説明

テラヘルツ波を用いた対象物の情報取得装置及び方法

【課題】テラヘルツ波を用いて対象物の内部構造の情報を高い分解能で取得できる情報取得装置及び方法を提供する。
【解決手段】情報取得装置は、発生器9と検出器10と第1遅延手段15と第2遅延手段16と算出手段を有する。発生器9は、第1の光で励起されてテラヘルツ波をパルスで発生する。検出器10、第1の光とコヒーレントな第2の光で励起されて、テラヘルツ波のパルスで照射される対象物2からのテラヘルツ波を検出する。第1遅延手段15は、対象物2からのテラヘルツ波のパルス信号を検出器10で検出できる様に遅延時間を変更する。第2遅延手段16は、検出器10で検出されるパルス信号の時間幅以下で遅延時間を変更する。算出手段は、第1遅延手段15による遅延時間において第2遅延手段で遅延時間が変更されるときに検出器10で検出される信号の情報を基に、対象物2からのテラヘルツ波のパルス信号のピークの時間位置の情報を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を用いて物体(対象物)の性状、形状などの情報を取得する画像取得装置などの情報取得装置、及び画像取得方法などの情報取得方法に関する。特に、30GHz乃至30THzの周波数範囲内の周波数を持つ電磁波(本明細書では、テラヘルツ波と呼ぶ。)を用いて対象物の情報を取得する画像取得装置などの情報取得装置、及び画像取得方法などの情報取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テラヘルツ波を用いた非破壊なセンシング技術が開発されてきている。この周波数帯の電磁波の応用分野として、X線に代わる安全な透視検査を行うイメージング技術がある。また、物質内部の吸収スペクトルや複素誘電率を求めて、結合状態などの物性を調べる分光技術、生体分子の解析技術、キャリヤ濃度や移動度を評価する技術なども開発されている。
【0003】
空港の税関などの荷物、人間の衣服や体内に隠された禁止薬物や危険物を検査するのに、このテラヘルツ波による透視検査装置を用いる試みが検討されている。特に人体に対してはX線を照射して検査することは被爆の問題があるため、テラヘルツ波を用いた方法が有効と考えられる。また、工場の生産ラインにおいても、品質チェックを非破壊で行うことが重要で、ICの内部検査、粉体中の異物検査、プラスティック成形品の欠陥検査などへの応用が検討されている。
【0004】
この様な応用では断層イメージ像を取得することが重要になる。その為のものとして、テラヘルツ波パルスを検体に照射し、反射されるときに発生する複数の反射パルスの遅延時間やパルス形状を解析して、断層像を取得する手法が提案されている(特許文献1参照)。これには、フレキシブルディスク内部を観察した例が示されている。また、同様にテラヘルツ波パルスの反射または透過波を用いて、パルスの時間領域波形をフーリエ変換して周波数スペクトルを観察し、主に医薬品等で内部の深さ方向でどの様に化学サンプルが分布しているかを表示する方法も提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
テラヘルツ波発生手段としては、基板上に成膜した光伝導膜に、電極を兼ねたアンテナを備えた光伝導スイッチ素子に、フェムト秒レーザ光を照射する方法が好適に用いられる(特許文献1参照)。光伝導膜としては、GaAs基板に低温で成長したLT-GaAsが用いられることが多いが、InGaAsやInAs、GaSbなどでもよい。
【特許文献1】特開平11-108845号公報
【特許文献2】特表2006-516722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記提案例は通常のTHz時間領域分光法(THz-TDS)を用いた方法であって、検体の深さ方向の分解能についての記述や、その向上のための手段については開示されていない。そこでの実施例においては、0.3mm、0.6mm、1.2mmの深さにおける像が示されているが(特許文献2の図12参照)、実際に断層像を取得する場合には、深さ方向の分解能が必要である。
【0007】
より詳細には、前記提案例の方法では、2つ以上の近接した反射点からの異なるパルスがある場合に、これらを信号処理して分離するシステムが具備されていない。そのため、パルスの強度変動やパルス位置のジッタなどがノイズとなる。よって、その影響を受けて、パルス時間幅程度以上の時間を隔てたパルスのみの分離が可能となり、その時間に相当する検体の深さ方向分解能程度しか得られない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み、テラヘルツ波を用いて対象物の情報を取得する情報取得装置は、次の構成要素を備える。
第1の光で励起されてテラヘルツ波をパルスで発生する発生器。
前記第1の光とコヒーレントな第2の光で励起されて、前記テラヘルツ波のパルスで照射される対象物からのテラヘルツ波を検出する検出器。
前記対象物からのテラヘルツ波に含まれるパルス信号を前記検出器で検出できる様に前記第1の光に対する前記第2の光の遅延時間を変更する第1遅延手段。
前記検出器で検出されるパルス信号の時間幅以下で前記遅延時間を変更する第2遅延手段。
前記第1遅延手段による遅延時間において前記第2遅延手段で前記遅延時間が変更されるときに前記検出器で検出される信号の情報を基に、前記対象物からのテラヘルツ波に含まれるパルス信号のピークの時間位置の情報を算出する算出手段。
【0009】
上記構成に加えて、次の構成を備えることも可能である。
少なくとも前記算出手段で算出される時間位置の情報を用いて、前記対象物内部における深さ方向断層像を含む画像を形成する画像形成手段。
前記テラヘルツ波のパルスで照射される前記対象物の部分を相対的に変化させる走査手段。
【0010】
また、上記課題に鑑み、テラヘルツ波を用いて対象物の情報を取得する情報取得方法は、次のステップを含む。
第1の光で励起してテラヘルツ波をパルスで発生する発生ステップ。
前記第1の光とコヒーレントな第2の光で励起して、前記テラヘルツ波のパルスで照射される対象物からのテラヘルツ波を検出する検出ステップ。
前記対象物からのテラヘルツ波に含まれるパルス信号を前記検出ステップで検出できる様に前記第1の光に対する前記第2の光の遅延時間を変更する第1遅延ステップ。
前記検出ステップで検出されるパルス信号の時間幅以下で前記遅延時間を変更する第2遅延ステップ。
前記第1遅延ステップにおける遅延時間において前記第2遅延ステップで前記遅延時間が変更されるときに前記検出ステップで検出される信号の情報を基に、前記対象物からのテラヘルツ波に含まれるパルス信号のピークの時間位置の情報を算出する算出ステップ。
【0011】
上記ステップに加えて、次のステップを含むことも可能である。
少なくとも前記算出ステップで算出される時間位置の情報を用いて、前記対象物内部における深さ方向断層像を含む画像を形成する画像形成ステップ。
前記テラヘルツ波のパルスで照射される前記対象物の部分を相対的に変化させる走査ステップ。
【0012】
対象物の断層像を取得する方法としては、対象物の2次元平面上の照射位置を固定して深さ方向の情報を取得してからスキャンして観察位置を動かしていく方法がある。また、深さ方向の位置を特定した上で対象物の2次元平面上の照射位置のスキャンを行って画像を取得する操作を、深さ位置を順次変更しながら繰り返していく方法もある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前記の如き第2遅延手段を備えるので、検出されるパルス信号の時間幅以下の時間でも信号分離することができ、それに対応する対象物の内部構造の情報を、向上した深さ方向分解能で取得できる。こうして、対象物を透過する能力の高いテラヘルツ波を用いて、表面には見えない対象物の内部構造の情報でも高い分解能で取得できる。
【0014】
特に、対象物の透過画像または反射画像の断層像を取得する場合に、深さ方向分解能を向上させることができる。これにより、テラヘルツ波イメージング装置(画像取得装置)として、工業製品の生産ラインの製造工程/ランニング使用時の品質チェックや医療診断装置の断層像撮影などにおいて、より精密な画像を得られる様になり、高度な画像診断が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
前記した様に、本発明の情報取得装置及び方法では、第1の光で励起してテラヘルツ波をパルスで発生し(前記発生ステップ)、前記第1の光とコヒーレントな第2の光で励起して、前記パルスで照射される対象物からのテラヘルツ波を検出する(前記検出ステップ)。ここにおいて、対象物からのテラヘルツ波に含まれるパルス信号を検出できる様に前記第1の光に対する前記第2の光の遅延時間を変更する(前記第1遅延ステップ)と共に、検出されるパルス信号の時間幅以下で前記遅延時間を変更する(前記第2遅延ステップ)。前者の変更は第1遅延手段で行い、後者の変更は第1遅延手段で行う。これにより、第1遅延手段による遅延時間において第2遅延手段で遅延時間が変更されるときに検出される信号の情報を基に、対象物からのテラヘルツ波に含まれるパルス信号のピークの時間位置の情報を算出する(前記算出ステップ)。
【0016】
算出した時間位置の情報の用い方は、種々可能である。屈折率差ないし誘電率差のある対象物中の界面の存在により反射パルスが発生するために、検出するべきパルスのピークが生じるので、単に、前記時間位置に対応する対象物内部の深さ方向位置の界面の存否や、時間位置ずれに対応する界面の離間距離などを外部に出力するだけでもよい。典型的には、対象物内部の画像形成の為に用いる(前記画像形成ステップ)。内部画像形成も、対象物のテラヘルツ波照射部位のみについて行ってもよいし、照射部位を1次元的或いは2次元的に走査して(前記走査ステップ)、対象物の一断面の画像形成や3次元的な内部の画像形成を行ってもよい。
【0017】
以下、本発明の情報取得装置及び方法の実施形態を説明する。図1は、本発明による一実施形態であって、対象物からの反射波を用いて断層像を取得する画像取得装置を示す。
【0018】
この実施形態では、波長800nmでおよそ12fsecの光パルスの発生が可能なフェムト秒レーザ1から出射されたレーザ光が、ビームスプリッタ3で2つの経路に分けられる。一方の第1の光は、レンズ7で集光されたのち、LT-GaAs上にアンテナを形成した光伝導素子9に照射される。これにより、パルス幅がおよそ100fsec以下のテラヘルツ波のパルスが発生される。この光伝導素子9が前記発生器を構成する。
【0019】
この場合、通常のGaAs基板上に形成したものは、GaAsによるフォノン吸収があるために波形が乱れる。そこで、エピタキシャル成長したLT-GaAs膜(2μm厚)のみを、高抵抗Si基板などのフォノン吸収のない支持基板に転写した素子とすることが望ましい。勿論、通常のGaAs基板上のものでもよいし、ZnTe、GaSbなどのEO(電気光学)結晶の表面から直接発生する方法を用いてもよい。ただし、こうした場合、深さ方向分解能に影響を与えることがある。発生側の光伝導素子9には、電源18によって、典型的には、10V程度のDC(直流)電圧のバイアス電圧を印加する。この電圧値を増大させると発生テラヘルツ波が増大するが、素子形態によっては或る電圧で飽和特性を示す。
【0020】
もう一方の前記第1の光とコヒーレントな第2の光であるレーザ光は、反射ミラー5と遅延系を経、更にミラー4とレンズ8を介して、前記検出器である光伝導素子10に照射される。遅延系は、ステージ15、16、及びステージ16に搭載したリトロリフレクター17により構成されている。こうして、第2の光であるレーザ光は、テラヘルツ波を検出するときのゲート信号として用いられる。ステージ15が前記第1遅延手段を構成し、ステージ16が前記第2遅延手段を構成する。ここでは、ステージ15、16は入れ子式に組み合わされて、 一体化して1つの光(前記第2の光)の経路の遅延時間を調整する。
【0021】
光伝導素子9で発生したテラヘルツ波は、放物面鏡11、13を介して対象物2に照射される。対象物2から反射したテラヘルツ波は、放物面鏡14、12を介して検出用の光伝導素子10に集光される。検出側で用いる光伝導素子10の構成についても、発生側のものと同様に上で述べた様に注意する必要がある。
【0022】
対象物2が図1に示す様な断面構造を持っている場合に(対象物2中の曲線は界面を表す)、層間の界面での誘電率の違いにより反射パルスが発生する。そのため、検出用光伝導素子10には複数の反射エコーパルスが到達することになる。対象物2に照射されるテラヘルツ波は、対象物2の面上で1cmφ以下のビーム径に集光されて、対象物2の断層構造を見る。従って、対象物2全体のイメージを取得するためには、テラヘルツ波のビームと対象物2の相対位置を図1の矢印で示した様に移動させる。2次元的に相対移動するためには紙面と垂直な方向(不図示)に更に相対移動させればよい。その場合、深さ方向を合わせて3次元の画像を取得することができる。ここでは、対象物2を保持する保持部材が、例えば、モータなどの駆動手段でガイドに沿って保持部材を動かす走査手段で移動される。
【0023】
次に、本実施形態の特徴である、断層像を取得するための対象物2からの反射パルスの計測方法について説明する。上述した如く、遅延系を構成するステージは2つある。ステージ15は、10mm以上スキャンが可能なロングストロークの比較的低速な第1のステージであり、ステージ16は、100μm以下のストロークを持ち、数kHz乃至100kHz程度の高速で振動が可能(振動振幅により周波数を選択)な第2のステージである。第1のステージ15のストロークは、対象物2の深さ方向の厚みなどで決めればよく、第2のステージ16のストロークは、要求される対象物2の深さ方向分解能などで決めればよい。第1のステージの速度は、深さ方向の断層像を取得する速度で決まり、典型的には、数mmを数十秒乃至数分で移動できれば十分である。一方で、第2ステージは、後述するテラヘルツ信号取得のための変調周波数の数百Hz乃至1kHz以上より十分速い数kHz乃至10kHz程度の周波数で振動する。従って、その速度は、テラヘルツパルス幅程度すなわち100fsec前後に相当する電磁波伝播距離程度をその周波数で動かすための速度で決定される。
【0024】
第1のステージ15用の駆動手段は、各種モータ、例えば、カメラのズームレンズ駆動用などに使われる超音波モータ(ないし表面波モータ)、電磁方式のリニアモータ、ステッピングモータなどが好適に用いられる。一方、第2のステージ16用の駆動手段は、ピエゾアクチュエータやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスなどが用いられる。また、第2のステージ16をリニア駆動系でなく回転駆動系にすることで高速化してもよい。例えば、プリズム透過系でプリズムを回転制御すれば、プリズムへのレーザ光の入射角が変化することで、プリズム内を伝搬するレーザ光の距離が変化する。このことで、遅延時間を短いストロークで高速に変化させることができる。
【0025】
第1のステージ15の動作は、一般的なTHz時間領域分光法と同様であり、例えば、6mmのストロークで40psecの遅延時間に相当するパルスを観察することができる。例えば、図2(a)の様に、対象物2の最表面で反射された第1番目のパルス信号に続いて、内部の層構成の界面において反射されるパルス信号を合計5つ観測することができる。時間波形の検出には、電源18の電圧を1kHz程度で変調して対象物2に照射されるテラヘルツ波のパルス列を変調し、光伝導素子10の出力をアンプ19及びロックインアンプ26を用いて検波する。
【0026】
図1における発振器25は、この時間波形検出には用いていない。この際、対象物2中の界面間の距離が短い場合には、図2(a)のピーク20、21の様に近接したピークが現れ、これらを精度良く高速に分離することは難しくなる。対象物2に照射されるテラヘルツ波のパルスが100fsecのパルス幅を持つ場合、パルス幅程度の時間遅延で分離できる対象物2の深さ方向の距離は、次の値程度となる。
3×108(m/s)×100×10-15(s)/2=30μm
実際には、励起光源の光パワーゆらぎによるテラヘルツ波の強度変動、パルス位置の変動によるジッタなどからくるノイズのために、更に分解能は低下する。
【0027】
そこで、第1のステージ15上に更に別の第2のステージ16を追加して、これを、パルス時間幅に相当する距離以下の振幅で数kHz以上の高速で振動させ、第1の光に対する第2の光の遅延時間を変調させる。これにより、第2のステージ16の駆動信号源となる発振器25とロックインアンプ26によって同期検波することで、検出側では電気的にその変調信号の成分のみを取り出して、ノイズを低減させてピーク位置を高感度で計測する。
【0028】
その計測の原理について、図3を用いて説明する。第2のステージ16で微小振幅の振動を与えることは、図3(a)のパルス信号に対する第2のステージ16による前記遅延時間を、パルス幅以下の時間で往復運動させることに相当する。その場合、振動の中心位置が、(1)パルス信号の正のスロープ、(2)パルス信号のピーク位置、(3)パルス信号の負のスロープのどこにあるかによって、検出される信号が変化する。その様子を示したものが図3(b)であり、例えば、10kHzの正弦波で変調させた場合には、(1)の局部と(3)の局部では位相が180度反転した10kHzの強度変調信号が得られる。このとき、第1のステージ15の動きは、静止しているか、第2のステージ16の動きに対して十分遅くしている。一方、ピーク位置を中心として振動させた場合には倍周期の20kHzの強度変調信号となる。
【0029】
そのため、10kHzのローパスフィルターを用いるか(図1とは異なるシステム)、ロックインアンプ26による同期検波により(図1のシステム)、10kHzの成分を取り出せば、上記振動中心を徐々に動かしたときのそれらの振幅の大きさは図3(c)の様になる。すなわち、ピーク位置は正負の入れ替わるゼロクロスのポイントとして検出できる。もし、第1のステージ15の動作が第1のステージ15の振動速度に近い場合には、ドップラーシフトを受けることになるので、シフト後の周波数で前記フィルター処理または同期検波を行えばよい。
【0030】
図2(b)の様に近接したピーク20、21に以上の操作を適用すると、図2(c)の様な信号出力が得られる。これにより、正から負にゼロクロスするポイント22、23にパルス信号のピーク位置があることが高感度に計測できる。この方法では、パルス幅の1/10以下の時間差でもパルス分離することができる。従って、典型的には、前記の様なテラヘルツ波パルスの場合に、対象物2に対して10μm以下の奥行き(深さ方向)分解能を有するテラヘルツ断層画像取得装置を実現できる。このとき、図2(c)の様な信号出力は、計測ボードを装着したパソコン(PC)などの制御装置に備えられた上記算出手段で処理される。そして、対象物2からのテラヘルツ波に含まれるパルス信号のピークの時間位置の情報が算出され、この情報を用いて、同じくPCなどの制御装置に備えられた画像形成手段により対象物2内部における深さ方向断層像を含む画像が形成されて表示部に表示される。また、PCなどの制御装置は、上記手順に従って各部の動作を制御するプログラムを備える制御手段も備える。この様な構成は、後述の実施例でも適用される。
【0031】
前述した様に、対象物2中の層間の界面での誘電率の違いにより反射パルスが発生するので、各走査点で上述した如く得られるピークの時間位置に対応する対象物の深さ方向位置を繋げば、対象物の断層像が得られる。ピークの時間位置と共に、振幅すなわち強度情報も得て、対象物2の深さ方向の各層の物質の吸収係数や屈折率の違いも加味してイメージング処理して画像を形成すれば、より充実した断層像が得られる。後述する様にパルス波形をフーリエ変換して周波数情報を取得し、この情報を加味することもできる。
【実施例】
【0032】
次に、より具体的な本発明の実施例を説明する。
【0033】
(実施例1)
本発明による第1の実施例は、図1を用いて説明した前記実施形態に対応する。すなわち、実施例1は、2つのステージ15、16から構成される遅延系を持つテラヘルツ断層画像取得装置である。本実施例では、チタンサファイア結晶などの固体を用いた12fsecパルス幅のフェムト秒レーザ1を用いている。ただし、これに限るものではない。すなわち、対象物2の奥行き方向分解能の仕様に応じてパルス幅を決定するもので、100fsecのパルス幅などを選択してもよい。
【0034】
本実施例では、第1のステージ15の駆動にはステッピングモータを用いており、第2のステージ16の駆動にはピエゾアクチュエータを用いている。既に述べた様に、この第2のステージ16は高速変調移動を行うものであり、例えば、10kHzで3μmの振幅(peak
to peak)で変調移動することで、遅延時間にして20fsec相当の変調が行われる。対象物2の奥行き方向に対応する反射パルスを捕らえるために、第1のステージ15を10mm/min程度のスピードでスキャンしながら、同時に第2のステージ16に前記振動を与える。
【0035】
このとき、対象物2と照射テラヘルツ波の相対位置は固定しておいて、奥行き方向の情報を取得する。この場合、第2のステージ16を変調している10kHzの変調信号で同期検波を行う。こうして、既に説明した様に、図2(c)に示す様にピークがあるごとにゼロクロスポイントがある検出信号が得られる。
【0036】
この様に1つの走査ポイントの奥行き方向の断層画像を取得しながら、対象物2の必要な領域で2次元スキャンを行うことで、結果として、全体の3次元画像を取得することができる。すなわち、本実施例では、テラヘルツ波のパルスで照射される対象物2の部分を固定した状態で、各走査ポイントで前記算出ステップを実行した後に、前記走査ステップを実行する。
【0037】
上に説明した方法では、パルス波形を微分した様な波形のみが得られるため、通常のTHz-TDSの様に時間波形からFFTスペクトルを得る操作が含まれていない。比較的単純な断層像だけを得る場合にはこれでもよいが、更に物体の性状を得るために周波数情報を得たい場合には次の様なバリエーションがある。
【0038】
例えば、通常のTHz-TDS装置で取得する図2(b)の様なパルス波形と、図2(c)の様なピーク検出信号との両方を取得する方法がある。この場合、図1における発生側の光伝導素子9に印加する電圧を電源18によって1kHzで変調する。若しくは、1kHzのオプティカルチョッパー(不図示)でテラヘルツ波の強度変調をしておく。こうして、帯域分離で2種類の信号を取得すればよい。1台のロックインアンプで、適宜、時分割でreference信号を切り替えながら信号を検出すれば、2種類の信号が取得できる。勿論、2台のロックインアンプを用いてもよい。図2(b)の様なパルス波形を検出できれば、これをフーリエ変換して周波数情報が取得できる。そして、予めデータベースを記憶させておいて、これと比較することで、このパルス波形を生じさせた部分の層構成の材料やその状態などを推定することが可能となる。この情報を、色分け、濃淡表示などの手法で断層像に表示して、断層画像をより充実したものにしてもよい。
【0039】
また、本実施例では、イメージ取得の方法として、各走査点で奥行き方向の情報を取得してから、対象物2の2次元スキャンを行った。しかし、第1のステージ15を固定することで観察する深さ位置を固定したままで対象物2をスキャンして1次元または2次元イメージ像を先に取得し、その後、第1のステージ15の位置を段階的に変化させて順次異なる奥行き方向の画像を蓄積していく方法もある。すなわち、この方法では、前記第1遅延ステップにおける遅延時間を所定の時間に固定にした状態で、前記走査ステップを実行しつつ前記算出ステップを実行する。そして、この後に、前記第1遅延ステップにおける遅延時間を別の所定の時間に固定にした状態で、前記走査ステップを実行しつつ前記算出ステップを実行し、これを繰り返す。
【0040】
以上の信号取得は反射パルスについて説明してきたが、透過パルスを検出してもよい。透過パルスを取得する場合にも、対象物2の層構成の屈折率差のある界面で多重反射されたパルスが透過パルスとして検出器で観測される。この信号の処理方法も、反射パルスの場合と原理的に同じである。反射パルスと透過パルスを併せて解析すれば、より多くの情報量を取得することができる。この情報も、断層像に表示すれば、断層画像をより充実したものにすることができる。反射及び透過パルス信号は、各層を構成する物質の複素誘電率の情報、すなわち屈折率や周波数分散スペクトルの情報を含んでいる。よって、反射パルス信号から得られる厚み情報と、透過パルス信号及び予め取得したデータベースの情報とから演算を行えば、物質を同定しながら断層像を取得する精度を向上させることが可能である。
【0041】
この様な断層像を含む画像を取得する画像取得装置ないし方法の応用事例を幾つか説明する。工業製品においては、加工品の状態で構造体内部の気泡、亀裂、欠陥などを特定したり、塗装や保護膜などの多層構造を分析したりできる。これは、生産工程でも行ってもよいし、定期的な劣化診断、故障解析などの際に利用することもできる。具体的には、プラスティック成形品、各種カード、AV機器、携帯機器、事務機器、重機の構成部品、またそれらの内部の感光体などの機能部品や機能材料などが検査対象として挙げられる。
【0042】
一方、空港などでのセキュリティチェックにおいては、鞄などの内部の物品は各種方法で検査可能であるが、鞄の側部、衣服の内部、靴の内部などに物品を縫い付けたりする例では検査が難しい。対象物の深さ方向分解能の高い反射ないし透過イメージングが可能な本実施例の如き装置ないし方法では、これらの対象物を検出することが可能である。
【0043】
また、健康医療分野では、癌などの病巣部位の摘出時、臓器内観察スコープなどによる観察時、皮膚や歯の観察時、血管などの観察時、マンモグラフィなどの際に、本実施例の如き装置ないし方法より、今までに無い情報が得られる。こうして、医療分野の診断技術向上に貢献することもできる。
【0044】
(実施例2)
本発明による第2の実施例は、2つのステージを異なる2つの経路に分けて設置するものである。本実施例では、図4に示した様に、ストロークの大きい低速のレトロリフレクタ付きの第1のステージ40を検出側に設ける。そして、ミラー44を介して、ストロークの小さい高速のレトロリフレクタ付きの第2のステージ41を発生側に設置している。ただし、これらの配置は逆でもよい。こうして、本実施例では、第1遅延手段と第2遅延手段は夫々異なる光の経路に挿入して、光の経路の遅延時間を独立に調整する。尚、図4では、実施例1と同様の電気系のブロック図は省略し、実施例1と同一部分については同符号を付している。
【0045】
この様にステージを分けることで、互いのステージの相互干渉による影響、例えば、振動ノイズやドップラーシフトなどを、より確実に避けることができる。
【0046】
また、断層像を取得するときに実施例1では対象物2を動かしてスキャンしていた。しかし、図4に示す本実施例の様に、走査手段である可動放物面ミラー45、46を設けて、ミラー47、48を動かすことでテラヘルツ波のビームスキャンを行って、全体のイメージ像を取得してもよい。このテラヘルツ波ビームスキャンは、この様なガルバノミラータイプのもの以外に、ポリゴンミラータイプのものなどを用いて、より高速に行ってもよい。その他の点は、本実施例は実施例1と同様である。
【0047】
(実施例3)
本発明による第3の実施例は、テラヘルツ波のパルスを発生させる励起光源として超短パルスファイバレーザを用いたものである。通常のファイバレーザは、Erなどの希土類をドープした光ファイバを増幅媒体として、1.55μm帯近傍で発振するものが開発されている。また、パルスレーザとして、10fsecレベルの超短パルスレーザも全て光ファイバを用いて実現されている。
【0048】
テラヘルツ波発生の励起光源として光ファイバを用いる場合には、高調波発生部分を付加して780nm帯で発生させれば、前記実施例と同様のLT-GaAsを含む光伝導素子を用いることができる。一方で、ファイバレーザで直接発生可能な1.55μm帯や1.06μm帯の励起光でテラヘルツ波を発生させるために、InP基板上若しくはGaAs基板上のLT-InGaAsエピタキシャル層を用いてもよい。
【0049】
本実施例では、図5の様にファイバレーザ50の出力は、テラヘルツ波発生部55、検出部56まで全て光ファイバ51、53、54で結合されるために、光軸調整の手間がかからない。また、エネルギー損失も低減できる。図5の構成において、ファイバレーザ50からのレーザ光を第1の光と第2の光に分岐するためのファイバカップラ52では、所定の結合長に亘って2つの光ファイバが平行に伸び、一方は光ファイバ54へと続き、他方は光ファイバ53へと続いている。テラヘルツ波発生部55は、例えば、レーザ光を集光する部分(これは光遅延部と光伝導素子の間に移動してもよい)と、光遅延部と、光伝導素子と、テラヘルツ波発生の窓、及び指向制御のためのレンズ55aが一体となったモジュールである。テラヘルツ波検出部56は、例えば、指向制御のためのレンズ56aと、テラヘルツ波検出の窓と、光伝導素子と、光遅延部と、レーザ光を集光する部分(これは光遅延部と光伝導素子の間に移動してもよい)が一体となったモジュールである。光遅延部としては、例えば、光が通る光ファイバ、電気結晶などに電極対を貼り付け、これへの印加電圧を変調して所定部の屈折率を変化させることで遅延時間を調整するものがある。この電圧の大きさと変調速度は、上記第1遅延手段側では比較的大きく且つ低速とし、上記第2遅延手段側では比較的小さく且つ高速とする。この図でも、実施例1と同様の電気系部分については省略している。
【0050】
上述した様に、光遅延部は、実施例2と同様に、ロングストロークのものとショートストロークのものが夫々テラヘルツ波発生部55と検出部56に別々に内蔵されている。この光遅延部は、前記した如く、全て光ファイバのモジュールまたは一部にファイバが接続されるモジュールで構成することが可能であり、電界若しくは温度を変化させることで光ファイバなどの媒質の屈折率を変化させ、それにより伝播遅延を起こさせる。従って、上記の遅延手段のみでは、周波数分散が発生する場合、すなわちパルスに含まれる周波数成分によって遅延時間が異なる場合がある。よって、チャープドファイバグレーティングなどを用いて周波数毎に遅延時間を調整してパルス形状を整える必要がある場合もある。
【0051】
本実施例の様にファイバレーザを用いた場合は、固体レーザを用いた場合に比べて小型、安価となる。また、発振安定性に優れているなどの利点を持つ。その他の点は、本実施例も実施例1と同様である。
【0052】
(実施例4)
これまでの実施例では、各観察点における深さ方向イメージを取得していたが、各断層イメージの横の分布については考慮していないため、断層像に不連続な部分が発生する可能性がある。
【0053】
本実施例では、反射パルスピークの位置を追従するように第1遅延手段による遅延時間が変化するように制御して、ピーク位置を面内に亘ってスキャンしていくものである。すなわち、対象物の内部にある層界面を横方向になぞっていくことで、横方向の連続性について重視した画像取得が可能となる。
【0054】
装置構成はこれまでの実施例と同様にあるが、システム制御の仕方が異なる。これを図6のフローチャートを用いて説明する。
計測をスタートさせて、まずピークを検出するために第2のステージ16で微小振動を行いながら第1のステージ15をスキャンしていく。既に説明した様に、ゼロクロスポイントが見つかってピークがあると認識するまでは第1のステージ15をスキャンさせる。ピークが見つかったら、第1のステージ15のスキャンは停止し、信号出力がゼロクロスポイントを保つ様に第1のステージ15の位置にフィードバック制御をかける。そのまま、対象物2とテラヘルツ波ビームとの相対位置をスキャンしながら、パルス位置にロックするように。フィードバック制御したときの第1のステージ15の遅延位置を記憶させる。このことで、反射面となる対象物2の層界面の深さ方向位置を追尾しながら計測することができる。
【0055】
対象物2の2次元スキャンが終了したら、フィードバック制御を終了し、次のピークを探すために再び第1のステージ15をスキャンさせる。これを繰り返しながら、全ての層界面をなぞった時点で測定が終了する。
【0056】
この様に、本実施例では、テラヘルツ波を用いて対象物の情報を取得する上述した本発明の情報取得方法において、次の様になっている。すなわち、前記第1遅延ステップにおける遅延時間を所定の時間付近で調整可能にした状態で、走査ステップを実行しつつ算出ステップを実行する。そして、この後に、第1遅延ステップにおける遅延時間を別の所定の時間付近で調整可能にした状態で、走査ステップを実行しつつ算出ステップを実行し、これを繰り返す。上記所定の時間付近で調整可能にした状態では、走査ステップを実行しつつ対象物からのテラヘルツ波に含まれるパルス信号のピークを検出ステップで常に検出できる様に第1遅延ステップの遅延時間をフィードバック制御して該遅延時間を記憶する。
【0057】
この方法では、個別に走査ポイント毎に断層像を取得して合成する方法に比べて、横方向の層の分布が、より精密に取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による第1の実施例の画像取得装置及び方法を説明する図。
【図2】テラヘルツ波信号の取得パルス波形の例を示す図。
【図3】第2遅延手段の微小振動における信号取得を説明する図。
【図4】本発明による第2の実施例の画像取得装置及び方法を説明する図。
【図5】本発明による第3の実施例の画像取得装置及び方法を説明する図。
【図6】本発明による第4の実施例の画像取得方法を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0059】
1、50‥フェムト秒レーザ
2、42‥対象物
9‥発生器(光伝導素子)
10‥検出器(光伝導素子)
15、40‥第1遅延手段(駆動ステージ)
16、41‥第2遅延手段(駆動ステージ)
18‥電源
47‥走査手段(可動ミラー)
55‥発生器、遅延手段(テラヘルツ波発生モジュール)
56‥検出器、遅延手段(テラヘルツ波検出モジュール)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テラヘルツ波を用いて対象物の情報を取得する情報取得装置であって、
第1の光で励起されてテラヘルツ波をパルスで発生する発生器と、
前記第1の光とコヒーレントな第2の光で励起されて、前記テラヘルツ波のパルスで照射される対象物からのテラヘルツ波を検出する検出器と、
前記対象物からのテラヘルツ波に含まれるパルス信号を前記検出器で検出できる様に前記第1の光に対する前記第2の光の遅延時間を変更する第1遅延手段と、
前記検出器で検出されるパルス信号の時間幅以下で前記遅延時間を変更する第2遅延手段と、
前記第1遅延手段による遅延時間において前記第2遅延手段で前記遅延時間が変更されるときに前記検出器で検出される信号の情報を基に、前記対象物からのテラヘルツ波に含まれるパルス信号のピークの時間位置の情報を算出する算出手段と、
を備えることを特徴とする情報取得装置。
【請求項2】
少なくとも前記算出手段で算出される時間位置の情報を用いて、前記対象物内部における深さ方向断層像を含む画像を形成する画像形成手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の情報取得装置。
【請求項3】
前記テラヘルツ波のパルスで照射される前記対象物の部分を相対的に変化させる走査手段を更に備えることを特徴とする請求項1または2に記載の情報取得装置。
【請求項4】
テラヘルツ波を用いて対象物の情報を取得する情報取得方法であって、
第1の光で励起してテラヘルツ波をパルスで発生する発生ステップと、
前記第1の光とコヒーレントな第2の光で励起して、前記テラヘルツ波のパルスで照射される対象物からのテラヘルツ波を検出する検出ステップと、
前記対象物からのテラヘルツ波に含まれるパルス信号を前記検出ステップで検出できる様に前記第1の光に対する前記第2の光の遅延時間を変更する第1遅延ステップと、
前記検出ステップで検出されるパルス信号の時間幅以下で前記遅延時間を変更する第2遅延ステップと、
前記第1遅延ステップにおける遅延時間において前記第2遅延ステップで前記遅延時間が変更されるときに前記検出ステップで検出される信号の情報を基に、前記対象物からのテラヘルツ波に含まれるパルス信号のピークの時間位置の情報を算出する算出ステップと、
を含むことを特徴とする情報取得方法。
【請求項5】
少なくとも前記算出ステップで算出される時間位置の情報を用いて、前記対象物内部における深さ方向断層像を含む画像を形成する画像形成ステップを更に含むことを特徴とする請求項4に記載の情報取得方法。
【請求項6】
前記テラヘルツ波のパルスで照射される前記対象物の部分を相対的に変化させる走査ステップを更に含むことを特徴とする請求項4または5に記載の情報取得方法。
【請求項7】
前記テラヘルツ波のパルスで照射される前記対象物の部分を固定した状態で、前記算出ステップを実行した後に、前記走査ステップを実行することを特徴とする請求項6に記載の情報取得方法。
【請求項8】
前記第1遅延ステップにおける遅延時間を第1の時間に固定或いはその付近で調整可能にした状態で、前記走査ステップを実行しつつ前記算出ステップを実行した後に、前記第1遅延ステップにおける遅延時間を第2の時間に固定或いはその付近で調整可能にした状態で、前記走査ステップを実行しつつ前記算出ステップを実行することを特徴とする請求項6に記載の情報取得方法。
【請求項9】
前記第1遅延ステップにおける遅延時間を前記第1及び第2の時間付近で調整可能にした状態では、前記走査ステップを実行しつつ前記対象物からのテラヘルツ波に含まれるパルス信号のピークを前記検出ステップで常に検出できる様に前記第1遅延ステップの遅延時間をフィードバック制御して該遅延時間を記憶することを特徴とする請求項8に記載の情報取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−151618(P2008−151618A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339295(P2006−339295)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】