説明

テロメラーゼ由来抗原ペプチド

【課題】より一般的範囲の癌に対して有効な抗癌治療またはワクチンが強く求められている。
【手段】癌の治療または予防の方法に用いるためのテロメラーゼタンパク質またはペプチドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、T細胞媒介性免疫を引き出すタンパク質またはペプチド、並びにこのようなタンパク質またはペプチド断片を包含する抗癌治療のための癌ワクチンおよび組成物に関する。本発明は、前記のタンパク質またはペプチドを包含する医薬組成物、ならびに哺乳類における腫瘍細胞を認識および破壊可能なTリンパ球の生成方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、いくつかの突然変異事象を含めた多段階工程により発症する。これらの突然変異は、2つの範疇、即ち癌遺伝子と癌抑制遺伝子に属する遺伝子の発現/機能の変更を引き起こす。癌遺伝子は、点突然変異またはトランスロケーションを介して癌原遺伝子から自然界で生じ、それにより突然変異を保有する形質転換状態の細胞をもたらす。すべての癌遺伝子が、タンパク質をコードし、これを介して機能する。癌原遺伝子は、癌遺伝子になる潜在性を有する細胞の正常遺伝子である。大多数の場合、癌原遺伝子はシグナル伝達経路の構成成分であることが示されている。癌遺伝子は、優性に作用する。一方、癌抑制遺伝子は、劣性に、即ち機能の損失により作用し、機能性タンパク質をコードする両対立遺伝子が非機能性遺伝子産物を生成するよう変えられていた場合に、腫瘍形成に関与する。
【0003】
変更癌遺伝子および癌抑制遺伝子の組合せの協調作用は、細胞形質転換および悪性表現型の発現を引き起こす。しかしながら、このような細胞は、老衰傾向があり、限定寿命を有する。大多数の癌では、腫瘍細胞の不死化は、テロメラーゼと呼ばれる酵素複合体の作動を要する。体細胞では、この酵素の触媒性サブユニットは、常態では発現されない。腫瘍ウイルスによりコードされたタンパク質の作用またはサイレントプロモーター部位の脱メチル化といった付加的事象は、腫瘍細胞中の機能性テロメラーゼ複合体の発現を引き起こし得る。
【0004】
ヒト癌免疫の分野では、過去20年間に、真性癌特異的抗原を特徴付けするための集中的な努力が認められた。特に、ヒト腫瘍抗原に対する抗体の分析に努力が向けられた。このような抗体は、例えば抗癌剤ととともに、診断および治療目的に用いられ得ることを従来技術は示唆する。しかしながら、抗体は、腫瘍細胞の表面に曝露される腫瘍抗原と結合し得るだけである。この理由のために、身体の免疫系に基づいた癌治療法を提示する努力は、期待されたほどうまくは行かなかった。
【0005】
免疫系の基本的特徴は、自己と非自己を区別し得ること、そして普通は自己分子に対して反応しないことである。他の個体から移植された組織または器官の拒絶反応は、移植細胞の表面の外来抗原に対する免疫応答であるということが示されている。免疫応答は、概して、抗体により媒介される液性応答、および細胞性応答から成る。抗体はBリンパ球により生成され、分泌され、そして、典型的には、本来の立体配置での遊離抗原を認識する。したがって、それらは、抗原表面に曝露されるほとんどあらゆる部位を潜在的に認識し得る。抗体に対して、T細胞は、免疫応答の細胞性の武器を媒介するものであり、これは、MHC分子の関係においてのみ、そして適切な抗原プロセッシング後にのみ、抗原を認識する。この抗原プロセッシングは、通常は、タンパク質のタンパク質分解的断片化から成り、MHC分子の溝に適合するペプチドを生じる。これにより、T細胞は細胞内抗原由来のペプチドも認識し得る。
【0006】
T細胞は、腫瘍細胞の表面上のMHC分子の関係において、腫瘍細胞中のどこに由来する異常ペプチドでも認識し得る。T細胞は、その後、異常ペプチドを保有する腫瘍細胞を排除するために活性化され得る。ネズミ腫瘍を包含する実験モデルにおいて、細胞内「自己」タンパク質における点突然変異は、1個のアミノ酸が正常ペプチドと異なるペプチドから成る腫瘍拒絶抗原を生じ得ることが示された。腫瘍細胞の表面の主要組織適合(MHC)分子の関係においてこれらのペプチドを認識するT細胞は、腫瘍細胞を死滅可能であり、したがって宿主から腫瘍を拒絶可能である(Boon et al., 1989, Cell 58, 293-303)。
【0007】
ヒトにおけるMHC分子は、普通はHLA(ヒト白血球関連抗原)分子と呼ばれる。HLA分子は、主にクラスIとクラスIIの2つに分けられる。HLAクラスI分子は、HLA亜遺伝子座A、BおよびCによりコードされ、そして主にCD8+細胞傷害性T細胞を活性化する。一方、HLAクラスII分子は主にCD4+T細胞を活性化し、DR、DPおよびDQ亜遺伝子座によりコードされる。すべての個体は、常態では、6つの異なるHLAクラスI分子を有し、通常、3つの亜群A、BおよびCの各々からの2つの対立遺伝子を有するが、しかし、いくつかの場合には、異なるHLAクラスI分子の数は、同一HLA対立遺伝子が2度出現するために低減される。
【0008】
HLA遺伝子産物は、高多型性である。異なる個体は、他の個体に見出されるものとは異なる別個のHLA分子を発現する。これは、移植においてHLA適合器官ドナーを見つけ出すのが難しいことを説明している。免疫学におけるHLA分子の遺伝的変異の意義は、免疫応答遺伝子としてのそれらの役割により表される。それらのペプチド結合能力により、ある種のHLA分子の存在または非存在が特定のペプチドエピトープに応答する個体の能力を支配する。結果的に、HLA分子は疾病に対する耐性または感受性を確定する。
【0009】
T細胞は、種々のメカニズムにより癌の発生および増殖を阻止し得る。細胞傷害性T細胞は、HLAクラスI拘束CD8+およびHLAクラスII拘束CD4+はともに、適切な腫瘍抗原を提示する腫瘍細胞を直接殺害し得る。常態では、CD4+ヘルパーT細胞は細胞傷害性CD8+T細胞応答に必要であるか、しかしペプチド抗原が適切なAPCにより提示される場合には、細胞傷害性CD8+T細胞は直接活性化されることができ、これが、より迅速でより強力な且つより効率的な応答を生じる。
【0010】
HLAクラスII分子により提示されるペプチドは種々の長さ(12〜25アミノ酸)を有する一方、HLAクラスI分子により提示されるペプチドは、クラスI HLA結合溝に適合するためには、常態では正確に9個のアミノ酸残基長でなければならない。より長いペプチドは、それがクラスIのHLA溝中に提示される前に、APCまたは標的細胞、例えば癌細胞により内部でプロセッシングされ得ない場合には、結果として非結合性となる。この9個のアミノ酸の要件から限定された数の偏差が報告されており、それらの場合、提示ペプチドの長さは8または10アミノ酸残基長であった。
【0011】
MHCがどのようにペプチドと結合するかに付いての概説は、Hans-Georg Rammensee, Thomas Friede and Stefan Stevanovic,(1995, Immunogenetics, 41, 178-228)に、ならびにBarinaga(1992, Science 257, 880-881)に見出され得る。Male等(1987, Advanced Immunology, J.B. Lippincott Company, Philadelphia)は、本発明の技術的背景のより包括的な説明を提供する。
【0012】
我々の国際出願PCT/NO92/00032(WO92/14756として公開)において、それらの癌原遺伝子または癌抑制遺伝子タンパク質と比較した場合に、点突然変異またはトランスロケーションを有する癌遺伝子タンパク質生成物の合成ペプチドおよび断片を我々は記載した。これらのペプチドは、癌細胞またはその他の抗原提示細胞により提示されるようなプロセッシング化癌遺伝子タンパク質断片または癌抑制遺伝子断片を完全に網羅するよう対応するか、またはそれらの断片であり、そして、すべての個体において少なくとも1つの対立遺伝子によりHLA−ペプチド複合体として提示される。これらのペプチドはまた、プロセッシングにより細胞によって生成され、HLA分子中に提示される実際の癌遺伝子タンパク質断片に対する特異的T細胞応答を誘導することも示されている。特に、特定のアミノ酸位置、即ち位置12、13および61に点突然変異を有するp21−rasタンパク質由来のペプチドを、我々は記載した。これらのペプチドは、in vitroでの癌細胞の成育の調節に有効であることが示されている。さらに、本ペプチドは、予防接種または癌療法計画においてこのようなペプチドの投与により突然変異化p21−ras癌遺伝子タンパク質を保有する癌細胞に対してCD4+T細胞免疫を引き出すことが示された。後年、これらのペプチドはまた、前述の投与によって突然変異化p21ras癌遺伝子タンパク質を保有する癌細胞に対してCD8+T細胞免疫も引き出すことを我々は示した(M.K. Gjertsen et al., Int. J cancer, 1997, vol. 72 p.784参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前記のペプチドは、一定数の癌、即ち癌原遺伝子または癌抑制遺伝子における点突然変異またはトランスロケーションを有する癌遺伝子に関するものにおいてのみ有用である。したがって、より一般的範囲の癌に対して有効な抗癌治療またはワクチンが強く求められている。
【0014】
概して、腫瘍は、腫瘍細胞中に見出される遺伝子変化に関して非常に不均一性である。これは、ワクチンがT細胞免疫を引き出し得る標的の数に伴って、癌ワクチンの考え得る治療効果および予防強度の双方が増大することを意味する。多数の標的ワクチンは、原発性腫瘍からの治療逃避変異体による新規の腫瘍形成の危険性も低減する。
【0015】
酵素テロメラーゼは、近年、細胞老化の防止におけるその推定される役割に注目が集まっている。テロメラーゼは、テロメラーゼホロ酵素のサブユニットとして存在するRNA鋳型を用いてテロメアDNA反復配列を合成するRNA依存性DNAポリメラーゼである。本酵素により合成されるDNA反復配列は、すべての染色体を作り上げる線状DNA分子の末端に見出される特殊化DNA−タンパク質構造であるテロメアに組み入れられる。テロメラーゼは、繊毛虫テトラヒメナで最初に同定された(Greider and Blackburn, 1985, Cell 43, 405-413)。ヒトテロメラーゼ触媒サブユニット配列は、近年、Meyerson等(1990, Cell 1197, 785-795)およびNakamura等(1997, Science 277, 955-959)により同定されたそれらはそれぞれ、遺伝子hEST2およびhTRTと命名された。さらに、テロメラーゼ活性に関連する3つのその他のタンパク質、即ち、テトラヒメナのp80およびp95(Collins et al., 1995, Cell 81, 677-686)、ならびにテトラヒメナp80の哺乳類相同体であるTP1/TLP1(Harrington et al., 1997, Science, 275, 973-977; Nakayama et al., 1997, Cell 88, 875-884)も同定された。
【0016】
テロメラーゼは、身体の大部分の正常細胞中では発現されない。ヒトにおけるほとんどの体細胞系統は検出可能なテロメラーゼ活性を示さないが、しかしテロメラーゼ活性は、活発な細胞分裂の部位である生殖細胞系列およびいくつかの幹細胞コンパートメントで検出される(Harley et al., 1994, Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 59, 307-315; Kim et al., 1994, Science 266, 2011-2015; Broccoli et al., 1995, PNAS USA 92, 9082-9086; Counter et al., 1995, Blood 85, 2315-2320; Hiyama et al., 1995, J. Immunol. 155, 3711-3715)。ほとんどの種類のヒト体細胞のテロメアは生物体の加齢に伴って短くなり、これは、これらの細胞中におけるテロメラーゼ活性の欠乏と一致する。培養ヒト細胞もテロメア短縮を示す。テロメア短縮は、形質転換された培養ヒト細胞中では、テロメアが臨界的に短くなるまで継続する。危機点と呼ばれるこの時点で、有意なレベルの細胞死および核型不安定性が観察される。
【0017】
培養中で無期限に成育する能力を獲得した不死細胞は、危機集団から稀な頻度で出現する。これらの不死細胞は高レベルのテロメラーゼ活性および安定テロメアを有する。テロメラーゼ活性はまた、今日までに分析された大多数のヒト腫瘍試料中でも容易に検出され(Kim et al., 1994, Science 266,2011-2015)、これには例えば卵巣癌が含まれる(Counter et al., 1994, PNAS USA 91, 2900-2904)。包括的な概説は、ShayおよびBachetti(1997, Eur. J. Cancer 33, 787-791)により提供される。したがって、テロメラーゼの活性化は、テロメア長により課される連続細胞分裂に対する障壁を克服し得る。正常老化メカニズムを克服する細胞は、おそらくはテロメラーゼの活性により、テロメア長を安定化することによってそうするのかもしれない。
【0018】
ヒト癌発生に関与するウイルス、例えばエプスタイン−バ−ウイルス(EBV、B細胞悪性疾患および鼻咽頭癌に関連)およびヒトパピローマウイルス(HPV16および18、頸部癌に関連)は、ヒト細胞を不死化する能力を有することが、長きに亘って知られている。テロメラーゼ活性の誘導がこの工程における重要な要素であることが、目下実証されている(Klingelhutz et al., 1996, Nature, 380, 79-82)。
【0019】
したがって、テロメラーゼは癌療法の考え得る標的である。そこで、テロメラーゼ阻害剤が、新規の種類の抗癌剤として提案された(Sharma et al.,1997, Ann Oncol 8(11), 1063-1074; Axelrod, 1996, Nature Med 2(2), 158-159; Huminiecki, 1996, Acta Biochim Pol, 43(3), 531-538で検討されている)。ヒトテロメラーゼ触媒サブユニットの同定は、このような薬剤を同定するための生化学的試薬を提供し得る、ということが示唆された(Meyerson et al., 1990, Cell 1197, 785-795)。テロメラーゼはまた、癌の診断または予後のためのマーカーであることも示唆されている(Soria and Rixe, 1997, Bull Cancer 84(10), 963-970; Dahse et al., 1997, Clin Chem 43(5), 708-714)。
【0020】
しかしながら、テロメラーゼがT細胞媒介性療法のための有用な標的として機能し得るということ、あるいはテロメラーゼペプチドまたはタンパク質が癌の治療または予防に用いられ得るということは、我々より以前には示唆されていない。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一局面にしたがって、癌の治療または予防の方法に用いるためのテロメラーゼタンパク質またはペプチドを我々は提供する。
【0022】
本発明の第二の局面にしたがって、本発明の第一の局面で提供されるようなテロメラーゼタンパク質またはペプチドをコード可能な、癌の治療または予防の方法に用いるための核酸が提供される。
【0023】
本発明の第三の局面にしたがって、本発明の第一または第二の局面で提供されたような少なくとも1つのテロメラーゼタンパク質またはペプチドあるいは核酸と、医薬的に許容可能な担体または希釈剤とを包含する医薬組成物を、我々は提供する。
【0024】
本発明の第四の局面によれば、本発明の第三の局面で提供されたような医薬組成物の製造方法であって、本発明の第一または第二の局面で提供されたような少なくとも1つのテロメラーゼタンパク質またはペプチドあるいは核酸を医薬的に許容可能な担体または希釈剤と混合することを包含する方法を、我々は提供する。
【0025】
本発明の第五の局面によれば、本発明の第一の局面で提供されたような少なくとも1つのテロメラーゼタンパク質またはペプチドと、癌遺伝子または突然変異体癌抑制タンパク質またはペプチドに対するT細胞応答を誘導可能な少なくとも1つのペプチドとの組合せを、医薬的に許容可能な担体または希釈剤と一緒に包含する医薬組成物が提供される。
【0026】
本発明の第六の局面によれば、本発明の第五の局面で提供されたような医薬組成物の製造方法であって、本発明の第一の局面で提供された少なくとも1つのテロメラーゼタンパク質またはペプチドを、癌遺伝子または癌抑制タンパク質またはペプチドに対してT細胞応答を誘導可能な少なくとも1つのペプチド、並びに医薬的に許容可能な担体または希釈剤と混合することを包含する方法を、我々はさらに提供する。
【0027】
本発明の第七の局面によれば、癌の治療または予防のための薬剤の調製における、テロメラーゼタンパク質またはペプチド、あるいはテロメラーゼタンパク質またはペプチドをコード可能な核酸の使用を我々は提供する。
【0028】
本発明の第八の局面によれば、哺乳類における腫瘍細胞を認識および破壊可能なTリンパ球の生成方法であって、哺乳類からTリンパ球の試料を採取し、テロメラーゼタンパク質またはペプチド特異的Tリンパ球を生成するのに十分な量でのテロメラーゼタンパク質またはペプチドの存在下でTリンパ球試料を培養することを包含する方法が提供される。
添付の図面を参照しながら、実施例のみにより、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】配列番号9および10のテロメラーゼペプチドで免疫感作されたHLA−A2(A2/Kb)遺伝子導入マウスにおけるテロメラーゼ(hTERT)反応性細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の誘導を説明した図である。
【図2】配列番号2、3、4および7のテロメラーゼ(hTERT)由来ペプチドを用いた結腸癌患者(TT)からの末梢血T細胞のin vitro刺激の結果を示した図である。
【図3】進行性膵臓癌の患者から得られた腫瘍浸潤リンパ球(TILs)の反応性を示した図であり、配列番号2および3のペプチドを認識するT細胞と培地単独の対照とを比較したものである。
【図4】進行性膵臓癌の患者から得られた腫瘍浸潤リンパ球(TILs)の反応性を示した図であり、配列番号2のペプチドを認識するT細胞と培地単独の対象とを比較したものである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、Meyerson等(1997, Cell 90, 785-795)およびNakamura等(1997, Science 277, 955-959)により同定されたような、ヒトテロメラーゼ触媒サブユニットにおける保存アミノ酸モチーフの配列を示す。モチーフT、1、2、3(NakamuraのA)、4(NakamuraのB’)、5(NakamuraのC)、6(NakamuraのD)およびEを示す。ペプチドは、括弧で囲った領域のいずれかに対応するかまたは包含する配列を用いて合成され得る。A2、A1、A3およびB7は、それぞれHLA−A2、HLA−A1、HLA−A3およびHLA−B7で表されると考えられるペプチドを示す。
【0031】
癌の治療または予防に用いるためのテロメラーゼタンパク質またはペプチドを、我々は提供する。好ましい実施態様では、本方法は、テロメラーゼに対するT細胞応答を生じることを包含する。本方法は、テロメラーゼに対するT細胞応答が哺乳類で誘発されるように、癌に罹患しているかまたは罹患すると考えられる哺乳類、好ましくはヒトに、治療的有効量のテロメラーゼタンパク質またはペプチドを投与することを包含し得る。
【0032】
テロメラーゼ特異的T細胞は、テロメラーゼを発現する細胞を標的にするために用いられ得る。したがって、生物の身体中のほとんどの細胞がテロメラーゼを発現しないために、それらは影響を受けない。しかしながら、テロメラーゼを発現する腫瘍細胞は、標的化され、破壊される。テロメラーゼ活性は、これまでは、同定された大多数の癌で検出されているので、我々の材料および方法が広範な用途を有すると、我々は予期する。
【0033】
治療に適している癌としては、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸−直腸癌、肺癌、悪性黒色腫、白血病、リンパ腫、卵巣癌、頸部癌および胆管癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本明細書中で用いる場合、テロメラーゼという用語は、テロメア延長活性を有するリボヌクレオタンパク質酵素を意味する。テロメラーゼタンパク質は、本明細書中で用いる場合、触媒活性を有するあらゆるサブユニットを含めた、テロメラーゼのあらゆるタンパク質構成成分を意味する。
【0035】
好ましくは、テロメラーゼタンパク質は哺乳類テロメラーゼタンパク質であり、最も好ましくはヒトテロメラーゼタンパク質である。ヒトテロメラーゼタンパク質は、好ましくは、Nakamura等(1997, Science 277, 955-959)によりhTRTと、そしてMeyerson等(1990, Cell 1197, 785-795)によりhEST2として同定されたテロメラーゼ触媒サブユニットであって、これらのcDNA配列は、それぞれGenBank寄託番号AF015950およびAFO18167として寄託されている。
【0036】
テロメラーゼペプチドという用語は、本明細書中で用いる場合、テロメラーゼタンパク質のアミノ酸配列中に存在する配列に対応するアミノ酸配列を有するペプチドを意味する。テロメラーゼペプチドは、好ましくは、8〜25アミノ酸を含有する。さらに好ましくは、テロメラーゼペプチドは、9〜25アミノ酸を含有する。例えば、テロメラーゼペプチドは、9、12、13、16または21アミノ酸を含有する。
【0037】
テロメラーゼタンパク質またはペプチドは、テロメラーゼタンパク質に対して(またはテロメラーゼペプチドが由来するテロメラーゼタンパク質に対して)向けられるT細胞応答を発生可能なように選択される。好ましい実施態様では、誘導されたT細胞応答は、細胞傷害性T細胞応答である。細胞傷害性T細胞応答は、CD4+T細胞応答であり得るし、あるいはそれはCD8+T細胞応答であり得る。あらゆる場合に、ペプチドは、腫瘍細胞または抗原提示細胞の表面のMHCクラスIまたはクラスIIタンパク質との複合体として存在可能なものでなければならず、抗原プロセッシングは、必要な場合には、前もって起こる。
【0038】
テロメラーゼペプチドは、テロメラーゼタンパク質の生物学的機能に不可欠なアミノ酸モチーフからの1つ又はそれ以上のアミノ酸残基を含有し得る。言い換えれば、それはこのようなアミノ酸モチーフに少なくとも部分的に重複し得る。このようなアミノ酸モチーフの例は、Meyerson等(1990, Cell 1197, 785-795)により同定されたようなヒトテロメラーゼ触媒サブユニット配列hEST2のモチーフ1〜6であり、言い換えれば、以下のモチーフ:
LLRSFFYVTE、
SRLRFIPK、
LRPIVNMDYVVG、
PELYFVKVDVTGAYDTI、
KSYVQCQGIPQGSILSTLLCSLCY、
LLLRLVDDFLLVTおよび
GCVVNLRKTVVから、あるいはhTRT配列中のNakamura等(1997, Science 277, 955-959)により同定されたようなモチーフT、1、2、A、B’、C、DまたはEのいずれか、即ちモチーフ:
WLMSVYVVELLRSFFYVTETTFQKNRLFFYRKSVWSKLQSIGIRQHLK、
EVRQHREARPALLTSRLRFIPKPDG、
LRPIVNMDYVVGARTFRREKRAERLTSRV、
PPPELYFVKVDVTGAYDTIPQDRLTEVIASIIKP、
KSYVQCQGIPQGSILSTLLCSLCYGDMENKLFAGI、
LLRLVDDFLLVTPHLTH、
AKTFLRTLVRGVPEYGCVVNLRKTVV および HGLFPWCGLLLからのものである。
【0039】
本明細書中に記載した方法および組成物に用いられ得る適切なペプチドは、表1、ならびに添付の配列番号リストに記載されている。
本明細書中に記載した方法および組成物に用いられ得る、テロメラーゼ配列の他の場所に由来する別の組の適切なペプチドは、表2に記載されている。
【0040】
テトラヒメナテロメラーゼ関連タンパク質p80およびp95の哺乳類相同体のアミノ酸配列中に存在するアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するタンパク質およびペプチドも含まれる。例えば、p80相同体TP1およびTLP1(Harrington et al., 1997, Science, 275, 973-977; Nakayama et al., 1997, Cell 88, 875-884)である。
【0041】
N末端またはC末端に数個のアミノ酸置換を保有する大型ペプチド断片も、このようなペプチドは適切な特異性を有するT細胞クローンを生じ得ることが確定されているので、含まれる。
【0042】
本明細書中に記載されるペプチドは、CD4+またはCD8+T細胞免疫を安全に引き出し可能なワクチン中に用いるのに特に適している:
a)ペプチドは合成的に生成され、したがって、形質転換癌遺伝子、あるいはは有害作用を生じ得るその他の部位または物質を含まない。
b)ペプチドは、単独で用いられて細胞免疫を誘導し得る。
c)ペプチドは、他の望ましくない応答の副作用を伴わずに、特定の種類のT細胞応答に対して標的化され得る。
【0043】
本明細書中に記載されるテロメラーゼペプチドまたはタンパク質は、1マイクログラム(1μg)〜1グラム(1g)の範囲の量で、平均的なヒト患者または予防接種される個体に投与されることができる。各投与には、1マイクログラム(1μg)〜1ミリグラム(1mg)の範囲の小用量を用いるのが好ましい。
【0044】
好ましい実施態様では、テロメラーゼタンパク質またはペプチドは、医薬組成物の形態で患者に提供される。テロメラーゼタンパク質またはペプチドは、タンパク質の混合物として、またはタンパク質およびペプチドの混合物として、あるいはペプチドの混合物として投与され得る。医薬組成物は、さらに、当業界で既知の通常添加剤、希釈剤、安定剤等を含み得る。
【0045】
医薬組成物は、1つ又はそれ以上のテロメラーゼタンパク質またはペプチドを包含し得る。タンパク質またはペプチド混合物は、以下のいずれかであり得る:
(a)異なる配列を有する、例えばテロメラーゼタンパク質配列の異なる部分に対応するペプチドの混合物、
(b)重複配列を有するが、しかし異なるHLA対立遺伝子を適合するのに適したペプチドの混合物、
(c)混合物(a)および(b)の両方の混合物、
(d)いくつかの混合物(a)の混合物、
(e)いくつかの混合物(b)の混合物、
(f)いくつかの混合物(a)およびいくつかの混合物(b)の混合物。
【0046】
各々の場合、異なるテロメラーゼタンパク質、例えばテロメラーゼ触媒サブユニットおよびテトラヒメナp80またはp95相同体に対応するタンパク質またはペプチドの混合物も用いられ得る。
【0047】
あるいは、混合物中のテロメラーゼペプチドは、互いに共有結合して大型ポリペプチドまたは環状ポリペプチドさえ形成し得る。医薬組成物は、テロメラーゼタンパク質(単数または複数)またはペプチド(単数または複数)を医薬的に許容可能な担体または希釈剤と混合することにより製造され得る。
【0048】
医薬組成物は、癌遺伝子あるいは突然変異体癌抑制タンパク質またはペプチドに対するT細胞応答を誘導可能な少なくとも1つのペプチドも含み得る。あるいは、テロメラーゼタンパク質またはペプチドは、同時に、またはこれらのペプチドを有する任意の配列で投与され得る。癌遺伝子タンパク質の例は、p21−rasタンパク質H−ras、K−rasおよびN−ras、abl、gip、gsp、retおよびtrkである。好ましくは、癌遺伝子タンパク質またはペプチドは、p21−rasタンパク質またはペプチド、例えば我々の国際出願PCT/NO92/00032(公開番号WO92/14756)に記載されたp21−rasペプチドである。癌抑制タンパク質としては、p53およびRb(網膜芽細胞腫)が挙げられる。このような医薬組成物は、テロメラーゼタンパク質(単数または複数)またはペプチド(単数または複数)を突然変異体癌抑制または癌遺伝子タンパク質またはペプチドと、医薬的に許容可能な担体または希釈剤と一緒に混合することにより製造され得る。
【0049】
本明細書中で用いる場合、突然変異体という用語は、以下の1つ以上を有する野生型配列を示す:点突然変異(トランジションまたはトランスバージョン)、欠失、挿入、重複転位または逆位。医薬組成物という用語は、癌患者の治療に使用可能な組成物を包含するだけでなく、予防と関連して有用な組成物、即ちワクチン組成物も含む。
【0050】
テロメラーゼペプチドまたはタンパク質は、このような治療または予防を必要とするヒト個体に投与される。投与は、望ましいT細胞免疫を確立しおよび/または保持するのに適切であるように、1回または数回おこなわれ得る。当業界で既知のように免疫応答を強化するために、ペプチドは、化合物、例えばサイトカインおよび/または成長因子、即ちインターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−12(IL−12)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)等と一緒に、同時にまたは別々に投与され得る。テロメラーゼタンパク質またはペプチドは、ワクチンまたは治療組成物中に、単独で、またはその他の物質と組合せて、用いられることができる。例えば、単数または複数のペプチドは、高親和性細胞傷害性T細胞応答を誘導することが知られているリポペプチド複合体の形態で供給され得る(Deres, 1989, Nature 342)。
【0051】
医薬組成物の考え得る構成成分として前記されたペプチドおよびタンパク質は、特定のペプチドまたはタンパク質をコードする核酸の形態で提供され得る。したがって、医薬組成物は、ペプチドおよび/またはタンパク質単独で、あるいは核酸と組合せて構成され得るし、あるいはそれは核酸の混合物から構成され得る。
【0052】
テロメラーゼペプチドまたはタンパク質は、DNAワクチンの形態で個体に投与され得る。テロメラーゼペプチドまたはタンパク質をコードするDNAは、クローン化プラスミドDNAまたは合成オリゴヌクレオチドの形態であり得る。DNAは、サイトカイン、例えばIL−2および/またはその他の補助刺激分子と一緒に送達され得る。サイトカインおよび/または補助刺激分子は、それ自体、プラスミドまたはオリゴヌクレオチドDNAの形態で送達され得る。
【0053】
DNAワクチンに対する応答は、免疫刺激DNA配列(ISS)の存在により増大されることが示されている。これらは、次式:5’−プリン−プリン−CG−ピリミジン−ピリミジン−3’によるメチル化CpGを含有する六量体モチーフの形態を取ることができる。したがって、我々のDNAワクチンは、テロメラーゼペプチドまたはタンパク質をコードするDNA中に、サイトカインまたはその他の補助刺激分子をコードするDNA中に、あるいはこの両方に、これらのまたはその他のISSを組み入れ得る。DNA予防接種の利点の概説は、Tighe等(1998, Immunology Today, 19(2), 89-97)により提供される。
【0054】
癌に罹患した患者の治療方法であって、テロメラーゼタンパク質またはペプチドを用いてin vivoまたはex vivoに刺激することによりT細胞応答を引き出すことを包含する方法を、我々は記載する。テロメラーゼタンパク質またはペプチドはまた、癌に対する耐性を得るために、患者の予防接種法にも用いられ得る。予防接種の適切な方法は、テロメラーゼタンパク質またはペプチドを用いてin vivoまたはex vivoで刺激することによりT細胞応答を引き出すことを包含する。テロメラーゼに対するT細胞応答が哺乳類において誘導されるように、癌に罹患しているかまたは罹患していると思われる哺乳類に治療的有効量のテロメラーゼタンパク質またはペプチドを投与することを包含する癌の治療または予防の方法も我々は記載する。
【0055】
本明細書に記載されるペプチドは、慣用的方法により、例えば当業界で既知の種々のペプチド合成法により生成され得る。あるいは、それらは、例えば臭化シアンを用いた切断とその後の精製により生成されるテロメラーゼタンパク質の断片であり得る。酵素的切断も用いられ得る。テロメラーゼタンパク質またはペプチドはまた、組換え発現タンパク質またはペプチドの形態でもあり得る。
【0056】
テロメラーゼペプチドをコードする核酸は、オリゴヌクレオチド合成により製造されることができる。これは、当業界で利用可能な種々の方法のいずれかにより成され得る。テロメラーゼタンパク質をコードする核酸は、慣用的ライブラリースクリーニングを用いてゲノムまたはcDNAライブラリーからクローン化され得る。プローブは、既知のテロメラーゼ遺伝子の如何なる配列の一部にも対応し得る。あるいは、核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いることにより得ることができる。核酸は、好ましくはDNAであり、そしてベクター中で適切にクローン化され得る。サブクローンは、適切な制限酵素を使用することにより生成され得る。クローン化またはサブクローン化DNAは、適切な宿主、例えば細菌宿主中で増殖され得る。あるいは、宿主は、真核生物、例えば酵母菌またはバキュウロウイルスであることができる。テロメラーゼタンパク質またはペプチドは、適切な宿主中での発現により産生され得る。この場合、DNAは、発現ベクター中でクローン化される。種々の市販の発現キットが利用可能である。Maniatis等(1991, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York, Cold Spring Harbor Laboratory Press)ならびにHarlowとLane(1988, Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York, Cold Spring Harbor Laboratory Press)が記載した方法は、これらの目的のために用いられ得る。
【0057】
実験方法
ペプチドは、連続流動固相ペプチド合成を用いることにより合成した。適当な側鎖保護を有するN−a−Fmoc−アミノ酸を用いた。ペンタフルオロフェニルエステルとしてカップリングするために、あるいはカップリングの前にTBTUまたはジイソプロピルカルボジイミド活性化を用いることにより、Fmoc−アミノ酸を活性化した。各カップリング後のFmocの選択的除去のために、DMF中の20%ピペリジンを用いた。適切な掃去剤を含有する95%TFAにより、樹脂からの切断および側鎖保護の最終除去を実施した。ペプチドを精製し、逆相(C18)HPLCにより分析した。電子噴霧質量分光計(Finnigan mat SSQ710)を用いて、ペプチドの同一性を確認した。
【0058】
T細胞免疫に基づいた癌ワクチンおよび特異的癌療法が有効であるためには、以下の3つの条件が満たされねばならない:
(a)ペプチドは少なくとも8アミノ酸長であり、ならびにテロメラーゼタンパク質の断片であり、そして
(b)ペプチドはその全長で、または抗原提示細胞によるプロセッシング後に、T細胞応答を誘導可能である。
【0059】
以下の実験方法を用いて、これらの3つの条件が特定のペプチドに関して満たされているか否かを確定し得る。第一に、特定のペプチドがin vitroでT細胞免疫応答を生じるか否かが確定されるべきである。合成ペプチドが、テロメラーゼ保有癌細胞または天然テロメラーゼをプロセッシングした抗原提示細胞中に生じているペプチド断片に対応するペプチド断片に対応するか、あるいはプロセッシング後にそれを生成可能か否かを確定する必要もある。テロメラーゼペプチド予防接種によりin vivoに誘導されたT細胞の特異性も確定され得る。
【0060】
テロメラーゼ発現腫瘍細胞株が、テロメラーゼペプチド予防接種後の癌患者からの末梢血から得られるT細胞クローンにより死滅されることができるか否かを確定することが必要である。T細胞クローンは、テロメラーゼペプチド予防接種後の癌患者からの末梢血単核細胞(PBMC)中に存在するT細胞芽細胞のクローニング後に得られる。ペプチド予防接種プロトコールは、GM−CSFまたは別の一般的に用いられるアジュバントとともに皮内にペプチドを数回in vivo注入することを含む。T細胞のクローニングは、テラサキプレートに5個の芽細胞/ウエルで応答T細胞芽細胞を平板培養することにより実施する。各ウエルは、2×104の自系の放射線照射(30Gy)PBMCを支持細胞として含む。細胞を、総容量20mL中、25mMでの候補テロメラーゼペプチドおよび5U/mlの組換え体インターロイキン−2(rIL−2)(Amersham, Aylesbury, UK)とともに増殖させる。9日後、T細胞クローンを、1mg/mlのフィトヘマグルチニン(PHA、Wellcome, Dartford, UK)、5U/mlのrIL−2および支持細胞としての異系放射線照射(30Gy)PBMC(2×105)/ウエルを含む平底96ウエルプレート(Costar, Cambridge, MA)上に移す。成育中のクローンをさらに、PHA/rIL−2および支持細胞としての1×106異系放射線照射PBMCを含む24ウエルプレート中で増やして、4〜7日後に、ペプチド特異性に関してスクリーニングする。
【0061】
さらなる特徴付けのために、T細胞クローンを選択する。T細胞クローンの細胞表面表現型を確定して、T細胞クローンがCD4+であるかCD8+であるかを確証する。T細胞クローンを自系腫瘍細胞標的とともに、異なるエフェクター対標的比でインキュベートして、腫瘍細胞溶解が起こったが否かを確定する。溶解は、T細胞が腫瘍由来抗原、例えばテロメラーゼタンパク質に対して向けられた反応性を有することを示す。
【0062】
認識された抗原がテロメラーゼタンパク質と関連することを立証するために、そしてT細胞クローンに対して推定テロメラーゼペプチドを提示するHLAクラスIまたはクラスII分子を同定するために、患者のものと共通する1つ又はそれ以上のHLAクラスIまたはII分子を保有する異なるテロメラーゼ発現腫瘍細胞株を、細胞傷害性検定における標的細胞として用いる。標的細胞を51Crまたは3H−チミジン(9.25×104Bq/mL)で一夜標識し、一回洗浄して、96ウエルプレート中で5000細胞/ウエルで平板培養する。異なるエフェクター対標的比でT細胞を付加し、プレートを37℃で4時間インキュベートし、それから収穫し、その後、液体シンチレーションカウンター(Packard Topcount)で計数する。例えば、膀胱癌細胞株T24(12Val+、HLA−Al+、B35+)、黒色腫細胞株FMEX(12Val+、HLA−A2+、B35+)および結腸癌細胞株SW480(12Val+、HLA−A2+、B8+)あるいは任意のその他のテロメラーゼ陽性腫瘍細胞株を標的として用いてもよい。テロメラーゼタンパク質を発現しない適切な細胞株は対照として用いられ得るし、溶解されるべきでない。特定の細胞株の溶解は、試験されるT細胞クローンが、その細胞株により発現されるHLAクラスIまたはクラスIIサブタイプの関係において内因性プロセッシング化テロメラーゼエピトープを認識することを示す。
【0063】
T細胞クローンのHLAクラスIまたはクラスII拘束性は、ブロッキング実験により確定し得る。HLAクラスI抗原に対するモノクローナル抗体、例えば膵臓HLAクラスIモノクローナル抗体W6/32、あるいはクラスII抗原に対するモノクローナル抗体、例えばHLAクラスII DR、DQおよびDP抗原に対するモノクローナル抗体(B8/11、SPV−L3およびB7/21)が用いられ得る。HLAクラスIおよびクラスII分子に対して向けられたモノクローナル抗体を最終濃度10mg/mlで用いて、自系腫瘍細胞株に対するT細胞クローン活性を評価する。アッセイを、前記と同様に96ウエルプレート中3連で準備し、標的細胞を37℃で30分間予備インキュベート後に、T細胞を付加する。
【0064】
ペプチドパルス実験を用いて、T細胞クローンの微細な特異性を確定し得る。T細胞クローンにより実際に認識されているテロメラーゼペプチドを同定するために、九量体ペプチドのパネルを試験する。51Crまたは3H−チミジン標識化緩酸溶離自系線維芽細胞を、96ウエルプレート中で2500細胞/ウエルで平板培養して、1mMの濃度のペプチドで、b2−ミクログロブリン(2.5mg/mL)と一緒に37℃で5%CO2インキュベーター中でパルス処理した後、T細胞を付加する。アッセイは、96ウエルプレート中3連で準備し、5:1のエフェクター対標的比で4時間インキュベートする。対照としては、単独で培養、ペプチドの非存在下でAPCと共に培養、または無関係な黒色腫関連ペプチドMART−1/メラン−Aペプチドと共に培養したT細胞クローンを挙げることができる。
【0065】
T細胞クローンの微細特異性を確定するための代替的プロトコールも用い得る。この代替的プロトコールでは、TAP欠損T2細胞株を抗原提示細胞として用いる。この細胞株は、少量のHLA−A2抗原のみを発現するが、しかし細胞表面でのHLAクラスI抗原のレベル増大を、b2−ミクログロブリンの付加により誘導することができる。3H−標識標的細胞を1mMの濃度で、異なる被験ペプチドおよび対照ペプチドと共に、b2−ミクログロブリン(2.5mg/mL)と一緒に37℃で1時間、インキュベートする。ペプチドパルス化後、標的細胞を広範に洗浄して、計数し、96ウエルプレート中、2500細胞/ウエルで平板培養した後にT細胞を付加する。プレートを5%CO2中で37℃で4時間インキュベート後、収穫する。対照としては、単独で培養、またはペプチドの非存在下で標的細胞と共に培養したT細胞クローンが挙げられる。アッセイは、20:1のエフェクター対標的比で、96ウエルプレート中3連で準備した。
【0066】
用量−反応実験を用いて、前記で同定された特定のペプチドに対するT細胞クローンの感受性も確定し得る。ペプチド感受性化線維芽細胞を標的細胞として使用することができる。異なる濃度でペプチドを付加後にT細胞を付加する以外は微細特異性確定のための前記のように特定のペプチドを用いて、標的細胞をパルス処理する。対照としては、標的細胞単独、または無関係な黒色腫関連ペプチドメラン−A/Mart−1を用いてパルス化された標的細胞が挙げられる。
【0067】
生物学的実験/図面の説明
図1
図面1(図1)は、配列番号9および10のテロメラーゼペプチドで免疫感作されたHLA−A2(A2/Kb)遺伝子導入マウスにおけるテロメラーゼ(hTERT)反応性細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の誘導を説明する。標準HLA−A2拘束インフルエンザ(58−66)ペプチドを対照として用いた。各々マウス5匹の3群に、107の放射線照射ペプチドパルス化(100μg/ml)同系脾臓細胞の皮下注入を週2回投与した。2回目の注射の1週間後に、マウスを屠殺し、それらの脾臓を採取した。標準技法により脾臓細胞を調製し、抗原提示細胞としてのペプチドパルス化(10μg/ml)放射線照射自系脾臓細胞との同時培養により、プライム化した動物からの細胞をin vitroで5日間再刺激後、51Cr放出アッセイにおいて、HLA−H2(A2/Kb)でトランスフェクト化したhTERT発現標的細胞(Jurkat)に対する細胞傷害性を検査した。
【0068】
図1の左側カラムは、異なるエフェクター対標的比で、配列番号9のペプチドを用いてマウスをプライム化した後に得られたT細胞による対照ペプチド(インフルエンザ58−66)でパルス化したHLA−A2トランスフェクト化Jurkat細胞の死滅を示す。バックグラウンドよりも高い特異的細胞傷害性を、すべてのエフェクター対標的比で観察した。中央のカラムは、配列番号10のペプチドでプライム化したマウスから得られたT細胞と同様のデータを示している。Jurkat細胞の有意の死滅は、テロメラーゼペプチドパルス化マウスからの脾臓細胞がエフェクタ細胞として用いられた場合に、したがって、インフルエンザペプチドプライム化マウスからの脾臓細胞をエフェクターとして用いた場合に観察されただけであり、標的細胞が無関係ペプチド(メラノコルチン受容体1ペプチド、MC1R244)でパルス化された場合には、図1の右側カラムから明らかなように、Jurkat細胞のバックグラウンドレベルの死滅が観察されただけであった。これらの結果は、配列番号9および10のペプチドがin vivoで免疫原性であり、免疫感作時には、共通ヒトMHC分子HLA−A2を保有する温血動物中で免疫応答を引き出し得る、ということを実証している。この知見は、配列番号9および10のペプチドが、HLA−A2およびこれらのペプチドと結合可能なその他のHLAクラスI分子を保有するヒトにおいて癌ワクチンとしても用いられ得る、ということを示す。さらに、これらの結果は、T細胞白血病Jurkat細胞株により発現されるhTERTが本細胞株のタンパク質分解機構によりプロセッシングされて配列番号9および10のペプチドと同一または同様のペプチド断片を生じ得ることを実証する。これらの観察をまとめると、癌患者またはこれらのペプチドにより癌を発症する危険性のある患者の予防接種後に得られた免疫応答は、テロメラーゼのhTERTサブユニットを発現する腫瘍細胞の有効な死滅をもたらし得る、ということを示す。
【0069】
図1は、図に示したように免疫感作されたマウスから得られたエフェクター細胞を用いたHLA−A2トランスフェクト化Jurkat細胞の細胞傷害性を示す。標的細胞を51Cr(0.1μCi/100μl細胞懸濁液)で、37℃で1時間標識し、2回洗浄して、ペプチド(1μg/ml)を用いて37℃で1時間パルス化した後、洗浄した。ウエル当たり2000標識化ペプチドパルス化標的細胞を、96ウエルv底マイクロタイタープレート中に播き、エフェクター細胞(2.5×104〜2×105)をウエルに付加した。培養物を37℃で4時間インキュベートして、上清を収穫し、ガンマカウンターで検査した。図1の結果は、次式により算出された特異的細胞傷害性として表される:
(実験的放出値cpm−自発的放出値cpm)/(総cpm−自発的放出値cpm)×100
【0070】
図2
図面2(図2)は、配列番号2、3、4および7のテロメラーゼ(hTERT)由来ペプチドを用いた結腸癌患者(TT)からの末梢血T細胞のin vitro刺激の結果を示す。in vitro培養を以下のように実施した:3連の105単核細胞を、5%CO2中の加湿インキュベーター中での15%プール化加熱不活性化ヒト血清を補足したX−VIVO 10培地中で6日間、インキュベートした。ペプチドは、培地中に30μg/mlの最終濃度で、培養全体に存在していた。ペプチドを含有しない培養物を対照として用いた。配列番号4のペプチドでT細胞を刺激した場合に、バックグラウンド値よりも高い増殖応答が観察された。これらの結果は、癌患者からの血液がテロメラーゼ(hTERT)由来ペプチドに特異的な循環系T細胞を含有するということを実証する。これらの結果は、テロメラーゼ(hTERT)の酵素サブユニットがヒトにおいては免疫原であり、患者に成育中の腫瘍によって過剰発現されると、テロメラーゼ特異的T細胞応答を自発的に生じ得る、ということを実証する。さらに、この患者におけるテロメラーゼ特異的応答の一構成成分は、本明細書中に記載した配列番号4のペプチドに対して向けられる。この知見は、配列番号4のペプチドがヒトにおける癌ワクチンとしても用いられ得る、ということを示す。本図面は、慣用的T細胞増殖アッセイの結果を説明するが、この場合、末梢血単核細胞(105)を、指示されたようなペプチドと共に7日間、3連で培養後、収穫した。培養物の増殖能力を測定するために、3H−チミジン(3.7×104Bq/ウエル)を培養物に一夜付加した後、収穫した。値は、3回の平均計数/分(cpm)として示されている。
【0071】
図3および4
図面3および4(図3および図4)は、進行性膵臓癌の患者から得られた腫瘍浸潤リンパ球(TILs)の反応性を示す。T細胞を、腫瘍生検により採取し、in vitroで順次増殖させて、T細胞株を樹立した。T細胞株は、CD3+、CD4+およびCD8−であり、テロメラーゼペプチドとの応答において特異的に増殖した。図3の結果は、培地単独の対照と比較した場合の、配列番号2および3のペプチドを認識するT細胞を示す。図4の結果は、配列番号2のペプチドを認識するT細胞を示す。組換え体ヒトインターロイキン2(rIL−2)との同時培養によりTILを増やし、14日後に、配列番号2、3、4および7のペプチドを用いて、標準増殖アッセイで試験した。
【0072】
表1
LMSVYVVEL FLHWLMSVYVVELLRSFFYVTE
ELLRSFFYV EARPALLTSRLRFIPK
YVVELLRSF DGLRPIVNMDYVVGAR
VVELLRSFF GVPEYGCVVNLRKVVNF
SVYVVELLR
VELLRSFFY
YVTETTFQK
RLFFYRKSV
SIGIRQHLK
RPALLTSRL
ALLTSRLRF
LLTSRLRFI
RPIVNMDYV
LRPIVNMDY
YVVGARTFR
VVGARTFRR
GARTFRREK
ARTFRREKP
PPELYFVKV
ELYFVKVDV
FVKVDVTGA
IPQDRLTEV
DRLTEVIAS
RLTEVIASI
IPQGSILSTL
ILSTLLCSL
LLRLVDDFL
RLVDDFLLV
VPEYGCVVN
VPEYGCVVNL
TLVRGVPEY
FLRTLVRGV
GVPEYGCVV
VVNLRKTVV
GLFPWCGLL
【0073】
表2
YAETKHFLY
ISDTASLCY
DTDPRRLVQ
AQDPPPELY
LTDLQPYMR
QSDYSSYAR

ILAKFLHWL
ELLRSFFYV
LLARCALFV
WLCHQAFLL
RLVDDFLLV
RLFFYRKSV
LQLPFHQQV
RLGPQGWRL
SLQELTWKM
NVLAFGFAL
VLLKTHCPL
FLLVTPHLT
TLTDLQPYM
RLTEVIASI
FLDLQVNSL
SLNEASSGL
ILSTLLCSL
LLGASVLGL
VLAFGFALL
LQPYMRQFV
LMSVYVVEL
RLPQRYWQM
RQHSSPWQV
YLPNTVTDA
NMRRKLFGV
RLTSRVKAL
LLQAYRFHA
LLDTRTLEV
YMRQFVAHL
LLTSRLRFI
CLVCVPWDA
LLSSLRPSL
FMCHHAVRI
LQVNSLQTV
LVAQCLVCV
CLKELVARV
FLRNTKKFI
ALPSDFKTI
VLVHLLARC
VQSDYSSYA
SVWSKLQSI
KLPGTTLTA
QLSRKLPGT
ELYFVKVDV
GLLLDTRTL
WMPGTPRRL
SLTGARRLV
VVIEQSSSL
LPSEAVQWL
QAYRFHACV

GLFDVFLRF
KLFGVLRLK
RLREEILAK
TLVRGVPEY
GLPAPGARR
GLFPWCGLL
KLTRHRVTY
VLPLATFVR
ELVARVLQR

DPRRLVQLL
FVRACLRRL
SVREAGVPL
AGRNMRRKL
LARCALFVL
RPAEEATSL
LPSDFKTIL
LPSEAVQWL
LPGTTLTAL
RPSFLLSSL
LPNTVTDAL
RPALLTSRL
RCRAVRSLL
MPRAPRCRA

GIRRDGLLL
VLRLKCHSL
YMRQFVAHL
SLRTAQTQL
QMRPLFLEL
LLRLVDDFL
FVQMPAHGL
HASGPRRRL
VVIEQSSSL
RVISDTASL
CVPAAEHRL
RVKALFSVL
NVLAFGFAL
LVARVLQRL
FAGIRRDGL
HAQCPYGVL
RAQDPPPEL
AYRFHACVL
HAKLSLQEL
GAKGAAGPL
TASLCYSIL
APRCRAVRS
GARRLVETI
AQCPYGVLL
HAKTFLRTL
EATSLEGAL
KAKNAGMSL
AQTQLSRKL
AGIRRDGLL

VLRLKCHSL
ILKAKNAGM
DPRRLVQLL
GAKGAAGPL
FAGIRRDGL
GARRRGGSA
HAKTFLRTL
HAKLSLQEL
LARCALFVL
EHRLREEIL
NMRRKLFGV

CAREKPQGS
LTRHRVTYV

RRFLRNTKK
RRDGLLLRL
RREKRAERL
RRLVETIFL
LRFMCHHAV
RRYAVVQKA
KRAERLTSR
RRKLFGVLR
RRRGGSASR
RRLPRLPQR
RRLGPQGWR
LRGSGAWGL
HREARPALL
VRRYAVVQK
ARTSIRASL
HRVTYVPLL
LRSHYREVL
MRPLFLELL
HRAWRTFVL
MRRKLFGVL
LRLVDDFLL
LRRVGDDVL
YRKSVWSKL
QRLCERGAK
FRALVAQCL
SRKLPGTTL
LRRLVPPGL
RRSPGVGCV
RRVGDDVLV
VRGCAWLRR
VRSLLRSHY
ARTFRREKR
SRSLPLPKR
IRASLTFNR
LREEILAKF
IRRDGLLLR
QRGDPAAFR
LRPIVNMDY

ARRLVETIF
ARPALLTSR
LRPSLTGAR
LRLKCHSLF
FRREKRAER
ARGGPPEAF
CRAVRSLLR
GRTRGPSDR
RRRLGCERA
LRELSEAEV
ARCALFVLV

RPAEEATSL
DPRRLVQLL
RPSFLLSSL
LPSEAVQWL
RPALLTSRL
LPSDFKTIL
RPPPAAPSF
LPRLPQRYW
LPNTVTDAL
LPGTTLTAL
LAKFLHWLM
KAKNAGMSL
GSRHNERRF
KALFSVLNY
SPLRDAVVI
RAQDPPPEL
MPAHGLFPW

AEVRQHREA
REAGVPLGL
EEATSLEGA
LEAAANPAL
QETSPLRDA
REVLPLATF
KEQLRPSFL
REKPQGSVA
LEVQSDYSS
REARPALLT
EEDTDPRRL
REEILAKFL
CERGAKNVL
DDVLVHLLA
GDMENKLFA
YERARRPGL

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の治療または予防方法に用いるためのテロメラーゼタンパク質またはペプチド。
【請求項2】
本明細書に明記されるような使用のための請求項1記載のテロメラーゼタンパク質またはペプチドであって、テロメラーゼタンパク質に対して向けられたT細胞応答を発生可能なテロメラーゼタンパク質またはペプチド。
【請求項3】
前記テロメラーゼに対するT細胞応答が哺乳類において誘導されるように、前記方法は、癌に罹患しているかまたは罹患していると思われる哺乳類に治療的有効量のテロメラーゼタンパク質またはペプチドを投与することを包含する、本明細書に明記されるような使用のための請求項1または2記載のテロメラーゼタンパク質またはペプチド。
【請求項4】
誘導された前記T細胞応答は細胞傷害性T細胞応答である、本明細書に明記されるような使用のための請求項2または3記載のテロメラーゼタンパク質またはペプチド。
【請求項5】
ヒトテロメラーゼタンパク質またはペプチドである、本明細書に明記されるような使用のための前記請求項のいずれかに記載のテロメラーゼタンパク質またはペプチド。
【請求項6】
8〜25アミノ酸の長さを有する、本明細書に明記されるような使用のための前記請求項のいずれかに記載のテロメラーゼペプチド。
【請求項7】
9、12、13、16または21アミノ酸の長さを有する、本明細書に明記されるような使用のための請求項6記載のテロメラーゼペプチド。
【請求項8】
少なくとも9アミノ酸の長さを有する、本明細書に明記されるような使用のための請求項1〜5のいずれかに記載のテロメラーゼペプチド。
【請求項9】
以下の配列:LLRSFFYVTE, SRLRFIPK, LRPIVNMDYVVG, PELYFVKVDVTGAYDTI, KSYVQCQGIPQGSILSTLLCSLCY, LLLRLVDDFLLVT, GCVVNLRKTVV, WLMSVYVVELLRSFFYVTETTFQKNRLFFYRKSVWSKLQSIGIRQHLK, EVRQHREARPALLTSRLRFIPKPDG, LRPIVNMDYVVGARTFRREKRAERLTSRV, PPPELYFVKVDVTGAYDTIPQDRLTEVIASIIKP, KSYVQCQGIPQGSILSTLLCSLCYGDMENKLFAGI, LLRLVDDFLLVTPHLTH, AKTFLRTLVRGVPEYGCVVNLRKTVV及びHGLFPWCGLLLのいずれかから選択された配列に部分的または全体的に重複するアミノ酸配列を有する、本明細書に明記されるような使用のための前記請求項のいずれかに記載のテロメラーゼペプチド。
【請求項10】
テロメラーゼペプチドが以下のアミノ酸配列:LMSVYVVEL, ELLRSFFYV, YVVELLRSF, VVELLRSFF, SVYVVELLR, VELLRSFFY, YVTETTFQK, RLFFYRKSV, SIGIRQHLK, RPALLTSRL, ALLTSRLRF, LLTSRLRFI, RPIVNMDYV, LRPIVNMDY, YVVGARTFR, VVGARTFRR, GARTFRREK, ARTFRREKP, PPELYFVKV, ELYFVKVDV, FVKVDVTGA, IPQDRLTEV, DRLTEVIAS, RLTEVIASI, IPQGSILSTL, ILSTLLCSL, LLRLVDDFL, RLVDDFLLV, VPEYGCVVN, VPEYGCVVNL, TLVRGVPEY, FLRTLVRGV, GVPEYGCVV, VVNLRKTVV 又は GLFPWCGLLを有する、本明細書に明記されるような使用のための前記請求項のいずれかに記載のテロメラーゼペプチド。
【請求項11】
テロメラーゼペプチドが以下のアミノ酸配列:FLHWLMSVYVVELLRSFFYVTE, EARPALLTSRLRFIPK, DGLRPIVNMDYVVGAR又はGVPEYGCVVNLRKVVNF、即ちそれぞれ配列番号1、2、3又は4を有する、本明細書に明記されるような使用のための前記請求項のいずれかに記載のテロメラーゼペプチド。
【請求項12】
テロメラーゼペプチドが以下のアミノ酸配列:YAETKHFLY, ISDTASLCY, DTDPRRLVQ, AQDPPPELY, LTDLQPYMR, QSDYSSYAR, ILAKFLHWL, ELLRSFFYV, LLARCALFV, WLCHQAFLL, RLVDDFLLV, RLFFYRKSV, LQLPFHQQV, RLGPQGWRL, SLQELTWKM, NVLAFGFAL, VLLKTHCPL, FLLVTPHLT, TLTDLQPYM, RLTEVIASI, FLDLQVNSL, SLNEASSGL, ILSTLLCSL, LLGASVLGL, VLAFGFALL, LQPYMRQFV, LMSVYVVEL, RLPQRYWQM, RQHSSPWQV, YLPNTVTDA, NMRRKLFGV, RLTSRVKAL, LLQAYRFHA, LLDTRTLEV, YMRQFVAHL, LLTSRLRFI, CLVCVPWDA, LLSSLRPSL, FMCHHAVRI, LQVNSLQTV, LVAQCLVCV, CLKELVARV, FLRNTKKFI, ALPSDFKTI, VLVHLLARC, VQSDYSSYA, SVWSKLQSI, KLPGTTLTA, QLSRKLPGT, ELYFVKVDV, GLLLDTRTL, WMPGTPRRL, SLTGARRLV, VVIEQSSSL, LPSEAVQWL, QAYRFHACV, GLFDVFLRF, KLFGVLRLK, RLREEILAK, TLVRGVPEY, GLPAPGARR, GLFPWCGLL, KLTRHRVTY, VLPLATFVR, ELVARVLQR, DPRRLVQLL, FVRACLRRL, SVREAGVPL, AGRNMRRKL, LARCALFVL, RPAEEATSL, LPSDFKTIL, LPSEAVQWL, LPGTTLTAL, RPSFLLSSL, LPNTVTDAL, RPALLTSRL, RCRAVRSLL, MPRAPRCRA, GIRRDGLLL, VLRLKCHSL, YMRQFVAHL, SLRTAQTQL, QMRPLFLEL, LLRLVDDFL, FVQMPAHGL, HASGPRRRL, VVIEQSSSL, RVISDTASL, CVPAAEHRL, RVKALFSVL, NVLAFGFAL, LVARVLQRL, FAGIRRDGL, HAQCPYGVL, RAQDPPPEL, AYRFHACVL, HAKLSLQEL, GAKGAAGPL, TASLCYSIL, APRCRAVRS, GARRLVETI, AQCPYGVLL, HAKTFLRTL, EATSLEGAL, KAKNAGMSL, AQTQLSRKL, AGIRRDGLL, VLRLKCHSL, ILKAKNAGM, DPRRLVQLL, GAKGAAGPL, FAGIRRDGL, GARRRGGSA, HAKTFLRTL, HAKLSLQEL, LARCALFVL, EHRLREEIL, NMRRKLFGV, CAREKPQGS, LTRHRVTYV, RRFLRNTKK, RRDGLLLRL, RREKRAERL, RRLVETIFL, LRFMCHHAV, RRYAVVQKA, KRAERLTSR, RRKLFGVLR, RRRGGSASR, RRLPRLPQR, RRLGPQGWR, LRGSGAWGL, HREARPALL, VRRYAVVQK, ARTSIRASL, HRVTYVPLL, LRSHYREVL, MRPLFLELL, HRAWRTFVL, MRRKLFGVL, LRLVDDFLL, LRRVGDDVL, YRKSVWSKL, QRLCERGAK, FRALVAQCL, SRKLPGTTL, LRRLVPPGL, RRSPGVGCV, RRVGDDVLV, VRGCAWLRR, VRSLLRSHY, ARTFRREKR, SRSLPLPKR, IRASLTFNR, LREEILAKF, IRRDGLLLR, QRGDPAAFR, LRPIVNMDY, ARRLVETIF, ARPALLTSR, LRPSLTGAR, LRLKCHSLF, FRREKRAER, ARGGPPEAF, CRAVRSLLR, GRTRGPSDR, RRRLGCERA, LRELSEAEV, ARCALFVLV, RPAEEATSL, DPRRLVQLL, RPSFLLSSL, LPSEAVQWL, RPALLTSRL, LPSDFKTIL, RPPPAAPSF, LPRLPQRYW, LPNTVTDAL, LPGTTLTAL, LAKFLHWLM, KAKNAGMSL, GSRHNERRF, KALFSVLNY, SPLRDAVVI, RAQDPPPEL, MPAHGLFPW, AEVRQHREA, REAGVPLGL, EEATSLEGA, LEAAANPAL, QETSPLRDA, REVLPLATF, KEQLRPSFL, REKPQGSVA, LEVQSDYSS, REARPALLT, EEDTDPRRL, REEILAKFL, CERGAKNVL, DDVLVHLLA, GDMENKLFA 又は YERARRPGLを有する、本明細書に明記されるような使用のための前記請求項のいずれかに記載のテロメラーゼペプチド。
【請求項13】
癌の治療または予防の方法に用いるための核酸であって、前記請求項のいずれかに記載のテロメラーゼタンパク質またはペプチドをコード可能な核酸。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれかに記載の少なくとも1つのテロメラーゼタンパク質またはペプチド、あるいは請求項13記載の少なくとも1つの核酸を、医薬的に許容可能な担体または希釈剤と一緒に包含する医薬組成物。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれかに記載の少なくとも1つのテロメラーゼタンパク質またはペプチド、および癌遺伝子または突然変異体癌抑制タンパク質またはペプチドに対するT細胞応答を誘導可能な少なくとも1つのペプチドの組合せを、医薬的に許容可能な担体または希釈剤と一緒に包含する医薬組成物。
【請求項16】
以下の癌:乳癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸−直腸癌、肺癌、悪性黒色腫、白血病、リンパ腫、卵巣癌、頸部癌および胆管癌のいずれかの治療または予防に用いるための請求項14または15記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれかに記載の少なくとも1つのテロメラーゼタンパク質またはペプチド、あるいは請求項13記載の少なくとも1つの核酸を医薬的に許容可能な担体または希釈剤と混合することを包含する、請求項14記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれかに記載の少なくとも1つのテロメラーゼタンパク質またはペプチドを、癌遺伝子または突然変異体癌抑制タンパク質またはペプチドに対してT細胞応答を誘導可能な少なくとも1つのペプチド、および医薬的に許容可能な担体または希釈剤と混合することを包含する、請求項15記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項19】
前記癌遺伝子タンパク質またはペプチドは突然変異体p21−rasタンパク質またはペプチドである、請求項15記載の医薬組成物または請求項18記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項20】
前記癌抑制タンパク質またはペプチドは網膜芽細胞腫またはp53タンパク質またはペプチドである、請求項15記載の医薬組成物または請求項18記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項21】
癌の治療または予防のための薬剤の調製における、テロメラーゼタンパク質またはペプチド、あるいはテロメラーゼタンパク質またはペプチドをコード可能な核酸の使用。
【請求項22】
哺乳類における腫瘍を認識および破壊可能なTリンパ球の生成方法であって、哺乳類からTリンパ球の試料を採取し、テロメラーゼTリンパ球を生成するのに十分な量でのテロメラーゼタンパク質またはペプチドの存在下でTリンパ球試料を培養することを包含する方法。
【請求項23】
実質的に図面を参照しながら説明されるような、そして図面に示されるような癌の治療または予防の方法に用いるためのテロメラーゼタンパク質またはペプチド。
【請求項24】
実質的に図面を参照しながら説明されるような、そして図面に示されるような、癌の治療または予防のための薬剤の調製における、テロメラーゼタンパク質またはペプチドのあるいはテロメラーゼタンパク質またはペプチドをコード可能な核酸の使用。
【請求項25】
実質的に図面を参照しながら説明されるような、そして図面に示されるような癌の治療または予防の方法に用いるためのテロメラーゼタンパク質またはペプチドをコード可能な核酸。
【請求項26】
実質的に図面を参照しながら説明されるような、そして図面に示されるような少なくとも1つのテロメラーゼタンパク質またはペプチドを包含する医薬組成物またはこのような医薬組成物の製造方法。
【請求項27】
実質的に本明細書中で説明されるようなテロメラーゼTリンパ球の生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−252810(P2010−252810A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177870(P2010−177870)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【分割の表示】特願2000−558840(P2000−558840)の分割
【原出願日】平成11年6月30日(1999.6.30)
【出願人】(502120642)
【氏名又は名称原語表記】GEMVAX AS
【住所又は居所原語表記】Drammensveien 100, 0273 Oslo, Norway
【Fターム(参考)】