説明

チューブ被覆ロールの製造方法及び製造装置、並びに、半導電性ロールの製造方法及び製造装置

【課題】樹脂チューブ内にゴムローラを挿入する際に、樹脂チューブに亀裂、裂け、折れ等が発生しにくい、ゴムローラの挿入を可能とする樹脂チューブ被覆ロールの製造方法及び製造装置を提供すること。
【解決手段】 ゴムロール挿入ガイド20により、ゴムロール10外径を収縮させた状態で、ポリイミド樹脂チューブ12にゴムロール10を挿入して被覆している。このため、ポリイミド樹脂チューブ12に対して物理的負荷がかからなく、ポリイミド樹脂チューブ12の亀裂、裂け、折れ等が発生せず、ゴムローラの挿入が可能となる。また、ゴムロール挿入ガイド20へのゴムロール10の挿入の際、第1空気供給機構26によりゴムロール10の外周面に空気を供給すると、ゴムロール10をゴムロール挿入ガイド20へ挿入する際、ゴムロール10とゴムロール挿入ガイド20との間に空気が介在して挿入摩擦が低減し、スムーズなゴムロールの挿入が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置や静電記録装置等に用いられる樹脂チューブを被覆したロールの製造方法及び製造装置、並びに、半導電性ロールの製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ等に用いられる定着ロール、帯電ロールや転写ロール等には、芯金上にゴム層又はゴム発泡体層を形成したゴムロールの表面に、樹脂チューブを被覆した回転体が使用されている。これらの回転体は、機器の小型化や高性能化に対応すべく、ある程度変形可能とするために肉厚が薄い樹脂チューブが用いられており、また、機器の中で回転時に樹脂チューブのズレを生じにくいように、樹脂チューブは芯金上に形成したゴム層又はゴム発泡体層より小さい径で形成されている。例えば、PFA樹脂チューブを被覆した定着ロール、複数樹脂層チューブを被覆した帯電ロール、ポリイミド樹脂チューブを被覆した転写ロール等が開示されている(例えば、特開2003−156922公報、特開2004−109923公報など)。
【0003】
このようなゴムロールに樹脂チューブを被覆する手段として、加圧又は減圧するという手段を用いて樹脂チューブを均一に膨らます事に主眼を置いたものが多く出願されている。
【0004】
例えば、PFAチューブを用いた定着ロールでは、特開平8−15758号公報に開示されているように、減圧容器内にPFAチューブの一端部を懸吊して保持し、他端部側から減圧容器内のガスを吸引しつつ、前記PFAチューブの内径より僅かに大きい外径を有するゴムローラを挿入する方法があるが、この方法はPFAチューブの外面を減圧する手段がとられている。
【0005】
また特開平10−244590号公報に開示されているように、PFAチューブの一端を徐々に拡径した状態で折り返して挿入型内に設定させて、その周縁に外周面に接着剤を塗布したPFAチューブより僅かに大きい外径を有するゴムロールを加圧容器にて気密状態で覆い、加圧容器内を加圧してゴムロールをPFAチューブ内に挿入する方法があるが、この方法はPFAチューブの内面を加圧する手段がとられている。また、この提案では、ゴムロールに挿入治具を連結して気密性を確保する手段がとられている。
【0006】
このような被覆手段は、PFA樹脂の伸び率200〜400%(ASTM試験D638にて測定)と比較的伸び率が大きく、かつ引張強さ27〜30MPs(ASTM試験D638にて測定)と外圧を加えると膨らみやすい特徴を活用して、PFAチューブの内外の圧力差をもうけることでチューブ内径を拡大してゴムロールを挿入することが可能となっている。
【0007】
また、帯電ロールでは、特開2003−156922公報に開示されている芯金上にゴム発泡体層を形成したゴムロールの表面に複数樹脂層チューブを被覆する方法として、複数樹脂層チューブ内に片方から気体を吹きこみながら逆方向からゴムロールを挿入することで、複数樹脂層チューブ内を膨らませながら、かつ複数樹脂層チューブと外容器の間を減圧する手段を併用する被覆手段が開示されているが、これも複数樹脂層チューブの内外の圧力差を均一にもうけうることでチューブ内径を拡大してゴムロールを挿入することが可能となっている。
【0008】
近年、機械的強度や耐熱性や寸法安定性を向上させるためにポリイミド樹脂チューブを用いた転写ロールが特開2004−109923公報で開示されているが、被覆手段としてポリイミド樹脂チューブを膨らませる方式と共に、芯金上にゴム発泡体層を形成したゴムロールを冷却してチューブ内径よりも一時的に小さくして挿入する手段が開示されている。これは、ポリイミド樹脂は伸び率6〜8%程度(ASTM試験D638にて測定)と伸び率が小さく、かつ120〜520MPs(ASTM試験D638にて測定)と外圧を加えても膨らみにくく、片方から気体を吹き込みながら逆方向からゴムロールを挿入する方式をとると、ゴムロール上のゴム発泡体の直径が大きい時など挿入可能な状態までポリイミド樹脂チューブを膨らませるには大きな圧力が必要で、圧力をかけすぎると亀裂や裂けが発生しやすく、またポリイミド樹脂チューブの両端を固定する際にポリイミド樹脂チューブ端部に折れが発生することがあり、安定的にゴムロールを挿入するにはゴム発泡体を冷却する工程が必要となり工程が複雑になってしまう問題があった。
【0009】
このような問題は、ポリイミド樹脂チューブにかかわらず、他の樹脂チューブにおいても同様であり、改善が望まれている。
【特許文献1】特開2003−156922公報
【特許文献2】特開2004−109923公報
【特許文献3】特開平8−15758号公報
【特許文献4】特開平10−244590号公報
【特許文献5】特開2003−156922公報
【特許文献6】特開2004−109923公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明は、上述した事情に鑑みなされたもので、本発明の主たる目的は、樹脂チューブ内にゴムローラを挿入する際に、樹脂チューブにかかる負荷を少なくして、樹脂チューブに亀裂、裂け、折れ等が発生しにくい、ゴムローラの挿入を可能とする樹脂チューブ被覆ロールの製造方法及び製造装置を提供することである。また、本発明の他の目的は、樹脂チューブ及びゴムロールとして、半導電性部材を適用した半導電性ロールの製造方法及び製造装置と提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
本発明の樹脂チューブ被覆ロールは、樹脂チューブの内径よりも外径が大きいゴムロールを前記樹脂チューブに挿入して被覆する樹脂チューブ被覆ロールの製造方法であり、
前記ゴムロールの外径よりも小さい開口を有する筒状ゴムロール挿入ガイドへ前記ゴムロールを挿入し、その外径を収縮する第1工程と、
外径が収縮した状態で前記ゴムロールを前記樹脂チューブ内に挿入する第2工程と、
を有することを特徴としている。
【0012】
本発明の樹脂チューブ被覆ロールの製造方法では、筒状ゴムロール挿入ガイドにより、ゴムロール外径を収縮させた状態で、樹脂チューブにゴムロールを挿入して被覆している。このため、樹脂チューブに対して物理的負荷が少なく、樹脂チューブの亀裂、裂け、折れ等が発生せず、ゴムローラの挿入が可能となる。
【0013】
本発明の樹脂チューブ被覆ロールの製造方法において、前記第1工程では、前記ゴムロールの外周面に気体を供給することがよい。これにより、ゴムロールを筒状ゴムロール挿入ガイドへ挿入する際、ゴムロールと筒状ゴムロール挿入ガイドとの間に気体層が介在して挿入摩擦が低減し、スムーズなゴムロールの挿入が可能となる。
【0014】
本発明の樹脂チューブ被覆ロールの製造方法において、前記第1及び第2工程では、気体圧により前記筒状ゴムロール挿入ガイド及び樹脂チューブへ前記ゴムロールをそれぞれ挿入することもできる。これにより、気体圧によりゴムロールをロール挿入方向へ加圧すると共に、ゴムロールを筒状ゴムロール挿入ガイドへ挿入する際、ゴムロールと筒状ゴムロール挿入ガイドとの間に気体層が介在して挿入摩擦が低減し、スムーズなゴムロールの挿入が可能となる。
【0015】
本発明の樹脂チューブ被覆ロールの製造方法において、前記第1及び第2工程では、前記ゴムロールのロール挿入方向側端部を保護キャップにより保護した状態で、前記筒状ゴムロール挿入ガイド及び樹脂チューブへ前記ゴムロールをそれぞれ挿入することがよい。これにより、ゴムロールを筒状ゴムロール挿入ガイドへ挿入した際、ゴムロールのロール挿入方向側端部に欠けや剥がれが生じ難くなる。
【0016】
本発明の樹脂チューブ被覆ロールの製造方法において、前記樹脂チューブは、ポリイミド樹脂チューブであることがよい。特に、引張り強度が強く内径伸縮が困難であり、亀裂、裂け、折れ等が発生しやすいポリイミド樹脂チューブを適用することが有効である。
【0017】
また、本発明の樹脂チューブ被覆ロールの製造装置は、樹脂チューブの内径よりも外径が大きいゴムロールを前記樹脂チューブに挿入して被覆する樹脂チューブ被覆ロールの製造装置であり、
前記ゴムロールの外径よりも小さい開口を有すると共に、前記樹脂チューブ内に嵌め込まれた状態で配設され、前記樹脂チューブへの前記ゴムロールの挿入時に前記ゴムロールを挿入して、その外径を収縮させる筒状ゴムロール挿入ガイドを有することを特徴としている。
【0018】
本発明の樹脂チューブ被覆ロールの製造装置では、筒状ゴムロール挿入ガイドにより、ゴムロール外径を収縮させた状態で、樹脂チューブにゴムロールを挿入して被覆する。このため、樹脂チューブに対して物理的負荷が少なく、樹脂チューブの亀裂、裂け、折れ等が発生せず、ゴムローラの挿入が可能となる。
【0019】
本発明の樹脂チューブ被覆ロールの製造装置において、前記筒状ゴムロール挿入ガイドへの前記ゴムロールの挿入時に、前記ゴムロールの外周面に気体を供給する気体供給機構をさらに有することがよい。これにより、ゴムロールを筒状ゴムロール挿入ガイドへ挿入する際、ゴムロールと筒状ゴムロール挿入ガイドとの間に気体層が介在して挿入摩擦が低減し、スムーズなゴムロールの挿入が可能となる。
【0020】
本発明の樹脂チューブ被覆ロールの製造装置において、前記ゴムロールを内部に載置した状態で、前記樹脂チューブへの挿入口を除いて密閉する密閉容器と、前記密閉容器内の気体圧を正圧にし、その気体圧により前記ゴムロールを前記樹脂チューブへ挿入するための圧力供給機構と、をさらに有することができる。これにより、気体圧によりゴムロールをロール挿入方向へ加圧すると共に、ゴムロールを筒状ゴムロール挿入ガイドへ挿入する際、ゴムロールと筒状ゴムロール挿入ガイドとの間に気体層が介在して挿入摩擦が低減し、スムーズなゴムロールの挿入が可能となる。
【0021】
本発明の樹脂チューブ被覆ロールの製造装置において、前記ゴムロールのロール挿入方向側端部を保護する保護キャップを有することがよい。これにより、ゴムロールを筒状ゴムロール挿入ガイドへ挿入した際、ゴムロールのロール挿入方向側端部に欠けや剥がれが生じ難くなる。
【0022】
本発明の樹脂チューブ被覆ロールの製造装置において、前記樹脂チューブは、ポリイミド樹脂チューブであることがよい。特に、引張り強度が強く内径伸縮が困難であり、亀裂、裂け、折れ等が発生しやすいポリイミド樹脂チューブを適用することが有効である。
【0023】
また、本発明の半導電性ロールの製造方法及び製造装置は、上記本発明の樹脂チューブ被覆ロールの製造方法及び製造装置において、樹脂チューブ及びゴムロールとして半導電性部材を適用したものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、樹脂チューブ内にゴムローラを挿入する際に、樹脂チューブにかかる負荷を少なくして、樹脂チューブに亀裂、裂け、折れ等が発生しにくい、ゴムローラの挿入を可能とする樹脂チューブ被覆ロールの製造方法及び製造装置を提供することができる。また、樹脂チューブ及びゴムロールとして、半導電性部材を適用した半導電性ロールの製造方法及び製造装置と提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、実質的に同一の機能を有する部材には全図面通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0026】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る樹脂チューブ被覆ロールの製造装置を示す概略構成図である。図2は、第1実施形態に係る樹脂チューブ被覆ロールの製造装置の一部を示す拡大概略構成図である。図3は、第1実施形態に係る筒状ゴムロール挿入ガイドを示す断面図である。
【0027】
本実施形態に係る樹脂チューブ被覆ロールの製造装置は、ゴムロール10の外周にポリイミド樹脂チューブ12を被覆させる装置である。当該製造装置は、図1〜2に示すように、ゴムロールガイド容器14と、ゴムロール10を吊るすと共にロール挿入方向へ所定の圧力を加える加圧装置16と、ポリイミド樹脂チューブ12内に挿入したゴムロール10の位置を決めるロール位置決め機構18と、備えている。
【0028】
ゴムロールガイド容器14は、ゴムロール10とポリイミド樹脂チューブ12とを同軸線上に載置し、内部でポリイミド樹脂チューブ12内にゴムロール挿入ガイド20を介してゴムロール10が挿入されるように構成されている。ゴムロールガイド容器14の上部(図中上側)に設けられたロール挿入室14Aには、挿入時のゴムロール10の外周面へ空気を供給するための第1空気供給口26Aが設けられている。また、ロール挿入室14Aのロール挿入口側(図中上方)には、ロール挿入口22Aを持ったゴムロールガイド板22が固定されている。
【0029】
ゴムロールガイド容器14の下部(図中下側)には、エアークリッパー24及びエアークリッパー24内に所定の圧力で空気を供給するための第2空気供給口28Aが設けられており、ポリイミド樹脂チューブ12はその一端内部にゴムロール挿入ガイド20の一部(筒状胴部20A)が嵌め込まれた状態でエアークリッパー24により固定されて載置している。
【0030】
そして、第1空気供給口26A及び第2空気供給口28Aには、それぞれ第1空気供給機構26及び第2空気供給機構28が連結され、それぞれの供給口から空気(圧縮空気)を所定の圧力で供給する。
【0031】
ゴムロール挿入ガイド20は、外径寸法及び内径寸法が一定の筒状胴部20Aと、筒状胴部20Aのロール挿入方向とは反対側端部(図中上端部)に一体的に形成された筒状部20Bとで構成され、ゴムロール10とポリイミド樹脂チューブ12と同一線上に載置されている。筒状部20Bは、筒状胴部20Aのロール挿入方向とは反対側(図中上側)に向かって外径寸法及び内径寸法が漸次大きくなる載頭円錐状(若しくはテーパ状)となっている。
【0032】
筒状胴部20Aは、ゴムロール10挿入時にロール外径が収縮するように、当該ロール外径よりも小さい径の内径を有しており、ポリイミド樹脂チューブ12に内部に嵌め込めるように、チューブ内径よりも小さい外径を有している。また、筒状胴部20Aのチューブ嵌合側端部(ロール挿入方向側端部)には、ポリイミド樹脂チューブ12へ嵌め込みやすいように、切り欠き20Cを設けている。筒状胴部20Aの内径とゴムロール10外径との差は例えば0.01〜0.1mmがよく、本実施形態では0.05mmに設定されている。
【0033】
一方、テーパー状の筒状部20Bは、そのテーパー面20Dによってゴムロール10の調軸機能を持たせている。このテーパー面20Dの角度は、ゴムロール挿入ガイド20(筒状胴部20A)の軸方向に対して30〜60度(鋭角)がよく、本実施形態では45度に設定されている。この調軸機能によりゴムロール10とゴムロール挿入ガイド20(筒状胴部20A)が同軸線上に微調整され、ゴムロール10がゴムロール挿入ガイド20(筒状胴部20A)に挿入させることができる。
【0034】
ゴムロール挿入ガイド20は、その肉厚が例えば0.04〜0.08mmであることがよく、本実施形態では0.06mmも設定されている。また、ゴムロール挿入ガイド20は、例えば、ニッケル、銅などの電鋳で構成することがよく、本実施形態では、ニッケル電鋳で構成されている。ここで、ゴムロール挿入ガイド20の肉厚は、挿入性を良くするにはできるだけ薄い方が有利だが、0.04mm以下の厚さではポリイミド樹脂チューブ12を保持するためのエアークリッパー24による圧力(例えば0.15MPa)で変形しやすく、0.08mm以上ではゴムロール10の収縮量が大きくなり挿入しずらくなる。このため、肉厚は上記範囲がよい。
【0035】
なお、本実施形態では、外径20.2mm、厚さ0.06mm、高さ50mmの筒状胴部20Aと、テーパー面20Dの角度45度の筒状部20Bとで構成した、ニッケル電鋳からなるゴムロール挿入ガイド20を適用した。
【0036】
ゴムロールガイド板22は、ゴムロール10がゴムロールガイド容器14(ロール挿入室14A)に挿入される際、ゴムロール挿入ガイド20(樹脂チューブ12)と同一線上に調軸するためのロール挿入口22Aを有している。また、ロール挿入時にロール挿入室14Aには第1空気供給口26Aからポリイミド樹脂チューブ12の挿入に必要な流量の空気を供給するが、挿入中のゴムロール10がポリイミド樹脂チューブ12内にとまってしまった場合にポリイミド樹脂チューブ12内にかかる圧力が高まって裂けることを防ぐ(リリーフ弁のような)ためにポリイミド樹脂チューブ12の挿入に必要な流量以上の空気を外部に逃がすため、ゴムロールガイド板22のロール挿入口22Aの内径は、ゴムロール10の外径よりも0.1〜0.5mm大きく設定することがよく、本実施形態ではゴムロール10の外径より0.2mm大きく設定されている。これにより、樹脂チューブ12に流入する空気量の適正化ができ、樹脂チューブ12の負荷を低減する。
【0037】
なお、本実施形態では、内径20.80mm(ゴムロール10の外径20.60mmより0.2mm大きくした)のロール挿入口22Aを有するゴムロールガイド板22を適用した。
【0038】
エアークリッパー24は、端部の折り返しの困難なポリイミド樹脂チューブ12を固定するのに有効で、その内径がポリイミド樹脂チューブ12の外径より例えば4mm程度大きく、例えば0.1〜0.3MPaの内部圧力をかけると、ポリイミド樹脂チューブ12をゴムロール挿入ガイド20の外面の保持できるように設定されている。本実施形態では、内径24mmのものを適用している。
【0039】
第1空気供給機構26、後述する空気量を第1空気供給口26Aから供給することができるように、また、第2空気供給機構28は後述するエアークリッパー24の内部圧力を保持できるように周知のコンプレッサ、畜圧タンク等を備えて構成されている。
【0040】
第1空気供給機構26による第1空気供給口26Aからの空気量、即ち、挿入時のゴムロール10外周面へ供給する空気量は、0.8〜2.0リットル/秒(元圧0.2〜0.6MPa)が好ましく、より好ましくは、0.8〜1.6リットル/秒(元圧0.2〜0.4MPa)であり、本実施形態では、1.6リットル/秒(元圧0.4MPa)の空気量を供給する用に設定されている。
【0041】
ここで、2.0リットル/秒以上に空気量が多くなると、ゴムロールガイド板22のロール挿入口22Aから溢れ出る空気量が多くなり、ゴムロール10が振動する恐れがあるので、処理するロールの種類によって適切な空気量の選択が必要となる。また、0.8リットル/秒以下に空気量が少なくなると、ゴムロール10の外面とゴムロール挿入ガイド20の内面の間に空気が供給されにくくなり摩擦抵抗が高くなって、高い加圧力でのゴムロール10を加圧しなければ、ポリイミド樹脂チューブ12内に挿入されなくなり、動作不能な状態となる場合がある。
【0042】
一方、第2空気供給機構28による第2空気供給口28Aからの空気量、即ち、エアークリッパー24へ供給する空気量は、エアークリッパー24の内部圧力が0.1〜0.3MPaで保持できる量であることがよく、本実施形態では0.15MPa保持できるように設定されている。
【0043】
加圧装置16は、ゴムロール10の軸方向に所定の圧力が加えられるものであれば、当に制限はなく、エアーシリンダー、ステッピングモーター等の動力装置を使用しても良い。無論、加圧装置16に代え、人手で行ってもよい。
【0044】
ゴムロール10のロール挿入方向端部には、図4〜5に示すような保護キャップ30を取り付けている。ここで、図4は、第1実施形態に係る保護キャップを示す概略構成図である。図5は、第1実施形態に係る保護キャップのゴムロールに取り付けた状態を示す概略構成図である。
【0045】
保護キャップ30は、図4に示すように、芯体32と芯体32に軸方向にスライド可能なように連結されたスライド筒34とで構成されている。芯体32のロール取り付け側先端にロールカバー36が蓋38により固定されて配設されている。ロールカバー36は、塩化ビニル、布等の柔軟性を持つ材料を筒状にして、複数のV字の切り欠き36Aを設けている。また、芯体32には、ロール取り付け側先端には、ゴムロール10の芯材10Aの先端が挿入される開口32Aが設けられ、開口内壁の周方向に沿ってゴムリング40が設けられている。
【0046】
スライド筒34は、ポリイミド樹脂チューブ12の内径よりも0.2〜0.6mm程度小さい外径を有している。また、スライド筒34には、ロール挿入側一端(ロール取り付け側とは反対側の端部)の内壁に中心軸側に突出する係合部34Aが設けられており、この係合部34Aと芯体32外面に設けられた段差部32Bと係合させるように、スライド筒34を芯体32に取り付け、スライド筒34の脱落を防止するため座金42が付いたねじ44を芯体32のロール挿入側一端(ロール取り付け側とは反対側の端部)の端面に固定している。
【0047】
ここで、芯体32及びスライド筒34は、例えば、例えば、アルミニウム、鉄、銅合金、SUS等の金属合金、又は、これら金属合金の表面にクロム、ニッケル等でメッキ処理したもので構成することができる。
【0048】
そして、保護キャップ30は、図5に示すように、ゴムロール10のロール挿入方向側端部に取り付けている。まず、芯体32のロール取り付け側先端に設けた開口32Aに、ゴムロール10の芯材10Aの先端を挿入し、ゴムリング40により保持している。そして、スライド筒34をゴムロール10側にスライドさせると、ゴムロール10の弾性層10B端部を覆うようにスライド筒34がロールカバー36を介して嵌合される。このようにして、保護キャップ30をゴムロール10のロール挿入方向側端部に取り付けている。
【0049】
ゴムロール10は、芯材の外周面に弾性層が形成されたものである。芯金の材質として、アルミニウム、鉄、銅合金、SUS等の金属合金又はその表面をクロム、ニッケル等でメッキ処理した金属等の公知のものが挙げられ、芯金の外径は通常6〜20mmの範囲のものが用いられる。
【0050】
また、弾性層はゴム層やゴム発泡体層であることがよく、ゴム層やゴム発泡体層の材料としては、ウレタンゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴム(ECO)等のゴム材料、また、電気抵抗を得るために必要に応じて電子伝導性導電剤又はイオン伝導性導電剤が添加されたものが用いられる。この電子伝導性導電剤又はイオン伝導性導電剤が添加されたものが、半導電性弾性層を持つ半導電性ゴムロールとなる。
【0051】
ここで、電子伝導性導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、ニッケル、銅合金などの金属又は合金、酸化錫、酸化亜鉛、チタン酸カリム、酸化錫−酸化インジウム又は酸化錫−酸化アンチモン複合酸化物のような金属酸化物等が挙げられる。
【0052】
一方、イオン伝導性導電剤としては、スルホン酸塩やアンモニア塩等など、また、カチオン系、アニオン系、ノニオン系などの各種の界面活性剤が挙げられる。
【0053】
弾性層は、例えば、アスカC硬度で10〜40°付近のゴム硬度、厚さ3〜10mmとすることがよい。
【0054】
ゴムロール10は、ポリイミド樹脂チューブ12の内径より1〜5%大きいもので、好ましくは2〜3%程度大きいものが用いられることがよい。ポリイミド樹脂チューブ12の内径寸法がよりも1%以下の範囲で大きいものを使用すると、ポリイミド樹脂チューブ12とゴムロール10との間の密着が不良となり、ポリイミド樹脂チューブ12とゴムロール10との間の接着に不具合が発生することがある。一方、これが5%以上大きいものを使用すると、ポリイミド樹脂チューブ12との摩擦抵抗が大きくなって挿入しにくくなることがある。
【0055】
ポリイミド樹脂チューブ12の材料としては、例えば、ポリピロメリット酸イミド系のポリイミド樹脂材料、ポリビフェニルテトラカルボン酸イミド系樹脂材料などの熱硬化性樹脂、ポリベンゾフェノンテトラカルボン酸イミド系樹脂材料、ポリエーテルイミド樹脂などの熱可塑性ポリイミド樹脂なの材料、又は、電気抵抗を得るために必要に応じてカーボンブラック、グラファイト等の導電剤が分散されたものが用いられる。この導電剤が分散されたものが、半導電性樹脂チューブとなる。
【0056】
ここで、樹脂チューブ12としては、ポリイミド製のものを適用した形態を説明したが、樹脂チューブ12は、例えば、その他、弗素系樹脂(例えばPFA)、超高分子量ポリプロピレンのような耐磨耗性樹脂によっても形成することができる。
【0057】
ポリイミド樹脂チューブ12の厚みは、0.02〜0.08mmのもので、外径は製品外径と実質的にほぼ等しい径のものが用いられる。
【0058】
以上のように構成される本実施形態に係る樹脂チューブ被覆ロールの被覆装置による製造方法(即ち、ゴムロール10の外周にポリイミド樹脂チューブ12を被覆する方法)の一例を、以下に詳細に説明する。
【0059】
まず、ゴムロール挿入ガイド20の下端部(筒状胴部20Aの下端部:端部から30mm)に当該ガイドを覆うように、ポリイミド樹脂チューブ12の一端部を嵌め込み、エアークリッパー24へ第2空気供給機構28により第2空気供給口28A沿いから圧縮空気を入れ0.15MPaの内部圧力で保持してポリイミド樹脂チューブ12を支持させる。
【0060】
一方、ゴムロールガイド容器14の上部に固定されたゴムロールガイド板22の中央部のロール挿入口22Aにゴムロール10の端部を入れつつ、ゴムロール10を加圧装置16に連結して、ゴムロール10をゴムロールガイド容器14に載置する。
【0061】
この後、第1空気供給機構26により第1空気供給口26Aから1.6リットル/秒の空気をゴムロールガイド容器14のロール挿入室14A内に供給する。これにより、ゴムロール10の外周面に空気が供給される。この状態で、加圧装置16によりゴムロール10をロール挿入方向に加圧し、例えば、50〜100mm/秒の挿入速度でゴムロール挿入ガイド20への挿入を開始すると、ゴムロール10はゴムロール挿入ガイド20の筒状部20Bのテーパー面20Dで調軸され、その筒状胴部20Aに内に挿入する。この際、ゴムロール10とゴムロール挿入ガイド20(筒状胴部20A)との間には、ロール外周面に供給された空気の層が介在することとなり、これにより挿入摩擦が低減され、スムーズに挿入が行われる。
【0062】
そして、ゴムロール10はゴムロール挿入ガイド20の筒状胴部20Aに内に挿入すると、その外径が収縮される。この状態で、ゴムロール10の挿入を続けると、ゴムロール挿入ガイド20を経て、ポリイミド樹脂チューブ内部へゴムロール10が挿入され、ロール位置決め機構18までロール端部が到達したところで、挿入を止める。このようにして、ゴムロール10にポリイミド樹脂チューブ12を被覆し、樹脂チューブ被覆ロールが得られる。
【0063】
以上説明した本実施形態では、ゴムロール挿入ガイド20により、ゴムロール10外径を収縮させた状態で、ポリイミド樹脂チューブ12にゴムロール10を挿入して被覆している。このため、ポリイミド樹脂チューブ12に対して物理的負荷が少なく、ポリイミド樹脂チューブ12の亀裂、裂け、折れ等が発生せず、ゴムローラの挿入が可能となる。
【0064】
また、ゴムロール挿入ガイド20へのゴムロール10の挿入の際、第1空気供給機構26によりゴムロール10の外周面に空気を供給しているので、ゴムロール10をゴムロール挿入ガイド20へ挿入する際、ゴムロール10とゴムロール挿入ガイド20との間に空気が介在して挿入摩擦が低減し、スムーズなゴムロールの挿入が可能となる。
【0065】
なお、供給する気体は空気が一番安価であるが、例えば、希ガスに代表される不活性ガスなど他の気体を供給することも可能である。
【0066】
また、この空気供給を大気開放下で行っているので、ポリイミド樹脂チューブへ空気供給によるポリイミド樹脂チューブ12への負荷がかかりにくくして、当該チューブの亀裂、裂け、折れ等を防止している。
【0067】
また、ゴムロール10のロール挿入方向側端部を保護キャップ30により保護した状態で、ゴムロール挿入ガイド20及び樹脂チューブ12へゴムロール10をそれぞれ挿入しているので。ゴムロール10をゴムロール挿入ガイド20へ挿入した際、ゴムロール10のロール挿入方向側端部(弾性層端部)に欠けや剥がれが生じ難くなる。また、安定した挿入も行える。
【0068】
また、樹脂チューブ12として、特に、引張り強度が強く内径伸縮が困難であり、亀裂、裂け、折れ等が発生しやすいポリイミド樹脂チューブを適用しても、当該現象が生じ難くなり、非常に有効である。
【0069】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る樹脂チューブ被覆ロールの製造装置を示す概略構成図である。
【0070】
本実施形態に係る樹脂チューブ被覆ロールの製造装置は、第1実施形態における加圧装置16に代え、挿入チャンバ蓋49により上部密閉されている挿入チャンバ46(密閉容器)及び圧力供給機構48を設けた形態である。但し、第1実施形態における第1空気供給機構26及び第1空気供給口26Aは設けられていない。これ以外の構成は第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0071】
挿入チャンバ46は、内部にゴムロール10を載置した状態で、ゴムロールガイド容器14のロール挿入室14Aを密閉している。但し、挿入チャンバ46は、樹脂チューブへの挿入口、即ちゴムロール挿入ガイド20(樹脂チューブ12)は開口させたままとし、これらを介して外部と連通させている。
【0072】
挿入チャンバ46は、圧力供給経路48Aを介して圧力供給機構48と連結されている。この圧力供給機構48により圧力供給経路48Aを介して、圧縮空気を供給することで挿入チャンバ46内が正圧となる。挿入チャンバ46内を所望の正圧とするためには、圧力供給機構48の圧力供給経路48A(経路)の断面積は、ゴムロールの断面積(ロール挿入方向に対して直交方向(ロール軸直交方向)の断面積)の1/15以上を有することがよい。また、挿入チャンバ46の容量は、ゴムロール10の体積の1.1倍以上有することもよい。
【0073】
圧力供給機構48は、例えば、空気供給装置48Bと、レギュレータ48Cと、リザーブタンク48Dと、バルブ48Eと、で構成されている。空気供給装置48Bは、周知のコンプレッサ、畜圧タンク等から構成されている。レギュレータ48Cは供給する圧縮空気の空気圧を制御するものである。リザーブタンク48Dの内部圧力で圧縮空気を溜め込んでいるものである。
【0074】
本実施形態では、ゴムロール10を載置し、圧力供給機構48により圧力供給経路48Aを介して圧縮空気を挿入チャンバ46内に供給し、圧力をかけるとゴムロール10のロール挿入方向端部(図中下方端部)と他端(図中上方端部)との間に圧力差が生じ、この圧力差によりゴムロール10に対しロール挿入方向への力が発生する。その力が、ゴムロール挿入ガイド20(樹脂チューブ12)とゴムロール10との間の挿入摩擦力を超えたときゴムロール10は、ゴムロール挿入ガイド20(樹脂チューブ12)に挿入していく。
【0075】
この際、供給された圧縮空気は、ゴムロール10に外周面に供給され、ゴムロール10をゴムロール挿入ガイド20へ挿入する際、ゴムロール10とゴムロール挿入ガイド20との間に空気が介在して挿入摩擦が低減し、スムーズなゴムロール10の挿入が可能となる。このため、圧力供給機構48による挿入チャンバ46の空気圧が低くても、ゴムロール10の挿入が行える。
【0076】
ここで、ゴムロール10の挿入の際、ゴムロール10の移動に伴い、挿入チャンバ46内の空気容量が変化し、それに伴い挿入チャンバ46内の圧力(空気圧)も変化する。また、ゴムロール挿入ガイド20(ポリイミド樹脂チューブ12)とゴムロール10の間を空気が流れ、樹脂チューブ12下端(ロール挿入方向端部)より空気がぬけることによっても、挿入チャンバ46内の圧力は変化する。圧力供給機構48の供給機能の能力不足、挿入速度を供給する空気量(エアー流量)で制御する等、供給する空気量の少ない条件で挿入を行うと、ゴムロール10運動による挿入チャンバ46容量変化、樹脂チューブ12下端からの空気漏れにより、挿入チャンバ46内、ゴムロール挿入ガイド20(ポリイミド樹脂チューブ12)とゴムロール10間の供給される空気量の低下(ゴムロール挿入ガイド20(ポリイミド樹脂チューブ12)とゴムロール10間の圧力が低下)が生じる。これにより、挿入摩擦が増大し挿入不良、ゴムロール10破損等が発生することがある。
【0077】
このため、挿入動作中も挿入チャンバ46内の圧力(空気圧)を維持する必要があり、この挿入チャンバ46の圧力維持には、挿入チャンバ46に対し、ゴムロール10移動に伴う挿入チャンバ46容量増加量分+樹脂チューブ12下端からの空気流出量分の空気量を満たすように、圧縮空気を供給する必要がある。但し、挿入動作中も挿入チャンバ46内の圧力(空気圧)を維持するために、圧縮空気の供給量が少ないまま供給する圧縮空気の元圧を高くしていくと、ゴムロール10破裂等の障害が発生しやすくなる。
【0078】
そこで、本実施形態では、圧力供給機構48により、挿入チャンバ46内の内部圧力が0.15〜0.4MPaで維持できるように、供給する空気の元圧は0.2〜0.4MPaが好ましく、より好ましくは、挿入チャンバ46内の内部圧力が0.2〜0.3MPaで維持できるように、供給する空気の元圧は0.2〜0.4MPaであり、本実施形態では、挿入チャンバ46内の内部圧力が、0.25MPaで維持できるように、元圧0.25MPaの空気を供給するように設定されている。
【0079】
また、上記条件にてゴムロール10の挿入が行われると、ゴムロール10は高速で挿入を開始し、それに伴い挿入チャンバ46内の容積が急激に増大し、圧縮空気の供給量が少ないと、挿入チャンバ46内の圧力が減少してしまう。
【0080】
そこで、本実施形態では、圧力供給機構48に圧力リザーブタンク48Dを設けて、瞬間的な圧縮空気の供給量を確保し、挿入チャンバ46内の内部圧力の急激な低下を防止している。また、挿入チャンバの容量をあらかじめ大きく設定し、ゴムロール10挿入前後の容量の変化量を小さくすることでも、挿入チャンバ46内の内部圧力の急激な低下を防止することができる。
【0081】
なお、ゴムロール10の挿入速度を低下させることにより、圧力供給機構48の供給能力を大きくすることなく、挿入動作中の挿入チャンバ46内の圧力を維持することも可能となる。このようにゴムロール10の挿入速度を低下させるためには、ゴムロール10速度速度制御機構(例えば、図1に示すように、ゴムロールの上端を保持し、人手、ステッピングモータ等により、スポンジロールの速度を一定速度以下に維持する機構(例えば、図1に示す加圧装置16等)。なお、ゴムロールを保持する場所は、下端でもよい。)を設けたり、樹脂チューブ12下端部を覆い樹脂チューブ12内の圧力を上げることによってゴムロール10両端の圧力差を小さくすることが有効となる。但し、ポリイミド樹脂チューブ12が破裂しない程度に内部圧力を上げるようにする。
【0082】
上記いずれの実施形態でも、ゴムロール10及び樹脂チューブ12として、半導電性のものを用いることで、半導電性ロールの製造方法及び製造装置に適用することができる。
【0083】
(試験例)
−試験例1−
上記第1実施形態に係る樹脂チューブ被覆ロールの製造装置を用い、表1に従って、第1空気供給機構26から0.8〜2.0リットル/秒の空気をゴムロール10外周面へ供給しつつ、ゴムロール10に対し加圧装置16により50〜100mm/秒の挿入速度に入るように圧力を加え、樹脂チューブ12をゴムロール10に被覆させて、以下、評価した。なお、用いたゴムロール10及びポリイミド樹脂チューブ12は以下の通りである。結果を表1に示す。
【0084】
−評価−
樹脂チューブ12をゴムロール10に被覆できるか否か、また、その際の樹脂チューブ12の状態を観察して評価した。
【0085】
−半導電性ゴムロール10−
芯材へ導電性弾性層を以下により形成して半導電性ゴムロール10を作製した。エピクロルヒドリンゴム(ECO:エピクロマーCG−102:ダイソ−社製)70質量部とアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR:ニポールDN−219:日本ゼオン社製)30質量部とを混合し、これに発泡加硫剤として、硫黄(鶴見化学工業社製 200メッシュ)1質量部と、加硫促進剤(大内新興化学工業社製 ノクセラ−M)1.5質量部と、発泡剤としてベンゼンスルホニルヒドラジド6質量部とを添加してオープンロールで混練りした混合物をφ10mmのSUS製のロール軸に巻き付け、160℃で20分間プレス加硫発泡させて、長さ232mmで厚さ約6mmの導電性弾性層を形成した。(成形物の体積抵抗値は、1×108Ω)その後、ゴムロール研削を行って、外径が20.30mm、20.45mm、20.60mmの半導電性ゴムロール10を各30本づつ作製した。ロール硬度は、アスカC硬度で35°であった。
【0086】
−ポリイミド樹脂チューブ12−
ポリイミド樹脂チューブ12は、宇部興産(株)製のポリイミドUワニスAに酸性カーボンブラック(デグサジャパン(株)製/Special Black 4:pH3.5)を分散させて体積抵抗値が1×106〜1×107Ωになるように濃度調整をした塗液を円筒形金型の外周に塗布し、乾燥、硬化して作製した樹脂チューブである。膜厚40μm、内径20.25mm、外径20.33mmで長さ267mmのポリイミド樹脂チューブ12を作製した。
【0087】
【表1】

【0088】
試験例1を行ったところ、0.8〜2.0リットル/秒の空気を供給することで全て亀裂、裂け、折れ等がなく挿入でき、被覆ロール外径は、全て20.33mmであった。ちなみに、本試験例で用いた膜厚40μmのポリイミド樹脂チューブは、両端を密閉して圧縮空気を注入すると、0.3MPa以上で裂けが発生した。
【0089】
なお、0.8リットル/秒未満の空気を供給すると、上記加圧装置16による加圧力ではゴムロール10の挿入は行えず、さらに大きな加圧力が必要であることがわかった。一方、2.0リットル/秒を超えた空気を供給すると、ゴムロール10が振動してしまい挿入が困難であることがわかった。これにより、上記範囲で空気を挿入時にゴムロール外周面へ供給することがよいことがわかった。
【0090】
−試験例2−
試験例1と同様な外径20.60mmのゴムロール10を100本作製し、1.6リットル/秒の空気を挿入時にゴムロール10の外周面へ供給した以外は、試験例1と同様にして樹脂チューブ12をゴムロール10へ被覆したところ、ゴムロール10のロール挿入方向側端部に欠けや剥がれは観察されなかった。
【0091】
一方、保護キャップ30を外して、同様にして樹脂チューブ12をゴムロール10へ被覆したところ、100本中2本のゴムロール10のロール挿入方向側端部に欠けや剥がれが発生していた。
【0092】
これにより、保護キャップ30を取り付けることにより、ゴムロール10のロール挿入方向側端部に欠けや剥がれが生じるのを防止することがわかる。
【0093】
これら試験例から、簡単な工程でありながら確実にポリイミド樹脂チューブの亀裂、裂け、折れ等を防止して、安価に樹脂チューブ被覆ロールを製造することができ、極めて有用であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】第1実施形態に係る樹脂チューブ被覆ロールの製造装置を示す概略構成図である。
【図2】第1実施形態に係る樹脂チューブ被覆ロールの製造装置の一部を示す拡大概略構成図である。
【図3】第1実施形態に係る筒状ゴムロール挿入ガイドを示す断面図である。
【図4】第1実施形態に係る保護キャップを示す概略構成図である。
【図5】第1実施形態に係る保護キャップのゴムロールに取り付けた状態を示す概略構成図である。
【図6】第2実施形態に係る樹脂チューブ被覆ロールの製造装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0095】
10 ゴムロール
12 ポリイミド樹脂チューブ
14 ゴムロールガイド容器
16 加圧装置
18 ロール位置決め機構
20 ゴムロール挿入ガイド
22 ゴムロールガイド板
24 エアークリッパー
26 空気供給機構
26A 空気供給口
28 空気供給機構
28A 空気供給口
30 保護キャップ
46 挿入チャンバ
48 圧力供給機構
49 挿入チャンバ蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂チューブの内径よりも外径が大きいゴムロールを前記樹脂チューブに挿入して被覆する樹脂チューブ被覆ロールの製造方法であって、
前記ゴムロールの外径よりも小さい開口を有する筒状ゴムロール挿入ガイドへ前記ゴムロールを挿入し、その外径を収縮する第1工程と、
外径が収縮した状態で前記ゴムロールを前記樹脂チューブ内に挿入する第2工程と、
を有することを特徴とする樹脂チューブ被覆ロールの製造方法。
【請求項2】
樹脂チューブの内径よりも外径が大きいゴムロールを前記樹脂チューブに挿入して被覆する樹脂チューブ被覆ロールの製造装置であって、
前記ゴムロールの外径よりも小さい開口を有すると共に、前記樹脂チューブ内に嵌め込まれた状態で配設され、前記樹脂チューブへの前記ゴムロールの挿入時に前記ゴムロールを挿入して、その外径を収縮させる筒状ゴムロール挿入ガイドを有することを特徴とする樹脂チューブ被覆ロールの製造装置。
【請求項3】
半導電性樹脂チューブの内径よりも外径が大きい半導電性ゴムロールを前記半導電性樹脂チューブに挿入して被覆する半導電性ロールの製造方法であって、
前記半導電性ゴムロールの外径よりも小さい開口を有する筒状ゴムロール挿入ガイドへ前記ゴムロールを挿入し、その外径を収縮する第1工程と、
外径が収縮した状態で前記半導電性ゴムロールを前記半導電性樹脂チューブ内に挿入する第2工程と、
を有することを特徴とする半導電性ロールの製造方法。
【請求項4】
半導電性樹脂チューブの内径よりも外径が大きい半導電性ゴムロールを前記半導電性樹脂チューブに挿入して被覆する半導電性ロールの製造装置であって、
前記半導電性ゴムロールの外径よりも小さい開口を有すると共に、前記半導電性樹脂チューブ内に挿入した状態で配設され、前記半導電性樹脂チューブへの前記ゴムロールの挿入時に前記半導電性ゴムロールを挿入して、その外径を収縮させる筒状ゴムロール挿入ガイドを有することを特徴とする半導電性ロールの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−267509(P2006−267509A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84973(P2005−84973)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】