説明

チョコレート風味の乳飲料

【課題】濃厚なチョコレート風味を有し、しかも分散物の沈降がなく滑らかな口当たりでのどごしのよいチョコレート風味を有する乳飲料を提供する
【解決手段】0.5%以上のカカオ分(好ましくはココアパウダーであり、その含有量が0.5〜15質量%)と乳及び/又は乳加工品(含有量が2〜50質量%)を含んでなるチョコレート風味の乳飲料であって、コーンスターチ(含有量が0.1〜3.0質量%)とセルロースを併用し、粘度が100〜800mPa・s(測定条件: B型粘度計、No.3ローター、30rpm、30秒間)であることを特徴とする、チョコレート風味の乳飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散物の沈降がなく、滑らかな口当たりとのどごしの良い、チョコレート風味を有する乳飲料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乳飲料については、従来から知られており、例えば、リング現象、油滴の分離、沈殿物の発生等の問題のない乳飲料の製造法として、乳飲料に対しガラクトマンナンとカラギーナンの組合せからなる糊料並びに食品用乳化剤を添加する方法がある(特許文献1)。また、カカオマス又はカカオニブに水を加えて抽出した抽出液を用いるチョコレート飲料の製造方法がある(特許文献2)。また、別の方法では、水溶性ヘミセルロースを使用することにより、チョコレート飲料中において乳化剤としての機能と分散定剤としての機能を併せ持ち、風味の低下や粘度の上昇を伴うことなく、分散安定性に優れたチョコレート飲料を製造する方法が記載されている(特許文献3)。しかし、ここで対象となっているチョコレート飲料は、あっさりとした口当たりが特徴であり、この方法では本発明の濃厚なチョコレート風味を有し、しかも滑らかな口当たりでのどごしのよい乳飲料を得ることは難しい。
【特許文献1】特開平6−178673号公報
【特許文献2】特開平7−79749号公報
【特許文献3】特開平10−229821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、濃厚なチョコレート風味を有し、しかも分散物の沈降がなく滑らかな口当たりでのどごしのよいチョコレート風味を有する乳飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、0.5%以上のカカオ分と乳及び/又は乳加工品を含み、加熱処理されてなる、チョコレート風味の乳飲料であって、コーンスターチとセルロースを併用し、粘度が100〜800mPa・s(測定条件:
B型粘度計、No.3ローター、30rpm、30秒間)であることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の乳飲料は、細かな分散物が沈降することなく均一に分散しており、粘度も比較的低く設定してあることから、飲みやすい。また、当該乳飲料はチョコレート風味が濃厚であって、専門店のチョコレートドリンクのような風味と呈味とのどごしを味わうことができる。また、かかる飲料は、電子レンジにより温めて飲んだりあるいはそのまま飲んでもよく、更には果物等を温められた当該飲料の中に入れてチョコレートフォンデュのようにして喫食することもでき、幅広く本発明の乳飲料を楽しむことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のチョコレート風味の乳飲料は、前述のとおり、0.5質量%以上、好ましくは0.5〜1.5質量%のカカオ分と乳及び/又は乳加工品を含み、加熱処理されてなるチョコレート風味の乳飲料であって、セルロースとコーンスターチを併用し、粘度が100〜800mPa・s、好ましくは200〜400mPa・sである。そして、上記粘度の測定方法は、上記乳飲料を60℃の湯煎で品温約60℃まで加熱し、株式会社トキメック製のTV―20型B型粘度計を使用してNo.3ローターを上記乳飲料の中に入れ30rpmで回転させ30秒後に測定したものである。
【0007】
上記カカオ分とは、ココアパウダー、カカオニブ、カカオマス、ココアバターおよびココアケーキを指し、チョコレート風味、殊にチョコレート独特の香りと苦味とコクを付与するという作用がある。本発明では、カカオ分の中でもココアパウダーが好ましく、その含有量としては0.5〜15質量%を例示することができ、含有量が多くなってくると濃厚な風味になるが、苦味が立ったバランスの悪い風味になる。一方、含有量が少なくなってくるとコクが弱くなってチョコレートらしさが減少する。また、口当たりも水っぽくなってくる。また、ココアバターを使用する場合は、乳飲料の油含量が17質量%を越えないようにすることが好ましく、例えば1〜15質量%の範囲内になるように調整することが望ましい。
【0008】
上記乳及び/又は乳加工品とは、脱脂粉乳やホエータンパク等の粉末状のものや牛乳、クリーム、濃縮乳等の液状(ペースト状を含む)のものがあり、まろやかな風味や全体の風味のまとまりを強くするという作用がある。その含有量としては5〜50質量%を例示することができる。この含有量が多くなってくると風味が強くなったり、キレがなくなる、最終製品全体の味がぼけるといったことが起き易くなる。一方、その含有量が少なくなってくると最終製品全体の味に厚みがなくなり、単調な風味やまとまり感の低下が起き易くなる。
【0009】
上記コーンスターチには、乳飲料にサラッとした滑らかな粘性を付与する作用を負っている。この粘性は乳飲料中に分散している細かな物質の沈降を抑制すると共に、喫食時の滑らかなのどごしに大きな影響を与えている。こうした作用を有するコーンスターチは最終製品の段階では、澱粉粒が崩壊されてコーンスターチ由来のアミロースやアミロペクチンが最終製品中に現れている状態になっており、そのことは光学顕微鏡で容易に確認することができる。これは、最終製品を喫食する時にコーンスターチの澱粉粒によるザラツキ感が全くないことに繋がる。
コーンスターチの含有量としては0.1〜3.0質量%を例示することができ、含有量が多くなってくると粘度が上がり粘性も重い感じになり、口当たりも重いものになる。一方、含有量が少なくなってくると粘度が下がりサラッとした滑らかな粘性を付与することが難しくなり、食感も水っぽくなる。
【0010】
上記セルロースは、粘性を付与するという作用があり、カカオ分のように乳飲料中に分散している細かな物質が時間の経過と共に沈降するのを有効に防止する。しかし、セルロースによる粘性は少しボテボテ感があるために、前述するコーンスターチとの併用により、このボテボテ感を解消して上記セルロース本来の作用を確実に発揮することができる。こうしたセルロースの例としては微小繊維状セルロースがある。こうしたセルロースの含有量としては、0.1〜3質量%を例示することができる。
【0011】
その他の原料として水がある。水は、本発明のチョコレート風味の乳飲料のボディを形成するために大切な役割を果たすものであり、水の量が少なくなると濃厚な風味と口当たりを有する飲料になり、反対に水の量が多くなると流動性に優れた、サラッとした物性の飲料になる。本発明の飲料の粘度としては、前述のとおり100mPa・s〜800mPa・sであり、更には、200mPa・s〜400mPa・sが好ましく、この粘度を達成するために必要な水の量としては、60〜90質量%を例示することができる。
【0012】
また、粘度はついては、例えば、増粘剤などを更に使用してもよい。当該増粘剤としては、キサンタンガムやカラギーナン等を例示することができる。
【0013】
また、乳化剤は、油の分離を抑制すると共に、喫食時の加熱手段として電子レンジを使用する場合の加熱時に発生する泡立ちを抑制するためのものである。こうした乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等があり、その含有量としては0.01〜0.5質量%を例示することができる。また、泡立ちを軽減するためにはシリコーンを添加することができる。
【0014】
前述のごとく、本発明の乳飲料の粘度が100mPa・s〜800mPa・s、好ましくは200mPa・s〜400mPa・sであることにより、非常に滑らかで飲みやすく、飲んだ時にチョコレート風味を十分に味わうことができる。
【0015】
乳飲料を加熱処理するに当たっては、加熱撹拌による加熱処理が好ましい。また、その後に均質化処理、すなわちホモゲナイズ処理して乳飲料を滑らかにするようにしてもよい。このようにして本発明の最終製品を得る。
【0016】
また、本発明における乳飲料は、加熱殺菌されているのが好ましい。この場合、チョコレート風の乳飲料の殺菌方法としては、高温短時間殺菌後の無菌充填、ホットパック充填、レトルト殺菌等がある。製品の形態(常温保存、チルド保存、長期保存、短期保存等)に合わせた殺菌方法を適宜、採用すればよいが、加熱撹拌による加熱殺菌処理が好ましい。また、殺菌前にホモゲナイザーで均一化したり、殺菌後にホモゲナイズ処理を行ってもよく、また殺菌前後合わせて2回実施しても良い。
【0017】
上記最終製品である、チョコレート風味の乳飲料は、例えば、電子レンジ対応の性質を有する合成樹脂製容器であったり、瓶製容器や紙製容器に充填密封して容器入り乳飲料としてもよい。
【0018】
容器入り乳飲料の喫食方法は、容器の一部を開封した後、電子レンジで加熱してホットな乳飲料として喫食してもよく、加熱せずにそのまま喫食してもよいが、前者のホットな乳飲料として喫食する方が濃厚なチョコレート風味を味わいつつ、乳飲料ののどごしを楽しむことができるという点で好ましい。
【実施例】
【0019】
ここでは、チョコレート風味の乳飲料の作成に当たり、コーンスターチの量の相違と得られた乳飲料の粘度の相違による前記乳飲料への影響について調べた。
【0020】
(実施例1)
まず、脱脂粉乳5質量部を水10質量部で撹拌混合して15質量部の粉乳溶解液とし、次にコーンスターチ1質量部とセルロース1質量部を水10質量部に分散して12質量部の分散液を得、次に、ココアパウダー7質量部と上白糖10質量部とホエータンパク3質量部を混合して20質量部の粉末混合物とした。その後、上記粉乳溶解液15質量部と分散液12質量部と粉末混合物20質量部と乳化剤0.1質量部と濃縮乳1質量部を残りの水51.9質量部と共に加熱釜に添加し、90℃に加熱しながら撹拌混合する。
よって得られた乳飲料を高温短時間殺菌後にホモゲナイズ処理し、その後カップ状容器に無菌下で充填密封し、得られた容器入り乳飲料を冷蔵で1週間保存した後に上記容器入り乳飲料の容器の蓋を一部開封して電子レンジで加熱してホットな容器入り乳飲料を得た。
当該ホットな乳飲料は、適度な粘性と濃厚な風味を有しており、風味と食感の両面から濃厚さを感じることができるバランスのよい乳飲料であった。こうした上記乳飲料の粘度は約400mPa・sであった。また、水分含量は約73質量%であり、油脂含有量は約3.3質量%であった。なお、上記粘度測定方法は、上記乳飲料を60℃の湯煎で品温約60℃にまで加熱し、株式会社トキメック製のTV―20型B型粘度計を使用してNo.3ローターを上記乳飲料の中に入れ30rpmで回転させ30秒後に測定した。以下も同様である。また、殺菌前の乳飲料の状態と殺菌後にホモゲナイズ処理した後の乳飲料の状態を光学顕微鏡で観察した。結果を図1と図2に示す。
【0021】
(実施例2)
コーンスターチの量を0.1質量部とし、残りの水を51.9質量部から52.8質量部とすること以外はすべて実施例1と同様の配合とし、処理方法は実施例1と同様とした。
よって得られた乳飲料をカップ状容器に無菌下で充填密封し、冷蔵で1週間保存後に当該容器の蓋を一部開封して電子レンジで加熱してホットな乳飲料を得た。
当該ホットな乳飲料は、すこし低粘性ではあるが、濃厚な風味を有しており、風味と食感の両面から濃厚さを感じることができるバランスのよい乳飲料であった。尚、上記乳飲料の粘度は約120mPa・sであった。
【0022】
(実施例3)
コーンスターチの量を3質量部とし、残りの水を49.9質量部とすること以外はすべて実施例1と同様の配合とし、処理方法は実施例1と同様とした。
よって得られた乳飲料をカップ状容器に無菌下で充填密封し、冷蔵で1週間保存後に当該容器の蓋を一部開封して電子レンジで加熱してホットな乳飲料を得た。
当該ホットな乳飲料は、やや粘性が高いが、濃厚な風味を有しており、風味と食感の両面から濃厚さを感じることができるバランスのよい乳飲料であった。尚、上記乳飲料の粘度は約750mPa・sであった。
【0023】
(比較例1)
コーンスターチを使用しないこと、残りの水を52.9質量部とすること以外はすべて実施例1と同様の配合とし、処理方法は実施例1と同様とした。
よって得られた乳飲料をカップ状容器に無菌下で充填密封し、冷蔵で1週間保存後に当該容器の蓋を一部開封して電子レンジで加熱してホットな乳飲料を得た。
当該ホットな乳飲料は、粘性がほとんど感じられず、さらさらした口当たりで風味と食感に違和感があり、バランスの悪い乳飲料であった。尚、上記乳飲料の粘度は約80mPa・sであった。
【0024】
(比較例2)
コーンスターチの量を0.05質量部とし、残りの水を52.85質量部とすること以外はすべて実施例1と同様の配合とし、処理方法は実施例1と同様とした。
よって得られた乳飲料をカップ状容器に無菌下で充填密封し、冷蔵で1週間保存後に当該容器の蓋を一部開封して電子レンジで加熱してホットな乳飲料を得た。
当該ホットな乳飲料は、比較例1とおなじように粘性がほとんど感じられず、さらさらした口当たりで風味と食感に違和感があり、バランスの悪い乳飲料であった。尚、上記乳飲料の粘度は約95mPa・sであった。
【0025】
(比較例3)
コーンスターチの量を4質量部とし、残りの水を48.9質量部とすること以外はすべて実施例1と同様の配合とし、処理方法は実施例1と同様とした。
よって得られた乳飲料をカップ状容器に無菌下で充填密封し、冷蔵で1週間保存後に当該容器の蓋を一部開封して電子レンジで加熱してホットな乳飲料を得た。
当該ホットな乳飲料は、粘性がかなり高いものになっており、どろどろした口当たりで風味と食感に違和感があり、バランスの悪い乳飲料であった。尚、上記乳飲料の粘度は約1500mPa・sであった。
【0026】
次に、油の含有量について、表1の配合で実施例1と同様の方法によりチョコレート風味の乳飲料を製造し、当該乳飲料のそれぞれを比較評価した。表中の原料名の数値の単位は、質量部である。
【表1】


官能評価の結果、実施例5〜実施例7がのどごしが良好で、滑らかな口当たりのチョコレート風味を有する乳飲料という点で好ましいものであった。一方、実施例4ではあっさりした口当たりで、のどごしに少しの違和感はあるものの、口当たりのよいチョコレート風味を有する乳飲料であった。また、実施例8では油のくどさが感じられ、のどごしに違和感はあるものの、口当たりのよいチョコレート風味を有する乳飲料であった。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】加熱殺菌前の乳飲料の状態を示す。(実施例1)
【図2】上記乳飲料を加熱殺菌し、ホモゲナイズ処理したときの状態を示す。(実施例1)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5%以上のカカオ分と乳及び/又は乳加工品を含み、加熱処理されてなるチョコレート風味の乳飲料であって、コーンスターチとセルロースを併用し、品温60℃における粘度が100〜800mPa・s(測定条件:
B型粘度計、No.3ローター、30rpm、30秒間)であることを特徴とする、チョコレート風味の乳飲料。
【請求項2】
カカオ分がココアパウダーであり、その含有量が0.5〜15質量%であることを特徴とする請求項1記載の乳飲料。
【請求項3】
上記乳及び/又は乳加工品の含有量が、2〜50質量%であることを特徴とする請求項1記載の乳飲料。
【請求項4】
コーンスターチの含有量が、0.1〜3.0質量%であることを特徴とする請求項1記載の乳飲料。
【請求項5】
油脂含有量が、1〜15質量%であることを特徴とする請求項1記載の乳飲料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−115166(P2010−115166A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291468(P2008−291468)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【Fターム(参考)】