説明

テアフラビン富化茶製品の調製方法

添加した外因性エピカテキンの存在下で茶の供給材料を酵素的発酵に供する工程を含む、テアフラビン富化茶製品の調製方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶の加工の分野に関する。本発明は特に、テアフラビン富化茶製品の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書を通じて従来技術のいずれの議論も、そのような従来技術が広く知られているか、当該分野の共通の一般的知見の一部を形成することを認めるものとして、いずれの態様でも考慮されるべきではない。
【0003】
テアフラビン類は、ベンゾトロポロン環の存在によって特徴付けられる化合物であり、茶葉が酵素的に酸化されるか、または発酵されて紅茶を生産する際に形成される。テアフラビン類は、テアフラビン(TF1)、テアフラビン−3−モノガレート(TF2)、テアフラビン−3'−モノガレート(TF3)、及びテアフラビン−3−3'−ジガレート(TF4)の4種の主要な種として存在する、紅茶及びウーロン茶に独特なものである。茶葉では、エピカテキン(EC)及びエピカテキンガレート(ECG)が単純なカテキン類であり、エピガロカテキン(EGC)及びエピガロカテキンガレート(EGCG)が、4種のテアフラビン種の形成に関与するガロカテキン類である。他の生体内変化と同様に、カテキン類の酸化的生体内変化は複雑であり、二量体テアフラビン類と、テアルビギン類として既知の高分子量化合物とを生じる多数の反応経路を含む。
【0004】
テアフラビン類は、抗酸化特性、抗菌特性、及び抗炎症特性を有することが既知である。テアフラビン類は、癌、心臓血管疾患及び脳血管疾患、糖尿病、並びに高コレステロール血症を含む各種の疾患に対して有効であることが報告されている。しかしながら、茶中に存在するテアフラビン類の通常濃度は、茶の地理的な位置と茶の品種のような因子に依存して、乾燥重量基準で1−2%である。それ故、増大した濃度のテアフラビンを有する茶製品を得ることが所望されている。過去において、研究者は各種のアプローチによって茶製品中でテアフラビンを富化することを試している。
【0005】
Cloughley及びEllis (J. Sci. Food Agric. 31 (1980) 924-934)(非特許文献1)は、低pHで発酵工程を実施することによる茶のテアフラビン富化方法を記載している。しかしながら、この方法によって得られた茶は、混乳茶飲料を調製する間で添加した乳の凝乳を引き起こすことができる残余の酸度を有するであろう。
【0006】
US6113965(2000, Lipton)(特許文献1)は、スラリー酸化的発酵の前にタンナーゼで処理されている緑茶葉のスラリー酸化的発酵製品からテアフラビンを分離することによる、テアフラビンの生産方法を開示している。この文献は更に、テアフラビン富化抽出物の製造方法も教示しており、冷水可溶性茶パウダー及び製品が提供されている。
【0007】
しかしながら、上記方法によって得ることができるテアフラビンの富化は制限されており、更に富化された濃度のテアフラビンを有する茶製品に対する継続した必要性が存在する。
【0008】
更に、従来技術で報告されている方法は高価であることが見出されており、それ故、テアフラビン富化茶製品を調製するためのコスト的に有効な方法についての更なる必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US6113965(2000, Lipton)
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Cloughley及びEllis (J. Sci. Food Agric. 31 (1980) 924-934)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一つの目的は、従来技術の欠点の少なくとも一つを解消することまたは改良すること、あるいは有用な代替法を提供することである。
【0012】
本発明の目的の一つは、従来技術の方法と比較して、より高濃度の全テアフラビンを含むテアフラビン富化茶製品を調製する方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、コスト的に有効な態様で、テアフラビン富化茶製品を調製する方法を提供することである。
【0014】
本発明者は驚くべきことに、茶の供給材料の酵素的発酵の間の外因性エピカテキンの存在が、テアフラビン富化茶製品を導くことを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、添加した外因性エピカテキンの存在下で、茶の供給材料を酵素的発酵に供する工程を含む、テアフラビン富化茶製品の調製方法が提供される。
【0016】
好ましくは、本発明に係る酵素的発酵は、茶の供給材料中の内因性酵素によってなされる。
【0017】
本発明の好ましい特徴点の一つによれば、前記エピカテキンの量は、前記茶の供給材料中の可溶性固形分の乾燥重量のグラム当たり35から750、より好ましくは75から520、最も好ましくは120から260mgである。好ましい特徴点によれば、エピカテキンは、茶の供給材料の発酵前に添加される。
【0018】
茶の供給材料は好ましくは、発酵の前または最中にタンナーゼで処理される。
【0019】
好ましい特徴点によれば、発酵は添加した水の存在下で実施される。添加した水の量は好ましくは、茶の供給材料中の可溶性固形分のグラム当たり0.1−500グラムである。
【0020】
定義
ここで使用される用語「茶の供給材料」は、植物Camellia sinensisまたはCamellia assamicaから得られる、あるいはそのような植物材料を加工した後にそれらから由来するいずれかの材料を指す。
【0021】
ここで使用される用語「茶製品」は、茶の供給材料から由来するいずれかの製品を意味する。それは、紅茶、ウーロン茶、インスタント茶、及び緑茶を含むがそれらに制限されない。それはまた、水と茶製品との混合物を含むスラリーをも含む。
【0022】
ここで使用される用語「テアフラビン富化」は、茶の供給材料と比較して、TF1、TF2、TF3、及びTF4を含む全テアフラビンの増大した濃度を有する茶製品を指す。特に前記茶製品は、茶の供給材料中の可溶性固形分の乾燥重量のグラム当たりのテアフラビンの量と比較して、前記茶製品中の可溶性固形分の乾燥重量のグラム当たり、より高量のテアフラビンを通常有するであろう。
【0023】
ここで使用される用語「茶葉」は、植物Camellia sinensisまたはCamellia assamicaの茶葉、芽、及び他の部分を含む。
【0024】
ここで使用される用語「ドゥール(dhool)」は、浸漬した茶葉を意味する。茶葉は、ローリング、クラッシュ・ティアー・カール(CTC)、キッチンブレンダーを使用するブレンディング等のような通常使用される方法によって浸漬されてよい。
【0025】
ここで使用される用語、酵素的発酵は、酵素によって介在される酸化的生体内変化を意味する。発酵は、茶の供給材料中で内因性であり、酵素的発酵が可能な酵素によって実施されて良い。そのような茶の供給材料の非制限的な例として、茶葉とドゥールが含まれる。発酵はまた、外因性酵素と対応する共基質によっても実施できる。
【0026】
用語「実質的に不活性化された内因性酵素」は、茶の供給材料内に内因的に存在する酵素の不活性化工程に供された茶の供給材料を指す。典型的に不活性化は熱的であり、即ち焙煎と称される100℃を超える温度に曝露する工程に供することにより実施される。実質的に不活性化された内因性酵素を有する茶の供給材料の例は、インスタント茶及び緑茶を含む。
【0027】
ここで使用される用語「茶の供給材料中の可溶性固形分」は、(a)茶の供給材料を90℃で1時間水と接触させる工程、(b)遠心/濾過(Whatman 541フィルター)により不溶性固形分から液体を分離する工程、及び(c)前記液体から水を蒸発して可溶性固形分を得る工程によって得られる固形分の量を意味する。
【0028】
ここで使用される用語「乾燥重量基準」は、水分を含まない基準で表される組成物の比または重量%を指す。ここで使用される用語「新鮮な重量基準」は、水分を含む材料の重量%として表される組成物を指す。典型的には、茶葉は約70%の水分と約30%の固形分を含む。全固形分のうち、可溶性固形分は通常約40重量%である(乾燥重量基準で)。かくして、新鮮な重量基準で〜12%の可溶性固形分は、乾燥重量基準で〜40%の可溶性固形分に等しい。上記の典型的な数字は代表的なものであり、実際の数字は地理的な起源、茶の種類、及び湿度に依存して幾分変化するであろうことに注意すべきである。
【0029】
ここで使用される用語「スラリー発酵」は、茶の供給材料に対する添加した水の比が、新鮮な重量基準で2:1より大きく、乾燥重量基準で6.7:1より大きく、可溶性固形分基準で17:1より大きい茶の供給材料の発酵を意味する。
【0030】
ここで使用される用語「固体状態の発酵」は、茶の供給材料に対する添加した水の比が、新鮮な重量基準で2:1未満、乾燥重量基準で6.7:1未満、可溶性固形分基準で17:1未満である茶の供給材料の酵素的発酵を意味する。典型的には、茶の供給材料に対する添加した水の比は、可溶性固形分基準で2:1未満である。
【0031】
ここで使用される用語「外因性エピカテキン」は、茶の供給材料に外的に添加され、茶の供給材料中に存在してよいいずれかのエピカテキンを除外したエピカテキンを指す。
【0032】
酵素活性は、活性ユニットまたは単純にユニットとして表される。タンナーゼ活性ユニットは、供給者のデータから引用される。ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)及びペルオキシダーゼ(POD)のような外因性酵素については、酵素活性は以下のように測定できる。
【0033】
ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)についてのアッセイ
PPOは、基質として(+)−カテキンを使用して分光光度測定法でアッセイされる。このアッセイは、0.1Mリン酸クエン酸バッファー(pH5.5)中に3mMカテキンを含む3mLの反応ボリュームで実施される。水(70%v/v)−エタノール(30%v/v)混合物中で新たに調製された60mMのカテキンストック溶液の150μL等量物を使用して、反応混合物中に3mMのカテキン濃度を得る。適切な希釈の酵素溶液を反応を開始するために添加し、混合物を40℃で10−20分インキュベートする。アセトニトリル(60%v/v)、酢酸(10%v/v)、及び水(30%v/v)を含む200μLの溶液を使用して反応を停止する。次いで400nmの吸光度を記録し、以下の関係式に基づいて活性を計算する:1ユニットの活性=0.001の吸光度の増大。
【0034】
ペルオキシダーゼ(POD)についてのアッセイ
PODについてのアッセイは、反応混合物が更に7.3mMの過酸化水素を含む点を除き、PPOについてのものと同一である。必要量の過酸化水素は、1.5%w/vのストック溶液を使用してもたらされる。反応混合物を30℃で10−20分インキュベートする。次いで上述のように反応を終結し、400nmでの吸光度を測定する。活性を再び以下の関係式に基づいて計算した:1ユニットの活性=0.001の吸光度の増大。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明によれば、添加した外因性エピカテキンの存在下で、茶の供給材料を酵素的発酵に供する工程を含む、テアフラビン富化茶製品の調製方法が提供される。
【0036】
好ましくは、本発明に係る酵素的発酵は、発酵を実施することが可能な茶の供給材料中の内因性酵素によってなされる。
【0037】
市販品の外因性エピカテキン(例えばSigma社製、Herbs-Tech社製等)を添加することができる。本発明によって添加できる他の外因性エピカテキンの供給源は、ココア、グレープジュース等の他の植物材料のエピカテキン富化抽出物を含む。
【0038】
本発明に係る方法は、外因性エピカテキンと共に添加された他の外因性カテキン類(エピカテキンガレート、エピガラクトカテキン、及びエピガラクトカテキンガレートを含む)の存在下で実施できる。好ましくは、全外因性カテキン類に対する外因性エピカテキンの比は、茶の供給材料中の全内因性カテキン類に対する内因性エピカテキンの比よりも大きい。
【0039】
添加される外因性エピカテキンの好ましい量は、全エピカテキンに対する全エピガラクトカテキンのモル比が1:1から1:16、好ましくは1:1.5から1:10、より好ましくは1:2から1:9となるように選択される。
【0040】
本発明の好ましい特徴点の一つによれば、添加されるエピカテキンの量は、茶の供給材料中の可溶性固形分の乾燥重量のグラム当たり35から750、好ましくは75から520、より好ましくは120から260mgである。
【0041】
好ましい特徴点によれば、茶の供給材料が茶葉である場合、エピカテキンは摘採後の茶葉に添加される。代替的な好ましい特徴点によれば、エピカテキンは摘採前の茶葉に添加される。
【0042】
茶の供給材料は、実質的に発酵されていないことが好ましい、即ちそれは、酵素的発酵の工程に事前に供されていない。特に、前記茶の供給材料中のテアフラビン類に対する全カテキン類の重量比は10より大きく、好ましくは20より大きく、より好ましくは50から10000であることが好ましい。別法としてまたは加えて、茶の供給材料は、可溶性固形分の乾燥重量のグラム当たり好ましくは10mg以下、より好ましくは5mg以下、最も好ましくは2mg以下のテアフラビンを有する。茶の供給材料は実質的にテアフラビン類を含まないことがとりわけ好ましい。
【0043】
本発明に係る方法は好ましくは、前記発酵の前または最中にタンナーゼで茶の供給材料を処理する工程を含む。
【0044】
好ましい特徴点によれば、茶の供給材料をタンナーゼで処理する工程は、発酵の前に実施される。タンナーゼでの処理は、好ましくは適切な温度で適切な時間に亘り窒素の雰囲気で実施される(発酵を防止するため)。適切な条件は実験により決定できる。別の好ましい特徴点によれば、茶の供給材料をタンナーゼで処理する工程は発酵の最中に実施される。タンナーゼの量は、茶の供給材料中の可溶性固形分の乾燥重量のグラム当たり0.08から8、より好ましくは0.2から4、最も好ましくは0.4から2mgであることが好ましい。
【0045】
好ましい特徴点によれば、発酵は添加した水の存在下で実施される。添加した水の量は、茶の供給材料中の可溶性固形分のグラム当たり、好ましくは0.1から500グラムである。好ましい特徴点の一つでは、添加した水は、茶の供給材料中の可溶性固形分のグラム当たり0.1から17、より好ましくは0.1から10、最も好ましくは0.1から2グラムであり、固体状態の発酵を導く。別の好ましい特徴点によれば、添加した水の量は、茶の供給材料中の可溶性固形分のグラム当たり17から500、より好ましくは20から400、最も好ましくは25から200グラムであり、スラリー発酵を導く。
【0046】
好ましい特徴点によれば、茶の供給材料は、酵素的発酵が可能な内因性酵素を含む茶葉であり、前記方法は、
(a)前記茶葉を干す工程;
(b)干した葉を浸漬する工程;
(c)添加した外因性エピカテキンの存在下で浸漬した茶葉を酵素的発酵に供する工程;及び
(d)好ましくは約120℃の温度で焙煎し、テアフラビン富化紅茶を得る工程
を含む。
【0047】
上述の方法は好ましくは、工程(c)の酵素的発酵の前または最中に、茶の供給材料をタンナーゼで処理する工程を含む。
【0048】
別の好ましい特徴点によれば、茶の供給材料は、酵素的発酵が可能な内因性酵素を含む茶葉であり、前記方法は、
(a)前記茶葉を干す工程;
(b)干した茶葉を浸漬し、浸漬した茶葉に可溶性固形分のグラム当たり17から500グラムの水を添加し、スラリーを調製する工程;
(c)添加した外因性エピカテキンの存在下で前記スラリーを酵素的発酵に供し、テアフラビン富化スラリーを得る工程
を含む。
【0049】
上述の方法は好ましくは、工程(c)の酵素的発酵の前または最中に、茶の供給材料をタンナーゼで処理する工程を含む。
【0050】
テアフラビン富化スラリーは好ましくは乾かし、5%未満に含水量を減少し、テアフラビン富化紅茶を得る。別の好ましい特徴点では、不溶性固形分をテアフラビン富化スラリーから分離し、テアフラビン富化溶液を得ることができる。テアフラビン富化溶液は好ましくは乾かし、テアフラビン富化茶製品を得て、それを例えば紅茶、緑茶、ウーロン茶、またはインスタント茶に添加してよい。別の好ましい特徴点によれば、テアフラビン富化溶液を紅茶、緑茶、またはウーロン茶に重ねて乾かし、テアフラビン富化茶を得ることができる。
【0051】
別の好ましい特徴点によれば、酵素的発酵は、外因性酵素と共基質によって実施される。外因性酵素と共基質による発酵は、茶の供給材料が実質的に不活性な内因性酵素を有する場合に好ましい。実質的に不活性な内因性酵素を有する茶の供給材料の例は、緑茶またはインスタント茶である。スラリー発酵は、茶の供給材料が実質的に不活性な内因性酵素を有する場合に好ましい。
【0052】
外因性酵素と対応する共基質との適切な組み合わせは、前記組み合わせが茶の供給材料の発酵が可能なように選択される。
【0053】
好ましい特徴点によれば、外因性酵素はポリフェノールオキシダーゼであり、対応する共基質は酸素である。更に好ましい特徴点によれば、前記ポリフェノールオキシダーゼの量は、前記茶の供給材料中の可溶性固形分の乾燥重量のグラム当たり1×10から1×10、より好ましくは3.5×10から1.5×10、最も好ましくは7.5×10から7.5×10ユニットである。ポリフェノールオキシダーゼは市販品、例えばWorthington社から得ることができ、または適切な植物材料から抽出して精製できる。
【0054】
別の好ましい特徴点によれば、外因性酵素はペルオキシダーゼであり、共基質は過酸化水素である。ペルオキシダーゼはSigma社のような市場の供給者から得ることができ、または適切な植物材料から抽出して精製できる。更に好ましい特徴点によれば、前記ペルオキシダーゼの量は、前記茶の供給材料中の可溶性固形分の乾燥重量のグラム当たり1.5×10から1.5×10、より好ましくは3.5×10から1.5×10、最も好ましくは7.5×10から7.5×10ユニットである。
【0055】
前記過酸化水素の量は、前記茶の供給材料中の可溶性固形分の乾燥重量のグラム当たり7から700mg、より好ましくは15から300mg、最も好ましくは35から100mgであることが好ましい。
【0056】
好ましい特徴点によれば、茶の供給材料は緑茶またはインスタント茶であり、前記方法は、
(a)茶の供給材料に対して可溶性固形分のグラム当たり17から500グラムの水を添加し、スラリーを調製する工程;
(b)添加した外因性エピカテキンの存在下で外因性酵素と共基質を添加することにより前記スラリーを酵素的発酵に供し、テアフラビン富化スラリーを得る工程
を含む。
【0057】
上述の方法は好ましくは、工程(b)の酵素的発酵の前または最中に、茶の供給材料をタンナーゼで処理する工程を含む。
【0058】
テアフラビン富化スラリーは好ましくは乾かされ、5(重量)%未満に含水量を減少し、テアフラビン富化紅茶を得ることができる。別の好ましい特徴点では、不溶性固形分をテアフラビン富化スラリーから分離し、テアフラビン富化溶液を得る。テアフラビン富化溶液は好ましくは乾かし、テアフラビン富化茶製品を得て、それを例えば紅茶、緑茶、ウーロン茶、またはインスタント茶に添加しても良い。別の好ましい特徴点によれば、テアフラビン富化溶液を紅茶に重ねて乾かし、テアフラビン富化紅茶を得ることができる。
【0059】
別の好ましい特徴点によれば、上述の方法で得られたテアフラビン富化スラリーを紅茶に重ねて、テアフラビン富化紅茶を得る。
【0060】
別の好ましい特徴点によれば、テアフラビン富化スラリーをインスタント茶に重ねて、テアフラビン富化インスタント茶を得る。
【実施例】
【0061】
本発明は、特定の実施例を参考にして記載されるであろう。以下の実施例は説明の目的のみによって提供され、いずれの態様でも本発明の範囲を制限するものではない。
【0062】
材料と方法
表1は、実施例で使用される材料のリストを提供する。
【0063】
【表1】

【0064】
テアフラビンの分析方法
テアフラビンの抽出
全テアフラビン濃度は、水性メタノール性抽出を使用して測定された。
【0065】
固体状態の発酵から得られたサンプルを、新鮮な重量基準で16.7:1のドゥール比に高水性メタノール性溶液で〜80℃で10分間の70%メタノール抽出を使用して抽出した。抽出物のサンプルを、90%v/vの水、10%v/vのアセトニトリル、0.5g/Lのアスコルビン酸、及び0.5g/Lのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む溶液を使用して1:1に希釈し、テアフラビンとカテキンの酸化を防止した。
【0066】
スラリー発酵システムについては、水性スラリーに対して100%メタノールの必要量を添加することによりこの抽出物を調製し、70%メタノールと30%水の組成物を得た。添加したメタノールの量は、存在する水の体積の2.33倍であり、それ故、新鮮な重量基準で16.7:1または乾燥重量基準で〜55.7:1のドゥール比に水性メタノール性溶液で抽出を実施した。 ドゥールに対する70%のメタノールのこの高い比で、テアフラビンの定量的抽出は、10分の抽出時間で〜80℃で得られる。
【0067】
テアフラビンの分析
サンプルを−80℃で貯蔵し、ダイオードアレイ検出を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用してテアフラビンを分析した。
【0068】
テアフラビンを、380nmでの検出、40℃のカラム温度、20μLの注入体積、及び1mL/分の流速でHPLC(Shimadzu)によって分析した。テアフラビン分析の移動相は、水中に2%(v/v)の酢酸(移動相A)及びアセトニトリル(移動相B)であった。50分に亘り8%のBから69%のBへの勾配を使用してテアフラビンを分離し、次いでカラムを8%のバッファーAで5分間平衡化した。市販品の高純度テアフラビンを定量のためのスタンダードとして使用した。
【0069】
固体状態の発酵
固体状態の発酵は、大気に曝露した平坦な表面に5gのドゥールを広げることにより、室温(〜25℃)で実施した。発酵時間は90−120分であった。固体状態の発酵をタンナーゼで実施する場合、タンナーゼの投与量は茶の供給材料中の可溶性固形分のグラム当たり1.67mgであった。エピカテキン、またはエピカテキンとタンナーゼの必要量を含む水を、1.7:1(可溶性固形分基準)の比でドゥールに添加した。
【0070】
固体状態の発酵で添加されるエピカテキンとタンナーゼの量は、各種の実施例について表2に示されている。
【0071】
【表2】

【0072】
実施例1〜7は本発明に係る方法の実施例であり、比較例A、B1及びB2は本発明の範囲外のものである。
【0073】
スラリー発酵
スラリー発酵は、30℃で190−200rpmでの軌道シェイカーを使用してシェイクフラスコで実施された。5g(新鮮な重量)のドゥールを、41.7:1(または新鮮な重量基準で5:1)の可溶性固形分比で水を使用して発酵実験のために使用した。エピカテキンの必要量を、発酵前にスラリーに添加した。発酵時間は90分であった。スラリー発酵を添加したタンナーゼ(グラム当たり50000タンナーゼ活性ユニットの活性、例えばKikkoman)で実施する際に、1g/lのストック溶液を使用してタンナーゼを可溶性固形分基準で0.83mg/gで投与した。
【0074】
スラリー発酵で添加されたエピカテキンとタンナーゼの量が、各種の実施例について表3に示されている。
【0075】
【表3】

【0076】
実施例8−15は本発明に係る方法の実施例であり、比較例C、D1及びD2は本発明の範囲外である。
【0077】
結果
全テアフラビンを全ての実施例の茶製品について分析し、その結果が固体状態の発酵について表4に、スラリー発酵について表5に示されている。
【0078】
【表4】

【0079】
外因性エピカテキンの存在下での酵素的発酵の工程を含む方法によって調製された実施例1〜4の茶製品は、比較例Aの茶製品と比較して富化した濃度のテアフラビンを有することが上記結果から明らかである。
【0080】
同様に、外因性エピカテキンとタンナーゼの存在下での酵素的発酵の工程を含む方法によって調製された実施例5〜8の茶製品は、比較例B1及びB2の茶製品と比較して富化した濃度のテアフラビンを有する。
【0081】
【表5】

【0082】
外因性エピカテキンと外的に添加した水の存在下での酵素的発酵の工程を含む方法によって調製された実施例8〜11の茶製品は、比較例Cの茶製品と比較して富化した濃度のテアフラビンを有することが上記結果から明らかである。
【0083】
同様に、外因性エピカテキン、タンナーゼ、及び外的に添加した水の存在下での酵素的発酵の工程を含む方法によって調製された実施例12〜15の茶製品は、比較例D1及びD2の茶製品と比較して富化した濃度のテアフラビンを有する。
【0084】
更に、テアフラビン濃度は、ドゥールの乾燥重量当たり約300mg/gまでのエピカテキンのエピカテキン濃度の増大で増大することが全ての上記実施例から明らかである。ドゥールの乾燥重量当たり約500mg/gへのエピカテキン濃度の更なる増大では、テアフラビン濃度は一定または減少するという傾向が示されている。それ故、ドゥールの乾燥重量のグラム当たり750mgを超える濃度でのエピカテキンの取り込みは、テアフラビンの更なる富化を与えたり経済的に実用的であることはなさそうである。
【0085】
かくして本発明によれば、タンナーゼの存在下または非存在下のいずれかで、外因性エピカテキンの存在下での酵素的発酵を実施することによる、固体状態の発酵並びにスラリー発酵を使用するテアフラビン富化茶製品の調製が可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
添加した外因性エピカテキンの存在下で茶の供給材料を酵素的発酵に供する工程を含む、テアフラビン富化茶製品の調製方法。
【請求項2】
前記エピカテキンの量が、前記茶の供給材料中の可溶性固形分の乾燥重量のグラム当たり35から750mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記発酵の前または最中に前記茶の供給材料をタンナーゼで処理する工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記タンナーゼの量が、前記可溶性固形分の乾燥重量のグラム当たり0.08から8mgである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記発酵が添加した水の存在下で実施される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水の量が、前記茶の供給材料中の可溶性固形分の乾燥重量のグラム当たり0.1から500グラムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記茶の供給材料が前記酵素的発酵が可能な内因性酵素を含む茶葉であり、
(a)前記茶葉を干す工程;
(b)干した葉を浸漬する工程;
(c)添加した外因性エピカテキンの存在下で浸漬した茶葉を酵素的発酵に供する工程;及び
(d)焙煎してテアフラビン富化紅茶を得る工程
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記茶の供給材料が酵素的発酵が可能な内因性酵素を含む茶葉であり、
(a)前記茶葉を干す工程;
(b)干した茶葉を浸漬し、浸漬した茶葉に可溶性固形分のグラム当たり17から500グラムの水を添加し、スラリーを調製する工程;
(c)添加した外因性エピカテキンの存在下で前記スラリーを酵素的発酵に供し、テアフラビン富化スラリーを得る工程
を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記発酵が外因性酵素と共基質とを添加することによって実施される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記茶の供給材料が実質的に不活性化した内因性酵素を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記外因性酵素がポリフェノールオキシダーゼであり、前記共基質が酸素である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記外因性酵素がペルオキシダーゼであり、前記共基質が過酸化水素である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
茶の供給材料が緑茶またはインスタント茶であり、
(a)茶の供給材料に対して可溶性固形分のグラム当たり17から500グラムの水を添加し、スラリーを調製する工程;
(b)添加した外因性エピカテキンの存在下で外因性酵素と共基質を添加することにより前記スラリーを酵素的発酵に供し、テアフラビン富化スラリーを得る工程
を含む、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記茶の供給材料中のテアフラビン類に対する全カテキンの重量比が10より大きい、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記茶の供給材料が、可溶性固形分の乾燥重量のグラム当たり10mg以下のテアフラビン類を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−510786(P2010−510786A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538677(P2009−538677)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062373
【国際公開番号】WO2008/065006
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】