説明

テトラノルラブダン誘導体の製造方法

本発明は、式(I)(式中、点線は単結合であり且つnは1であるか又は点線は二重結合であり且つnは0であり、その際、相対配置はそのジアステレオアイソマー又はエナンチオマー又はその混合物のいずれか1つの形で示される)の化合物の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は有機合成の分野に関し、更に詳細には式
【化1】

(式中、点線は単結合であり且つnは1であるか又は点線は二重結合であり且つnは0であり、その際、相対配置はそのジアステレオアイソマー又はエナンチオマー又はその混合物のいずれか1つの形で示される通りである)
の化合物の製造方法に関する。本発明はまた複数の出発化合物に関する。
【0002】
従来技術
式(I)の化合物は非常によく知られた芳香成分であり、その一部は特定の関連性がある。従って、それらを製造するための代替的な合成が常に求められている。
【0003】
化合物(II)の環化による化合物(I)の製造は、原子経済的且つ直接的であるため、非常に魅力的な合成経路である。かかる手法は従来技術において以下により例示されている:
− G. Frater及びその同僚、WO06/10287号において、化合物(II)に類似の不飽和アルコールが、プロトン性鉱物又は有機酸の存在下で対応するテトラヒドロフランに環化される(実施例において室温でCHCl中の過剰のメタンスルホン酸が使用されている、収率約60%);
− A. De Grootら、Tetrahedron, 1994, 50, 10095において、化合物(II)に類似の不飽和アルコールが、室温でニトロメタン中のパラ−トルエンスルホン酸の存在下で対応するテトラヒドロフランに環化されて、約70%で化合物(I)がジアステレオマーと共に得られる;又は
− G. Ohloffら、Helv. Chem. Acta, 1985, 68, 2022において、化合物(II)に類似の不飽和アルコールが、100℃でニトロメタン中のパラ−トルエンスルホン酸の存在下で対応するテトラヒドロフランに環化されて、化合物(I)が得られる(収率及び種々のアイソマー間の比率は示されていない)。
【0004】
しかしながら、従来技術において報告された条件は様々な問題を起こし、これは工業プロセスにおけるそれらの使用を制限する。実際に、それらはたいして環境に優しいものではなく(過剰の酸)、並の収率で生成物を与える、及び/又はニトロメタンなどの危険な溶媒の使用を必要とする。
【0005】
従って、かかる環化を行ってさらに環境に優しい条件及び/又は例えば、より高い収率及び/又はより少ない量の不要なアイソマーの使用を可能にするための代替的な方法がなお求められている。
【0006】
本願発明者らの知る限り、効果的な、アルコール(II)の化合物(I)への環化がはじめて報告された。
【0007】
発明の説明
本発明者らはここで以下に定義される式(I)の化合物、例えば、(3aRS,9aRS,9bRS)−3a,6,6,9a−テトラメチル−1,2,3a,4,6,7,8,9,9a,9b−デカヒドロナフト[2,1−b]フラン又は(3aRS,9aRS,9bRS)−3a,6,6,9a−テトラメチル−1,2,3a,4,6,7,8,9,9a,9b−デカヒドロナフト[2,1−b]フランを、炭素−炭素二重結合上のアルコール基の添加を含む新規な且つ代替的な環化の方法による有利な方式で製造できることを見出した。
【0008】
従って、本発明の第1の対象は、ラセミ体の形又は光学的に活性なジアステレオアイソマーの形での、式(I)、又は(I’)
【化2】

(式中、9a、9b及び3aの位置の置換基がシスの相対配置であり、5aの位置の水素原子及び酸素原子が9aの位置のメチルに対してトランスの配置である)
のフランの製造方法であって、
式(II)、又は(II’)それぞれ
【化3】

(式中、点線は示された位置の1つで炭素−炭素二重結合の存在を示し、前記化合物(II)又は(II’)はラセミ体の形又は光学的に活性な形であり、且つ化合物(II)の場合、ジアステレオアイソマーの形でもあり、その際、9aの位置のメチル及び5aの位置の水素原子は相対的なトランスの配置である)
のアルコールの環化を含み、
前記環化は少なくとも1種のルイス酸及び場合により添加剤により促進されることを特徴とする、フランの製造方法である。
【0009】
明確にするために、「ラセミ体の形又は光学的に活性な形で」という表現は、ジアステレオアイソマー(I)、(I’)又は(II)、又は化合物(II’)がそれぞれ0〜100%の範囲の鏡像体過剰(e.e.)を有することを意図すると理解される。
【0010】
例えば、特定の化合物(I)は式(A)又は(B)
【化4】

(式中、示された立体化学は絶対的である)
の2つのエナンチオマーの任意の混合物の形であってよい。
【0011】
当業者に公知の通り、本発明の方法が、化合物(I)又は(I’)を光学的に活性な形で得るために使用される時、出発材料又は中間体として使用される対応する化合物(II)又は(II’)は十分な光学活性を有する必要があることが理解されている。
【0012】
化合物(I)の典型的な例として以下のものが挙げられる:
− (3aR,9aR,9bR)−3a,6,6,9a−テトラメチル−1,2,3a,4,6,7,8,9,9a,9b−デカヒドロナフト[2,1−b]フラン、
− (3aRS,9aRS,9bRS)−3a,6,6,9a−テトラメチル−1,2,3a,4,6,7,8,9,9a,9b−デカヒドロナフト[2,1−b]フラン、
− (3aS,9aS,9bS)−3a,6,6,9a−テトラメチル−1,2,3a,4,6,7,8,9,9a,9b−デカヒドロナフト[2,1−b]フラン、
− (3aR,5aS,9aS,9bR)−3a,6,6,9a−テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1−b]フラン、
− (3aRS,5aSR,9aSR,9bRS)−3a,6,6,9a−テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1−b]フラン又は
− (3aS,5aR,9aR,9bS)−3a,6,6,9a−テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1−b]フラン。
【0013】
本発明の特別な実施態様によれば、本発明の方法は関連化合物(II’)、(III’)、(IV’)及び(V’)からの化合物(I’)の製造に特に有用である。
【0014】
本発明の特別な実施態様によれば、本方法は式
【化5】

(式中、立体化学は化合物(II)又は(II’)について定義されている)
の化合物(II)又は(II’)を使用して実施される。
【0015】
化合物(II)は公知の化合物であり、例えば、G. Frater及びその同僚、WO06/10287号を参照されたい。
【0016】
化合物(III)又は(III’)は、それぞれ公知の化合物(IV)又は(IV’)
【化6】

(式中、立体化学は化合物(II)又は(II’)について定義されている)から製造でき、これらはC. FehrらによってOrg.Lett., 2006, 8, 1839で、又はDanieswskiらによってJ.Org.Chem., 1985, 50, 3963で報告されている。鏡像異性的に純粋な化合物(IV)又は(IV’)は、光学的に活性な前駆体(WO07/010420号に開示されている)を使用するOrg.Lett., 2006, 8, 1839で報告された方法によって得ることができる。
【0017】
式(III’)の化合物は、従ってプロパルギルアルコール(IV)又は(IV’)を対応する不飽和アルデヒド(V)又は(V’)
【化7】

(式中、立体化学は化合物(II)又は(II’)について定義されている)
に転位することによって得られ、このアルデヒドの還元によりアルコール(III)又は(III’)が得られる。
【0018】
プロパルギル転位は、例えば、Tet.Lett., 1996, 37, 853又はTet.Lett., 1976, 2981で報告された条件を使用して、実施することができる。
【0019】
アルデヒドのアルコールへの還元は、例えば、NaBH又はLiAlHなどの水素化金属を使用して実施することができる。
【0020】
この手法は更に実施例に例示される。
【0021】
式(II’)又は(III’)の化合物は、新規な化合物であり、従って、本発明の方法の重要な中間体として、本発明の別の対象である。前記新規な化合物の特定の例は、2−(2,5,5,8a−テトラメチル−3,5,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−1−ナフタレニル)エタノールである。
【0022】
上述のように、本発明の環化は化合物(II)又は(II’)と少なくとも1種のルイス酸及び場合により添加剤とを反応させることによって実施される。
【0023】
前記ルイス酸は出発アルコールを基準として、化学量論量又は触媒量で使用することができる。
【0024】
有用なルイス酸は、酸性クレー、BF誘導体又は式AlClR、MX又はZnX(式中、RはC〜Cアルキル基であり、MはAl、Y、Sc及びFeからなる群から選択される三価金属カチオンであり、且つXはCl又はF原子を表すか又は弱配位性もしくは非配位性のモノアニオンである)の金属塩であってよい。
【0025】
前記酸は無水の形で存在し又はそれらの一部は水和物の形でも存在することができる。更に、ホウ素又はアルミニウム誘導体、特にBFは、RO又はRCOOH(式中、RはC又はCなどのC−Cアルキル基であり、Rはメチル、エチル又はヘプト−3−イルなどのC−C20アルキル基である)などのエーテル又はカルボン酸との付加物のうちのいずれか1つの形であってよい。
【0026】
酸性クレーの非限定の例は、例えば、F−20X型のクレーである。
【0027】
適切な弱配位性又は非配位性のモノアニオンの非限定の例は、ClO、C1−8スルホネート、BF、PF、SbCl、AsCl、SbF、AsF又はBR(式中、Rは、ハライド原子又はメチルもしくはCF基などの1〜5個の基によって場合により置換されたフェニル基である)である。本発明の特定の実施態様によれば、XはBF、PF、CSO、CFSO、MeSO、MeCSO又はClである。
【0028】
本発明の更に特定の実施態様によれば、好ましいルイス酸はBF又はC〜Cエーテルもしくはカルボン酸(例えば、EtO、BuO又はAcOH)とのBF付加物、FeXもしくはScX(Xは上で定義されている)である。
【0029】
ルイス酸の、限定されない、特定の例として、FeCl、Sc(CFSO、又はBF(EtO)などの酸が挙げられる。
【0030】
添加剤は、例えば、選択性及び/又は環化の効率を増大させるために使用してよい。
【0031】
添加剤としてC〜Cスルホン酸、水、C〜C12アルコール、シリカ、酸化アルミニウム又は分子篩を使用してよい。特定の実施態様によれば、前記添加剤は酸性又は中性であってよく、且つ小さい粒子、又は更に粉末の形であってよい。
【0032】
典型例はブタノール、中性アルミナ、シリカゲル(例えば、一般にクロマトグラフィーに使用される型のもの)又は分子篩4Åである。スルホン酸の典型的な例はFSOH、MeSOH、MeCSOH及び類似物である。
【0033】
特定の実施態様によれば、環化のためにFeClとシリカとの組み合わせを使用することができる。代替的にFeClとC〜Cスルホン酸との組み合わせ又はFeClとブタノールとの組み合わせを使用することができる。
【0034】
ルイス酸は広い範囲の濃度で反応媒体に添加されることができる。非限定の例として、出発アルコール(II)又は(II’)のモル量を基準として、0.01〜1.50モル当量の範囲の触媒濃度を挙げることができる。好ましくは、ルイス酸濃度は0.1〜0.6モル当量が含まれる。酸の最適濃度が酸の性質及び所望の反応時間に依存することは言うまでもない。
【0035】
添加剤は、広い範囲の濃度で反応媒体に添加されることができる。非限定の例として、ルイス酸の質量を基準として、10〜250%の範囲の添加剤濃度を挙げることができる。好ましくは、添加剤濃度はルイス酸の質量を基準として、10〜120%が含まれる。
【0036】
本発明の環化は、その実施態様のいずれかで、溶剤の存在又は不在下で実施されることができるが、いずれの場合も無水条件下で有利に行われる。
【0037】
しかしながら、本発明の好ましい実施態様によれば、本方法は溶剤の存在下で有利に実施される。好適な溶剤は非プロトン性のものである。かかる溶剤の非限定の例は、エーテル、エステル、アミド、芳香族炭化水素、線状又は分枝鎖状又は環状の炭化水素、塩素化溶剤(特に塩素化炭化水素)及びそれらの混合物である。更に好ましくは、溶剤は塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロベンゼン、トルエン及びそれらの混合物である。本発明の別の実施態様によれば、この反応は、25未満の誘電率を有する溶剤又は溶剤の混合物中で、標準条件(Handbook of Chemistry and Physics、第87版、2006-2007年に示される)において実施される。
【0038】
本発明の方法が、その実施態様のいずれでも実施できる温度は、−50℃〜140℃、好ましくは−10℃〜80℃に含まれる。もちろん当業者は、出発物質及び最終生成物及び/又は最終的な溶剤の融点及び沸点に応じて好ましい温度を選択することもできる。
【0039】
実施例
本発明は、全ての実施態様において、目下、次の実施例により更に詳細に記載され、その際、略符号は、当業界での通常の意味を有し、温度は摂氏度(℃)で示され;NMRスペクトルデータは、CDCl中でH又は13Cに対してそれぞれ360MHz又は100MHz装置で記録され、化学的変位δは標準としてのTMSに関してppmで示され、結合定数JはHzで表わされる。
【0040】
実施例1
A)2−(2,5,5,8a−テトラメチル−3,5,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−1−ナフタレニル)エタノール(1)の製造
工程A)
1−エチニル−2,5,5,8a−テトラメチル−1,2,3,5,6,7,8,8a−オクタヒドロ−1−ナフタレノール(4.00g;17.2ミリモル)の溶液を、o−キシレン(60ml)中で[VSiPh(400mg)で処理し[Tetrahedron Lett. 1976, 17, 2981]且つ還流させながら加熱した(145℃)。17時間後、転位が完了した。反応混合物を5%のNaOH水溶液中に注ぎ込んだ。生成物をEtOで2回抽出し、これをHOで及び2回飽和NaCl水溶液で連続的に洗い、乾燥(NaSO)させ且つ蒸発させた。バルブ-バルブ蒸留(125℃(オーブン温度)/0.04ミリバール)により97%の純粋な(2,5,5,8a−テトラメチル−3,5,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−1−ナフタレニル)アセトアルデヒド(3.42g;収率=83%)が得られた。

【0041】
工程B)
工程A)で得られたEtO(10ml)中の(2,5,5,8a−テトラメチル−3,5,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−1−ナフタレニル)アセトアルデヒド(3.40g;14.2ミリモル)の溶液を、穏やかな還流が維持される速度でEtO(20ml)中のLiAlH(410mg;10.7ミリモル)の撹拌された懸濁液に滴加した(5分間)。懸濁液を還流させながら30分間加熱し、0℃で冷却し且つ水(0.4ml)、5%のNaOH水溶液(0.4ml)及び水(3×0.4ml)で連続的に液滴処理した。室温での5分間の撹拌後、懸濁液をCeliteで濾過し、この濾液を濃縮した。バルブ-バルブ蒸留(130℃(オーブン温度)/0.03ミリバール)により純粋な2−(2,5,5,8a−テトラメチル−3,5,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−1−ナフタレニル)エタノール(1)(3.21g;収率=90%)が得られた。

【0042】
B)2−(2,5,5,8aβ−テトラメチル−3,4,4aα,5,6,7,8,8a−オクタヒドロ−1−ナフタレニル)エタノール(2)の製造
工程A)
o−キシレン(40ml)中の1−エチニル−2,5,5,8a−テトラメチル−ペルヒドロ−4aH−1−ナフタレノール(8.48g;純度92%;33.3ミリモル)の溶液を、o−キシレン(40ml)中の[PhSiO]VO(1.79g;2.00ミリモル)、トリフェニルシラノール(1.38g;5.00ミリモル)及びステアリン酸(191mg;0.67ミリモル)の還流混合物(145℃)に20分間で滴加した。7時間後に反応混合物を5%のNaOH水溶液中に注ぎ込んだ。生成物をEtOで2回抽出し、これをHOで及び2回飽和NaCl水溶液で連続的に洗い、乾燥(NaSO)させ且つ蒸発させた。バルブ-バルブ蒸留(125℃(オーブン温度)/0.03ミリバール)により87%の純粋な(2,5,5,8aβ−テトラメチル−3,4,4aα,5,6,7,8,8a−オクタヒドロ−1−ナフタレニル)アセトアルデヒド(7.59g;収率=85%)が得られた。
【0043】
[VSiPhを使用しても、(2,5,5,8aβ−テトラメチル−3,4,4aα,5,6,7,8,8a−オクタヒドロ−1−ナフタレニル)アセトアルデヒドが85%の収率で得られた。

【0044】
工程B)
EtO(50ml)中の(2,5,5,8aβ−テトラメチル−3,4,4aα,5,6,7,8,8a−オクタヒドロ−1−ナフタレニル)アセトアルデヒド(7.58g;純度87%;28.2ミリモル)の溶液を、穏やかな還流が維持される速度でEtO(20ml)中のLiAlH(800mg;21.1ミリモル)の撹拌された懸濁液に滴加した(5分間)。懸濁液を還流させながら30分間加熱し、0℃で冷却し且つ水(0.8ml)、5%のNaOH水溶液(0.8ml)及び水(3×0.8ml)で連続的に液滴処理した。室温での5分間の撹拌後、白色の懸濁液をCeliteで濾過し、この濾液を濃縮した。バルブ-バルブ蒸留(130℃(オーブン温度)/0.03ミリバール)により94%の純粋な2−(2,5,5,8aβ−テトラメチル−3,4,4aα,5,6,7,8,8a−オクタヒドロ−1−ナフタレニル)エタノール(2)(6.98g;純度94%;収率=99%)が得られた。

【0045】
実施例2
A)2−(2,5,5,8aβ−テトラメチル−3,4,4aα,5,6,7,8,8a−オクタヒドロ−1−ナフタレニル)エタノール(2)の環化
【化8】

【0046】
− FeCl及びSiOを使用する:
1,2−ジクロロエタン(5ml)及びCHCl(8ml)中の2−(2,5,5,8aβ−テトラメチル−3,4,4aα,5,6,7,8,8a−オクタヒドロ−1−ナフタレニル)エタノール(2)(500mg;純度94%;1.99ミリモル)の溶液を、SiO60Å(70〜220μm)(81mg)を用いて24℃で処理した。撹拌しながら無水FeCl(162mg;1.00ミリモル)を添加した。20分後に、暗色の反応混合物を撹拌しながら5%のHCl水溶液中に注ぎ込み且つEtOで2回抽出した。有機相を水、飽和NaHCO水溶液及び2回飽和NaCl水溶液で連続的に洗い、乾燥(NaSO)させ且つ蒸発させた(513mg)。バルブ-バルブ蒸留(125℃(オーブン温度)/0.06ミリバール)により、回収された(2)(収率=13%)を含有する、(3)(481mg;純度77%;収率=79%)が得られた。
【0047】
B)2−(2,5,5,8a−テトラメチル−3,5,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−1−ナフタレニル)エタノール(1)の環化
【化9】

【0048】
− FeCl及びSiOを使用する:
1,2−ジクロロエタン(5ml)及びCHCl(8ml)中の2−(2,5,5,8a−テトラメチル−3,5,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−1−ナフタレニル)エタノール(1)(500mg;純度96%;2.05ミリモル)の溶液を、SiO60Å(70〜220μm)(84mg)を用いて24℃で処理した。撹拌しながらFeCl(貯蔵されたグローブボックス;167mg;1.03ミリモル)を添加した。20分後に、暗色の反応混合物を撹拌しながら5%のHCl中に注ぎ込み且つEtO(2x)で抽出した。有機相を水、飽和NaHCO水溶液及び飽和NaCl水溶液で連続的に洗い、乾燥(NaSO)させ且つ蒸発させた。バルブ-バルブ蒸留(125℃(オーブン温度)/0.06ミリバール)により(±)−(5)(454mg;純度81%;収率=73%)が得られた。(6)(収率=4%)及び(7)(収率=2%)も得られた。(1)(収率=8%)も回収された。
【0049】
− 化学量論量でFeClを使用する:
CHCl(4ml)及び1,2−ジクロロエタン(2ml)中の2−(2,5,5,8a−テトラメチル−3,5,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−1−ナフタレニル)エタノール(300mg;1.28ミリモル)の溶液を、FeCl(208mg;1.28ミリモル)を用いて0℃で処理した。40分後、転化が完了した。反応混合物を撹拌しながら5%のHCl水溶液中に注ぎ込み且つEtOで2回抽出した。有機相を水、飽和NaHCO水溶液及び2回飽和NaCl水溶液で連続的に洗い、乾燥(NaSO)させ且つ蒸発させた。バルブ-バルブ蒸留(115℃(オーブン温度)/0.03ミリバール)により極微量の(6)(収率=2%)を含有する純粋な(±)−(5)(198mg;純度96%;収率=63%)が得られた。
【0050】
− 触媒量でFeClを使用する:
1,2−ジクロロエタン(20ml)中の(+)−2−(2,5,5,8a−テトラメチル−3,5,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−1−ナフタレニル)エタノール([α]20+45(CHCl;c:0.84;1.0g;4.27ミリモル)の溶液を、無水FeCl(138mg;0.848ミリモル)を用いて0℃で処理した。2分後に、温度を室温に達するようにした。撹拌を3時間継続させ、次いで別の部分の無水FeCl(;69mg;0.424ミリモル)を添加し且つ30分間撹拌を継続させた。反応混合物を撹拌しながら5%のHCl水溶液中に注ぎ込むことによって部分的な転化で止めて且つEtOで2回抽出した。有機相を水、飽和NaHCO水溶液及び2回飽和NaCl水溶液で連続的に洗い、乾燥(NaSO)させ且つ蒸発させた。カラムクロマトグラフィーによる精製(SiO(60g);シクロヘキサン/AcOEt=99:1)により159mgの第1フラクション(39%の(+)−(5)、27%の(6)及び9%の(+)−(7)を十分理解して含有する)が得られ、その後423mg(収率=42%)の純粋な(+)−(5)(93% ee;[α]20+84(CHCl;c:0.92;739mg)が得られ、次いでシクロヘキサン/AcOEt=9:1を使用し、316mg(収率=32%)の(+)−(1)を回収した。
【0051】
WO2007/010420号に記載された手順によって製造された(−)−2−メチル−4−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)ブタナールから製造された
【0052】
実施例3
実施例2に記載のものと同じ実験手順の後に、他のルイス酸を試験した。
【0053】
(2)の環化の結果を以下の表Iに示す:
【表1】

【0054】
p.s.実施例1で得られた出発材料が使用された(94%の純度)
1)括弧の間は出発アルコール(2)を基準としたモル量である
2)括弧の間はルイス酸を基準としたw/w量である
3)(2)と溶媒との間のw/w比は実施例2)と同じであり、括弧の間は2つの溶媒間のw/w比である。
4)反応時間
5)(2)、(3)及び(4)以外の回収された非揮発性生成物、最初に使用された(2)の量を基準としたw/wパーセンテージ(%)
6)GC分析によって得られた相対量の揮発性フラクション(%)
7)モル比
OTf=トリフラート−:比較例(従来技術の条件−WO06/10287号)
【0055】
前記表Iから明らかなように、本発明の方法は、標準的な方法(強いプロトン酸のみ)の使用によって得られたものと同程度の良好な収率を与えることができ、更に、本発明の方法は、強いプロトン酸のみの使用によって可能であるものと比較して更に高い選択性を有する所望の生成物を得ることを可能にする。
【0056】
式(II)のアイソマー(アンブロール(ambrol))の混合物の環化の結果を以下の表IIに示す:
【表2】

【0057】
SM:出発アルコール
1)括弧の間は出発アルコールを基準としたモル量である
2)括弧の間はルイス酸を基準としたw/w量である;**出発アルコールを基準としたモル量
3)SMと溶媒との間のw/w比は実施例2)と同じであり、括弧の間は2つの溶媒間のw/w比である
4)反応時間
5)出発アルコール、(3)及び(4)以外の回収された非揮発性生成物、最初に使用されたアルコールの量を基準としたw/wパーセンテージ(%)
6)GC分析によって得られた相対量の揮発性フラクション(%)
7)モル比
OTf=トリフラート−:比較例(従来技術の条件−WO06/10287号)
【0058】
前記表IIから明らかなように、アンブロールの混合物の使用によって、本発明の方法は、標準的な方法(強いプロトン酸のみ)の使用によって得られたものよりも高い収率を与えることができ、強いプロトン酸のみの使用によって得られたものよりも有意に高い選択性を有する。
【0059】
式(II)のアイソマー(アンブロール)の混合物の環化の結果を以下の表IIIに示す:
【表3】

【0060】
SM:出発アルコール
1)括弧の間は出発アルコールを基準としたモル量である
2)括弧の間はルイス酸を基準としたw/w量である;**出発アルコールを基準としたモル量
3)SMと溶媒との間のw/w比は実施例2)と同じであり、括弧の間は2つの溶媒間のw/w比である
4)反応時間
5)GC分析によって得られた相対量の揮発性フラクション(%)
6)モル比
7)TsOHはMeCSOHである
8)反応は終了しなかった
【0061】
前記表IIIから明らかなように、本発明の方法は、わずか30分で終了するので、従来技術の方法よりも更に速く、工業的に関心の高い転化を与える。更に、転化の終了時に、本発明の方法は、わずかに少ない量の所望の生成物を与えるが、強いプロトン酸のみの使用によって得られたものよりも更に高い選択性を可能にすることも明らかである。
【0062】
(1)の環化の結果を以下の表IVに示す:
【表4】

【0063】
p.s.実施例1で得られた出発材料が使用された(94%の純度)
1)括弧の間は出発アルコール(2)を基準としたモル量である
2)括弧の間はルイス酸を基準としたw/w量である
3)(2)と溶媒との間のw/w比は実施例2)と同じであり、括弧の間は2つの溶媒間のw/w比である。
4)反応時間
5)GC分析によって得られた相対量の揮発性フラクション(%)
OTf=トリフラート
【0064】
MeSOHとの(1)の環化(従来技術の条件−WO06/10287号)を試みた時(1.3モル当量、T20℃)まさしく複合混合物が得られた。その際、所望のフラン(5)は全体の5%未満を占めて、多くの知られていない生成物が得られた(30%より多くを占める)。
【0065】
ClSOH(1.0モル当量、T−78℃、MeNO)との同じ環化によって転位生成物(3a,5a,6,6−テトラメチル−1,2,3a,4,5,5a,6,7,8,9−ペルヒドロナフト[2,1−b]フラン)のみが約25%の収率で得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラセミ体の形又は光学的に活性なジアステレオアイソマーの形での、式(I)、又は(I’)
【化1】

(式中、9a、9b及び3aの位置の置換基がシスの相対配置であり、5aの位置の水素原子及び酸素原子が9aの位置のメチルに対してトランスの配置である)
のフランの製造方法であって、
式(II)、又は(II’)それぞれ
【化2】

(式中、点線は示された位置の1つで炭素−炭素二重結合の存在を示し、前記化合物(II)又は(II’)はラセミ体の形又は光学的に活性な形であり、且つ化合物(II)の場合、ジアステレオアイソマーの形でもあり、その際、9aの位置のメチル及び5aの位置の水素原子は相対的なトランスの配置である)
のアルコールの環化を含み、
前記環化は少なくとも1種のルイス酸及び場合により添加剤により促進されることを特徴とする、フランの製造方法。
【請求項2】
前記化合物(II)又は(II’)がそれぞれ式(III)又は(III’)
【化3】

(式中、立体化学は化合物(II)又は(II’)について定義されている)
のものであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
式(I)又は(I’)の化合物が光学的に活性であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ルイス酸が、酸性クレー、BF誘導体、式AlClR、MX又はZnX(式中、RはC〜Cアルキル基であり、MはAl、Y、Sc及びFeからなる群から選択される三価金属カチオンであり、且つXはCl又はF原子を表すか又は弱配位性もしくは非配位性のモノアニオンである)の金属塩からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
XがClO、C1−8スルホネート、BF、PF、SbCl、AsCl、SbF、AsF又はBR(式中、Rは、ハライド原子又はメチルもしくはCF基などの1〜5個の基によって場合により置換されたフェニル基である)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記ルイス酸がFeCl、Sc(CFSO、及びBF(EtO)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
化合物(II)又は(II’)と、少なくとも1種のルイス酸及びC〜Cスルホン酸、水、C〜C12アルコール、シリカ、酸化アルミニウム又は分子篩の中で選択された少なくとも1種の添加剤とを反応させることによって実施することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項8】

【化4】

の、その立体異性体又はその混合物のいずれか1つの形である、化合物。

【公表番号】特表2011−500787(P2011−500787A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530597(P2010−530597)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【国際出願番号】PCT/IB2008/054299
【国際公開番号】WO2009/053884
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】