説明

チルトヒンジ

【課題】潤滑材を皆無にし、同時に、軽量かつ安価で、多様な摩擦面を実現することができるチルトヒンジを提供する。
【解決手段】ノート型パソコン等の機器本体に取り付け固定されるベース部材と、該ベース部材に連結シャフトを介して回転自在に連結される回転部材と、上記ベース部材と回転部材の間に介挿され、ゴム材やエラストマー等から成る弾性摩擦部材から構成され、該弾性摩擦部材が上記ベース部材または回転部材の少なくとも一方に摩擦接触することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノート型パソコン等の機器本体に対して、その蓋やディスプレイ等の開閉部材を開閉自在に連結すると共に、該開閉部材を任意の開閉状態に保持するチルトヒンジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、この種のチルトヒンジとしては、例えば、装置本体に取り付けられるブラケットと、該ブラケットに回転自在に取り付けられると共に開閉体に取り付けられる連結シャフトと、該連結シャフトと共に回転するフリクションプレートと、該フリクションプレートに摩擦力を与える付勢手段から成るものがある。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開平10−026126号公報
【0003】
しかし、上記特許文献1の従来技術は、摩擦力を与える多数のフリクションプレートと、これらの間に摩擦力を与える皿バネ等の、多くの金属部品により構成されているので、製造組立コストが高かったり軽量化を図ることが困難であるだけでなく、摩擦面の多様化を図ることが出来ない等の欠点があった。
また、金属同士を摩擦部材として使用するため、習動音発生や対磨耗性のためにグリスなどの潤滑材を塗布することが必須であった。したがって OA機器に装着時グリスなどで、ユーザが手を汚したり、使用紙を汚したりする欠点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来のヒンジの問題点を解決し、軽量かつ安価で、多様な摩擦面を実現することができるチルトヒンジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ノート型パソコン等の機器本体に取り付け固定されるベース部材と、該ベース部材に連結シャフトを介して回転自在に連結される回転部材と、上記ベース部材と回転部材の間に介挿され、ゴム材やエラストマー等から成る弾性摩擦部材から構成され、該弾性摩擦部材が上記ベース部材または回転部材の少なくとも一方に摩擦接触することを特徴とする。また、上記弾性摩擦部材が連結シャフトの軸方向に摩擦接触することを特徴とする。さらに、上記弾性摩擦部材が連結シャフトの半径方向に摩擦接触することを特徴とする。又更に、上記弾性摩擦部材の摩擦接触状態が回転角度によって変化することを特徴とする。
また、摩擦部材に潤滑材を全く使用しないことも特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のチルトヒンジは、潤滑材を皆無にし、同時に、軽量かつ安価で、多様な摩擦面を実現することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、本発明のチルトヒンジの一実施例を示す分解斜視図であって、1はベース部材、2は回転部材、3は連結シャフト、4は弾性摩擦部材としてのO−リング、5は締付け部材である。
【0008】
上記ベース部材1は、ノート型パソコン等の機器本体に取り付け固定される。上記回転部材2は、前記機器本体の蓋やディスプレイ等の開閉部材を取り付け支持すると共に、上記連結シャフト3を介して前記ベース部材1に回転自在に連結される。
【0009】
本実施例にける上記O−リング4は、大中小の3種の直径を有するO−リングから成り、大きな直径のO−リングの中に中直径のO−リングが納められ、さらに、中直径のO−リングの中に小さい直径のO−リングが納められて、全体として同一平面状に配置された状態で、上記ベース部材1と回転部材2の間に介挿される。
【0010】
上記締付け部材5により上記O−リング4を締め付けると、特に図2(B)から明らかなように、上記ベース部材1の摩擦面1aおよび回転部材2の摩擦面2aに圧接して摩擦係合する。
【0011】
本実施例のチルトヒンジは、以上のように構成されているので、蓋やディスプレイ等の開閉部材を手で開閉すると、上記O−リング4の摩擦係合により、上記ベース部材1および回転部材2の間で摩擦トルクが発生し、開閉部材を任意の開閉位置に安定かつ確実に停止させることができる。
【0012】
図3は、本発明のチルトヒンジの別の実施例を示す分解斜視図であって、ベース部材1、回転部材2、連結シャフト3、締付け部材5は、上記実施例と同じ構成および作用を有する。
【0013】
6は本発明の弾性摩擦部材としてのエラストマーであって、例えば商品名:チェラストまたは商品名::ハイトレルとして市販されている素材から成り、上記ベース部材1と回転部材2の間に介挿される。該エラストマー6には、前記ベース部材1の摩擦係合穴1bに摩擦係合する摩擦突起6aと、前記回転部材2の嵌合穴2bに嵌合する突起6bが形成されている。
【0014】
上記締付け部材5により上記エラストマー6を連結シャフト3の軸方向に締め付けると、該エラストマー6の端面6cが上記ベース部材1の摩擦面1aに摩擦接触すると同時に、上記摩擦突起6aの端面6a−1が、上記ベース部材1の摩擦係合穴1bの底面1b−1に圧接する。すなわち、上記エラストマー6が連結シャフト3の軸方向に摩擦接触する。また、該エラストマー6は連結シャフト3の軸方向に圧縮されると、これに直交する摩擦突起6aの外周面6a−2が外方に拡がって、上記摩擦係合穴1bの内周面1b−2に圧接する。すなわち、上記エラストマー6が連結シャフト3の半径方向に摩擦接触する。
【0015】
本実施例のチルトヒンジは、以上のように構成されているので、蓋やディスプレイ等の開閉部材を手で開閉すると、これに伴って上記回転部材2が回転し、これに一体的に嵌合しているエラストマー6も回転する。該エラストマー6の摩擦突起6bは、上記ベース部材1の摩擦係合穴1bに、連結シャフト3の軸方向および半径方向に圧接して摩擦係合しているので、大きな摩擦トルクを生じさせることができ、開閉部材を任意の開閉位置に安定かつ確実に停止させることができる。
【0016】
本実施例では、エラストマー6の摩擦突起6aに切欠部6a−3を入れて、上記外周面6a−2を部分的に形成すると共に、上記摩擦係合穴1bを小判形に形成しているので、摩擦突起6aの外周面6a−2と摩擦係合穴1bの内周面1b−2の圧接摩擦状態が回転角度によって変化するようになっており、開閉部材の開閉角に応じて最適の摩擦トルクとすることができる。
【0017】
図5は、本発明の更に別の実施例を示すもので、ゴム材やエラストマー等の弾性摩擦部材7の周面を軸方向に波形に形成すると共に、これを取り囲むベース部材1の周面1cも波形に形成して、摩擦面積を増加させることにより、小型で強力な摩擦トルクを発揮させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明のチュルトヒンジは、上記ノート型パソコンの他に、小型複写機、スキャナー、ファックス、これらの複合機(MFP)などの用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のチルトヒンジの一実施例を示す分解斜視図である。
【図2】図1のチルトヒンジの組み付け図(A)、そのイ−イ端面図(B)、ロ−ロ端面図(C)である。
【図3】本発明のチルトヒンジの別の実施例を示す分解斜視図(A)およびベース部材の摩擦係合穴の説明図(B)である。
【図4】図3のチルトヒンジの組み付け図(A)、そのハ−ハ端面図(B)、ニ−ニ端面図(C)である。
【図5】本発明のチルトヒンジの更に別の実施例を示す断面図(A)およびホ−ホ端面図(B)である。
【符号の説明】
【0020】
1 ベース部材
1a 摩擦面
1b 摩擦係合穴
1b−1 底面
1b−2 内周面
1c 周面
2 回転部材
2a 摩擦面
2b 嵌合穴
3 連結シャフト
4 O−リング
5 締付け部材
6 ウレタン摩擦部材
6a 摩擦突起
6a−1 端面
6a−2 外周面
6a−3 切欠部
6b 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノート型パソコン等の機器本体に取り付け固定されるベース部材と、該ベース部材に連結シャフトを介して回転自在に連結される回転部材と、上記ベース部材と回転部材の間に介挿され、ゴム材やエラストマー等から成る弾性摩擦部材から構成され、該弾性摩擦部材が上記ベース部材または回転部材の少なくとも一方に摩擦接触することを特徴とするチルトヒンジ。
【請求項2】
上記弾性摩擦部材が連結シャフトの軸方向に摩擦接触することを特徴とする請求項1に記載のチルトヒンジ。
【請求項3】
上記弾性摩擦部材が連結シャフトの半径方向に摩擦接触することを特徴とする請求項1または2に記載のチルトヒンジ。
【請求項4】
上記弾性摩擦部材の摩擦接触状態が回転角度によって変化することを特徴とする請求項2または3に記載のチルトヒンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−57648(P2006−57648A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237259(P2004−237259)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(592264101)下西技研工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】