説明

テロメラーゼのプロセッシビティーを向上させるための化合物の使用

本発明は、有糸分裂サイクル数および有糸分裂細胞数を増加させるためのテロメラーゼのプロセッシビティーを向上させる医薬品を調製するための、非環式ヌクレオシドホスホン酸及びその誘導体の使用を提供する。本発明は又、化学式Iの化合物、又はそのプロドラッグ若しくは薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物も提供する。本発明は又、本明細書に記載される化学式Iの新規の化合物、並びにそのプロドラッグ及び薬学的に許容される塩も提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
ヒトテロメラーゼは、テロメア反復を染色体の3’末端に付加し(Greider CW, Blackburn EH, Cell, 1985, 43, 405−13)、それによって染色体複製及び細胞分裂に伴うテロメアの喪失を補う役割を果たす大型の細胞リボ核タンパク質複合体である(Morin GB, Cell, 1989, 59, 521−9;Wenz C, et al., EMBO J, 2001; 20:3526−34;及びCollins K, Mitchell JR., Oncogene, 2002, 21, 564−79)。テロメラーゼは全悪性腫瘍のほぼ90%で上方調節されている(Kim NW, et al., Science, 1994, 266, 2011−5;Shay JW, Bacchetti S, Eur J Cancer, 1997, 33, 787−91;及びHiyama E, Hiyama K, Oncogene, 2002, 21, 643−9)。従って、テロメラーゼは、腫瘍特異的マーカーとしてだけでなく、抗ガン処置のための標的としても非常に有望であると考えられる(Lichtsteiner SP, et al., Ann NY Acad Sci, 1999, 886, 1−11)。
【0002】
テロメラーゼのhTERT成分を機能的な触媒作用性の逆転写酵素として特定したことで、確立されたHIV逆転写酵素阻害剤(例えば、連鎖停止3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)及び2’,3’−ジデオキシシチジン(ddC))を使用してテロメラーゼを阻害する研究が促進された(非特許文献1;非特許文献2;及び非特許文献3)。
【0003】
これらの親ヌクレオシドは、in vivoでは三リン酸の形態で変換され、この三リン酸が、酵素に対する競合基質として作用することによって逆転写酵素を阻害し、DNA合成を新たに終結させる。AZT−TPは、テロメラーゼの活性を30μmol/Lで約50%に阻害する。その他のヌクレオチド系阻害剤(プリン誘導体及びピリミジン誘導体の両方)がテロメラーゼに対して評価されており、効果的なIC50値がマイクロモル濃度の範囲にある。より近年の研究では、Fletcherが、テロメラーゼの阻害剤としてのデアザデオキシプリンの使用を報告しており、1つの化合物(6−チオ−7−デアザ−2’−デオキシグアノシン5’−リン酸)が60nmol/LのIC50値を示している。その他のヌクレオチドアナログ(ddGTP、ddATP、ddTTP、d4TTP、デアザdGTP、デアザdATP、チオdGTP、CBV−TP、araGTP及びFaraTTP)の系列は、テロメラーゼ活性を阻害することが以前に報告されている(Morin GB, Cell, 1989, 59, 521−9;Strahl C, Blackburn EH., Mol Cell Biol, 1996, 16, 53−56;Pai RB, et al., Cancer Res, 1998, 58, 1909−13;Fletcher TM, et al., Bioorg Chem, 2001, 29, 36−55;Tendian SW, Parker WB., Mol Pharmacol, 2000, 57, 695−9;Strahl C, Blackburn EH., Nucleic Acids Res, 1994, 22, 893−900;Fletcher TM, et al., Biochemistry, 1996, 35, 15611−7;及びRaymond E, et al., Curr Opin Biotechnol, 1996, 7, 583−91を参照)。
【0004】
ANPは、数多くが広範囲のDNAウイルス及びレトロウイルスに対する優れた抗ウイルス活性、並びに有意な抗増殖能を有する。又、(S)−HPMPC(シドホビル、CDV、Vistide(登録商標))、(R)−PMPA(テノホビル、TDV、Viread(登録商標))、PMEA(アデホビル、ADV、Hepsera(登録商標))が、既にAIDS患者におけるサイトメガロウイルス網膜症、HIV感染及び慢性B型肝炎の処置にそれぞれ承認されている。細胞において、ANP類は、その二リン酸(活性代謝拮抗物質)への転換によって活性化され、その二リン酸がウイルスの複製を阻害し、発生期のDNA鎖を終結させる(非特許文献4)。
【非特許文献1】Nakamura TM, et al., Science, 1997, 277, 955−9
【非特許文献2】Blackburn EH, Annu Rev Biochem, 1992, 61, 113−29
【非特許文献3】Cech TR, et al., Biochemistry (Moscow), 1997, 62, 1202−5
【非特許文献4】Holy A, Curr Pharm Des, 2003, 9, 2567−92
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、テロメラーゼのプロセッシビティーを向上させる医薬品の調製における、以下の化学式Iの非環式ヌクレオシドプリン:
【0006】
【化5】

(式中;
XはOH又は−N(Rであり、ここで、
は独立して、
H;
−C15アルキル、C−C15アルケニル、C−C15アリールアルケニル、C−C15アルキニル、C−C15アリールアルキニル、C−C−アルキルアミノ−C−Cアルキル、C−C15アラルキル、C−C15ヘテロアルキル若しくはC−Cヘテロシクロアルキル(但し、NHに隣接していないアルキル成分におけるメチレンは−O−によって置換されている);又は
−C15アルキル、C−C15アルケニル、C−C15アリールアルケニル、C−C15アリールアルキニル、C−C15アルキニル、C−C−アルキルアミノ−C−Cアルキル、C−C15アラルキル、C−C15ヘテロアラルキル、C−Cアリール、C−Cシクロアルキル若しくはC−Cヘテロシクロアルキル
であるか;
或いは、必要に応じて、両方のRは一緒になって、1つ若しくは2つのNヘテロ原子と、必要に応じて更なるO若しくはSヘテロ原子とを含有する飽和若しくは不飽和C−C複素環を形成し;
ここで、前記R基の1つは、ハロ、−CN又は−Nにより置換されてもよく;
WはH又はNHであり;
Yは独立して、OH、−OR、−OCH(R)OC(O)R、モノリン酸、二リン酸、アミノ酸アミダート、ポリペプチドアミダート、−NHR又は−N(Rであり;
は独立して、非置換アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アルキニルアリール若しくはアルケニルアリール;Hがハロ、カルボキシ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、N−モリホリノ若しくはアミノによって置換されるアルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アルキニルアリール若しくはアルケニルアリール;又は−CH−成分がNH、S若しくはOによって置換されているアルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アルキニルアリール若しくはアルケニルアリールであり;
Zは、1つ以上のヒドロキシにより必要に応じて置換されるC−Cアルキルであり;及び
はH又はRである);
或いはそのプロドラッグ、二リン酸、薬学的に許容される塩、又はその他のリン置換誘導体の使用を提供する。
【0007】
本発明は又、化学式Iの化合物、又はそのプロドラッグ若しくは薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物も提供する。
【0008】
本発明は又、組織培養で継続して成長する細胞の有糸分裂サイクルの数を増大させる方法であって、細胞を化学式Iの化合物又はそのプロドラッグ若しくは塩と接触させることからなる方法も提供する。
【0009】
本発明は又、非分裂細胞の有糸細胞分裂を増大させる方法であって、細胞をin vitro又はin vivoで化学式Iの化合物又はそのプロドラッグ若しくは塩と接触させることからなる方法も提供する。
【0010】
本発明は又、継続して成長する細胞の有糸分裂サイクルの数を増大させる医薬品を調製するための、化学式Iの化合物又はそのプロドラッグ若しくは薬学的に許容される塩の使用も提供する。
【0011】
本発明は又、非分裂細胞の有糸細胞分裂を増大させる医薬品を調製するための、化学式Iの化合物又はそのプロドラッグ若しくは薬学的に許容される塩の使用も提供する。
【0012】
本発明は又、本明細書に記載される化学式Iの新規の化合物、並びにそのプロドラッグ及び薬学的に許容される塩も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(詳細な説明)
以下の略号が本明細書で使用される:ANP:非環式ヌクレオシドホスホン酸;ANPpp:ANP二リン酸;TRAP:テロメア反復増幅プロトコル;PMEG:9−[2−(ホスホノメトキシ)エチル]グアニン;(R)−PMPG:(R)−9−[2−(ホスホノメトキシ)プロピル]グアニン;(R)−HPMPG:(R)−9−[(3−ヒドロキシ−2−ホスホノメトキシ)プロピル]グアニン;PMEDAP:2,6−ジアミノ−9−[2−(ホスホノメトキシ)エチル]プリン;(S)−PMPG:(S)−9−[2−(ホスホノメトキシ)プロピル]グアニン;(S)−HPMPA:(S)−9−[(3−ヒドロキシ−2−ホスホノメトキシ)プロピル]アデニン;PMEO−DAPy:2,4−ジアミノ−6−[2−(ホスホノメトキシ)エトキシ]ピリミジン;(R)−6−cyprPMPDAP:(R)−2−アミノ−6−(シクロプロピルアミノ)−9−[2−(ホスホノメトキシ)プロピル]プリン;(R)−PMPA:(R)−9−[2−(ホスホノメトキシ)プロピル]アデニン;(R)−PMPDAP:(R)−2,6−ジアミノ−9−[2−(ホスホノメトキシ)プロピル]プリン;PMEA:9−[2−(ホスホノメトキシ)エチル]アデニン;PMEC:1−[2−(ホスホノメトキシ)エチル]シトシン;PMET:1−[2−(ホスホノメトキシ)エチル]チミン;(S)−PMPA:(S)−9−[2−(ホスホノメトキシ)プロピル]アデニン;6−MePMEDAP:2−アミノ−6−(ジメチルアミノ)−9−[2−(ホスホノメトキシ)エチル]プリン;hTERT:ヒトテロメラーゼ逆転写酵素;AZT−TP:3’−アジド−3’−デオキシチミジン5’−三リン酸;ddC:2’,3’−ジデオキシシチジン;d4TTP:2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−デオキシチミジン5’−リン酸;デアザdGTP:7−デアザ−2’−デオキシグアノシン5’−三リン酸;デアザdATP:7−デアザ−2’−デオキシアデノシン5’−三リン酸;チオdGTP:6−チオ−2’−デオキシグアノシン5’−三リン酸;CBV−TP:2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシグアノシン5’−三リン酸;araGTP:9−β−D−アラビノフラノシルグアニン5’−三リン酸;FaraTTP:2’−フルオロ−2’−デオキシβ−D−アラビノフラノシルチミン5’−三リン酸;CHAPS:3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホン酸;及びTS:テロメラーゼ基質(非テロメアオリゴヌクレオチド)。
【0014】
特に言及されない限り、本明細書で使用される以下の用語及び語句は、以下の意味を有することが意図される。
【0015】
本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、生体系に投与された時に自発的な化学反応、酵素触媒による化学反応、光分解、及び/又は代謝による化学反応の結果として薬物物質(即ち、有効成分)を生成する任意の化合物を指す。従って、プロドラッグは、治療活性を有する化合物の共有結合により修飾されたアナログ又は潜在性形態である。
【0016】
「プロドラッグ成分」とは、加水分解、酵素開裂、又はその他何らかのプロセスによって、代謝時に全身において、活性阻害性化合物から分離して細胞になる不安定な官能基を指す(Bundgaad, Hans, ”Design and Application of Prodrugs”, A Textbook of Drug Design and Development (1991), P. Krogsgaard−Larsen and H. Bundgaad, Eds., Harwood Academic Publishers, pp.113−191)。ホスホン酸化合物による酵素活性化機序が可能な酵素には、アミダーゼ、エステラーゼ、微生物酵素、ホスホリパーゼ、コリンエステラーゼ及びホスファーゼが含まれるが、これらに限定されない。プロドラッグ成分は、溶解性、吸収及び親油性を向上させて、薬物送達、生物学的利用能及び効力を最適化するために役立てることができる。プロドラッグ成分には、活性代謝物又は薬物自体が含まれる場合がある。
【0017】
代表的なプロドラッグ成分には、加水分解を受けやすい又は不安定なアシルオキシメチルエステル−CHOC(=O)R及び炭酸アシルオキシメチル−CHOC(=O)OR(式中、Rは、C−Cアルキル、C−C置換アルキル、C−C20アリール又はC−C20置換アリールである)が含まれる。アシルオキシアルキルエステルは、Farquhar等によってカルボン酸のプロドラッグ法として最初に使用され、その後リン酸及びホスホン酸に適用された(Farquhar, et al. (1983) J. Pharm. Sci, 72:324;並びに米国特許第4816570号、同第4968788号、同第5663159号及び同第5792756号)。続いて、アシルオキシアルキルエステルが、細胞膜にわたりホスホン酸を送達するために、且つ経口による生物学的利用能を向上させるために使用された。アシルオキシアルキルエステルの近い変化体、即ち、アルコキシカルボニルオキシアルキルエステル(炭酸)も又、本発明の組み合わせの化合物におけるプロドラッグ成分として、経口による生物学的利用能を向上させる場合がある。代表的なアシルオキシメチルエステルには、ピバロイルオキシメトキシ(POM)−CHOC(=O)C(CHがある。代表的な炭酸アシルオキシメチルプロドラッグ成分には、炭酸ピバロイルオキシメチル(POC)−CHOC(=O)OC(CHがある。
【0018】
リン酸基のアリールエステル(特に、フェニルエステル)は、経口による生物学的利用能を向上させることが報告されている(De Lombaert, et al. (1994) J. Med. Chem., 37:498)。カルボン酸エステルをリン酸のオルト位に含有するフェニルエステルも又記載されている(Khamnei and Torrence, (1996) J. Med. Chem., 39:4109−4115)。ベンジルエステルは、親ホスホン酸を生成することが報告されている。必要に応じて、オルト位又はパラ位における置換基は、加水分解を加速させる場合がある。アシル化フェノール又はアルキル化フェノールとのベンジルアナログは、酵素(例えば、エステラーゼ、オキシダーゼ等)の作用を介してフェノール系化合物を生成する場合があり、その後フェノール系化合物は、ベンジルのC−O結合で開裂を生じ、リン酸及びキノンメチド中間体を生成する。この種類のプロドラッグの例については、Mitchell, et al. (1992) J. Chem. Soc. Perkin Trans. II, 2345;Glazier (WO 91/19721)に記載されている。ベンジルのメチレンに結合したカルボン酸エステル含有基を含有する更に他のベンジル系プロドラッグも記載されている(Glazier, WO 91/19721)。チオ含有プロドラッグは、ホスホン酸薬物の細胞内送達に有用であることが報告されている。これらのプロエステルはエチルチオ基を含有し、この場合、チオール基はアシル基によりエステル化されるか、又は別のチオール基と混合してジスルフィドを形成する。ジスルフィドの脱エステル化又は還元により、遊離チオール中間体が生成され、その後これがリン酸及びエピスルフィドに分解する(Puech, et al. (1993) Antiviral Res., 22:155−174;Benzaria, et al. (1996) J. Med. Chem. 39:4958)。環状ホスホン酸エステルも又、リン含有化合物のプロドラッグとして記載されている(Erion, et al.,米国特許第6312662号)。
【0019】
薬学的に許容される塩の例には、適切な塩基、例えば、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)、アルカリ土類(例えば、マグネシウム)、アンモニウム及びNX(式中、XはC−Cアルキルである)に由来する塩が含まれる。アミノ基を有する化合物の薬学的に許容される塩には、有機カルボン酸(例えば、酢酸、安息香酸、乳酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、リンゴ酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸及びコハク酸);有機スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸等);及び、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、リン酸及びスルファミン酸)の塩が含まれる。ヒドロキシ基を有する化合物の薬学的に許容される塩には、好適なカチオン(例えば、Na及びNX(式中、Xは独立してH又はC−Cアルキル基から選択される))と組み合わた前記化合物のアニオンが含まれる。治療用途において、有効成分の塩は一般的に、薬学的に許容される。即ち、有効成分の塩は、薬学的に許容される酸又は塩基に由来する塩である。
【0020】
「アルキル」は、ノルマル炭素原子、第二級炭素原子又は第三級炭素原子を含有する分枝又は非分枝の炭化水素である。例としては、メチル(Me、−CH)、エチル(Et、−CHCH)、1−プロピル(n−Pr、n−プロピル、−CHCHCH)、2−プロピル(i−Pr、i−プロピル、−CH(CH)、1−ブチル(n−Bu、n−ブチル、−CHCHCHCH)、2−メチル−1−プロピル(i−Bu、i−ブチル、−CHCH(CH)、2−ブチル(s−Bu、s−ブチル、−CH(CH)CHCH)、2−メチル−2−プロピル(t−Bu、t−ブチル、−C(CH)、1−ペンチル(n−ペンチル、−CHCHCHCHCH)、2−ペンチル(−CH(CH)CHCHCH)、3−ペンチル(−CH(CHCH)、2−メチル−2−ブチル(−C(CHCHCH)、3−メチル−2−ブチル(−CH(CH)CH(CH)、3−メチル−1−ブチル(−CHCHCH(CH)、2−メチル−1−ブチル(−CHCH(CH)CHCH)、1−ヘキシル(−CHCHCHCHCHCH)、2−ヘキシル(−CH(CH)CHCHCHCH)、3−ヘキシル(−CH(CHCH)(CHCHCH))、2−メチル−2−ペンチル(−C(CHCHCHCH)、3−メチル−2−ペンチル(−CH(CH)CH(CH)CHCH)、4−メチル−2−ペンチル(−CH(CH)CHCH(CH)、3−メチル−3−ペンチル(−C(CH)(CHCH)、2−メチル−3−ペンチル(−CH(CHCH)CH(CH)、2,3−ジメチル−2−ブチル(−C(CHCH(CH)、3,3−ジメチル−2−ブチル(−CH(CH)C(CH)がある。
【0021】
「アルケニル」は、ノルマル炭素原子、第二級炭素原子又は第三級炭素原子を少なくとも1ヵ所の不飽和(即ち、炭素・炭素のsp二重結合)と共に含有する分枝又は非分枝炭化水素である。例としては、エチレン又はビニル(−CH=CH)、アリル(−CHCH=CH)、シクロペンテニル(−C)、5−へキセニル(−CHCHCHCHCH=CH)及び2,5−ヘキサジエニル(−CHCH=CHCHCH=CH)が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
「アルキニル」は、ノルマル炭素原子、第二級炭素原子又は第三級炭素原子を少なくとも1ヵ所の不飽和(即ち、炭素・炭素のsp三重結合)と共に含有する分枝又は非分枝炭化水素である。例としては、アセチレン(−C≡CH)、プロパルギル(−CHC≡CH)及び2,5−ヘキサジイニル(−CHC≡CHCHC≡CH)が含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
「アリール」とは、1個の水素原子を親芳香族環系の1個の炭素原子から取り除くことにより得られる、6個〜20個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基を意味する。代表的なアリール基には、ベンゼン、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びビフェニル等に由来する基が含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
「アラルキル」とは、炭素原子(一般的には、末端又はsp炭素原子)に結合した水素原子の1つがアリール基により置換されるアルキル基を指す。代表的なアリールアルキル基には、ベンジル、2−フェニルエタン−1−イル、ナフチルメチル、2−ナフチルエタン−1−イル、ナフトベンジル及び2−ナフトフェニルエタン−1−イル等が含まれるが、これらに限定されない。アリールアルキル基は6個〜20個の炭素原子を含み、例えば、アリールアルキル基のアルキル成分(アルカニル、アルケニル又はアルキニル基を含む)は、1個〜6個の炭素原子を含み、アリール成分は5個〜14個の炭素原子を含む。
【0025】
「アリールアルケニル」とは、炭素原子(一般的には、末端又はsp炭素原子)に結合した水素原子の1つがアリール基により置換されるアルケニル基を指す。
【0026】
「アリールアルキニル」は、炭素原子(一般的には、末端又はsp炭素原子)に結合した水素原子の1つがアリール基により置換されるアルキニル基を指す。
【0027】
本明細書で使用される「複素環」又は「ヘテロシクロ」には、例えば、Paquette, Leo A.; Principles of Modern Heterocyclic Chemistry(W.A. Benjamin, New York, 1968)(特に、Chapter 1、3、4、6、7及び9);The Chemistry of Heterocyclic Compounds, A Series of Monographs (John Wiley & Sons, New York, 1950 to present)(特に、Volume 13、14、16、19及び28);及びJ. Am. Chem. Soc. (1960), 82:5566に記載されるこれらの複素環が含まれるが、これらに限定されない。本発明の1つの具体的な実施形態において、「複素環」には、1つ以上(例えば、1個、2個、3個又は4個)の炭素原子がヘテロ原子(例えば、O、N又はS)により置換されている、本明細書で定義されるような「炭素環」が含まれる。
【0028】
複素環の例には、例えば、ピリジル、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル(ピペリジル)、チアゾリル、テトラヒドロチオフェニル、硫黄が酸化したテトラヒドロチオフェニル、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、チアナフタレニル、インドリル、インドレニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ピペリジニル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、2−ピロリドニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロイソキノリニル、アゾシニル、トリアジニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、チエニル、チアントレニル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチニル、2H−ピロリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、1H−インダゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、4aH−カルバゾリル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、オキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、オキシインドリル、ベンゾオキサゾリニル、イサチノイル及びビス−テトラヒドロフラニル:
【0029】
【化6】

が含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
「処置」又は「処置する」という用語には、疾患若しくは病態に関連する場合に限り、疾患若しくは病態の発症を防止すること、疾患若しくは病態を阻害すること、疾患若しくは病態を除去すること、及び/又は疾患若しくは病態の1つ以上の症状を緩和することが含まれる。
【0031】
本明細書で使用される立体化学の定義及び慣例は、一般的にS.P. Parker, Ed., McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms (1984) McGraw−Hill Book Company, New York;及びEliel, E. and Wilen, S., Stereochemistry of Organic Compounds (1994) John Wiley & Sons, Inc., New Yorkに従う。多くの有機化合物は、光学活性を有する形態で存在する。即ち、多くの有機化合物は、平面偏光の面を回転させる能力を有する。光学活性を有する化合物を記述するに当たり、D及びL又はR及びSの接頭辞は、そのキラル中心の周りの分子の絶対配置を示すのに使用される。d及びl又は(+)及び(−)の接頭辞は、化合物による平面偏光の回転の符号を示すのに使用され、(−)又はlは、化合物が左旋性であることを意味する。(+)又はdの接頭辞が付いた化合物は右旋性である。特定の化学構造において、これらの立体異性体は、それらが互いの鏡像であることを除いて同一である。特定の立体異性体は又、エナンチオマーと呼ばれる場合もあり、このような異性体の混合物は、エナンチオマー混合物と呼ばれることが多い。エナンチオマーの50:50の混合物はラセミ混合物又はラセミ体と呼ばれ、立体選択又は立体特異性が化学反応又は化学プロセスにおいて全く存在していない場合に生じる場合がある。「ラセミ混合物」及び「ラセミ体」という用語は、光学活性を有さない2つのエナンチオマー化学種の等モル量の混合物を指す。
【0032】
保護基は種々のものが入手可能で、周知で、使用されており、必要に応じて合成手順、即ち、化合物を調製するための経路又は方法において保護基との副反応を防止するために使用される。多くの場合、保護する基、保護する時期、及び化学的保護基PGの性質に関する決定は、保護される反応の化学的性質(例えば、酸性、塩基性、酸化、還元又はその他の条件)、及び合成の所期の目的による。化合物が複数のPGにより置換される場合、これらのPG基は同じである必要はなく、一般的に同じではない。一般的に、PGは、官能基(例えば、カルボキシル、ヒドロキシル、チオ又はアミノ基)を保護し、それによって副反応を防止するか、又はそれ以外の場合に合成効率を促進するために使用される。遊離した脱保護基を産生するための脱保護の順序は、合成の所期の目的、及び発声する反応条件により異なり、当業者により決定される任意の順序で行われる場合がある。保護基及び対応する化学開裂反応は極めて多くのものが、Protective Groups in Organic Synthesis, Theodora W. Greene (John Wiley & Sons, Inc., New York, 1991, ISBN 0−471−62301−6)(”Green”)に記載されている。Kocienski, Philip J.; Protective Groups (Georg Thieme Verlag Stuttgart, New York, 1994)も参照されたい。
【0033】
化学式Iにおいて残基がYで表されてもよい好適なアミノ酸の例には、以下が含まれる:グリシン;アミノポリカルボン酸(例えば、アスパラギン酸、β−ヒドロキシアスパラギン酸、グルタミン酸、β−ヒドロキシグルタミン酸、β−メチルアスパラギン酸、β−メチルグルタミン酸、β,β−ジメチルアスパラギン酸、γ−ヒドロキシグルタミン酸、β,γ−ジヒドロキシグルタミン酸、β−フェニルグルタミン酸、γ−メチレングルタミン酸、3−アミノアジピン酸、2−アミノピメリン酸、2−アミノスベリン酸及び2−アミノセバシン酸);アミノ酸アミド(例えば、グルタミン及びアスパラギン);ポリアミノモノカルボン酸又は多塩基性モノカルボン酸(例えば、アルギニン、リシン、β−アミノアラニン、γ−アミノブチリン、オルニチン、シトルリン、ホモアルギニン、ホモシトルリン、ヒドロキシリシン、アロヒドロキシリシン及びジアミノ酪酸);その他の塩基性アミノ酸残基(例えば、ヒスチジン);ジアミノジカルボン酸(例えば、α,α’−ジアミノコハク酸、α,α’−ジアミノグルタル酸、α,α’−ジアミノアジピン酸、α,α’−ジアミノピメリン酸、α,α’−ジアミノ−β−ヒドロキシピメリン酸、α,α’−ジアミノスベリン酸、α,α’−ジアミノアゼライン酸及びα,α’−ジアミノセバシン酸);イミノ酸(例えば、プロリン、ヒドロキシプロリン、アロヒドロキシプロリン、γ−メチルプロリン、ピペコリン酸、5−ヒドロキシピペコリン酸及びアゼチジン−2−カルボン酸);モノアルキル又はジアルキル(一般的に、C〜Cの分枝又はノルマル)アミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、アリルグリシン、ブチリン、ノルバリン、ノルロイシン、ヘプチリン、α−メチルセリン、α−アミノ−α−メチル−γ−ヒドロキシ吉草酸、α−アミノ−α−メチル−δ−ヒドロキシ吉草酸、α−アミノ−α−メチル−ε−ヒドロキシカプロン酸、イソバリン、α−アミノグルタミン酸、α−アミノイソ酪酸、α−アミノジエチル酢酸、α−アミノジイソプロピル酢酸、α−アミノジ−n−プロピル酢酸、α−アミノジイソブチル酢酸、α−アミノジ−n−ブチル酢酸、α−アミノエチルイソプロピル酢酸、α−アミノ−n−プロピル酢酸、α−アミノジイソアミル酢酸、α−メチルアスパラギン酸、α−メチルグルタミン酸、1−アミノシクロプロパン−1−カルボン酸、イソロイシン、アロイソロイシン、tert−ロイシン、β−メチルトリプトファン及びα−アミノ−β−エチル−β−フェニルプロピオン酸);β−フェニルセリニル;脂肪族α−アミノ−β−ヒドロキシ酸(例えば、セリン、β−ヒドロキシロイシン、β−ヒドロキシノルロイシン、β−ヒドロキシノルバリン及びα−アミノ−β−ヒドロキシステアリン酸);α−アミノヒドロキシ酸、γ−ヒドロキシ酸、δ−ヒドロキシ酸又はε−ヒドロキシ酸(例えば、ホモセリン残基、δ−ヒドロキシノルバリン残基、γ−ヒドロキシノルバリン残基及びε−ヒドロキシノルロイシン残基);カナビン及びカナリン;γ−ヒドロキシオルニチン;2−ヘキソサミン酸(例えば、D−グルコサミン酸又はD−ガラクトサミン酸);α−アミノ−β−チオール類(例えば、ペニシラミン、β−チオールノルバリン又はβ−チオールブチリン);その他の硫黄含有アミノ酸残基(システインを含む);ホモシスチン、β−フェニルメチオニン、メチオニン、S−アリル−L−システインスルホキシド、2−チオールヒスチジン、シスタチオニン、並びにシステイン又はホモシステインのチオールエステル;フェニルアラニン、トリプトファン及び環置換α−アミノ酸(例えば、フェニルアミノ酸又はシクロヘキシルアミノ酸、α−アミノフェニル酢酸、α−アミノシクロヘキシル酢酸、及びα−アミノ−β−シクロヘキシルプロピオン酸);アリール、低級アルキル、ヒドロキシ、グアニジノ、オキシアルキルエーテル、ニトロ、硫黄又はハロ置換フェニルを含むフェニルアラニンアナログ及びフェニルアラニン誘導体(例えば、チロシン、メチルチロシン、並びにo−クロロフェニルアラニン、p−クロロフェニルアラニン、3,4−ジクロロフェニルアラニン、o−メチルフェニルアラニン、m−メチルフェニルアラニン、p−メチルフェニルアラニン、2,4,6−トリメチルフェニルアラニン、2−エトキシ−5−ニトロフェニルアラニン、2−ヒドロキシ−5−ニトロフェニルアラニン及びp−ニトロフェニルアラニン);フリルアラニン、チエニルアラニン、ピリジルアラニン、ピリミジニルアラニン、プリニルアラニン又はナフチルアラニン;並びにトリプトファンアナログ及びトリプトファン誘導体(キヌレニン、3−ヒドロキシキヌレニン、2−ヒドロキシトリプトファン及び4−カルボキシトリプトファンを含む);α−アミノ置換アミノ酸(サルコシン(N−メチルグリシン)、N−ベンジルグリシン、N−メチルアラニン、N−ベンジルアラニン、N−メチルフェニルアラニン、N−ベンジルフェニルアラニン、N−メチルバリン及びN−ベンジルバリンを含む);並びにα−ヒドロキシアミノ酸及び置換α−ヒドロキシアミノ酸(セリン、トレオニン、アロトレオニン、ホスホセリン及びホスホトレオニンを含む)。
【0034】
ポリペプチドは、1つのアミノ酸モノマーのカルボキシル基がアミド結合によって隣のアミノ酸モノマーのアミノ又はイミノ基に結合するアミノ酸のポリマーである。ポリペプチドには、ジペプチド、低分子量ポリペプチド(約1500〜5000MW)及びタンパク質が含まれる。タンパク質は、3個、5個、10個、50個、75個、100個又はそれ以上の残基を必要に応じて含有し、好適にはヒト、動物、植物又は微生物のタンパク質と実質的な配列相同性を有する。タンパク質には、酵素(ハイドロジェンペルオキシダーゼ)、並びに免疫原(例えば、KLH)、或いは免疫応答を増強することが望まれる任意の種類の抗体又はタンパク質が含まれる。ポリペプチドの性質及び本性は大きく異なる場合がある。
【0035】
ポリペプチドコンジュゲート体を開裂するための種々のペプチド分解酵素が周知であり、これらには特にカルボキシペプチダーゼが含まれる。カルボキシペプチダーゼは、C末端残基を取り除くことによってポリペプチドを消化し、多くの場合、特定のC末端配列に対して特異的である。このような酵素及びそれらの基質要件は一般的に周知である。例えば、(特定の残基対及び遊離カルボキシル末端を有する)ジペプチドは、そのα−アミノ基を介して本明細書に記載の化合物のリン原子又は炭素原子に共有結合する。このペプチドは、適切なペプチド分解酵素によって開裂することができ、これにより近位アミノ酸残基のカルボキシルが残って、ホスホノアミダート結合が自己触媒により開裂される。
【0036】
好適なジペプチジル基(それらの一文字の記号によって示される)には、AA、AR、AN、AD、AC、AE、AQ、AG、AH、AI、AL、AK、AM、AF、AP、AS、AT、AW、AY、AV、RA、RR、RN、RD、RC、RE、RQ、RG、RH、RI、RL、RK、RM、RF、RP、RS、RT、RW、RY、RV、NA、NR、NN、ND、NC、NE、NQ、NG、NH、NI、NL、NK、NM、NF、NP、NS、NT、NW、NY、NV、DA、DR、DN、DD、DC、DE、DQ、DG、DH、DI、DL、DK、DM、DF、DP、DS、DT、DW、DY、DV、CA、CR、CN、CD、CC、CE、CQ、CG、CH、CI、CL、CK、CM、CF、CP、CS、CT、CW、CY、CV、EA、ER、EN、ED、EC、EE、EQ、EG、EH、EI、EL、EK、EM、EF、EP、ES、ET、EW、EY、EV、QA、QR、QN、QD、QC、QE、QQ、QG、QH、QI、QL、QK、QM、QF、QP、QS、QT、QW、QY、QV、GA、GR、GN、GD、GC、GE、GQ、GG、GH、GI、GL、GK、GM、GF、GP、GS、GT、GW、GY、GV、HA、HR、HN、HD、HC、HE、HQ、HG、HH、HI、HL、HK、HM、HF、HP、HS、HT、HW、HY、HV、IA、IR、IN、ID、IC、IE、IQ、IG、IH、II、IL、IK、IM、IF、IP、IS、IT、IW、IY、IV、LA、LR、LN、LD、LC、LE、LQ、LG、LH、LI、LL、LK、LM、LF、LP、LS、LT、LW、LY、LV、KA、KR、KN、KD、KC、KE、KQ、KG、KH、KI、KL、KK、KM、KF、KP、KS、KT、KW、KY、KV、MA、MR、MN、MD、MC、ME、MQ、MG、MH、MI、ML、MK、MM、MF、MP、MS、MT、MW、MY、MV、FA、FR、FN、FD、FC、FE、FQ、FG、FH、FI、FL、FK、FM、FF、FP、FS、FT、FW、FY、FV、PA、PR、PN、PD、PC、PE、PQ、PG、PH、PI、PL、PK、PM、PF、PP、PS、PT、PW、PY、PV、SA、SR、SN、SD、SC、SE、SQ、SG、SH、SI、SL、SK、SM、SF、SP、SS、ST、SW、SY、SV、TA、TR、TN、TD、TC、TE、TQ、TG、TH、TI、TL、TK、TM、TF、TP、TS、TT、TW、TY、TV、WA、WR、WN、WD、WC、WE、WQ、WG、WH、WI、WL、WK、WM、WF、WP、WS、WT、WW、WY、WV、YA、YR、YN、YD、YC、YE、YQ、YG、YH、YI、YL、YK、YM、YF、YP、YS、YT、YW、YY、YV、VA、VR、VN、VD、VC、VE、VQ、VG、VH、VI、VL、VK、VM、VF、VP、VS、VT、VW、VY及びVVが含まれる。トリペプチド残基も又、保護基として有用である。
【0037】
ジペプチド又はトリペプチド化学種は、腸管粘膜又はその他の細胞型への輸送に影響を及ぼす可能性がある既知の輸送特性及び/又はペプチダーゼ感受性に基づいて選択することができる。α−アミノ基を欠失するジペプチド及びトリペプチドは、腸管粘膜細胞の刷子縁膜に存在するペプチド輸送因子の輸送基質である(Bai, J.P.F., (1992) Pharm Res. 9:969−978)。従って、輸送成分ペプチドを、本発明の化合物の生物学的利用能を向上させるために使用することができる。D立体配座において1つ以上のアミノ酸を有するジペプチド又はトリペプチドも又、ペプチド輸送との適合性を有しており、本発明の化合物において利用できる。D立体配座のアミノ酸を、刷子縁膜に共通するプロテアーゼ(例えば、アミノペプチダーゼN)による加水分解に対するジペプチド又はトリペプチドの感受性を低下させるために使用することができる。加えて、ジペプチド又はトリペプチドは代替として、腸の内腔に存在するプロテアーゼによる加水分解に対するそれらの相対的な抵抗性に基づいて選択される。例えば、asp及び/又はgluを欠失するトリペプチド又はポリペプチドは、アミノペプチダーゼAの不良な基質であり、疎水性アミノ酸(leu、tyr、phe、val、trp)のN末端側でアミノ酸残基を欠失するジペプチド又はトリペプチドは、エンドペプチダーゼの不良な基質であり、遊離カルボキシル末端の末位から2番目でpro残基を欠失するペプチドは、カルボキシペプチダーゼPの不良な基質である。同様の検討は、細胞質、腎臓、肝臓、血清又はその他のペプチダーゼによる加水分解に対して比較的抵抗性を備える、又は比較的感受性を備えるペプチドの選択に対しても適用することができる。良好に開裂されないこのようなポリペプチドアミダートは、免疫原であるか、又は免疫原を調製するためにタンパク質に結合させるのに有用である。
【0038】
(本発明の具体的な実施形態)
基、置換基及び範囲について記載される具体的な値、並びに本明細書に記載される本発明の例示的実施形態は、単に例示を目的としたものであり;その他の定義された値、又は定義された範囲内のその他の値を排除するものではない。
【0039】
具体的な非環式ヌクレオシドプリンは、以下の化学式Iの化合物:
【0040】
【化7】

(式中;
nは2又は3であり;
Xは−N(Rであり、この場合、
は独立して、
H;
−C15アルキル、C−C15アルケニル、C−C15アリールアルケニル、C−C15アルキニル、C−C15アリールアルキニル、C−C−アルキルアミノ−C−Cアルキル、C−C15アラルキル、C−C15ヘテロアルキル若しくはC−Cヘテロシクロアルキル(但し、NHに隣接していないアルキル成分におけるメチレンは−O−によって置換されている);又は
−C15アルキル、C−C15アルケニル、C−C15アリールアルケニル、C−C15アリールアルキニル、C−C15アルキニル、C−C−アルキルアミノ−C−Cアルキル、C−C15アラルキル、C−C15ヘテロアラルキル、C−Cアリール、C−Cヘテロシクロアルキル
であるか;
或いは、必要に応じて、両方のRは一緒になって、1つ若しくは2つのNヘテロ原子と、必要に応じて更なるOヘテロ原子若しくはSヘテロ原子とを含有する飽和若しくは不飽和C−C複素環を形成し;
この場合、前記R基の1つは、ハロ、−CN又は−Nにより置換されてもよいが、何れか1つ又は2つのR基はHではなく;
Yは独立して、OH、−OR、−OCH(R)OC(O)R、モノリン酸、二リン酸、アミノ酸アミダート、ポリペプチドアミダート、−NHR又は−N(Rであり;
は独立して、非置換アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アルキニルアリール若しくはアルケニルアリール;Hがハロ、カルボキシ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、N−モリホリノ若しくはアミノによって置換されるアルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アルキニルアリール若しくはアルケニルアリール;又は−CH−成分がNH、S若しくはOによって置換されているアルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アルキニルアリール若しくはアルケニルアリールであり;
はH又はRである);
或いはそのプロドラッグ、二リン酸又はその他のリン置換誘導体である。
【0041】
化学式Iの別の具体的な非環式ヌクレオシドプリンは、以下の化学式の化合物:
【0042】
【化8】

或いはそのプロドラッグ又は薬学的に許容される塩である。
【0043】
別の具体的な非環式ヌクレオシドプリンは、以下の化学式の化合物:
【0044】
【化9】

又はそのプロドラッグである。
【0045】
各Rの具体的な値は独立して、H、C−C15アルキル、C−C15アルケニル、C−C15アルキニル又はC−Cシクロアルキルであるか、或いは必要に応じて、両方のRは一緒になって、1つ又は2つのNヘテロ原子と、必要に応じて更なるO又はSヘテロ原子とを含有する飽和又は不飽和C−C複素環を形成する。
【0046】
各Rの具体的な値は独立して、H、メチル又はシクロプロピルである。
【0047】
各Rの具体的な値は独立してHである。
【0048】
各Rの具体的な値は独立してメチルである。
【0049】
一方のRの具体的な値はHであり、他方のRの具体的な値はシクロプロピルである。
【0050】
Wの具体的な値はHである。
【0051】
Wの具体的な値はNHである。
【0052】
Xの具体的な値はOHである。
【0053】
Zの具体的な値は、−CH−CH−、−CH−CH(CH)−又は−CH−CH(CHOH)−である。
【0054】
nの具体的な値は2である。
【0055】
nの具体的な値は3である。
【0056】
Zの具体的な値は、−CH−CH(CH)−又は−CH−CH(CHOH)−のS−エナンチオマーである。
【0057】
化学式Iの具体的な化合物は、6−MePMEDAPpp又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグである。
【0058】
化学式Iの具体的な化合物は、(S)−PMPApp又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグである。
【0059】
化学式Iの具体的な化合物は、(S)−PMPA又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグである。
【0060】
化学式Iの具体的な化合物は、6−MePMEDAPpp又はそのプロドラッグである。
【0061】
化学式Iの具体的な化合物は、(S)−PMPApp又はそのプロドラッグである。
【0062】
化学式Iの具体的な化合物は、(S)−PMPA又はそのプロドラッグである。
【0063】
本発明の化合物は、キラル中心(例えば、キラル炭素原子又はリン原子)を有する場合がある。従って、本発明の化合物には、全ての立体異性体(エナンチオマー、ジアステレオマー及びアトロプ異性体を含む)のラセミ混合物が含まれる。加えて、本発明の化合物には、任意の不斉なキラル原子又は全ての不斉なキラル原子における濃縮又は分割された光学異性体が含まれる。言い換えれば、記述から明らかであるキラル中心が、キラル異性体又はラセミ混合物としてもたらされる。ラセミ混合物及びジアステレオマー混合物の両方、並びにそのエナンチオマー相手又はジアステレオマー相手を実質的に含まない単離又は合成された個々の光学異性体は全てが本発明の適用範囲に含まれる。ラセミ混合物は、周知の技法によって、例えば、光学活性を有する補助成分(例えば、酸又は塩基)により形成されたジアステレオマー塩の分離、それに続く、光学活性物質への変換等によってその個々の実質的に光学的に純粋な異性体に分離される。殆どの場合において、所望の光学異性体は、所望の出発物質の適切な立体異性体を使用して開始される立体特異的な反応によって合成される。
【0064】
本発明の化合物は又、幾つかの場合には互変異性体として存在することができる。1つだけの脱局在化した共鳴構造が示されることがあるが、全てのこのような形態が本発明の適用範囲内において意図される。例えば、エン−アミンの互変異性体が、プリン系、ピリミジン系、イミダゾール系、グアニジン系、アミジン系及びテトラゾール系については存在することができ、全てのそれらの可能な互変異性形態が本発明の適用範囲内である。
【0065】
本発明は又、化学式(I)の化合物の塩、特に、例えば、Na、Li、K、Ca+2及びMg+2を含有する薬学的に許容される非毒性の塩を提供する。このような塩には、適切なカチオン(例えば、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオン、又はアンモニウムイオン又は第四級アミノイオン等)と、酸アニオン成分(一般的にカルボン酸)との組み合わせに由来する塩が含まれ得る。水溶性の塩が所望される場合には、一価の塩が好ましい。
【0066】
金属塩は一般的に、金属水酸化物を本発明の化合物と反応することによって調製される。この方法で調製される金属塩の例には、Li、Na及びKを含有する塩が挙げられる。あまり可溶性でない金属塩を、好適な金属化合物の添加によって、より可溶性の塩の溶液から沈殿させることができる。
【0067】
加えて、塩を、塩基性中心(一般的にアミン)又は酸性基へのある種の有機酸及び無機酸(例えば、HCl、HBr、HSO、HPO又は有機スルホン酸)の酸付加から形成することができる。最後に、本明細書中の組成物は、化合物をその非イオン化形態並びに双性イオン形態で含むこと、又、化合物を、水和物でのように、化学量論的な量の水との組み合わせで含むことを理解しなければならない。
【0068】
本発明の適用範囲には又、1つ以上のアミノ酸により形成された塩が含まれる。上述のアミノ酸はどれも好適である(特に、タンパク質成分として存在する天然のアミノ酸)。しかし、アミノ酸は一般的に、塩基性基又は酸性基を伴う側鎖を有するもの(例えば、リシン、アルギニン又はグルタミン酸)、或いは、中性基を伴う側鎖を有するもの(例えば、グリシン、セリン、トレオニン、アラニン、イソロイシン又はロイシン)である。
【0069】
本発明の化合物は、常法に従って選択される従来の担体及び賦形剤と共に配合することができる。錠剤は、賦形剤、流動促進剤、充填剤及び結合剤等を含有する。水性配合物は無菌形態で調製され、経口投与以外による送達のために意図される時には一般的に等張性である。全ての配合物は必要に応じて、種々の賦形剤、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients (1986)に示される賦形剤等を含有する。賦形剤には、アスコルビン酸及び他の酸化防止剤、キレート化剤(例えば、EDTA)、炭水化物(例えば、デキストリン、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース)、並びにステアリン酸等が含まれる。配合物のpHは約3〜約11の範囲であり、しかし、通常の場合には約7〜10である。
【0070】
有効成分を単独で投与することが可能である一方で、有効成分を医薬配合物として提供することが好ましい場合がある。本発明の配合物(動物に使用される配合物、及びヒトに使用される配合物の両方)は、上記で定義されるような少なくとも1つの有効成分を、そのための1つ以上の許容され得る担体、及び必要に応じて他の治療剤成分と一緒に含む。担体は、配合物の他の有効成分との適合性を有し、その被投与者に対して生理学的に無害であるという意味で「許容可能」でなければならない。
【0071】
配合物には、前記の投与経路に好適な配合物が含まれる。配合物は好都合には単位投薬形態で提供することができ、製薬分野で周知の方法の何れかによって調製することができる。種々の技術及び配合物が一般的に、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co.[米国ペンシルバニア州イーストン])に見出される。このような方法には、有効成分を、1つ以上の補助的成分を構成する担体と共に一緒にする工程を含む。一般的に、配合物は、有効成分を液相担体又は細かく分割された固相担体又は両者と均一且つ十分に一緒にすること、及びその後、必要に応じて、製造物を形状化することによって調製される。
【0072】
経口投与に好適な本発明の配合物は、所定量の有効成分を含有する個別の単位物(例えば、カプセル、カシェ剤又は錠剤)として、或いは、粉末剤又は顆粒剤として、或いは、水性液体又は非水性液体における溶液又は懸濁物として、或いは、水中油型の液体エマルション又は油中水型の液体エマルションとして提供することができる。有効成分は又、ボーラス剤、舐剤又はペーストとして投与することができる。
【0073】
錠剤は、必要に応じて1つ以上の補助的成分と共に圧縮又は成形することによって作製することができる。圧縮された錠剤は、結合剤、滑剤、不活性希釈剤、保存剤、表面活性剤又は分散化剤と必要に応じて混合された易流動性形態(例えば、粉末又は顆粒)での有効成分を好適な装置において圧縮することによって調製することができる。成形された錠剤は、不活性液体希釈剤により湿らされる粉末化された有効成分の混合物を好適な装置において成形することによって作製することができる。これらの錠剤は必要に応じて被覆又は刻み目を施すことができ、又、必要に応じて、錠剤からの有効成分の遅い放出又は制御された放出を提供するように配合される。
【0074】
目又は他の外部組織(例えば、口及び皮膚)への投与のために、配合物は好ましくは、有効成分を、例えば、0.075%w/w〜20%w/wの量(これには、0.1%w/wの刻みで0.1%〜20%の間の範囲での有効成分、例えば、0.6%w/w、0.7%w/w等での有効成分が含まれる)で、好ましくは、0.2%w/w〜15%w/wの量で、最も好ましくは、0.5%w/w〜10%w/wの量で含有する局所用の軟膏又はクリームとして塗布される。軟膏に配合される時、有効成分は、パラフィン系軟膏基剤又は水混和性軟膏基剤の何れかと共に使用することができる。或いは、有効成分は、水中油型のクリーム基剤と共にクリームに配合することができる。
【0075】
所望される場合、クリーム基剤の水相は、例えば、少なくとも30%w/wの多価アルコール(即ち、2つ以上のヒドロキシル基を有するアルコール、例えば、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール及びポリエチレングリコール(PEG400を含む))及びその混合物を含むことができる。局所用配合物は望ましくは、皮膚又は他の罹患領域を介した有効成分の吸収又は浸透を向上させる化合物を含むことができる。このような皮膚浸透強化剤の例には、ジメチルスルホキシド及び関連したアナログが含まれる。
【0076】
本発明のエマルションの油相は、既知の成分から既知の様式で構成され得る。油相が単に乳化剤(emulsifier)(これはエムルゲント(emulgent)として別途知られている)を含む場合がある一方で、油相は、望ましくは、脂肪又はオイルを伴うか、又は脂肪及びオイルの両方を伴う少なくとも1つの乳化剤の混合物を含む。好ましくは、親水性の乳化剤が、安定化剤として作用する親油性の乳化剤と一緒に含められる。オイル及び脂肪の両方を含むことも又好ましい。まとめると、安定化剤を伴う乳化剤、又は安定化剤を伴わない乳化剤は、いわゆる乳化用ワックスを構成し、オイル及び脂肪と一緒になったワックスは、クリーム配合物の油性分散相を形成するいわゆる乳化用の軟膏基剤を構成する。
【0077】
本発明の配合物における使用に好適なエムルゲント及び乳化安定化剤には、Tween(登録商標) 60、Span(登録商標) 80、セトステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ミリスチルアルコール、グリセリルモノステアラート及びラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。
【0078】
配合物のための好適なオイル又は脂肪の選択は、所望の化粧学的特性を達成することに基づく。クリームは、好ましくは、チューブ又は他の容器からの漏れを避けるための好適な粘稠度を有する、べとべとせず、汚さず、水で落ちる製造物でなければならない。直鎖又は分枝鎖の一塩基性又は二塩基性のアルキルエステル、例えば、ジイソアジパート、ステアリン酸イソセチル、ココナツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、又はCrodamol CAPとして知られている分枝鎖エステルの混合物等を使用することができ、最後の3つが好ましいエステルである。これらは、要求される特性に依存して、単独又は組み合わせで使用することができる。或いは、高融点の脂質(例えば、白色ワセリン及び/又は流動パラフィン又はその他の鉱油)を使用することができる。
【0079】
本発明による医薬配合物は、1つ以上の化合物を、1つ以上の薬学的に許容される担体又は複製剤、及び必要に応じて、他の治療剤と一緒に含む。有効成分を含有する医薬配合物は、意図された投与方法のために好適な任意の形態にすることができる。例えば、経口使用のために使用される時、錠剤、トローチ、薬用キャンデー、水性懸濁物又は油性懸濁物、分散性の粉末剤又は顆粒剤、乳剤、ハードカプセル剤又はソフトカプセル剤、シロップ又はエリキシル剤を調製することができる。経口使用のために意図された組成物は、薬学的組成物の製造のために当該技術分野で既知の任意の方法に従って調製することができ、又、このような組成物は、口当たりのよい調製物を提供するために、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤及び保存剤をはじめとする1つ以上の薬剤を含有することができる。有効成分を錠剤の製造のために好適な非毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合で含有する錠剤が受け入れられ得る。このような賦形剤は、例えば、不活性希釈剤、例えば、炭酸カルシウム又は炭酸ナトリウム、ラクトース、ラクトース一水和物、クロスカルメロースナトリウム、ポビドン、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム等;造粒剤及び崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン又はアルギン酸等;結合剤、例えば、セルロース、微結晶セルロース、デンプン、ゼラチン又はアラビアゴム等;及び、滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルク等であり得る。錠剤は被覆されなくてもよく、又は胃腸管における崩壊及び吸収を遅らせて、それにより、持続した作用をより長い期間にわたって提供するために、既知の技法(マイクロカプセル化を含む)によって被覆することができる。例えば、徐放性物質(例えば、グリセリルモノステアラート又はグリセリルジステアラート)を単独又はワックスと共に使用することができる。
【0080】
経口使用のための配合物は又、有効成分が不活性固体希釈剤(例えば、リン酸カルシウム又はカオリン)と混合されるハードゼラチンカプセルとして、又は有効成分が水又はオイル媒体(例えば、ピーナッツ油、流動パラフィン又はオリーブ油)と混合されるソフトゼラチンカプセルとして提供することができる。
【0081】
本発明の水性懸濁物は、有効成分を、水性懸濁物の製造のために好適な賦形剤との混合で含有する。このような賦形剤には、懸濁化剤、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアラビアゴム等、並びに分散化剤又は湿潤化剤、例えば、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合産物(例えば、ポリオキシエチレンステアラート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合産物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと、脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合産物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)等が含まれる。水性懸濁物は又、1つ以上の保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチル又はp−ヒドロキシ安息香酸n−プロピル)、1つ以上の着色剤、1つ以上の矯味矯臭剤、及び1つ以上の甘味剤(例えば、スクロース又はサッカリン)を含有することができる。
【0082】
油性懸濁物は、有効成分を植物油(落花生油、オリーブ油、ゴマ油又はココナツ油)又は鉱油(例えば、流動パラフィン)に懸濁することによって配合することができる。経口懸濁物は増粘剤(例えば、蜜ろう、固形パラフィン又はセチルアルコール)を含有することができる。甘味剤(例えば、上記で示された甘味剤)及び矯味矯臭剤を、口当たりのよい経口調製物を提供するために添加することができる。これらの組成物は酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸)の添加によって保存することができる。
【0083】
水性懸濁物を水の添加によって調製するために好適な本発明の分散性の粉末剤及び顆粒剤は、有効成分を、分散化剤又は湿潤化剤、懸濁化剤、及び1つ以上の保存剤との混合で提供する。好適な分散化剤又は湿潤化剤及び懸濁化剤が、上記で開示された分散化剤、湿潤化剤及び懸濁化剤によって例示される。更なる賦形剤(例えば、甘味剤、矯味矯臭剤及び着色剤)も又存在させることができる。
【0084】
本発明の薬学的組成物は又、水中油型エマルションの形態である場合がある。油相は、植物油(例えば、オリーブ油又は落花生油)又は鉱油(例えば、流動パラフィン)又はこれらの混合物であり得る。好適な乳化剤には、天然に存在するゴム(例えば、アラビアゴム及びトラガカントゴム)、天然に存在するホスファチド(例えば、ダイズレシチン)、脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来するエステル又は部分エステル(例えば、ソルビタンモノオレアート)、並びにこのような部分エステルとエチレンオキシドとの縮合産物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)が含まれる。エマルションは又、甘味剤及び矯味矯臭剤を含有することができる。シロップ及びエリキシル剤を、甘味剤(例えば、グリセロール、ソルビトール又はスクロース)と共に配合することができる。このような配合物は又、解乳化剤、保存剤、矯味矯臭剤又は着色剤を含有することができる。
【0085】
本発明の薬学的組成物は、無菌の注射可能な調製物の形態、例えば、無菌の注射可能な水性懸濁物又は油性懸濁物等の形態にすることができる。このような懸濁物は、上で述べたこのような好適な分散化剤又は湿潤化剤及び懸濁化剤を使用して、既知の技法に従って配合することができる。無菌の注射可能な調製物は又、非経口投与に許容され得る非毒性の希釈剤又は溶媒における無菌の注射可能な溶液又は懸濁物(例えば、1,3−ブタンジオールにおける溶液)であってもよく、又は凍結乾燥させた粉末として調製することができる。使用できる許容されるビヒクル及び溶媒は、水、リンゲル溶液及び等張性塩化ナトリウム溶液である。加えて、無菌の固定油を、溶媒又は懸濁化媒体として従来的に使用することができる。この目的のために、刺激性のない任意の固定油を使用することができ、これには、合成されたモノグリセリド又はジグリセリドが含まれる。加えて、脂肪酸(例えば、オレイン酸)を同様に、注射剤の調製において使用することができる。
【0086】
単回投薬形態物を製造するために担体物質と組み合わせることができる有効成分の量は、処置される宿主及び具体的な投与様式に依存して変化する。例えば、ヒトへの経口投与のために意図された徐放性配合物は、組成物全体の約5%から約95%(重量:重量)まで変化し得る適切且つ好都合な量の担体物質と配合された約1mg〜1000mgの活性物質を含有することができる。薬学的組成物は、投与のための容易に測定可能な量を提供するために調製することができる。例えば、静脈内注入のために意図された水溶液は、約30mL/hrの速度での好適な体積の注入が行われ得るために、1ミリリットルの溶液について約3μg〜500μgの有効成分を含有することができる。
【0087】
目への投与に好適な配合物には、有効成分が好適な担体(特に、有効成分のための水性溶媒)に溶解又は懸濁される点眼剤が含まれる。有効成分は好ましくは、このような配合物において、0.5%〜20%の濃度で、好都合には0.5%〜10%の濃度で、具体的には約1.5%w/wの濃度で存在する。
【0088】
口における局所投与に好適な配合物には、有効成分を、味が付けられた基剤(通常の場合には、スクロース又はアラビアゴム又はトラガカントゴム)に含むトローチ;有効成分を不活性基剤(例えば、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアラビアゴム)に含む香錠;及び、有効成分を好適な液相担体に含む口腔洗浄剤が含まれる。
【0089】
直腸投与のための配合物は、例えば、カカオ脂又はサリチラートを含む好適な基剤との坐薬として提供することができる。
【0090】
肺内投与又は鼻腔投与に好適な配合物は、鼻腔通過による迅速な吸入によって、又は肺胞嚢に到達するように口を介した吸入によって投与される、例えば、0.1ミクロン〜500ミクロンの範囲での粒子サイズ(0.1ミクロン〜500ミクロンの間の範囲において、例えば、0.5ミクロン、1ミクロン、30ミクロン、35ミクロン等の刻みでの粒子サイズを含む)を有する。好適な配合物には、有効成分の水溶液又は油性溶液が含まれる。エアロゾル投与又は乾燥粉末投与に好適な配合物を従来の方法に従って調製することができ、又、その他の治療剤(例えば、以下に記載するような炎症の処置においてこれまで使用されている化合物)と共に送達することができる。
【0091】
膣投与に好適な配合物は、有効成分に加えて、適切であることが当該技術分野で既知のような担体を含有する膣坐剤、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー配合物として提供することができる。
【0092】
非経口投与に好適な配合物には、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及び配合物を意図された被投与者の血液と等張性にする溶質を含有する場合がある水性及び非水性の無菌の注射液;並びに、懸濁化剤及び増粘剤を含む場合がある水性及び非水性の無菌の懸濁物が含まれる。
【0093】
このような配合物は、単位服用容器又は多回服用容器(例えば、密封されたアンプル及びバイアル)において提供され、又、使用直前に無菌の液相担体(例えば、注射用水)の添加のみを必要とする冷凍乾燥(凍結乾燥)された状態で保存することができる。即時調合される注射用の溶液及び懸濁物が、前記で記載された種類の無菌の粉末剤、顆粒剤及び錠剤から調製される。好ましい単位投薬配合物は、有効成分の本明細書中上記で示されたような1日用量又は単位1日部分用量或いはその適切な分割量を含有する単位投薬配合物である。
【0094】
上記で具体的に述べられた成分に加えて、本発明の配合物は、問題としている配合物の種類を考慮してこの分野において従来的である他の薬剤を含むことができること、例えば、経口投与に好適な配合物は矯味矯臭剤を含むことができることを理解しなければならない。
【0095】
本発明はさらに、上記で定義されるような少なくとも1つの有効成分をそのための動物用担体と一緒に含む動物用組成物を提供する。
【0096】
動物用担体は、組成物を投与するという目的に有用な物質であり、その他の点では不活性であるか、又は獣医学分野において許容可能であり、有効成分との適合性を有する固体物質、液体物質又はガス状物質であり得る。このような動物用組成物は、経口投与、非経口投与又は任意の他の所望の経路によって投与することができる。
【0097】
化合物は又、より少ない頻度での服用を可能にするために、或いは、有効成分の薬物動態学的プロフィル又は毒性プロフィルを改善するために有効成分の制御された放出を提供するように配合することができる。従って、本発明は又、持続した放出又は制御された放出のために配合された1つ以上の化合物を含む組成物を提供する。
【0098】
有効成分の効果的な用量は、少なくとも、処置される病態の性質、毒性、化合物が予防的に使用されている(より低い用量)か、又は存在する炎症に対して使用されているかどうか、送達方法及び医薬配合物に依存し、従来の用量増加研究を使用して臨床医によって決定される。有効成分の効果的な用量は約0.0001mg/kg体重/日〜約100mg/kg体重/日であることが予想され得る。一般的に、約0.01mg/kg体重/日〜約10mg/kg体重/日である。より一般的に、約0.01mg/kg体重/日〜約5mg/kg体重/日である。より一般的に、約0.05mg/kg体重/日〜約0.5mg/kg体重/日である。例えば、約70kgの体重の成人についての1日の候補用量は1mg〜1000mgの範囲であり、好ましくは、5mg〜500mgの間であり、単回服用又は多回服用の形態を取ることができる。
【0099】
1つ以上の化合物(以降、有効成分と呼ばれる)を、処置される病態に対して適切である任意の経路によって投与することができる。好適な経路には、経口、直腸、鼻腔、局所的(口内及び舌下を含む)、膣及び非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、クモ膜下腔内及び硬膜外を含む)等が含まれる。好ましい経路は、例えば、被投与者の病態と共に変化し得ることが理解される。本発明の化合物の利点は、本発明の化合物は経口投与による生物学的利用能を有し、経口投与による服用が可能であることである。
【0100】
本発明の有効成分は又、他の有効な成分との組み合わせで使用することができる。このような組み合わせは、一般的に、処置される病態、成分の交差反応性、及び組み合わせの薬物特性に基づいて選択される。
【0101】
任意の化合物を患者への同時投与又は逐次投与のための一体的な投薬形態物において1つ以上の他の有効成分と組み合わせることも又可能である。このような混合治療を同時療法又は逐次療法として施すことができる。逐次的に施される時、組み合わせは2回以上の投与で施される場合がある。
【0102】
混合治療は、「相乗作用」又は「相乗効果」、即ち、一緒に使用された有効成分が、その化合物を別々に使用することから生じる効果の和よりも大きい時に達成される効果をもたらすことができる。相乗効果を、有効成分が、(1)同時に配合され、一緒にされた配合物において同時に投与又は送達される時に;(2)別個の配合物として交互に、又は並行して送達される時に;又は(3)何らかの他の療法によって達成することができる。交互治療で送達される時、相乗効果を、化合物が、例えば、別個の錠剤、ピル又はカプセルで、或いは、別個のシリンジでの異なる注射によって逐次的に投与又は送達される時に達成することができる。一般的に、交互治療の期間中において、それぞれの有効成分の効果的な投薬量が、逐次的に、即ち、連続して投与され、これに対して、混合治療では、2つ以上の有効成分の効果的な投薬量が一緒に投与される。
【0103】
本発明の範囲には又、本明細書に記載された化合物のin vivo代謝産物が含まれる。このような産物は、例えば、主に酵素的プロセスによる、投与された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化及びエステル化等から生じる場合がある。従って、本発明では、本発明の化合物を、その代謝産物を生成するために十分な期間にわたって哺乳動物と接触させることからなるプロセスによって産生される化合物が含まれる。このような産物は、一般的に、放射能(例えば、C14又はH)標識された化合物を調製すること、放射能標識された化合物を検出可能な用量(例えば、約0.5mg/kgを超える用量)で動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、サル)又はヒトに非経口投与すること、代謝が行われるための十分な時間(一般的に約30秒〜30時間)を与えること、及びその変換産物を、尿、血液又は他の生物学的サンプルから単離することによって特定される。このような産物は、標識されるので容易に単離される(他の産物は、代謝物中に残存しているエピトートと結合することができる抗体の使用によって単離される)。代謝物の構造が、従来の様式で、例えば、MS分析又はNMR分析によって決定される。一般的に、代謝物の分析は、当業者に周知の従来の薬物代謝研究と同じ方法で行われる。変換産物がin vivoで別途見出されない限り、変換産物は、たとえ、変換産物がそれ自身の抗炎症活性を全く有しない場合でも、化合物の治療的服用のための診断試験において有用である。
【0104】
本発明は又、本明細書における新規の化合物を作製する方法に関連する。本発明の化合物は有機合成の適用可能な技術の何れかによって調製される。このような技法の多くは、当該技術分野で周知である。しかしながら、既知の技法の多くは、Compendium of Organic Synthetic Methods (John Wiley & Sons, New York), Vol. 1, Ian T. Harrison and Shuyen Harrison, 1971;Vol. 2, Ian T. Harrison and Shuyen Harrison, 1974;Vol. 3, Louis S. Hegedus and Leroy Wade, 1977;Vol. 4, Leroy G. Wade, jr., 1980;Vol. 5, Leroy G. Wade, Jr., 1984;及びVol. 6, Michael B. Smith;並びにMarch, J., Advanced Organic Chemistry, Third Edition (John Wiley & Sons, New York, 1985), Comprehensive Organic Synthesis. Selectivity, Strategy & Efficiency in Modern Organic Chemistry. In 9 Volumes, Barry M. Trost, Editor−in−Chief) (Pergamon Press, New York, 1993 printing)に詳述されている。
【0105】
一般的に、反応条件(例えば、温度、反応時間、溶媒及び処理手順等)は、行われる特定の反応についてこの分野において一般的である条件である。引用されている参考物、並びにそれらにおける引用物は、このような条件の詳細な記述を含む。一般的に、温度は−100℃〜200℃であり、溶媒は非プロトン性又はプロトン性であり、反応時間は10秒〜10日である。処理は一般的に、何らかの望ましくない試薬を失活させること、それに続いて、水/有機層系での分配(抽出)、及び産物を含有する層を分離することからなる。
【0106】
その立体異性体を実質的に含まない1つだけの立体異性体(例えば、エナンチオマー)を、光学活性を有する分割剤を使用するジアステレオマーの形成等の方法を使用して、ラセミ混合物の分割によって得ることができる(Streochemistry of Carbon Compounds (1962), E.L. Eliel, McGraw Hill;Lochmuller, C.H. (1975), J. Chromatogr., 113:(3)283−302)。キラル化合物のラセミ混合物を任意の好適な方法によって分離及び単離することができ、このような方法では、(1)キラル化合物とのイオン性ジアステレオマー塩の形成、及び分別結晶化又は他の方法による分離、(2)キラル誘導体化試薬とのジアステレオマー化合物の形成、ジアステレオマーの分離、及び純粋な立体異性体への変換、並びに(3)直接キラル条件のもとでの、実質的に純粋な立体異性体又は濃縮された立体異性体の分離が含まれる。
【0107】
方法(1)では、酸性官能基を有する不斉化合物(例えば、カルボン酸及びスルホン酸)とエナンチオマーが純粋なキラル塩基(例えば、ブルシン、キニン、エフェドリン、ストリキニーネ及びα−メチル−β−フェニルエチルアミン(アンフェタミン)等)を反応させることによって、ジアステレオマー塩を形成することができる。ジアステレオマー塩は、分別結晶化又はイオンクロマトグラフィーによって分離するために誘導される場合がある。アミノ化合物の光学異性体を分離するには、キラルカルボン酸又はスルホン酸(例えば、ショウノウスルホン酸、酒石酸、マンデル酸又は乳酸)を添加することで、ジアステレオマー塩を形成することができる。
【0108】
或いは、方法(2)では、分割する基質をキラル化合物の一方のエナンチオマーと反応させて、ジアステレオマー対を形成する(Eliel, E. and Wilen, S. (1994), Streochemistry of Organic Compounds, John Wiley & Sons, Inc., p.322)。ジアステレオマー化合物は、不斉化合物をエナンチオマーが純粋なキラル誘導体試薬(例えば、メンチル誘導体)と反応させた後、ジアステレオマーを分離し、加水分解を行うことで、遊離する、エナンチオマーが濃縮されたキサンテンを産生することで形成することができる。光学純度を測定する方法には、ラセミ混合物のキラルエステル、例えば、メンチルエステル(例えば、塩基の存在下における(−)メンチル・クロロホルマート)、又はMosherエステル(α−メトキシ−α−(トリフロロメチル)酢酸フェニル)(Jacob III. (1982) J. Org. Chem. 47:4165)を作製し、2つのアトロプ異性ジアステレオマーの存在についてNMRスペクトルを分析することを伴う。アトロプ異性化合物の安定したジアステレオマーは、アトロプ異性のナフチル−イソキノリン化合物を分離する方法に従って順相及び逆相クロマトグラフィーによって分離及び単離することができる(Hoye, T., WO 96/15111)。
【0109】
方法(3)では、2つのエナンチオマーのラセミ混合物を、キラル定常相を使用したクロマトグラフィーにより分離することができる(Chiral Liquid Chromatography (1989) W.J. Lough, Ed., Chapman and Hall, New York;Okamoto (1990) J. of Chromatogr. 513:375−378)。濃縮又は精製されたエナンチオマーは、不斉炭素原子を有するその他のキラル分子の識別に使用される方法(例えば、旋光性及び円二色性の方法)によって識別することができる。
【0110】
次に、以下の非限定的な実施例によって本発明を例示する。
【実施例】
【0111】
実施例1
材料及び方法
以下の化合物を評価した(図1):(S)−HPMPApp、(R)−HPMPGpp、PMEApp、PMECpp、PMEGpp、PMETpp、PMEDAPpp、PMEO−DAPypp、6−Me−PMEDAPpp、(R)−6−cyprPMPDAPpp、(R)−PMPDAPpp、(R)−PMPApp、(S)−PMPApp、(R)−PMPGpp及び(S)−PMPGpp。(S)−HPMPA及び(R)−HPMPG二リン酸を、Otmar M, Masojidkova M, Votruba I, Holy A., Collect Czech Chem Commun, 2001, 66, 500−6の記載に従って合成した。その他のANP二リン酸は、改変されたモルホリダート法によって合成した。一般的な実験において、ANP(遊離酸、1mmol)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.3g)及びモルホリン(2mL)の80%水性tert−ブタノール(20mL)混合物を、6時間〜8時間撹拌して還流し、真空蒸発させた。水(100mL)中の残渣をCelite(登録商標)でろ過し、ろ液をエーテルで抽出して(50mLで3回)、水相を真空下で濃縮した。残渣を100mLのフラスコに移し、蒸発させ、エタノールと共に共蒸留し(20mLで2回)、五酸化リン上で15Paにて一晩乾燥させた。ビス(トリブチルアンモニウム)モノリン酸又はトリス(トリブチルアンモニウム)二リン酸の乾燥ジメチルスルホキシド溶液(1mol/L、2.5mL)を添加し、密閉したフラスコにて混合物を周囲温度で4日〜6日間撹拌した。その後、反応混合物を6MのHClでpH3に酸性化し、適量の活性炭を添加した。ペレット化した活性炭をHPLC用の水で十分に洗浄した後、脱塩したヌクレオチドを5%NHOH/50%メタノールによって溶出した。この溶出液を30℃で蒸発させ、0.05Mの重炭酸トリエチルアンモニウムに溶解し、直線濃度勾配の重炭酸トリエチルアンモニウム(0.05〜0.4mol/L)中でPOROS(登録商標) 50HQアニオン交換体(Applied Biosystems[米国カリフォルニア州フォスターシティー])によるクロマトグラフィーにより精製した。ANPpp(トリエチルアンモニウム塩)に対応するピークを収集し、室温で真空蒸発させた後、DOWEXTM 50X8(Na)(SERVA Electrophoresis GmbH[ドイツ ハイデルベルグ])でANPppナトリウム塩に変換した。
【0112】
その他全ての化学物質及び材料は、市販の製造物であった:例えば、活性炭、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、モルホリン、tert−ブタノール、Celite(登録商標)、ジメチルスルホキシド、ddGTP、ストレプトマイシン、ペニシリンG、CHAPS、β−メルカプトエタノール、RNase A、プロテイナーゼK、PBS及びRPMI 1640培地(Sigma−Aldrich[米国ミズーリ州セントルイス])、ウシ胎児血清(PAA Laboratories GmbH[オーストリア パッシング])、ビタミンB12(Leciva a.s.[チェコ共和国プラハ])、Pefablock−SC、Protector RNase阻害剤(Roche Diagnostics GmbH[ドイツ マンハイム])、[γ−32P]ATP(MP Biomedicals GmbH[ドイツ])、T4ポリヌクレオチドキナーゼ緩衝液及びT4ポリヌクレオチドキナーゼ(TaKaRa Bio, Inc.[日本 滋賀])、HEPES、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、Taqポリメラーゼ反応緩衝液、Taq DNAポリメラーゼ(Promega[米国ウィスコンシン州マディソン])、TS、ACX、NT、TSNTの各プライマー(Invitrogen Ltd.[英国ペイズリー])。
【0113】
ヒト急性前骨髄球性白血病HL−60細胞(ATCC CCL 240)を、10%(v/v)熱不活化ウシ胎児血清、抗生物質(200μg/mLのストレプトマイシン及び200ユニット/mLのペニシリンG)、10mMのβ−メルカプトエタノール及びビタミンB12が補充されたRPMI−1640培地で、5%のCOを含有する加湿雰囲気にて37℃で培養した。対数期増殖で採取した細胞をペレット化して、PBSで洗浄し、−70℃で凍結した。
【0114】
テロメラーゼ活性を有する抽出物を、Kim NW, et al., Science, 1994, 266, 2011−5に記載の通り、幾つかの改変と共に調製し、分析した。即ち、細胞を解凍し、0.5%のCHAPS、10mMのHEPES−NaOH(pH7.5)、1mMのMgCl、1MMのEGTA、5mMのβ−メルカプトエタノール、2mMのPefabloc−SC、10%のグリセロール、及び1μL(40U)のProtector RNase阻害剤を含有するCHAPS溶解緩衝液にて氷上で30分間インキュベーションし、200μLのCHAPS溶解緩衝液を使用して、100万個の細胞を溶解した。HL−60細胞の溶解が確実に行われるよう、インキュベーション期間にこれらの細胞を凍結/解凍サイクルに2回の供した。この更なる手順によって、HL−60細胞のテロメラーゼ活性に影響は及ばなかった。細胞破片を4℃にて16000xgで20分間ペレット化した。上清を取り出し、小分けして、ドライアイスで凍結し、−70℃で保存した。そして、上清のタンパク質濃度をBradford試験により求めた。
【0115】
テロメラーゼ活性を、以下に記載する改変と共に、Kim NW, Wu F., Nucleic Acids Res, 1997, 25, 2595−7に記載の通り、TRAP試験を使用して求めた。本研究では、インキュベーション時間を10分から15分に延長し、PCRサイクルの回数を27から33に増大することによって、TRAP試験の感度が増大した。PCRサイクル数に対する増幅されたテロメラーゼ産物の量の依存性は、30サイクル〜35サイクルの範囲で直線であった(データなし)。800pmolのTS基質プライマー(5’−AATCCGTCGAGCAGAGTT−3’)(配列番号1)のアリコットを、60μCiの[γ−32P]ATP(60mCi/mL、7000Ci/mmol)、T4ポリヌクレオチドキナーゼ緩衝液及び40UのT4ポリヌクレオチドキナーゼを含有する100μLの反応混合物中で標識した。37℃で30分間、次いで85℃で2分間のインキュベーションの後、取り込まれなていない過剰な[γ−32P]ATPをMicroSpinTM G−25カラム(Amersham Biosciences[米国ニュージャージー州ピスカタウェイ])で反応混合物から取り除いた。40μlのTRAP反応液は、Taqポリメラーゼ反応緩衝液(50mM KCl、10mM Tris−HCl(25℃でpH9.0)、1.5mM MgCl、0.1% Triton X(登録商標)−100、dNTP(30、60及び125μmol/L)、18pmolの末端標識TS基質プライマー、適量の試験したAMPpp、ANPp及びANPをそれぞれ含有した。反応は細胞抽出物(0.15μgのタンパク質)を添加することによって開始した。それぞれのTRAP反応混合物を、事前に30℃に加熱したサーモサイクラーブロックに入れ、30℃で15分間インキュベーションした後、95℃で2分間(1サイクルの場合)加熱して、テロメラーゼ反応を停止させた。6pmolのACXリバースプライマー(5’−GCGCGG[CTTACC]CTAACC−3’)(配列番号2)、3pmolのNT内部対照プライマー、0.01amolのTSNT内部対照プライマー、及び1.25UのTaq DNAポリメラーゼを含有する10μLの混合物を添加した後、反応液を、94℃で20秒間、52℃で30秒間、72℃で20秒間のサイクル処理に33回供した。
【0116】
測定したテロメラーゼ活性が真にテロメラーゼ自体に依存していたことを保証するため、幾つかの不活性化実験を行った。細胞溶解物のアリコットをRNase A(50μg/mL)と共に37℃で30分間インキュベーションした。プロテイナーゼK及び熱不活性化細胞抽出物は、TRAP試験により3μLの抽出物を試験する前に、細胞抽出物をプロテイナーゼK(50μg/mL)と共に37℃で30分間インキュベーションし、10μLの抽出物を75℃で10分間加熱することによってそれぞれ調製した。HL−60細胞抽出物はテロメラーゼ活性を示し、オートラジオグラフに特徴的なプライマー伸長結合パターンが見られた。本発明者等は、RNase A処理の後にシグナルが消失し、溶解緩衝液単独(陰性対照)ではシグナルが検出されない場合に、このサンプルのテロメラーゼ活性が陽性であると見なした。RNase A及びプロテイナーゼK処理により、PCR産物のラダーバンドをなくなり、酵素活性のタンパク質依存性及びRNA依存性の両方が確認された。
【0117】
増幅したテロメラーゼ産物を、Tris−ホウ酸塩−EDTAを使用して、1,900Vで2時間、変性15%ポリアクリルアミド/7M尿素の配列決定用ゲルで分析した。乾燥させたゲルをPhosphorImager保存スクリーンにさらし、反応産物の量を、TYPHOONTM 9410画像解析装置のImageQuantTMソフトウェア(Molecular Dynamics[米国カリフォルニア州サニーベール])を使用して評価した。阻害剤の存在下における相対的なテロメラーゼ活性を比較するため、テロメラーゼラダーのTRAP試験シグナルを、バックグラウンド除去後の対応する内部標準物のシグナルに対して正規化した。ANPpp、ANPp及びANP処理サンプルのバンドのシグナル強度は、対照で検出されたシグナル強度の百分率で表した。これらの相対的な強度は、ImageQuantソフトウェアを使用して計算されている。結果は全て、4つの独立した測定の平均±SDで表した。
【0118】
結果及び考察
PME誘導体のIC50概算値を表1に示す。表1には、以下のテロメラーゼ阻害能の大きさに従ってIC50値を示す:PMEGpp>PMEDAPpp>PMEO−DAPypp>PMEApp>PMECpp≧PMETpp>6−MePMEDAPpp。
【0119】
【表1】

値は4つの独立した測定の平均±SDである; 測定されず; 阻害なし; プロセッシビティーの増強。
【0120】
グアニン誘導体であるPMEGppは、試験した全ての非環式ヌクレオチドアナログの中で最も強力なテロメラーゼ阻害剤であり、125μMのdNTPでIC50が12.7±0.5μmol/Lとなった(表1、図2)。テロメラーゼに対するこの阻害効力は、最も効果的なヌクレオチドアナログ系テロメラーゼ阻害剤の1つであることが知られているddGTPの阻害効力(125μMのdNTPでIC50が8.1±0.4μmol/L)と匹敵する。dNTPの濃度に応じて、PMEGppは、0.07〜0.11のdGTP濃度範囲内に存在する場合にのみ、テロメラーゼ活性を50%阻害する。PMEGモノリン酸及びPMEGそれ自体は、125μMのdNTPで、それぞれ300μMのPMEG及び/又はPMEGpの濃度まで、テロメラーゼ活性に対する影響を示さない。
【0121】
DNAポリメラーゼδを選択的に阻害し(Holy A., Curr Pharm Des, 2003, 9, 2567−92)、有意な細胞増殖抑制作用を発揮するPMEDAPppは、76±13.5μmol/L(125μMのdNTPで)のIC50でテロメラーゼの活性を阻害する。驚くべきことに、N−ジメチル誘導体である6−MePMEDAPppは、酵素のプロセッシビティーを増大させる(図3A)。非リン酸化形態である6−MePMEDAPは、テロメラーゼラダーパターンに対して全く影響を及ぼさない。
【0122】
レトロウイルスの逆転写酵素を阻害する(Holy A., Curr Pharm Des, 2003, 9, 2567−92)PMEAppのピリミジン誘導体であるPMETpp及びPMECppは、テロメラーゼに対する有意な阻害能を示さない。阻害はPMEO−DAPyppで認められ;この開環ANPは、PMEDAppアナログであると見なされる(図1)。
【0123】
テロメラーゼに対するPMEGpp及びPMEDAPppの阻害能は、それらの親化合物であるPMEG及びPMEDAPのアポトーシス誘導能力、優れた細胞増殖抑制効率、及び抗ガン活性と一致している(Holy A., Curr Pharm Des, 2003, 9, 2567−92)。
【0124】
PMP誘導体の二リン酸のIC50概算値を、以下に示すテロメラーゼ阻害剤としての効力の順に、表2に示す:(R)−PMPGpp>(S)−PMPGpp>(R)−6−cyprPMPDAPpp>(R)−PMPApp>(R)−PMPDAPpp≧(S)−PMPApp。
【0125】
【表2】

値は4つの独立した測定の平均±SDである; 測定されず; プロセッシビティーの増強。
【0126】
PMP型のアナログの中で最も強力な阻害剤は、グアニン誘導体である(R)−PMPGppであり、これは、天然基質dGTPに比べて1/5〜1/8の濃度のIC50で酵素活性を阻害する。(S)−PMPGppは、その(R)−エナンチオマーよりも阻害活性が大幅に小さく、そのIC50は(R)−PMPGppのほぼ5倍超える。このことは、絶対配置がテロメラーゼの阻害において重要な役割を果たし、酵素によって(R)−エナンチオマーと(S)−エナンチオマーを識別できることを示唆している。同様に、(S)−PMPAppは酵素のプロセッシビティーを増大させる一方で(図3B)、(R)−PMPApp(125μMのdNTPでIC50が224±30μmol/L)にはテロメラーゼ活性の有意な阻害が見られなず、これはレトロウイルスの逆転写酵素の鎖停止阻害剤として非常に効率的である(Holy A., Curr Pharm Des, 2003, 9, 2567−92)。これらの結果は、FaraTTPのD−及びL−エナンチオマーの識別について報告したPai RB, et al., (Cancer Res, 1998, 58, 1909−13)の所見、並びにCBV−TPのD−及びL−エナンチオマーの対における阻害効率の差について報告したTendian SW, Parker WB., (Mol Pharmacol, 2000, 57, 659−9)の所見と一致している。構造活性相関研究においても、ヒトテロメラーゼのこれらのANP型阻害剤の幾つかが持つエナンチオ選択性が示されている。一般的に、PMP誘導体の(R)−エナンチオマーは、(S)−エナンチオマーよりも酵素に対する親和性に優れている。
【0127】
プリンHPMP誘導体の二リン酸のIC50概算値を表3に示す。PME系及びPMP系と同じく、アデニン誘導体である(S)−HPMPAppは、グアニン誘導体である(R)−HPMPGppよりも阻害活性が小さい。
【0128】
【表3】

値は4つの独立した測定の平均±SDである; 測定されず。
【0129】
以前に報告した、テロメラーゼ活性に対するddGTPの阻害作用(Pai RB, et al., Cancer Res, 1998, 58, 1909−13を参照)は、最も効率的なANP系化合物であるPMEGpp及び(R)−PMPGppの阻害能に匹敵する。(R)−HPMPGpp、PMEDAPpp、(S)−PMPGpp、(R)−6−cyprPMPDAPpp、PMEO−DAPypp及び(S)−HPMPAppは、中等度の阻害剤として示されており、IC50値は天然基質の濃度に匹敵する。テロメラーゼの活性部位は、他の逆転写酵素の活性部位に関連することが既に示されているが(Nugent CI, Lundbald V., Genes Dev, 1998, 12, 1073−85)、レトロウイルスの逆転写酵素の連鎖停止阻害剤であることが知られているヌクレオチドアナログである(R)−PMPApp及びPMEApp(Holy A., Curr Pharm Des, 2003, 9, 2567−92))は、テロメラーゼ活性を阻害しない。
【0130】
表1、表2及び表3のデータは、試験した全てのグアニン誘導体[PMEGpp、(R)−PMPGpp、(S)−PMPGpp及び(R)−HPMPGpp]によるテロメラーゼ活性の阻害のIC50値が、試験におけるdGTP濃度の1/2〜1/10であることを示している。従って、テロメラーゼに対するこれらのヌクレオチドアナログの親和性は、天然基質であるdGTPの親和性よりもかなり大きい(図4A)。ヒトのテロメア配列と同じく、アデニンANPpp及び/又は2,6−ジアミノプリンANPppは、あまり効率的な阻害剤ではない(図4B)。
【0131】
興味深いことに、試験した系統に由来する2つの化合物は、それ以外のANPpp分子とは極めて大きく異なる:即ち、(S)−PMPApp及び6−MePMEDAPppはテロメラーゼを阻害しないが、125μMのdNTP濃度でテロメラーゼのプロセッシビティーを増大させる(図3)。本発明者等は、(S)−PMPApp及び6−MePMEDAPppが何れも、dGTPと同様に、何らかの方法でテロメラーゼ反応サイクルを妨害している可能性があると推論することができ、これにより、テロメラーゼ複合体の協奏する2つのサブユニット(Wenz C他、EMBO J、2001、20、3526〜34を参照のこと)において、テロメラーゼのRNAテンプレートとDNA鎖の分離が容易になり、反復付加のプロセッシビティーが増大することが推定される(Hammond PW, Cech TR., Biochemistry, 1998, 37, 5167−72;及びHardy CD, et al., J Biol Chem, 2001, 276, 4863−71)。
【0132】
「アンカー部位モデル」によれば、一方のサブユニットのRNAテンプレートは、主に基質結合のために使用されると考えられるのに対し、他方のテンプレートはテロメア反復の付加時に複製されると考えられる(Kelleher C, et al., Trends Biochem Sci, 2002, 27, 572−9)。触媒作用部位とは異なる、いわゆるDNAアンカー部位は、(S)−PMPApp及び/又は6−MePMEDAPppの両方の作用を受けて、それによりテロメア反復の合成時にプロセッシビティーを促進すると考えられる。
【0133】
実施例2
上述の手順に類似する手順を使用して、(S)−PMPAは、10μM及び20μMの濃度で5週間にわたり増殖培地に供給された場合に、CCRF−CEM細胞においてテロメアの長さをin vivoで約1kbにわたり増大させることが見出された(図5を参照)。このデータは、(S)−PMPA二リン酸がテロメラーゼ活性を阻害せず、125μMのdNTPにてin vitroでテロメラーゼのプロセッシビティーを増大させることが示されたという事実と一致している。
【0134】
実施例3
上述の手順に類似する手順を使用して、(S)−PMPAは又、CCRF−CEM Tリンパ芽球様細胞抽出物(ヒト急性リンパ芽球性白血病、ATCC CCL 119)、ヒト子宮頸ガンHeLa S3(ATCC CCL 2.2)細胞抽出物、マウスリンパ性白血病L1210細胞、及びT細胞の自然発生白血病/リンパ腫(同系交配のSprague−Dawleyラット系統;Otova B, et al., Folia Biol (Praha), 2002, 48, 213−26を参照)においてテロメラーゼのプロセッシビティーを向上させることが示された。
【0135】
本明細書に記載される参考及び特許文献は全て、本明細書により、それらの引用箇所において参考として明示的に組み入れられている。上記引用文献の具体的に引用された部分又は頁は、具体的に参考として組み入れられている。本発明は、当業者が以下の特許請求の範囲の主題を策定及び使用できるように十分詳述されている。以下の特許請求の範囲の方法及び組成物が、本発明の適用範囲及び趣旨の範囲内で特定の改変を行えることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】図1は、PME、PMEO、PMP及びHPMPのプリン及びピリミジンの構造を例示する。
【図2】図2は、実施例1で測定されるようなPMEGppによるHL−60テロメラーゼの阻害を例示する。
【図3】図3は、実施例1で測定される6−MePMEDAPpp(A)及び(S)−PMPAppによるテロメラーゼプロセッシビティーの増強を例示する。
【図4】図4(A)は、グアニン誘導体であるPMEGpp(1)、(R)−PMPGpp(2)、(R)−HPMPGpp(3)、(S)−PMPGpp(4)によるHL−60テロメラーゼの阻害を例示し、図4(B)は、アデニン及び2,6−ジアミノプリン誘導体であるPMEDAPpp(5)、(S)−HPMPApp(6)、PMEO−DAPypp(7)及び(R)−6−cyprPMPDAPpp(8)による阻害を例示する。酵素活性は、125μmol/LのdNTPの存在下で、HL−60細胞抽出物において測定した。
【図5】図5は、10μM及び20μMの(S)−PMPAの処理後における細胞株CCRF−CEMにおけるテロメア長さの変化を例示する(実施例2を参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テロメラーゼのプロセッシビティーを向上させる医薬品の製造における、以下の化学式Iの非環式ヌクレオシドプリン:
【化1】

(式中;
XはOH又は−N(Rであり、ここで、
は独立して、
H;
−C15アルキル、C−C15アルケニル、C−C15アリールアルケニル、C−C15アルキニル、C−C15アリールアルキニル、C−C−アルキルアミノ−C−Cアルキル、C−C15アラルキル、C−C15ヘテロアルキル若しくはC−Cヘテロシクロアルキル(但し、NHに隣接していないアルキル成分におけるメチレンは−O−によって置換されている);又は
−C15アルキル、C−C15アルケニル、C−C15アリールアルケニル、C−C15アリールアルキニル、C−C15アルキニル、C−C−アルキルアミノ−C−Cアルキル、C−C15アラルキル、C−C15ヘテロアラルキル、C−Cアリール、C−Cシクロアルキル若しくはC−Cヘテロシクロアルキルであるか;
或いは、必要に応じて、両方のRは一緒になって、1つ若しくは2つのNヘテロ原子と、必要に応じて更なるOヘテロ原子若しくはSヘテロ原子とを含有する飽和若しくは不飽和C−C複素環を形成し;
この場合、前記R基の1つは、ハロ、−CN又は−Nにより置換されてもよく;
WはH又はNHであり;
Yは独立して、OH、−OR、−OCH(R)OC(O)R、モノリン酸、二リン酸、アミノ酸アミダート、ポリペプチドアミダート、−NHR又は−N(Rであり;
は独立して、非置換アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アルキニルアリール若しくはアルケニルアリール;Hが、ハロ、カルボキシ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、N−モリホリノ若しくはアミノによって置換されるアルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アルキニルアリール若しくはアルケニルアリール;又は−CH−成分がNH、S若しくはOによって置換されているアルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アルキニルアリール若しくはアルケニルアリールであり;
Zは、1つ以上のヒドロキシにより必要に応じて置換されるC−Cアルキルであり;及び
はH又はRである);
或いはそのプロドラッグ、二リン酸、薬学的に許容される塩、又はその他のリン置換誘導体の、使用。
【請求項2】
テロメラーゼのプロセッシビティーを向上させるか、又は動物において新生物形成を引き起こす酵素を阻害する医薬品の製造において、前記非環式ヌクレオシドプリンが、以下の化学式Iの化合物:
【化2】

(式中;
nは2又は3であり;
Xは−N(Rであり、ここで、
は独立して、
H;
−C15アルキル、C−C15アルケニル、C−C15アリールアルケニル、C−C15アルキニル、C−C15アリールアルキニル、C−C−アルキルアミノ−C−Cアルキル、C−C15アラルキル、C−C15ヘテロアルキル若しくはC−Cヘテロシクロアルキル(但し、NHに隣接していないアルキル成分におけるメチレンは−O−によって置換されている);又は
−C15アルキル、C−C15アルケニル、C−C15アリールアルケニル、C−C15アリールアルキニル、C−C15アルキニル、C−C−アルキルアミノ−C−Cアルキル、C−C15アラルキル、C−C15ヘテロアラルキル、C−Cアリール、C−Cヘテロシクロアルキル
であるか;
或いは、必要に応じて、両方のRは一緒になって、1つ若しくは2つのNヘテロ原子と、必要に応じて更なるOヘテロ原子若しくはSヘテロ原子とを含有する飽和若しくは不飽和C−C複素環を形成し;
ここで、前記R基の1つは、ハロ、−CN又は−Nにより置換されてもよいが、何れか1つ又は2つのR基はHではなく;
Yは独立して、OH、−OR、―OCH(R)OC(O)R、モノリン酸、二リン酸、アミノ酸アミダート、ポリペプチドアミダート、−NHR又は−N(Rであり;
は独立して、非置換アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アルキニルアリール若しくはアルケニルアリール;Hが、ハロ、カルボキシ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、N−モリホリノ若しくはアミノによって置換されるアルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アルキニルアリール若しくはアルケニルアリール;又は−CH−成分がNH、S若しくはOによって置換されているアルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アルキニルアリール若しくはアルケニルアリールであり;
はH又はRである);
或いはそのプロドラッグ、二リン酸又はその他のリン置換誘導体である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
化学式Iの前記非環式ヌクレオシドプリンが、以下の化学式の化合物:
【化3】

或いはそのプロドラッグ又は薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記非環式ヌクレオシドプリンが、以下の化学式の化合物:
【化4】

又はそのプロドラッグである、請求項2に記載の使用。
【請求項5】
各Rが独立して、H、C−C15アルキル、C−C15アルケニル、C−C15アルキニル又はC−Cシクロアルキルであるか;或いは、必要に応じて、両方のRが一緒になって、1つ又は2つのNヘテロ原子と、必要に応じて更なるOヘテロ原子又はSヘテロ原子とを含有する飽和又は不飽和C−C複素環を形成する、請求項1〜4の何れか1項に記載の使用。
【請求項6】
各Rが独立して、H、メチル又はシクロプロピルである、請求項1〜4の何れか1項に記載の使用。
【請求項7】
各Rが独立してHである、請求項1〜4の何れか1項に記載の使用。
【請求項8】
各Rが独立してメチルである、請求項1〜4の何れか1項に記載の使用。
【請求項9】
一方のRがHであり、他方のRがシクロプロピルである、請求項1〜4の何れか1項に記載の使用。
【請求項10】
WがHである、請求項1又は3に記載の使用。
【請求項11】
WがNHである、請求項1又は3に記載の使用。
【請求項12】
Zが−CH−CH−、−CH−CH(CH)−又は−CH−CH(CHOH)−である、請求項1、3又は10に記載の使用。
【請求項13】
nが2である、請求項2又は4に記載の使用。
【請求項14】
nが3である、請求項2又は4に記載の使用。
【請求項15】
化学式Iの化合物がS−エナンチオマーである、請求項1、3又は10に記載の使用。
【請求項16】
化学式Iの化合物が6−MePMEDAPpp又はそのプロドラッグである、請求項1に記載の使用。
【請求項17】
化学式Iの化合物が(S)−PMPApp又はそのプロドラッグである、請求項1に記載の使用。
【請求項18】
化学式Iの化合物が(S)−PMPA又はそのプロドラッグである、請求項1に記載の使用。
【請求項19】
請求項1〜18の何れか1項に記載される化合物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項20】
組織培養で継続して増殖する細胞の有糸分裂サイクル数を増大させる方法であって、該細胞を請求項1〜18の何れか1項に記載される化合物と接触させることを含む、方法。
【請求項21】
非分裂細胞の有糸細胞分裂を増大させる方法であって、該細胞を請求項1〜18の何れか1項に記載される化合物とin vitro又はin vivoで接触させることを含む、方法。
【請求項22】
継続して増殖する細胞の有糸分裂サイクルの数を増大させる医薬品を調製するための、請求項1〜18の何れか1項に記載される化合物の、使用。
【請求項23】
非分裂細胞の有糸細胞分裂を増大させる医薬品を調製するための、請求項1〜18の何れか1項に記載される化合物の、使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−538771(P2008−538771A)
【公表日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508062(P2008−508062)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【国際出願番号】PCT/CZ2006/000023
【国際公開番号】WO2006/114064
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(505457466)インスティチュート オブ オーガニック ケミストリー アンド バイオケミストリー, アカデミー オブ サイエンシズ オブ ザ チェコ リパブリック (5)
【Fターム(参考)】