説明

テーパー状管状体及びプリプレグ

【課題】 空気抵抗を大きく減少させたテーパー状管状体及びかかるテーパー状管状体を具備する釣り竿、ゴルフクラブ及び自転車用フレーム等を提供する。
【解決手段】炭素繊維等強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを硬化することよって形成されたテーパー状管状体で、その表面が先端長手方向に延びる凹部が間隔をおいて複数構成されたテーパー状管状体具備した釣り竿、ゴルフクラブ、自転車及びテーパー状管状体作成用プリプ及びその製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動時の空気抵抗を減少させるテーパー状管状体及び係る管状体を形成する炭素繊維等に樹脂を含浸したプリプレグに関する。
【背景技術】
【0002】
釣り竿、ゴルフシャフト、自転車のフレーム等の炭素繊維等強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグによって形成され、かつ回転運動等高速で機能するテーパー状管状体は、運動時の空気抵抗を減少させるため次のような構成を採られていたものがあった。
(イ)
断面形状を長軸と短軸を持つ断面長円形状にしていた(特許文献1)もの、また、流線形形状をしたもの(特許文献2)があった。
(ロ)
凹凸部を有する、ゴルフクラブシャフト、釣り竿、ラケット等のスポーツ道具用シャフトであって、表面に長さ方向に沿っていわゆるディンプル若しくは溝状の凹部を備えたものもあった。(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭59−001506
【特許文献2】実公昭62−001901
【特許文献3】特開平09−299529
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(イ)
断面を長円形状、 流線形状をした釣り竿は、なるほどキャスティング等した場合には空気抵抗は少ないものの、釣り竿にかかる負荷は1方向のみでなく、多方向にかかるため、ねじり力等に対して、バランスが悪く、不安定な場合があった。
(ロ)
スポーツ道具用シャフトであって、表面に長さ方向に沿ってディンプル若しくは複数本の溝状の凹部を備えたものあるが、溝状の凹がもうけられてはいるものの、軸方向に一定幅にかつ一様に設けられており、外形表面がテーパー状である点が全く考慮されていない。また、その溝状凹部は、一定の大きさ及び深さでなければその効果は発揮しえない。
ゴルフクラブシャフトは大きく変化するテーパーを有しておりその外径に応じたものでなければならず、また、釣り竿は肉薄であり、運動時に、先端側ほど大きく曲がる構成であることが考慮されたものである必要がある。
【0005】
本発明の目的は 釣り竿、ゴルフクラブシャフト等の炭素繊維等強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを硬化することによって形成され、回転並進運動等するテーパー状管状体について、特に先端に至るほど高速で、かつ大きく曲がることを考慮して、先端ほど空気抵抗を少なくして、軽く振りぬける釣り竿及びゴルフシャフト用等テーパー状管状体及びかかるテーパー状管状体を用いた釣り竿、ゴルフクラブ等を提供する点にある。
【0006】
更に、かかるテーパー状管状体を製作するにあたっての、炭素繊維等高強度繊維に樹脂を含浸したシート状のプリプレグを提供し、さらにその製造法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、 炭素繊維等強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを硬化することよって形成されたテーパー状管状体において、前記テーパー状管状体の外径Dに対して、軸直角方向断面視で、その幅C=0.05D〜0.1Dで、その最大深さがK=0.03mm〜0.5mmである先端長手方向に延びる凹部が間隔をおいて複数構成されていることを特徴とするテーパー管状体であり、その作用効果は次の通りである。
【0008】
凹部が、外径Dに対して上記0.05Dから0.1Dの幅で、間隔を置いて複数形成されているので、表層周面において、テーパー管状体の表面に比較的低速において(20m/sec程度)乱流境界層が構成され、カルマン渦等が発生しにくい。更に高速で回転運動等した場合にはレイノルズ数の比較的小さい範囲で、円滑表面のテーパー管状体に比較して、大きく空気抵抗が減少する。
【0009】
全周に一定間隔を置いて設けられている場合には、円周方向どのような方向で運動した場合であっても、カルマン渦等が発生しにくく、高速運動の場合には、レイノルズ数の比較的小さい範囲で、大きく空気抵抗が減少する。
【0010】
その最大深さが0.02mmから0.5mm以下としたのは、0.5mm以上深さの場合には、炭素繊維等強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグによって形成されたテーパー状管状体は通常軽量化を目的として、薄肉であるので、テーパー状管状体の基本的な機能を損なってしまうからである。
具体的には、釣り竿、ゴルフシャフトに使用した場合、釣り竿においても、ゴルフシャフトにおいても、機能上問題(釣り竿については、強度、ゴルフシャフトについては、ねじれ剛性等)が生じるからであり、
また、0.02mm以下の深さでは、円滑表面のテーパー管状体との差異は発生しにくく、比較的低速時であっても異音を発生し、空気抵抗の低減は期待できないからである。
具体的には、釣り竿に使用した場合であれば、キャスティング時等、ゴルフクラブシャフトであればスイング時において、低速時においての空気の抵抗の低減はあまり期待できず、異音を発生してしまいやすいからである。
【0011】
請求項2の発明は、複数の凹部を有する請求項1のテーパー状管状体を備えた釣り竿、ゴルフクラブ及び自転車用フレームである。
【0012】
釣り竿は、特にキャスティング等の場合、その先部は20m/secから45m/secの周速で回転するものであり、先部分では空気の抵抗を大きく受ける。また、5m以上10mもの長尺の釣り竿となると、釣り竿を保持するだけで、風の抵抗を大きく受ける。そのため従来では、断面形状を断面長円形状等して、空気の抵抗を少なくする釣り竿が紹介されていた(特許文献1、特許文献2)。しかし、断面長円形状等(図1)した場合には、風が一定方向のみ作用している場合は効果があるが、風の方向が変化した場合、かえってその対応に大きな労力を必要としてしまい、その負担は大きい。
本請求項2の発明は、先端長手方向に延びる複数の凹部が間隔をおいて設けられたテーパー状管状体を備えた、釣り竿等である。
かかるテーパー状管状体を使用した釣り竿の場合、高速で回転等してキャストする際空気の抵抗を大幅に軽減される。円形断面の管状体としているので、風の方向が急に変化しても、その方向変化に応じた効果を生じ、特別に風方向変化に対して異なった対応する必要はない。
その結果、釣り竿については、少ない力でキャストしやすく、キャスト時カルマン渦は発生しにくく従って異音も発生しにくく、違和感なく、風の方向が変化した場合でも、釣り竿をあえて、風の方向変化によって持ちかえる等の動作は不要となる。
【0013】
また、ゴルフクラブシャフトにおいて、従来の特許文献3の「複数本の溝状の凹部を備えた」管状体では、ゴルフクラブシャフトは大きなテーパーを有するテーパー状の管状体であることが考慮されておらず、ゴルフクラブシャフト元部と先部ではシャフトの外径は倍程度異なるものであるので、管状体表面の元部と先部に一律一様に溝状の凹部が設けられたものでは(図2)、ゴルフクラブ用シャフトとして適正な機能が期待できない。また先部が元部と同じように幅広のものであった場合には高速回転した場合の効果も疑問視される。かつ先部について、元部と同じような溝状凹部を設けた場合、当然打球の投打時のねじり強度等問題となる。
ゴルフクラブシャフトにおいても、凹部が、外径Dに対して上記0.05Dから0.1Dの幅で、好ましくは全周にわたって一定間隔を置いて、形成されていなければ、表層周面において、比較的低速において(20m/sec程度)乱流境界層は構成されにくく、上記幅で間隔を置いて複数形成されてなければ、カルマン渦等が発生しやすく、異音も発生しやすい。また、平滑な円形表面に比べて、レイノルズ数が低い状態での空気抵抗係数すなわちスイング時の空気抵抗の低減はできず、最終打球時でのスイングスピードの向上は図れない。
【0014】
その最大凹部深さが0.02mmから0.5mm以下としたのは、0.5mm以上の深さの場ゴルフクラブシャフトにおいても、機能上問題(ゴルフシャフトについては、ねじれ剛性等)が生じるからであり、0.02mm以下の深さでは、比較的低速時であっても異音を発生し、空気抵抗の低減は期待できないからである。
【0015】
上記凹部を有する急テーパーゴルフクラブシャフトにおいて、その急テーパー及び外径に応じて周方向に、「先端長手方向に延びる凹部が間隔をおいて複数構成」させることによって、高速時での先部の空気抵抗を大きく減少させて、かつ投打時において、強力なねじり力等がかかっても、十分に対応できるテーパー状管状体が構成されるべく配慮したもので、更に現実的に投打する際の空気抵抗を大きく減らすことができるテーパー状管状体を有するゴルフクラブとなるのである。
その結果、ゴルフクラブシャフトについては、スイング時、カルマン渦は発生しにくく、従って異音も発生しにくく、ゴルフボール投打時の終速度が向上して、より少ない力での飛距離の向上が期待できる。
【0016】
上記テーパ状管状体を使用した自転車用フレームの場合には、以上釣り竿、ゴルフシャフトと同じく高速走行時での空気の抵抗が大きく減少する。持続走行が大きく向上する。更に管状体断面が楕円形状等でないので、横風を受けた場合でも、その影響を受けにくく、カーブを走行するような場合でも安定走行が可能となる。
【0017】
請求項3に係る発明の特徴構成は、シート厚0.01から0.05mmの薄手のプリプレグシートに複数のヤーンプリプレグ若しくはシート幅0.5mmから2mmの引き揃えスリットプリプレグを圧着した請求項1のテーパー管状体用プリプレグであり、その作用効果は次の通りである。
【0018】
請求項1の「凹部が間隔をおいて複数構成」されたテーパー状管状体を形成するには、従来の均一厚みのプリプレグを常法により巻装して成型したのでは、製造はできない。
そこで、あらかじめ薄手のプリプレグシートにヤーンプリプレグ等を所定間隔をおいて圧着した「凹部成型用プリプレグ」を製作しておくのである。釣り竿若しくはゴルフクラブシャフト等を製作のための所定パターン寸法のプリプレグを芯金に巻装したのち、上記凹部成型用プリプレグを所定幅に裁断して巻装し、ポリエステルテープ等で緊縮して真空炉等で焼成するのである。
そうすることによって比較的簡単に請求項1のテーパー管状体が製作可能となる。
【0019】
請求項4に係る発明の特徴構成は、炭素繊維等強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを硬化することよって形成されるテーパー状管状体において、シリコンゴムシート若しくはフッ素樹脂シートを用いて成型する請求項1のテーパー管状体の製造法である。
すなわち、複数の凹部を有するテーパー状管状体を製作するに、従来の釣り竿、ゴルフシャフト等で用いられているプリプレグのパターン構成のものを芯金に巻装したのちに、シリコンゴムシート等の表面に一定間隔を置いた長手方向に延びる複数の凸部を形成したものを作成する。釣り竿、ゴルフシャフト等のプリプレグのパターンを芯金に巻装したその外層に、上記シリコンゴムシートの凸部を内側にして巻装する。さらにその外層をポリエステルテープ等によって緊縮し常法により焼成硬化して、ポリエステルテープ及びシリコンゴムシートを取り除きテーパー管状体を製作する。
【0020】
係る製造法によって、比較的簡単な工程を追加することによって、請求項1のテーパー状管状体が製造可能となる。
【0021】
上記シリコンゴムシート等の表面に一定間隔を置いた長手方向に延びる複数の凸部を形成するに、平坦なシリコンゴムシート等の表面にヤーンプリプレグ等も持ちいうことができる。
この場合には、凸部として形成されたヤーンプリプレグ等は、テーパー管状体と一体となって凸部を形成し、結果として請求項1の「凹部が間隔をおいて複数構成されたテーパー状管状体が形成」されたこととなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来の断面楕円を有する釣り竿及びその断面を示したものである。
【図2】従来の表面に長さ方向に沿って、複数本の溝状の凹部を具備することを特徴とする スポーツ道具用シャフトを示す。
【図3】テーパー状管状体の1部で、その表面に先端長手方向に延びる凹部が間隔をおいて複数形成された円形断面のテーパー状管状体を示す斜視図で,(b)はその1部断面である。
【図4】釣り竿で、仕掛け等をキャストする際の釣り竿の運動状態を示す。
【図4−1】キャストした際の釣り竿のテーパー状管状体周面の空気の流れの状態の1部詳細を示す。
【図5】ゴルフクラブの投打時の運動状態を示す。
【図5−1】ゴルブクラブのヘッド部の詳細を示す。
【図6】テーパー状管状体が回転運動等した場合の空気の流れの状態を示す。
【図7】本発明のテーパー状管状体のプリプレグを巻装する際の巻装図を示す。
【図7−1】凹部形成用プリプレグを示す。
【図8】凹部を形成するためのシリコーンゴム等のシートの図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
釣り竿においては、キャストの際、曲がった状態で最終的に釣り糸等はリリースされる(図4)。この曲がった状態では空気の流れ方向に対して釣り竿のテーパー状管状体断面は、楕円断面形状を呈している。図4−1のA1は凹部を、A2はその周面を示す。凹部では周方向窪み部にa1方向に空気が流れる。一方釣り竿軸方向においては、凹部が軸方向に形成されているので、運動時、テーパー状管状体凹部表面の空気は、空気自体粘性を有するため、凹部表面の空気はその遠心力によって、軸方向a3方向に空気の流れが発生する。もともとはテーパー状管状体の周方向のa2方向にも空気は流れている。よって、テーパー状管状体周方向a2及び凹部における周方向a1の空気は、両者の流れの速度方向が異なり、また軸方向であるa3方向の空気もぶつかり合って、その周面は乱流境界層域が形成され易くなる(図4−1、図6)。その結果、管状体周面において、空気の流れ方向に対してテーパー状管状体の円形断面後方で境界層剥離が起こり、比較的低速であっても、空気の抵抗は低減でき、異音等発生しにくい。
【0024】
ゴルフクラブシャフトについては、スイング時釣り竿ほど大きくは曲がらない。しかし、元部から先端部にかけてその外径は倍程度変化しており、そのテーパーの大きな変化により、凹部が軸方向にのみ形成されているのであるが、スイング時空気は軸方向a3にも流れ、しかも軸方向位置によってその空気の流れる量は一定でなく、ゴルフシャフト周面の境界部分においても釣り竿と同様乱流境界層が比較的低速で生じる。結果、同様にして低速域でも、空気の抵抗は低減でき、異音等発生しにくく、投打時の終速を向上させることができるテーパー状管状体を構成することができるのである。
【0025】
本発明のテーパー状管状体Aを有した釣り竿F及びゴルフクラブシャフトGのテーパー状管状体Aについて説明する。図3に示すように、テーパー状管状体Aは、軸線に沿って先端長手方向に延びる凹部が間隔をおいて複数構成されている。A2はテーパー状管状体の円周面である。凹部A1はその最大深さがK=0.02mm〜0.5mmで、その幅はC=0.05D〜0.1Dに形成されている。Dはテーパー状管状体の外径であり、凹部A1は全円周ほぼ均一に形成されている。
【0026】
図3では凹部A1はテーパー管状体の軸方向全体に形成されているが、風の影響を強く受ける部分若しくは高速で運動(回転運動含む)する部分の1部であってもいい。釣り竿1においては、穂先竿F1等に設けた場合はキャストの際ほとんど曲がってしまうが、穂先においては空気の流れ
a はキャスティングの際軸方向に流れるので、凹部に沿った流れとなりこの場合でも空気の抵抗は極めて小さい。キャスティング竿においては、図4の楕円部Tの部分に凹部A1を施すのが、空気抵抗を減少させるに最も効果的である。図4−1には、楕円部Tの空気の流れの詳細を示す。a2はテーパー状管状体周面方向の空気の流れ、a1はテーパー状管状体の凹部の近傍の周方向の空気の流れ、a3はテーパー状管状体表面の軸方向の空気の流れ方向を示す。
【0027】
図5には本発明のテーパー状管状体Aを用いたゴルフクラブGを示す。Rはゴルフクラブシャフトでゴルフボールを投打する際のゴルフクラブシャフトの回転方向、a はゴルフクラブシャフト表面及びゴルフクラブヘッドH表面での空気の流れの概略を示す。ゴルフクラブシャフトGにおいても、投打時の速度が最も早くなる先部分のゴルフクラブヘッドHに近い部分の1部に形成されている場合には、空気抵抗を減少させるに最も有効である。また、図5−1に示すとおりゴルフクラブヘッドH部分両側表面に上記同様の凹部A1を設けた場合には、なお有効である。この場合の凹部A1の幅C及びその深さKはゴルフクラブシャフトAに形成された凹部A1と略同一のものであればいい。
【0028】
キャスティング時及び投打時において空気の抵抗が小さくなる理由について図6に基づいてさらに詳細に説明する。
テーパー状管状体軸方向に上記凹部A1をその周面に複数設けることにより、釣り竿ではキャスティング時、ゴルフクラブシャフトでは投打時、テーパー状管状体表面の空気の流れは、図6に示すとおり円周方向にa2、凹部A1の窪み部分にa1,軸方向にa3ごとき様相となる。テーパー状管状体Aがある速度で回転運動等すると、a1,a2の流れは、テーパー状管状体円形周面の先端Atではテーパー状管状体との相対速度では同一速度であるが、それぞれ表面の長さが異なるため、流れa1が凹部を通過する際では、a2とは速度は同一でなくなり、かつ凹部表面に沿った流れa1は、a2とはその方向も異なる。よって、テーパー状管状体軸方向に対して略直角方向では、凹部A1と円周表面A2とでは空気の流れは一致しない。かつテーパー状管状体凹部の空気はその粘性によって、回転による遠心力が作用して軸方向a3に移動し、速度が異なることによる円周方向の凹部a1と周面a2の空気のながれの不一致と軸方向a3の空気流れとあいまって、比較的低速でテーパー状管状体が回転運動等する場合、その管状体表面の表層は乱流境界層を形成するのである。
その結果、レイノルズ数(Re)が比較的小さい段階であっても、空気の層の境界層剥離はテーパー状管状体円外周の空気の流れ方向に対しては、前部ではおこらず、平滑の円筒形表面における抵抗係数に比較して、抵抗係数が大きく減少するのである。
【0029】
本発明のテーパー状管状体の製造方法について図7に基づいて説明する。
あらかじめ離形剤及び炭素繊維にエポキシ樹脂等を含浸したプリプレグPを貼り付けるための接着剤を芯金Mに塗布する(図示せず。)。周方向に繊維が配されたプリプレグP1を巻装する。相互に逆方向に繊維が傾斜した2枚のプリプレグ(バイアスプリプレグ)を貼り合わせたプリプレグP2を巻装する。軸方向に繊維が配されたプリプレグP3を巻装する。先部(P5)及び元部(P4)補強プリプレグ(釣り竿では嵌合合わせ用パターン)を巻装する。これらP1からP5のプリプレグは製造状況に応じて、それぞれ張り合わせて巻装してもいいし、さらに機能に応じて他のプリプレグを追加してもいいし、削除してもいい。次に凹部形成用プリプレグPPを巻装する。さらにシリコンゴムシートSS若しくはフッ素樹脂性シートSTを巻く。係るシートを巻くのはテーパー状管状体の凹部形状の輪郭を明確にするためである。
次にプリプレグによる釣り竿、ゴルフシャフトの成型の常法により、ポリエステルテープ等を巻き緊縮し、所定焼成温度で成型する。ここで、成型は真空炉で常法により成型するのが望ましい。
焼成後、ポリエステルテープ、シリコンゴムシート等を取り除き、バフ研磨等処理後塗装、部品等の組み立てを行う。
【0030】
次に図7−1に示す凹部形成用プリプレグPPについて説明する。
薄手のプリプレグPt(例えば炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸した引き揃えプリプレグで厚みC=0.01〜0.05mm)に500F(フィラ)〜1000Fのカーボンヤーンにエポキシ樹脂を含浸したヤーンプリプレグPfを、軸方向に対して間隔をおいて複数上記薄手プリプレグに張り合わせて製作する。上記ヤーンプリプレグPfは、炭素繊維引き揃えプリプレグの厚み0.03〜0.2mm程度のものを0.5〜1mm程度の幅にスリットしたものでもいい。
上記間隔Cは、管状体外径Dに対して、C=0.05D〜0.1Dであることが必要である。
【0031】
上記薄手のプリプレグPtを用いる代わりに、図8に示すとおり離形性の優れた上記と同様の軸方向凹凸を有するシリコン製のゴムシートを用いることもできる。かかる場合はテーパー状管状体を製作するための炭素繊維によるプリプレグを芯金に巻装した後、軸方向凹凸を有するシリコン製のゴムシート等を巻装し、ポリエステルテープ等で緊縮、真空炉等にて焼成した後、シリコン製のゴムシート及びポリエステルテープ等を取り除き、周方向に複数の軸方向凹部を有するテーパー状管状体を製作する。この場合には、ヤーンプリプレグPfの代用のための厚みとしてSf=0.02〜0.5mmの凸部を所定の間隔に形成する。
【0032】
別途、シリコン製のゴムシートStに前述のヤーンプリプレグPf(カーボン引き揃えプリプレグを所定の細幅にスリットしたものを含む。)を所定間隔をおいて張り合わせて形成してもいい。かかる場合は、真空炉等にて焼成した後、エステルテープ及びシリコン製のゴムシートStを取り除き、ヤーンプリプレグPfはテーパー状管状体と一体となって、ヤーンプリプレグPf部分が凸部(外周面)となり、結果所定の一定幅の凹部A1を有したテーパー状管状体Aが形成可能となる。
シリコン製ゴムシートSt等の厚みStは、0.1〜0.5mm程度が適当である。
【符号の説明】
【0033】
1 釣り竿
2 スポーツ道具用シャフト(従来のゴルフシャフト、釣り竿等)
A テーパー状管状体
A1 テーパー状管状体の凹部
A2 テーパー状管状体の周面
F1 穂先竿
a 空気の流れ
a1 凹部周方向空気の流れ
a2 周面方向空気の流れ
a3 軸方向空気の流れ
G ゴルフクラブ
R ゴルフクラブの投打時の回転方向
H ゴルフクラブヘッド
At テーパー状管状体円形周面の先端
M 芯金
P(P1〜P5)炭素繊維に樹脂を含浸したプリプレグ
Pt 薄手のプリプレグシート
Pf ヤーンプリプレグ
SS シリコンゴムシート
ST フッ素樹脂性シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維等強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを硬化することよって形成されたテーパー状管状体において、前記テーパー状管状体の外径Dに対して、軸直角方向断面視で、その幅C=0.05D〜0.1Dで、その最大深さがK=0.03mm〜0.5mmである先端長手方向に延びる凹部が間隔をおいて複数構成されていることを特徴とするテーパー管状体。
【請求項2】
前記複数の凹部を有する請求項1のテーパー状管状体を備えた釣り竿、ゴルフクラブ及び自転車用フレーム。
【請求項3】
シート厚0.01から0.05mmの薄手のプリプレグシートに複数のヤーンプリプレグ若しくはシート幅0.5mmから2mmの引き揃えスリットプリプレグを圧着した請求項1のテーパー管状体用プリプレグ。
【請求項4】
炭素繊維等強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを硬化することよって形成されたテーパー状管状体において、シリコンゴムシート若しくはフッ素樹脂シートを用いて成形する請求項1のテーパー管状体の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4−1】
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【図5】
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【図5−1】
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【図6】
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【図7】
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【図7−1】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−252813(P2010−252813A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−181573(P2010−181573)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(710001074)
【Fターム(参考)】