説明

テトラヒドロ−β−カルボリン化合物及びその使用

【課題】テトラヒドロ−β−カルボリン化合物及びその使用の提供。
【解決手段】本発明は、次式で表されるテトラヒドロ−β−カルボリン化合物:


(式中、x、y及びzは各々独立して0〜4の整数であり、Rは、H、アルキル、アリール及び複素環式部位からなる群より選択され、アルキル、アリール及び複素環式部位は、ハロゲン、アルコキシ及びトリフルオロメチルからなる群より選択される部分により任意に置換されている):、その医薬品に許容される塩、及び、そのプロドラッグに関する。上記化合物は、神経疾患の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテトラヒドロ−β−カルボリン化合物に関し、より具体的にはテトラヒドロ−β−カルボリンビスアミド化合物及びテトラヒドロ−β−カルボリンテトラミン化合物に関する。本発明の化合物は、うつ病及び不安等(これらに限定されない)の神経疾患の治療に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
二十世紀、精神障害において、化学療法による治療は多大な影響を及ぼした。これらの薬剤の作用における基礎的な生化学的機構の理解に対する科学的進歩は、顕著なものであった。しかし、進歩はしたが、まだ分かっていないことは非常に多い。様々な受容体及び受容体サブタイプと非常に多く相互作用した結果を洞察することにより、強力な神経刺激性薬剤の発明に結びつくであろう。
【0003】
様々な単純なテトラヒドロ−β−カルボリン化合物が自然界で見つかっており、これらの化合物のうちのいくつかは神経学的な作用に関連している(非特許文献1)。インドールアミン類とアルデヒド類のPictet−Spengler縮合反応により本来生成するこれらの物質は哺乳類の組織中に見られ、これらの物質と食料源との関連から、チョコレートやアルコールに対する欲求におけるこれらの潜在的な生物学的作用について推測が導かれた(非特許文献2及び3)。
【0004】
N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)受容体は、複数のサブユニットからなるリガンド依存性イオンチャネルであり、中央のイオンチャネルの周囲に多数の調節部位を有する。これらの受容体は、Na、Ca2+及びKイオンが細胞内外を移動する際の通路である。これらは、中枢神経系において広く分布している。NMDA受容体はグルタミン酸塩によって活性化され、陽イオンの流出及び細胞の脱極性を導く(非特許文献4参照)。
【0005】
NMDA活性化は、学習及び記憶において重要であると考えられる。しかし、過剰に活性化されると、エクサイトトキシン系のニューロン損傷を導く場合がある。このため、NMDA活性化のアンタゴニストが、アルツハイマー病及びパーキンソン病の治療薬として提案されている(非特許文献5参照)。
【0006】
NMDAアンタゴニストは、痛み(非特許文献6参照)、うつ病及び不安(非特許文献7参照)の治療薬として有用である可能性のあることが示されている。
【0007】
N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)受容体チャネル上の多数のポリアミン結合部位は、NMDA活性を調節する能力を有する(非特許文献8及び9参照)。
【0008】
ポリアミン結合部位における拮抗によって、NMDA受容体は過剰な刺激から妨げられている(非特許文献10参照)。
【0009】
ポリアミンの部位特異的なNMDAアンタゴニストを使用すると、主に、NMDA受容体の活性化を完全に阻害することなく調節できるという点で有利である。
【0010】
また、ポリアミン類及びポリアミン類似体類も、非NMDAグルタミン酸受容体に影響を及ぼす(非特許文献11参照)。
【0011】
ポリアミン類似体類以外に、NMDAアンタゴニストも、うつ病及び不安を治療できる治療薬として提案されている(非特許文献12〜14参照)。
【0012】
NMDA受容体アンタゴニストであるメマンチンは、5−HT受容体と拮抗することが示されており、これによって、その抗うつ効果が説明されるであろう(非特許文献15及び16参照)。
【0013】
例えばCGP 37849又はAP−7等の、NMDA受容体に対する他の競合的アンタゴニストも抗うつ病効果を有するということが、ラットの強制水泳試験において示されている(非特許文献17参照)。
【0014】
NMDAアンタゴニストは抗うつ剤と併用すると相乗的な抗うつ効果を示し、薬剤耐性のうつ病に対して特に有用である可能性がある(非特許文献7参照)。
【0015】
治療耐性の複雑部分発作の治療において、ポリアミン部位及びグリシン部位におけるアンタゴニスト等の他の併用療法を用いると、効果が改善される可能性がある(非特許文献18参照)。
【0016】
NMDA受容体のNR2Bサブユニットに対する選択的リガンドであるエリプロディルの場合のように、CNS薬における改良は活性な立体化学的異性体の識別に関連する可能性がある(非特許文献19参照)。
【0017】
また、抗うつ剤は様々な5−HT受容体と相互作用することによって作用する可能性がある(非特許文献20〜22参照)。
【0018】
セロトニン(5−HT:5−ヒドロキシトリプタミン)は神経伝達物質の小さな分子であり、その作用及び濃度は、受容体及び細胞輸送体によって調節される(非特許文献23参照)。
【0019】
セロトニンは、様々なセロトニン受容体を介して作用し、多数の疾患(うつ病、不安、統合失調症、片頭痛、摂食障害、パニック、高血圧症、嘔吐、社会恐怖症、強迫障害、肺高血圧症及び過敏性大腸症候群)に影響を及ぼす(非特許文献23参照)。5−HT輸送体は、抗うつ剤として効果の高い選択的セロトニン再摂取阻害剤のターゲットである。その構造、作用及び変換に基づいて、7つのファミリーの受容体(5−HTl−7)が存在する。更に、5−HT受容体の各ファミリーには多数のサブタイプがある。ファミリーの一つである5−HTはリガンド依存性イオンチャネルであり、それ以外はGタンパク質系、腸心血管系及び血液である。受容体サブタイプは、特定の局在パターンを示す。
【0020】
更に、グルタミン酸塩の神経伝達は、不安及びうつ病に影響を及ぼす。グループIの代謝調節型グルタミン酸塩受容体(mGluR)、グループIIのMGluR22及びグループIIIのmGluR23のアンタゴニストは、うつ病及び不安に対して潜在的に有用である(非特許文献24〜26をそれぞれ参照)。
【非特許文献1】Rommelspacher,H.ら. Beta−carbolines and tetrahydroisoquinolines: detection and function in mammals. Planta Med.1991,57(7),S85−92
【非特許文献2】Herraiz,T. Tetrahydro−b−carbolines, potential neuroactive alkoloids, in chocolate and cocoa. J. Agric. Food Chem.2000,48,4900−4904
【非特許文献3】Adell,A;Myers,R.D. Increased alcohol intake in low alcohol drinking rats after chronic infusion of the b−carboline Harman into the hippocampus. Pharmacol. Biochem. Behav.1994,49,949−953
【非特許文献4】Ozawaら. Glutamate receptors in the mammalian central nervous system. Prog. Neurobiol.1998,54,581−618
【非特許文献5】Choi, Glutamate neurotoxicity and diseases of the nervous system. Neuron 1988,8,623−634
【非特許文献6】Parsons, NMDA receptors as targets for drug action in neuropathic pain. Eur. J. Pharmacol.2001,429,71−78
【非特許文献7】Rogozら. Synergistic effect of uncompetitive NMDA receptor antagonists and antidepressant drugs in the forced swimming test in rates. Neuropharmacol.2002,42,1024−1030
【非特許文献8】Williamsら. Minireview. Modulation of the NMDA receptor by polyamines. Life Sciences 1991,48(6),469−498
【非特許文献9】Sharmaら. Characterization of the effects of polyamines on [125]MK−801 binding to recombinant N−methyl−D−aspartate receptors. J Pharmacol Exper. Therap.1999,289(2),1041−1047
【非特許文献10】Worthenら Endogenous indoles as novel polyamine site ligands at the N−methyl−D−aspartate receptor complex. Brain Res.2001,890,343−346
【非特許文献11】Chaoら. Nl−dansyl−spermine and Nl−(n−octanesulfonyl)−spermine, novel glutamate receptor antagonists: Block and permeation of N−methyl−D−aspartate receptors. Molec. Pharmacol.1997,51,861−871
【非特許文献12】Trullasら. Functional antagonists of the NMDA receptor complex exhibit antidepressant action. Eu. J Pharmacol.1990,185,1−10
【非特許文献13】Morylら. Potential antidepressive properties of amantadine, memantine and bifemelane. Pharma. and Tox.1993,72,394−397
【非特許文献14】Skolnick, Antidepressants for the new millennium. Eur. J Pharmacol.1999,375,31−40
【非特許文献15】Rammesら. The NMDA receptor channel blockers memantine, neramexane and other amino−alkyl−cyclohexanes also antagonize 5−HT3 receptor currents in HEK−293 and N1E−115 cells in an uncompetitive manner. Neuroscience Lett.2001,306,81−84
【非特許文献16】Parsonsら. Memantine is a clinically well tolerated N−methyl−D−aspartate (NMDA) receptor antagonist − a review of preclinical data. Neuropharmacology 1999,38,735−767
【非特許文献17】Maj. NMDA receptor antagonists and antidepressant drugs. Pharmacol Res.1992,25,R1
【非特許文献18】Wlaxら. Anticonvulsant effects of eliprodil alone or combined with the glycineB receptor antagonist L−701,324 or the competitive NMDA antagonist CGP 40116 in the amygdala kindling model in rats.Neuropharmaco.1999,38,243−251
【非特許文献19】Pabelら. Synthesis and resolution of racemic eliprodil and evaluation of the enantiomers of eliprodil as NMDA receptor antagonists. Bioorganic & Med. Chem. Lett.2000,10,1377−1380
【非特許文献20】Kilpatrickら. Affinities of 5−HT uptake inhibitors for 5−HT3 receptors in both binding and functional studies.Brit J. Pharmacol.1989,98(Suppl.):859
【非特許文献21】Lucchelliら. The interaction of antidepressant drugs with central and peripheral (enteric) 5−HT3 and 5−HT4 receptors. Brit J Pharmacol.1995,114,1017−1025
【非特許文献22】Glennon, Higher−end serotonin receptors:5−HT5, 5−HT6, and 5−HT7. J. Med. Chem.2003,46,2795−2812
【非特許文献23】Hoyerら. Molecular, pharmacological and functional diversity of 5−HT receptors. Pharmacology, Biochem. and Behavior 2002,71,533−554
【非特許文献24】Pilcら. Multiple MPEP administrations evoke anxiolytic−and antidepressant−like effects in rats. Neuropharma.2002,43(2),181−187
【非特許文献25】Chjnacka−Wojcikら. Glutamate receptor ligands as anxiolytics. Curr Opin Investig Drugs. 2001,2(8),1112−1119
【非特許文献26】Cryanら. Antidepressant and anxiolytic−like effects in mice lacking the group III metabotropic glutamate receptor MGluR7. Eur J Neurosci.2003,17(11),2409−2417
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上記にもかかわらず、神経疾患に対する新たな治療法の提供が望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0022】
(発明の概要)
本発明は、次式で表されるテトラヒドロ−β−カルボリン化合物:
【0023】
【化1】

【0024】
【化2】

【0025】
(式中、x、y及びzは各々独立して0〜4の整数であり、Rは、H、アルキル及びアリール及び複素環式部位からなる群より選択され、アルキル、アリール及び複素環式部位は、ハロゲン、アルコキシ及びトリフルオロメチルからなる群より選択される部分により任意に置換されている):、その医薬品に許容される塩、及び、そのプロドラッグに関する。
【0026】
また、本発明は、少なくとも一つの上記化合物を有効成分として含む医薬組成物にも関する。
【0027】
本発明の更なる態様は、少なくとも一つの上記テトラヒドロ−β−カルボリン化合物の神経学上治療有効量を神経疾患患者に投与することによる、神経疾患の治療に関する。
【0028】
(図面の説明)
図1は、本発明のテトラヒドロ−β−カルボリン化合物のTLC分析である。
【0029】
図2は、本発明のテトラヒドロ−β−カルボリン化合物のLC/MS分析である。
【0030】
(発明の実施のための最良の形態)
本発明のテトラヒドロ−β−カルボリン化合物は、次式で表される:
【0031】
【化3】

【0032】
【化4】

【0033】
(式中、x、y及びzは各々独立して0〜4の整数であり、Rは、H、アルキル及びアリール及び複素環式部位からなる群より選択され、アルキル、アリール及び複素環式部位は、ハロゲン、アルコキシ及びトリフルオロメチルからなる群より選択される部分により任意に置換されている)。
【0034】
また、本発明は、本明細書中に記載するテトラヒドロ−β−カルボリン化合物の、遊離塩基型又は遊離酸型(及びその塩)も提供する。また、本発明は、上記に開示するテトラヒドロ−β−カルボリン化合物の光学異性体も含む。本発明の別の態様においては、単一の調製段階、組み合わせ又は相互転換の結果生じるエナンチオマー及び/又はジアステレオマーの混合物が包含される。
【0035】
また、本発明は、上記テトラヒドロ−β−カルボリン化合物のプロドラッグを提供する。このプロドラッグが生体内で代謝されることによって、上記テトラヒドロ−β−カルボリン化合物が生成する。実際に、上記テトラヒドロ−β−カルボリン化合物は別の化合物のプロドラッグであってもよい。
【0036】
下記に列挙したものは、本発明を説明するために用いられる種々の用語の定義である。これらの定義は、別途個別に、又は、まとまった語群のうちの一部として、個々の場合において限定されていない限り、本明細書を通して、その用語が使用されている通りにそのまま適用されるものである。
【0037】
「アリール(基)」という用語は、フェニル(基)、2−ナフチル(基)、1−ナフチル(基)、4−ビフェニル(基)、3−ビフェニル(基)、2−ビフェニル(基)及びジフェニル(基)等の、典型的には環内に6〜14個の炭素原子を有する単環式又は多環式の芳香族炭化水素基を指し、それぞれの基は置換基を有していてもよい。
【0038】
「飽和脂肪族(基)」という用語は、典型的には1〜20個の炭素原子、より典型的には1〜8個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖の無置換炭化水素基を指す。「低級アルキル(基)」という表現は、1〜4個の炭素原子を有する無置換のアルキル基を指す。
【0039】
好適な飽和脂肪族基又はアルキル基の例には、メチル基、エチル基及びプロピル基が含まれる。分岐鎖を有するアルキル基の例には、イソプロピル基及びt−ブチル基が含まれる。
【0040】
「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。
【0041】
「複素環式」という用語は、飽和又は不飽和の、単環式又は多環式の基を指す。
【0042】
多環式芳香族(不飽和)複素環基の例は、2−キノリニル基、3−キノリニル基、5−キノリニル基、6−キノリニル基、7−キノリニル基、1−イソキノリニル基、3−イソキノリニル基、6−イソキノリニル基、7−イソキノリニル基、3−シノリル基、6−シノリル基、7−シノリル基、2−キナゾリニル基、4−キナゾリニル基、6−キナゾリニル基、7−キナゾリニル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−フタラオニル基、6−フタラジニル基、1−5−ナフチリジン−2−イル基、1,5−ナフチリジン−3−イル基、1,6−ナフチリジン−3−イル基、1,6−ナフチリジン−7−イル基、1,7−ナフチリジン−3−イル基、1,7−ナフチリジン−6−イル基、1,8−ナフチリジン−3−イル基、2,6−ナフチリジン−6−イル基、2,7−ナフチリジン−3−イル基、インドリル基、1H−インダゾリル基、プリニル基及びプテリジニル基である。
【0043】
単環式複素環基の例は、ピロリル基、ピラニル基、オキサゾリル基、チアゾイル基、チオフェニル基、フラニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、4−ピリミジニル基、3−ピリミジニル基及び2−ピリミジニル基、ピリダジニル基、イソチアゾリル基及びイソキサゾリル基である。
【0044】
飽和複素環基の例は、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基及びモルホリニル基である。
【0045】
複素環式基はN、O及び/又はSを含み、概して環内に5〜10個の原子を含み、概して環内に1、2又は3個のヘテロ原子(例えば−N、O及びS)を含む。
【0046】
アルコキシ基は、典型的には、1〜8個の炭素原子を含み、より典型的には1〜4個の炭素原子を含む。好適なアルコキシ基の例は、メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基である。
【0047】
種々の窒素系官能基(アミノ基、ヒドロキシアミノ基、ヒドラジノ基、グアジニノ基、アミジノ基、アミド基等)を有する化合物のプロドラッグの形態としては、下記の種の誘導体が含まれていてもよい。ここでR基は、それぞれ独立に、上述したような、水素、置換又は無置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アルキルアリール基、アラルキル基、アラルケニル基、アラルキニル基、シクロアルキル基又はシクロアルケニル基であってもよい。
カルボキサミド類、−NHC(O)R
カルバミン酸エステル類、−NHC(O)OR
カルバミン酸(アシルオキシ)アルキルエステル類、NHC(O)OROC(O)R
エナミン類、−NHCR(=CHCROR)又は−NHCR(=CHCRONR
シッフ塩基類(Schiff Bases)、−N=CR
マンニッヒ塩基類(Mannich Bases)(カルボキシイミド化合物由来)、RCONHCHNR
【0048】
上記プロドラッグ誘導体の調製法は、種々の文献において議論されている(例えば、Alexanderら, J.Med.Chem.1988,31,318;Aligas−Martinら, PCT WO pp/41531,p.30)。これらの誘導体を調製する際に変換される窒素系官能基は、本発明の化合物の窒素原子のうちの1つ(又は2つ以上)である。
【0049】
本発明の、カルボキシル基を有する化合物のプロドラッグ型の形態には、エステル(−COR)が含まれる。ここでR基は、酵素的又は加水分解的プロセスを介して体内に放出される量が薬学的に許容されるレベルにある任意のアルコールに相当する。
【0050】
本発明のカルボン酸型化合物に由来する別のプロドラッグは、Bodorら, J. Med. Chem.1980,23,469に記載された下記4級塩型構造であってもよい。
【0051】
【化5】

【0052】
本発明の化合物が、分子内に存在する可能性のある種々の原子における全ての光学異性体及び立体異性体に関するものであるということは、当然ながら理解されるものである。
【0053】
本発明の方法において使用される化合物は、広範囲にわたる種々の有機酸及び無機酸並びに有機塩基及び無機塩基と一緒になって、酸及び塩基が付加した塩を形成するものであり、その中には、薬化学において使用頻度の高い、生理学的に許容される塩が含まれる。このような塩も本発明の一部である。上記塩を形成するために使用される典型的な無機酸には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、次リン酸等が含まれる。脂肪族モノカルボン酸及びジカルボン酸、フェニル基置換アルカン酸(alkonic acid)、ヒドロキシアルカン酸及びヒドロキシアルカンジオン酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸等の有機酸由来の塩も使用することができる。従って、上記医薬品に許容される塩には、酢酸塩、フェニル酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アクリル酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、o−アセトキシ安息香酸塩、ナフタレン−2−ベンゾエート、臭化物、イソ酪酸塩、フェニル酪酸塩、β−ヒドロキシ酪酸塩、ブチン−1,4−ジオエート、ヘキシン−1,4−ジオエート、カプロン酸塩、カプリル酸塩、塩化物、珪皮酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、馬尿酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシラート、ニコチン酸塩、イソニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、プロピオール酸塩、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、サリチル酸塩、セバシン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、ピロ硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、スルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−ブロモベンゼンスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、酒石酸塩等が含まれる。
【0054】
塩を形成するために一般的に使用される塩基には、水酸化アンモニウム、並びに、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、更に1級、2級及び3級の脂肪族アミン、脂肪族ジアミンが含まれる。付加塩の調製に特に有用な塩基には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウム、メチルアミン、ジエチルアミン及びエチレンジアミンが含まれる。
【0055】
本発明の好ましい化合物は、次式で示される。
【0056】
【化6】

【0057】
下記の表1は、本発明の範囲内における、合成された様々な化合物を挙げる。
【0058】
表1:テトラヒドロ−β−カルボリン化合物
【0059】
【表1a】

【0060】
【表1b】

【0061】
【表1c】

【0062】
【表1d】

【0063】
本発明の化合物は、固相合成で形成することができる(スキーム1)。
【0064】
スキーム1:MQT1及びMQT2の合成
【0065】
【化7】

【0066】
条件及び試薬:(a)i.3−アミノプロパノール、CHC1、ii.PPh、フタルイミド、DIAD、CHC1、iii.NHNHO、EtOH;(b)(R,S)−Fmoc−ニペコチン酸((R,S)−Fmoc−nipecotic acid)、HBTU、HOBt、PrNet、DMF;(c)DMF中の20%ピペリジン;(d)Fmoc−D−1,2,3,4−テトラヒドロノルハルマン−3−カルボン酸(Fmoc−D−1,2,3,4−tetrahydronorharman−3−carboxylic acid)、HBTU、HOBt、PrNet、DMF;(e)CHCl/TFA/PrSiH(48:48:4);(f)i.BH、THF、B(OCH、B(OH)、還流、ii.ピペリジン、還流。
【0067】
本発明の固相ビスアミド化合物は、公知の方法によって還元可能であり、完全還元型のポリアミン相当物になり得る(Nefziら. Tetrahedron Lett.1997,38,931、及び、Hallら. Mild oxidative cleavage of borane amine adducts from amide reductions: efficient solution− and solid−phase synthesis of N−alkylamino acids and chiral oligioamines. J. Org. Chem.1999,64,698−699参照)。
【0068】
本発明について更に理解を深める目的で、本発明の化合物の例証として、MQT1及びMQT2の調製を以下に参照する。
【0069】
具体的には、MQT1及びMQT2は、下記スキームに示す固相合成法によって形成される。塩化トリチル樹脂を、CHCl中の3−アミノ−1−プロパノールで処理することによって、以降の反応のためにアルコールが露出したアミン置換樹脂が得られる。アルコールのアミン基への転換においては、標準的な光延条件を用い、続いて、フタルイミド群のヒドラジン媒介性加水分解を実施する。これによって、FMOC−ニペコチン酸等のFMOC保護アミノ酸とカップリングできるアミン基が形成される。HBTUに基づくアミドカップリング条件を用いることによって、この固相の中間体が形成される。FMOC基の開裂によって、例えば1,2,3,4−テトラヒドロノルハルマン−3−カルボン酸(1,2,3,4−tetrahydronorharmane−3−carboxylic acid)を有する次のアミノ酸とカップリング可能な、次の遊離アミノ基が形成される。ロード効率の測定は、これらの2つの段階に従って、FMOC基の開裂によって形成されたUV発色団の量を、固相樹脂の測定量から測定することによって実施することができる。一般的に、この時点におけるロード効率は、樹脂メーカーが指定するロードの程度に基づいて、85〜95%であると測定される。
【0070】
FMOC保護基が樹脂本体から開裂した後、このFMOC保護基は直接開裂してジアミドMQT1を形成することができる、又は、このFMOC保護基を、ボランを使用する徹底的な還元条件下で65℃で反応させることにより、ポリアミンMQT2の固相前駆体を生成することができる。結果的に、ジアミドMQT1の89%という高い収率は、CHC1/TFA/PrSiH(80:18:2)を使用する開裂によって得られる。この粗製材料は、薄層クロマトグラフィ分析及びLC/MS分析によれば適度な純度となるが、一般的にはシリカゲル上のカラムクロマトグラフィを使用して精製される。全般的に見れば、収率は65%とすることができる。この材料は、TLC及びLC/MS法により、図1及び図2中に示されるように、純度が高い。図1中に示されるように、MQT1のジアステレオマーをこの溶媒系によって分離することができる。これらの2つのジアステレオマーは、カラムクロマトグラフィによって分離した。
【0071】
徹底的に還元した後の樹脂の開裂には、ジアミド化合物の場合に用いた方法と同様の一般的な方法を用いた。徹底的な還元反応においてやや極端な方法を使用したにもかかわらず、還元されていないモノアミドが副生物として適量存在することが、粗生成物のLC/MS分析で観察される。粗生成物をlBocO又は無水ヘプタフルオロ酪酸によって誘導体化し、その後、標準的なシリカゲル又はfluoroflash(商標)に基づくカラムクロマトグラフィを実施することによって、この副生物を完全に除去することができる。酸又は塩基を媒介とした反応で誘導体を加水分解することによって、モノアミドを含まない、完全に還元された生成物を得る。
【0072】
出発原料であるアミノ酸がいずれの鏡像異性体形式であるかによって、化合物1又は2それぞれの取り得る4つのジアステレオマー形式のうちのいずれが形成されているかが決定される。Fmoc−1,2,3,4−テトラヒドロノルハルマン−3−カルボン酸(Fmoc−1,2,3,4−tetrahydronorharman−3 carboxylic acid)のL体を使用するのが好ましい。あるいは、立体形式がD形式であるFmoc−D−1,2,3,4−テトラヒドロノルハルマン−3−カルボン酸を使用することもできる。同様に、R−Fmoc−ニペコチン酸も使用されるが、S−Fmoc−ニペコチン酸を使用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0073】
下記例は本発明を更に説明するものであり、本発明は下記例に限定されない。
【0074】
一般的な化学的手法:1%DVBにより架橋された固相樹脂ポリスチレン−クロロトリチル樹脂は、体積が1.49mmole/gであり、粒子径が100〜200メッシュ(mest)である。
【0075】
樹脂を4時間乾燥させた後で、次の反応を実施する。樹脂の洗浄とは、DMF、PrOH、THF及びCHClで、それぞれ3回、各回3分間ずつ洗浄することを指す。樹脂のロードは、DMF中の20%ピペリジン3mLで処理した後に、測定量10mgの樹脂から放出されたUV発色団を290nmで測定することにより、慣例的に確認する。得られる溶液を、同じ溶媒中で10倍希釈し、290nmにおける吸光度を測定する。その後、樹脂のロード量を次の等式によって計算する:ロード(mmole/g)=Abs290mm/1.65。LC/MS分析は、0.05%ヘプタフルオロ酪酸をそれぞれ含むH0及びCHCNの5〜100%の勾配を使用して、Gilson社製HPLCシステムを使用することによって実施する。勾配は7分間以上で、100%のCHCNで5分間で保持する。流速は、2.1×100mmのWaters社製SymmetryShield RP18カラムを使用して0.4mL/分間である。検出は、ダイオードアレイ検出により210〜410nmで、かつ、ESI MSにより100〜1200原子質量単位で実施する。
【実施例1】
【0076】
樹脂4−無水CHCI300mL中に膨潤させた塩化トリチル樹脂30g(44.7 mmol)に、1.3−アミノプロパノール20mLを室温でアルゴン雰囲気下において添加する。樹脂を穏やかに18時間震盪し、洗浄及び乾燥させる。樹脂を、無水CHCl300mL中で膨潤させ、PPh35.6g(136mmol、3eq)及びフタルイミド200g(136mmol、3eq)を室温で添加する。この混合物を、樹脂を穏やかに撹拌しながら、ジイソプロピルジアゾジカルボキシレート26.8mL(136mmol、3eq)を滴下することによって処理する。容器を18時間震盪し、洗浄及び乾燥させる。樹脂を、ヒドラジン水和物100mL及び無水エタノール100mLで処理し、その後、Robins(商標)固相合成オーブン中で震盪しながら、65℃において加熱する。反応を18時間継続して実施した後、容器を冷却して、樹脂を洗浄し、標準的な方法で乾燥させる。
【0077】
樹脂6−上記の樹脂4 10g(14.9mmol)に、HBTU 22.6g(60mmol、4eq)、HOBT 2.0g(14.9mmol、1eq)、(R,S)−Fmoc−ニペコチン酸21.8g(60mmol、4eq)、及び、PrNEt 20mL(120mmol、8eq)を無水DMF 125mL中に混合して作成した溶液を、15分間かけて添加した。樹脂を4時間震盪して洗浄及び乾燥させ、樹脂5を得た。その後、樹脂を、DMF中の20%ピペリジン100mLで90分間処理して洗浄及び乾燥させ、樹脂6を得た。
【0078】
樹脂8−上記の例と同様に、保護されたアミノ酸としてFmoc−L−1,2,3,4−テトラヒドロノルハルマン−3−カルボン酸を使用し、かつ、樹脂6 2.42g(3.6 mmol)を使用して標準的なカップリングを実施し、Fmoc保護ジペプチド樹脂7を得る。この樹脂を、標準的な条件下で、DMF中の20%ピペリジンを使用して脱保護する。洗浄及び乾燥させることによって樹脂8を得、これをジアミドMQT1の開裂において、又は、徹底的な還元によるテトラミンMQT2の取得に直接使用することができ、この両者は下記に記載する。
【0079】
ジアミド(MQT1)−上記樹脂600mgに、CHCl/TFA/PrSiH(48:48:4)の開裂カクテル10mLを室温で添加する。容器を90分間震盪して、溶液をろ過する。樹脂を、開裂カクテル(CHC1及びMeOH)10mLずつで3回洗浄する。ろ液と洗浄液を合わせて蒸発させることにより、暗赤色の油状固体の粗生成物をTFA塩として得る。この物質を、CHCN/cond NH0H(80:20)を使用して20gシリカゲルカラムにより精製する。同じ溶媒系でニンヒドリン検出を使用してTLCにより純粋な分画を確認し、純粋な分画を合わせて蒸発させ、純粋な生成物を遊離塩基として得る。これを、MeOH中に溶解して3N HCIで処理し、蒸発させることによってHCl塩に変換する。得られた生成物は重量265mgであった(1.49mmol/gの樹脂の置換に基づいて65%)。
【実施例2】
【0080】
徹底的な還元による樹脂9の取得−還流コンデンサ及び磁気撹拌棒を備えた300mLの丸底フラスコ中で、無水THF 50mL中に懸濁した上記樹脂8 7.5gに、ホウ酸トリメチル5mL及び無水ホウ酸5gを添加する。この懸濁液を撹拌している中に、ボラン−硫化ジメチル複合体50mLを添加する。この添加の後、多量の水素ガスを放出させる。装置をアルゴン雰囲気下に置き、加熱して還流させる。この反応をこの温度で80時間実施した後、室温に冷却する。フラスコの内容物をろ過し、ろ液を、MeOHで注意深く冷却し、その後氷で注意深く冷却する。樹脂を、THF、MeOH及びCHClでそれぞれ4回ずつ洗浄する。その後、樹脂を、300mLフラスコ中のピペリジン100mL中に懸濁し、加熱して24時間還流させる。冷却した後、内容物を上記の標準的な方法で洗浄し、その後、真空下で4時間かけて乾燥させる。
【0081】
テトラミン(MQT2)−樹脂9 600mgのサンプルに、CHCl/TFA/PrSiH(48:48:4)の開裂カクテル10mLを室温で添加する。得られる懸濁液を、90分間震盪する。溶液をろ過し、樹脂を、開裂カクテル(CHCl及びMeOH)10mLずつで3回洗浄する。ろ液と洗浄液を合わせて蒸発させることにより、暗赤色の油状固体の粗生成物をTFA塩として得る。この物質を、CHCN/cond NHOH(80:20)を使用して20gシリカゲルカラムにより精製する。同じ溶媒系でニンヒドリン検出を使用してTLCにより純粋な分画を確認し、純粋な分画を合わせて蒸発させ、純粋な生成物を遊離塩基として得る。これを、MeOH中に溶解して3N HCIで処理し、蒸発させることによって5HCl塩に変換する。含まれる生成物は重量230mgである(1.49mmol/gの樹脂の置換に基づいて48%)。
【0082】
動物実験
【実施例3】
【0083】
強制水泳試験(うつ試験モデル)−強制水泳試験において、ラットの総静止時間を評価することができる(Porsolt,R.D., Anton,G., Blavet,N., Jalfre,M. Behavioral despair in rats, a new model sensitive to antidepressant treatments. Eur.J Pharmacol.1978,47,379−391)。静止時間が短い場合には、試験化合物が抗うつ様効果を有することが示される。
ラットにMQT化合物を経口投与し、その後水泳試験を実施した。動物を6分間観察した。1及び2の両方について、それぞれ3通りの投与量(0.3、3及び30mg/kg)で試験した結果、そのすべてについて静止が低減された。
【実施例4】
【0084】
2つに仕切った明暗ボックスにおける試験(不安試験モデル)−所定時間内に、明るい所にいる時間が長くなり、かつ、明ボックスと暗ボックスとを移動する回数が増える場合に、不安が低減されたことが示されるであろう(Belzung,C., Misslin,R., Vogel,E., Dodd,R.H., Chapoutheir,G. Anxiogenic effects of methyl−beta−carboline−3−carboxylate in a light/dark choice situation. Pharmacol Biochem. Behav.1987,28(1),29−33)。ラットに両MQT化合物を経口投与し、その後、明暗ボックス試験を実施した。動物を5分間観察した。両薬剤について、それぞれ3通りの投与量(0.3、3及び30mg/kg)で試験した結果、そのすべてについて、明るい所にいる時間が長くなり、かつ、暗所と明所とを移動する回数が増えた。
【0085】
予想外にも、不安及びうつ病の動物モデルにおいて試験したところ、本発明の上記化合物は有効である。更に興味深いことに、親水性の非常に高いこれら2つの物質は、経口投与により投与されると有効である。更に、これらの化合物を多様な神経学的受容体と相互作用させて試験した際、分子作用機構が明瞭ではないことに着目することも興味深い。従って、本発明の化合物は、作用機構が明らかではない、新たなクラスの、親水性で、経口投与により有効な、神経学的薬剤である。
【0086】
本発明によって治療される神経疾患は、不安及びうつ病を含む。
【0087】
本発明の化合物は、個々の治療薬として、あるいは、治療薬を組み合わせて、医薬品と共に使用するために利用可能な任意の従来の手段によって投与することができる。上記化合物は単独で投与することができるが、一般的に、選択された投与経路及び標準的な薬学上の慣例に基づいて選択された薬学的な担体又は賦形剤と共に投与される。
【0088】
本発明の化合物は、単一の治療薬として、あるいは、治療薬の組み合わせとして、医薬品に対して使用可能な任意の従来の手段によって投与可能である。
【0089】
当然ながら、投薬量は、個々の薬剤の薬力学的特性、その投与形態及び投与経路;投薬対象者の年齢、健康状態及び体重;症状の性質及び程度;同時に行う治療の種類;治療回数;並びに、所望の効果等の既知の要因によって異なるであろう。有効成分の1日当たりの投与量は、体重1キログラム(kg)当たり約0.001〜1000ミリグラム(mg)、好ましい投与量は0.1〜約30mg/kgであると予想することができる。
【0090】
(投与に適した組成物の)剤形には、1単位当たり約1mg〜約500mgの有効成分が含まれている。これらの医薬組成物中には、有効成分は通常、組成物総重量の約0.5〜95重量%含有されるであろう。
【0091】
上記有効成分は、カプセル剤、錠剤及び粉末等の固体状、又は、エリキシル剤、シロップ剤及び懸濁液等の液状で経口投与可能である。また上記有効成分は、滅菌液状で非経口的にも投与可能である。上記有効成分は更に、鼻腔内に(点鼻剤)、又は、薬粉状のミストの吸入によっても投与可能である。他の剤形としては、パッチ構造又は軟膏としての経皮的投与等も可能であろう。上記有効成分は、持続性若しくは徐放性デリバリーシステム、又は、即放性デリバリーシステムを用いて投与可能である。
【0092】
経口投与に好適な調製物は、(a)有効量の化合物を、水、食塩水又はオレンジジュース等の希釈剤に溶解した液体溶液;(b)(それぞれ所定量の有効成分を固体又は顆粒状で含む)カプセル剤、サッシェ、錠剤、甘味つき錠剤及びトローチ;(c)粉末;(d)好適な液体中の懸濁液;並びに(e)好適な乳剤からなるものが考えられる。液体の調製物としては、水及びアルコール(例えばエタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレンアルコール)等の希釈剤を含んでいてもよく、医薬品に許容される界面活性剤、懸濁剤又は乳化剤が添加されていてもされていなくてもよい。カプセル剤としては、界面活性剤、滑剤、並びに、例えばラクトース、スクロース、リン酸カルシウム及びコーンスターチ等の不活性充填剤を含む、通常のハード又はソフトシェル型ゼラチンタイプのものが考えられる。錠剤には、ラクトース、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、バレイショデンプン、アルギン酸、微結晶セルロース、アラビアゴム、ゼラチン、グアーガム、膠質二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、並びに、他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、防腐剤、香料及び薬学的に適合性のある担体のうち、1種以上のものを含有させることができる。甘味つき錠剤は、香料中に、通常はスクロース及びアラビアゴム又はトラガカント中に有効成分を含んでいてよく、またトローチは、ゼラチン及びグリセリン等の不活性基剤、又は、スクロース及びアラビアゴム中に有効成分を含んでいてよく、更に乳剤及びゲル剤は、有効成分に加えて、当該技術分野で知られているような担体を含んでいてよい。
【0093】
本発明の化合物は、単独で、又は、他の好適な成分と組み合わせて、吸入によって投与されるエアロゾル調製物にすることができる。このエアロゾル調製物は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン及び窒素等の許容される加圧不活性ガス中に入れることができる。更に、上記エアロゾル調製物は、ネブライザー又はアトマイザー等の非加圧式薬剤として調剤してもよい。
【0094】
非経口投与に好適な調製物には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び、目的の投薬対象者の血液と調製物を等張にする溶質を含んでいてもよい水性又は非水性の等張滅菌注射溶液、並びに、懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤及び防腐剤を含んでいてよい水性又は非水性の滅菌懸濁液が含まれる。上記化合物は、医薬品用担体中の生理的に許容される希釈剤中に添加した状態で投与することができ、上記希釈剤としては、例えば水、食塩水、デキストロース及び関連の糖水溶液;エタノール、イソプロパノール又はヘキサデシルアルコール等のアルコール類;プロピレングリコール、又は、ポリ(エチレングリコール)400等のポリエチレングリコール等のグリコール類;2,2−ジメチル−1、3−ジオキソラン−4−メタノール等のグリセリンケタール類;エーテル類、油(オイル)類、脂肪酸、脂肪酸エステル若しくはグリセリド、又は、アセチル化脂肪酸グリセリド等を含む滅菌液体又は液体混合物が挙げられ、これには、石鹸若しくは洗浄剤等の医薬品に許容される界面活性剤、ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース若しくはカルボキシメチルセルロース等の懸濁剤、又は、乳化剤及び他の医薬品用補助剤が含まれていても含まれていなくてもよい。
【0095】
非経口投与用調製物において使用することができる油類には、石油性油、動物性油、植物性油及び合成油が含まれる。油類には具体的に、ピーナッツ油、大豆油、ごま油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ペトロラタム及び鉱油が含まれる。非経口投与用調製物において使用される好適な脂肪酸には、オレイン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸が含まれる。好適な脂肪酸エステルの例としては、オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルがある。非経口投与用調製物において使用される好適な石鹸には、脂肪酸アルカリ金属塩類、脂肪酸アンモニウム塩類及び脂肪酸トリエタノールアミン塩類が含まれ、好適な洗浄剤には、(a)陽イオン洗浄剤、例えばジメチルジアルキルアンモニウムハライド及びアルキルピリジニウムハライド等、(b)陰イオン洗浄剤、例えばスルホン酸アルキル、スルホン酸アリール及びオレフィンスルホナート、硫酸アルキル、オレフィンサルフェート、硫酸エーテル及び硫酸モノグリセリド、並びに、スルホコハク酸塩等、(c)非イオン性洗浄剤、例えば脂肪族アミン酸化物、脂肪酸アルカノールアミド及びポリオキシエチレン−ポリプロピレン共重合体、(d)両性洗浄剤、例えばアルキル−β−アミノプロピオネート及び2−アルキルイミダゾリン四級アンモニウム塩等、並びに、e)それらの混合物等が含まれる。
【0096】
非経口投与用調製物は、典型的には、溶液中に約0.5重量%〜約25重量%の有効成分を含む。この調製物中で、好適な防腐剤及び緩衝剤を使用することができる。注射する部位での刺激を最小限にするために、又は、刺激を取り除くために、上記組成物は、親水性と親油性のバランス(HLB)が約12〜約17である1種以上の非イオン性界面活性剤を含んでいてもよい。上記調製物中における界面活性剤の量は、約5重量%〜約15重量%の範囲である。好適な界面活性剤には、ソルビタンモノオレエート等のポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及び、プロピレンオキシドとプロピレングリコールの縮合によって形成される、疎水性塩基を有するエチレンオキシドの高分子付加体等が含まれる。
【0097】
更に、医薬品に許容される賦形剤もまた当業者に周知である。賦形剤は、幾分は具体的な化合物に応じて選択され、かつ、組成物の具体的な投与方法に応じて選択されるであろう。従って本発明の医薬組成物には、好適な調製物の態様が種々ある。下記方法及び賦形剤は単に例として示すものであり、これらに限定することは全く意図していない。医薬品に許容される賦形剤は、有効成分の作用を妨害せず、かつ、有害な副作用を引き起こさないものが好ましい。好適な担体及び賦形剤には、水、アルコール及びプロピレングリコール等の溶剤、固体吸着剤及び希釈剤、界面活性剤、懸濁剤、錠剤形成用結合剤、滑剤、香料及び着色剤が含まれる。
【0098】
上記調製物は、アンプル及びバイアル等の1回服用分密封容器又は複数回服用分含有密封容器にすることができ、フリーズドライ(凍結乾燥)した状態で保存することができ、これにより、使用直前に注射用の滅菌液体賦形剤(例えば水)を添加するだけで使用できる。注射溶液及び懸濁液は、滅菌した粉末、顆粒及び錠剤からその場で調製することもできる。注射用組成物のための有効な医薬品用担体に対する必要条件は、当業者に周知である。Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B. Lippincott Co.,Philadelphia,PA, Banker and Chalmers,Eds.,238−250(1982)、及び、ASHP Handbook on Injectable Drugs, Toissel,4th ed.,622−630(1986)を参照のこと。
【0099】
局所投与に好適な調製物には、香料(通常はスクロース及びアラビアゴム又はトラガント)中に有効成分を含む甘味入り錠剤;ゼラチン及びグリセリン等の不活性基剤、又は、スクロース及びアラビアゴム中に有効成分を含むトローチ;好適な液体担体中に有効成分を含む口内洗浄剤;並びに、有効成分に加えて当業者に公知の担体を含むクリーム剤、乳剤及びゲル剤が含まれる。
【0100】
更に、直腸投与に好適な調製物としては、乳化性基剤又は水溶性基剤等の種々の基剤と混合することにより得られる坐剤があげられる。膣投与に好適な調製物としては、有効成分に加えて、好適な担体として当業者に公知の担体を含む、膣坐剤、タンポン、クリーム、ゲル剤、ペースト剤、泡剤又はスプレー剤等が挙げられる。
【0101】
好適な医薬品用担体は、本分野で標準的な参考書である、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company)で説明されている。
【0102】
本発明の範囲内における動物(特に人間)に投与される投薬量は、妥当な時間枠を超えた場合に、治療に対する反応を動物体内で生じさせることのできる量であるべきである。当業者であれば、動物の状態、動物の体重、及び、治療する状態等の種々の要因に応じて投薬量が異なることを認識し得る。
【0103】
好適な投薬量は、患者体内で有効成分の濃度が所望の反応を生じさせることが知られる濃度となるような量である。
【0104】
また、投薬量の程度は、投与の経路、タイミング及び頻度と同時に、化合物の投与に伴って生じる可能性のある副作用の有無、性質及び程度、並びに、所望の生理学的作用によって決定されるであろう。
【0105】
本発明の化合物の投与に有用な医薬品の剤形は、例えば以下である。
【0106】
ハードシェルカプセル
粉末状有効成分100mg、ラクトース150mg、セルロース50mg及びステアリン酸マグネシウム6mgを標準的なツーピース式ハードゼラチンカプセル中に充填することにより、カプセル単位を多数調製する。
【0107】
ソフトゼラチンカプセル
大豆油、綿実油又はオリーブ油等の消化容易な油中に有効成分を混合した混合物を調製し、溶融させたゼラチン中にこの混合物を容積移送式ポンプを使用して注入することにより、有効成分を100mg含むソフトゼラチンカプセルを形成する。カプセルを洗浄し乾燥させる。有効成分は、ポリエチレングリコール、グリセリン及びソルビトールの混合物中に溶解させて、水混和性医薬混合物を作ることができる。
【0108】
錠剤
一錠あたりの処方量が、有効成分100mg、謬質二酸化ケイ素0.2mg、ステアリン酸マグネシウム5mg、結晶セルロース275mg、デンプン11mg及びラクトース98.8mgとなるように、従来の方法によって多数の錠剤を製造する。好適な水性・非水性のコーティングを施すことにより、飲みやすさを向上せたり、上品さや安定性を改善したり、あるいは、吸収を遅らせることもできる。
【0109】
即放性錠剤/カプセル剤
これらは、従来法及び新規方法によって作製される固体経口投与用の剤形である。これらの剤型単位は、薬剤が即時に溶解して送達されるように、水なしで経口投与する。有効成分は、糖、ゼラチン、ペクチン及び甘味料等の成分を含む液体中に混合する。これらの液体は、凍結乾燥及び固体抽出技術によって固体化して固体の錠剤又はカプレットとする。薬剤用調製物は、水を使わずに、粘弾性でかつ熱弾性の糖、及び、ポリマー又は発泡性成分と共に打錠することによって、即放性を目的とした多孔性マトリクスを製造してもよい。
【0110】
更に、本発明の化合物は、点鼻剤の形で投与可能であり、また、投薬量を計量して投与可能であり、経鼻頬吸入によっても投与可能である。薬剤は点鼻液から微細なミストとして送達されるか、あるいは、エアロゾルとして粉末から送達される。
【0111】
上記の発明の説明は、本発明を例証し、説明するためのものである。更に、開示内容は、本発明の好ましい実施形態のみを示し、説明するものであるが、上述の通り、本発明は種々の他の組み合わせ、変更及び環境において使用できるものであって、本明細書に表された発明の概念を逸脱しない範囲で変更・改良ができることは、上述の教示及び/又は関連する技術分野のスキル若しくは知識に従えば理解されるはずである。更に上述の実施形態は、本発明を実施する上で知られている最良の形態を説明することを意図したものであり、また他の当業者が本発明を上記の通りに、又は、他の実施形態において、本発明の具体的な用途又は使用において必要な種々の変更を伴って利用できるよう意図したものである。従って、本出願の説明は、本発明を本明細書に開示された態様に限定されることを意図したものではない。更に添付の請求の範囲は、別の実施形態をも含むものとして解釈されるよう意図したものである。
【0112】
本出願は、2004年3月22日出願の、表題「テトラヒドロ−β−カルボリン化合物及びその使用(Tetrahydro−β−Carboline Compounds and Use Thereof)」のUSSN10/805,222(本明細書中にその全体を参照する)に対する優先権を主張する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式で表されるテトラヒドロ−β−カルボリン化合物:
【化1】

(式中、x、y及びzは各々独立して0〜4の整数であり、Rは、H、アルキル、アリール及び複素環式部位からなる群より選択され、アルキル、アリール及び複素環式部位は、ハロゲン、アルコキシ及びトリフルオロメチルからなる群より選択される部分により任意に置換されている):、その医薬品に許容される塩、及び、そのプロドラッグ。
【請求項2】
式1で表されるカルボリンビスアミドである
ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式2で表されるカルボリンテトラミンである
ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Rが、H−、CH−、CHCH−、CH(CHCH−、C−、4−ビフェニル、3−ビフェニル、2−ナフチル、1−ナフチル、4−ピリジニル、3−ピリジニル及び2−ピリジニルからなる群より選択される
ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
【化2】

上式で表される
ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
【化3】

上式で表される
ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1に記載のテトラヒドロ−β−カルボリン化合物を含む医薬組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のテトラヒドロ−β−カルボリン化合物の神経学上治療有効量を神経疾患患者に投与することを含む、神経疾患の治療方法。
【請求項9】
前記神経疾患がうつ病を含む
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記神経疾患が不安を含む
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。

【公表番号】特表2007−530555(P2007−530555A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505066(P2007−505066)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/009360
【国際公開番号】WO2005/092335
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(500023990)メディクエスト セラピューティックス インク (9)
【Fターム(参考)】