説明

テーパーを有する容器の成形方法および金型

【課題】テーパーを有する容器の側面の厚さを均一に成形することができるとともに、底面と、側面との厚みを独立に制御可能な金型および成形方法を提供する。
【解決手段】キャビティ(雌型)と、コア(雄型)との間に溶融樹脂を流し込み成形するテーパーを有する容器の成形方法であって、前記コアは、移動自在な移動コアと、固定される固定コアとを有し、前記移動コアはさらに、テーパーを成形するための1または複数の二次移動コアと、底面を成形するための1または複数の二次移動コアとの、複数の二次移動コアを有し、該複数の二次移動コアをそれぞれ移動させることにより、前記テーパーの厚みと底面の厚みとを略均一に成形することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビティ(雌型)と、コア(雄型)との間に溶融樹脂を流し込み成形する容器の成形方法およびその金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ひけやバリのなく、発泡倍率が非常に高く、軽量化に優れた発泡性樹脂容器が知られている。この種の発泡性容器を成形する際に、通常の射出成形法では、充分な発泡容量を確保することができないという難点がある。すなわち、インジェクション成形では、金型の隙間がそのまま容器の肉厚となり、発泡性樹脂を射出成形すると、金型の隙間に樹脂が一旦充填してから、発泡することとなるため、発泡性樹脂の膨張に必要なスペースが得られず、低発泡の成型品となってしまう欠点があった。
そこで、固定された雌型の金型(キャビティ)に発泡性の溶融樹脂を流し込み、移動する雄型の金型(コア)を後退させて成形するコアバック方式を発泡性容器の成形に適用することが考えられる。例えば、固定金型と移動金型とから構成される金型間に、射出樹脂量体積に相当する容器形状のキャビティが成形され、このキャビティ内へ樹脂の充填が終わると、移動金型が1〜5(mm/秒)の速度で後退し、それに伴いキャビティの容積が増加し樹脂の発泡成形が進行する、容器およびその製造方法が開示されている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−18943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、発泡性樹脂を用いテーパーを有する容器を成形する際に、上述のようなコアバック方式を適用した場合、図9(a)に示すように、移動コアAの垂直方向への移動dに伴い、キャビティ内の容積が増加すると、側面の厚さaが緩やかに増加a'するとともに、図9(b)に示すように、底面の厚さbが急激に増加b'してしまう欠点がある。特に、テーパーの角度θが小さいほど、側面の厚さaが僅かに増加すると、底面の厚さbが急激に増加してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで本発明は、テーパーを有する発泡性容器を成形する際、底面の厚さがテーパー部分の厚みの増加による影響を受けることなく、テーパー部分の厚さのみを均一に増加させる制御が可能な、テーパーを有する容器の成形方法および金型を提供する。
【0005】
このため、本発明の請求項1記載の発明は、キャビティ(雌型)と、コア(雄型)との間に溶融樹脂を流し込み成形するテーパーを有する容器の成形方法であって、前記コアは、移動自在な移動コアと、固定される固定コアとを有し、前記移動コアはさらに、移動自在な複数の二次移動コアを有し、該二次移動コアを移動させることにより、前記テーパーの厚みを均一に成形することを特徴とするテーパーを有する容器の成形方法である。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記複数の移動コアは、それぞれ移動量若しくは移動速度が異なることを特徴とする、テーパーを有する容器の成形方法である。
【0007】
請求項3記載の発明は、前記複数の二次移動コアの、少なくとも1の二次移動コアは、固定される二次固定コアであることを特徴とする、テーパーを有する容器の成形方法である。
【0008】
請求項4記載の発明は、前記溶融樹脂は発泡性樹脂であって、前記移動コアを移動させることにより前記発泡性樹脂の発泡容量を可変させることを特徴とする、テーパーを有する容器の成形方法である。
【0009】
請求項5記載の発明は、前記テーパーが湾曲面であることを特徴とする、テーパーを有する容器の成形方法である。
【0010】
請求項6記載の発明は、前記テーパーの角度が3度から10度であることを特徴とする、テーパーを有する容器の成形方法である。
【0011】
請求項7記載の発明は、前記二次移動コアの移動量と、テーパー部分の厚さと、テーパーの角度とが下記式により決定されることを特徴とする、テーパーを有する容器の成形方法である。
【数2】

(ただし、θはテーパーの角度、aは二次移動コアの移動量、dは二次移動コアの移動に伴うテーパー部分の厚さの増加量)
【0012】
請求項8記載の発明は、溶融樹脂とラベルとを同時に成形するインモールド成形法であることを特徴とする、テーパーを有する容器の成形方法である。
【0013】
請求項9記載の発明は、前記インモールド成形法において、バリア性を有するフィルムを同時に成形することを特徴とするテーパーを有する容器の成形方法である。
【0014】
請求項10記載の発明は、前記バリア性を有するフィルムは、多層コーティングフィルムであることを特徴とするテーパーを有する容器の成形方法。
【0015】
請求項11記載の発明は、キャビティ(雌型)と、コア(雄型)とを有する金型であって、前記コアは、移動自在な移動コアと、固定される固定コアとからなる金型において、前記移動コアは、さらに移動自在な複数の二次移動コアからなることを特徴とする、金型である。
【0016】
請求項12記載の発明は、前記複数の二次移動コアは、それぞれ移動量若しくは移動速度が異なることを特徴とする金型である。
【0017】
請求項13記載の発明は、前記複数の二次移動コアの、少なくとも1の二次移動コアは、固定される二次固定コアであることを特徴とする、金型である。
【0018】
請求項14記載の発明は、前記移動コアの先端が鋭角であることを特徴とする、テーパーを有する容器の成形方法および金型である。
【0019】
請求項15記載の発明は、前記移動コアの先端部分の一部が水平であることを特徴とする、テーパーを有する容器の成形方法および金型である。
【0020】
請求項16記載の発明は、請求項1乃至15記載のテーパーを有する容器の成形方法ないし金型により成形された容器である。
【0021】
請求項17記載の発明は、前記容器はカップであることを特徴とする、テーパーを有する容器の成形方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、キャビティ(雌型)と、コア(雄型)との間に溶融樹脂を流し込み成形するテーパーを有する容器の成形方法であって、前記コアは、移動自在な移動コアと、固定される固定コアとを有し、前記移動コアはさらに、移動自在な複数の二次移動コアを有し、該二次移動コアを移動させることにより、前記テーパーの厚みを均一に成形することを特徴とするから、テーパーを有する容器の側面の厚さを均一に成形することができるとともに、底面と、側面との厚みを独立に制御することが可能である。
【0023】
また、前記複数の移動コアは、それぞれ移動量若しくは移動速度が異なることを特徴とするから、複雑な形状の容器にも適用可能である。
【0024】
請求項3記載の発明は、前記複数の二次移動コアの、少なくとも1の二次移動コアは、固定される二次固定コアであることを特徴とするから、容器の底面(水平面)の厚さを固定しつつ、テーパー部分のみの発泡容量を可変させることができる。すなわち、容器の底面と、テーパー部分との厚みを独立に制御可能である。
【0025】
請求項4記載の発明は、前記溶融樹脂は発泡性樹脂であって、前記移動コアを移動させることにより前記発泡性樹脂の発泡容量を可変させることを特徴とするから、発泡性樹脂の膨張を移動コアにより制御することで容器側壁の厚みを可変自在である。
【0026】
請求項5記載の発明は、前記テーパーが湾曲面であることを特徴とするから、湾曲面を有する意匠性の良い容器を成形可能である。
【0027】
請求項6記載の発明は、前記テーパーの角度が3度から10度であることを特徴とするから、日用品などの汎用品の成形に適用可能である。
【0028】
請求項7記載の発明は、前記二次移動コアの移動量と、テーパー部分の厚さと、テーパーの角度とが下記式により決定されることを特徴とするから、容器の製造に際し、簡単なシミュレーションにより、テーパーの角度、二次移動コアの移動量、および目的とするテーパー部分の厚さの増加量等の結果が容易に計算可能である。
【数3】

(ただし、θはテーパーの角度、aは二次移動コアの移動量、dは二次移動コアの移動に伴うテーパー部分の厚さの増加量)
【0029】
請求項8記載の発明は、溶融樹脂とラベルとを同時に成形するインモールド成形法であることを特徴とするから、別途容器に印刷を施す手間を必要としない。
【0030】
請求項9記載の発明は、前記インモールド成形法において、バリア性を有するフィルムを同時に成形することを特徴とするから、バリア性(耐透過性)を有する容器を成形することができる。
【0031】
請求項10記載の発明は、前記バリア性を有するフィルムは、多層コーティングフィルムであることを特徴とするから、耐透過性のみならず耐遮光性を有する容器を成形することができる。
【0032】
請求項11記載の発明は、キャビティ(雌型)と、コア(雄型)とを有する金型であって、前記コアは、移動自在な移動コアと、固定される固定コアとからなる金型において、前記移動コアは、さらに移動自在な複数の二次移動コアからなることを特徴とするから、テーパーを有する容器の側面の厚さを均一に成形することができるとともに、底面と、側面との厚みを独立に制御することが可能である金型を提供することができる。
【0033】
請求項12記載の発明は、前記複数の二次移動コアは、それぞれ移動量若しくは移動速度が異なることを特徴とするから、複雑な形状の容器であっても、テーパーを有する容器の側面の厚さを均一に成形することができる金型を提供することができる。
【0034】
請求項13記載の発明は、前記複数の二次移動コアの、少なくとも1の二次移動コアは、固定される二次固定コアであることを特徴とするから、容器の底面(水平面)の厚さを固定しつつ、テーパー部分のみの発泡容量を可変させることができる。すなわち、容器の底面と、テーパー部分との厚みを独立に制御可能な金型を提供することができる。
【0035】
請求項14記載の発明は、前記移動コアの先端が鋭角であることを特徴とするから、テーパーの立ち上がり部分の段差を成形することなく、容器を仕上げることが可能である。
【0036】
請求項15記載の発明は、前記移動コアの先端部分の一部が水平であることを特徴とするから、移動コアの先端部分の発泡量を増すことが可能である。
【0037】
請求項16記載の発明は、請求項1乃至15記載のテーパーを有する容器の成形方法ないし金型により成形された容器であるから、前記方法および金型によりテーパーを有する容器の側面および底面の厚さが均一な容器を、提供可能である。
【0038】
請求項17記載の発明は、前記容器はカップであることを特徴とするから、テーパーを有するカップに適用可能である。
【0039】
このように、本発明のテーパーを有する容器の成形方法および金型は、テーパーを有する容器の側面の厚さを均一に成形することができるとともに、側面の厚さによらず底面の厚さを制御可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の金型について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の金型の一例である。この金型10は、雌型の金型であるキャビティ20(固定金型)と、雄型の金型であるコア30(移動金型)とからなり、前記コア30は、さらに移動コア7と固定コア8とを有する。そして、前記移動コア7は、さらに、容器の側面3(テーパー部分)を成形するための二次移動コア7aと、容器の底面5を成形するための二次移動コア7bとの、複数の二次移動コア(7a、7b)からなる。
特に、テーパー3部分を成形する二次移動コア7aの先端部分は、テーパー角度θと略同一の鋭角を成しており、一方、底面5を成形する二次移動コア7bの先端部分は、底面5と同一の水平面となっている。
【0041】
そして、このような複数の二次移動コア(7a、7b)により、後述する、容器各所の発泡倍率を独立に制御して、特に、テーパー部分と、底面とが、均一な発泡倍率を有する容器を成形可能である。すなわち、底面5の厚さがテーパー部分3の厚みaの増加による影響を受ける従来の問題点を解消しつつ、複雑な形状の容器であっても、前記複数の二次移動コアにより、容器の各所を所望の発泡倍率として成形することが可能である。
【0042】
上述の金型10によりテーパーを有する容器を成形する方法について説明する。以下、テーパー部分を成形する二次移動コア7aの移動量をΔdとし、底面を成形する二次移動コア7bの移動量をΔbとする。
まず、前記コア30と前記キャビティ20との隙間(キャビティ内)に、図示しない射出口より発泡性の溶融樹脂Bを射出する。キャビティ内は、予め、基準となるテーパー部分の厚さ、および底面の厚さ、となっており、溶融樹脂Bを射出後、目的とする発泡倍率を確保するため、二次移動コア(7a、7b)をそれぞれ垂直に移動させる。
このとき、二次移動コア7a、7bの垂直方向への移動に伴い、テーパー部分および底面の厚さが徐々に増すこととなるが、テーパー部分と、底面とでは、厚さの増加率がそれぞれ異なる。すなわち、二次移動コアの移動により、テーパー部分の厚さの増加率が低く、一方、底面の厚さは、二次移動コアの移動量そのものであるため、増加率が高い。
詳しくは、二次移動コア7aの移動量Δdに対するテーパー部分の厚みの増加量Δaの関係は、下記式1により与えられる。
【0043】
【数4】

【0044】
すなわち、テーパー部分の二次移動コア7aの移動に伴う、テーパー部分の厚さの増加量Δaは、テーパー角度θに依存し、テーパー角度が小さいほどテーパー部分の厚みの増加量が小さいため、大きな二次移動コア7aの移動量を必要とする。
さらに、従来ではテーパーを有する容器を成形する際に、1つの移動コアにより、テーパー部分と、底面とを、同時に成形していた。この場合、前述のとおり、テーパーの角度が1度から30度程度の角度が小さい範囲では、sinθの値がsinθ=0.01〜0.5と極僅かなため、式2に示すように、テーパー部分の僅かな厚さの増加Δaに伴い、二次移動コアが大きな移動量Δdとなってしまうため、底面の厚さがテーパー部分の増加量Δaの2倍から100倍程度に急激に増加してしまう問題がある。
【0045】
【数5】

【0046】
このため、本発明においては、複数の二次移動コアにより、テーパー部分と、底面と、をそれぞれ成形するとともに、テーパー部分を成形する二次移動コア(7a)の移動量と、底面を成形する二次移動コア(7b)の移動量と、をそれぞれ異ならせることにより、容器を成形する際に生じる、容器各所におけるキャビティ内の容量の増加量の違う部分を別個に成形して、各所の発泡倍率を制御することができる。
さらには、テーパー角度θの異なる様々な容器について、テーパー部分のsinθの値と、二次移動コアの移動量Δdと、に基く、テーパー部分の厚さの増加量Δaを、下記表1のように示すことができる。よって、前記表1を基に、目的とするテーパー部分の厚みを制御し、底面の厚みを別途制御することができる。
さらには、表2に示すように、キャビティ内の初期テーパー部分の厚さを基準として、目的とするテーパー部分の厚み、および発泡倍率を有する容器を成形することができる。このようにして、図2に示すような、テーパー部分3と底面5とが略均一な厚さWからなる、テーパーを有する容器1を成形可能である。
【0047】
【表1】

【表2】

【0048】
以下、様々な角度θのテーパーを有する容器の成形方法の一例を実施例により説明する。ここで、溶融樹脂射出時の、キャビティ内のテーパー部分の厚さa、および底面の厚さb、の初期値は、それぞれa=b=1mmとして以下の実施例に適用する。
【0049】
実施例1
目的とする容器のテーパー角度θが4度のとき、テーパー部分の発泡性樹脂の発泡倍率を70パーセント、また、容器の底面の厚さも同様に発泡倍率70パーセントとする場合、目的とする発泡後のテーパー部分の厚さは1.7mm、底面の厚さは1.7mmである。
よって、それぞれの増加分は、Δa=0.7mm、Δb=0.7mmであるから、前記表1(Δa=0.698mm)より、必要なテーパー部分の二次移動コア7aの移動量は、Δd=10mmであることがわかる。
また、容器の底面は水平であるため、二次移動コア7bを垂直に移動した距離がそのまま底面の厚さの増加分Δbとなるから、二次移動コア7bの移動量は、Δb=0.7mmとすることにより、図3(b)に示すような、目的とする、テーパー部分の厚さa+Δa=1.7mm、底面の厚さb+Δb=1.7mmの容器を成形可能である。
【0050】
実施例2
容器のテーパー角度θが6度のとき、目的とするテーパー部分の発泡性樹脂の発泡倍率を100パーセント(2倍)、また、容器の底面は発泡倍率200パーセント(3倍)とする場合、目的とする発泡後のテーパー部分の厚さは2mm、底面の厚さは3mmである。
よって、それぞれの増加分は、Δa=1mm、Δb=2mmであるから、表1より、Δa=1.045(≒1mm)のときΔd=10mmである。従って、必要なテーパー部分の二次移動コア7aの移動量をΔd=10mmであることがわかる。
また、容器の底面を成形する二次移動コア7bの移動量は、Δb=2mmとすることにより、図4(b)に示すような、目的とする、発泡後のテーパー部分の厚さa+Δa=2mm、底面の厚さb+Δb=3mmの容器を成形可能である。
【0051】
実施例3
容器のテーパー角度θが13度のとき、目的とするテーパー部分の発泡性樹脂の発泡倍率を200パーセント(3倍)、また、容器の底面を発泡倍率100パーセント(2倍)とする場合、目的とする発泡後のテーパー部分の厚さは3mm、底面の厚さは2mmである。
よって、それぞれの増加分は、Δa=2mm、Δb=1mmであるから、表1より、テーパー角度θが13度で、テーパー部分の二次移動コア7aの移動量はΔa=2.025(≒2mm)のとき、Δd=9mmである。従って、必要な二次移動コア7aの移動量Δd=9mmであることがわかる。
また、容器の底面を成形する二次移動コア7bの移動量をΔb=1mmとすることにより、図5(b)に示すような、目的とする、発泡後のテーパー部分の厚さa+Δa=3mm、底面の厚さb+Δb=2mmの容器を成形可能である。
【0052】
このようにして、テーパー部分と、底面との、厚みおよび発泡倍率を独立に制御して容器を成形することが容易に可能である。
【0053】
また、複数の二次移動コアは、それぞれ移動量若しくは移動速度の異なる二次移動コアであっても良く、特に、移動量若しくは移動速度がゼロであった場合、二次固定コアと呼ぶものである。そして、二次移動コアによりテーパー部分を成形し、二次固定コアにより底面を成形することにより、テーパー部分のみを高発泡とし、底面部分を低発泡とする容器を容易に成形可能である。
また、以下実施例4、実施例5に示すような、複数段のテーパー角度を有する容器や、テーパー部分が複雑な曲面(湾曲面)を有する容器においては、複数の二次移動コアを用いて、それぞれのテーパー部分を成形することにより、各テーパー毎に厚みや発泡倍率を容易に可変することが可能である。
【0054】
実施例4
容器のテーパー角度θが、θ1=6度とθ2=13度との二段階を有するとき、それぞれのテーパー部分の発泡倍率を100パーセント(2倍)とし、また、容器の底面の厚さも同様に発泡倍率100パーセントとする場合、目的とする発泡後のそれぞれのテーパー部分および底面の厚さは、それぞれ2mmである。
よって、各所の増加分は、Δa(6°)=1mm、Δa(13°)=1mm、Δb=1mmであるから、表1より、テーパー角度θが6度で、テーパー部分の二次移動コア7aの移動量は、Δa(6°)=1.045(≒1mm)のとき、Δd(6°)=10mmであり、また、テーパー角度θが13度で、テーパー部分の二次移動コア7bの移動量は、Δa(13°)=0.900(≒1mm)のとき、Δd(13°)=4mmである。従って、必要な二次移動コア7aの移動量Δd(6°)=10mm、二次移動コア7bの移動量Δd(13°)=4mmであることがわかる。
また、容器の底面を成形する二次移動コアの移動量をΔb=1mmとすることにより、図6(b)に示すような、目的とする、発泡後のそれぞれのテーパー部分の厚さa+Δa=2mm、底面の厚さb+Δb=2mmの容器を成形可能である。
【0055】
実施例5
図7に示すような、テーパー面が湾曲面を有する容器であって、テーパーの厚さのみを発泡倍率20パーセントとして容器を成形する場合、湾曲面を複数の二次移動コア(7a、7b、7c、7d、7e)に分割し、かつテーパー角度θが大きい部分は二次移動コア(7b、7d)の移動量を小さくし、テーパー角度θが小さい部分は二次移動コア(7a、7c)の移動量を大きくすることにより、図7(b)に示すように、曲面をなめらかに、かつ均一に成形することが可能である。
【0056】
また、図8に示すように、側面(テーパー部分)と底面とが接する箇所などを強固とするため、該箇所を厚く成形したい場合、二次移動コア7aの先端部分の一部に幅Δmを持たせることにより、図8(b)に示すように、前記先端部分の幅Δmと、二次移動コアの移動量Δdとを掛け合わせた分のさらなる発泡容量を得ることができる。よって、側面と底面とが接する部分や、複数段のテーパー部分が接する部分などの比較的強度の弱い箇所を厚く成形することができ、さらには、移動コア先端の金型の強度も上がり、耐久性も向上する効果がある。
【0057】
また、射出成形と同時に印刷を施すインモールド成形法を本発明に適用してもよい。この場合、ラベルにバリア性を付与することにより、若しくは印刷ラベルとバリア性フィルムとを同時にインモールド成形することにより、バリア性を有する容器を提供することが可能である。よって、意匠性のみならず耐透過性をも向上することが可能である。
【0058】
前記容器としては、飲料用のカップ、インスタント食品用の容器や、日用品などが挙げられる。特に、熱湯などを注ぐ容器として用いる際には、容器の側面を高い発泡倍率で成形することが望ましい。
【0059】
特に、縦型の前記断熱容器は、従来、発泡ビーズ成形カップやフィン付きインジェクションカップにシュリンクラベルを組み合わせたカップでは、容器を成形する際のコストに難があったが、本発明により縦型容器でも高意匠、断熱性の高い軽量なカップを成形することが可能である。
【0060】
上述の発泡性樹脂としては、ポリプロピレン樹脂などに予め発泡剤を配合するか、或いはシリンダーの途中から発泡剤を注入し、このように発泡剤を含むポリプロピレン樹脂は、射出前に樹脂温度を170〜270℃程度に調節され、また、射出圧力は10〜200MPaおよび射出時間は5秒程度の条件でキャビティ内へと射出される。特に、前記樹脂温度、射出圧力および射出時間が前記条件の範囲内であるとき、高い発泡倍率でしかも外観の良好な成型品を得ることができる。
また、溶融樹脂の射出が終了すると同時に、前記二次移動コアを1〜10(mm/秒)の速度で移動させることが望ましい。このとき、発泡樹脂が膨張するとともに冷却されキャビティの形状へと変化しつつ冷却される。
【0061】
発泡剤としては、溶剤型発泡剤や、分解型発泡剤の何れであっても良く、前記溶剤型発泡剤は、射出成型気のシリンダ部分から注入し、溶融ポリプロピレン樹脂に吸収ないしは溶解させ、射出金型中で蒸発して発泡剤として機能する物質であって、プロパン、ブタン、ネオペンタン、イソヘキサン、ヘキサン、ヘプタン等の低沸点脂肪族炭化水素や、低沸点のフッ素含有炭化水素等が使用される。
また、前記分解型発泡剤は、ポリプロピレン樹脂に予め配合されて射出成形機へと供給され、射出成形機のシリンダ温度条件下で発泡剤が分解して炭酸ガス、窒素ガス等の期待を発生する化合物であって、無機系の発泡剤であっても有機系の発泡剤であっても良く、また気体の発生を促す有機酸等を併用添加してもよい。分解型発泡剤の具体例として、次の化合物を挙げることができる。
(a)無機系発泡剤:重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム。
(b)有機系発泡剤:N,N'−ジニトロソテレフタルアミド、N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のN−ニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルフォニルヒドラジド、トルエンスルフォニルヒドラジド、p、p'−オキシビス(ベンゼンスルフェニルヒドラジド)、ジフェニルスルフォン−3,3'−ジスルフォニルヒドラジド等のスルフォニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4'−ジフェニルジスルフォニルアジド、p−トルエンスルフォニルアジド等のアジド化合物。
【0062】
これらの発泡剤は、単独で使用してもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。発泡剤の添加量は、前記した容器の物性に合うよう、発泡剤からの発生ガス量、望ましい発泡倍率等を考慮して決められるが、一般にポリプロピレン100重量部に対して0.1〜6重量部の範囲が好ましい。この範囲内にあると、気泡径の揃った発泡体容器が得られる。上記発泡材の具体的な一例としては、永和化成社の、主成分が炭酸水素ナトリウム(重曹)を用いた商品名セルボンがあり、FE−507や、セルボンSC−855、セルボンSC−P、同様に、SC−K、SC−850、SC−540など種々のグレードを有し、特に、高発泡率を有する容器を成形する場合、セルボンSC−Pを用いることが望ましい。
【0063】
また、上記バリア性を有するフィルムは、酸素等の気体を透過しないものであれば特に限定されず、前記フィルムの材質の一例としては、アルミニウム、カーボン、シリカ、さらには、EVOH等の多層フィルムを用いることにより、耐透過性のみならず耐遮光性を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の金型を示す断面平面図である。
【図2】本発明のテーパーを有する容器の成形方法を示す説明図である。
【図3】本発明のテーパーを有する容器の成形方法の一例を示す説明図である。
【図4】本発明のテーパーを有する容器の成形方法の一例を示す説明図である。
【図5】本発明のテーパーを有する容器の成形方法の一例を示す説明図である。
【図6】本発明のテーパーを有する容器の成形方法の一例を示す説明図である。
【図7】本発明のテーパーを有する容器の成形方法の一例を示す説明図である。
【図8】本発明のテーパーを有する容器の成形方法の一例を示す説明図である。
【図9】従来のテーパーを有する容器の成形方法の一例を示す説明図である
【符号の説明】
【0065】
1 容器
3 側面(テーパー部分)
5 底面
7 移動コア
7a、7b、7c、7d、7e 二次移動コア
8 固定コア
10 金型
20 キャビティ
30 コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティと、コアとの間に溶融樹脂を流し込み成形するテーパーを有する容器の成形方法であって、前記コアは、移動自在な移動コアと、固定される固定コアとを有し、前記移動コアはさらに、テーパーを成形するための1または複数の二次移動コアと、底面を成形するための1または複数の二次移動コアとの、複数の二次移動コアを有し、該複数の二次移動コアをそれぞれ移動させることにより、前記テーパーの厚みと底面の厚みとを略均一に成形することを特徴とするテーパーを有する容器の成形方法。
【請求項2】
前記複数の移動コアは、それぞれ移動量若しくは移動速度が異なることを特徴とする請求項1記載のテーパーを有する容器の成形方法。
【請求項3】
前記複数の二次移動コアの、少なくとも1の二次移動コアは、固定される二次固定コアであることを特徴とする請求項1乃至2記載のテーパーを有する容器の成形方法。
【請求項4】
前記溶融樹脂は発泡性樹脂であって、前記移動コアを移動させることにより前記発泡性樹脂の発泡容量を可変させることを特徴とする請求項1乃至3記載のテーパーを有する容器の成形方法。
【請求項5】
前記テーパーが湾曲面であることを特徴とする請求項1乃至4記載のテーパーを有する容器の成形方法。
【請求項6】
前記テーパーの角度が3度から10度であることを特徴とする請求項1乃至5記載のテーパーを有する容器の成形方法。
【請求項7】
前記二次移動コアの移動量と、テーパー部分の厚さと、テーパーの角度とが下記式により決定されることを特徴とする請求項1乃至6記載のテーパーを有する容器の成形方法。
【数1】

(ただし、θはテーパーの角度、aは二次移動コアの移動量、dは二次移動コアの移動に伴うテーパー部分の厚さの増加量)
【請求項8】
溶融樹脂とラベルとを同時に成形するインモールド成形法であることを特徴とする請求項1乃至7記載のテーパーを有する容器の成形方法。
【請求項9】
前記インモールド成形法において、バリア性を有するフィルムを同時に成形することを特徴とする請求項8記載のテーパーを有する容器の成形方法。
【請求項10】
前記バリア性を有するフィルムは、多層コーティングフィルムであることを特徴とする請求項9記載のテーパーを有する容器の成形方法。
【請求項11】
キャビティと、コアとを有する金型であって、前記コアは、移動自在な移動コアと、固定される固定コアとからなる金型において、前記移動コアは、さらに移動自在な複数の二次移動コアからなることを特徴とする金型。
【請求項12】
前記複数の二次移動コアは、それぞれ移動量若しくは移動速度が異なることを特徴とする請求項11記載の金型。
【請求項13】
前記複数の二次移動コアの、少なくとも1の二次移動コアは、固定される二次固定コアであることを特徴とする、請求項11乃至12記載の金型。
【請求項14】
前記移動コアの先端部分が鋭角であることを特徴とする、請求項1乃至13記載のテーパーを有する容器の成形方法および金型。
【請求項15】
前記移動コアの先端部分の一部が水平であることを特徴とする、請求項1乃至14記載のテーパーを有する容器の成形方法および金型。
【請求項16】
請求項1乃至15記載のテーパーを有する容器の成形方法ないし金型により成形された容器。
【請求項17】
前記容器はカップであることを特徴とする請求項16記載のテーパーを有する容器の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−160893(P2007−160893A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363901(P2005−363901)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】