説明

チョッパ回路及びその平滑コンデンサの異常検知方法

【課題】チョッパ回路の平滑コンデンサの異常を検知する。
【解決手段】入力電流、スイッチング素子のサージ電圧あるいは出力電流のうち何れか1つあるいは複数を検出することにより平滑コンデンサ5の異常を外部に報知する異常検知手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョッパ回路及びその平滑コンデンサの異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献には、電力変換回路として周知の昇圧チョッパ回路が開示されている。この昇圧チョッパ回路は、互いに直列接続されると共に外部の直流電源に直列接続されたチョークコイルとスイッチングトランジスタ、上記チョークコイルの出力をダイオードを介して充放電する平滑コンデンサから構成されており、平滑コンデンサの両端を出力端とする。このような昇圧チョッパ回路は、スイッチングトランジスタのON/OFFのデューティ比に基づいて直流電源から供給される直流電力を昇圧して負荷に供給する直流昇圧回路として機能する。
【特許文献1】特開2007−244178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来の昇圧チョッパ回路は、損失やリップルの低減を目的とするものであり、構成素子の異常について何ら配慮されていない。
例えば、チョークコイル、スイッチングトランジスタ及びダイオードが異常を来たした場合には主機能としての昇圧機能が機能しなくなるので異常が速やかに検知されるが、平滑コンデンサが接続乖離するような異常が発生した場合には、負荷によっては昇圧機能が機能するので容易に異常を検知することができないという問題がある。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、チョッパ回路の平滑コンデンサの異常を検知することにより異常に対して速やかな対応をとることを可能とすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明では、チョッパ回路に係る第1の解決手段として、平滑コンデンサの異常を検知して外部に報知する異常検知手段を備える、という手段を採用する。
【0006】
チョッパ回路に係る第2の解決手段として、上記第1の手段において、異常検知手段は、入力電流、スイッチング素子のサージ電圧あるいは出力電流のうち何れか1つあるいは複数を検出することにより平滑コンデンサの異常を検知する、という手段を採用する。
【0007】
また、本発明では、チョッパ回路の平滑コンデンサの異常検知方法に係る解決手段として、入力電流、スイッチング素子のサージ電圧あるいは出力電流のうち何れか1つあるいは複数を検出することにより平滑コンデンサの異常を検知する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば入力電流、スイッチング素子のサージ電圧あるいは出力電流のうち何れか1つあるいは複数を検出することにより平滑コンデンサの異常を検知するので、平滑コンデンサの異常に対して速やかに対応することが可能である。
例えば、平滑コンデンサの異常によって直流電源に与える高負荷の時間を短くできるので、直流電源を保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る昇圧チョッパ回路Aの構成を示す回路図である。この図に示すように、本昇圧チョッパ回路Aは、入力端子1A,1B,チョークコイル2、スイッチングトランジスタ3、ダイオード4、平滑コンデンサ5、出力端子6A,6B、2つの電流センサ7,8及び異常判定部9を備えている。これら各構成要素のうち、2つの電流センサ5,6及び異常判定部7は異常検知手段を構成している。なお、この図ではスイッチングトランジスタ3の制御系については、周知のものであり省略している。
【0010】
入力端子1A,1Bは、本昇圧チョッパ回路Aに直流電力を入力するための一対の接続端子であり、一方の入力端子1Aは外部の直流電源Pの正極端に接続され、他方の入力端子1Bは上記直流電源Pの負極端に接続されている。チョークコイル2は、一端が一方の入力端子1Aに接続され、他端がスイッチングトランジスタ3のコレクタ端子に接続されている。スイッチングトランジスタ3は、コレクタ端子がチョークコイル2の他端及びダイオード4のアノード端子に接続され、エミッタ端子が他方の入力端子1Bに接続されている。なお、スイッチングトランジスタ3のベース端子は、図示しない制御系の出力端に接続され、制御信号としてのPWM信号が入力される。
【0011】
また、図示するように、スイッチングトランジスタ3のコレクタ端子は異常判定部9にも接続されている。すなわち、スイッチングトランジスタ3のコレクタ端子電圧(=チョークコイル2の他端電圧)は、スイッチングトランジスタ3のサージ電圧を示す検出信号Saとして異常判定部9に供給される。
【0012】
ダイオード4は、アノード端子が上記チョークコイル2の他端及びスイッチングトランジスタ3のコレクタ端子に接続され、カソード端子が平滑コンデンサ5の一端及び一方の出力端子6Aに接続されている。平滑コンデンサ5は、上述したように一端がダイオード4のカソード端子及び一方の出力端子6Aに接続され、他端が他方の入力端子1B及び他方の出力端子6B並びにスイッチングトランジスタ3のエミッタ端子に接続されている。すなわち、平滑コンデンサ5の両端は出力端子6A,6Bに各々接続されている。
【0013】
出力端子6A,6Bは、本昇圧チョッパ回路Aの出力電力を外部に出力するための一対の接続端子であり、一方の出力端子6AはインバータLの一端に接続され、他方の出力端子6Bは上記インバータLの他端に接続されいる。インバータLは、本昇圧チョッパ回路Aの負荷である。
【0014】
一方の電流センサ7は、直流電源Pから本昇圧チョッパ回路Aに入力される入力電流を検出するセンサであり、図示するように一方の入力端子1Aとチョークコイル2との間に設けられている。この電流センサ7は、上記入力電流を示す検出信号Sbを異常判定部9に出力する。他方の電流センサ8は、本昇圧チョッパ回路AからインバータLに供給される出力電流を検出するセンサであり、図示するようにダイオード4のカソード端子と平滑コンデンサ5の一端との接続点と一方の出力端子6Aとの間に設けられている。この電流センサ8は、上記出力電流を示す検出信号Scを異常判定部9に出力する。
【0015】
異常判定部9は、上記検出信号Sa〜Scに基づいて平滑コンデンサ5の開放異常を検知するものであり、マイクロプロセッサ、判定処理プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等から構成されている。例えば、このような異常判定部9は、平滑コンデンサ5の開放異常を検知すると、当該異常の発生を示す警報を外部に出力する。
【0016】
なお、上記マイクロプロセッサ、ROM及びRAM等は、例えばスイッチングトランジスタ3の制御系を構成するものであり、上記判定処理プログラムは、スイッチングトランジスタ3を制御するための制御プログラムの一要素(例えばサブルーチン)としてROMに記憶されている。
【0017】
次に、このように構成された本昇圧チョッパ回路Aの要部動作について図2及び図3をも参照して詳しく説明する。
【0018】
図2は、上記判定処理プログラムに基づく異常判定部9の異常判定動作を示すフローチャートである。異常判定部9は、判定処理プログラムに基づいて以下の処理を所定のタイムインターバルで繰り返すことにより、起動中において平滑コンデンサ5に開放異常が発生したか否かを定期的に判定する。
【0019】
すなわち、異常判定部9は、起動すると、検出信号Saが示すサージ電圧が所定のしきい値を越えたか否かを判断する(ステップS1)。このサージ電圧に対するしきい値としては、図3(a)に示すように、コレクタ電圧がH(ハイ)からL(ロー)に立ち下がったときのサージ電圧VLを評価するための下限しきい値RLと、コレクタ電圧がL(ロー)からH(ハイ)に立ち上がったときのサージ電圧VHを判定すえるための上限しきい値RHとが設定される。異常判定部9は、サージ電圧VLが下限しきい値RLを下回るとあるいはサージ電圧VHが上限しきい値RHを上回ると、ステップS1の判断を「Yes」、つまり平滑コンデンサ5に開放異常が発生したとして、外部に警報を出力する(ステップS4)。
【0020】
一方、異常判定部9は、ステップS1の判断が「No」の場合は、図3(b)に示すように、検出信号Sbが示す入力電流のリップルRinが所定のしきい値を越えたか否かを判断する(ステップS2)。この入力電流のリップルRinは、スイッチングトランジスタ3のスイッチング動作に起因するものであり、スイッチング周波数と同等の周波数を基本周波数とする電流変動成分である。異常判定部9は、検出信号Sbから上記リップルRinを取り出して所定のしきい値と比較し、リップルRinがしきい値を越える場合はステップS2の判断を「Yes」、つまり平滑コンデンサ5に開放異常が発生したとして、外部に警報を出力する(ステップS4)。
【0021】
一方、異常判定部9は、ステップS2の判断が「No」の場合は、図3(c)に示すように、検出信号Scが示す出力電流のリップルRoutが所定のしきい値を越えたか否かを判断する(ステップS3)。この出力電流のリップルRoutは、上述した入力電流のリップルRinと同様にスイッチングトランジスタ3のスイッチング動作に起因するものであり、スイッチング周波数と同等の周波数を基本周波数とする電流変動成分である。異常判定部9は、検出信号Scから上記リップルRoutを取り出して所定のしきい値と比較し、リップルRoutがしきい値を越える場合はステップS3の判断を「Yes」、つまり平滑コンデンサ5に開放異常が発生したとして、外部に警報を出力する(ステップS4)。
【0022】
一方、異常判定部9は、ステップS3の判断が「No」の場合は、ステップS1の処理開始から所定時間Tsが経過したか否かを判断し(ステップS5)、この判断が「Yes」になると、ステップS1の処理を繰り返す。すなわち、異常判定部9は、所定時間Tsが経過する毎に、平滑コンデンサ5に開放異常が発生したか否かを判定し、開放異常が発生した場合には、この旨を示す警報を外部に出力する。
【0023】
本実施形態によれば、サージ電圧VL,VH、入力電流のリップルRinあるいは出力電流のリップルRoutの何れかが所定のしきい値を超える程に大きい場合に、異常判定部9は、平滑コンデンサ5に開放異常が発生したと判定して外部に警報を出力する。したがって、本実施形態によれば、平滑コンデンサ5の開放異常の発生を外部に速やかに通知することができるので、平滑コンデンサ5の開放異常に対して速やかに対応することが可能である。例えば、平滑コンデンサ5の異常によって直流電源Pに与える高負荷の時間を短くできるので、直流電源を効果的に保護することができる。
【0024】
このような平滑コンデンサ5の開放異常の判定方法は、平滑コンデンサ5の両端が開放するような異常、例えば平滑コンデンサ5の両端の何れかあるいは両方が何らかの原因で乖離した場合や平滑コンデンサ5の内部で両端が開放するような故障が発生した場合、つまり平滑コンデンサ5が出力端子6A,6Bの間に回路素子として存在しなくなるような異常が発生した場合に、サージ電圧VL,VH、入力電流のリップルRin及び出力電流のリップルRoutが極端に大きくなるという知見に基づくものである。
【0025】
本昇圧チョッパ回路Aにおいて平滑コンデンサ5が存在しなくなると、出力電流のリップルRoutが極端に大きくなると共に、これに伴って入力電流のリップルRin及びサージ電圧VL,VHも正常時に対して極端に大きくなる。したがって、本実施形態のように、サージ電圧VL,VH、入力電流のリップルRinあるいは出力電流のリップルRoutをモニタすることにより、平滑コンデンサ5の開放異常を的確に判定することができる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では昇圧チョッパ回路Aについて説明したが、本発明は、昇圧チョッパ回路Aに限定されるものではない。チョッパ回路には、昇圧チョッパ回路の他に降圧チョッパ回路や昇降圧チョッパ回路があり、何れも出力段に平滑コンデンサを備えている。本発明は、このような降圧チョッパ回路や昇降圧チョッパ回路にも適用可能である。
【0027】
(2)上記実施形態では入力電流、スイッチング素子のサージ電圧及び出力電流の3つの物理量を何れも検出して平滑コンデンサ5の開放異常を検知したが、これら3つの物理量のうち何れか1つあるいは2つを検出するようにしても良い。特に、チョッパ回路の負荷(上記実施形態ではインバータL)が変動負荷の場合、スイッチング素子のサージ電圧及び出力電流は負荷変動に従って変動するので、スイッチング素子のサージ電圧及び出力電流に基づいて平滑コンデンサ5の開放異常を検知することは困難であり、入力電流に基づいて平滑コンデンサ5の開放異常を検知することが信頼性の面で好ましい。しかしながら、チョッパ回路の負荷が変動負荷ではなく固定負荷の場合には、負荷が安定しているのでスイッチング素子のサージ電圧及び出力電流に基づいて平滑コンデンサ5の開放異常を信頼性高く検知することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係わる昇圧チョッパ回路Aの構成を示す回路図である。
【図2】本発明の一実施形態に係わる昇圧チョッパ回路Aの異常判定動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係わる昇圧チョッパ回路Aの各部波形を示す波形図である。
【符号の説明】
【0029】
A…昇圧チョッパ回路、1A,1B…入力端子、2…チョークコイル、3…スイッチングトランジスタ、4…ダイオード、5…平滑コンデンサ、6A,6B…出力端子、7、8…電流センサ、9…異常判定部、P…直流電源、L…インバータ(負荷)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平滑コンデンサの異常を検知して外部に報知する異常検知手段を備えることを特徴するチョッパ回路。
【請求項2】
異常検知手段は、入力電流、スイッチング素子のサージ電圧あるいは出力電流のうち何れか1つあるいは複数を検出することにより平滑コンデンサの異常を検知することを特徴とする請求項1記載のチョッパ回路。
【請求項3】
入力電流、スイッチング素子のサージ電圧あるいは出力電流のうち何れか1つあるいは複数を検出することにより平滑コンデンサの異常を検知することを特徴とするチョッパ回路の平滑コンデンサの異常検知方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−247076(P2009−247076A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89023(P2008−89023)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】