説明

テクトリゲニンのイソフラボン誘導体、その調製、および有効成分としてこれを含む抗ウィルス剤

【課題】テクトリゲニンのイソフラボン誘導体、その調製、および有効成分としてこれを含む抗ウィルス剤
【解決手段】 本発明は、下記の式(II)で示されるようなテクトリゲニン化合物のイソフラボン誘導体、その調整方法、および有効成分としてこれを含む抗ウィルス剤に関する。化合物の構造を下記に示す。
【化1】


(式中、R1はH,NH2またはSO3Mであり、R2はOR’であり、R3はHまたは−CH2NR’’(R’はH,−CH2COONaまたは−CH2CH2NMe2であり、NR’’はピペリジノ基または−NMe2であり、MはH,Na,KまたはN+H(CH2CH2OH)3である))

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テクトリゲニン化合物の誘導体に関し、より詳細には、5,7,4’−トリヒドロキシ−6−メトキシイソフラボンの化学名を有するテクトリゲニン化合物誘導体に関する。本発明は、本発明の化合物の調製方法にも関する。本発明は、有効成分として本発明の化合物を含む抗ウィルス剤にも関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザや他の多くのウィルス感染によって引き起こされる上気道感染およびウィルス性肺炎などの疾病は、死に至らしめることさえある、一般的かつよくみられる病気である。このような気道感染症の治療には主として化学治療法が用いられている。しかしながら、薬剤耐性細菌株および薬剤耐性ウィルス株の増殖速度が、化学抗生剤の開発速度を超えてしまうということが無視できない問題となってきている。この分野においては、天然の漢方薬の利点を最大限活用すること、特に、天然の薬品から有効な薬学的成分を抽出および分離すること、および/またはそれらに基づいた新しい薬学的化合物の開発または改変を行うことが益々注目されている。
【0003】
Sun Yuanbietら(Bulletin of the tranditional Chinese medicine 1984,9(5))、Cheng Fangqun(Science of Chinese traditional and herbal drugs 1990,22(2))、Xu Yunlong(Plant research in Yunnan 1999,21(1))、Ji Wenliangら(Overseas medicineplant medicine part 2000,15(2)およびChinese medical crop 2000,23(8))などの多くの研究報告や文献に報告されているように、式(I)で示されるテクトリゲニン化合物は、伝統的な漢方薬、すなわち、イチハツ(Iris tectorium Maxim)、ヒオウギ(Belamcanda Chinensis(L.)DC)、野鳶尾(Iris dichotoma pall.)、シャガ(Iris japonica)およびイチハツ(Iris tectorum)のような抗ウィルス性、抗菌性、および抗炎症性機能を有したアヤメ科植物中に広く存在する多くのフラボン化合物成分のなかのひとつのイソフラボンである。
【0004】
【化1】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような多くの文献中の研究結果には、伝統的な漢方薬であるイチハツ(Iris tectorum Maxim)中に含まれるイソフラボン成分が、明白な抗ウィルスおよび抗炎症機能を有していることが示されている。テクトリジンは、イチハツ中の主たる有効成分(含有量約5%)である。その文献報告と薬物動態研究とから、さらに強い抗ウィルスおよび抗炎症機能を有することが示されている。上記の式(I)に示すようなテクトリゲニンの文献および薬物動態研究から、テクトリゲニンは、テクトリジンの加水分解産物と同様のより強い抗ウィルスおよび抗炎症機能を有していることが実証されている。しかしながら、テクトリジンとテクトリゲニンのいずれも水溶性が小さく、その臨床的用途が限定されるため、それらの水溶性を改善し高めることが最初に解決すべき問題となっている。実験結果からは、テクトリジンおよびテクトリゲニンに対して、それらの薬学的有効性を維持もしくは向上しながらも、水溶性を高め、治療効果を強化し、それらの応用可能な医薬剤範囲を広げるためには、調製手順のなかで水溶性を高めることは理想的ではなく、テクトリジンおよびテクトリゲニンの化学的修飾によりそれらの化学構造を変えることだけが実現可能な手段であることが分かっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記式(I)において示されるテクトリゲニン化合物に基づく化学的修飾によって得られる一連の誘導体を提供し、本発明の化合物は、テクトリゲニンの元の抗菌性、抗ウィルス性、抗炎症性、および解熱および鎮痛効果を少なくとも維持しつつも、その水溶性を大幅に改善し、向上させることができる。したがって、本発明は、テクトリゲニン化合物の薬学および臨床用途範囲を広げるのに非常に有利である。
【0007】
さらに、本発明は、本発明の化合物を有効成分として含む抗ウィルス薬を提供し、特に、本発明の化合物を含有する注射用調合薬剤を提供する。
【0008】
本発明のテクトリゲニン誘導体、すなわち、5,7,4’−トリヒドロキシ−6−メトキシイソフラボン誘導体の化学名をもつものを式(II)に示す。
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、R1はH,NH2またはSO3Mであり
2はOR’であり、
3はHまたは−CH2NR’’であり、
R’はH,−CH2COONaまたは−CH2CH2NMe2であり、
NR’’はピペリジノ基または−NMe2であり、
MはH,Na,KまたはN+H(CH2CH2OH)3である)。
【0011】
上記一般式(II)で示される化合物のうちの典型的な化合物は、R1がSO3M’’(式中、M’’はH,Na,Kまたは−N+H(CH2CH2OH)3でありうる)であり、その構造が式(III)に示されるスルホン酸化合物である。
【0012】
【化3】

【0013】
上記一般式(III)で示される化合物のうちの典型的な化合物は、すなわち、SO3M’’のM’’はH,NaまたはKであり、その構造が式(IV)に示されるスルホン酸またはスルホネート化合物である。
【0014】
【化4】

【0015】
上記一般式(III)に示す化合物における別の典型的な化合物は、そのスルホン酸基R1が−SO3-+H(CH2CH2OH)3であり、その構造が式(V)に示されるものである。
【0016】
【化5】

【0017】
本発明でいう一般式(II)は、R1がNH2であり、R2がOHであり、R3がHであり、その構造が式(VI)に示される典型的な化合物をも含んでいる。
【0018】
【化6】

【0019】
本発明における一般式(II)に記載する他の典型的な化合物は、R1がHであり、R2が−OCH2COONaであり、R3がHであり、その構造が式(VII)に示されるものである。
【0020】
【化7】

【0021】
さらに、本発明における一般式(II)に記載する他の典型的な化合物は、式(II)におけるその構造において、R1およびR3がHであり、R2がOCH2CH2NMe2であり、その構造が式(VIII)で示される。
【0022】
【化8】

【0023】
さらに、本発明における一般式(II)に記載する他の典型的な化合物は、式(II)におけるその構造において、R1がHであり、R2がOHであり、R3が−CH2NR’’(式中、NR’’は、ピペリジノ基である)であるものであり、その構造が式(IX)で示される。
【0024】
【化9】

【0025】
さらに、本発明における一般式(II)に記載する他の典型的な化合物は、式(II)におけるその構造において、R1がHであり、R2がOHであり、R3が−CH2NMe2であり、その構造が式(X)で示される。
【0026】
【化10】

【0027】
上記すべての典型的な化合物のうち、式(VI),(VIII),(IX)および(X)に示す化合物は、薬学的に許容される塩化合物、たとえば、最も一般的に用いられている対応する塩酸塩化合物であってもよい。
【0028】
式(I)に示すテクトリゲニンのイソフラボン化合物を原料として、種々の具体的な置換基および/または置換位置に対応する本発明における上記式(II)に示すあらゆる化合物を、既知のものと同様の置換化合物調製の原理および方法を用いて作成することができる。
【0029】
たとえば、本発明の化学修飾のための原料として用いる前駆化合物、すなわち、上記式(I)に示すテクトリゲニンイソフラボン化合物は、アヤメ科の多くの上記植物から、これまでに報告されたように抽出および分離することによって、より好都合かつ容易に得ることができるが、de novo合成によって製造してもよい。たとえば、参考にできる抽出方法としては次のものがある。
【0030】
原薬効材料であるイチハツを乾燥させ、粉砕し、粗くスクリーニングし(メッシュ#20によって)、抽出機に入れ、70%エタノール(その重量は薬剤の4倍)によって加熱し、それぞれ3回再循環させ(各回1時間の持続時間)、熱いうちにろ過し、その濾液を回収する。減圧下でエタノールを回収すると、比重が1.2g/mL(50℃)の茶色のエキス状抽出物が、原薬効材料の49〜51(重量)%の収率で得られる。上記の抽出物に95%エタノールを添加した後、均一になるまで攪拌し、懸濁液を沈殿させてろ過し、濾液に再度95%エタノールを添加した後、均一になるまで攪拌し、濾液がほぼ無色になり、粗テクトリジンが得られるまで、この操作を2度繰り返す。70%エタノールを添加した後、加熱し、再循環し、放置して淡黄色の沈殿物を遊離させ、濾去する。70%エタノールによって再結晶させると、無色の結晶状粉末テクトリジンが、原薬効材料の4.5%の収率で得られる。
【0031】
200gのテクトリジンを丸底フラスコに入れ、2000mLの50%エタノールを加えた後に均一に攪拌し、均一に振盪し、200mLの濃塩酸を加えた後、2時間のあいだ加熱再循環させ、熱いうちにろ過し、放置すると、淡黄色の薄くて細い針状結晶が遊離する。これをろ過し、400mLの95%エタノール中に溶解し、800mLの沸騰水に注ぎ、冷却すると、淡黄色の薄くて細い針状結晶が遊離する。これをろ過した後、再度再結晶させ、60℃の減圧下で乾燥させると、120gの式(I)で示すテクトリゲニンの精製イソフラボン化合物(淡黄色の薄くて細い針状結晶)が得られが、この収率は薬物量の3%であり、その含量は98%を超える。
【0032】
式(III)に示す誘導体については、R1がSO3Hである置換生成物は、一般に、式(I)に示すイソフラボン化合物を硫酸を用いてスルホン化することによって得られる。その最適化方法の1つとしては、1.0gのテクトリゲニンをとり、4.0mlの濃硫酸を添加後、溶解するまで攪拌し、1.5〜2時間室温で反応させ、全反応工程を無水条件で行うことにより、M’’がHの式(III)に示す硫酸誘導体生成物が得られる。
【0033】
これを、NaClまたはKClなどの飽和生理食塩水によって処理すると、上記の式(IV)で示す対応するスルホン酸ナトリウムまたはスルホン酸カリウム化合物が得られる。その2段階合成ラインは以下のとおりである。
【0034】
【化11】

【0035】
上記式(V)に示すテクトリゲニン化合物の調製方法:式(I)に示すテクトリゲニンのイソフラボン化合物を原材料に用い、濃硫酸と混合し、40〜90℃(最適温度は60℃)で加熱攪拌し、冷却後、飽和塩化ナトリウム、他のアルカリ金属塩酸、臭化水素酸塩、または硝酸塩溶液中に注ぐと、3’−ナトリウムスルホネート中間生成物が得られる。これをエタノール溶液中に溶解し、これに強酸カチオン樹脂を加え、完全に溶解するまで室温で攪拌した後、トリエタノールアミンを加えて、溶媒を減圧下で蒸発させると、式(V)で示される化合物が得られる。この合成ラインは以下のとおりである。
【0036】
【化12】

【0037】
上記の式(VI)に示されるテクトリゲニン化合物の調製方法:式(I)に示すテクトリゲニンのイソフラボン化合物を原材料として、これを氷浴中で冷却しながら硝酸と濃硫酸の混合物と混合したエタノール溶液(すなわち(硝酸+硫酸)/エタノール))を滴下することにより、3’−ニトロ中間化合物が得られる。これをメタノールに溶解し、大気圧における水素触媒還元によって3’−アミノ置換化合物(VI)を得る。さらに、式(VI)で示す対応する塩化合物を、薬学的に許容される酸との反応によって得ることができる。この合成ラインは以下のとおりである。
【0038】
【化13】

【0039】
上記の式(VI)に示すテクトリゲニン化合物を調製する際には、式(I)で示されるテクトリゲニンのイソフラボン化合物を原材料とし、ブタノンとDMFの混合溶媒中にクロロ酢酸エチルとともに溶解し、これに無水K2CO3および触媒量のNaIを加え、混合物を攪拌し、再循環させ、室温まで冷却し、その不溶物質を濾去し、濾液を減圧下で濃縮し、残渣を適当量の水中に溶解し、酢酸エチルで抽出した後、水で洗浄し、乾燥したのち溶媒を減圧下で濃縮し、フラッシュカラム分離によって4’−エステル−エーテル中間生成物を得る。これをメタノールに溶解し、攪拌しながらNaOHの水溶液を滴下して、常温にて完全に加水分解した後、pH値を酸によってpH3〜4に調整し、減圧下でメタノールを蒸発させることによって凝縮沈殿を得る。水洗後、NaHCO3と反応させることにより化合物(VII)(ナトリウム塩)が得られる。この合成ラインは以下のとおりである。
【0040】
【化14】

【0041】
上記の式(VIII)に示されるようなテクトリゲニン化合物を調製するために、β−ジメチルアミノエタノールをまず最初にジクロロスルホキシド中に滴下し、0℃で激しく攪拌し、滴下後、混合物を35〜50℃で攪拌し、反応させ、無水エタノールを用いて再結晶させて、中間生成物であるβ−ジメチルアミノクロライドハイドロクロライドAを得る。式(I)に示すテクトリゲニンのイソフラボン化合物を原材料とし、ブタノン、アセトン、DMF、THFまたはジオキサンなどの溶媒中に溶解し、これに、無水K2CO3またはNa2CO3、DMFおよび触媒量のNaIを加え、これを加熱再循環させ、上記中間生成物Aを半時間ごとに5回に分けて加えるようにしてもよい。これを約80℃で再循環させ、薄い積層を用いてチェックし、冷却後ろ過し、ロータリーエバポレータ中、減圧下において濾液を濃縮することにより粘着物が得られ、適当な量の水(約10重量倍量の水)によって希釈した後に酢酸エチルで抽出し、水洗後、この抽出物を乾燥させ、溶媒を蒸発させて、化合物(VIII)を得る。薬学的に許容される酸との反応によって、対応する塩化合物をさらに得ることができる。合成ラインは以下のとおりである。
【0042】
【化15】

【0043】
上記式(IX)で示されるテクトリゲニン化合物の調製方法:式(I)で示されるテクトリゲニンのイソフラボン化合物を原材料として用いて、37(重量)%のホルムアルデヒド溶液、ピペリジン、および、ジオキサン、THF、メタノールまたはエタノールなどの溶媒のうちの1つと混合し、反応物を再循環させた後にこれを冷却してろ過することにより、化合物(IX)を得る。さらに、式(III)に示すような対応する塩化合物を、薬学的に許容される酸との反応によって得ることができる。合成ラインは以下のとおりである。
【0044】
【化16】

【0045】
実験結果から、反応生成物を完全に達成するための上記反応の化学構造の環A上における位置選択性は非常に特異的であり、文献中に報告され、以前に設計された位置(環C上)とは異なることが分かる。このように、本発明は、テクトリゲニンイソフラボンを化学構造の環A上で選択的に誘導体を得るための方法を提供し、その構造改造が活性に与える影響を全面的に調べるのに好ましい。しかしながら、誘導化は他の反応においては殆どが環C上で行われる。上記式(X)に示されるようなテクトリゲニン化合物は、この原理に基づいた同様の方法を用いることによって得ることができる。たとえば、式(I)に示されるテクトリゲニンのイソフラボン化合物を原料として使用し、37(重量)%のホルムアルデヒド溶液、ジメチルアミノハイドロクロライド、および、ジオキサン、THF、メタノールまたはエタノールなどの溶媒のうちの1つと混合し、反応物を再循環させた後に冷却し、ろ過して残渣を回収することにより、化合物(X)を得る。さらに、式(III)に示されるような対応する塩化合物を、薬学的に許容される酸との反応によって得ることができる。合成ラインは以下のとおりである。
【0046】
【化17】

【0047】
抗ウィルス機能を有する対応する薬学的組成物は、有効医薬成分としての有効用量の上記式(II)に示されるテクトリゲニン化合物の誘導体と、薬学的に許容される副材料成分とから、現行の従来的調製方法によって製造することができる。これら上記の抗ウィルス組成物について、上記の塩化合物は、抗ウィルス機能を有する注射型薬剤を調製するのに特に適しているが、これは、経口剤が普通に得られること以外に、前記塩化合物が十分な水溶性を有することができるからである。たとえば、上記典型的な化合物との比較試験は、中国薬局方第2巻、2000年版の10頁に掲載されている例のなかの溶解度試験法にしたがって以下のように行う。細かく粉砕した粉末試験試料をとり、25℃±2℃の一定量の溶媒に加え、混合物を30分間にわたって5分おきに激しく振盪し、薬局方に記された様々な溶液特性定義に従った試験を行う。得られる結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1の結果は、多くの容易に加塩されるおよび/または親水性の基を導入することで、本発明の様々な構造形態のテクトリゲニン誘導体の化学的に修飾されたイソフラボン化合物(II)の溶解性が、大幅に高まること、また、これがその薬学的および臨床的用途にとって、およびin vivoにおける吸着および生物利用性にとっても好ましいことを示すものである。
【0050】
注射剤中での上記式(II)に示されるテクトリゲニン化合物誘導体の溶液安定性をさらに保証し、高めるために、注射製剤において許容される可溶化成分を、上記注射型製剤を製造する際にこれに基づいて許容量で用いることもできる。対照用に用いることができ、試験結果によって有効であることが証明されている有益な最適方法のひとつは、可溶化剤として、グルコースを、全注射量に対して2〜15%の重量/体積比で前記注射型製剤に添加して、グルコース中のポリヒドロキシと式(II)に示されるイソフラボンとの構造的会合により水素結合を形成させることにより、その水中溶解性を大きくすることである。
【0051】
上記式(IV)に示されるテクトリゲニンスルホン酸ナトリウムを例にとると、水溶性は室温で20mg/mL(2%)であり、薬剤濃度に達することができなかったが、この水溶性は、60〜100℃に加熱すると50〜60mg/mLまで高めることができ、室温まで冷却すると沈殿が遊離する。しかしながら、水または随意で糖食塩水で希釈した場合、室温および低(0℃〜5℃)温度において透明に維持することができ、注射剤に4%グルコースを加えた後でも濁ることはなかった。したがって、糖および/または食塩水中に加えた場合には、筋肉内注射だけでなく静脈注射にも使用することができる。このことは、グルコースが、上記式(IV)に示されるテクトリゲニンスルホン酸ナトリウムの水溶性を高めつつ、注射用薬学的製剤の安定性を大幅に高めることができることを実証するものである。
【0052】
たとえば、有効な薬学的成分として上記テクトリゲニンのイソフラボン誘導体(II)を含有する注射製剤の調製の方法の一例として、5〜80(重量)部のテクトリゲニン誘導体(II)と、20〜150(重量)部の注射用グルコースとを、700〜800(重量)部の注射用水に溶解し、完全溶解後に注射用水を加えて、全体積を1000(重量)部とする。G4焼結ガラス漏斗によってろ過し、従来の包装および滅菌を行うと、2〜15%グルコースと、5〜80mg/mLの有効な薬学的成分(すなわち、化合物(II))とを含む淡黄色透明液体注射剤が得られる。
【0053】
本発明を以下の具体例のなかでより詳細に説明する。しかしながら、本発明の主題が以下の例だけに限定されるとは理解すべきでない。当該分野における技術的常識および従来の手段による様々な置換および変更はすべて、本発明における上記技術的着想から逸脱しない限りにおいて、本発明範囲に包含される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
【実施例1】
【0055】
化合物(IV)の調製
120gの式(II)に示されるテクトリゲニンと、480mLの濃硫酸とを混合し、完全に溶解するまで攪拌し、1.5時間静置して反応させる。その後、この反応液を5000mLの飽和塩化ナトリウム中に攪拌しながらゆっくりと注いで、相当量の白色沈殿物を遊離させ、ろ過する。3000mLの水を沈殿に加え、これらを水浴中で沈殿が完全に溶解するまで加熱し、熱いうちにろ過し、結晶遊離およびろ過によって黄色の平らな結晶を得る。1000mLの水を結晶に加え、結晶が完全に溶解するまで混合物を水浴中で加熱し、熱いうちにろ過し、結晶を遊離させてろ過する。沈殿を減圧下、60℃で乾燥させると、150gの式(VI)に示されるテクトリゲニンの精製スルホン酸ナトリウム生成物が得られる。これは淡黄色の薄くて細長い結晶であり、その含量は98%を超える。
【0056】
得られる式(VI)に示されるテクトリゲニンのスルホン酸ナトリウム生成物のスペクトルデータは以下のとおりである。
IR(KBr圧縮錠、cm-1):3465(s),1654(s),1622(s),1575(s),1494,1465(s),1436,1367,1340,1278,1165(s),1095(s),1070,1031(s),993,833,815,767,731,667,632,567,543,509,459;
1H NMR(D2Oが溶媒、TMS内部標準、δHppm):7.88(s,1H),7.74(s,1H),7.25(d,1H),6.94(d,1H),6.21(s,1H),3.70(s,3H)
【実施例2】
【0057】
化合物(V)の調製
300g(1.0ミリモル)のテクトリゲニンイソフラボン(I)(以下、単に原料とよぶ)を5mLの濃硫酸と混合し、混合物を60℃で3時間加熱攪拌し、冷却し、20mLの飽和塩化ナトリウム溶液中に注ぐ。これを静置してろ過し、得られる固体物質を5%の塩化ナトリウム溶液を用いて再結晶すると、淡黄色の結晶で283mgの中間生成物が得られる。この収率は70%である。
【0058】
150mg(0.294ミリモル)の上記中間生成物を5mLのエタノールに懸濁し、これに前処理した強酸カチオン樹脂を過剰に加え、混合物を室温で1時間攪拌し、懸濁固体物質を完全に溶解する。混合物をろ過し、樹脂をアセトンで洗浄する。濾液に55mgのトリエタノールアミンを加え、溶媒を減圧下で蒸発させる。ジクロロメタンおよびアセトンを加えることにより、粉末固体物質の化合物(V)が得られ、この収率は90%であり、融点は155〜159℃である。水中での溶解性は50mg/mLを超える。
【0059】
1H NMR(400MHz,D2O)δ:7.92(s,1H),7.78(s,1H),7.32(d,J=7.2Hz,1H),7.00(d,J=8.0Hz,1H),6.27(s,1H),3.96(t,J=5.2Hz,6H),3.74(s,3H),3.47(t,J=5.2Hz,6H)
13C NMR(100MHz,D2O)δ:182.4,159.0,156.5,155.7,155.0,154.1,135.8,133.2,130.3,124.1,123.2,119.6,106.9,96.9,62.8,57.8,57.5
IR cm-1(KBr):3356(OH,NH),3151,1655(C=O),1612,144,1291,1168,1090
ESI MS:379.1[M−NH(CH2CH2OH)3-
元素分析:C2227NO12S(%):C49.84,H5.22,N2.71;計算値:C49.90,H5.14,N2.65
【実施例3】
【0060】
化合物(VI)の調製
300mg(1.0ミリモル)のテクトリゲニンイソフラボン(I)(以後、単に原料とよぶ)を5mLエタノールに溶解し、エタノール溶液(3mL)を210mg(68%)の硝酸と混合し、これに氷浴中で冷却しながら500mgの濃硫酸を滴下し、混合物を24時間のあいだ攪拌する。ろ過後、170mgの窒化化合物が得られ、その収率は49%である。
【0061】
融点:>200℃
ESI MS:346.1(M+1)+;344.1(M−1)-
【0062】
150mgの上記ニトロ化合物を4mLのメタノールに溶解し、これに30mgの10%Pd/Cを加え、化合物を大気圧において完全に水素化(5時間)する。ろ過、および減圧下におけるメタノール除去の後、生成物を5mLの酢酸エチル中に溶解し、これに酢酸エチルHCl溶液を酸性(pH=2〜3)になるまで加える。ろ過すると、式(VI)に示されるような塩酸塩生成物が得られ、その収率は80%であり、融点は250℃を超える。水中の溶解度は1mg/mLを超える。
【0063】
関連構造試験データ
1H NMR(400MHz,DMSO)δ:12.94(s,1H),10.78(br.s,1H),10.58(br.s,1H),8.34(s,1H),7.48(s,1H),7.25(d,J=8.4Hz,1H),7.03(d,J=8.4Hz,1H),6.55(s,1H),3.76(s,3H)
13C NMR(100MHz,DMSO)δ:180.5,157.9,154.7,153.4,152.9,150.4,131.7,128.0,123.6,122.0,121.6,121.2,116.0,105.0,94.2,60.2
IR cm-1(KBr):3421(OH,NH),3079,1645(C=O),1619,1518,1474,1284
ESI MS:316.1(M+1)+;314.1(M−1)-
元素分析:C1614ClNO6(%):C54.35,H4.15,N4.35;計算値:54.63,H4.01,N3.98
【実施例4】
【0064】
化合物(VII)の調製
300mg(1ミリモル)の原料と、135mg(1.1ミリモル)のクロロ酢酸エチルと、8mlのブタノンと、少量の5(体積)%のDMFを混合し、これに207.3mg(1.5ミリモル)の無水K2CO3と触媒量(約5モル%)のNaIを加え、混合物を攪拌しながら再循環させる。これを室温まで冷却し、不溶物を濾去し、濾液を減圧下で濃縮し、残渣を適当量の水に溶解し、酢酸エチルで抽出し、2回水で洗浄し、乾燥させ、溶媒を減圧下で濃縮し、迅速クロマトグラフィーカラムによって分離すると、淡黄色中間生成物が得られ、その収率は39.3%であり、融点は164〜167℃である。
【0065】
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:12.85(s,1H),7.89(s,1H),7.36(d,J=8.4Hz,2H),6.86(d,J=8.4Hz,2H),6.35(s,1H),5.51(s,1H),4.81(s,2H),4.31(q,J=7.2Hz,2H),3.98s,3H),1.33(t,J=7.2Hz,3H)
ESI MS:387.2(M+1)+
【0066】
125mg(0.32ミリモル)の中間生成物を4mLメタノールに溶解し、64.8mg(1.6ミリモル)NaOHを水溶液(1ミリモル/mL)に調合し、これを上記メタノール溶液に攪拌しながら滴下し、完全に加水分解するまで常温で24時間反応させ、溶液pHを希塩酸によってpH3〜4に調整し、メタノールを減圧下で蒸発させ、生成した白色綿状沈殿を酢酸エチルに溶解し、水洗し、乾燥させ、濃縮し、NaHCO3と反応させて、式(VII)に示されるナトリウム塩を製造する。この収率は80%であり、融点は250℃を超える。水中での溶解度は2mg/mLより高い。
【0067】
1H NMR(400MHz,DMSO)δ:9.24(s,1H),10.58(br.s,1H),8.32(s,1H),7.24(d,J=8.4Hz,2H),6.72(d,J=8.4Hz,2H),6.47(s,1H),4.38(s,2H),3.78(s,3H)
13C NMR(50MHz,DMSO)δ:180.7,170.3,158.9,158.2,154.2,152.9,152.6,132.2,130.0,122.3,120.7,115.4,105.5,92.2,68.5,60.1
IR cm-1(KBr):3420(OH),1655(C=O),1614,1422,1290,1176
ESI MS:359.1(M−Na+2)+,357.0(M−Na)-
元素分析:C1813NaO8(%):C56.82,H3.32;計算値:C56.85,H3.45
【実施例5】
【0068】
化合物(VIII)の調製
14.5mL(0.12ミリモル)のジクロロスルホキシドを乾燥丸底フラスコに入れ、これを氷浴上でβ−ジメチルアミノエタノールを滴下漏斗を用いて滴下し、溶液を激しく攪拌する。添加後、35〜50℃において1時間撹拌し、50mLの無水エタノールの添加による再結晶により、茶色の粘着物が得られ、β−ジメチルアミノクロライド塩酸塩中間生成物が得られる。これを適当量の無水エタノールとエチルエーテルで洗浄し、密閉状態で保存する。
【0069】
150mg(0.5ミリモル)の原料を15mLのブタノンに溶解し、3214mg(1.55ミリモル)の無水K2CO3、0.5mLのDMFおよび触媒量(約5モル%)のNaClを添加し、混合物を加熱して再循環させ、115.3mg(0.8ミリモル)の上記中間生成物を混合物中に回分式で(半時間毎に5回に分けて)添加し、後者を約80℃で48時間再循環させ、冷却し、不溶物質を濾去し、濾液を減圧下においてロータリ・エバポレータ中で乾燥するまで濃縮して、粘着物を得る。これをエチルアセトンによって抽出し、水洗し、乾燥させ、適当量(10重量倍)の水によって希釈した後に濃縮すると、黄色の固体生成化合物(VIII)が得られる。この収率は46.5%である。塩酸塩は、従来の方法を用いて製造する。その融点は190℃(軟化)および235℃(分解)である。水中の溶解度は2mg/mLを超える。
【0070】
1H NMR(400MHz,DMSO)δ:12.98(s,1H),10.57(br.s,1H),9.69(s,1H),8.49(s,1H),7.41(d,J=8.4Hz,2H),6.94(s,1H),6.84(d,J=8.1Hz,2H),4.54(t,J=5.2Hz,2H),3.78(s,3H),3.58(t,J=4.8Hz,2H),2.89(s,6H)
13C NMR(50MHz,DMSO)δ:180.9,157.8,157.2,157.0,154.8,153.0,132.2,130.3,122.4,121.1,115.4,106.5,92.4,64.4,60.5,55.2,43.2
IR cm-1(KBr):3418(OH,NH),1656(C=O),1614,1515,1460,1272
ESI MS:372.1(M+1)+
元素分析:C2022ClNO6(%):C58.85,H5.78,N3.64;計算値:C58.90,H5.44,N3.43
【実施例6】
【0071】
化合物(IX)の調製
300mg(1.0ミリモル)の原材料、37(重量)%の内容量の81mg(1.0ミリモル)のホルムアルデヒド溶液、ピペリジン(2当量)および5mLのジオキサンを混合し、3時間再循環させる。冷却およびろ過後、淡黄色の固体生成物(IX)が得られる。対応する塩酸塩は、適当量の濃塩酸をこれに加えることにより得られ、その収率は90%である。融点は、245℃(分解)である。水中での溶解度は1mg/mL未満である。
【0072】
1H NMR(400MHz,DMSO)δ:13.43(s,1H),11.26(s,1H),10.03(br.s,1H),9.74(s,1H),8.42(s,1H),7.38(d,J=8.4Hz,2H),6.86(d,J=8.4Hz,2H),4.30(s,2H),3.82(s,3H),3.45−3.38(m,2H),2.97(m,2H),1.78−1.63(m,4H),1.38−1.36(m,1H),1.07−1.04(m,1H)
13C NMR(50MHz,DMSO)δ:181.0,157.9,157.1,154.3,152.4,131.1,130.2,122.1,120.9,115.4,105.0,95.5,80.5,56.2,52.1,48.2,22.4,21.2,18.8
IR cm-1(KBr):3197(OH,NH),2954,1652(C=O),1585,1515,1458,1374,1226
ESI MS:398.0(M+1)+;396.2(M−1)-
元素分析:C2224ClNO6(%):C60.50,H5.74,N3.54;計算値:C60.90,H5.58,N3.23
【実施例7】
【0073】
化合物(X)の調製
150mg(0.5ミリモル)の原料、37(重量)%の内容量の40.5mg(0.5ミリモル)のホルムアミド溶液、61.2mg(0.75ミリモル)の塩酸ジメチルアミンおよび2mLのジオキサンを混合し、70〜80℃で10時間再循環させる。冷却し、ろ過し、不溶物質を回収した後に、化合物(X)が得られる。生成物の塩酸塩は、酸(塩酸pH=2〜3)の条件下でエタノールによって再結晶させると得られ、その収率は38.7%である。融点は248℃(分解)である。水中での溶解性は2mg/mLを超える。この生成物の位置選択性は、上記化合物(VII)の場合と同様である。
【0074】
1H NMR(400MHz,DMSO)δ:13.40(s,1H),11.32(br.s,1H),10.23(br.s,1H),9.74(s,1H),8.40(s,1H),7.38(d,J=8.4Hz,2H),6.85(d,J=8.4Hz,2H),4.34(s,1H),3.81(s,3H),2.77(s,6H)
13C NMR(100MHz,DMSO)δ:181.0,157.9,156.9,154.3,154.2,152.3,131.1,130.2,122.2,120.9,115.4,105.0,95.9,60.6,48.6,42.3
IR cm-1(KBr):3145(OH,NH),1656(C=O),1577,1462,1379,1223
ESI MS:357.9(M+1)+;356.2(M−1)-
元素分析:C1920ClNO6(%):C57.99,H5.11,N3.85;計算値:C57.95,H5.12,N3.56
【実施例8】
【0075】
様々な剤形の製剤の調製
1.注射剤
全注射量に対して、2〜15%重量/体積比のグルコースを可溶化剤として加えることにより、水中での溶解性が飛躍的に高まる。これは、グルコース内のポリヒドロキシがイソフラボン基と会合することによって、水素結合が形成されるためである。
【0076】
テクトリゲニンスルホン酸ナトリウムを例にとると、その水溶性は室温において20mg/mL(2%)しかなく、製剤濃度に達することができないが、60〜100℃に加熱した後には、50〜60mg/mL(5〜6%)にまで高めることができ、室温まで冷却するとまた沈殿が遊離する。しかしながら、2〜15%のグルコースを注射剤に添加した後には、室温および低(0℃〜5℃)温度において透明に維持することができ、水または糖食塩水によって任意に希釈することができ、濁ることもない。したがって、糖および/または食塩水中に加えた場合には、筋肉内注射だけでなく静脈注射にも使用することができる。このことは、テクトリゲニンスルホン酸ナトリウムの水中での安定性がグルコースによって高められているときには、注射用薬学的製剤の安定性を大幅に高めることができることを実証するものである。
【0077】
100gのテクトリゲニンスルホン酸ナトリウムと、150gの注射用グルコースとを1500mLの注射用水に溶解し、それらを完全に溶解させた後、注射用水を加えて全体積を2000mLにする。G4焼結ガラス漏斗を用いてろ過した後に、濾液をアンプル瓶に充填し、従来の方法によって滅菌する。得られる注射剤は淡黄色の透明液体である。
【0078】
100gの式(V)に示される化合物と、100gの注射用グルコースとを1500mLの注射用水に溶解し、それらを完全に溶解させた後、注射用水を加えて全体積を2000mLにする。G4焼結ガラス漏斗を用いてろ過した後に、濾液をアンプル瓶に充填し、従来の方法によって滅菌する。得られる注射剤は淡黄色の透明液体である。
【0079】
100gのテクトリゲニンスルホン酸ナトリウムと、80gの注射用グルコースとを1500mLの注射用水に溶解し、それらを完全に溶解させた後、注射用水を加えて全体積を2000mLにする。G4焼結ガラス漏斗を用いてろ過した後に、濾液をアンプル瓶に充填し、従来の方法によって滅菌する。得られる注射剤は淡黄色の透明液体であり、その後、凍結乾燥器で15〜28時間凍結乾燥させる。このようにして、注射用の黄色のさらさらとした(loose)凍結乾燥粉末が得られる。
【0080】
2.経口製剤の調製
経口製剤には、錠剤、粉剤、顆粒剤、カプセル剤、丸薬、滴下剤、ミニピルおよび様々な溶液剤が含まれる。
【0081】
我々の合成するすべての誘導体が淡黄色および黄色固体であり、乾燥および微粉砕(すべての微粉末が篩#5を通過することができ、95%以上の粉末が篩#6を通過することができることを意味する)によって得られることから、粉末剤は固体経口製剤としての様々な剤形の基礎となる。粉末は、篩にかけ、流動性と充填性を高めるために、適当な量の滑石粉補助材料を加えて得られる。
【0082】
顆粒剤:薬剤と副材料を粉砕してよく混合した後、適当な粘着剤を加えてから顆粒化し、乾燥させ、顆粒分類を行い、充填する。
【0083】
カプセル製剤:カプセルはソフトカプセルとハードカプセルに分けられる。ハードカプセルは薬剤粉末または顆粒のカプセル包装によって製造され、ソフトカプセルは、球形または柔らかいカプセル材料のなかに薬剤溶液を充填することによって製造される。適当な材料、すなわち乾燥ゼラチンを、グリセリンと水の比が1:0.4になるようにグリセリンおよび水と均一に混合したものをソフトカプセルの壁として使用し、薬剤溶液のpH値を4.5〜7.5に調節し、メッシュ#80を通過する固体薬剤粉末から、滴下または圧縮プロセスによってソフトカプセルを製造することもできる。さらに、腸溶カプセルを製造することもできる。
【0084】
さらに、エチレンビニル酢酸コポリマー(EVA)やポリプロピレンなどの様々な副材料を選択し、使用して、常套的な調製手順にしたがって徐放および放出制御製剤のための骨格を作成するようにしてもよい。たとえば、テクトリゲニン誘導体製剤は、ミニカプセル化によって必要なだけ放出される製品にして、これを空の一般的なカプセルに充填するようにしてもよい。
【0085】
滴下剤またはミニピル:滴下剤の利点は効果が迅速であり、高い生物利用性があり、副作用が小さく、液体製剤から作成された固形剤の薬物摂取および移送に都合がよく、薬物安定性が向上し、製造装置が簡単であり、扱いが簡単であり、重量のずれが小さく、コストが低く、粉塵もなく、多くのタイプの滴下剤を経口投与、外用、徐放、制御放出または局所治療のために用いることができることにある。
【0086】
薬剤溶液は、ポリエチレングリコールやステアリン酸などの薬剤基質(基質は加熱)と均一に混合し、混合物を熱保護用の滴下剤機械に入れ、適当な縮合剤を入れた容器に滴下し、乾燥させ、縮合剤を洗浄除去した後に乾燥、分類し、品質を調整してから包装する。
【0087】
錠剤:
錠剤には、通常の圧縮錠、咀嚼錠、発泡錠、複合圧縮錠、徐放錠、放出制御錠、コートされた剤形(糖衣錠、フィルムコート錠および腸溶コート錠)、分散錠剤、および口腔および舌下錠などが含まれる。
【0088】
50gのテクトリゲニン誘導体と950gのデンプンおよび粉末にした糖を、上記原料と副材料を粉砕して篩にかけた後、均一に混合し、これに適当量の粘着剤を加えて柔らかい材料を形成し、これを篩にかけて、顆粒化し、乾燥させ、分類して、それらに錠剤分解物質および潤滑剤を加えた後に完全に混合し、圧縮し、コートし、品質を調整してから包装する。
【0089】
徐放および放出制御錠
50gのテクトリゲニン誘導体をポリエチレンまたはポリプロピレン骨格と均一に混合し、圧縮して、従来の調製方法にしたがって1000個の徐放錠を製造する。薬物はゆっくりと放出され、骨格は、薬物の放出後に排泄物とともに排出される。
【0090】
3.外用製剤の調製
外用製剤には、ローション剤、点眼剤、噴霧剤、眼軟膏剤、ゲル剤、坐薬、塗布剤、軟膏剤、点鼻剤、点耳剤、フィルム剤および経皮ステッカーなどが含まれる。
【0091】
眼軟膏剤:原料として誘導体を超微細な粉末(すべての粉末が篩#7を通過でき、篩#8を通過できる粉末を95%より多く含むことを意味する)に粉砕し、適当な基質を添加した後、眼用のゲルまたは眼軟膏剤にする。
【0092】
外用粉末の原料および副材料を非常に微細な粉末(すべての粉末が篩#6を通過でき、篩#7を通過できる粉末を95%より多く含むことを意味する)に粉砕する。外用粉末は、一般には、ウィルスを殺すため、またはウィルス感染を防止するために用いることができる。
【0093】
点眼剤:20gのテクトリゲニン誘導体を原料として点眼剤を製造するが、そのpHはリン酸バッファ溶液pH値調整剤をこれに加えることによって5.9〜8.0に調節し、浸透圧は、適当量のグルコース浸透圧調整剤を加えることにより、0.6〜1.5%塩化ナトリウムの浸透圧と同等に調節する。少量の粘度調整剤(ポリエチレングリコール)と980gの水を加えた後、溶液をろ過し、濾液を滅菌後無菌状態で瓶詰めする。
【0094】
噴霧剤、点鼻剤、および点耳剤の調製方法も同様であるが、それらの浸透圧およびpH値の要件はそれほど厳しくない。
【0095】
軟膏剤および塗布剤
40gのテクトリゲニン誘導体を非常に微細な粉末に粉砕し、960gの水溶性基質ポリオキシエチレングリコール600および2000(4:6比)に溶解し、加熱し、均一に混合し、品質調整を行った後、混合物を包装し、外用のための一定の密度を有する半固体の製剤を得ることができる。
【0096】
ゲル剤
40gのテクトリゲニン誘導体を粉砕し、水に溶解し、水溶性基質カルボポールをハイドロゲル基質にし、後者を薬物と混合し、水を加えて1000mLにし、品質調整と包装後に、透明または半透明のゲルを得ることができる。
【0097】
坐薬
40gのテクトリゲニン誘導体を非常に微細な粉末に粉砕し、960gの水溶性基質ポリオキシエチレングリコール600および18000(4:6比)に溶解し、加熱して均一に混合した後、混合物を液体パラフィンでコートした型に流し込み、冷却し、成形し、品質調整を行い、包装し、その要件に合う溶解時間制限を有する外用の固体製剤が得られる。
【0098】
フィルムコーティング剤
外用のフィルムコーティング製剤は、テクトリゲニン誘導体と高分子フィルミング材料であるポリエチレンホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒド縮合体(比4:96)の両方をエタノール中に溶解することによって得ることができる。
【0099】
経皮ステッカー
60gのテクトリゲニン誘導体をまず最初に微細に粉砕し、水に溶解し、水溶性ポリマーPVAまたはPVPを薬剤水溶液に混合し、水と均一に混合した後ゲルプールを形成し、後者の品質調整と用量調整を行い、同時に感圧性糊(アクリル樹脂酸)を裏張り材料(ポリプロピレン)上にコーティングすることにより、ビスコース層を得、層を薬剤プールよりも大きい面積に分割し、ゲルプールと組み合わせ、粘着防止材料(ポリエチレン高重合体)の層をその表面に塗布して、経皮ステッカーを製造する。
【実施例9】
【0100】
テクトリゲニンスルホン酸ナトリウムの急性毒性試験および抗ウィルス効果試験
以下の試験は、上記式(IV)に示されるテクトリゲニンのスルホン酸ナトリウム注射剤(50mg/mL)を実験試料として行う。
【0101】
1.急性毒性試験
体重18〜20gのオスおよびメスのマウス(半分ずつ)を実験動物として、それぞれに筋肉内、静脈内および腹腔内注射による投与を行う。筋肉内注射(im)については、0.2mL/10g(500mg/kg)用量を両側の後肢筋に注射し;静脈内注射(iv)に対するすべての群においては尾静脈に、それぞれ、841.5mg/kg、781.25mg/kg、725.25mg/kg、673.25mg/kg、580.2mg/kgの用量で投与し;腹腔内注射(ip)に対する用量は0.4mg/10g(すなわち、1000mg/kgと同等)とする。全ての群における投与後の実験動物の毒性反応および死亡については、それぞれお14日間にわたって1日に一回観察する。動物の死亡が判明すると、迅速に解剖を行う。半致死用量は、50%有効量確率単位法(加重線形回帰法)を用いて測定する。実験結果:1)精神状態、毛の(pilous)状態、摂食、飲水、成長および発達などの反応に関して、筋肉内注射を行った実験動物には何ら異常が認められず、注射から14日後に20匹のうちの一匹も死亡しないことから、筋肉内注射による1回の投与を行ったマウスの最大耐量は、500mg/kgであり、それらの半致死用量は、500mg/kgを超えると想定される。2)静脈内注射による投与を行った実験動物の半致死用量LD50は、725.81mg/kgであり、それらの95%信頼限界は、669.92mg/kg〜785.53mg/kgであり、パイロット試験製品における連続方法によって測定される半致死用量LD50は、868.2mg/kgであり、LD50の95%信頼限界は798.2〜944.4mg/kgである。3)腹腔内注射による投与を行った実験動物については、14日以内には全く死亡が認められず、腹腔内注射によって1回の投与を行ったマウスの最大耐用量は、1000mg/kgである。
【0102】
3つの投与方法によって実施した急性毒性試験の結果から、試験試料として用いた上述の抗ウィルス注射剤は、低い毒性しか有さず、LD50はimおよびipの場合には測定不能であり、最大耐用量はそれぞれ500mg/kgおよび1000mg/kgであり、LD50はivによって投与した場合には、725.81mg/kgおよび868.2mg/kgであることがわかる。
【0103】
2.In vitro抗ウィルス試験
試験薬物は、本発明における上記注射試料とし、対照薬物は注射用カリウムナトリウムデヒドロアンドロアンドログラホリドスクシネート(Potassium Sodium Dehydroandroandrographolide Succinate for Injection)(商品名:注射用Chuanhuning)、40mg/mL(ロット番号:000501,成都第3製薬工場製、化学構造)、ブランク対照はHanks液(四川省人民病院の研究部、ウィルス研究室より提供)とする。
【0104】
実験株は、Hep−2およびHL16C細胞(すべて汕頭華盈生物工学応用研究所、細胞工学研究部より提供)である。ウィルス株は、アデノウィルスADV3型およびADV7型、呼吸器合胞体ウィルス(RSV)、インフルエンザウィルス(FluV)A1型およびA3型、およびコクサッキーウィルスB群(CoxBV)(これらは、それぞれ小児科主要研究所、中国予防医科学研究所のウィルス研究所、および四川省衛生伝染病予防局より提供)の混合細胞株であり、TCID50を試験前に測定しておく。
【0105】
試験方法:
(1)細胞毒性試験
注射用試験試料と、注射用Chuanhuningとをそれぞれ、Hanks液によって10mg/mLから倍数比例の法則に従って希釈する。2種類の溶液について、10mg/mL、5mg/mL、2.5mg/mLおよび1.25mg/mLとなるように希釈を行う。異なる4濃度を有する上記の2種類の薬物を、それぞれHep−2およびZ−HL16C細胞中に接種し、細胞対照を同時に作成し、2%子牛血清Eagles維持培地を加えて、サーモスタット下で37℃に維持し、上述の細胞毒性反応を毎日観察する。細胞毒性試験の結果を表2に示す。
【0106】
【表2】

【0107】
(注:”−”は、細胞中で毒性反応が全く起こっていないことを意味する)
【0108】
表2に示す結果は、試験試料溶液、対照薬物Chuanhuningおよびブランク対照(Hanks液)がHep−2およびZ−HL16C細胞に対して全く毒性反応を有さないことを示している。
【0109】
(2)抗ウィルス試験
100TCID50 ADV3,ADV7,A1型およびA3型FluV、CoxBVおよびRSVウィルスをそれぞれ、Hep−2およびZ−HL16C細胞に接種する(A1型およびA3型FluVはZ−HL16C細胞に接種)。ウィルス溶液を30分以内に、吸収後、洗い流し、試験試料とChuanhuning非毒性限界溶液をそれぞれに加え(すなわち、10mg/mL、5mg/mL、2.5mg/mLおよび1.25mg/mL)、ウィルス対照、細胞対照およびブランク対照(Hanks液)を上記薬物と同時に作成する。細胞維持培地は2%子牛血清Eagles培地であり、インキュベータ中、37℃に維持し、Hep−2およびZ−HL16C細胞の病理学的変化を観察し、すべての群における細胞の病理学的変化を毎日記録する。RSV耐性試験については、ウィルスおよび非毒性限界薬物を接種した後、溶液をインキュベータ中、37℃で24時間水平に静置し、35℃のロータリインキュベータ(12回転/分)に移し、細胞の病理学的変化を毎日観察する。pH値が培養管中で下がる場合には、即時に溶液を変えなければならない。試験において細胞が正常であり、かつ細胞対照群においてよく増殖している状態で、ウィルスの対照群において2+〜3+の病理学的変化が起こった時点で、試験を終える。試験結果を表3に示す。
【0110】
表3の結果は、本発明において10mg/mLの試験試料注射溶液が、ADV3,ADV7,CoxBV,A1型FluVおよびRSVの細胞病原性に対する阻害効果を有し、A3型FluVに対する部分阻害効果を有することを実証するものである。5mg/mLの溶液は、A1型FluVおよびRSVの細胞病原性に対する阻害効果を有し、ADV3およびCoxBVに対する部分阻害効果を有する。2.5mg/mLの溶液は、A1型FluVに対する阻害効果を有する。10mg/mLのChuanghuning溶液は、ADV3および7、CoxBV,A1型FluVおよびRSVの細胞病原性に対する阻害効果を有する。他の濃度を有する溶液およびブランク対照は、すべての管において、細胞の病理学的変化を阻害することができない。
【0111】
【表3】

【0112】
(注:”−”は、細胞中でいかなる病理理学的変化も起こっていないことを意味する。1+〜3+は、細胞の病理学的変化の程度を意味する。)
【0113】
上記の試験結果は、10mg/mLの濃度の試験試料注射が、100TCID50ウィルス感染の場合にADV3,ADV7,CoxBV,A1型およびA3型のFluVおよびRSVに対して、様々な程度の阻害効果を示すことを実証するものである。10mg/mLのChuanhuning(対照薬物)溶液は、ADV3,ADV7,CoxBV,A1型およびA3型のFluVおよびRSVに対して阻害効果を有する。試験結果は、本発明における、A1型FluVおよびRSVに対する試料注射の阻害効果が、現在のところ、注射にChuanhuningを用いる場合よりも良好であることを示唆するものである。
【実施例10】
【0114】
抗ウィルス剤効果試験
以下の薬学的効果試験は、上記実施例における典型的なテクトリゲニン誘導体を試験試料として行う。
【0115】
1.抗ウィルス試験
試験薬物は、本発明における誘導体から製造した注射試料、経口カプセル、顆粒剤、錠剤、溶液剤、ならびに外用の点眼剤、塗布剤、クリーム、ローション、および点耳剤である。対照薬物は、注射用カリウムナトリウムデヒドロアンドログラホリドスクシネート(Potassium Sodium Dehydroandroandrographolide Succinate)(商品名:注射用Chuanhuning,40mg/mL,成都第3製薬工場製)、ピラゾールブランク対照はHanks液(四川省人民病院の研究部、ウィルス研究室より提供)とする。
【0116】
実験株は、Hep−2およびHL16C細胞(すべてすべて汕頭華盈生物工学応用研究所、細胞工学研究部より提供より提供)である。ウィルス株は、アデノウィルスADV3型およびADV7型、呼吸器合胞体ウィルス(RSV)、インフルエンザウィルス(FluV)A1型およびA3型、およびコクサッキーウィルスB群(CoxBV)(これらは、それぞれ小児科主要研究所、中国予防医科学研究所のウィルス研究所、および四川省衛生伝染病予防局より提供)の完全混合細胞であり、TCID50を試験前に測定しておく。
【0117】
試験方法:
(1)細胞毒性試験
試験試料の注射剤、経口カプセル、顆粒剤、錠剤、ピル、点眼剤、眼軟膏剤および他の外用製剤を溶解し、必要に応じた濃度を有するように調合し、これらと、注射用Chuanhuningとをそれぞれ、Hanks液によって10mg/mLから倍数比例の法則に従って希釈する。2種類の溶液について、10mg/mL、5mg/mL、2.5mg/mLおよび1.25mg/mLとなるように希釈を行う。異なる4濃度を有する上記の2種類の薬物を、それぞれHep−2およびZ−HL16C細胞に接種し、同時に細胞対照も作成し、2%子牛血清Eagles維持培地を加えて、サーモスタット下で37℃に維持し、上述の細胞毒性反応を毎日観察する。細胞毒性試験の結果を表4に示す。
【0118】
【表4】

【0119】
(注:”−”は、細胞中で毒性反応が全く起こっていないことを意味する)
【0120】
表4に示す結果は、試験試料溶液、対照薬物Chuanhuningおよびブランク対照(Hanks液)がHep−2およびZ−HL16C細胞に対して全く毒性反応を有しないことを示している。
【0121】
(2)抗ウィルス試験
100TCID50 ADV3,ADV7,A1型およびA3型FluV、CoxBVおよびRSVウィルスをそれぞれ、Hep−2およびZ−HL16C細胞に接種する(A1型およびA3型FluVはZ−HL16C細胞に接種)。ウィルス溶液を30分以内に、吸収後、洗い流し、試験試料とChuanhuning非毒性限界溶液をそれぞれに加え(すなわち、8mg/mL、5mg/mL、2.5mg/mLおよび1.25mg/mL)、ウィルス対照、細胞対照およびブランク対照(Hanks液)を上記薬物と同時に作成する。細胞維持培地は2%子牛血清Eagles培地であり、インキュベータ中、37℃に維持し、Hep−2およびZ−HL16C細胞の病理学的変化を観察し、すべての群における細胞の病理学的変化を毎日記録する。RSV耐性試験については、ウィルスおよび非毒性限界薬物を接種した後、溶液をインキュベータ中、37℃で24時間水平に静置し、35℃のロータリインキュベータ(12回転/分)に移し、細胞の病理学的変化を毎日観察する。pH値が培養管中で下がる場合には、即時に溶液を変えなければならない。試験において細胞が正常であり、かつ細胞対照群においてよく増殖している状態で、ウィルスの対照群において2+〜3+の病理学的変化が起こった時点で、試験を終える。試験結果を表5に示す。
【0122】
表5の結果は、本発明において10mg/mLの試験試料注射溶液が、ADV3,ADV7,CoxBV,A1型FluVおよびRSVの細胞病原性に対する阻害効果を有し、A3型FluVに対する部分阻害効果を有することを実証するものである。5mg/mLの溶液は、A1型FluVおよびRSVの細胞病原性に対する阻害効果を有し、ADV3およびCoxBVに対する部分阻害効果を有する。2.5mg/mLの溶液は、A1型FluVに対する阻害効果を有する。8mg/mLのChuanghuning溶液は、ADV3および7、CoxBV,A1型FluVおよびRSVの細胞病原性に対する阻害効果を有する。他の濃度を有する溶液およびブランク対照は、すべての管において、細胞の病理学的変化を阻害することができない。
【0123】
【表5】

【0124】
(注:”−”は、細胞中でいかなる病理理学的変化も起こっていないことを意味する。1+〜3+は、細胞の病理学的変化の程度を意味する。)
【0125】
上記の試験結果は、10mg/mLの濃度の試験試料注射が、3型アデノウィルス(ADV3),7型アデノウィルス(ADV7),コクサッキーウィルスB群(CoxBV),インフルエンザウィルスA1型(FluVA1)およびA3型(FluVA3)および呼吸器合胞体ウィルス(RSV)に対して、様々な程度の阻害効果を示すとともに、100TCID50感染状況において、インフルエンザウィルスA1型およびA3型、ならびに呼吸器合胞体ウィルスに対して優れた阻害効果を有することを実証するものである。10mg/mLのChuanhuning(対照薬物)溶液は、3型アデノウィルス、7型アデノウィルス、コクサッキーウィルスB群、インフルエンザウィルスA1型およびA3型、ならびに呼吸器合胞体ウィルス(RSV)に対して、阻害効果を有する。試験結果は、本発明における、A1型インフルエンザウィルスおよび呼吸器合胞体ウィルスに対する試料注射の阻害効果が、注射用に現在用いているChuanhuningおよびリバビリンの場合よりも良好であることを示唆するものである。
【0126】
(3)SARSウィルス耐性試験
Vero−E6細胞に対するテクトリゲニン誘導体の毒性と、Vero−E6細胞におけるコロナウィルス阻害効果とについて、北京におけるSARSの流行中に患者の肺組織から分離したウィルス株BJ01およびVero−E6細胞を用いて調べる。
【0127】
(3.1)実験材料
1)被験薬物:上記のテクトリゲニン誘導体を注射剤、すなわち、四川迪康科技薬業股分有限公司より提供され、ロット番号が20030301のDikang抗ウィルス注射剤(50mg/mL)に調合する。
【0128】
2)ポジティブコントロール薬物:山東新華制約股分有限公司によって提供され、認証文書H19993063、ロット番号02100020のリバビリン(ビラゾール)注射剤、0.1g/mL。その臨床的応用:これは気道細胞ウィルスに起因するウィルス性肺炎および気管支炎を治療するために用いられる。
【0129】
3)細胞:Vero−E6、これは我々の細胞バンク(ATCC CRL−1586)に保存されている。
【0130】
4)ウィルス株:2003年2月に北京におけるSARSの流行中に患者の肺組織から分離したコロナウィルスであり、株BJ01と名付ける。
【0131】
5)試薬:GibcollBRL Companyによって作成され、それぞれのロット番号が31600−026および16000−36のDMEM培地およびウシ胎仔血清。
【0132】
6)機器:Coming Company製の96穴の細胞培養ボードと、重慶光学機器工場製のバイオティック倒立顕微鏡。
【0133】
(3.2)方法と結果
1)薬物調合法
被験薬物:テクトリゲニン誘導体は淡黄色の液体であり、冷蔵庫中4℃で保存する。ポジティブコントロール薬物は10mg/mL母液に調合する。これは、細胞の成長促進媒体を用いて、使用時に必要な濃度に調合される。
【0134】
2)テクトリゲニン誘導体の細胞への毒性の試験
1mLにつき300000〜400000個のVero−E6細胞を、96穴の細胞培養ボードに接種し、ボードを5%CO2インキュベータ中、37℃で18時間維持し、様々な濃度の試験薬物をこれに加え、各濃度の薬物を4つの孔にそれぞれ0.4mLずつ加え、同時に薬物を入れない細胞対照群を準備し、4〜5日間培養して、細胞の病理的変化(CPE)を観察し、バイオティック倒立顕微鏡によってCPEを5日目の指標として観察する。完全病理的変化を4とし、75%の病理的変化を3とし、50%の病理的変化を2とし、25%の病理的変化を1とし、病理的変化が全くみられない場合を0とする。試験は2回繰り返す。中間毒性濃度(TD50)および最大非毒性濃度(TD0)は、REED−MUENCH法を用いて算出し、結果を表6に示す。
【0135】
【表6】

【0136】
表6の計算から、本発明の抗ウィルス注射剤の、Vero−E6細胞に対する最大非毒性濃度(TD0)は、1mg/mLであり、中間毒性濃度(TD50)は、2.34mg/mLであることがわかる。このことは、本発明のテクトリゲニン誘導体が、Vero−E6細胞に対して毒性が低くかつ、良好な安全性を有することを意味する。
(4)テクトリゲニン誘導体のコロナウィルス阻害試験(細胞病理変化法)
【0137】
Vero−E6細胞を96穴の培養ボードに接種し、37℃で単層になるまで培養し、成長促進培地を捨てる。コロナウィルスBJ01株の4世代のウィルス溶液をDMEM維持培地によって、100TCID50/0.1mLに希釈し、そのうちの0.1mLを各穴内のVeroE6細胞に接種し、2時間吸収させ、ウィルス溶液を捨てる。正常細胞対照群、ウィルス対照群、およびポジティブ薬物対照群を作成する。細胞を5%CO2培養インキュベータ中、37℃に維持し、病理的変化を全5日間、毎日観察し、CPEを記録し、この試験を2回繰り返したところ、結果は基本的に同一であった。中間阻害濃度(IC50)および治療指数(TI)は、REED−MUENCH法を用いて計算し、結果を表7に示す
【0138】
【表7】

【0139】
表7の計算から、0.976mg/mLの濃度を有するテクトリゲニン誘導体がコロナウィルスに対する阻害効果を有することがわかる。
結論として以下のことがいえる。
【0140】
【表8】

【0141】
上記の試験結果は以下のことを実証する。
【0142】
1)Vero−E6に対する本発明のテクトリゲニン誘導体の毒性:テクトリゲニン誘導体をVero−E6細胞に加え、これを5日間培養する。細胞の病理的変化を指標とした場合、その中間毒性濃度(TD50)は2.34mg/mLであり、最大非毒性濃度(TD0)は1mg/mLである。
【0143】
2)テクトリゲニン誘導体は、Vero−E6細胞におけるコロナウィルスに対する阻害効果を有する。テクトリゲニン誘導体注射剤をVero−E6細胞に加え、これを5日間培養する。その中間効果濃度(IC50)は0.0976mg/mLであり、テクトリゲニン誘導体注射剤のコロナウィルスに対する最小治療指数は、23.98である。
【0144】
(5)トリインフルエンザH5N1およびH9N2サブタイプウィルス殺傷効果試験
以下は上記実施例に記載のテクトリゲニン誘導体を試験薬物とした場合の、in vitroトリインフルエンザウィルス(AIV)殺傷試験である。
【0145】
(5.1)材料と方法
1)被験薬物
上記実施例のテクトリゲニン誘導体溶液(1mLあたり30mgの原料薬物を含有する淡黄色液体)
【0146】
2)トリインフルエンザウィルス
ウィルス株は、中国農業科学協会に属するハルビン獣医学研究所から委託を受けた農業省重要動物インフルエンザ公開研究所(the Agricultural Ministry’s Key Animal Influenza Open Laboratory)に保存されているA/Goose/Guandong/1/96(H5N1)およびA/Chicken/Shangdong/6/96(H9N2)である。
【0147】
3)ニワトリ胚
中国農業科学協会に属するハルビン獣医学研究所の実験動物センターから提供された10日齢のSPFニワトリ胚。
【0148】
4)予備試験
a.ウィルスEID50測定
トリインフルエンザウィルスサブタイプH5およびH9は、10倍系列で希釈し、10日齢のSPFニワトリ胚に接種し、5つの胚に対してそれぞれの希釈を行い(0.1mL/胚)、ウィルス中間感染用量(EID50)を測定する。
b.試験した薬物母液調節
上述のテクトリゲニン誘導体を、1mLあたりに30mgの原料薬物を含有する母液とする。
c.被験薬物のニワトリ胚に対する最大非毒性用量
1mLあたりに30mg,15mg,7.5mg,3.75mg,1.875mg,0.9375mg,0.46875mg,0.234375mgおよび0.1171875mgの被験原料薬物を含有する溶液を10日齢のSPFニワトリ胚にそれぞれ接種し最初の希釈の溶液を5つの胚(0.1mL/胚)に接種する。接種したニワトリ胚を37℃のサーモスタット中におき、96時間培養する。ニワトリ胚は24時間以内に死ぬが、これを廃棄し、その死について記録する。
【0149】
5)被験薬物のウィルス殺傷率試験
2種(強弱)のトリインフルエンザウィルスの殺傷試験を、被検薬物により、Klein−Dofors懸濁法を用いて行う。被験薬物を滅菌済生理学的食塩水で10倍系列で希釈し、接種し、感染ニワトリ胚を調べる。
a.ウィルス懸濁液の調製
トリインフルエンザウィルスサブタイプH5およびH9を、107.63EID50/0.1mLおよび108.17EID50/0.1mLウィルス懸濁液に調製する。
b.被験薬物母液調節
上記テクトリゲニン誘導体を滅菌済生理食塩水を用いて、殺傷試験のあいだの原料として必要な濃度に希釈する。
c.Klein−Dofors懸濁殺傷試験
107.63EID50トリインフルエンザサブタイプH5ウィルス懸濁液および108.17EID50H9サブタイプウィルス懸濁液を、1mLあたりに30mg,15mg,7.5mg,3.75mg,3.0mg,1.875mg,1.5mg,0.75mgおよび0.375mgの原料薬物濃度のテクトリゲニン誘導体と、それぞれ1:9の比率で混合し、20±1℃で5分間反応させた後、滅菌済生理食塩水を用いて10倍ずつ順に希釈する。滅菌済ウィルス懸濁液の代わりに滅菌済生理食塩水を用いた対照群に対しても同様の処理を行い、希釈した溶液を10日齢のニワトリ胚に接種し、各濃度の溶液を5つのニワトリ胚(0.1mL/胚)に接種する。接種後のニワトリ胚を37℃の培養用インキュベータ中に維持し、ニワトリ胚の死を記録する。24時間以内に死んだニワトリ胚は廃棄し、24時間後に死んだニワトリ胚を取り出し、すべてのニワトリ胚を96時間以内に取り出し、それらの尿膜腔液をHA試験のために1つずつサンプリングし、HA試験によって陽性であると判明したニワトリ胚を感染したものと判断する。
試料中のニワトリ胚の感染陽性率、EID50量および、試験および対照群における殺傷率は、ニワトリ胚感染結果および下記の等式にしたがって算出する。
陽性率=HA試験で陽性が判明したニワトリ胚の量/接種したニワトリ胚の量
試料中のEID50量の対数=L−d(S−0.5)
(Lは最小希釈倍率の対数であり、dは希釈の差の対数であり、Sは各希釈列における陽性率の和である)
ウィルス殺傷率=(対照試料におけるEID50量−試験試料におけるEID50量/対照試料におけるEID50×100%)
【0150】
(5.2)試験結果
1)被験薬物のニワトリ胚に対する最大非毒性容量
滅菌済生理食塩水で希釈し、1mLあたりに30mg,15mg,7.5mg,3.75mg,1.875mg,0.9375mg,0.46875mg,0.234375mgおよび0.1171875mgの原料薬物を含有するテクトリゲニン誘導体を、ニワトリ胚に注射する。試験結果は、様々な濃度の薬物によって注射後のニワトリ胚の死が引き起こされることはなく、このことから、被験薬物の原溶液および様々な濃度の薬物が、ニワトリ胚に対して視認できる毒性効果を一切有しないことが示される。結果を表9に示す。
【0151】
【表9】

【0152】
注:分子は死んだ胚の量であり、分母は接種した胚の量である。
【0153】
2)トリインフルエンザウィルスに対する被験薬物の殺傷効果
滅菌済生理食塩水で希釈し、1mLあたりに30mg,15mg,7.5mg,3.75mg,3.0mg,1.875mg,1.5mg,0.75mgおよび0.375mgを含有するテクトリゲニン誘導体を、107.63EID50トリインフルエンザH5サブタイプウィルス溶液と5分間反応させ、そのウィルス殺傷率をそれぞれ測定し、様々な希釈濃度のテクトリゲニン誘導体を108.17EID50トリインフルエンザウィルスH9型と5分間反応させ、そのウィルス殺傷率をそれぞれ測定する。結果を表10に示す。
【0154】
【表10】

【0155】
上記試験結果は、(様々な濃度の)テクトリゲニン誘導体を、トリインフルエンザウィルスH5N1およびH5N2(9:1)とそれぞれ5分間、in vitroで直接接触させる、Klein−Defors懸濁殺傷および感染試験法によって、被験薬物のトリインフルエンザウィルス殺傷効果を調べることを示している。上記の結果は、1mLあたりに3.0mgの原料薬物を含有するテクトリゲニン誘導体が、トリウィルスと5分間反応した場合に、一定のウィルス殺傷効果を有すること、1mLあたりに3.75〜30mgの原料薬物を含有するテクトリゲニン誘導体が、優れたウィルス殺傷効果を有すること、およびそのウィルス殺傷率は、トリインフルエンザウィルスと5分間反応させた場合には95%を超えることを実証するものである。
【0156】
その安全性試験からは、一連の母液希釈液をニワトリ胚に接種しても、ニワトリ胚の死を引き起こさないことがわかり、このことは、被験薬物母液を様々に希釈した薬物および原液がいかなる目に見える毒性効果も有しないことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0157】
式(II)に示される本発明における化学的修飾によって達成されるテクトリゲニン化合物誘導体は、その前駆物質、すなわち最初に抽出されたテクトリゲニン化合物と同等の抗ウィルスおよび抗炎症効果を維持しつつも、その水溶性と化学的安定性を大きく向上させることができる。また、調製が容易であり、コストが低く、安全かつ信頼性があり、専用の設備を必要とせず、「3大廃棄物」(すなわち、廃棄ガス、排水、および産業廃棄物)による汚染が全くない。漢方薬の成分は複雑であり、その品質安定性を制御することは困難であるので、本発明によって提供されるテクトリゲニン化合物のイソフラボン誘導体は、重要な積極的な有意性を有し、その薬学的および臨床的応用範囲を広げること、特に、抗ウィルスおよび抗炎症注射製剤に関して、明るい開発の見通しを有している。
【0158】
上記本発明についての詳細な説明は、本発明において限定されず、当業者は本発明に基づく様々な修正および改変を行ってもよいが、それらすべては、本発明の精神から逸脱しない限り、本発明に添付の請求項に属するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】式(III)に示されるテクトリゲニンスルホン酸ナトリウム化合物のIRスペクトルである。
【図2】式(III)に示されるテクトリゲニンスルホン酸ナトリウム化合物の1HNMRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5,7,4’−トリヒドロキシ−6−メトキシイソフラボンの化学名をもつ下記式(II)で表されるテクトリゲニン誘導体。
【化1】

(式中、R1はH,NH2またはSO3Mであり
2はOR’であり、
3はHまたは−CH2NR’’であり、
R’はH,−CH2COONaまたは−CH2CH2NMe2であり、
NR’’はピペリジノ基または−NMe2であり、
MはH,Na,KまたはN+H(CH2CH2OH)3である)。
【請求項2】
1がSO3M’’(式中、M’’はH,Na,Kまたは−N+H(CH2CH2OH)3である)であり、その構造が式(III)に示されることを特徴とする、請求項1に記載のテクトリゲニン化合物誘導体。
【化2】

【請求項3】
前記式(III)に示されるM’’がNaであり、その構造が下記式(IV)で示されることを特徴とする請求項2に記載のテクトリゲニン化合物誘導体。
【化3】

【請求項4】
前記式(III)に示されるR1が−SO3-+H(CH2CH2OH)3であり、その構造が下記の式(V)によって示されることを特徴とする、請求項2に記載のテクトリゲニン化合物誘導体。
【化4】

【請求項5】
前記式(II)に示されるR1がNH2であり、R2がOHであり、R3がHであり、その構造が下記の式(VI)で示されることを特徴とする、請求項1に記載のテクトリゲニン化合物誘導体。
【化5】

【請求項6】
前記式(II)に示されるR1がHであり、R2が−OCH2COONaであり、R3がHであり、その構造が下記の式(VII)で示されることを特徴とする、請求項1に記載のテクトリゲニン化合物誘導体。
【化6】

【請求項7】
前記式(II)に示されるR1およびR3がHであり、R2がOCH2CH2NMe2であり、その構造が下記の式(VIII)で示されることを特徴とする、請求項1に記載のテクトリゲニン化合物誘導体。
【化7】

【請求項8】
前記式(II)に示されるR1がHであり、R2がOHであり、R3が−CH2NR’’(式中、NR’’は、ピペリジノ基である)であり、その構造が式(IX)で示されることを特徴とする、請求項1に記載のテクトリゲニン化合物誘導体。
【化8】

【請求項9】
前記式(II)に示されるR1がHであり、R2がOHであり、R3が−CH2NMe2であり、その構造が下記の式(X)に示されることを特徴とする、請求項1に記載のテクトリゲニン化合物誘導体。
【化9】

【請求項10】
前記化合物は、その薬学的に許容される塩であることを特徴とする請求項5,7,8または9に記載のテクトリゲニン化合物誘導体。
【請求項11】
前記塩化合物は塩酸塩であることを特徴とする請求項10に記載のテクトリゲニン化合物誘導体。
【請求項12】
1がスルホン酸またはスルホン酸塩である式(III)のテクトリゲニン化合物誘導体の調製方法であって、
式(I)に示されるテクトリゲニンのイソフラボン化合物を原料として、硫酸とのスルホン化反応によって、M’’がHである式(III)に示されるスルホン酸誘導体生成物を得、NaClまたはKCl飽和塩溶液によって処理することにより、上記式(VI)に示される対応するスルホン化ナトリウムまたはスルホン化カリウム化合物をさらに得ることができ、その合成ラインが以下に示される方法。
【化10】

【請求項13】
式(V)のテクトリゲニン化合物の調製方法であって、
式(I)に示すテクトリゲニンのイソフラボン化合物を原材料に用い、濃硫酸と混合し、40〜90℃で加熱攪拌し、冷却後、飽和塩化ナトリウム、他のアルカリ金属塩酸、臭化水素酸塩、または硝酸塩溶液中に注ぐと、3’−ナトリウムスルホネート中間生成物が得られ、これをエタノール溶液中に溶解し、強酸カチオン樹脂を加え、完全に溶解するまで室温で攪拌し、トリエタノールアミンを加えて、溶媒を減圧下で蒸発させると、式(V)で示される化合物が得られ、その合成ラインが以下に示される方法。
【化11】

【請求項14】
式(VI)のテクトリゲニン化合物の調製方法であって、
式(I)に示すテクトリゲニンのイソフラボン化合物を原材料として、これを氷浴中で冷却しながら硝酸および濃硫酸と混合したエタノール溶液を滴下することにより、3’−ニトロ中間化合物が得られ、これをメタノールに溶解し、大気圧下での水素触媒還元により3’−アミノ置換化合物(VI)を得、さらに式(VI)で示す対応する塩化合物を、薬学的に許容される酸との反応によって得ることができ、その合成ラインが以下に示される方法。
【化12】

【請求項15】
式(VII)のテクトリゲニン化合物の調製方法であって、
式(I)で示されるテクトリゲニンのイソフラボン化合物を原材料とし、ブタノンとDMFの混合溶媒中にクロロ酢酸エチルとともに溶解し、これに無水K2CO3および触媒量のNaIを加え、混合物を攪拌し、再循環させた後、室温まで冷却し、その不溶物質を濾去し、濾液を減圧下で濃縮し、残渣を適当量の水中に溶解し、酢酸エチルで抽出し、水で洗浄し、乾燥したのち溶媒を減圧下で濃縮し、フラッシュカラムで分離すると、4’−エステル−エーテル中間生成物が得られ、これをメタノールに溶解し、攪拌しながらNaOHの水溶液を滴下して、常温にて完全に加水分解した後、pH値を酸によってpH3〜4に調整し、減圧下でメタノールを蒸発させた後、凝縮沈殿を得、これを酢酸エチルに溶解し、凝縮沈殿を水洗、乾燥、濃縮後、NaHCO3と反応させることにより化合物(VII)のナトリウム塩が得られ、その合成ラインが以下に示される方法。
【化13】

【請求項16】
式(VIII)のテクトリゲニン化合物の調製方法であって、
β−ジメチルアミノエタノールをまず最初に0℃のジクロロスルホキシド中に滴下し、激しく攪拌し、35〜50℃で攪拌しながら反応させて、中間生成物β−ジメチルアミノクロライドハイドロクロライドAを得、無水エタノールによって再結晶させ、式(I)に示すテクトリゲニンのイソフラボン化合物を原材料として、ブタノン、アセトン、DMF、THFまたはジオキサンに溶解し、これに、無水K2CO3またはNa2CO3、ならびにDMFおよび触媒量のNaIを加え、再循環されるまで混合物を加熱し、上記中間生成物Aを分けて加え、約80℃で再循環させ、冷却後ろ過し、濾液を濃縮して粘着物を得、該粘着物を適当量の水で希釈した後、酢酸エチルで抽出し、抽出物を水洗して溶媒を除去してから乾燥させ、化合物(VIII)を得、薬学的に許容される酸との反応によって、対応する塩化合物をさらに得ることができ、その合成ラインが以下に示される方法。
【化14】

【請求項17】
式(IX)のテクトリゲニン化合物の調製方法であって、
式(I)で示されるテクトリゲニンのイソフラボン化合物を原材料として用いて、37(重量)%のホルムアルデヒド溶液、ピペリジン、ならびにジオキサン、THF、メタノールまたはエタノールのうちの1つと混合し、反応物を再循環させた後に冷却しろ過することにより、化合物(IX)を得、さらに、式(III)に示すような対応する塩化合物を、薬学的に許容される酸との反応によって得ることができ、その合成ラインが以下に示される方法。
【化15】

【請求項18】
式(X)のテクトリゲニン化合物の調製方法であって、
式(I)に示されるテクトリゲニンのイソフラボン化合物を原料として使用し、37(重量)%のホルムアルデヒド溶液、ジメチルアミノハイドロクロライド、ならびにジオキサン、THF、メタノールまたはエタノールのうちの1つと混合し、再循環後に冷却し、ろ過して残渣を回収することにより、化合物(X)を得、さらに、式(III)に示されるような対応する塩化合物を、薬学的に許容される酸との反応によって得ることができ、合成ラインが以下に示される方法。
【化16】

【請求項19】
有効薬学的成分としての、有効用量の式(II)のテクトリゲニン化合物誘導体と、薬学的に許容されるさらなる追加成分と、からなる抗ウィルス薬剤。
【請求項20】
前記薬剤は、注射型調製物であることを特徴とする請求項19に記載の抗ウィルス薬剤。
【請求項21】
式(II)のテクトリゲニン化合物誘導体が有効薬学的成分である注射薬剤の調製方法であって、
5〜80(重量)部のテクトリゲニン誘導体(II)と、20〜150(重量)部の注射用グルコースとを、700〜800(重量)部の注射用水に溶解し、完全溶解後に注射用水を加えて、全体積を1000(重量)部とし、G4焼結ガラス漏斗によってろ過し、従来の包装および滅菌を行い、2〜15%グルコースと、5〜80mg/mLの有効な薬学的成分とを含む淡黄色透明液体注射剤が得られる方法。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−515389(P2007−515389A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529555(P2006−529555)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/CN2004/000481
【国際公開番号】WO2004/111027
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(306041868)成都迪康▲ヤオ▼物研究所 (1)
【出願人】(306041879)四川迪康科技▲ヤオ▼▲イエ▼股▲フン▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】