テン輪/ひげぜんまい振動子用のひげぜんまい
【課題】テン輪/ひげぜんまい振動子用のひげぜんまいを提供する。
【解決手段】平らなひげぜんまいは、同じ方向に巻かれているが2π/2即ち180°の偏位がある2つのブレード1a、1bを含む。これらのブレード1a、1bのそれぞれの内側端部は、ブシュ2に固定されており、それらの外側端部は、固定リング3に固定されている。これらの外側端部はまた、180°の角度で偏位されている。ひげぜんまいのブレード1a、1bの外側端部が固定されている固定リング3は、それをテン輪受けに固定するための開口部3aを有する。
【解決手段】平らなひげぜんまいは、同じ方向に巻かれているが2π/2即ち180°の偏位がある2つのブレード1a、1bを含む。これらのブレード1a、1bのそれぞれの内側端部は、ブシュ2に固定されており、それらの外側端部は、固定リング3に固定されている。これらの外側端部はまた、180°の角度で偏位されている。ひげぜんまいのブレード1a、1bの外側端部が固定されている固定リング3は、それをテン輪受けに固定するための開口部3aを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テン輪/ひげぜんまい振動子用のひげぜんまいに関する。
【背景技術】
【0002】
テン輪の振動運動中、平らなひげぜんまいの重心が移動することは公知である。これは、ひげぜんまいの端部の一方が固定されているのに対して、他方の端部は、テン輪軸から同じ距離に留まったままでありながら移動することによる。重心の変位は、テン輪軸の旋回に横方向の力を発生させるため、等時性に影響を及ぼす。
【0003】
アブラハム・ルイ・ブレゲは、平らなひげぜんまいに1つ又は2つの末端湾曲部を設けて、この欠点を改善できるようにすることを考案した。その後、そのような湾曲部の理論的な取扱いがエム.フィリップスにより公開された。
【0004】
ブレゲ及びフィリップスにより考案された解決策の前に、トーマス・マッジは、同じテン輪に固定され、180°偏位された2つのひげぜんまいの使用を提案していた。該ひげぜんまいは、同期して、しかし反対向きの位相で動作するので、それぞれの重心の変動は補償されるが、軸方向偏位により、テン輪軸を含む平面に僅かなトルクが生じる。この解決策は、近年の製造に採用されてきた。
【0005】
この解決策の問題点は、高さを増す2つの重ねられたひげぜんまいと、テン輪軸を中心に180°偏位された2つのひげ持ち及び2つのひげ持ちキャリヤと、2つのひげ棒とを有する必要があること、並びに各ひげぜんまいは他方と完全に同期して制御されなければならず、結果として、実施困難な極めて複雑な解決策となること、にある。更に、それにより、構成要素の数が倍加する。
【0006】
この解決策は、いくつかの公報、特に特許文献1、特許文献2、及び特許文献3において採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第3553956号
【特許文献2】仏国特許出願公開第2447571号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第1677283号明細書
【特許文献4】欧州特許第1422436号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、前述の欠点を少なくとも部分的に改善すると同時に、この解決策の利点から利益を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため、本発明の対象は、請求項1に記載のテン輪/ひげぜんまい振動子用のひげぜんまいである。
【0010】
添付図面は、本発明の対象であるひげぜんまいのいくつかの実施形態を、概略的に例証として示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態の平面図である。
【図2】第2の実施形態の平面図である。
【図3】図2に示す実施形態の場合に、中心から外側への巻き数の関数としてプロットされたひげぜんまいのピッチの変化を示すグラフである。
【図4】図2に示す実施形態の場合に、中心から外側への巻き数の関数としてプロットされたブレードの厚さの変化を示すグラフである。
【図5】第3の実施形態の平面図である。
【図6】第4の実施形態の平面図である。
【図7】第5の実施形態の平面図である。
【図8】第6の実施形態の平面図である。
【図9】第7の実施形態の側面図である。
【図10A】第8の実施形態の変形の側面図である。
【図10B】第8の実施形態の変形の側面図である。
【図11】第9の実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の対象であるひげぜんまいの第1の実施形態を図1に示す。この平らなひげぜんまいは、同じ方向に巻かれているが2π/2即ち180°の偏位がある2つのブレード1a、1bを含む。これらのブレード1a、1bのそれぞれの内側端部は、ブシュ2に固定されており、それらの外側端部は、固定リング3に固定されている。これらの外側端部はまた、180°の角度で偏位されている。ひげぜんまいのブレード1a、1bの外側端部が固定されている固定リング3は、それをテン輪受けに固定するための開口部3aを有する。従って、この固定リング3は、従来のひげ持ちに取って代わる。
【0013】
ひげぜんまいの2つのブレード1a、1bは、伸縮する時に互いに接触してはならない。接触の危険は、振幅で増大する。従って、振幅を制限することにより、これを減少させることができる。しかし、ひげぜんまいの直径を大きくすることもまた、有利であり得る。
【0014】
更に別の解決策は、巻きのピッチを変更すること及びブレードの厚さを変更することにある。このことは、図2の実施形態及び更に図3及び図4のグラフにより示されている。図3及び図4のグラフはそれぞれ、巻きのピッチの変化をミクロン単位で、ブレードの厚さの変化をミクロン単位で、図2の巻かれたブレード1a、1bの巻き数Ntの関数として示している。該ブレード1a、1bの巻きは、ひげぜんまいが交互に伸縮する間にこれらが互いに接触しないようにするために、ひげぜんまいの中心から始まり外側へと巻かれている。図3は、式r(θ)=r0+p(θ)×θ/2πにより、2つのブレード1a、1bのうちの1つをプロットしている。式中、rは軸からブレードの中立軸(neutral fiber)までの距離を表し、図2〜4の場合、r(θ=0)=r0=600ミクロンであり、θ=2πNtである。
【0015】
変形として、ひげぜんまいのブレードの高さも変更することができると考えられる。
【0016】
本発明によるひげぜんまいの作製に使用することができる材料である単結晶シリコンでできているひげぜんまいの場合、ひげぜんまいの温度補償は、ひげぜんまいのブレードの表面上に、非晶質酸化ケイ素の層を形成することにより達成される。該非晶質酸化ケイ素の層のヤング率の熱係数は、特許文献4に記載されている通り、単結晶シリコンのヤング率の熱係数とは反対符号である。この非晶質酸化ケイ素の層により、該シリコンの結晶方位、即ち(100)、(111)又は(110)が何であっても、ヤング率の熱係数を補償することが可能になる。
【0017】
ひげぜんまいを形成するブレードの数は、2個に限定されない。変形として、図5に示されたものなどの種々の他の解決策が想定されてもよい。図5に示されたものは、図1のものの変形であるが、一方はブシュ2に、他方は固定リング3に取り付けられている3個のブレード1a、1b及び1cを有する。これらのブレードの内側端部及び外側端部は、互いに対して2π/3の角度で角度偏位されている。この角度偏位は、2π/nであることが有利であろう。ここで、nはブレードの数に相当する。
【0018】
図1及び2のひげぜんまいに基づいて実施されたシミュレーションにより、本発明によるひげぜんまいを備えたテン輪/ひげぜんまい振動子の等時性の、極めて大幅な改善が可能であろうことが示された。
【0019】
これまでに記載した実施形態では、ひげぜんまいを形成するブレードは、2つのそれぞれの端部を介して互いに接続されている。図6に示す実施形態は、内側端部のみによりブシュ2に取り付けられている2つのブレード1a、1bから形成されているひげぜんまいを示す。それらの外側端部は自由で、それにより、特に等時性を調整するために、2つのブレードに、いずれかの方向にプレストレスを与えることが可能になる。
【0020】
同じ概念を用いる他の変形、即ち、それぞれの相同な端部の少なくとも一方を介して接続されているいくつかの角度偏位された同一平面上にあるブレードを有するひげぜんまいを想定することができる。
【0021】
従って、4つのブレード、即ち、ブシュ2とブレードの外側端部が固定されている中間リング4との間に配置されている2つのブレード1a、1bと、中間リングと固定リング3との間に配置されている2つのブレード1c、1dとを含むひげぜんまいを有することが可能である。中間リング4をできるだけ軽くするために、その重量をできる限り減少させるために、中間リングは開口部を備えた構造であってもよい。
【0022】
内側のブレード1a、1b及び外側のブレード1c、1dは、図7に示すように、全て同じ方向に巻かれていてもよいか、又は、図8に示すように、内側のブレード1a、1bが外側のブレード1c、1dと反対方向に巻かれていてもよい。
【0023】
無数の他の組合せが想定されてもよいことは明らかである。
【0024】
また、本発明によるひげぜんまいの新規な設計が、Nivarox/Parachromひげぜんまいのための従来の方法を用いて製造されるのに適さないことも明らかである。
【0025】
この場合、本発明によるひげぜんまいの製造に非常に適した方法は、特に、前述の特許文献4に記載されている方法であり、これは、ひげぜんまいを、例えばプラズマエッチングにより、{001}単結晶シリコンウェーハから切り取るというものである。該ひげぜんまいは、例えば熱処理によって、ひげぜんまいのブレードの表面上に非晶質酸化ケイ素の層を形成することにより、温度補償される。
【0026】
また、同じ方法で又は化学的加工により加工された石英単結晶を使用することも可能であると考えられる。平面にひげぜんまいを作製するための実施形態に採用された他の適切な材料を使用することができる。
【0027】
また、UV−LIGA(Lithographie, Galvanisierung und Abformung)プロセスなどのフォトリソグラフィプロセスを使用して、金属合金製の本発明によるこの種のひげぜんまいを作製することもできると考えられる。
【0028】
製造方法は、本発明の一部ではない。例として上記した方法の限定されない例は、単に、本発明による新しい種類のひげぜんまいを作製するための技術手段は既に存在すること、及び当業者はこのひげぜんまいを作製するための多くの選択肢を持っていること、を証明しようとするものに過ぎない。
【0029】
ひげぜんまいが「平らである」とされる場合、これは、上記で得られたひげぜんまいである。しかし、特に図9に示す実施形態では、ブレード1a、1bの外側端部の埋込み先端(embedment point)5及び6をひげぜんまいの平面の外側に配置することに、何の妨げもない。従って、これら2つの埋込み先端は、2つのブレード1a、1bが2つの対称な錐体をひげぜんまいの平面の両側に形成するように、ひげぜんまいの平面の両側にそれぞれ配置されてもよい。この解決策には、2つのブレードの巻きが互いに接触しないようにし、巻き数の多い小径のひげぜんまいを作製することを可能にするという利点がある。従って、このような解決策は、交互の伸縮中、ひげぜんまいのブレード間の接触を防止する別の手段となる。
【0030】
本発明の別の変形によると、2つのブレード1a、1bは、図10A、10Bに示すSOI(Silicon−On−Insulator)ウェーハで作製される。該SOIウェーハは、Si−SiO2−Si多層スタックから成る。ブレード1aは、Si層の1つの外面からエッチングされ、他方のブレード1bは、第2のSi層の外面からエッチングされる。この場合、2つのブレードの内側端部は、SiO2中間層8を介して固定されている。本実施形態の利点は、2つの隣接する巻き相互間の距離が大きくなるにつれて、ひげぜんまいの直径が小さくなることである。図10に示す通り、ひげぜんまいが垂直に延出する場合、このような利点はより一層顕著である。
【0031】
図11は、ブレード1a、1bの内側端部が同じブシュに固定されている一方、それらの外側端部がSiO2中間層8に固定されている、図10A、図10Bの別の変形を示す。
【符号の説明】
【0032】
1a ブレード
1b ブレード
1c ブレード
1d ブレード
2 ブシュ
3 固定リング
3a 開口部
4 中間リング
5 埋込み先端
6 埋込み先端
8 SiO2中間層
【技術分野】
【0001】
本発明は、テン輪/ひげぜんまい振動子用のひげぜんまいに関する。
【背景技術】
【0002】
テン輪の振動運動中、平らなひげぜんまいの重心が移動することは公知である。これは、ひげぜんまいの端部の一方が固定されているのに対して、他方の端部は、テン輪軸から同じ距離に留まったままでありながら移動することによる。重心の変位は、テン輪軸の旋回に横方向の力を発生させるため、等時性に影響を及ぼす。
【0003】
アブラハム・ルイ・ブレゲは、平らなひげぜんまいに1つ又は2つの末端湾曲部を設けて、この欠点を改善できるようにすることを考案した。その後、そのような湾曲部の理論的な取扱いがエム.フィリップスにより公開された。
【0004】
ブレゲ及びフィリップスにより考案された解決策の前に、トーマス・マッジは、同じテン輪に固定され、180°偏位された2つのひげぜんまいの使用を提案していた。該ひげぜんまいは、同期して、しかし反対向きの位相で動作するので、それぞれの重心の変動は補償されるが、軸方向偏位により、テン輪軸を含む平面に僅かなトルクが生じる。この解決策は、近年の製造に採用されてきた。
【0005】
この解決策の問題点は、高さを増す2つの重ねられたひげぜんまいと、テン輪軸を中心に180°偏位された2つのひげ持ち及び2つのひげ持ちキャリヤと、2つのひげ棒とを有する必要があること、並びに各ひげぜんまいは他方と完全に同期して制御されなければならず、結果として、実施困難な極めて複雑な解決策となること、にある。更に、それにより、構成要素の数が倍加する。
【0006】
この解決策は、いくつかの公報、特に特許文献1、特許文献2、及び特許文献3において採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第3553956号
【特許文献2】仏国特許出願公開第2447571号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第1677283号明細書
【特許文献4】欧州特許第1422436号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、前述の欠点を少なくとも部分的に改善すると同時に、この解決策の利点から利益を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため、本発明の対象は、請求項1に記載のテン輪/ひげぜんまい振動子用のひげぜんまいである。
【0010】
添付図面は、本発明の対象であるひげぜんまいのいくつかの実施形態を、概略的に例証として示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態の平面図である。
【図2】第2の実施形態の平面図である。
【図3】図2に示す実施形態の場合に、中心から外側への巻き数の関数としてプロットされたひげぜんまいのピッチの変化を示すグラフである。
【図4】図2に示す実施形態の場合に、中心から外側への巻き数の関数としてプロットされたブレードの厚さの変化を示すグラフである。
【図5】第3の実施形態の平面図である。
【図6】第4の実施形態の平面図である。
【図7】第5の実施形態の平面図である。
【図8】第6の実施形態の平面図である。
【図9】第7の実施形態の側面図である。
【図10A】第8の実施形態の変形の側面図である。
【図10B】第8の実施形態の変形の側面図である。
【図11】第9の実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の対象であるひげぜんまいの第1の実施形態を図1に示す。この平らなひげぜんまいは、同じ方向に巻かれているが2π/2即ち180°の偏位がある2つのブレード1a、1bを含む。これらのブレード1a、1bのそれぞれの内側端部は、ブシュ2に固定されており、それらの外側端部は、固定リング3に固定されている。これらの外側端部はまた、180°の角度で偏位されている。ひげぜんまいのブレード1a、1bの外側端部が固定されている固定リング3は、それをテン輪受けに固定するための開口部3aを有する。従って、この固定リング3は、従来のひげ持ちに取って代わる。
【0013】
ひげぜんまいの2つのブレード1a、1bは、伸縮する時に互いに接触してはならない。接触の危険は、振幅で増大する。従って、振幅を制限することにより、これを減少させることができる。しかし、ひげぜんまいの直径を大きくすることもまた、有利であり得る。
【0014】
更に別の解決策は、巻きのピッチを変更すること及びブレードの厚さを変更することにある。このことは、図2の実施形態及び更に図3及び図4のグラフにより示されている。図3及び図4のグラフはそれぞれ、巻きのピッチの変化をミクロン単位で、ブレードの厚さの変化をミクロン単位で、図2の巻かれたブレード1a、1bの巻き数Ntの関数として示している。該ブレード1a、1bの巻きは、ひげぜんまいが交互に伸縮する間にこれらが互いに接触しないようにするために、ひげぜんまいの中心から始まり外側へと巻かれている。図3は、式r(θ)=r0+p(θ)×θ/2πにより、2つのブレード1a、1bのうちの1つをプロットしている。式中、rは軸からブレードの中立軸(neutral fiber)までの距離を表し、図2〜4の場合、r(θ=0)=r0=600ミクロンであり、θ=2πNtである。
【0015】
変形として、ひげぜんまいのブレードの高さも変更することができると考えられる。
【0016】
本発明によるひげぜんまいの作製に使用することができる材料である単結晶シリコンでできているひげぜんまいの場合、ひげぜんまいの温度補償は、ひげぜんまいのブレードの表面上に、非晶質酸化ケイ素の層を形成することにより達成される。該非晶質酸化ケイ素の層のヤング率の熱係数は、特許文献4に記載されている通り、単結晶シリコンのヤング率の熱係数とは反対符号である。この非晶質酸化ケイ素の層により、該シリコンの結晶方位、即ち(100)、(111)又は(110)が何であっても、ヤング率の熱係数を補償することが可能になる。
【0017】
ひげぜんまいを形成するブレードの数は、2個に限定されない。変形として、図5に示されたものなどの種々の他の解決策が想定されてもよい。図5に示されたものは、図1のものの変形であるが、一方はブシュ2に、他方は固定リング3に取り付けられている3個のブレード1a、1b及び1cを有する。これらのブレードの内側端部及び外側端部は、互いに対して2π/3の角度で角度偏位されている。この角度偏位は、2π/nであることが有利であろう。ここで、nはブレードの数に相当する。
【0018】
図1及び2のひげぜんまいに基づいて実施されたシミュレーションにより、本発明によるひげぜんまいを備えたテン輪/ひげぜんまい振動子の等時性の、極めて大幅な改善が可能であろうことが示された。
【0019】
これまでに記載した実施形態では、ひげぜんまいを形成するブレードは、2つのそれぞれの端部を介して互いに接続されている。図6に示す実施形態は、内側端部のみによりブシュ2に取り付けられている2つのブレード1a、1bから形成されているひげぜんまいを示す。それらの外側端部は自由で、それにより、特に等時性を調整するために、2つのブレードに、いずれかの方向にプレストレスを与えることが可能になる。
【0020】
同じ概念を用いる他の変形、即ち、それぞれの相同な端部の少なくとも一方を介して接続されているいくつかの角度偏位された同一平面上にあるブレードを有するひげぜんまいを想定することができる。
【0021】
従って、4つのブレード、即ち、ブシュ2とブレードの外側端部が固定されている中間リング4との間に配置されている2つのブレード1a、1bと、中間リングと固定リング3との間に配置されている2つのブレード1c、1dとを含むひげぜんまいを有することが可能である。中間リング4をできるだけ軽くするために、その重量をできる限り減少させるために、中間リングは開口部を備えた構造であってもよい。
【0022】
内側のブレード1a、1b及び外側のブレード1c、1dは、図7に示すように、全て同じ方向に巻かれていてもよいか、又は、図8に示すように、内側のブレード1a、1bが外側のブレード1c、1dと反対方向に巻かれていてもよい。
【0023】
無数の他の組合せが想定されてもよいことは明らかである。
【0024】
また、本発明によるひげぜんまいの新規な設計が、Nivarox/Parachromひげぜんまいのための従来の方法を用いて製造されるのに適さないことも明らかである。
【0025】
この場合、本発明によるひげぜんまいの製造に非常に適した方法は、特に、前述の特許文献4に記載されている方法であり、これは、ひげぜんまいを、例えばプラズマエッチングにより、{001}単結晶シリコンウェーハから切り取るというものである。該ひげぜんまいは、例えば熱処理によって、ひげぜんまいのブレードの表面上に非晶質酸化ケイ素の層を形成することにより、温度補償される。
【0026】
また、同じ方法で又は化学的加工により加工された石英単結晶を使用することも可能であると考えられる。平面にひげぜんまいを作製するための実施形態に採用された他の適切な材料を使用することができる。
【0027】
また、UV−LIGA(Lithographie, Galvanisierung und Abformung)プロセスなどのフォトリソグラフィプロセスを使用して、金属合金製の本発明によるこの種のひげぜんまいを作製することもできると考えられる。
【0028】
製造方法は、本発明の一部ではない。例として上記した方法の限定されない例は、単に、本発明による新しい種類のひげぜんまいを作製するための技術手段は既に存在すること、及び当業者はこのひげぜんまいを作製するための多くの選択肢を持っていること、を証明しようとするものに過ぎない。
【0029】
ひげぜんまいが「平らである」とされる場合、これは、上記で得られたひげぜんまいである。しかし、特に図9に示す実施形態では、ブレード1a、1bの外側端部の埋込み先端(embedment point)5及び6をひげぜんまいの平面の外側に配置することに、何の妨げもない。従って、これら2つの埋込み先端は、2つのブレード1a、1bが2つの対称な錐体をひげぜんまいの平面の両側に形成するように、ひげぜんまいの平面の両側にそれぞれ配置されてもよい。この解決策には、2つのブレードの巻きが互いに接触しないようにし、巻き数の多い小径のひげぜんまいを作製することを可能にするという利点がある。従って、このような解決策は、交互の伸縮中、ひげぜんまいのブレード間の接触を防止する別の手段となる。
【0030】
本発明の別の変形によると、2つのブレード1a、1bは、図10A、10Bに示すSOI(Silicon−On−Insulator)ウェーハで作製される。該SOIウェーハは、Si−SiO2−Si多層スタックから成る。ブレード1aは、Si層の1つの外面からエッチングされ、他方のブレード1bは、第2のSi層の外面からエッチングされる。この場合、2つのブレードの内側端部は、SiO2中間層8を介して固定されている。本実施形態の利点は、2つの隣接する巻き相互間の距離が大きくなるにつれて、ひげぜんまいの直径が小さくなることである。図10に示す通り、ひげぜんまいが垂直に延出する場合、このような利点はより一層顕著である。
【0031】
図11は、ブレード1a、1bの内側端部が同じブシュに固定されている一方、それらの外側端部がSiO2中間層8に固定されている、図10A、図10Bの別の変形を示す。
【符号の説明】
【0032】
1a ブレード
1b ブレード
1c ブレード
1d ブレード
2 ブシュ
3 固定リング
3a 開口部
4 中間リング
5 埋込み先端
6 埋込み先端
8 SiO2中間層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの相同な端部の少なくとも一方により固定されており、各ブレードの前記端部のうちの一方が他方の端部に対して中心軸を中心に角度を成して移動する場合に、前記中心軸に掛かりがちな横方向の力を相殺することができる角度偏位を有して螺旋状に巻かれている、n個のブレード、但しn≧2、を含む、テン輪/ひげぜんまい振動子用のひげぜんまい。
【請求項2】
前記ブレードが同一平面上にある、請求項1に記載のひげぜんまい。
【請求項3】
前記ブレードが、それらの2つのそれぞれの端部により互いに固定されている、請求項1又は2に記載のひげぜんまい。
【請求項4】
前記ブレードのピッチが可変である、請求項1から3のいずれか一項に記載のひげぜんまい。
【請求項5】
前記ブレードの厚さが可変である、請求項1から4のいずれか一項に記載のひげぜんまい。
【請求項6】
前記ブレードの高さが可変である、請求項1から5のいずれか一項に記載のひげぜんまい。
【請求項7】
単結晶シリコンから形成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のひげぜんまい。
【請求項8】
前記単結晶シリコンが非晶質酸化ケイ素の層で覆われている、請求項7に記載のひげぜんまい。
【請求項9】
石英から形成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のひげぜんまい。
【請求項1】
それぞれの相同な端部の少なくとも一方により固定されており、各ブレードの前記端部のうちの一方が他方の端部に対して中心軸を中心に角度を成して移動する場合に、前記中心軸に掛かりがちな横方向の力を相殺することができる角度偏位を有して螺旋状に巻かれている、n個のブレード、但しn≧2、を含む、テン輪/ひげぜんまい振動子用のひげぜんまい。
【請求項2】
前記ブレードが同一平面上にある、請求項1に記載のひげぜんまい。
【請求項3】
前記ブレードが、それらの2つのそれぞれの端部により互いに固定されている、請求項1又は2に記載のひげぜんまい。
【請求項4】
前記ブレードのピッチが可変である、請求項1から3のいずれか一項に記載のひげぜんまい。
【請求項5】
前記ブレードの厚さが可変である、請求項1から4のいずれか一項に記載のひげぜんまい。
【請求項6】
前記ブレードの高さが可変である、請求項1から5のいずれか一項に記載のひげぜんまい。
【請求項7】
単結晶シリコンから形成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のひげぜんまい。
【請求項8】
前記単結晶シリコンが非晶質酸化ケイ素の層で覆われている、請求項7に記載のひげぜんまい。
【請求項9】
石英から形成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のひげぜんまい。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【公開番号】特開2010−32522(P2010−32522A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173347(P2009−173347)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(599091346)ロレックス・ソシエテ・アノニム (41)
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(599091346)ロレックス・ソシエテ・アノニム (41)
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
【Fターム(参考)】
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