛋白質からPGN認識蛋白質のみを精製するために、陰イオン交換樹脂であるモノ−Q樹脂を利用し、モノ−Q FPLCカラムクロマトグラフィを遂行した。緩衝液A(50mM Tris緩衝液(pH6.5))及び緩衝液B(緩衝液A+1M NaCl)を使用し、緩衝液A及び緩衝液Bの濃度勾配によって、モノ−Q FPLCカラムクロマトグラフィを遂行した。緩衝液Bの濃度を、次の通り順次に増加させた:最初の5分間0%、30分間30%、45分間100%。溶離された分画中の蛋白質濃度は、280nmでのUV吸光度を測定して測定し、蛋白質の純度及び含有量は、SDS−PAGEで分析した。
ヒドロキシアパタイトカラムから得られた蛋白質分画に対するモノ−Q FPLCカラムクロマトグラフィ溶離プロファイル(elution profile)は、図11の通りである。全体分画物を溶離プロファイルのパターン別に分離及び回収し、SDS−PAGEで分析して蛋白質バンドのパターンを決定した。図11から分かるように、Tm−PGRPが約120mMのNaClで溶離され始めた。
【0054】
実施例7:20 kDaのPGN認識蛋白質のN末端部位及び3つの断片のアミノ酸配列決定
N末端配列分析のために、実施例6で精製された蛋白質を12%SDS−PAGEを実施した後、転移緩衝液(CAPS 10mM、メタノール10%)中で300mAの一定の電流で1時間電気泳動し、PVDFメンブレンに転移させた。
前記PVDFメンブレンをCBB染色溶液(0.1%CBB R−250、50%メタノール)で染色し、脱色溶液(50%メタノール、10%酢酸)で脱色させ、水で数回洗浄し、減圧乾燥した。蛋白質バンドを切り、自動アミノ酸分析器に注入してPVDFメンブレン上で、ガス相(gas-phase)のアミノ酸配列分析を行った。
一方、実施例6で精製された蛋白質25μgを45mM DTTで還元させ、100mMヨードアセトアミド(Iodoacetoamide)溶液でアルキル化した後、リシル−エンドペプチダーゼ(lysyl-endopeptidase)を加えた。反応混合物を37℃で12時間インキュベートし、ペプチド断片をHPLC C18カラムにローディングして精製した。精製されたペプチドのアミノ酸配列を自動アミノ酸分析器で決定した。
このようにして、電気泳動によって精製された20 kDa蛋白質をPVDFメンブレンにブロッティングし、エドマン分解(Edman degradation)法によって、前記20 kDa蛋白質のN末端部位(配列番号3、図8A参照)及び3個の断片(配列番号4ないし6、図8B参照)のアミノ酸配列を決定した。
特に、NCBI blast分析結果は、前記20 kDaの蛋白質が多様な生物に存在する短いPGN認識蛋白質と高い配列相同性を有するということを示した。
【0055】
実施例8:20 kDaのPGN認識蛋白質のcDNAクローニング及び該PGN認識蛋白質をコーディングするポリヌクレオチドの配列分析
実施例8では、実施例7で得られた20 kDaのPGN認識蛋白質の部分アミノ酸配列情報を基にしてデザインされたDNAプローブを使用し、チャイロゴミムシダマシのcDNAライブラリをスクリーニングした。前記検索を一次スクリーニング及び二次スクリーニングに分け、前記スクリーニングはいずれも前記DNAプローブを使用してプラーク混成化(plaque hybridization)によって行った。
【0056】
(1)DNAプローブの合成
精製された蛋白質をリシル−エンドペプチダーゼで消化させて得られたペプチド断片のうち、相対的に数が小さく、可能性のあるヌクレオチド配列を定義するアミノ酸配列を有するペプチド断片を選択した。選択されたペプチド断片を基に、55−65℃の適切なTm(melting temperature)を有するヌクレオチド配列をDNAプローブとして製作した。
前記DNAプローブをGenotech精製法(Genotech purification tool)で精製した。20 kDaのPGN認識蛋白質のcDNAクローニングのために、配列番号7のヌクレオチド配列を有するDNAプローブを使用した。
【0057】
(2)宿主細胞の準備
LB/テトラサイクリンプレート上にXL−1−ブルーストック(Blue stock)溶液5μlを塗布し、37℃で12時間インキュベートした。LB/テトラサイクリンプレートから単一のコロニーをLBブロス(broth)5μl、20%マルトーズ50μl及び1M MgSO4 50μlの混合物に接種し、37℃でOD600が0.5−1になるまで振蘯培養し、500 xgで10分間遠心分離した。OD600が0.5になるように沈殿物を10mM MgSO4中に再懸濁した。
【0058】
(3)レプリカ(Replica)の製造
チャイロゴミムシダマシ幼虫由来の増幅されたcDNAライブラリ・レプリカ(Replica)を12個のプレートから取った(5,000プラーク/プレート)。すなわち、XL−1−Blue(OD600=0.5)200μlを、5,000プラークを生成するcDNAライブラリ溶液に加え、37℃で15分間振蘯培養した後、48℃にあらかじめ加温した3.5mlの軟寒天培地(top agar)と混合した。得られた混合物を迅速に数回撹拌した後、迅速にNZYプレートに塗布した。前記NZYプレートを37℃で13時間培養してレプリカを取った。
前記NZYプレートを4℃で1時間放置して反応を終結させた。その後、コロニー/プラークスクリーンメンブレン(NEF−978)を注意深く前記NZYプレートの上端に置き、注射針及び赤い油性ペンで標識した後、室温で5分間インキュベートした。第2のメンブレンを前記NZYプレートの上端に注意深く置き、黒色油性ペンで標識した後、15分間インキュベートし、空気中で1時間以上放置して前記メンブレンを完全に乾燥させた。その後、メンブレンをアルカリ(0.5N NaOH)で2分間処理し、5分間乾燥させ、1M Tris/HCl(pH7.5)で中和させた後、空気中で乾燥させた。前記メンブレンを前記と同じ方法でアルカリで再び処理して中和させた後、メンブレンが完全に乾燥されるように室温で1時間以上放置した。その後、スクリーニングのために前記メンブレンを洗浄した。すなわち、前記メンブレンを洗浄緩衝液(3X SSC/0.1%SDS)に浸した後、SDSを完全に除去するために吸収紙で絞った。
【0059】
(4)DNAプローブのキネーション(kination)
陽性クローンのスクリーニングのためのDNAプローブを次の通り表示した:蒸溜水(milli−Q、autoclave)21μl、10Xキナーゼ緩衝液18μl、DNAプローブ9μl(600pM)、γ−32P−dATP 90μl(約0.9 mCi)及びT4ポリヌクレオチドキナーゼ(PNK)(10ユニット/μl)12μl(40ユニット)をボルテックシングした後、スピンダウンさせた。
前記反応混合物を37℃で30分間インキュベートし、70℃のウォーターバス中で10分間熱処理した。E.coli tRNA(20μg/μl)10μlを加え、前記プローブをセファローズG−50カラム上で精製し、放射性同位元素が標識されたプローブのみを選択的に取った。
【0060】
(5)予備混成化
60℃にあらかじめ加温した予備混成化(prehybridization)溶液30mlを、メンブレンと共にビニールバッグに入れ、完全に脱気した後で密封し、60℃で5時間インキュベートした。前記予備混成化溶液は、20XSSC溶液22.5ml、50Xデンハーツ(Denhart’s)溶液30ml及び5mg/ml ssssDNA 1.5mlの混合物に蒸溜水を加え、全体体積を150mlとして製造した。
【0061】
(6)混成化
予備混成化が終了した後、前記メンブレンをビニールバッグから取り出した。γ−32P−ATP−標識されたDNAプローブ溶液を混成化溶液30mlに加えた(5ng DNA/ml)。前記反応混合物を、メンブレンと共にビニールバッグに入れて脱気した後で密封した後、Tm−5℃で恒温槽で一日インキュベートした。前記DNAプローブのTmは、アデニン(A)とチミン(T)との水素結合を2℃にし、グアニン(G)とシトシン(C)との結合を4℃にしてDNAのTmを計算する方法であるイタクラ法則(Itakura’s rule)を利用して選定した。
前記混成化溶液は、20XSSC溶液30ml、50X denhart’s溶液30ml、5mg/ml ssssDNA0.75mlの混合物に蒸溜水を加えて全体体積を150mlにして製造した。
混成化後、メンブレンをビニールバッグから取り出し、30℃であらかじめ加温した洗浄溶液(3X SSC/0.1%SDS)で5分ずつ3回洗浄し、55℃で5分間同じ洗浄液で1、2回洗浄した。その後、メンブレン上の放射線量をフィルタ当たり400cpmほどに維持しつつ、前記メンブレンをワットマン社の3MM濾過紙上に付け、カセットに装着した。前記メンブレン上にX線フィルムを固定し、カセットを−75℃で約12時間インキュベートした後、室温で解凍させた。暗室でX線フィルムをメンブレンから剥がし出して現像した。X線フィルムを前記メンブレンに整列させ、X線フィルム上にレプリカを表示した。
【0062】
(7)陽性クローンの選択
2枚のメンブレンに対するオートラジオグラフィ(autoradiography)標識を互いに整列させ、オーバーレイ(overlay)分析を行った。2枚のメンブレンで共通して検出される陽性シグナルを選択し、一次陽性クローンとして判定した。4℃に保管されたマスタープレート(master plate)上に陽性プラークをリスクリーン(rescreen)し、単一の陽性プラークを選択した。
【0063】
(8)二次スクリーニング
一次スクリーニングによって選択された単一の陽性プラークをLB液体培地で10倍ずつ3段階で希釈した。前記希釈液1μlを3μlのCHCl3含有SM緩衝液1mlに入れた後、NZYプレート上に塗布し、37℃で一晩インキュベートした。プレート当たり100個ほどのプラークを含有したプレートをマスタープレートとして使用した。前記マスタープレートに対し、レプリカプレーティング、DNA固定化、プラーク混成化、及び陽性プラーク選択を前記一次スクリーニングと同じ方法で行った。二次スクリーニングにより、一次スクリーニングによって選択された前記陽性クローンが正確であることを確認した。
【0064】
(9)ファージミド(Phagemid)の製造
二次スクリーニングによって検証された20 kDa蛋白質の陽性クローンの力価を計算し、2X105個のプラークを生成すると予想される量を算出した。これを基に、XL−1−Blue(OD600=1.0)200μl、二次スクリーニングによって確認された陽性プラークを含む溶液(2X105ファージ)200μl、及びExAssistヘルパーファージ(helperphage)1μlを50mlファルコンチューブ(falcon tube)に入れ、37℃で15分間インキュベートした。3mlのLBブロスを加え、得られた懸濁液を37℃で3時間振蘯培養した後、70℃で20分間熱処理し、1,000xgで15分間遠心分離した。上澄み液を15mlファルコンチューブに入れ、4℃で保管した。
【0065】
(10)ファージミド(Phagemid)の培養
20 kDaの蛋白質の遺伝子を含有するファージミド(phagemid)を精製するために、アンピシリン耐性部位(ampicillin resistant region)を含んでいないSOLR細胞に対し、アンピシリン耐性部位を含むファージミドに形質転換させ、LB/アンピシリンプレートで育てた。これについて詳細に説明すれば、次の通りである。
SOLR細胞(OD600=1.0)200μlにLBブロスで1,000倍希釈したファージミド10μl及び100μlをそれぞれ加え、37℃で15分間振蘯培養した。それぞれの培養液アリコット(aliquot)50μlをLB/アンピシリンプレートに塗布して37℃で12時間培養した。前記プレートから単一コロニーを取り、LBブロス5mlとアンピシリン(50mg/ml)10μlとを含有する50mlファルコンチューブ上にローディングし、37℃で12時間培養した。
【0066】
(11)ファージミドの分離、精製及び同定
(10)で製造された培養液を、DNA精製キット(Miniprep kit、Quiagen社)でメーカの指示(specification)によって精製し、対象になる蛋白質の遺伝子を含有するファージミドを得た。このように得られたファージミドの純度を確認するために、ファージミドDNA0.5μg、EcoRI 0.5μl(7.5U)、XhoI 0.5μl(6U)及び10XH緩衝液1μlを混合し、三次蒸溜水を前記混合物に加え、総体積を10μlにした。反応混合物を37℃で1時間培養し、6Xローディング緩衝液3μlと混合した。反応溶液アリコット10μlを1.5%アガロースゲル電気泳動で分析した。前記ゲルを臭化エチジウム溶液(160μg/100ml)に10分間浸した後、水で数回洗浄した。UV下で示されるバンドから抽出したファージミドDNAの純度及び濃度を確認した。
【0067】
(12)DNA配列分析のためのPCR
(11)で得られた20 kDa蛋白質の遺伝子を含有するファージミドDNA 1μgに三次蒸溜水を加え、総体積を10μlにした。ファージミドDNAの3’及び5’末端と結合できるユニバーサルプライマー(universal primer)であるT3(配列番号:8)とT7(配列番号:9)とを含むPerkin Elmer社のローダミンterminator cycle sequencing ready reaction mixtureを含むDNAシーケンシングキットを使用し、DNA配列分析溶液(最終濃度3.2pmole/μl)8μlと、前記で得られた溶液とを混合した。ミネラルオイル(mineral oil)を滴加し、PCRを次の通り行った:96℃で30秒、50℃で15秒、60℃で4分の24サイクル。その後、スピンカラム(spin column)でDNAサンプルを精製し、スピードバック(speed-vac)上で乾燥させた後、(脱イオン化ホルムアミド:ブルーデキストラン=5:1)溶液3μlに溶かし、95℃で2分間熱処理した後、自動配列分析器にローディングした。
【0068】
(13)20 kDaのPGN認識蛋白質のDNA配列分析
Sangerが開発したジデオキシ・チェーン・ターミネーション(dideoxy chain termination)法によって、市販されているDNA配列分析キット(Perkin Elmer社のローダミンterminator cycle sequencing ready reaction)を使用し、20 kDaのPGN認識蛋白質のDNA配列分析を行った。前記配列分析の結果、チャイロゴミムシダマシ幼虫のPGN認識蛋白質をコーディングするポリヌクレオチドは、配列番号1のヌクレオチド配列を有すると確認された。
【0069】
(14)20 kDaのPGN認識蛋白質の遺伝子配列及びアミノ酸配列の分析
一次スクリーニング後、20個のプレートいずれでも陽性プラークが生成された。二次スクリーニング後、15個の陽性クローンを得た。1.5%アガロースゲル電気泳動を行った結果、15個の陽性クローンのうち三種の20 kDaのPGN認識蛋白質の遺伝子を含有するということを確認した。それら3個のクローンの配列分析結果、前記クローンが実施例7で先に決定された部分アミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含有するということを確認した。前記cDNAクローンそれぞれは、シグナルペプチド(signal peptide)から停止コドン(stop codon)までの188個のアミノ酸に該当する564個のヌクレオチドオープンリーディングフレーム(nucleotide open reading frame)と同定された(図12参照)。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】フェノールオキシダーゼ(PO)活性化システムを示す概要図である。
【図2】PO活性測定のためのパイ分光光度分析法(Pye-spectrophotometric assay)の原理を示す図面である。
【図3】PO活性に対する天然ペプチドグリカン(PGN)、ベータ−1,3−グルカン及び合成ペプチドグリカンの効果を示すグラフである。
【図4】合成PGNによる天然PGN依存性PO活性の阻害程度を示すグラフである。
【図5】合成PGNの濃度に対し、天然PGN依存性PO活性の阻害程度を示すグラフである。
【図6】合成PGNの濃度に対し、アミダーゼ活性の阻害程度を示すグラフである。
【図7】透析前後のチャイロゴミムシダマシ幼虫の体液、そして合成PGNが結合されたカラム及び対照群カラムから溶離された溶液を使用して行われた、硫酸ドデシルナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)の結果を示すイメージである。
【図8】エドマン分解(Edman degradation)を使用して決定された、合成PGN結合カラムから溶離された20 kDaの蛋白質のN末端部位(A)及び3個の断片(B)のアミノ酸配列を示す図面である。
【図9】トヨパールHW55Sカラムクロマトグラフィによるチャイロゴミムシダマシ幼虫のPGN認識蛋白質の溶離プロファイル(elution profile)を示すグラフである。
【図10】ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)カラムクロマトグラフィによるチャイロゴミムシダマシ幼虫のPGN認識蛋白質の溶離プロファイルを示すグラフである。
【図11】モノ−Q−FPLCカラムクロマトグラフィによるチャイロゴミムシダマシ幼虫のPGN認識蛋白質の溶離プロファイルを示すグラフである。
【図12】20 kDaのPGN認識蛋白質をコーディングするcDNAの配列及び前記cDNAから発現されるアミノ酸配列を示す図面である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記化学式1ないし4で表示される化合物からなる群から選択された一つ以上の合成ペプチドグリカンが結合された樹脂でカラムを充填して親和性クロマトグラフィカラムを準備する段階と、(b)チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用する段階と、(c)移動相(mobile phase)を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用し、前記親和性クロマトグラフィカラムから溶離されたペプチドグリカン認識蛋白質含有溶液を得る段階と、(d)前記溶離された溶液からペプチドグリカン認識蛋白質を精製する段階とを含む、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液からペプチドグリカン認識蛋白質を分離する方法:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
式中、Prはプロピルである。
【請求項2】
前記合成ペプチドグリカンが化学式3で表示される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階(c)の前記移動相がNaCl及びEDTAを含むTris−HCl(pH7.5)緩衝液であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
段階(d)が前記溶離された溶液のサイズ排除カラムクロマトグラフィ、イオン濃度勾配カラムクロマトグラフィ及びイオン交換カラムクロマトグラフィを順に遂行することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記サイズ排除カラムクロマトグラフィがトヨパールHw55S FPLCカラム上で遂行されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記イオン濃度勾配カラムクロマトグラフィがヒドロキシアパタイトカラム上で遂行されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記イオン交換カラムクロマトグラフィがモノ−QFPLCカラム上で遂行されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
(a)下記化学式1ないし4で表示される化合物からなる群から選択された一つ以上の合成ペプチドグリカンが結合された樹脂でカラムを充填して親和性クロマトグラフィカラムを準備する段階と、(b)チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用する段階と、(c)洗浄溶液を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用し、前記親和性クロマトグラフィカラムから溶離されたペプチドグリカン認識蛋白質を除外した他のパターン認識蛋白質の溶液を得る段階と、(d)前記溶離された溶液からペプチドグリカン認識蛋白質を除外したパターン認識蛋白質の分画を精製する段階とを含む、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液からペプチドグリカン認識蛋白質を除外したパターン認識蛋白質分画を分離する方法:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
式中、Prはプロピルである。
【請求項9】
請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の方法により分離されたペプチドグリカン認識蛋白質。
【請求項10】
配列番号1のアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項9に記載のペプチドグリカン認識蛋白質。
【請求項11】
請求項9に記載のペプチドグリカン認識蛋白質をコーディングするポリヌクレオチド。
【請求項12】
配列番号2のヌクレオチド配列を有することを特徴とする請求項11に記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の方法により分離されたペプチドグリカン認識蛋白質を含むペプチドグリカン検出用キット。
【請求項14】
前記ペプチドグリカン認識蛋白質が配列番号1のアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項13に記載のペプチドグリカン検出用キット。
【請求項1】
(a)下記化学式1ないし4で表示される化合物からなる群から選択された一つ以上の合成ペプチドグリカンが結合された樹脂でカラムを充填して親和性クロマトグラフィカラムを準備する段階と、(b)チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用する段階と、(c)移動相(mobile phase)を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用し、前記親和性クロマトグラフィカラムから溶離されたペプチドグリカン認識蛋白質含有溶液を得る段階と、(d)前記溶離された溶液からペプチドグリカン認識蛋白質を精製する段階とを含む、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液からペプチドグリカン認識蛋白質を分離する方法:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
式中、Prはプロピルである。
【請求項2】
前記合成ペプチドグリカンが化学式3で表示される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階(c)の前記移動相がNaCl及びEDTAを含むTris−HCl(pH7.5)緩衝液であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
段階(d)が前記溶離された溶液のサイズ排除カラムクロマトグラフィ、イオン濃度勾配カラムクロマトグラフィ及びイオン交換カラムクロマトグラフィを順に遂行することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記サイズ排除カラムクロマトグラフィがトヨパールHw55S FPLCカラム上で遂行されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記イオン濃度勾配カラムクロマトグラフィがヒドロキシアパタイトカラム上で遂行されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記イオン交換カラムクロマトグラフィがモノ−QFPLCカラム上で遂行されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
(a)下記化学式1ないし4で表示される化合物からなる群から選択された一つ以上の合成ペプチドグリカンが結合された樹脂でカラムを充填して親和性クロマトグラフィカラムを準備する段階と、(b)チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用する段階と、(c)洗浄溶液を前記親和性クロマトグラフィカラムに適用し、前記親和性クロマトグラフィカラムから溶離されたペプチドグリカン認識蛋白質を除外した他のパターン認識蛋白質の溶液を得る段階と、(d)前記溶離された溶液からペプチドグリカン認識蛋白質を除外したパターン認識蛋白質の分画を精製する段階とを含む、チャイロゴミムシダマシ幼虫の体液からペプチドグリカン認識蛋白質を除外したパターン認識蛋白質分画を分離する方法:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
式中、Prはプロピルである。
【請求項9】
請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の方法により分離されたペプチドグリカン認識蛋白質。
【請求項10】
配列番号1のアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項9に記載のペプチドグリカン認識蛋白質。
【請求項11】
請求項9に記載のペプチドグリカン認識蛋白質をコーディングするポリヌクレオチド。
【請求項12】
配列番号2のヌクレオチド配列を有することを特徴とする請求項11に記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の方法により分離されたペプチドグリカン認識蛋白質を含むペプチドグリカン検出用キット。
【請求項14】
前記ペプチドグリカン認識蛋白質が配列番号1のアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項13に記載のペプチドグリカン検出用キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2009−524413(P2009−524413A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550208(P2008−550208)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【国際出願番号】PCT/KR2006/000154
【国際公開番号】WO2007/081067
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り
【出願人】(500309919)ユーハン・コーポレイション (16)
【氏名又は名称原語表記】YUHAN Corporation
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【国際出願番号】PCT/KR2006/000154
【国際公開番号】WO2007/081067
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り
【出願人】(500309919)ユーハン・コーポレイション (16)
【氏名又は名称原語表記】YUHAN Corporation
【Fターム(参考)】
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