説明

テロメアにより開始される細胞シグナル伝達の調節

【課題】テロメアにより開始される細胞シグナル伝達の調節を提供すること。
【解決手段】哺乳動物を、成長停止の不全、アポトーシスの不全または増殖老化の不全から保護するための、Mre11調節因子、タンキラーゼ調節因子、DNA損傷経路調節因子およびMRN複合体形成調節因子の使用。Mre11の調節因子をスクリーニングするための方法が、本出願において、開示される。その方法は、(a)Mre11に対する核酸基質の存在下で、候補調節因子をMre11とインビトロで接触させる工程;および(b)その基質の加水分解を測定し、それにより、対照と比較してその基質の加水分解を変化させることによって調節因子を同定する工程、を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、2003年4月11日に出願された国際出願番号PCT/US03/11393の一部係属出願であり、全文を本明細書に引用として援用する。
【0002】
(発明の背景)
(1.技術分野)
本発明は、シグナル伝達経路の制御に関する。より詳しくは、本発明は、テロメア開始配列、アポトーシス、日焼けおよびDNA損傷反応の制御に関する。
【背景技術】
【0003】
(2.従来技術)
人口が老齢化するに伴って、先進国世界では、ヒトの癌の頻度が増加している。癌のあるタイプと診断における症状の段階において、集中的な研究にもかかわらず近年の罹患率と死亡率は、十分に改善していない。癌が進行する間に、正常細胞とその組織特異性環境との相互作用が制御される方法の重要な態様である老化およびアポトーシスに対する耐性を含め、負の調節制御から、腫瘍細胞は、ますます独立するようになる。
【0004】
細胞老化は、癌に対する重要な防御であることが示唆されている。多くの事実は、老化における染色体の3’末端を複製できないことで生じる進行性のテロメアの短縮またはテロメアの機能障害を意味する。生殖系列細胞およびほとんどの癌細胞では、TTAGGG反復を染色体の3’末端に付加する酵素複合体であるテロメラーゼによるテロメアの長さの維持に、不死が関連している。TTAGGGの連結型反復であるテロメアは、近位テロメア二本鎖DNAで襞が付けられ、テロメア反復結合因子(TRF)、特にTRF2で安定化された約150〜300塩基の3’突出部を有する1本鎖ループ構造で終わっている。TRF2のドミナントネガティブ型(TRF2DN)の異所発現がテロメアループ構造を破壊し、3’突出部を露出させ、DNA損傷応答を引き起こし、その結果、原発性繊維芽細胞と線維肉腫が老化する。
【0005】
広範囲のDNA損傷またはある種の癌遺伝子の過剰発現により老化を急速に進めることができる。テロメアの長さを酵素的に維持するか、構築するテロメラーゼ逆転写酵素触媒サブユニット(TERT)の異所発現により老化を迂回することが可能で、それによりある種のヒト細胞タイプを不死化するが、これは複製老化のテロメア依存機構を強く示唆している。さらに、悪性細胞は、一般にTERTを発現し、および/または通常の老化細胞より短いテロメアを有するにもかかわらず、細胞に老化反応を迂回させ、無限に増殖させる変異を含んでいる。しかしながら、ある腫瘍細胞は、様々な抗癌剤に反応して老化し、不死の獲得が必ずしもそのDNA損傷に対する基本的な細胞反応の欠如を意味するものでないことを示唆している。
【0006】
ヒト細胞における老化は、p53経路およびpRb経路に大いに依存している。腫瘍抑制因子p53は、様々な異なった刺激、例えばDNA損傷、転写または複製の脱制御、癌遺伝子形質転換、およびある種の化学療法剤で生じた微小管の脱制御を細胞増殖停止またはアポトーシスに変換することにより、細胞ストレス反応機構に鍵となる役割を果たす。活性化されると、p53は、細胞増殖停止またはプログラムされた細胞の自殺を引き起こし、一方でゲノムの安定性に重要な制御機構として働く。特に、p53は、細胞集団から遺伝的に損傷した細胞を除去することによりゲノムの安定性を制御し、その主な機能の一つは、腫瘍形成を阻止することである。
【0007】
無傷の腫瘍抑制因子pRb経路は、腫瘍生成を阻止するのに必要である。野生型p53を含まないpRb−/−腫瘍細胞では、pRbの導入が老化を誘導する。頚部癌細胞は、しばしば野生型p53およびpRb遺伝子を維持するが、HPV E6およびE7タンパク質は、p53経路およびpRb経路をそれぞれ妨害する。ウイルスE2タンパク質の異所発現は、HPV E6およびE7遺伝子転写を抑制し、頚部癌腫細胞株に迅速で顕著な老化反応を誘導するが、これも癌細胞老化におけるp53およびpRbの重要な役割を確認するものである。
【0008】
p53経路およびpRb経路のみを抑制することが、繊維芽細胞が複製老化を迂回するために十分ではない。実際、SV40T抗原に感染したか、またはp53経路およびpRb経路を抑制するアデノウイルスE1A+E1BまたはHPV E6+E7の組み合わせを導入したヒト繊維芽細胞は、寿命が延長し、複製老化を逃れる。
【0009】
DNA中の二重鎖の切断は、哺乳動物細胞にとっては細胞毒性が非常に大きい。高度に保存されたMRN複合体が真核細胞中の二重鎖切断の修復に関与している。MRN複合体は、二重鎖切断部位に、それが生成すると直ちに付着する。MRN複合体はまた、テロメア反復結合因子(TRF)に関連した細胞周期のS期中にテロメアに移動する。
【0010】
MRN複合体は、Mre11、Rad50およびNBS(p95)で構成される。Mre11/p95/Rad50複合体の一部としてのMre11は、細胞周期のS期中にテロメア3’突出DNAと会合する。Mre11は、DNA鎖の3’末端に優先的に作用するエキソヌクレアーゼである。Mre11の活性は、ATPアーゼの1種であるRad50との相互作用に依存すると信じられている。Nbs1は、MRN複合体の核局在化の他、二重鎖切断の部位におけるその会合に関与すると信じられている。
【0011】
典型的には、癌は、正常または悪性を問わずすべての増殖細胞を非常に傷つける化学療法および放射線療法等のきわめて毒性の強い治療で処置される。このような治療の副作用には、リンパ系、造血系および腸上皮の重大な損傷の他、脱毛が含まれる。他の副作用には、脱毛が含まれる。より安全でより効果的な癌治療、特に正常であるが増殖性の細胞に対し悪性細胞を優先的に標的とすることによりこれらの副作用のいくつか、またはすべてを避ける別な治療法が常に必要とされ続けている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、Mre11の調節因子のインビトロスクリーニング法であって、Mre11に対する核酸基質の存在下で候補調節因子をインビトロでMre11と接触させ、基質の加水分解を測定する工程を有する方法に関する。コントロールと比較して基質核酸の加水分解を変化させることにより、調節因子を同定し得る。核酸基質は(TTAGGG)(n=1〜20)と少なくとも50%のヌクレオチド配列同一性を有するオリゴヌクレオチドであり得る。基質核酸の加水分解をUV吸収、標識オリゴマーのゲル分析、または非沈殿性ヌクレオチド塩基の回収により測定し得る。
【0013】
本発明はまた、Mre11に特異的に結合する薬剤のインビトロスクリーニング法であって、候補薬剤をMre11に接触させ、候補薬剤が特異的にMre11に結合するか否かを決める工程を有する方法に関する。Mre11は、固体支持体に付着してもよい。
【0014】
本発明はまた、Mre11の調節因子の細胞に基づくスクリーニング法であって、調節因子が細胞により取り込まれる条件下に候補調節因子とMre11を発現する細胞とを接触させ、細胞増殖、細胞生存能力、細胞形態、SA−b−Gal活性、およびp53またはp95のリン酸化を含むがそれらに限定されない細胞特性を測定する工程を含む方法に関する。コントロールと比較して特性を変えることにより調節因子を同定し得る。候補調節因子は、上記に同定したようにMre11に特異的に結合する薬剤でもよい。Mre11は、エキソヌクレアーゼ活性を有し得る、Mre11のフラグメント、ホモログ、アナログまたは改変体として発現されてもよい。
【0015】
本発明はまた、タンキラーゼ調節因子のインビトロスクリーニング法であって、タンキラーゼに対する基質の存在下で候補調節因子をインビトロでタンキラーゼと接触させ、基質のリボシル化を測定する工程を有する方法に関する。コントロールと比較してリボシル化を変化させて調節因子を同定し得る。基質は、TRFであり得るペプチドまたはポリペプチドであり得る。基質のリボシル化をUV吸収または基質の標識化により測定し得る。
【0016】
本発明はまた、タンキラーゼに特異的に結合する薬剤のインビトロスクリーニング法であって、候補薬剤をタンキラーゼと接触させ、候補薬剤がタンキラーゼと特異的に結合するか否かを決定する方法に関する。タンキラーゼを固体支持体に付着させてもよい。
【0017】
本発明はまた、タンキラーゼの調節因子の細胞に基づくスクリーニング法であって、調節因子が細胞に取り込まれる条件下で候補調節因子とタンキラーゼを発現する細胞とを接触させ、細胞増殖、細胞生存能力、細胞形態、SA−b−Gal活性、およびp53リン酸化またはp95リン酸化を含むがそれらに限定されない細胞特性を測定する工程を含む方法に関する。コントロールと比較して特性を変えることにより調節因子を同定し得る。候補調節因子は、上記のようなタンキラーゼと特異的に結合する薬剤であり得る。タンキラーゼは、リボシラーゼ活性を有し得る、タンキラーゼのフラグメント、ホモログ、アナログまたは改変体として発現されてもよい。
【0018】
本発明はまた、MRN複合体形成の調節因子のインビトロスクリーニング法であって、候補調節因子をインビトロでMre11、Rad50およびNbs1と接触させ、MRN複合体の形成を測定する工程を含む方法に関する。コントロールと比較してMRN複合体の形成を変化させることにより、調節因子を同定し得る。候補調節因子を核酸基質またはMre11のインヒビターの存在下でMre11、Rad50およびNbs1と接触させ得る。核酸は(TTAGGG)(n=1〜20)と少なくとも50%のヌクレオチド配列同一性を有するオリゴヌクレオチドでよい。MRN複合体の生成を遠心分離、共沈殿または非変性電気泳動により測定し得る。
【0019】
本発明はまた、DNA損傷経路の調節因子の細胞に基づくスクリーニング法であって、調節因子が細胞により取り込まれる条件下、オリゴヌクレオチドの存在下でMre11とタンキラーゼとを発現する細胞と候補調節因子とを接触させ、細胞増殖、細胞生存能力、細胞形態、SA−b−Gal活性、およびp53リン酸化またはp95リン酸化を含むがそれらに限定されない細胞特性を測定する工程を含む方法に関する。コントロールと比較して特性を変えることにより調節因子を同定し得る。オリゴヌクレオチドは(TTAGGG)(n=1〜20)と少なくとも50%のヌクレオチド配列同一性を有し得る。Mre11は、エキソヌクレアーゼ活性を有し得る、Mre11のフラグメント、ホモログ、アナログまたは改変体として発現されてもよい。タンキラーゼは、リボシラーゼ活性を有し得る、タンキラーゼのフラグメント、ホモログ、アナログまたは改変体として発現されてもよい。
【0020】
上記の細胞に基づくスクリーニング法に使用された細胞は、癌細胞でもよい。上記の細胞に基づくスクリーニング法に使用された細胞は、テロメラーゼ逆転写酵素またはALT経路によりテロメアを維持し得る。上記のインビトロおよび細胞に基づくスクリーニング法に記載された候補調節因子および薬剤は、糖質、単糖、オリゴ糖、多糖、アミノ酸、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂質、レチノイド、ステロイド、糖ペプチド、糖タンパク質、プロテオグリカンまたは有機低分子であってもよい。
【0021】
本発明はまた、Mre11アクチベーターを含む組成物、タンキラーゼアクチベーターを含む組成物、DNA損傷経路アクチベーターを含む組成物、またはMRN複合体形成アクチベーターを含む組成物の使用に関する。アクチベーターを癌の治療、アポトーシス誘導、細胞老化誘導、日焼け阻害、細胞分化促進または免疫抑制促進に使用し得る。アクチベーターは(TTAGGG)(n=1〜20)と少なくとも50%のヌクレオチド配列同一性を有し得るMre11のオリゴヌクレオチドアクチベーターでよい。最初の3’ヌクレオチド結合の約1〜約10個を3’→5’ヌクレアーゼで加水分解し得る。
【0022】
本発明はまた、Mre11、タンキラーゼ、DNA損傷経路またはMRN複合体形成のインヒビターを含む組成物の使用に関する。インヒビターをアポトーシス阻害、細胞老化阻害、生育促進、日焼け促進、細胞分化阻害、癌処置副作用減少に使用し得る。組成物を化学療法またはイオン化放射線と組み合わせて与えてもよい。インヒビターは(TTAGGG)(n=1〜20)と少なくとも50%のヌクレオチド配列同一性を有し得るMre11のオリゴヌクレオチドインヒビターであってもよい。最初の3’ヌクレオチド結合の約0〜約10までを3’→5’ヌクレアーゼで加水分解し得る。
・本発明はまた、(TTAGGG)(n=1〜20)と少なくとも50%のヌクレオチド配列同一性を有し、少なくとも1個の非加水分解性ヌクレオチド間結合を有するオリゴヌクレオチドを有する組成物に関する。最初の3’ヌクレオチド結合の1から約10までをMre11等の3’→5’ヌクレアーゼで加水分解し得る。オリゴヌクレオチドは、TTAGGGと少なくとも50%のヌクレオチド配列同一性を有し得る。オリゴヌクレオチドは、配列GTTAGGGTTAGを有してもよい。非加水分解性結合は、ホスホロチオエートであってもよい。オリゴヌクレオチドは、PNAであってもよい。
本発明はさらに、以下の項目を提供する。
(項目1)
Mre11の調節因子をスクリーニングするための方法であって、該方法は、
(a)Mre11に対する核酸基質の存在下で、候補調節因子をMre11とインビトロで接触させる工程;および
(b)該基質の加水分解を測定し、それにより、対照と比較して該基質の加水分解を変化させることによって調節因子を同定する工程;
を包含する、方法。
(項目2)
前記核酸基質は、(TTAGGG)(n=1〜20)と少なくとも50%のヌクレオチド配列同一性を有するオリゴヌクレオチドである、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記核酸基質の加水分解を、UV吸収または放射性標識の放出により測定する、項目1に記載の方法。
(項目4)
Mre11に特異的に結合する因子をスクリーニングするための方法であって、該方法は、
(a)候補因子をMre11と接触させる工程;および
(b)候補因子はMre11と特異的に結合するか否かを決定する工程;
を包含する、方法。
(項目5)
Mre11は、固体支持体に付着している、項目4に記載の方法。
(項目6)
Mre11の調節因子をスクリーニングするための方法であって、該方法は、
(a)Mre11を発現する細胞を提供する工程;
(b)候補調節因子を、該調節因子が該細胞により取り込まれる条件下で該細胞と接触させる工程;および
(c)細胞増殖、細胞生存能力、細胞形態、SA−β−Gal活性およびp53リン酸化、p95リン酸化からなる群より選択される該細胞の特性を測定し、それによって、対照と比較して該特性を変化させることによって調節因子を同定する工程;
を含む、方法。
(項目7)
前記候補調節因子は、Mre11に特異的に結合する、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記Mre11は、Mre11フラグメント、Mre11ホモログ、Mre11アナログまたはMre11改変体である、項目1〜7のうちのいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記Mre11のフラグメント、Mre11ホモログ、Mre11アナログまたはMre11改変体は、エキソヌクレアーゼ活性を有する、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記細胞の特性は、細胞増殖である、項目6に記載の方法。
(項目11)
前記細胞の特性は、細胞の生存能力である、項目6に記載の方法。
(項目12)
前記細胞の特性は、細胞形態である、項目6に記載の方法。
(項目13)
前記細胞の特性は、SA−β―Gal活性である、項目6に記載の方法。
(項目14)
前記細胞の特性は、p53のリン酸化またはp95のリン酸化である、項目6に記載の方法。
(項目15)
前記細胞は、癌細胞である、項目6〜7および9〜14のいずれかに記載の方法。
(項目16)
前記細胞のテロメアは、テロメラーゼ逆転写酵素またはALT経路により維持される、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記細胞は、癌細胞である、項目8に記載の方法。
(項目18)
前記細胞のテロメアは、テロメラーゼ逆転写酵素またはALT経路により維持される、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記候補調節因子は、糖質、単糖、オリゴ糖、多糖、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂質、レチノイド、ステロイド、糖ペプチド、糖タンパク質、プロテオグリカン、および有機低分子からなる群より選択される、項目15に記載の方法。
(項目20)
前記細胞のテロメアは、テロメラーゼ逆転写酵素またはALT経路により維持される、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記候補調節因子は、糖質、単糖、オリゴ糖、多糖、アミノ酸、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂質、レチノイド、ステロイド、糖ペプチド、糖タンパク質、プロテオグリカン、および有機低分子からなる群より選択される、項目17に記載の方法。
(項目22)
前記細胞のテロメアは、テロメラーゼ逆転写酵素またはALT経路により維持される、項目21に記載の方法。
(項目23)
タンキラーゼの調節因子をスクリーニングする方法であって、該方法は、
(a)タンキラーゼに対する基質の存在下で、候補調節因子をタンキラーゼとインビトロで接触させる工程;および
(b)該基質のリボシル化を測定し、それによって、対照と比較して該基質のリボシル化を変化させることによって、調節因子を同定する工程;
を包含する、方法。
(項目24)
前記基質は、ペプチドまたはポリペプチドである、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記基質は、TRF1である、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記基質のリボシル化を、UV吸収または前記基質の標識化により測定する、項目23に記載の方法。
(項目27)
タンキラーゼに特異的に結合する因子をスクリーニングするための方法であって、該方法は、
(a)候補結合因子をタンキラーゼと接触させる工程;および
(b)候補因子がタンキラーゼに特異的に結合するか否かを決定する工程;
を包含する、方法。
(項目28)
タンキラーゼは、固体支持体に付着している、項目27に記載の方法。
(項目29)
タンキラーゼの調節因子をスクリーニングするための方法であって、該方法は、
(a)タンキラーゼを発現する細胞を提供する工程;
(b)候補調節因子を、該調節因子が細胞により取り込まれる条件下で該細胞と接触させる工程;および
(c)細胞増殖、細胞生存能力、細胞形態、SA−β−Gal活性およびp53リン酸化、p95リン酸化からなる群より選択される該細胞の特性を測定し、それによって、対照と比較して該特性を変化させることにより調節因子を同定する工程;
を包含する、方法。
(項目30)
前記調節因子は、タンキラーゼに特異的に結合する、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記タンキラーゼは、リボシル化活性を有する、タンキラーゼフラグメント、タンキラーゼホモログ、タンキラーゼアナログまたはタンキラーゼ改変体である、項目23〜30のうちのいずれかに記載の方法。
(項目32)
前記タンキラーゼフラグメント、タンキラーゼホモログ、タンキラーゼアナログまたはタンキラーゼ改変体は、リボシル化活性を有する、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記細胞の特性は、細胞増殖である、項目29に記載の方法。
(項目34)
前記細胞の特性は、細胞生存能力である、項目29に記載の方法。
(項目35)
前記細胞の特性は、細胞形態である、項目29に記載の方法。
(項目36)
前記細胞の特性は、SA−β−Gal活性である、項目29に記載の方法。
(項目37)
前記細胞の特性は、p53のリン酸化またはp95のリン酸化である、項目29に記載の方法。
(項目38)
前記細胞は、癌細胞である、項目29〜30および32〜37のうちのいずれかに記載の方法。
(項目39)
前記細胞のテロメアは、テロメラーゼ逆転写酵素またはALT経路により維持される、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記細胞は、癌細胞である、項目31に記載の方法。
(項目41)
前記細胞のテロメアは、テロメラーゼ逆転写酵素またはALT経路により維持される、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記候補調節因子は、糖質、単糖、オリゴ糖、多糖、アミノ酸、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂質、レチノイド、ステロイド、糖ペプチド、糖タンパク質、プロテオグリカン、および有機低分子からなる群より選択される、項目38に記載の方法。
(項目43)
前記細胞のテロメアは、テロメラーゼ逆転写酵素またはALT経路により維持される、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記候補調節因子は、糖質、単糖、オリゴ糖、多糖、アミノ酸、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂質、レチノイド、ステロイド、糖ペプチド、糖タンパク質、プロテオグリカン、および有機低分子からなる群より選択される、項目40に記載の方法。
(項目45)
前記細胞のテロメアは、テロメラーゼ逆転写酵素またはALT経路により維持される、項目44に記載の方法。
(項目46)
MRN複合体形成の調節因子をスクリーニングするための方法であって、該方法は、
(a)候補調節因子を、Mre11、Rad50およびNbs1とインビトロで接触させる工程;ならびに
(b)MRN複合体の形成を測定し、それによって、対照と比較して該MRN複合体の形成を変化させることにより調節因子を同定する工程
を包含する、方法。
(項目47)
核酸基質またはMre11インヒビターの存在下で、候補調節因子をMre11、Rad50およびNbs1と接触させる、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記核酸は、(TTAGGG)(n=1〜20)と少なくとも50%のヌクレオチド配列同一性を有する、項目47に記載の方法。
(項目49)
MRN複合体の形成を、遠心分離、共沈殿または非変性電気泳動により測定する、項目46に記載の方法。
(項目50)
DNA損傷経路の調節因子をスクリーニングするための方法であって、該方法は、
(a)Mre11とタンキラーゼとを発現する細胞を提供する工程;
(b)候補調節因子を、該調節因子が細胞に取り込まれる条件下で、オリゴヌクレオチドの存在下にて該細胞と接触させる工程;
(c)細胞増殖、細胞生存能力、細胞形態、SA−β−Gal活性およびp53リン酸化、p95リン酸化からなる群より選択される該細胞の特性を測定し、それによって、対照と比較して該特性を変化させることにより調節因子を同定する工程
を包含し、該オリゴヌクレオチドは、(TTAGGG)(n=1〜20)と少なくとも50%の核酸配列同一性を有する、方法。
(項目51)
前記Mre11は、Mre11フラグメント、Mre11ホモログ、Mre11アナログまたはMre11改変体である、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記Mre11の前記Mre11フラグメント、Mre11ホモログ、Mre11アナログまたはMre11改変体は、エキソヌクレアーゼ活性を有する、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記タンキラーゼは、タンキラーゼフラグメント、タンキラーゼホモログ、タンキラーゼアナログまたはタンキラーゼ改変体である、項目50に記載の方法。
(項目54)
前記タンキラーゼは、タンキラーゼフラグメント、タンキラーゼホモログ、タンキラーゼアナログまたはタンキラーゼ改変体は、リボシル化活性を有する、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記細胞の特性は、細胞増殖である、項目50に記載の方法。
(項目56)
前記細胞の特性は、細胞生存能力である、項目50に記載の方法。
(項目57)
前記細胞の特性は、細胞形態である、項目50に記載の方法。
(項目58)
前記細胞の特性は、SA−β−Gal活性である、項目50に記載の方法。
(項目59)
前記細胞の特性は、p53リン酸化またはp95リン酸化である、項目50に記載の方法。
(項目60)
前記細胞は、癌細胞である、項目50〜59のいずれか1項に記載の方法。
(項目61)
前記細胞のテロメアは、テロメラーゼ逆転写酵素またはALT経路により維持される、項目61に記載の方法。
(項目62)
前記候補調節因子は、糖質、単糖、オリゴ糖、多糖、アミノ酸、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂質、レチノイド、ステロイド、糖ペプチド、糖タンパク質、プロテオグリカン、および有機低分子からなる群より選択される、項目50に記載の方法。
(項目63)
癌を処置するための方法であって、該方法は、
そのような処置を必要とする被験体に、Mre11アクチベーターを含む組成物、タンキラーゼアクチベーターを含む組成物、DNA損傷経路アクチベーターを含む組成物、またはMRN複合体形成アクチベーターを含む組成物を投与する工程
を包含する、方法。
(項目64)
アポトーシスを誘導するための方法であって、該方法は、
そのような処置を必要とする被験体に、Mre11アクチベーターを含む組成物、タンキラーゼアクチベーターを含む組成物、DNA損傷経路アクチベーターを含む組成物、またはMRN複合体形成アクチベーターを含む組成物を投与する工程
を包含する、方法。
(項目65)
細胞老化を誘導するための方法であって、該方法は、
そのような処置を必要とする被験体に、Mre11アクチベーターを含む組成物、タンキラーゼアクチベーターを含む組成物、DNA損傷経路アクチベーターを含む組成物、またはMRN複合体形成アクチベーターを含む組成物を投与する工程
を包含する、方法。
(項目66)
日焼けを阻害するための方法であって、該方法は、
そのような処置を必要とする被験体に、Mre11アクチベーターを含む組成物、タンキラーゼアクチベーターを含む組成物、DNA損傷経路アクチベーターを含む組成物、またはMRN複合体形成アクチベーターを含む組成物を投与する工程
を包含する、阻害法。
(項目67)
細胞分化を促進するための方法であって、該方法は、
そのような処置を必要とする被験体に、Mre11アクチベーターを含む組成物、タンキラーゼアクチベーターを含む組成物、DNA損傷経路アクチベーターを含む組成物、またはMRN複合体形成アクチベーターを含む組成物を投与する工程
を包含する、方法。
(項目68)
免疫抑制を促進するための方法であって、該方法は、
そのような処置を必要とする被験体に、Mre11アクチベーターを含む組成物、タンキラーゼアクチベーターを含む組成物、DNA損傷経路アクチベーターを含む組成物、またはMRN複合体形成アクチベーターを含む組成物を投与する工程
を包含する、方法。
(項目69)
前記アクチベーターは、(TTAGGG)と少なくとも50%のヌクレオチド配列同一性を有するMre11のオリゴヌクレオチドアクチベーターであり、少なくとも最初のx個の3’−ヌクレオチド結合は、3’→5’ヌクレアーゼにより加水分解可能であり、ここで、n=1〜20であり、xは、約1〜約10である、項目63〜68のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目70)
アポトーシスを阻害するための方法であって、該方法は、
そのような処置を必要とする被験体に、Mre11アクチベーターを含む組成物、タンキラーゼアクチベーターを含む組成物、DNA損傷経路アクチベーターを含む組成物、またはMRN複合体形成アクチベーターを含む組成物を投与する工程
を包含する、阻害法。
(項目71)
細胞老化を阻害するための方法であって、該方法は、
そのような処置を必要とする被験体に、Mre11アクチベーターを含む組成物、タンキラーゼアクチベーターを含む組成物、DNA損傷経路アクチベーターを含む組成物、またはMRN複合体形成アクチベーターを含む組成物を投与する工程
を包含する、方法。
(項目72)
成長を促進するための方法であって、該方法は、
そのような処置を必要とする被験体に、Mre11アクチベーターを含む組成物、タンキラーゼアクチベーターを含む組成物、DNA損傷経路アクチベーターを含む組成物、またはMRN複合体形成アクチベーターを含む組成物を投与する工程
を包含する、方法。
(項目73)
日焼けを促進するための法であって、該方法は、
そのような処置を必要とする被験体に、Mre11アクチベーターを含む組成物、タンキラーゼアクチベーターを含む組成物、DNA損傷経路アクチベーターを含む組成物、またはMRN複合体形成アクチベーターを含む組成物を投与する工程
を包含する、方法。
(項目74)
細胞分化を阻害するための方法であって、該方法は、
そのような処置を必要とする被験体に、Mre11アクチベーターを含む組成物、タンキラーゼアクチベーターを含む組成物、DNA損傷経路アクチベーターを含む組成物、またはMRN複合体形成アクチベーターを含む組成物を投与する工程
を包含する、方法。
(項目75)
癌処置の副作用を低減するための方法であって、該方法は、
そのような処置を必要とする被験体に、Mre11アクチベーターを含む組成物、タンキラーゼアクチベーターを含む組成物、DNA損傷経路アクチベーターを含む組成物、またはMRN複合体形成アクチベーターを含む組成物を投与する工程
を包含する、方法。
(項目76)
前記組成物を、化学療法またはイオン化放射線と組み合わせて与える、項目75に記載の方法。
(項目77)
前記インヒビターは、(TTAGGG)と少なくとも50%のヌクレオチド配列同一性を有するMre11のオリゴヌクレオチドインヒビターであり、少なくとも最初のx個の3’−ヌクレオチド結合は、3’→5’ヌクレアーゼにより加水分解可能であり、n=1〜20であり、xは、約0〜約10である、項目70〜76に記載の方法。
(項目78)
(TTAGGG)と少なくとも50%のヌクレオチド配列同一性を有するオリゴヌクレオチドと、少なくとも1個の非加水分解性ヌクレオチド間結合とを有する組成物であって、少なくとも最初のx個の3’−ヌクレオチド結合は、3’→5’ヌクレアーゼにより加水分解可能であり、n=1〜20であり、xは、約0〜約10である、組成物。
(項目79)
前記3’→5’ヌクレアーゼは、Mre11である、項目78に記載の組成物。
(項目80)
前記オリゴヌクレオチドは、TTAGGGと少なくとも50%のヌクレオチド配列同一性を有する、項目78に記載の組成物。
(項目81)
前記オリゴヌクレオチドは、配列GTTAGGGTTAGを有する、項目80に記載の組成物。
(項目82)
前記非加水分解性結合は、ホスホロチオエートである、項目78に記載の組成物。
(項目83)
前記オリゴヌクレオチドは、PNAである、項目78に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1A〜1Hは、希釈剤(図1Aおよび1E);40μMの11マー−1 pGTTAGGGTTAG(配列番号2:図1Bおよび1F);40μMの11マー−2 pCTAACCCTAAC(配列番号3:図1Cおよび11G);40μMの11マー−3 pGATCGATCGAT(配列番号4:図1Dおよび1H)で処理したプロピジウムイオダイド染色Jurkat細胞(不死化Tリンパ球)のFACS分析を示す。分析前48時間(図1A〜1D)または72時間(図1E〜1H)にJurkat細胞を言及した試薬で48時間処理した。
【図2】図2A〜2Fは、以下の細胞への添加についての蛍光活性化細胞分類の結果を示すグラフである:図2A、希釈剤;図2B、0.4μMの11マー−1;図2C、0.4μMの11マー−1−S;図2D、希釈剤;図2E、40μMの11マー−1;図2F、40μMの11マー−1−S。
【図3】図3A〜3Gは、以下の細胞への添加についての蛍光活性化細胞分類の結果を示すグラフである:図3A、希釈剤;図3B、10μMの11マー−1;図3C、10μMの11マー−1および1μMの11マー−1−S;図3D、10μMの11マー−1および5μMの11マー−1−S;図3E、10μMの11マー−1および10μMの11マー−1−S;図3F、20μMの11マー−1−S;図3G、10μMの11マー−1−S。
【図4】図4は、希釈剤、pTpTまたはpTspTで処理した細胞のメラニン含有量(pg/細胞)を示す棒グラフである。
【図5】図5は、希釈剤、11マー−1または11マー−1−Sで処理した細胞のメラニン含有量(pg/細胞)を示す棒グラフである。
【図6】図6は、偽処理(照射なし、オリゴヌクレオチドなし)、または紫外線(UV)処理、または照射なしでpTspT投与、またはUVを照射しpTspTを投与した細胞のメラニン含有量(pg/細胞)を示す棒グラフである。
【図7】図7は、ホスホロチオエート結合で合成した、ヌクレオチド配列の配列番号2のオリゴヌクレオチドのダイアグラムである。
【図8】図8は、図7に示す、β−ガラクトシダーゼ活性に対する細胞染色陽性で示される、正常新生児ヒト繊維芽細胞の培養物で老化を生じるホスホロチオエートオリゴヌクレオチド1、2、3および4の効果の試験の結果を示す棒グラフである。オリゴヌクレオチド「11−1」は、全体がホスホジエステル結合で合成された配列番号2で処理された繊維芽細胞培養物を示す。「ディル(Dil)」は、オリゴヌクレオチドを含まない希釈剤で処理された繊維芽細胞培養物を示す。
【図9】図9〜11は、ダウンレギュレーションMre11タンパク質レベルがT−オリゴの反応を妨害することを示す。
【図10】図9〜11は、ダウンレギュレーションMre11タンパク質レベルがT−オリゴの反応を妨害することを示す。
【図11】図9〜11は、ダウンレギュレーションMre11タンパク質レベルがT−オリゴの反応を妨害することを示す。
【図12A】図12は、p53経路およびpRb経路の双方がヒト繊維芽細胞におけるT−オリゴ誘導老化に寄与することを示す。図12a:p53DDおよびcdk4R24C発現のイムノブロット解析。30μgの全タンパク質を用い、全p53およびcdk4に対しプローブしたウェスタンブロットによるタンパク質分析のために細胞を集めた。レーン1、2、3および4は、それぞれ、R2F、R2F(p53DD)、R2F(cdk4R24C)、およびR2F(p53DD/cdk4R24C)繊維芽細胞由来のタンパク質試料を含む。ローディングコントロールとしてβ−アクチンを用いた。
【図12B】図12は、p53経路およびpRb経路の双方がヒト繊維芽細胞におけるT−オリゴ誘導老化に寄与することを示す。図12b:p53経路およびpRb経路のT−オリゴ誘導SA−β−Gal活性への寄与。R2F繊維芽細胞および誘導された被形質導入体を希釈剤または40μMのT−オリゴで1週間処理し、次いでSA−β−Gal活性を分析した。
【図12C】図12は、p53経路およびpRb経路の双方がヒト繊維芽細胞におけるT−オリゴ誘導老化に寄与することを示す。図12c:SA−β−Gal陽性細胞の定量分析。SA−β−Gal活性を発現する細胞を計数し、培養物中の全細胞の百分率として提示した。3回の独立の実験それぞれからの、3個の代表的視野から平均と標準偏差を計算した。
【図13A】図13は、ヒト線維肉腫HT−1080細胞のT−オリゴへの暴露が老化を誘導することを示す。図13a:T−オリゴへの暴露がSA−β−Gal活性を増加する。HT−1080細胞を希釈剤のみ、または40μMのT−オリゴ、または相補コントロールオリゴで4日間処理し、次いで染色しSA−β−Gal活性を分析した。
【図13B】図13は、ヒト線維肉腫HT−1080細胞のT−オリゴへの暴露が老化を誘導することを示す。図13b:SA−β−Gal陽性細胞の定量分析。SA−β−Gal活性を発現する細胞を計数し、培養物中の全細胞の百分率として表した。平均値と標準偏差を3回の独立の実験それぞれからの3つの代表的視野から計算した。
【図13C】図13は、ヒト線維肉腫HT−1080細胞のT−オリゴへの暴露が老化を誘導することを示す。図13c:細胞増殖に対するT−オリゴの効果。細胞を図12中のように4日間処理し、BrdU取り込みによりDNA合成を分析した。
【図13D】図13は、ヒト線維肉腫HT−1080細胞のT−オリゴへの暴露が老化を誘導することを示す。図13d:BrdU取り込みの定量分析。暗黒色核は、核DNAに取り込まれたBrdUを示す。BrdU陽性細胞を計算し、培養物中の全細胞の百分率として表した。平均値と標準偏差を3回の独立の実験それぞれからの3つの代表的視野から計算した。
【図13E】図13は、ヒト線維肉腫HT−1080細胞のT−オリゴへの暴露が老化を誘導することを示す。図13e:pRbリン酸化に対するT−オリゴの効果。細胞を図13a中の様に処理し、30μgの全タンパク質を用い、pRb−ser780、ser795およびser807/811(それぞれセリン780、セリン795およびセリン807/811でリン酸化したpRb)に対しプローブしてウェスタンブロットによるタンパク質分析のために集めた。レーンD、TおよびCは、希釈剤、T−オリゴおよび相補オリゴそれぞれで処理した細胞由来のタンパク質試料を含む。β−アクチンをローディングコントロールとして使用した。
【図14A】図14は、T−オリゴ除去のヒト線維肉腫HT−1080細胞中の老化表現型に対する持続効果を示す。並行培養物を図13aに記載のように処理した。次いで細胞をPBSで一回洗浄し、それ以上処理せず完全培地を24時間または48時間再供給した。図14a:SA−β−Gal活性。細胞をSA−β−Gal活性に対して染色した。
【図14B】図14は、T−オリゴ除去のヒト線維肉腫HT−1080細胞中の老化表現型に対する持続効果を示す。並行培養物を図13aに記載のように処理した。次いで細胞をPBSで一回洗浄し、それ以上処理せず完全培地を24時間または48時間再供給した。図14b:細胞周期停止。BrdUの取り込みを分析した。
【図14C】図14は、T−オリゴ除去のヒト線維肉腫HT−1080細胞中の老化表現型に対する持続効果を示す。並行培養物を図13aに記載のように処理した。次いで細胞をPBSで一回洗浄し、それ以上処理せず完全培地を24時間または48時間再供給した。図14c:pRbのリン酸化および活性化。図13eに記載のように免疫ブロット分析を行った。
【図15A】図15は、ヒト線維芽細胞肉腫HT−1080細胞のクローン形成能に対するT−オリゴへ長時間暴露した効果を示す。細胞を希釈剤、40μMのT−オリゴまたは相補オリゴで1週間処理し、分析した。図15a:染色皿の外観。
【図15B】図15は、ヒト線維芽細胞肉腫HT−1080細胞のクローン形成能に対するT−オリゴへ長時間暴露した効果を示す。細胞を希釈剤、40μMのT−オリゴまたは相補オリゴで1週間処理し、分析した。図15b:クローン形成能の定量。3回培養物のコロニーを計数し、希釈剤処理コントロールの百分率としてプロットした。
【図16】図16は、ヒト線維肉腫HT−1080細胞におけるテロメア平均長さ(MTL)に対するT−オリゴの効果を示す。細胞を図13aに記載するように処理した。レーン1、2および3は、希釈剤(D)、T−オリゴ(T)または相補オリゴ(C)で処理した細胞由来のゲノムDNAを含む。レーン4および5は、高分子量(H)および低分子量(L)標準テロメアDNAを含む。
【図17】図17は、T−オリゴおよびTRFDNが同じ経路を経由するDNA損傷反応を開始することを示す。グラフは、希釈剤コントロールを100%とした、ウェスタンブロットの濃度計読み取り値を示す。図9f:レーン1、希釈剤、GFP;レーン2:希釈剤TRF2DN;レーン3:3AB、GFP;レーン4:3AB、TRF2DN;レーン5:IQ、GFP;レーン6:IQ、TRF2DN。
【図18】図18は、T−オリゴの効果がテロメアに依存しないことを示す。図18a:細胞周期の各期における細胞の百分率と標準偏差が各条件の3回の培養から計算された、3回の実験の代表的な実験の一つ由来のFACSグラフ。図18b:ホスホp95/Nbs1に対して特異的な抗体を用いたウェスタンブロット。レーン1、2および3は、それぞれ希釈剤、11マー−1または11マー−2で処理した細胞由来のタンパク質を含んだ。コントロール細胞を10GyのIRで照射(+)するか、偽照射(−)した(3時間)。
【図19】図19は、タンキラーゼタンパク質レベルのダウンレギュレーションがT−オリゴ反応を妨害することを示す。上のパネルは、濃度計の読み取り値、下のパネルは、ウェスタンブロットを示す。
【図20】図20は、T−オリゴがセリン37で上のp53のリン酸化を生じることを示す。希釈剤または40μMで示された時間処理後、p53ホスホセリン37特異性抗体を用いて正常新生児細胞に対しウェスタンブロット分析を行った。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(発明の詳細な説明)
本発明は、3’テロメア突出配列のMre11媒介加水分解が、老化、日焼けおよびアポトーシス等のDNA損傷に対する細胞の保護反応に重要なシグナル伝達カスケードを開始するという発見に基づいている。理論に制約されず、本発明者らは、UV照射、DNAに対する酸化損傷等のDNA損傷、またはDNAに対する発癌性付加物の生成、または加齢に関連するテロメアの短縮が、TTAGGGの反復を有する3’突出配列を露出するテロメアループを不安定化すると信じている。次いでテロメア関連タンパク質が配列依存の方法で突出部に付着し、Mre11/p95/Rad50複合体に対する「アンカー」として作用する。Mre11は、次に3’末端からテロメア突出部を加水分解し始め、Rad50 ATPアーゼの活性化を引き起こす。Rad50の活性化は、リン酸化によるタンキラーゼの活性化、ある種の空間配置の変化、または他の機構をもたらし、次いでATMおよび多分ATR等の他のキナーゼを活性化する。ATMは、次にp95、およびp53等の他のDNA損傷反応エフェクターをリン酸化し、最終的に細胞周期停止の生物的終点、遺伝子誘導、アポトーシスおよび/または老化をもたらす。
【0025】
提案されたシグナル伝達経路におけるMre11およびタンキラーゼの役割に基づいて、Mre11、タンキラーゼ、DNA損傷経路またはMRN複合体形成のアクチベーターは、DNA損傷またはテロメアループ破壊の存在にかかわらずDNA損傷反応経路を活性化すると期待される。これは、テロメアホモログオリゴヌクレオチド(T−オリゴ)がMre11の基質となり、DNA損傷またはテロメアループ破壊がなくてもアポトーシス、老化または増殖の停止をもたらすことを示す本明細書中の実施例で示されている。
【0026】
同様に、Mre11、タンキラーゼ、DNA損傷経路またはMRN複合体形成のインヒビターは、DNA損傷またはテロメアループ破壊があってもシグナル伝達経路を阻害すると期待される。これは、アポトーシスおよび増殖停止が、以下によるDNA損傷およびテロメアループ破壊を生じる条件下で阻害されることを示す本明細書中の実施例で示されている:(i)Mre11の拮抗剤として作用する非加水分解性T−オリゴ、(ii)Mre11タンパク質レベルのRNAi媒介減少;および(iii)タンキラーゼタンパク質レベルのRNAi媒介減少。
【0027】
本発明の製品、組成物および方法を開示し説明する前に、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、制限的であることを意図するものではないことを理解する必要がある。明細書および付属のクレームで使用される場合、単数形“a”、“an”および“the”は、そうでないと文脈で明瞭に示されない限り複数の参照対象を含むことに注意しなければならない。
【0028】
本出願を通じて、特許または刊行物を引用する場合、本発明が所属する分野の技術水準をより完全に説明するためにこれらの刊行物の全文の開示を本出願に引用して援用する。
【0029】
(1.定義)
本明細書で用いる用語「アクチベーター」とは、タンパク質を活性化する、またはタンパク質の活性を増加する任意の物質を意味する。
【0030】
本明細書で用いる用語「投与」とは、ある調節因子の投薬量を説明するために用いられた場合、1回の投薬量または複数回の投薬量の薬剤を意味する。
【0031】
本明細書で用いる用語「アナログ」とは、ペプチドまたはポリペプチドに対する意味で使用された場合、1個またはそれより多くの非標準アミノ酸または通常のアミノ酸のセットからの他の構造的変化を有するペプチドまたはポリペプチドを意味し、オリゴヌクレオチドに対する意味で使用された場合、ホスホジエステルヌクレオチド間結合以外の1個またはそれより多くのヌクレオチド間結合を有するオリゴヌクレオチドを意味する。
【0032】
本明細書で用いる用語「抗体」とは、クラスIgG、IgM、IgA、IgDもしくはIgEの抗体、またはFab、F(ab’)、Fdを含め、そのフラグメントもしくは誘導体、および1本鎖抗体、二重特異性抗体、二特異性抗体、二価抗体およびそれらの誘導体を意味する。抗体は、所望のエピトープまたはそのエピトープ由来の配列に対し十分な結合特異性を示す、モノクローン抗体、ポリクローン抗体、親和性精製抗体またはそれらの混合物であってもよい。抗体は、キメラ抗体でもよい。1個またはそれより多くの当該分野で公知の化学物質、ペプチドまたはポリペプチド種の付着で抗体を誘導体化してもよい。抗体を化合物部分と結合してもよい。
【0033】
本明細書で用いる用語「アポトーシス」とは、細胞質の細胞小器官の完全性を保ちながら細胞容積の漸進的な縮小;光学顕微鏡または電子顕微鏡で観察したクロマチンの凝縮(すなわち核凝縮);および/または遠心沈降分析で決定したヌクレオソームサイズフラグメントへのDNA開裂を含むが、それらに限定されない、細胞死のある形式を意味する。食細胞による無傷の細胞フラグメント(アポトーシス体)の飲み込みを伴う、細胞の膜の完全性が失われた場合(例えば、膜の小疱形成)に細胞死が生じる。
【0034】
本明細書で用いる用語「癌の処置」とは、化学療法および放射線療法を含むがそれらに限定されない、当該分野で公知の任意の処置を意味する。
【0035】
本明細書で用いる用語「との組み合わせ」とは、調節因子の投与およびその他の処置を説明するために使用された場合、調節因子をその他の処置の前に、その他の処置と共に、またはその他の処置の後であるいはそれらの組合せで投与し得ることを意味する。
【0036】
本明細書で用いる用語「誘導体」とは、ペプチドまたはポリペプチドの状況に用いられた場合、1次構造(アミノ酸およびアミノ酸アナログ)以外が異なったペプチドまたはポリペプチドを意味し;オリゴヌクレオチドの状況に用いられた場合、ヌクレオチド配列以外の異なったオリゴヌクレオチドを意味する。例えば、ペプチドまたはポリペプチドの誘導体は、翻訳後修飾の1形式であるグリコシル化がされていることによって異なっていてもよい。例えば、ペプチドまたはポリペプチドが異種系中での発現のためにグリコシル化パターンを示してもよい。少なくとも1つの生物活性が維持される場合、これらのペプチドまたはポリペプチドは、本発明による誘導体である。その他の誘導体には、共有結合で修飾されたNまたはC末端を有する融合ペプチドまたは融合ポリペプチド、PEG化ペプチドまたはポリペプチド、脂質部分と会合したペプチドまたはポリペプチド、アルキル化ペプチドまたはポリペプチド、アミノ酸側鎖官能基を経由して他のペプチド、ポリペプチドまたは化合物に結合したペプチドまたはポリペプチド、および当技術で理解されると思われるその他の修飾が含まれるが、それらに限定されない。
【0037】
本明細書で用いる用語「フラグメント」とは、ペプチドまたはポリペプチドの状況で用いられた場合、好ましくは長さで約5〜約300個のアミノ酸、より好ましくは長さで約8〜約50個のアミノ酸の任意のペプチドまたはポリペプチドのフラグメントを意味し;オリゴヌクレオチドの状況で用いられた場合、好ましくは長さで約2〜約250個のヌクレオチド、より好ましくは長さで約2〜約20個のヌクレオチドの任意のオリゴヌクレオチドのフラグメントを意味する。ペプチドまたはポリペプチドフラグメントの代表的な例は、長さで8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50個のアミノ酸である。オリゴヌクレオチドフラグメントの代表的な例は、長さで2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のヌクレオチドである。
【0038】
本明細書で用いる用語「ホモログ」とは、ペプチドまたはポリペプチドの状況で用いられた場合、共通の進化の祖先を共有するか、それに対し少なくとも50%の同一性を有するペプチドまたはポリペプチドを意味し;オリゴヌクレオチドの状況で用いられた場合、共通の進化の祖先を共有するか、それに対し少なくとも50%の同一性を有するオリゴヌクレオチドを意味する。
【0039】
本明細書で用いる用語「阻害」とは、タンパク質の活性を言及する場合、酵素の活性を阻止、抑制、抑止または除去することを意味する。
【0040】
本明細書で用いる用語「処置」または「処置する」とは、哺乳動物をある病状から保護することを指す場合、その病状を予防、抑制、抑止または除去することを意味する。病状を予防することには、その病状を発症する前に本発明の組成物を哺乳動物に投与することが含まれる。病状を抑制することには、病状の誘発後であるがその臨床症状が現れる前に哺乳動物に本発明の組成物を投与することが含まれる。病状を抑止することには、病状を低減するか、または悪化することを予防するように、病状の臨床症状が現れた後に本発明の組成物を哺乳動物に投与することが含まれる。病状を除去することには、哺乳動物がその病状をもはや発症しないように、病状の臨床症状が現れた後に本発明の組成物を哺乳動物に投与することが含まれる。
【0041】
本明細書で用いる用語「改変体」とは、ペプチドまたはポリペプチドの状況で用いられた場合、アミノ酸の挿入、欠失または保存的置換によりアミノ酸配列が異なるが、少なくとも1つの生物活性を維持するペプチドまたはポリペプチドを意味し、オリゴヌクレオチドの状況で用いられた場合、ヌクレオチドの挿入、欠失または保存的置換によりヌクレオチド配列が異なるが、少なくとも1つの生物活性を維持するオリゴヌクレオチドを意味する。本発明の目的では、「生物活性」には特異的抗体に結合する能力が含まれるが、それに限定されない。
【0042】
(2.調節因子)
(a.Mre11の調節因子)
本発明は、Mre11活性の調節因子に関する。調節因子は、Mre11活性を誘導または増加し得る。調節因子はまた、Mre11活性を阻害または減少し得る。調節因子は、人工的に合成された化合物、または天然に存在する化合物であってよい。調節因子は、低分子量化合物、オリゴヌクレオチド、ポリペプチドもしくはペプチド、またはそれらのフラグメント、アナログ、ホモログ、改変体もしくは誘導体であってよい。
【0043】
オリゴヌクレオチド調節因子は、(TTAGGG)(n=約1〜約333)と少なくとも約50%〜約100%のヌクレオチド配列同一性を有するオリゴヌクレオチドであり得る。オリゴヌクレオチドは、1本鎖、2本鎖、またはその組み合わせを含み得る形態のものであり得るが、それらに制限されない。オリゴヌクレオチドは、約2〜約2000ヌクレオチドであることが好ましく、約2〜約200ヌクレオチドの1本鎖3’末端を有することがより好ましい。オリゴヌクレオチドは、ESTであってもよい。オリゴヌクレオチドのアナログ、誘導体、フラグメント、ホモログまたは改変体も具体的に考えられる。
【0044】
実施例に示されるように、本発明のあるオリゴヌクレオチドは、増殖の阻害および細胞中のアポトーシスの誘導を生じるが、本発明の他のオリゴヌクレオチドは、生育停止の阻害およびアポトーシスの阻害を生じる。オリゴヌクレオチドの活性のこの違いは、3’加水分解性ヌクレオチド間結合の数に依存性であった。3’加水分解性ヌクレオチド間結合の数を変えることにより、オリゴヌクレオチドの効果が変化した。
【0045】
理論に制約されず、本発明者らは、オリゴヌクレオチドがMRN複合体で認識され、3’エキソヌクレアーゼMre11に対する基質となると信じている。その結果、3’非加水分解性ヌクレオチド間結合を有する基質オリゴヌクレオチドがMre11の拮抗剤またはインヒビターとして作用する。Mre11活性のレベルを決定する他の因子には、3’非加水分解性ヌクレオチド間結合の全濃度、塩基配列およびG含有量が含まれるが、それらに限定されない。
【0046】
(i)ヌクレオチド間結合が生理学的条件下でMre11により加水分解性であるホスホジエステル結合またはそのアナログである場合、および(ii)その結合に対して3’側にあるすべてのヌクレオチド間結合も加水分解性である場合。その結合に対して3’である加水分解性ヌクレオチド間結合の数にかかわらず、ヌクレオチド間結合が生理学的条件下でMre11により非加水分解性である場合、ヌクレオチド間結合は、本発明の目的では、非加水分解性と考えられる。非加水分解性ヌクレオチド間結合の代表例には、ホスホロチオエート結合およびペプチド核酸結合(PNA)が含まれるが、それらに限定されない。
【0047】
本発明のある実施形態では、オリゴヌクレオチドは、加水分解性ヌクレオチド間結合を有する。オリゴヌクレオチドは、約1〜約200個の加水分解性ヌクレオチド間結合を有し得る。オリゴヌクレオチドはまた、非加水分解性ヌクレオチド間結合を有し得る。オリゴヌクレオチドは、約0〜約199個の非加水分解性ヌクレオチド間結合を有してもよい。
【0048】
他の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、非加水分解性結合を有する。オリゴヌクレオチドは、約1〜約200個の非加水分解性ヌクレオチド間結合を有し得る。オリゴヌクレオチドはまた、加水分解性ヌクレオチド間結合を有してもよい、オリゴヌクレオチドは、約0〜約5個の加水分解性ヌクレオチド間結合を有する。好ましいオリゴヌクレオチドは、本明細書、および本明細書に引用して援用する、2002年4月12日出願の同時係属中の米国特許出願第10/122,630号に記載のT−オリゴである。
【0049】
(b.タンキラーゼの調節因子)
本発明はまた、タンキラーゼ活性調節因子に関する。この調節因子は、タンキラーゼ活性を誘導し得る。この調節因子はまた、タンキラーゼ活性を阻害し得る。調節因子は、人工的に合成した化合物、または天然に存在する化合物であり得る。調節因子は、低分子量化合物、ポリペプチドもしくはペプチド、またはそれらのフラグメント、アナログ、ホモログ、改変体もしくは誘導体であってもよい。
【0050】
(c.DNA損傷経路の調節因子)
本発明はまた、DNA損傷経路の調節因子に関する。調節因子は、DNA損傷経路を誘発し得る。この調節因子は、また、DNA損傷経路を阻害し得る。調節因子は、人工的に合成した化合物、または天然に存在する化合物である。調節因子は、低分子量化合物、ポリペプチドもしくはペプチド、またはそれらのフラグメント、アナログ、ホモログ、改変体もしくは誘導体であってもよい。
【0051】
(d.MRN複合体形成の調節因子)
本発明はまた、MRN複合体形成の調節因子に関する。調節因子は、MRN複合体の形成を誘発し得る。この調節因子はまた、MRN複合体の形成を阻害し得る。調節因子は、人工的に合成した化合物、または天然に存在する化合物である。調節因子は、低分子量化合物、ポリペプチドもしくはペプチド、またはそれらのフラグメント、アナログ、ホモログ、改変体もしくは誘導体であってもよい。
【0052】
(3.組成物)
本発明はまた、上記のような調節因子を有する組成物に関する。この組成物は、Mre11アクチベーターを含み得る。組成物はまた、タンキラーゼアクチベーターを含み得る。組成物はまた、Mre11のインヒビターを含み得る。組成物はまた、タンキラーゼのインヒビターを含み得る。組成物はまた、1種より多くの本発明の調節因子を含み得る。組成物はまた、別な治療薬と共に1種またはそれより多くの調節因子を含み得る。
【0053】
本発明のある実施形態では、組成物は、本発明のオリゴヌクレオチドを有する。オリゴヌクレオチドは、加水分解性ヌクレオチド間結合または非加水分解性ヌクレオチド間結合、またはその組み合わせを有してもよい。好ましい実施形態では、このオリゴヌクレオチドはMre11のアクチベーターである。別の好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドは、Mre11のインヒビターである。上記のように、オリゴヌクレオチドの活性を調節して、加水分解性ヌクレオチド間結合の全濃度に基づきMre11を誘導または阻害し得る。
【0054】
(a.処方)
本発明の組成物は、通常の方法で配合された錠剤または菓子錠剤の状態である。例えば、経口投与用の錠剤およびカプセルは、結合剤、充填剤、滑沢剤、崩壊剤および湿潤剤を含むがそれらに限定されない通常の賦形剤を含み得る。結合剤には、シロップ、アカシアガム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカントガム、澱粉糊およびポリビニルピロリドンが含まれるが、それらに限定されない。充填剤には、ラクトース、糖、微結晶性セルロース、トウモロコシ澱粉、燐酸カルシウムおよびソルビトールが含まれるが、それらに限定されない。滑沢剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコールおよびシリカが含まれるが、それらに限定されない。崩壊剤には、馬鈴薯澱粉およびナトリウム澱粉グリコレートが含まれるが、それらに限定されない。湿潤剤には、ラウリル硫酸ナトリウムが含まれるが、それらに限定されない。錠剤は、当該分野で周知の方法に従ってコーティングされ得る。
【0055】
本発明の組成物は、水性または油性の懸濁液、溶液、乳化物、シロップおよびエリキシルを含むがそれらに限定されない液体配合物であってもよい。組成物はまた、使用前に水または他の適当なビヒクルで構成するための乾燥製品として配合してもよい。このような液体調製物は、懸濁剤、乳化剤、非水性ビヒクルおよび保存剤を含むがそれらに限定されない添加物を含んでもよい。懸濁剤には、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、および水素化食用油が含まれるが、それらに限定されない。乳化剤には、レシチン、ソルビタンモノオレエートおよびアカシアガムが含まれるが、それらに限定されない。非水性ビヒクルには、食用油、アーモンド油、分別ココナッツ油、油性エステル、プロピレングリコールおよびエチルアルコールが含まれるが、それらに限定されない。保存剤には、p−ヒドロキシ安息香酸メチルまたはp−ヒドロキシ安息香酸プロピルおよびソルビン酸が含まれるが、それらに限定されない。
【0056】
本発明の組成物は、座薬としても調合されてもよく、ココアバターまたはグリセリドを含むがそれらに限定されない座薬ベースを含み得る。本発明の組成物はまた、吸入用に調合されてもよく、乾燥粉末として投与し得る溶液、懸濁液または乳化物を含むが、それらに限定されない形状であってもよく、またはジクロロジフルオロメタンもしくはトリクロロフルオロメタン等の推進剤を用いるエアゾールの形状であってもよい。本発明の組成物はまた、クリーム、軟膏、ローション、ペースト、医用硬膏、パッチまたは膜を含むがそれらに限定されない水性または非水性ビヒクルを含む経皮調製物として調合してもよい。
【0057】
本発明の組成物はまた、注射または連続注入を含むがそれらに限定されない方法による非経口投与用に調合し得る。注射用の処方物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、または乳化物の形状であってもよく、懸濁剤、安定化剤および分散剤を含むがそれらに限定されない調合剤を含み得る。滅菌無パイロジェン水を含むがそれに限定されない適当なビヒクルで再構成するための粉末形状の組成物を提供してもよい。
【0058】
本発明の組成物は、移植または筋肉内注射で投与し得る貯蔵調製物として調合してもよい。組成物は、適当なポリマー材料または疎水性材料(例えば受容し得る油中の乳化物として)、イオン交換樹脂を用いるか、または難溶性誘導体として(例えば難溶性塩として)調合し得る。
【0059】
本発明の組成物はまた、リポソーム調製物として調合してもよい。リポソーム調製物は、関連する細胞または角質層に侵入し、細胞膜と融合してリポソームの内容物を細胞内に送達するリポソームを含むことができる。例えば、Yaroshの米国特許第5,077,211、Redziniakらの米国特許第4,621,023、またはRedziniakらの米国特許第4,508,703号に記載されたもののようなリポソームを使用できる。皮膚の病状を標的とすることを意図する本発明の組成物を、哺乳動物の皮膚をUVまたは酸化的損傷を生じる薬剤に暴露前、暴露中または暴露後に投与することができる。その他の適当な処方にニオソームを用いることができる。ニオソームは、膜の大部分が非イオン性脂質からなっており、その一部の形態は角質層を横切って化合物を輸送するに有効な、リポソームに似た脂質ビヒクルである。
【0060】
(4.処置法)
(a.Mre11アクチベーター、タンキラーゼアクチベーター、DNA損傷経路アクチベーターまたはMRN複合体形成アクチベーター)
Mre11、タンキラーゼ、DNA損傷経路またはMRN複合体形成の活性を誘導または増加する本発明の調節因子を単独で、または他の処置と組み合わせて、増殖停止、アポトーシスまたは増殖老化の不全に関連する病状の処置に使用し得る。このような病状の代表例には、癌および例えば乾癬におけるケラチン細胞または繊維芽細胞肥大性瘢痕およびケロイド、またはある種の自己免疫障害の症例におけるリンパ球サブセット等の正常粋を超える細胞の良性増殖等の過剰増殖疾患が含まれるが、それらに限定されない。これらの方法で処置される癌の形式は、様々な形で現れ、例えば頚部癌、リンパ腫、骨肉腫、メラノーマ、および皮膚に生じる他の癌、および白血病等の体の様々な細胞型および器官に生じる。この治療が目指す癌細胞のタイプはまた、乳房、肺、肝臓、前立腺、膵臓、卵巣、膀胱、子宮、結腸、脳、食道、胃および胸腺でもある。調節因子はまた日焼けの阻害、細胞分化の促進および免疫抑制に使用し得る。
【0061】
本発明のある実施形態では、加水分解性ヌクレオチド間結合を有する本発明のオリゴヌクレオチドを、処置を必要とする患者にオリゴヌクレオチドを投与することにより、増殖停止、アポトーシスまたは増殖老化の不全に関連する病状の処置に使用する。オリゴヌクレオチドは、非加水分解性ヌクレオチド間結合を有してもよい。上記で議論したように、オリゴヌクレオチドの活性を調節して、加水分解性ヌクレオチド間結合の合計濃度に基づいて増殖停止またはアポトーシスを誘導し得る。オリゴヌクレオチドを本発明の調節因子、または他の処置と組み合わせて投与してもよい。
【0062】
好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドを頚部癌、リンパ腫、骨肉種、メラノーマ、皮膚癌、白血病、乳癌、肺癌、肝癌、前立腺癌、膵臓癌、卵巣癌、膀胱癌、子宮癌、直腸癌、脳腫瘍、食道癌、胃癌および胸腺癌でなる群から選ばれる癌の処置に使用する。
【0063】
T−オリゴは、免疫抑制の公知の調節因子であるTNF−αおよびIL10の上方制御により、マウスモデルにおけるUV照射と同様な有効性でアレルギー性接触過敏症の誘導または誘発を防止することが可能である。従って、Mre11の局所または全身アクチベーターは、例えば乾癬または湿疹等のリンパ球媒介皮膚疾患の他、リューマチ性関節炎、多発性硬化症、紅斑性狼瘡等のリンパ球媒介全身性疾患、および多くの他の疾患の処置におけるステロイド療法に取って代わり得る。
【0064】
(b.Mre11、タンキラーゼ、DNA損傷経路またはMRN複合体形成のインヒビター)
Mre11、タンキラーゼ、DNA損傷経路またはMRN複合体形成の活性を阻害または減少する本発明の調節因子は、単独または他の処置と組み合わせて使用されて、増殖停止、アポトーシスまたは増殖老化に関連する病状を処置し得る。このような病状の代表例にはUV照射への暴露、および正常組織に対する化学療法および放射線療法等の癌処置の副作用、または日光に暴露された正常皮膚における日焼け反応の促進が含まれるが、それに制限されない。細胞分化を阻害するためにも調節因子を使用し得る。
【0065】
他の実施形態では、非加水分解性ヌクレオチド間結合を有する本発明のオリゴヌクレオチドが、このオリゴヌクレオチドをそのような処置を必要とする患者に投与することにより、増殖停止またはアポトーシスに関連する病状を処置するために使用される。このオリゴヌクレオチドは、加水分解性ヌクレオチド間結合も含み得る。上記に議論したように、オリゴヌクレオチドの活性を調節して、加水分解性ヌクレオチド間結合の合計濃度に基づき増殖停止またはアポトーシスを阻害し得る。オリゴヌクレオチドを本発明の調節因子または他の処置と組み合わせて投与してもよい。
【0066】
ある好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドがUV照射への暴露、ならびに化学療法および放射線療法等の癌処置の副作用でなる群から選ばれた病状を処置するために使用される。
【0067】
(c.投与)
本発明の組成物を経口、非経口、舌下、経皮、直腸、経粘膜、局所、経吸入、経頬の投与、またその組み合わせを含むがそれらに限定されない任意の方法で投与し得る。非経口投与には、静脈内、動脈内、腹膜内、皮下、筋肉内、腱鞘内、および骨関節内を含むがそれらに限定されない。
【0068】
(d.投薬量)
治療に使用するに必要な組成物の治療有効量は、治療する病状の性質、活性を必要とする時間の長さ、および患者の年齢と状態によって変化し、最終的には、担当医によって決定される。しかしながら、一般に成人の治療に用いられる投薬量は、典型的には、1日あたり0.001mg/kg〜約200mg/kgの範囲である。投薬量は、1日当たり約1μg/kg〜約100μg/kgでもよい。所望の投薬量は、1回の用量で投薬されるか、適当な間隔で投与される複数回の用量、例えば1日あたり2回、3回、4回またはそれより多くの部分用量として便利に投与され得る。複数回の投薬が望ましいか、必要である。
【0069】
調節因子の投薬量は、約1μg/kg、25μg/kg、50μg/kg、75μg/kg、100μg/kg、125μg/kg、150μg/kg、175μg/kg、200μg/kg、225μg/kg、250μg/kg、275μg/kg、300μg/kg、325μg/kg、350μg/kg、375μg/kg、400μg/kg、425μg/kg、450μg/kg、475μg/kg、500μg/kg、525μg/kg、550μg/kg、575μg/kg、600μg/kg、625μg/kg、650μg/kg、675μg/kg、700μg/kg、725μg/kg、750μg/kg、775μg/kg、800μg/kg、825μg/kg、850μg/kg、875μg/kg、900μg/kg、925μg/kg、950μg/kg、975μg/kgまたは1mg/kgを含むが、それらに限定されない任意の投薬量であってもよい。
【0070】
(5.スクリーニング法)
本発明はまた、Mre11活性の調節因子を同定するスクリーニング法に関する。本発明はまた、タンキラーゼ活性の調節因子を同定するスクリーニング法に関する。本発明は、さらにMRN複合体形成の調節因子を同定するスクリーニング法に関する。さらに、本発明は、DNA損傷経路の調節因子を同定するスクリーニング法に関する。スクリーニング法をインビトロ、細胞ベース、遺伝的およびインビボ分析を含むがそれらに限定されない種々のフォーマットで実行し得る。
【0071】
Mre11調節因子またはタンキラーゼ調節因子を、場合に応じてMre11またはタンキラーゼに特異的に結合する物質をスクリーニングすることにより同定し得る。免疫沈澱およびアフィニティークロマトグラフィーを含むがそれらに限定されない多くの標準技術を用いて、当業者は、特異的結合物質をインビトロで同定し得る。また、酵母2−ハイブリッドおよびファージディスプレイを含むがそれらに限定されない多くの標準技術を用いる遺伝的スクリーニングを用いて、当業者はまた、特異的結合物質を同定し得る。また、Mre11またはタンキラーゼをチップ(例えばガラス、プラスチックまたはシリコン)等の固相支持体に付着させることを含むがそれに限定されない高スループット法を用いて当業者はまた、特異的結合物質を同定し得る。
【0072】
Mre11調節因子またはタンキラーゼ調節因子をまた、場合に応じてMre11またはタンキラーゼの活性を調節する物質についてインビトロでスクリーニングすることにより同定し得る。場合に応じて、Mre11またはタンキラーゼを予想される調節因子と接触させ、予想される調節因子がMre11またはタンキラーゼの活性を変化させるかどうかを決定することにより、調節因子を同定し得る。Mre11の核酸基質の加水分解を測定することにより、Mre11の活性を決定し得る。核酸基質の加水分解をUV吸収の測定、および好ましくは、標識オリゴのゲル分析または非沈殿性ヌクレオチド塩基の回収を含むがそれらに限定されない方法により決定し得る。タンキラーゼの活性を、TRF1を含むがそれに限定されないペプチドまたはポリペプチドのリン酸化を測定することにより決定し得る。
【0073】
Mre11、Rad50およびNbs1を組み合わせ、コントロールと比較してMRN複合体形成に対する候補調節因子の効果を測定することにより、MRN複合体形成の調節因子をインビトロで同定し得る。遠心分離、共沈殿および非変性電気泳動を含むがそれらに限定されない当業者に公知の多くの標準技術を用いてMRN複合体の形成を測定し得る。
【0074】
細胞ベース分析でMre11またはタンキラーゼの活性を調節する物質をスクリーニングすることにより、Mre11調節因子またはタンキラーゼ調節因子を同定し得る。DNA損傷経路の調節因子も同様に同定し得る。細胞を疑わしい調節因子と接触させ、疑わしい調節因子がアポトーシス、老化、またはp53またはp95のリン酸化のレベルを変化させるかどうかを決定して、調節因子を同定し得る。上記で議論したように、候補調節因子は、Mre11またはタンキラーゼと特異的に結合する物質であってもよい。アポトーシスの調節をFACS分析におけるサブG/Gピークのサイズの測定、TUNEL分析、DNAラダー分析、アネキシン分析、またはELISA分析を含むがそれらに限定されない方法により測定し得る。老化に関連するβ−ガラクトシダーゼ活性の測定、または細胞収量の増加不能またはpRbリン酸化不能またはマイトジェン刺激後のH−チミジンの取り込み不能を測定することにより、老化の調節を決定し得る。ゲルシフトアッセイにより、p53プロモーター駆動CATまたはルシフェラーゼコンストラクト読み出しにより、またはp21等のp53−制御遺伝子生成物の誘導により、セリン15またはセリン37におけるp53のリン酸化を測定することにより、p53活性の調節を決定し得る。ウェスタンブロット分析におけるp95バンドの移動により、またはS期停止を検出するためのFACS分析により、セリン343におけるp95のリン酸化を測定することによりp95活性の調節を決定し得る。また、インビボ腫瘍形成を調節する物質をスクリーニングすることにより、Mre11調節因子またはタンキラーゼ調節因子を同定し得る。
【0075】
細胞ベース分析で任意の細胞を使用し得る。本発明で使用するための細胞には、哺乳動物細胞が含まれることが好ましく、ヒトおよびヒト以外の霊長類細胞が含まれることがより好ましい。適当な細胞の代表例には、初代(正常)ヒト皮膚繊維芽細胞、上皮ケラチン細胞、メラニン形成細胞、および対応する不死化細胞株または形質転換細胞株;および初代マウス細胞株、不死化マウス細胞株または形質転換マウス細胞株が含まれるがそれらに限定されない。タンパク質リン酸化の量を比色分析、発光分析、蛍光分析およびウェスタンブロットを含むがそれらに限定されない当業界の標準技術により測定し得る。
【0076】
予期される調節因子を混合等により細胞に添加する条件は、アポトーシスまたはシグナル伝達を妨害する他の調節化合物が基本的に存在しない場合、細胞がアポトーシスまたはシグナル伝達を受け得る条件である。有効な条件には、細胞増殖を可能にする、適当な媒体、温度、pHおよび酸素条件が含まれるが、それらに限定されない。適当な媒体は、典型的には、成長因子および同化可能炭素、窒素および燐源の他、適当な塩、ミネラル、金属、およびビタミン等の他の栄養物を含む固体または液体の媒体であり、細胞がアポトーシスまたはシグナル伝達を示し得るように細胞を培養できる有効媒体を含む。例えば、哺乳動物細胞では、媒体は10%のウシ胎児血清を含むDulbeccoの改変Eagle培地を含み得る。
【0077】
各細胞を組織培養フラスコ、試験管、マイクロタイターディッシュ、およびペトリプレートを含むがそれらに限定されない様々な容器中で培養し得る。培養を細胞に対して適当な温度、pHおよび二酸化炭素含有量で行う。このような培養条件も当業者の範囲内である。
【0078】
予期される調節因子を細胞に加える方法には、エレクトロポーレーション、ミクロインジェクション、細胞発現(すなわち裸の核酸分子、組み換えウイルス、レトロウイルス発現ベクターおよびアデノウイルス発現を含めた発現系を用いる)、因子の培地への添加、イオン対形成因子の使用、および細胞を透過性にするための洗剤の使用が含まれる。
【0079】
候補調節因子は、糖質、単糖、オリゴ糖、多糖、アミノ酸、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、DNAおよびDNAフラグメント、RNAおよびRNAフラグメント等を含むポリヌクレオチド、脂質、レチノイド、ステロイド、糖ペプチド、糖タンパク質、プロテオグリカン等の天然に存在する分子;またはペプチド模倣物等の天然に存在する分子のアナログまたは誘導体;ならびに「低分子」有機化合物等の天然に存在しない分子等でよい。用語「低分子有機化合物」は、一般的に分子量約1000以下、好ましくは、約500以下を有する有機化合物を指す。
【0080】
候補調節因子は、コンビナトリアルケミストリー技術、発酵法、植物および細胞抽出法等を含むがそれらに限定されない手段で調製され得る、または得られ得るライブラリー(すなわち化合物のコレクション)中に存在し得る。コンビナトリアルライブラリーの作成法は、周知である。例えばE.R.Felder、Chimia、1994、48、512−541;Gallopら、J.Med.Chem.1994、37、1233−1251;R.A.Goughten、Trends Genet.1993、9、235−239;Houghtonら、Nature、1991、354、84−86;Lamら、Nature、1991、354、82−84;Carellら、Chem.Biol.1995、3、171−183;Maddenら、Perspectives in Drug Discovery and Design、2、269−282;Cwirlaら、Biochemistry、1990、87、6378−6382;Brennerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1992、89、5381−5383;Gordonら、J.Med.Chem.1994、37、1385−1401;Leblら、Biopolymers、1995、37、177−198;およびそれらの中に引用された参考文献参照。
【0081】
本発明は、以下の非制限的実施例に示された多様な局面を有する。
【実施例】
【0082】
(実施例1)
(オリゴヌクレオチドがアポトーシスを誘発し得る)
テロメア突出反復配列(TTAGGG;配列番号1)に相同のオリゴヌクレオチド、配列(11マー−1:pGTTAGGGTTAG;配列番号2)のオリゴヌクレオチド、この配列に相補性のオリゴヌクレオチド(11マー−2:pCTAACCCTAAC;配列番号3)、およびテロメア配列に関係しないオリゴヌクレオチド(11マー−3:pGATCGATCGAT;配列番号4)を、テロメア破壊に応じてアポトーシスを行うと報告されているヒトT細胞株であるJurkat細胞の培養物に添加した。コントロール細胞が25〜30%であるのと比較して、48時間以内に、40μMの配列番号5で処理した細胞の50%がS期に集積し(p<0.0003、ノンペアt検定、図1A〜1D参照)、コントロールが2〜3%であるのと比較して、72時間でこれらの細胞の13%がサブG/G含有率で決定してアポトーシス性であった(p<0.007、ノンペアt検定、図1E〜1H参照)。コントロールが3〜5%であるのと比較して、96時間で、11マー−1処理細胞の20±3%がアポトーシス性であった(p<0.0001、ノンペアt検定)。その無二の効果の説明として11マー−1の優先的な取り込みを排除するため、Jurkat細胞を3’末端にフルオレセインホスホルアミダイトで標識したオリゴヌクレオチドで処理し、次いで共焦点顕微鏡法およびFACS分析に供した。細胞の蛍光強度は、4時間および24時間において全ての処理後で同じであった。ウェスタン分析は、11マー−1添加後の24時間でp53が増加したが、11マー−2または11マー−3では増加せず、E2F1転写因子のレベルが同時に増加したことを示した。この因子は、アポトーシスの誘導でp53と協力し、ヒト繊維芽細胞でp53に依存して老化表現型を誘導する他、S期チェックポイントを制御することが知られている。
【0083】
(実施例2)
(テロメア突出ホモログ11マー−1のホスホロチオエートバージョンは、アポトーシスを誘導しない)
JurkatヒトT細胞の培養物を希釈剤、11マー−1(配列番号1)またはホスホロチオエート11マー−1(11マー−1−S)のいずれかで96時間処理し、細胞を集めFACS分析用に処理した。0.4μM(図2A〜2C)および40μM(図2D〜2F)の2種類の濃度のオリゴヌクレオチドを試験した。0.4μMでは、いずれのオリゴヌクレオチドも予期されたJurkat細胞の対数的に増殖する細胞周期プロフィールに影響しなかった。40μMでは、11マー−1は、サブG/Gピークで示される広範囲のアポトーシスを誘導したが、11マー−1−Sは、影響しなかった。
【0084】
(実施例3)
(11マー−1のホスホロチオエートバージョンは、ホスフェート骨格11マー−1によるS期停止の誘導を妨害する)
ケラチン細胞株の培養物(SSC12F、100,000細胞/38cm)を11マー−1(配列番号2)のみ、または濃度を増加させた11マー−1−Sの存在下で、11マー−1により48時間処理した。実施例1で先に示したように、11マー−1は、FACS(Becton−Dickinson FacScan)で示されるS期停止を誘導した。コントロールである希釈剤で処理した細胞が26%であるのと比較して、細胞の43%がS期であった。しかしながら、ホスホロチオエート11マー−1の濃度を増加してこれらの培養物に加えると、停止した細胞の数は、より少なかった(図3A〜3G)。この停止の完全な阻害が11マー−1:11マー−1−Sの比が2:1である場合に見られた。11マー−1−S自体は、S期停止を誘導しなかった。
【0085】
(実施例4)
(テロメアオリゴヌクレオチドのホスホロチオエート型は、構成的色素沈着およびUV誘導色素沈着を誘導し、メラニン生成を刺激しない)
S91マウスメラニン細胞の培養物(100,000細胞/38cm)を100μMのpTpTまたはホスホロチオエートpTpT(pTspT)(図4)、または40μMの11マー−1またはホスホロチオエート11マー−1(11マー−1−S)(図5)で6日間処理し、細胞を集め計数し、メラニン含有量を分析した。pTpTおよび11マー−1は、これらの細胞中でメラニン生成を刺激したが(それぞれ図4および図5)、pTspTおよび11マー−1−Sは、刺激しなかった(それぞれ図4および図5)。さらに、pTspT(図4)および11マー−1−S(図5)は、これらの細胞中の構成的色素沈着を減少させた。このことは、テロメア修復/複製中にこの配列を慢性的に暴露するとメラニン生成に対する定常的な低いレベルのシグナルを提供し得、このシグナルがpTspTおよび11マー−1−Sで妨害されることを示唆している。
【0086】
(実施例5)
(ホスホロチオエートpTspTは、UV誘発メラニン生成を阻害する)
S91細胞の2重の培養物(100,000細胞/39cm)を偽照射、またはリサーチラジオメータ(モデルIL1700A、International Light、Nweburyport、MA)を用いる285±5nmで計測して、1kWキセノンアークソーラーシミュレーター(XMN1000−21、Optical Radiation、Azuza、CA)からの5mJ/cmの太陽シミュレーション光で照射した。枚の偽照射プレートに100μMのpTspTを追加し、2種の照射培養物も同様にpTspTで処理した。1週間後、細胞を集めて計数し、細胞ペレットを1NのNaOHに溶解し475nmの光学濃度を測定してメラニン含量を分析した。UV照射によりこれらの細胞中のメラニン含有量は、2倍になった。しかしながら、この反応は、pTspTを加えることにより妨害された(図6)。さらに、図4および5に示したデータと同様、これらの細胞の構成的色素沈着がpTspTにより偽照射培養物中で減少した。
【0087】
(実施例6)
(活性には、T−オリゴの加水分解が必要である)
配列番号2に基づくオリゴヌクレオチドを合成した。オリゴヌクレオチド1を完全にホスホロチオエート骨格で合成した。オリゴヌクレオチド2は、各末端に2個のホスホロチオエート結合を有し、中央の他の結合は、ホスホジエステル結合であった。オリゴヌクレオチド3は、5’末端に2個のホスホロチオエート結合を有し(5’末端をブロック)、残りの結合は、ホスホジエステル結合であった。オリゴヌクレオチド4は、3’末端に2個のホスホロチオエート結合を有し(3’末端をブロック)、残りの結合は、ホスホジエステル結合であった。図7参照。
【0088】
これらのオリゴヌクレオチドを正常新生児繊維芽細胞の培養物に加えた。48時間後、細胞を集め、ウェスタンブロットによりp53セリン15リン酸化およびp95/Nbs1リン酸化を分析した。他の培養物をオリゴヌクレオチドの存在下で1週間放置し、次いで細胞を老化関連β−ガラクトシダーゼ活性について染色した(SA−β−Gal)。β−ガラクトシダーゼ陽性細胞を計数し、全細胞の%として表した(図8)。
【0089】
ヌクレアーゼが接近し得る3’末端を有するオリゴヌクレオチドは、p53およびp95/Nbs1リン酸化等の「初期」反応刺激で、最も効果的であった。しかしながら、ヌクレアーゼが接近し得る5’末端を有するオリゴヌクレオチドも1週間後に老化表現型を誘導し得るが、48時間でリン酸化反応を誘導せず、3’→5’ヌクレアーゼ感受性が老化誘導活性に好ましいことを示唆している。
【0090】
(実施例7)
(Mre11タンパク質レベルのダウンレギュレーションは、T−オリゴの反応を妨害する)
正常ヒト新生児繊維芽細胞を10ピコモルのMre11 siRNAまたは10ピコモルのコントロール(発現したヒト配列中に相同性が見出されない)のいずれかで処理した。siRNAトランスフェクションの日に培養皿は、約60%の密集であった。製造業者によって供給されるプロトコールに従い、Lipofectamine2000(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いてトランスフェクションを行った。トランスフェクション混合物を細胞に5時間作用させ、次いで新鮮な培地のみに交換した。翌日、トランスフェクションプロトコールを繰り返した。翌日、二重培養物をT−オリゴまたは負コントロールとしての希釈剤のみで処理した。48時間後に細胞を集め、ホスホp95セリン343特異性抗体(Cell Signaling Technology、Beverly、MA)、Mre11特異性抗体(GnenTex、San Antonio、TX)、ホスホロp53セリン15特異性抗体(Cell Signaling Technology)およびトータルp53特異性抗体(Oncogene、San Diego、CA)を用いてウェスタンブロットによりタンパク質を分析した(図9)。Hela細胞溶解物をMre11に対する正のコントロールとして用いた。10GyIRに暴露、または偽照射し、1時間後に集めた正常繊維芽細胞をp53およびp95/Nbs1リン酸化に対する正のコントロールとした。濃度計でオートラジオグラフを分析し、T−オリゴ試料に対する値を希釈剤処理試料に対する値として表した(図10および図11)。ローディングに関して補正後、MRE11レベルが有意に減少した細胞では、T−オリゴに対するホスホp53反応が減少し、ホスホp95/Nbs1反応がないことが明らかである。
【0091】
(実施例8)
(p53経路およびpRb経路双方の不活性化がR2F繊維芽細胞でT−オリゴ誘導老化を逃れるために必要である)
(オリゴヌクレオチド)
2種のDNAオリゴヌクレオチドを使用した。1つは、テロメア突出部に相同(T−オリゴ:pGTTAGGGTTAG;配列番号2)であり、もう1つは、それに相補性(pCTAACCCTAAC;配列番号3)であり、負のコントロールとして用いた。これらのオリゴは、Midland Certified Reagent Company(Midland、Texas)により合成された。オリゴヌクレオチドを以前に記載のように調製した(Ellerら、[2003]テロメア3’突出特異性DNAによるp95/Nbs−1媒介S期チェックポイントの誘導(Induction of a p95/Nbs−1−Mediated S−Phase Checkpoint by Telomere 3’overhang Specific DNA)、Faseb J17,152−162)。
【0092】
(細胞源および培養)
R2F新生児皮膚繊維芽細胞、および誘導されたp53DD、cdk4R24Cおよびp53DD/cdkR24C形質導入体(James G.Rheinwald博士(Harvard Medical School)からの寛大な贈り物)は、機能性p53経路、pRb経路および双方の経路がそれぞれ欠けている。
【0093】
(老化関連β−ガラクトシダーゼ染色)
細胞を希釈剤のみ、40μMのT−オリゴまたは40μMの相補性オリゴで1週間、液を取り替えないで1回処理した。次いで細胞を2%ホルムアルデヒド/0.2%グルタルアルデヒド中で3〜5分固定し、文献記載(Dimriら、[1995]培養物およびインビボでの老化皮膚中で老化ヒト細胞を同定するバイオマーカー(A Biomarker that Identifies Senescent Human Cells in Culture and in Aging Skin in vivo)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92,9363−9367)通りに37℃(大気中のCO)で終夜、新鮮な老化関連β−Gal(SA−β−Gal)染色液でインキュベーションした。
【0094】
(ウェスタンブロット分析および抗体)
以前に記載(Ellerら、[1996]DNA損傷がメラニン形成を促進する(DNA Damage Enhances Melanogenesis)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93,1087−1092)されているようにウェスタンブロット分析を行った。以下の抗体を使用した:DO−1(Ab−6)抗p53(Oncogene Research Products、Cambridge、MA)、抗ホスホp53(ser15)(Cell Signaling Technology、Beverly、MA)、抗ホスホpRb(ser780、ser795、ser807/811)(Cell Signaling Technology、Beverly、MA)、抗cdk4(Cell Signaling Technology、Beverly、MA)および抗アクチン(Santa Cruz Biotechnology、CA)。
【0095】
(クローン形成性分析)
ヒト繊維芽細胞を希釈剤のみ、40μMのT−オリゴまたは40μMの相補性オリゴで1週間処理し、トリプシン処理を行って計数した。300個の細胞を60mmの培養皿中に3連で接種し、完全培地中で週に2回培地を交換して2週間インキュベーションした。次いで細胞を100%メタノール中で5分間固定した。メタノールを除去し、培養皿を水で短時間濯いだ。コロニーをPBS中の4%(w/v)メチレンブルー溶液中で10分間染色し、再度水で1回洗浄し計数した。
【0096】
(BrdU取り込み分析)
Permanoxチャンバースライド上で培養したHT−1080線維肉腫細胞を希釈剤、40μMのT−オリゴおよび40μMの相補性オリゴで4日間処理し、製造業者が提供するプロトコールに従って5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)標識および検出キットII(Roche Molecular Biochemicals、Indianapolis、IN)を用いてDNA合成を分析した。簡単に言えば、細胞をBrdUで1時間標識し、固定して抗BrdUモノクローン抗体でインキュベーションした。抗マウスIgアルカリホスファターゼとインキュベーション後、光学顕微鏡で発色反応を検出した。
【0097】
(テロメアの長さ)
HT−1080繊維肉腫細胞を希釈剤、40μMのT−オリゴまたは40μMの相補性オリゴで4日間処理し、次いでDNeasy Tissue Kit(Qiagen、Valencia、CA)を用いてゲノムDNAを単離した。製造業者が提供するプロトコールに従い、Telo TTAGGG Telomere Length Assay(Roche Molecular Biochemicals、Indianapolis、IN)を用いてテロメア長を決定した。簡単に言えば、1μgの精製ゲノムDNAをHinf1/Rsa1で消化し、0.8%アガロースゲルでDNAフラグメントを分離し、次いでサザンブロットのためにナイロン膜上に移し、テロメア反復に特異的なジゴキシゲニン(DIG)標識プローブとハイブリダイズし、抗DIGアルカリホスファターゼでインキュベーションした。末端制限フラグメント(TRF)を化学発光で検出した。露光したX−線フィルムを濃度計で走査して平均TRF長を計算し、先に記載(Harleyら、[1990]ヒト繊維芽細胞の老化中にテロメアが短縮する(Telomeres Shorten during Ageing of Human Fibroblasts)、Nature、345,458−460)されたように計算した。
【0098】
(結果)
老化繊維芽細胞は、特徴的に大きく平坦な形態を示し、老化関連β−ガラクトシダーゼ(SA−β−Gal)活性の増加を示す。TRF2DNの異所発現は、テロメアループ構造を破壊し、p53経路およびpRb経路を活性化することにより正常なヒト繊維芽細胞における老化を誘導する。TRF2DN誘導老化を阻止するためには、ヒト細胞中のp53経路およびpRb経路の双方を妨害することが必要である。
【0099】
p53経路および/またはpRb経路が欠失するように遺伝子操作された細胞株をT−オリゴ誘導老化に関与するシグナル伝達経路を分析するために使用した。p53の転写トランス活性化ドメインが欠失し、内因性野生型p53タンパク質に結合し不活性化するドミナントネガティブ変異体p53(p53DD)の異所発現により、p53経路の不活性化を行った。p53の転写標的であるp21/SDI1タンパク質は、p53DDを発現するように形質導入されたR2F繊維芽細胞中では、検出レベル未満であった(データ示さず)。p16を結合できないp16不感性変異体cdk4(cdk4R24C)の異所発現により、pRb経路の破壊を行い、そのpRbタンパク質の制御を破壊した。双方の経路の抑制を双方の変異体(p53DD/cdk4R24C)の異所発現により行った。p53DDおよびcdk4R24Cの発現をウェスタンブロットで確認し、p53とcdk4タンパク質の過剰発現をそれぞれ示した(図12a)が、これは、ヒトケラチン細胞がこれらの変異体で形質導入されるという以前の報告と一致している。
【0100】
細胞を希釈剤または40μMのT−オリゴで1週間処理し、SA−β−Gal活性を分析した。正常新生児包皮繊維芽細胞親株(R2F)を正のコントロールとして用いた。予期されるように、T−オリゴ処理R2F繊維芽細胞は、希釈剤処理コントロール細胞と比較して大きく広がった形態とSA−β−Gal活性の増大を示した(それぞれ65±7%および8±1%のSA−β−Gal陽性細胞、p<0.01:図12bおよび12c)。同様に、p53DD R2F繊維芽細胞では、T−オリゴへの1週間の暴露により、T−オリゴ処理R2F繊維芽細胞は、希釈剤処理細胞と比較して大きく広がった形態とSA−β−Gal活性の増大を示し(それぞれ45±4%および6±2%のSA−β−Gal陽性細胞、p<0.01:図12bおよび12c)、p53経路のみの不活性化は、T−オリゴ誘導老化の抑制に不十分であることを示している。T−オリゴは、cdk4R24CR2F繊維芽細胞中に、希釈剤処理細胞と比較して老化表現型を誘導し(それぞれ60±5%および7±3%、SA−β−Gal陽性細胞、p<0.01:図12bおよび12c)、pRb経路のみを弱めることもT−オリゴ誘導老化の抑制に十分でないことを示している。しかしながら、R2F繊維芽細胞がp53DDとcdk4R24Cとの双方を発現するように形質導入された場合、T−オリゴは、希釈剤処理細胞と比較して老化表現型を誘導することができず(それぞれ7±1%および5±2%、p>0.05:図12bおよび12c)、p53経路とpRb経路の双方を弱めることがヒト繊維芽細胞中でT−オリゴ誘導老化を完全に抑制するために必要であること示している。従って、T−オリゴ誘導老化の条件は、TRF2DNにより誘導される連続継代培養または老化後の複製老化の条件と同じである。
【0101】
(実施例9)
(p53経路およびpRb経路双方の不活性化は、HT−1080細胞中のT−オリゴ誘導老化を逃れるために必要である)
TRF2DNは、ヒト線維肉腫HT−1080細胞で老化表現型を誘導すると報告されている。テロメア3’突出DNA(T−オリゴ)への暴露もこれらの細胞中で老化を誘導するか否かを決定するため、HT−1080細胞(American Type Culture Collection;Manassas、VA)を希釈剤単独、T−オリゴまたはコントロールとしての相補性オリゴで4日間処理し、SA−β−Gal活性を評価した。T−オリゴ処理細胞のみが広がった形態とSA−β−Gal活性の増加を示した(図13a)。T−オリゴ処理培養物は、希釈剤または相補コントロールオリゴ処理培養物より多いSA−β−Gal陽性細胞を含んでいた(それぞれ80±7%、3±2%および6±3%、p<0.01;図13b)。また、BrdUの取り込みの顕著な減少で示されるように、希釈剤でもコントロールオリゴ処理細胞でもなく、T−オリゴ処理細胞のみが増殖しなかった(それぞれ7±2%、90±8%および85±10%、p<0.01;図13cおよび13d)。
【0102】
(実施例10)
(テロメアオリゴヌクレオチドがpRbのリン酸化を阻止する)
HT−1080細胞は、機能性pRbを有することが知られているが、p53経路は、p16が欠失する結果としてそれが欠けている。本発明者らは、次に、HT−1080細胞におけるそのリン酸化を阻止することによりT−オリゴ処理がpRbを活性化するか否かを調べた。ウェスタンブロット分析により、T−オリゴに反応してセリン780、セリン795およびセリン807/811上でpRbリン酸化が著しく選択的に減少することが分かった(図13e)。興味あることに、p16が欠失する腫瘍中では、pRbは、無傷で機能性であることが多い。これらの細胞中では、cdk4の脱制御は、pRb過剰リン酸化をもたらし、際限のない細胞増殖と腫瘍形成が行われる。cdk2でなくCdk4の活性化がセリン780およびセリン795上でpRbをきわめて効率的にリン酸化する。従って、この発見は、T−オリゴがp16のない場合に、多分他のINK4ファミリーメンバーの誘導によりcdk4活性を阻害することを示唆しており、pRb制御の複雑なネットワーク中でp16が必須の役割でないことを示し、またpRbが絶対的な下流エフェクターであると単純にみなすことができないことを示唆している。
【0103】
(実施例11)
(テロメアオリゴヌクレオチドの効果は、可逆的でない)
T−オリゴを除くことが線維肉腫細胞の老化表現型を反転するか否かを試験するため、HT−1080細胞の並行培養物を希釈剤または40μMのT−オリゴまたは40μMの相補コントロールオリゴで4日間処理した。次いでオリゴヌクレオチド処理をそれ以上行わず、細胞に新鮮な完全培地を与えた。1および2日後に、T−オリゴ前処理細胞は、大きくなった形態とSA−β−Gal活性の増加をまだ示し(図14a)、DNA合成を再開しなかった(図14b)。ウェスタン分析も、pRbタンパク質がT−オリゴ前処理細胞中で活性な阻害状態に維持されていることを示していた(図14c)。
【0104】
T−オリゴ処理の細胞増殖に対する長期効果を決めるため、HT−1080ヒト線維肉腫細胞を希釈剤のみ、40μMのT−オリゴまたは40μMの相補コントロールオリゴのいずれかで1週間処理し、次いで同じ数の細胞を再プレーティングし、それ以上処理せずに培地を週2回、2週間交換し、次いでメチレンブルーで染色した(図15a)。相補オリゴ処理細胞と比較して(希釈剤で処理したコントロールの90.5±9.4%)、T−オリゴで前処理した細胞のクローン形成能は、ほとんど完全に抑制された(希釈剤で処理したコントロールの5.7±1.9%、p<0.01;図15b)。これらのデータは、この悪性細胞株におけるT−オリゴ誘導老化が可逆的でないことを示している。
【0105】
(実施例12)
(テロメアオリゴヌクレオチドの平均テロメア長さに対する効果)
HT−1080細胞における平均テロメア長さ(MTL)に対するT−オリゴの影響を決定するため、老化表現型が容易に観察された時間に相当する、T−オリゴで4日間処理した細胞を分析した。希釈剤処理(5.61kb)または相補オリゴ処理コントロール(5.51kb)と比較して、T−オリゴは、MTL(5.56kb)を変えなかった(図16)。計算されたMTLにおける100bp未満の差は、実験変動の範囲内であり、有意ではない。これは、TRF2DNによるテロメアの破壊後に見られたように、1週間までの繊維芽細胞のT−オリゴによる処理は、テロメア3’突出部の分解をもたらさないという観察と一致している(データ示さず)。テロメアループの破壊は、MTLの急速な短縮と3’突出部の消化を生じることが知られているので、T−オリゴがMTLに影響せず、または3’突出部の消化を生じずに類似または同一のシグナル伝達を開始すると言う事実は、テロメアループ破壊がなくても、すなわちDNA損傷がなくても、T−オリゴが3’突出配列の露出を真似ることを示している。
【0106】
(実施例13)
(T−オリゴ反応にPARP活性が必要である)
T−オリゴに反応するPARPの役割を調べるため、40μMのT−オリゴまたはコントロールとしての等量の希釈剤を加える前に、2種の異なったPARPインヒビターである3−アミノベンズアミド(3AB、2.5mM)または1,5−ジヒドロキシキノリン(IQ、100μM)の一つで2時間、繊維芽細胞を前処理した。T−オリゴまたは希釈剤(D)を添加してから4時間後、各インヒビターの追加用量を細胞に与えた。繊維芽細胞を3ABおよびT−オリゴで処理し、次いで48時間後にウェスタンブロット用に細胞を集めた。全p53、p21およびp53セリン15のリン酸化(p53活性化を示す)のT−オリゴ誘発アップレギュレーションは、すべて、3ABの存在下で減少した(図17A)。
【0107】
IQで前処理した繊維芽細胞も、T−オリゴの添加後16、20、24時間で全p53およびセリン15上のリン酸化p53の誘導を同様に示した(データ示さず)。全p53、p53ホスホセリン15およびp21のT−オリゴ媒介誘導の妨害に対するIQの影響は、T−オリゴ添加後48時間を通して持続残留した。これらのデータは、T−オリゴに対するp53反応が上流のPARP活性を必要とすることを示している。
【0108】
(実施例14)
(PARPインヒビターがp53活性化およびTRF2DNによる誘導を阻止する)
新生児繊維芽細胞をAdTRF2DNまたは負のコントロールとしてのAdGFPで処理した。感染の2時間前に、細胞を希釈剤、3AB(2.5mM)またはIQ(100μM)で処理した。3日後、c−myc−タグTRF2DN(感染を確認するため)、p53セリン15リン酸化およびp21誘導に関するウェスタン分析のために細胞を集めた。図17Fのレーン2をレーン4および6と比較すると、3ABおよびIQの双方がTRF2DNに反応してp53リン酸化とp21誘導とを減少させたことを示す。
【0109】
(実施例15)
(T−オリゴの効果は、テロメラーゼに依存しない)
Saos−2細胞は、報告によれば、テロメラーゼ陰性であるがALT経路によりテロメアを維持する骨肉種細胞株である。Saos−2細胞株を希釈剤または40μMの指定されたオリゴヌクレオチドで処理し、FACS分析のために48時間後に細胞を集めた。相同ヌクレオチドのみが細胞のS期停止を生じた(図18a)。さらに、テロメア突出オリゴヌクレオチドは、IRによる他にp95/Nbs1のリン酸化を誘導した(図18b)。この結果は、テロメア陰性細胞中のT−オリゴの効果がテロメア陽性悪性細胞株中の反応と同じであることを示す。
【0110】
(実施例16)
(PARPタンキラーゼタンパク質レベルのダウンレギュレーションがT−オリゴの反応を妨害する)
ヒト繊維芽細胞のペア培養物をタンキラーゼsiRNA、非特異性siRNA(コントロール)で1回処理するか、第2コントロールとして模擬トランスフェクトした。2日後、タンキラーゼsiRNA処理細胞中のタンキラーゼレベルが顕著に減少した時点で、培養物に11マー−1(pGTTAGGGTTAG;配列番号2)または相補配列11マー−2を補充した。さらに24時間後、細胞を集め、セリン343でのp95リン酸化に特異的な抗体を用いてウェスタンブロットのために加工し、活性化ATMキナーゼによるp95修飾を示した。フィルムを濃度測定に供し、各グループの細胞に対する希釈剤コントロールを任意の単位で1.0とした(図19)。予期されたように、正常なタンキラーゼレベルを有する細胞では、T−オリゴ処理細胞は、リン酸化p95の量が2倍であったが、コントロールオリゴ処理細胞または希釈剤処理細胞中の増加は、わずか30〜40%であった。しかしながら、タンキラーゼノックダウン群では、11−マー−1処理細胞は、p95リン酸化の増加を示さなかった(コントロールの1.0および1.3に対してレベル1.1)。これらのデータは、テロメア関連PARPであるタンキラーゼが、ATM活性化とそれに続くp95修飾(リン酸化)を引き起こし、処理細胞のS期停止(Ellerら、FASEB J、2003)を生じるT−オリゴシグナルを形質導入するために必要であることを示している。
【0111】
(実施例17)
(T−オリゴは、p53の非ATM媒介リン酸化を生じる)
正常新生児繊維芽細胞を希釈剤または40μM(11マー−1)で4、6、8、19、24および48時間処理し、p53ホスホセリン37特異性抗体を用いるウェスタンブロット分析のために集めた。偽およびIR照射(10Gy)繊維芽細胞をそれぞれ陰性コントロールおよび陽性コントロールとして使用した。ウェスタンブロットにおいてp53セリン37に対応するバンド強度の増加が早くも8時間で検出され、48時間では、希釈剤(D)処理試料と比較してT−オリゴ(T)処理試料中できわめて顕著であった。
【0112】
上記に示すように、T−オリゴは、セリン15上でp53のリン酸化を生じる。セリン15におけるp53のリン酸化は、ATMにより媒介される。図20は、T−オリゴがセリン37上のp53のリン酸化も生じることを示している。セリン37におけるp53のリン酸化は、ATM関連(ATR)キナーゼまたはDNA−PKキナーゼのいずれかで媒介されるが、ATMにより媒介されることは、知られていない。従って、p53セリン37の実証は、経路活性化のまた別なマーカーであり、これらのキナーゼのうちの1つまたは両方がMre11活性化の下流標的である。さらに、Mre11経路を活性化する治療効果の多くは、擬似UV的であり、UVは、ATRとDNA−PKの双方を活性化するがATMを活性化しないことが知られている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書および図面に記載される発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−103889(P2011−103889A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181(P2011−181)
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【分割の表示】特願2006−508599(P2006−508599)の分割
【原出願日】平成16年1月14日(2004.1.14)
【出願人】(301069856)トラスティーズ オブ ボストン ユニバーシティ (15)
【Fターム(参考)】