説明

テラヘルツ波装置及びその動作方法

【課題】可動鏡などの光路長変化機構の機械的振動による信号対雑音比の低下を低減させることができるテラヘルツ波装置及びその動作方法を提供する。
【解決手段】テラヘルツ波装置は、光源101、テラヘルツ波発生器110、テラヘルツ波検出器111、光源から発せられテラヘルツ波発生器に入射する発生側ポンプ光103の光路長を変化させる光路長変化機構106を有する。テラヘルツ波装置は、更に、発生側ポンプ光の強度を増減させる強度増減機構105と、光路長変化機構を停止させた状態で発生側ポンプ光の照射位置をテラヘルツ波発生器110に対して変動させる光軸変調機構109を備える。また、テラヘルツ波検出器で検出されるテラヘルツ波のピーク電場、及び光軸変調に対するテラヘルツ波のピーク電場変動値を取得する取得機構115と、テラヘルツ波発生器を流れる電流を測定する電流測定機構114を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数30GHz〜30THzのいわゆるテラヘルツ波と呼ばれる周波数領域の電磁波を用いたテラヘルツ波装置及びその動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テラヘルツ波の技術開発が盛んに行われている。テラヘルツ波を用いた装置(例えば分光装置、誘電率測定装置、検査装置、イメージング装置)として、特許文献1に開示された装置が知られている。このテラヘルツ波装置は、テラヘルツ波発生器と、テラヘルツ波検出器と、時間遅延器を備える。時間遅延器は、レーザ光源から出射された励起用レーザ光が、テラヘルツ波発生器及びテラヘルツ波検出器に到着するまでの両時間の差を変える機能を有する。時間遅延量に応じた電場強度を計測することで、テラヘルツ波の時間波形を取得する。このテラヘルツ波装置における時間遅延器は、可動鏡からなっている。可動鏡を移動させることで、レーザ光源から出射された励起用レーザ光が、発生器及び検出器に到着するまでの両時間の差を変える。一般的には、テラヘルツ波発生器とテラヘルツ波検出器のどちらか一方に入射する励起光の光路長を可動鏡で増減させて時間差を変える。
【0003】
しかし、可動鏡を機械的に動作させることで、可動鏡の機械的振動が発生する。可動鏡の機械的振動により励起用レーザ光の光軸が僅かに変動し、励起用レーザ光の照射位置が振動的に変化する。それに伴って、発生または検出するテラヘルツ波の信号強度が増減し、雑音が生じるため、信号対雑音比が悪くなる。
【0004】
励起用レーザ光の光軸の変動を抑制する目的で、特許文献2は可動鏡の機械的振動を低減する方法を開示している。また、これらとは別に、テラヘルツ波発生器に照射するレーザ光強度によって、発生するテラヘルツ波電場のピーク値がどの様に変化するかに関する研究が、非特許文献1に記載されている。非特許文献1によれば、レーザ光強度が強くなるほどテラヘルツ波電場のピーク値も強くなるが、やがて飽和する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−98634号公報
【特許文献2】特開2008−20345号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Applied Optics Vol.36, No.30, p7853 (1997), Tani et.al., “Emission characteristics of photoconductiveantennas based on low-temperature-grown GaAs and semi-insulating GaAs”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に開示された様に可動鏡の機械的振動を抑制するためには、複雑な機構が必要であり、テラヘルツ波装置の大型化や高価格化の要因となる。そこで、本発明の目的は、上記事情に鑑み、機械的振動を抑制するための複雑な機構を用いずに信号対雑音比を向上させることができるテラヘルツ波装置及びその動作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み、光源、テラヘルツ波発生器、テラヘルツ波検出器、及び光源から発せられテラヘルツ波発生器に入射する発生側ポンプ光の光路長を変化させる機構を有するテラヘルツ波装置における本発明の動作方法は、以下のステップを有する。
前記光路長変化機構を、前記テラヘルツ波発生器からのテラヘルツ波のピークが前記テラヘルツ波検出器で観測される位置で停止させる停止ステップ。
前記発生側ポンプ光の強度を上昇させる上昇ステップ。
前記テラヘルツ波発生器から継続してテラヘルツ波が発生する範囲で前記発生側ポンプ光の照射位置を前記テラヘルツ波発生器に対して変動させる光軸変調を行い、前記テラヘルツ波のピーク電場変動値を取得する変動値取得ステップ。
そして、前記発生側ポンプ光の強度を、零から、前記テラヘルツ波発生器に光学的端面破壊が生じるポンプ光強度より低い範囲内の範囲で変化させて、前記上昇ステップから変動値取得ステップを繰り返す。更に、前記変動値取得ステップで取得したピーク電場変動値に最大値を与えるポンプ光強度を超える値を、前記発生側ポンプ光の強度として設定する。
【0009】
或いは、前記光軸変調を停止し、前記テラヘルツ波のピーク電場を取得するピーク電場取得ステップを更に含んでもよい。この場合、前記発生側ポンプ光の強度を、零から、前記テラヘルツ波発生器に光学的端面破壊が生じるポンプ光強度より低い範囲内の範囲で変化させて、前記上昇ステップからピーク電場取得ステップを繰り返す。そして、前記変動値取得ステップで取得したピーク電場変動値を前記ピーク電場取得ステップで取得したピーク電場の大きさで除した値に最大値を与えるポンプ光強度を超える値を、前記発生側ポンプ光の強度として設定する。
【0010】
また、上記課題に鑑み、光源、テラヘルツ波発生器、テラヘルツ波検出器、光源から発せられテラヘルツ波発生器に入射する発生側ポンプ光の光路長を変化させる光路長変化機構を有する本発明のテラヘルツ波装置は以下の構成要素を備える。
前記発生側ポンプ光の強度を増減させる強度増減機構。
前記光路長変化機構を停止させた状態で前記発生側ポンプ光の照射位置を前記テラヘルツ波発生器に対して変動させる光軸変調機構。
前記テラヘルツ波検出器で検出されるテラヘルツ波のピーク電場、及び前記光軸変調に対する前記テラヘルツ波のピーク電場変動値を取得する取得機構。
前記テラヘルツ波発生器を流れる電流を測定する電流測定機構。
【発明の効果】
【0011】
本発明のテラヘルツ波装置及びその動作方法によれば、発生側ポンプ光の強度を適切に設定することで、複雑な機構を用いずに前記光路長を変化させる機構の機械的振動に由来する雑音を低減し、信号対雑音比を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のテラヘルツ波装置の一実施形態の模式図。
【図2】テラヘルツ波発生光伝導素子を説明する上面図。
【図3】テラヘルツ波ピーク電場及びピーク電場変動値のグラフ。
【図4】本発明のテラヘルツ波装置の動作方法の一実施形態のフローチャート。
【図5】テラヘルツ波ピーク電場及びピーク電場変動値の他のグラフ。
【図6】本発明のテラヘルツ波装置の動作方法の他の実施形態のフローチャート。
【図7】テラヘルツ波ピーク電場及びピーク電場変動値の他のグラフ。
【図8】光軸変調機付ミラーの例を示す図。
【図9】光軸変調機付ミラーの他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のテラヘルツ波装置の動作方法の特徴は、次の点にある。即ち、発生側ポンプ光の強度を、零から、テラヘルツ波発生器に光学的端面破壊が生じるポンプ光強度より低い範囲内の範囲で変化させて、上記上昇ステップから上記変動値取得ステップまたは上記ピーク電場取得ステップを繰り返す。そして、変動値取得ステップで取得したピーク電場変動値或いはこれをピーク電場取得ステップで取得したピーク電場の大きさで除した値に最大値を与えるポンプ光強度を超える値を、発生側ポンプ光の強度として設定する。この動作方法は、光源、テラヘルツ波発生器、テラヘルツ波検出器、光源から発せられテラヘルツ波発生器に入射する発生側ポンプ光の光路長を変化させる光路長変化機構に加えて以下の構成要素を備えるテラヘルツ波装置により好適に実施することができる。即ち、装置は、更に、発生側ポンプ光の強度増減機構、光路長変化機構の停止状態で発生側ポンプ光の照射位置を変動させる機構、検出テラヘルツ波のピーク電場とピーク電場変動値を取得する機構、テラヘルツ波発生器を流れる電流を測定する機構を備える。
【0014】
以下に、本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明のテラヘルツ波装置の動作方法及びその装置の一例を示す模式図である。いわゆるテラヘルツ波時間領域分光法と呼ばれる装置である。光源としてのパルスレーザ光源101から出射された励起光であるレーザ光は、ビームスプリッター102によって、発生側ポンプ光であるポンプ光103と、検出側励起光であるプローブ光104に分割される(レーザ光は太い実線で表示している)。ポンプ光103は、発生側レーザ光の強度を増減させる強度増減機構であるポンプ光強度調整機105(例えばバリアブルアッテネータ)を経て任意のポンプ光強度に調整された後、光路長変化機構である可動鏡106を経て光路を折り返される。可動鏡106は、リニアステージに搭載したリトロリフレクターなどからなる。その後、ポンプ光103は一部がビームスプリッター107によって分けられ、パワーメータ108でポンプ光強度がモニターされる。ビームスプリッター107を透過したポンプ光103は、レーザ光の集光位置を変動させるために光軸変調が可能な光軸変調機付ミラー109によって、テラヘルツ波発生器であるテラヘルツ波発生光伝導素子110に入射させられる。光軸変調機付ミラー109は、上記光路長変化機構を停止させた状態で発生側ポンプ光の照射位置をテラヘルツ波発生器に対して変動させる光軸変調機構である。発生したテラヘルツ波は、放物面鏡を経てテラヘルツ波検出器であるテラヘルツ波検出光伝導素子111に入射する。一方、プローブ光104は、テラヘルツ波が検出光伝導素子111に入射するのと同じタイミングで、検出光伝導素子111にテラヘルツ波とは反対側から入射する。検出光伝導素子111に流れる電流を計測することで、テラヘルツ波の電場が観測される。
【0015】
テラヘルツ波検出光伝導素子111に流れる電流は微弱なため、変調を用いた同期検波がよく使われる。例えば、テラヘルツ波発生光伝導素子110に与える電圧を変調させたり、またはポンプ光を光学チョッパーによって変調させたりして、変調に同期してロックインアンプで検出光伝導素子111に流れる電流を検出する。本実施形態では、発生光伝導素子110に電圧を与える電源112を通じて変調させ、変調信号をロックインアンプ113に入力して、同期検波する。また、テラヘルツ波発生光伝導素子110に流れる電流をモニターするマルチメータ114が設けられている。マルチメータ114は、テラヘルツ波発生器を流れる電流を測定する電流測定機構である。そしてコンピュータ115に、パワーメータ108、マルチメータ114、ロックインアンプ113からの情報が全て集まる様になっている。またコンピュータ115から、ポンプ光強度調整機105、電源112を制御できる様になっている。コンピュータ115は、テラヘルツ波検出器で検出されるテラヘルツ波のピーク電場、及び上記光軸変調に対するテラヘルツ波のピーク電場変動値を取得する取得機構などを含む。
【0016】
本実施形態では、テラヘルツ波の発生や検出に用いられる光伝導素子は、低温成長ガリウムヒ素(以下、GaAs)などの化合物半導体上に、図2に示す様な対を成す二つの電極21a、21bを設けることによって構成されている。二つの電極は、典型的には5μmのギャップ22を空けて対向して設置されている。ポンプ光103は、レンズ等(図示せず)によりテラヘルツ波発生光伝導素子110のギャップ22に集光照射される。集光されたポンプ光の範囲を、図2中に円で表す(ポンプ光集光範囲23)。
【0017】
可動鏡106が前後に動くと、ポンプ光103の光軸が僅かに変化し、ポンプ光集光範囲23の位置が若干移動する。これは、可動鏡106の振動がポンプ光103に伝わるために起こる。この現象によって、発生するテラヘルツ波の強度が振動的に変化し、得られるテラヘルツ波の信号に可動鏡106の振動が重畳される。こうして、発生するテラヘルツ波の強度に揺らぎが生じて雑音が増えるため、信号対雑音比が悪化する。そこで、本実施形態では、以下の述べる工夫がなされている。
【0018】
ポンプ光103の強度をIとすると、テラヘルツ波ピーク電場とポンプ光強度は次式の関係にあることが知られている。
【0019】
【数1】

【0020】
ここで、ETHzはテラヘルツ波ピーク電場の大きさである。またISは、飽和時の半分の値のテラヘルツ波ピーク電場を与えるポンプ光強度である。ポンプ光強度の増加に伴いテラヘルツ波ピーク電場は飽和する。集光されたポンプ光のビームプロファイルとして、ガウス分布を仮定すると、前述の式1は次の式2の様になる。
【0021】
【数2】

【0022】
ただし、I0はビームプロファイル中心部の強度、wは1/e2半径(強度がI0の1/e2以上の部分の半径)、aはギャップ22とポンプ光集光範囲23の中心との距離を示す(図2参照)。ここでは、議論が複雑にならないよう単純な仮定を採用し、ギャップ22はポンプ光集光範囲23に対して充分小さいとした。可動鏡106の振動によって、式2中のaの値が変化する。よって、可動鏡106の振動によるテラヘルツ波ピーク電場変動値Aは、式2をaで微分することで得られる。
【0023】
【数3】

【0024】
式2(ピーク電場ETHz)及び式3(ピーク電場変動値A)をポンプ光強度I0の関数として表すと、それぞれ図3に示したグラフの様になる。即ち、テラヘルツ波ピーク電場が飽和に達する前にテラヘルツ波ピーク電場変動値は最大値に達する。それ以上では、ポンプ光強度の増加に伴ってテラヘルツ波ピーク電場変動値は減少し、結果として可動鏡106の振動による影響が低減されることが分かる。
【0025】
上記議論では、図2のポンプ光集光範囲23はギャップ22を無視できるくらい大きいと仮定したが、現実には常にその様な大小関係になっているとは限らない。また同様に、ポンプ光の集光ビームプロファイルも常に理想的なガウス分布になっているとは限らない。このため、テラヘルツ波ピーク電場変動値が減少し始めるポンプ光強度を事前に計算によって求めることが常に可能であるとは限らない。しかし、テラヘルツ波ピーク電場変動値のポンプ光強度依存性そのものは、概ね図3に示したグラフに従っていると考えられる。
【0026】
そこで、実用上はテラヘルツ波ピーク電場及びその変動値をモニターしながらポンプ光強度を徐々に上昇させ、テラヘルツ波ピーク電場変動値が低いポンプ光強度を実験的に求める。ところで、テラヘルツ波ピーク電場を連続的にモニターするためには、可動鏡106を停止させなければならない。可動鏡106を停止させると、可動鏡106に由来するテラヘルツ波ピーク電場の変動が発生しないため、適切なポンプ光強度を実験的に求めることができない。そこで本発明では、光軸変調機付ミラー109などを用いて、ギャップ22とポンプ光集光範囲23の相対位置に意図的に振動を与え、仮想的に可動鏡106が動作しているのと同じ状況を作り出す。これを、本明細書では光軸変調と呼ぶ。光軸変調機付ミラー109には、ピエゾ素子による微小振動アクチュエータを内蔵して、反射面の角度や位置を任意の周波数と振幅で振動させることができる装置などを用いる。この際、ポンプ光103のテラヘルツ波発生器に対する入射角を大きく変えすぎてはいけない。具体的には、ポンプ光集光範囲23と同程度の範囲内の変調が好ましい。つまり、変動値取得ステップにおける光軸変調を、光軸変調停止時の発生側ポンプ光のビームプロファイル範囲内で発生側ポンプ光の中心が移動する様に行うのが好ましい。光軸変調によってポンプ光照射位置がギャップ22からずれて、テラヘルツ波が継続して発生しない状況は好ましくない。
【0027】
例えば、テラヘルツ波ピーク電場変動が最大になる時のポンプ光強度を超えるポンプ光強度に設定することで、可動鏡109の振動の影響を低減することができる。また例えば、テラヘルツ波ピーク電場変動が減少に転じ、変曲点を与えるポンプ光強度、或いはこの強度以下の任意の値に設定することで、可動鏡109の振動の影響をより低減できるため、この設定方法も好ましい。
【0028】
一方で、ポンプ光強度103が必要以上に強すぎると、テラヘルツ波発生光伝導素子110が破損する恐れがある。例えば、光伝導素子110を構成する低温成長GaAsなどのIII-V族化合物半導体の光学的端面破壊が発生する強度は、10W/cm以上である。通常、テラヘルツ波装置で用いるポンプ光強度は10〜100mWであるが、レンズで集光することで、上記強度に達する恐れがある。そこで、パワーメータ108を用い、ポンプ光集光範囲23におけるポンプ光が光学的端面破壊を起こさないようその強度を制限する。
【0029】
また、ポンプ光強度103が必要以上に強すぎると、別の要因によりテラヘルツ波発生光伝導素子110が破損する恐れがある。強力なポンプ光によってポンプ光集光範囲23が過熱されたり、または過剰なフォトキャリアが発生したりすることによって、光伝導素子110の電気抵抗が急激に減少し、ついには破壊に至るという現象が知られている。これを未然に防ぎ、ポンプ光強度を必要以上に強くしないために、テラヘルツ波発生光伝導素子110を流れる電流をマルチメータ114で測定する。これにより、観測される電流がポンプ光強度の上昇によって急増し始めたら、直ちにポンプ光強度を低下させ、光伝導素子110の破壊を未然に防ぐ。
【0030】
また、上記式3に従えばポンプ光強度103が強くなるに従い、テラヘルツ波ピーク電場変動はゼロに漸近するが、現実には或る一定値以下には下がらないと考えられる。特に、光軸変調機付ミラー109を動作させない状態で元々存在するノイズレベル以下には下がらない。よって、まず、光軸変調機付ミラー109を動作させ、ポンプ光強度を上昇させ、テラヘルツ波電場ピーク変動値を求める(この値をAとする)。そして、その時のポンプ光強度で、光軸変調機付ミラー109を動作させない状態においてテラヘルツ波ピーク電場変動値を求め(この値をBとする)、B=Aとなった時点でそれ以上のポンプ光強度上昇を停止する。即ち、光軸変調を行わずに、テラヘルツ波のピーク電場変動値を取得する無変調変動値取得ステップを行う。そして、ピーク電場変動値、或いはこれをピーク電場の大きさで除した値が、無変調変動値取得ステップで取得したピーク電場変動値、或いはこれをピーク電場の大きさで除した値と同等の値を与える時の光強度の値を、発生側ポンプ光の強度として設定する。こうすれば、この同等の値を与える時のポンプ光強度以下の範囲で発生側ポンプ光の強度を変化させることができる。
【0031】
なお、本実施形態ではテラヘルツ波発生器及びテラヘルツ波検出器として光伝導素子を挙げたが、非線形結晶を用いた発生や電気光学効果を用いた検出などを用いても良い。以上、可動鏡109の振動の影響を低減するためのポンプ光強度に設定することが可能なテラヘルツ波装置の動作方法及びその装置について述べたが、以下に、より具体的なポンプ光強度設定方法などについて説明する。
【0032】
(実施形態1)
図4に示したフローチャートで、可動鏡109の振動の影響を低減するためのポンプ光強度設定方法などに係る実施形態1について説明する。図4において、光路長変化機構である可動鏡106を、テラヘルツ波ピーク電場が観測できる位置に移動させる。こうして、光路長変化機構を、テラヘルツ波発生器からのテラヘルツ波のピークがテラヘルツ波検出器で観測される位置で停止させる停止ステップを行う。その後、試行回数nを定義し、最初にn=1とする。次に、光軸変調機付ミラー109の動作を開始し、ポンプ光強度を1段階(例えば0.5mW)上昇させる。この時、パワーメータ108にてポンプ光強度I(n)を取得する。そして、光軸変調時のテラヘルツ波ピーク電場変動値A(n)を取得する。こうして、発生側ポンプ光の強度を上昇させる上昇ステップを行う。また、テラヘルツ波発生器から継続してテラヘルツ波が発生する範囲で発生側ポンプ光の照射位置をテラヘルツ波発生器に対して変動させる光軸変調を行い、テラヘルツ波のピーク電場変動値を取得する変動値取得ステップを行う。
【0033】
次に、光軸変調機付ミラー109の動作を停止する。そして、光軸無変調時のテラヘルツ波ピーク電場E(n)を取得する。こうして、光軸変調を停止し、テラヘルツ波のピーク電場を取得するピーク電場取得ステップを行う。また、光軸無変調時のテラヘルツ波ピーク電場変動値B(n)を取得し、テラヘルツ波発生光伝導素子110に流れる光電流値C(n)を取得し、この光電流値C(n)のポンプ光強度に対する2階微分を取得する。この時、ポンプ光強度変調機105を用いてポンプ光強度を変調させて2階微分を取得する。ただし、数値計算によって2階微分を得ても良い。こうして、光軸変調を行わずに、テラヘルツ波のピーク電場変動値を取得する無変調変動値取得ステップが行われる。また。テラヘルツ波発生器に流れる電流の発生側ポンプ光の強度に対する2階微分を取得する2階微分取得ステップが行われる。
【0034】
続いて、得られた各パラメータを用いて以下の各判断を行う。
(第1判断)ポンプ光強度I(n)が、半導体の光学的端面破壊を引き起こす強度ICOD以上であれば、ポンプ光強度を1段階低いI(n-1)に設定して終了する。一方、ICOD未満であれば、次の第2判断に移る。
(第2判断)光電流値C(n)が、予め設定した電流値Cmax(例えば100mA)以上であれば、ポンプ光強度を1段階低いI(n-1)に設定して終了する。一方、Cmax未満であれば、次の第3判断に移る。
(第3判断)光電流値のポンプ光強度に対する2階微分dC(n)/dI(n)が負から正に転じたら、電流値の急上昇傾向と判断し、ポンプ光強度を1段階低いI(n-1)に設定して終了する。つまり、発生側ポンプ光の強度を、零から、前記2階微分が負から正に転じる時のポンプ光強度までの範囲内で変化させる様にする。一方、負或いはゼロであれば、次の第四判断に移る。
(第4判断)光軸変調時のテラヘルツ波ピーク電場変動値A(n)が1試行前の値A(n-1)を超えていれば、最初に戻り同様の動作を繰り返す(nをn+1として次の試行を行う)。A(n-1)以下であれば、次の第5判断に移る。
(第5判断)光軸変調時のテラヘルツ波ピーク電場変動値A(n)が光軸無変調時のテラヘルツ波ピーク電場変動値B(n)を超えていれば、最初に戻り同様の動作を繰り返す(nをn+1として次の試行を行う)。B(n)以下であれば、ポンプ光強度をI(n)に設定して終了する。この様にして、発生側ポンプ光の強度を、零から、テラヘルツ波発生器に光学的端面破壊が生じるポンプ光強度より低い範囲内の範囲で変化させて、上記ステップを繰り返す。
【0035】
こうして、可動鏡109の振動の影響を低減し、かつテラヘルツ発生光伝導素子110が損傷しないポンプ光強度を設定することができる。つまり、変動値取得ステップで取得したピーク電場変動値に最大値を与えるポンプ光強度を超える値を、発生側ポンプ光の強度として設定することができる。ここで、各種判断においては安全係数を用いても良い。例えば、安全係数をα(<1)として、各段階での判断(例えば第1判断)でI(n)>αICODまたはI(n)<αICODという様な判断を行う。こうすれば、より確実に半導体の光学的端面破壊などを防止できる。
【0036】
図5に、こうした一連のフローにより到達するポンプ光強度がどの様な大小関係にあるかを表したグラフを示す。適切なポンプ光強度Ioptは、図中に示したIminとImaxの間にあることが示されている。本実施形態では、ポンプ光強度を段階的に変化させているが、ポンプ光強度を連続的に変化させ、サーボ機構等によって適切なポンプ光強度に達する方法でも良い。また、テラヘルツ波ピーク電場変動値A(n)が明瞭なピークを持たない様な場合は、上記第4判断は省略しても良い。例えば、A(n)のピークを与えるポンプ光強度が非常に小さく、実質上A(n)がポンプ光強度増大に対して単調減少する様な場合はこうしても良い。また、テラヘルツ波ピーク電場変動値A(n)を用いる代わりに、テラヘルツ波ピーク電場変動値A(n)をピーク電場E(n)で除した比ピーク電場変動値S(n)=A(n)/E(n)を定義し、これを用いても良い。つまり、上記変動値取得ステップで取得したピーク電場変動値を上記ピーク電場取得ステップで取得したピーク電場の大きさで除した値に最大値を与えるポンプ光強度を超える値を、発生側ポンプ光の強度として設定しても良い。
【0037】
本実施形態に示したテラヘルツ波装置やその動作方法を用いることで、テラヘルツ波装置の動作に熟練していない人物でも適切なポンプ光強度が設定できる上、人物の癖による偏りなどを排除できる。
【0038】
(実施形態2)
本発明の実施形態2を以下に説明する。光軸変調時のテラヘルツ波ピーク電場は、テラヘルツ波ピーク電場E(n)と、変調による変動成分A(n)の和となっている。通常E(n)>A(n)であり、テラヘルツ波ピーク電場からその変動成分を検出するには高いダイナミックレンジが必要である。
【0039】
そこで、実施形態2では、実施形態1に示した光軸変調時のテラヘルツ波ピーク電場変動値A(n)を取得する方法において、光軸変調機付ミラー109による光軸変調と同期した同期検波を行う。これにより、テラヘルツ波ピーク電場変動成分A(n)のみを検出できるので、高いダイナミックレンジが不要となる。本実施形態の場合、実施形態1に示した第5判断を、A(n)=0かそれと同等に達したらYesに進み、それ以上であればNoに進むとする。
【0040】
(実施形態3)
本発明の実施形態3を以下に説明する。図6に示したフローチャートで、可動鏡109の振動の影響を低減するためのポンプ光強度設定方法などに係る実施形態3について説明する。
【0041】
図6において、光軸変調時のテラヘルツ波ピーク電場変動値A(n)を取得するまでは、図4と同じである。本実施形態では、次に、光軸変調時のテラヘルツ波ピーク電場変動値A(n)の、ポンプ光強度I(n)に対する1階微分dA(n)/dI(n)を取得する。これ以降は、光軸変調機付ミラー109の動作を停止する。そして、光軸無変調時のテラヘルツ波ピーク電場E(n)を取得する。また、テラヘルツ波発生光伝導素子110に流れる光電流値C(n)を取得し、この光電流値C(n)のポンプ光強度に対する2階微分を取得する。この時、ポンプ光強度変調機105を用いてポンプ光強度を変調させて2階微分を取得する。ただし、数値計算によって2階微分を得ても良い。
【0042】
続いて、得られた各パラメータを用いて以下の判断を行う。
(第1判断)から(第4判断)までは図4と同じである。本実施形態では、第5判断は次の様に行われる。
(第5判断)光軸変調時のテラヘルツ波ピーク電場変動値A(n)の、ポンプ光強度I(n)に対する1階微分dA(n)/dI(n)が、dA(n)/dI(n)<dA(n-1)/dI(n-1)の関係を満たしていれば、最初に戻り同様の動作を繰り返す。つまり、nをn+1として次の試行を行う。他方dA(n)/dI(n)>dA(n-1)/dI(n-1)を満たし、dA(n)/dI(n)が極小値に達したら、前記ピーク電場変動値A(n)が変曲点に達したと判断して、ポンプ光強度をI(n)に設定して終了する。こうして、変動値取得ステップで取得したピーク電場変動値、或いは該ピーク電場変動値を前記ピーク電場取得ステップで取得したピーク電場の大きさで除した値に変曲点を与えるポンプ光強度以上の値を、発生側ポンプ光の強度として設定することができる。
【0043】
dA(n)/dI(n)の取得には、ポンプ光強度調整機105を用いてポンプ光強度を変調させ、ロックインアンプ113を用いて同期検波を行うことで取得する。或いは、計算によって求めても良い。また、テラヘルツ波ピーク電場変動値A(n)が明瞭なピークを持たない様な場合は、上記第4判断は省略しても良い。また、テラヘルツ波ピーク電場変動値A(n)を用いる代わりに、テラヘルツ波ピーク電場変動SN比S(n)をS(n)=A(n)/E(n)と定義し、これを用いても良い。
【0044】
図7に、こうした一連のフローにより到達するポンプ光強度がどの様な大小関係にあるかを表したグラフを示す。適切なポンプ光強度Ioptは、図中に示したIminとImaxの間にあることが示されている。本実施形態の動作方法は、前記ピーク電場変動値A(n)が減少に転じた後、変曲点に達したところで、可動鏡106の振動の影響を充分低減できたと判断し、それ以上のポンプ光増加を行わないという指針に基づいている。本実施形態による動作方法は、実施形態1に比べてポンプ光強度を低めに抑えられることがあり、テラヘルツ波発生光伝導素子110を損傷する可能性をより低く抑えられることがあるという特徴を有する。
【0045】
(実施形態4)
本発明の実施形態4を以下に述べる。本実施形態では、図1における光軸変調機付ミラー109が、図8に示す様にピエゾ素子81を有し、これによりミラー82の角度を変えることで、ポンプ光83の角度を変え、光軸を変調させる。つまり、本実施形態では、光軸変調機構が、テラヘルツ波発生器に発生側ポンプ光を入射させるミラーに機械的振動を与える機構である。
【0046】
ここでは、可動鏡106の振動によるポンプ光103の光軸変動の様子(周波数や振幅)を予め取得しておき、ピエゾ素子81を用いて光軸変調機付ミラー109によって光軸変調を再現する。ピエゾ素子を用いることで、光軸変調の程度を任意に調節できる。また、本実施形態は、どの周波数の光軸変動が特に信号対雑音比の悪化原因となっているかを分析するのに特に適している。
【0047】
(実施形態5)
本発明の実施形態5を以下に述べる。本実施形態では、光軸変調機付ミラー109は、図9に示す様にスピーカー91と集音板92を有する。予め、可動鏡106の振動によって発せられる振動音を録音しておき、この振動音をスピーカー91で再生して発する。集音板92によって音波が機械的振動となりミラー93を振動させ、ミラー93の振動によってポンプ光94の光軸が変動する。つまり、本実施形態では、上記光軸変調機構は、テラヘルツ波発生器に発生側ポンプ光を入射させるミラーに音波を照射して機械的振動を与える機構である。本実施形態は、ピエゾ素子の応答速度を上回る高周波の振動や、振幅の小さい振動を再現して光軸を変調するのにより適している。
【0048】
(実施形態6)
本発明の第6の実施形態を以下に述べる。実施形態1では、光軸変調機付ミラー109を用いてポンプ光強度を最適な値に設定することで、可動鏡106の振動の影響を低減する。この時、ポンプ光103のテラヘルツ波発生光伝導素子110への入射位置やポンプ光103のサイズを調節して、ポンプ光集光範囲23とギャップ22の相対位置や、ポンプ光集光範囲23の大きさを調節・変更してもよい。
【0049】
即ち、本実施形態では、上記実施形態の方法でポンプ光強度を適切に設定しておいて、ポンプ光103のテラヘルツ波発生光伝導素子110への入射位置やサイズを調節して実効的なポンプ光パワーを変調する。例えば、光軸変調機付ミラー109を動作させてテラヘルツ波ピーク電場変動値Aをモニターしながら、ビームスプリッター102や可動鏡106の角度等を調節し、或いはテラヘルツ波発生光伝導素子110の手前にある不図示のレンズの位置を調節する。この様にして、テラヘルツ波ピーク電場変動値Aが最小になるよう、ポンプ光集光範囲23とギャップ22の相対位置やポンプ光集光範囲23の大きさを決定する。本実施形態によれば、可動鏡106の機械的振動による信号対雑音比の低下を更に抑制することができる。
【符号の説明】
【0050】
101・・・レーザ光源(光源)、103・・・発生側レーザ光(発生側ポンプ光)、105・・・ポンプ光強度調整機(強度増減機構)、106・・・可動鏡(光路長変化機構)、109・・・光軸変調機付ミラー(光軸変調機構)、110・・・テラヘルツ波発生光伝導素子(テラヘルツ波発生器)、111・・・テラヘルツ波検出光伝導素子(テラヘルツ波検出器)、113・・・ロックインアンプ(取得機構)、114・・・マルチメータ(電流測定機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源、テラヘルツ波発生器、テラヘルツ波検出器、及び前記光源から発せられ前記テラヘルツ波発生器に入射する発生側ポンプ光の光路長を変化させる光路長変化機構を有するテラヘルツ波装置の動作方法であって、
前記光路長変化機構を、前記テラヘルツ波発生器からのテラヘルツ波のピークが前記テラヘルツ波検出器で観測される位置で停止させる停止ステップと、
前記発生側ポンプ光の強度を上昇させる上昇ステップと、
前記テラヘルツ波発生器から継続してテラヘルツ波が発生する範囲で前記発生側ポンプ光の照射位置を前記テラヘルツ波発生器に対して変動させる光軸変調を行い、前記テラヘルツ波のピーク電場変動値を取得する変動値取得ステップと、
を有し、
前記発生側ポンプ光の強度を、零から、前記テラヘルツ波発生器に光学的端面破壊が生じるポンプ光強度より低い範囲内の範囲で変化させて、前記上昇ステップから変動値取得ステップを繰り返し、
前記変動値取得ステップで取得したピーク電場変動値に最大値を与えるポンプ光強度を超える値を、前記発生側ポンプ光の強度として設定することを特徴とする動作方法。
【請求項2】
光源、テラヘルツ波発生器、テラヘルツ波検出器、及び前記光源から発せられ前記テラヘルツ波発生器に入射する発生側ポンプ光の光路長を変化させる光路長変化機構を有するテラヘルツ波装置の動作方法であって、
前記光路長変化機構を、前記テラヘルツ波発生器からのテラヘルツ波のピークが前記テラヘルツ波検出器で観測される位置で停止させる停止ステップと、
前記発生側ポンプ光の強度を上昇させる上昇ステップと、
前記テラヘルツ波発生器から継続してテラヘルツ波が発生する範囲で前記発生側ポンプ光の照射位置を前記テラヘルツ波発生器に対して変動させる光軸変調を行い、前記テラヘルツ波のピーク電場変動値を取得する変動値取得ステップと、
前記光軸変調を停止し、前記テラヘルツ波のピーク電場を取得するピーク電場取得ステップと、
を有し、
前記発生側ポンプ光の強度を、零から、前記テラヘルツ波発生器に光学的端面破壊が生じるポンプ光強度より低い範囲内の範囲で変化させて、前記上昇ステップからピーク電場取得ステップを繰り返し、
前記変動値取得ステップで取得したピーク電場変動値を前記ピーク電場取得ステップで取得したピーク電場の大きさで除した値に最大値を与えるポンプ光強度を超える値を、前記発生側ポンプ光の強度として設定することを特徴とする動作方法。
【請求項3】
前記変動値取得ステップにおける光軸変調を、光軸変調停止時の前記発生側ポンプ光のビームプロファイル範囲内で前記発生側ポンプ光の中心が移動する様に行うことを特徴とする請求項1または2に記載の動作方法。
【請求項4】
前記テラヘルツ波発生器に流れる電流の前記発生側ポンプ光の強度に対する2階微分を取得する2階微分取得ステップを更に有し、
前記発生側ポンプ光の強度を、零から、前記2階微分が負から正に転じる時のポンプ光強度までの範囲で変化させて、前記上昇ステップから変動値取得ステップまたは前記上昇ステップからピーク電場取得ステップを繰り返すことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の動作方法。
【請求項5】
前記光軸変調を行わずに、前記テラヘルツ波のピーク電場変動値を取得する無変調変動値取得ステップを更に有し、
前記変動値取得ステップで取得した前記ピーク電場変動値と、該ピーク電場変動値を前記ピーク電場取得ステップで取得した前記ピーク電場の大きさで除した値とのいずれかが、
前記無変調変動値取得ステップで取得したピーク電場変動値と、該ピーク電場変動値を前記ピーク電場取得ステップで取得した前記ピーク電場の大きさで除した値とのいずれかと同等の値を与える時のポンプ光強度以下の範囲で前記発生側ポンプ光の強度を変化させて、前記上昇ステップから変動値取得ステップまたは前記上昇ステップからピーク電場取得ステップを繰り返すことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の動作方法。
【請求項6】
前記変動値取得ステップで取得した前記ピーク電場変動値、或いは該ピーク電場変動値を前記ピーク電場取得ステップで取得した前記ピーク電場の大きさで除した値に変曲点を与えるポンプ光強度以上の値を、前記発生側ポンプ光の強度として設定することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の動作方法。
【請求項7】
前記光軸変調を行わずに、前記テラヘルツ波のピーク電場変動値を取得する無変調変動値取得ステップを更に有し、
前記変動値取得ステップで取得した前記ピーク電場変動値、或いは該ピーク電場変動値を前記ピーク電場取得ステップで取得したピーク電場の大きさで除した値が、
前記無変調変動値取得ステップで取得したピーク電場変動値、或いは該ピーク電場変動値を前記ピーク電場取得ステップで取得したピーク電場の大きさで除した値と同等の値を与える時のポンプ光強度の値を、前記発生側ポンプ光の強度として設定することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の動作方法。
【請求項8】
前記ピーク電場変動値が最小になるよう、前記発生側ポンプ光の集光範囲のテラヘルツ波発生器に対する相対位置或いは前記発生側ポンプ光の集光範囲の大きさを決定するステップを更に有することを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の動作方法。
【請求項9】
光源、テラヘルツ波発生器、テラヘルツ波検出器、前記光源から発せられ前記テラヘルツ波発生器に入射する発生側ポンプ光の光路長を変化させる光路長変化機構を有するテラヘルツ波装置であって、
前記発生側ポンプ光の強度を増減させる強度増減機構と、
前記光路長変化機構を停止させた状態で前記発生側ポンプ光の照射位置を前記テラヘルツ波発生器に対して変動させる光軸変調機構と、
前記テラヘルツ波検出器で検出されるテラヘルツ波のピーク電場、及び前記光軸変調に対する前記テラヘルツ波のピーク電場変動値を取得する取得機構と、
前記テラヘルツ波発生器を流れる電流を測定する電流測定機構と、
を有することを特徴とするテラヘルツ波装置。
【請求項10】
前記光軸変調機構は、前記テラヘルツ波発生器に前記発生側ポンプ光を入射させるミラーに機械的振動を与える機構であることを特徴とする請求項9に記載のテラヘルツ波装置。
【請求項11】
前記光軸変調機構は、前記テラヘルツ波発生器に前記発生側ポンプ光を入射させるミラーに音波を照射して機械的振動を与える機構であることを特徴とする請求項9または10に記載のテラヘルツ波装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−145383(P2012−145383A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2586(P2011−2586)
【出願日】平成23年1月8日(2011.1.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】