説明

チュービング装置の設置方法

【課題】衝撃が水平ジャッキシリンダへの負荷となりにくいようにしたチュービング装置の設置方法を提供すること。
【解決手段】水平ジャッキシリンダ27がベースフレーム11の下面から突き出るようにして設けられ、ベースフレーム11の下方に、貫通孔を有する反力ウエイト55を連結するようにしたチュービング装置10であって、最初に反力ウエイト55を所定の位置に配置し、次いでチュービング装置10を反力ウエイト55に合わせて配置した後、ベースフレーム11に反力ウエイト55を連結し、水平ジャッキを伸縮させて反力ウエイト55を浮かせた状態で水平出しを行うチュービング装置の設置方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築、土木等の基礎工事に使用する、ケーシングや鋼管杭などの円筒体を地盤へ圧入或いは引き抜きするためのチュービング装置に関し、特に、円筒体を所定位置に打ち込むために行うチュービング装置の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築、土木等の基礎工事では、例えば、土砂を掘削しながら地中にケーシングを押し込み、旧基礎などの障害物の撤去やケーシング内の土砂の排出を行い、その中にコンクリートを打設するオールケーシング工法や、鋼管杭を打ち込んで基礎杭とする鋼管杭回転埋設工法がある。こうした工法では、ケーシングや鋼管杭を地中に回転圧入させるチュービング装置が使用される。チュービング装置は、ケーシングなどを通す貫通孔が形成され、その貫通孔を通したケーシングをチャック装置で把持し、ケーシングに対してモータによる回転を与えるとともに、下降によって地盤への圧入や、上昇による引抜きを行う。
【0003】
こうした作業では、ケーシングを所定の位置に正しく建て込むことが必要であり、そのため事前の測量によって地面には予め中心位置を示す印が付けられ、そこにケーシングの軸心が合うようにチュービング装置の設置が行われる。そこで従来は、例えば特公平5−18969号公報に開示されたような方法で、チュービング装置の位置合わせをした設置が行われていた。ここで、図10は、従来の設置方法に使用する敷き鉄板の平面図であり、図11は、敷き鉄板の側面図である。
【0004】
位置合わせ用の敷き鉄板110は、チュービング装置を搭載できる大きさで形成され、その中央には地盤に回転圧入するケーシングの外形よりも大きな貫通孔111があけられている。また、チュービング装置は、4本の水平ジャッキシリンダ121を有しており(図11参照)、敷き鉄板110の上面には、その水平ジャッキシリンダ121を位置決めするガイドプレート112が四隅に設けられている。ガイドプレート112は、水平ジャッキシリンダ121のフロート122が嵌り込むように四方に鉄片が突き立てられて形成されている。
【0005】
そこで、チュービング装置を設置する場合には、先ず施工現場の適所に敷き鉄板110が置かれる。その際、貫通孔111に対して、円形の枠に中心で重なるように十字の棒が形成された合わせ棒130が備えられている。そのため、敷き鉄板110は、ワイヤロープ140を介してクレーンに吊られ、合わせ棒130の十字部の交点が地面に付けられた印に合うように位置合わせして設置される。その後、チュービング装置がクレーンで吊られ、フロート122が敷き鉄板110のガイドプレート112に嵌り込むようにして設置される。これにより、チュービング装置そのものについて行うことなく、敷き鉄板110に設置することによって、芯合わせを行うことができる。
【特許文献1】特公平5−18969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、こうした従来の設置方法は、位置合わせ用の敷き鉄板110に対してチュービング装置を正確に配置するため、水平ジャッキシリンダ121のフロート122が嵌り込むガイドプレート112が形成されている。従って、チュービング装置の水平ジャッキシリンダ121が拘束されることになり、作業時に受ける衝撃によって破損などが生じ、場合によっては油漏れのおそれがあった。
【0007】
チュービング装置は、例えばケーシングを地盤に回転圧入させることによって回転反力と押込み力を受ける。回転反力についてはスパイクや作業機で固定されるビームなどの回転反力取り装置が張り出すようにしてフレームに連結されている。従って、回転圧入時の回転反力そのものが水平ジャッキシリンダ121への負荷となることは少ないが、ケーシングを回転させる際の起動時や、正逆転の切り替え時に生じる衝撃がガイドプレート112で拘束されることによりフロート122部分に掛かり、それが水平ジャッキシリンダ121を破損させ、油漏れなどの問題が生じるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、衝撃が水平ジャッキシリンダへの負荷となりにくいようにしたチュービング装置の設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るチュービング装置の設置方法は、水平ジャッキシリンダがベースフレームの下面から突き出るようにして設けられ、当該ベースフレームの下方に、貫通孔を有する反力ウエイトを連結するようにしたチュービング装置であって、最初に前記反力ウエイトを所定の位置に配置し、次いで前記チュービング装置を当該反力ウエイトに合わせて配置した後、前記ベースフレームに前記反力ウエイトを連結し、水平ジャッキを伸縮させて前記反力ウエイトを浮かせた状態で水平出しを行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るチュービング装置の設置方法は、前記反力ウエイトの貫通孔の中心位置を、前記チュービング装置によって地盤に回転圧入する円筒体の軸心位置に合わせて前記反力ウエイトを配置するようにしたことが好ましい。
また、本発明に係るチュービング装置の設置方法は、前記反力ウエイトに前記貫通孔の中心でクロスするように道糸を結びつけ、そのクロスした位置を前記円筒体の軸心位置に合わせて前記反力ウエイトを配置するようにしたことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、位置合わせに使用した反力ウエイトはベースフレームに連結されて浮いているので、作業時にフロートが固定されないことにより、円筒体の回転起動時や正逆転の切り替え時に衝撃を受けても水平ジャッキシリンダが拘束されないため負荷が小さく、破損が回避される。反力ウエイト自体はベースフレームに連結されて浮いているので、本来のウエイトの役割であるケーシングを地盤に圧入する時の押込み反力として作用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明に係るチュービング装置の設置方法について、その一実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、チュービング装置を示した平面図であり、図2はその正面図、図3は側面図であって、更に図4は断面図である。
チュービング装置10は、ベースフレーム11に4本のスラストシリンダ15,15…が立設され、上下に配置された昇降フレーム12及びチャックフレーム13が昇降可能に取り付けられている。ベースフレーム11、昇降フレーム12およびチャックフレーム13には、いずれも円筒体であるケーシング1が貫通可能な大きさの径で、同軸上に貫通孔80が形成されている。
【0013】
スラストシリンダ15は、そのシリンダチューブがベースフレーム11に対して直接固定されたポストとなり、昇降フレーム12は、そのシリンダチューブに昇降用ガイドが摺動可能に嵌め合わされている。スラストシリンダ15は、上方に突き出したピストンロッドが連結部材17に軸着され、同軸に設けられたチャックシリンダ18のピストンロッドが下方に突き出し、連結部材17に軸着されている。その連結部材17は昇降フレーム11に固定され、チャックシリンダ18はシリンダチューブがチャックフレーム13に固定されている。そのため、スラストシリンダ15が伸縮すると、連結部材17を介して昇降フレーム12とチャックフレーム13とが一体になって昇降し、チャックシリンダ18が伸縮すると、チャックフレーム13が昇降フレーム12に対して昇降するようになっている。
【0014】
スラストシリンダ15とチャックシリンダ18とが同軸上に連結してシリンダ機構20(20A〜20D)が構成され、ケーシング1を通す各フレーム11,12,13に形成された貫通孔80の周りに配置されている。昇降フレーム12は、水平に張り出した回転駆動部フレーム21にモータ22,22が固定され、減速機23を介して貫通孔80を囲むように配置されたコーン25へと、ピニオンギヤなどを介して伝達されるようになっている。チャックフレーム13には複数のチャック26が設けられ、これがコーン25とケーシング1との間に差し込まれ、コーン25とともにケーシング1が回転可能に把持される。
【0015】
ところで、ベースフレーム11には、水平出しを行うための水平ジャッキシリンダ27が四隅に設けられている。そして、そのベースフレーム11には、回転反力をとる外付けのビームを連結するため、複数のブラケット31が取り付けられている。更に、本実施形態では、押込み反力をとるための反力ウエイトをベースフレーム11の下に配置した構成をしている。ベースフレーム11の下方に突き出した水平ジャッキシリンダ27は、その取付フランジ28によって固定され、収縮した状態でもベースフレーム11の下面から突き出すようになっている。ベースフレーム11が地面からある程度の高くなるようにして、その下に空間ができるようにしている。本実施形態では、こうしたベースフレーム11の下に空いた空間を利用して反力ウエイト55を装着するようにしている。
【0016】
ここで、図5は、反力ウエイト55を示した図である。反力ウエイト55は、肉厚の鉄板55a,55b,55cが三枚重ねられ、それらが溶接によって一体に形成されている。反力ウエイト55は、ベースフレーム11の下空間に合わせて形成された板状のウエイトであって、ベースフレーム11からはみ出さないように、ほぼ同じ大きさの外形で形成されている。4隅は水平ジャッキシリンダ27がかからないように切り欠かれ、上面の鉄板55aは、鉄板55bに固定された取付ブラケット56の固定分だけ更に切り欠かれている。
【0017】
また、この反力ウエイト55には、チュービング装置10の貫通孔80に重なるように、同じ大きさ或いは少し大きめの貫通孔57が形成されている。一方、チュービング装置10のベースフレーム11には、この反力ウエイト55をピン結合によって取り付けるための取付ブラケット32が下方に突設されている。
【0018】
本実施形態では、この反力ウエイト55がチュービング装置10の位置決め手段となる。すなわち、 貫通孔57の中心が、地盤に回転圧入するケーシング1の軸心に合うように反力ウエイト55を配置し、それに合わせてチュービング装置10を設置する。そこで、設置には先ず反力ウエイト55の位置合わせする必要があるが、本実施形態でも従来と同様に貫通孔57にクロス表示を行い、それを目印に位置合わせを行うこととする。そこで、反力ウエイト55には、クロス表示のための道糸を結ぶリング58が四辺の所定位置に設けられている。
【0019】
次に、こうしたチュービング装置10の設置方法について説明する。先ず、チュービング装置10を設置する前に反力ウエイト55の設置が行われる。その際、反力ウエイト55には、リング58同士を道糸60で結び、図6に示すように貫通孔57内にクロス表示を行う。そして、反力ウエイト55は、図7に示すように取付ブラケット56にワイヤロープ61が連結され、そのワイヤロープ61がクレーンのフック62に引っ掛けられて吊り下げられる。施行現場には、回転圧入するケーシング1の軸心位置に印が付けられているため、吊り下げた反力ウエイト55は、道糸60,60の交点Pが印に重なるように適所に設置される。
【0020】
続いて、図8に示すように、クレーンで吊られたチュービング装置10が搬送される。チュービング装置10は、その取付ブラケット32が反力ウエイト55の二股の取付ブラケット56に挿入されるようにして降ろされる。そして、図2,及び図3に示すように、反力ウエイト55に従ってチュービング装置10が設置され、両方の取付ブラケット32,56の重なった孔にピンが通されたピン結合が行われる。こうして反力ウエイト55がチュービング装置10に装着された後は、各水平ジャッキシリンダ27をそれぞれ伸縮させた水平出しが行われる。すると、図9に示すように装置全体が持ち上げられ、反力ウエイト55は、吊設されたベースフレーム11と一体になって持ち上げられて浮いた状態になる。
【0021】
その後、チュービング装置10の駆動により、チャック26によって把持されたケーシング1が地盤へ回転圧入される。その際、回転圧入の抵抗によってチュービング装置10が回転反力と押込み反力を受けることになる。本実施形態では、ベースフレーム11の下に設けられた反力ウエイト55によってチュービング装置10のスラストシリンダ15より下部の重量が増し、押込みによる浮き上がりが防止され、更に反力ウエイト55に加え、不図示のビームがチュービング装置10のブラケット31に連結され、それによって回転方向にもズレないようにしている。
【0022】
本実施形態の設置方法によれば、位置合わせに使用した反力ウエイト55はチュービング装置10に吊設され、作業時にフロート29が固定されていることはないので、ケーシング1の回転起動時や正逆転の切り替え時に衝撃を受けても、水平ジャッキシリンダ27が拘束されないため破損が回避される。実際には、フロート29部分が地面に埋まらないように、井桁状に組んだ平板の敷き鉄板上に載せられるため、回転方向に衝撃が生じてもフロート29が多少の滑りを生じて更に水平ジャッキシリンダ27にかかる負荷は緩和される。
【0023】
以上、本発明に係るチュービング装置の設置方法は、前記実施形態のものに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
前記実施形態では、反力ウエイト55の設置に道糸60を使用して貫通孔57にクロス表示したが、例えば、図10に示す従来例のように合わせ棒130などを使用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る設置方法を実行するチュービング装置を示した平面図である。
【図2】本発明に係る設置方法を実行するチュービング装置を示した正面図である。
【図3】本発明に係る設置方法を実行するチュービング装置を示した側面図である。
【図4】本発明に係る設置方法を実行するチュービング装置を示した断面図である。
【図5】反力ウエイトを示した図である。
【図6】適所に設置する際の反力ウエイトを示した平面図である。
【図7】反力ウエイトの搬送状態を示した図である。
【図8】チュービング装置の搬送状態を示した図である。
【図9】水平出しを行ったチュービング装置を示した図である。
【図10】従来の位置合わせをした設置に使用する鉄板の平面図である。
【図11】従来の位置合わせをした設置に使用する鉄板の側面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ケーシング
10 チュービング装置
11 ベースフレーム
12 昇降フレーム
13 チャックフレーム
15 スラストシリンダ
18 チャックシリンダ
20 シリンダ機構
21 回転駆動部フレーム
22 モータ
25 コーン
26 チャック
27 水平ジャッキシリンダ
32 取付ブラケット
55 反力ウエイト
56 取付ブラケット
57,80 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平ジャッキシリンダがベースフレームの下面から突き出るようにして設けられ、当該ベースフレームの下方に、貫通孔を有する反力ウエイトを連結するようにしたチュービング装置であって、
最初に前記反力ウエイトを所定の位置に配置し、次いで前記チュービング装置を当該反力ウエイトに合わせて配置した後、前記ベースフレームに前記反力ウエイトを連結し、水平ジャッキを伸縮させて前記反力ウエイトを浮かせた状態で水平出しを行うことを特徴とするチュービング装置の設置方法。
【請求項2】
請求項1に記載するチュービング装置の設置方法において、
前記反力ウエイトの貫通孔の中心位置を、前記チュービング装置によって地盤に回転圧入する円筒体の軸心位置に合わせて前記反力ウエイトを配置するようにしたことを特徴とするチュービング装置の設置方法。
【請求項3】
請求項2に記載するチュービング装置の設置方法において、
前記反力ウエイトに前記貫通孔の中心でクロスするように道糸を結びつけ、そのクロスした位置を前記円筒体の軸心位置に合わせて前記反力ウエイトを配置するようにしたことを特徴とするチュービング装置の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−208520(P2008−208520A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43297(P2007−43297)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】