説明

ディジタル音声放送における密度の細かい及び密度の粗い周波数オフセット推定の方法及び装置

【課題】ハイブリッド帯域内オンチャンネルのディジタル音声放送システムにおける周波数オフセット推定の方法及び装置を提供する。
【解決手段】OFDM通信システムにおいてシグネチャシーケンスを含むディジタル信号を受信する受信機600は、少なくとも2つの周波数を用いて受信されたディジタル信号の相関性を求めるためにシグネチャシーケンスに適したループフィルタ700と、ある1つのビンの近傍に相関性のあるピークを位置づけるために、最大の振幅をもつ相関性のあるピークを提供する周波数の1つを選択するVCO605と、を備え、実際の及び測定された位置との間のOFDMビン分離の整数に応じて最初に密度の粗い周波数オフセットを決定し、その後に、連続的なやり方で密度の細かい(すなわち残余の)オフセットの推定及びトラッキングを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタル音声放送(DAB)及びその他のディジタル通信システムに関し、特に、ディジタル音声放送(DAB)及びその他のディジタル通信システムにおける周波数オフセット推定の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
FMラジオ帯域におけるディジタル音声放送(DAB)を供給するために提案されているシステムには、CD音質に近い音、データサービス、及び現在のアナログFM送信電波より高い受信可能性が期待されている。しかしながら、完全ディジタルDABへの移行が完了するときまでは、放送局の多くは、使用が許可されている同じ帯域内において、アナログ信号とディジタル信号とを同時に送信できる中間措置が必要である。このようなシステムは一般的にはハイブリッド帯域内オンチャネル(HIBOC)DABシステムと呼ばれている。また、このシステムはFMラジオ帯域及びAMラジオ帯域の両方で開発されている。
【0003】
従来のアナログFM受信機における大きな歪みを回避するために、代表的なFM HIBOC DABシステムにおけるディジタル信号は、直交周波数分割多重(OFDM)サブキャリアを用いて、例えばアナログFMホスト信号の両側にある2つのサイドバンドで送信される。OFDM通信システムにおいては、ディジタル信号はパラレルに送信される2つの小さなサブキャリア周波数に変調される。
【0004】
米国においては、FCC(米国連邦通信委員会)規則によって制定された周波数プランは、地図エリアにおける各送信局を800kHzで分割している。しかしながら、隣接した地理的エリアにおけるすべての送信局は、近くの送信局から200kHzしか離れていない。このようなシステムにおいて特に大きな干渉源は、第1隣接アナログFM干渉として知られている。この干渉が起こるのは、隣接の地理的エリアにおけるFMホストキャリアの部分が周波数的にディジタル信号サイドバンドの部分に重なるときである。
【0005】
しかしながら、最初に隣接アナログFM干渉が発生したときに、それがDABシステムの特性上で限界の要因に相当するにもかかわらず、一般的にそれが影響するのは、2つのディジタルサイドバンドの一方のみである。最初の強い隣接干渉信号の存在は、たとえ2つのサイドバンドの1つが干渉を受けない場合であっても、ディジタル信号送信の特性を大きく低下させることになる。
【0006】
周波数オフセット推定方法は、ほとんどの通信システムにおいて実行される。ほとんどのディジタル通信システムにおいて、周波数エラーは時間領域における情報を用いて計算され、フィードバック又は順方向エラー補正がそのエラーの補正のために用意されている。しかしながら、IBOCの場合における時間領域は、最初の隣接干渉のために隣接チャネルからの帯域内電力によって大きな影響を受ける。さらに、時間領域動作におけるタイミングエラーは、周波数エラー計算に係わってくる。
【0007】
従来の周波数オフセット推定のアルゴリズムのほとんどは、周波数領域における密度の粗い周波数オフセットを推定した後に、密度の細かい周波数オフセット推定を最初に実行して時間領域における補償を行っている。一般的に、密度の細かい周波数オフセット推定は、時間領域におけるOFDMフレームの巡回接頭部分の位相回転を推定することによって実行される。その後、対応する密度の細かい周波数オフセットは推定された位相回転から容易に引き出される。
【0008】
従来の周波数オフセット推定のアルゴリズムの詳細な内容については、例えば、J.Van de Beekの“Time and Frequency Offset Estimation in OFDM Systems Employing Pulse Shaping”I.E.E.E.ICUPC Conference(April,1997),に記載されている。それはこの明細書の中で参照されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、最初の隣接干渉の存在でさえも、信頼できる特性をもたらす周波数オフセット推定方法が必要となる。さらに、周波数領域において周波数オフセット推定とフレーム同期とを独立して実行できる方法及び装置が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ディジタルディジタル音声放送(DAB)システムのハイブリッド帯域内オンチャネル(HIBOC)における周波数オフセット推定の方法及び装置について、一般的に記述する。周波数オフセット推定のアルゴリズムは、相関性のあるピークの実際の位置と測定した位置との間におけるOFDMビン分離の整数に応じて最初に密度の粗い周波数オフセットを決定し、それに続いて連続的なやり方で密度の細かいオフセットの推定及びトラッキングを行う。
【0011】
密度の粗い周波数オフセットの推定は密度の細かい周波数オフセットの推定が達成される前に実行されるので、その密度の粗い周波数オフセットは任意の数にすることができる。周波数オフセットがビンに近いところで発生する場合には、その相関性出力は相対的に良好なピークをもつことになる。しかしながら、周波数オフセットが2つのビンの中間で発生する場合には、その相関性出力は最悪の場合のピークをもつことになる。
【0012】
本発明の1つの特徴によれば、1つのフレームは最初の1つの周波数と相関関係にあり、その周波数は所定の量でシフトされる。例えば、ビン間の周波数であるΔfの半分でシフトされ、その後に再び相関関係をもつ。複数の周波数値の最も高いピークで測定される。その相関関係は少なくとも2つの周波数について、そのビン間の周波数幅であるΔfの半分の相対的なオフセットで実行されるので、少なくとも1つの周波数はビンの近くの相関性のあるピークに位置づけられることになる。
【0013】
密度の粗い周波数オフセット推定のアルゴリズムは、バーカー符号のようなシグネチャシーケンスを利用して、周波数領域においてOFDMシステムにおけるサブキャリアの中の既知の周波数点に離散的に含まれている基準情報を提供する。周波数領域において、送信された信号のピークを識別することと、必要とされる密度の粗い周波数オフセット調整を決定することとの相関関係が利用される。計算された密度の粗い周波数オフセットは順方向補正機構に供給され、OFDMサブキャリアの整数に応じて密度の粗い周波数オフセットが補正される。
【0014】
+ffr/2〜−ffr/2(ffrはOFDMビン分離を示す)の範囲における密度の細かい周波数オフセットを推定し補償するためには、その密度の粗い周波数オフセット及び補償はそれまでに完成していなければならない。密度の細かい周波数オフセット推定のアルゴリズムは、周波数領域における基準周波数点に含まれている位相情報を利用する。基準ベクトルの位相回転は周波数エラーに比例し、その周波数エラーは時間領域において抽出されてフィルタ処理される。最初の密度の細かい周波数オフセットの推定は補正され、連続的な周波数トラッキングに使用される。計算された密度の細かい周波数オフセットは順方向補正機構に適用され、サブキャリア空間よりも小さい量によって密度の細かい周波数オフセットが補正される。
【0015】
OFDMシステムにおける各上側サイドバンド及び各下側サイドバンドの内部のほとんどのビンは変調されていない。密度の粗い周波数オフセット推定の後は、変調されていないビン及びすべてのビンは、OFDMビン分割の少なくとも半分内にある。変調されていないビンは周波数オフセットの密度の細かい端数を推定するのに使用することができる。周波数オフセットが存在する中で複合ビン回転を開始する。回転のレートは周波数オフセットの拡張の関数である。密度の細かい周波数オフセット推定のアルゴリズムは、回転のレートをゼロに等しくしようと試みる。ある1つのフレームから次ぎのフレームへの位相の変化は回転のレートに比例し、回転の符号はシフトの方向を示している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明によるハイブリッド帯域内オンチャネル(HIBOC)ディジタル音声放送(DAB)システムの一例における周波数スペクトルの一部の図。
【図2】本発明の実施形態によるハイブリッド帯域内オンチャネル(HIBOC)ディジタル音声放送(DAB)システムの一例における送信機の概略ブロックダイアグラムの図。
【図3】本発明によるシグネチャOFDMフレームのフォーマットの図。
【図4】本発明の実施形態によるハイブリッド帯域内オンチャネル(HIBOC)ディジタル音声放送(DAB)システム内で密度の粗い周波数オフセット推定のアルゴリズムが具体化できる受信機の一例の概略ブロックダイアグラムの図。
【図5】275Hzのビン分離をもつシステム100Hzの密度の細かい周波数オフセットにおける相関性のある出力の図。
【図6】本発明の実施形態によるハイブリッド帯域内オンチャネル(HIBOC)ディジタル音声放送(DAB)システム内で密度の細かい周波数オフセット推定のアルゴリズムが具体化できる受信機の一例の概略ブロックダイアグラムの図。
【図7】図6における2次元ループの詳細を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、FM HIBOC DABシステムにおける周波数オフセットを推定する方法及び装置を提供するものである。周波数オフセット推定のアルゴリズムは、相関性のあるピークの実際の位置と測定した位置との間におけるOFDMビン分離の整数に応じて最初に密度の粗い周波数オフセットを測定し、それに続いて連続的なやり方で密度の細かいオフセットの推定及びトラッキングを行う。
【0018】
例えばバーカー符号のように極めて低いサイドローブをもつ周期シグネチャシーケンスは、DABシステムにおける特定数のビンにDAB信号の上側及び下側サイドバンドとともに送信される。その符号が受信機に対して既知の特定のビンに一度割り当てられると、周波数オフセットエラーを担う位置からのすべてのシフトは、従来のフィードバック又は順方向エラー補正技法を用いて、周波数オフセットアルゴリズムにより推定し補償することができる。
【0019】
後述するように、密度の粗い周波数オフセット推定のアルゴリズムは、バーカー符号のようなシグネチャシーケンスを利用して、周波数領域においてOFDMシステムにおけるサブキャリアの中の既知の周波数点に離散的に含まれている基準情報を提供する。周波数領域において、送信された信号のピークを識別することと、必要とされる密度の粗い周波数オフセット調整を決定することとの相関が利用される。計算された密度の粗い周波数オフセットは順方向補正機構に適用され、OFDMサブキャリアの整数によって密度の粗い周波数オフセットが補正される。
【0020】
密度の粗い周波数オフセットの推定は密度の細かい周波数オフセットの推定が達成される前に実行されるので、その密度の粗い周波数オフセットは任意の数にすることができる。周波数オフセットがビンに近いところで発生する場合には、それに相関する出力は相対的に良好なピークをもつことになる。しかしながら、周波数オフセットが2つのビンの中間で発生する場合には、それに相関する出力は最悪の場合のピークをもつことになる。
【0021】
このように、本発明による密度の粗い周波数オフセット推定は、OFDMフレームごとにシグネチャシーケンスを利用して、各フレームに特定の目的をもつ複数のビンを用意する。1つのフレームは最初の周波数に相関し、その周波数は所定の量でシフトされる。例えば、ビン間の周波数であるΔfの半分でシフトされ、その後に再び相関関係をもつ。複数の周波数値の最も高いピークで測定される。その相関関係は少なくとも2つの周波数について、そのビン間の周波数幅であるΔfの半分の相対的なオフセットで実行されるので、少なくとも1つの周波数はビンの近くの相関性のあるピークに位置付けられることになる。
【0022】
後述するように、密度の細かい周波数オフセット推定のアルゴリズムは、周波数領域における基準周波数点に含まれている位相情報を利用する。基準ベクトルの位相回転は周波数エラーに比例し、その周波数エラーは時間領域において抽出されて(後述する図6に示すFFTブロック660の後において)フィルタ処理される。最初の密度の細かい周波数オフセットの推定は補正され、連続的な周波数トラッキングに使用される。計算された密度の細かい周波数オフセットは順方向補正機構に供給され、サブキャリア空間よりも小さい量によって密度の細かい周波数オフセットが補正される。
【0023】
図1は、典型的なFM HIBOC DABシステムにおける周波数スペクトルの一部を示し、周波数fの関数としてのパワーPをプロットした図である。図1に示すスペクトルには、アナログホストFM信号100に関連した下側ディジタルサイドバンド102及び上側ディジタルサイドバンド104が含まれている。その2つのサイドバンドは、HIBOC DABシステムのディジタル音声情報を送信するために使用される周波数スペクトルの一部に相当する。
【0024】
後述するように、実施形態におけるシステムにおいては、外側の巡回冗長符号(CRC)及び差動4相位相シフトキーイング(DQPSK)のOFDM変調を使用する。送信されるシンボルのDQPSK変調は、周波数選択フェージング及び発振位相のドリフトに対する強靱性を可能にする。差動符号化はOFDMトーン間の周波数において実行される。送信されるべきディジタル信号及び外側のCRCブロック符号は、各サイドバンド102、104において繰り返すことができる。しかしながら、両方のサイドバンド上の符号化されたストリームが同じである必要はない。
【0025】
図1に示すように、各サイドバンドには、それぞれ102−1ないし102−N及び104−1ないし104−Nからなる複数のN成分が含まれている。例えばその成分は、直交周波数分割多重(OFDM)のサブキャリアに対応することができる。パイロットトーン103がサイドバンド102の両端に存在し、パイロットトーン105がサイドバンド104の両端に存在する。さらに複数のパイロットトーン(図示せず)が図の周波数スペクトルの他の部分に存在する。
【0026】
パイロットトーン103、105は選択されたOFDM基準トーンに対応し、干渉の存在を測定するのに使用することができる。変調されていないパイロットトーン103、105は、DABスペクトル全域のどこにでも配置することができ、サイドバンド上の配置の中で主として有利な位置は、周波数全領域のDQPSK復調において基準点として使用すべき位置である。
【0027】
図2は、典型的なFM HIBOC DABシステムにおける本発明による送信機200を示している。図2に示されているのは送信機200のディジタル部分のみ、すなわち、ディジタル信号の発生及び処理に関係する部分である。また、従来の処理要素がアナログ信号の処理のために使用される。PAC音声符号器202は符号化された音声信号、例えば、音声圧縮技術を用いた96bpsのビットレートの音声信号を発生する。その音声圧縮技術は、例えばD.Sinha、J.D.Johnson、S.Doward、S.R.Quackenbushによる“The Perceptual Audio Coder”のタイトルで、CRC出版のDigtal Audioのセクション42の42−1から42−18ページに記載されており、この明細書中で参照される。
【0028】
符号化された音声ビットストリームはCRC符号器204に供給され、CRC誤り検出ブロック符号を用いた従来の手法におけるCRCビットが発生される。CRCはシステム200で使用される「内部符号」のタイプの1つの例である。他の内部符号としては、例えば、リードソロモン(RS)符号、Bose−Chadhuri−Hocquenghem(BHC)符号、及びその他のブロック符号がある。
【0029】
図2に示すように、FM HIBOC DAB送信機200は畳込み符号器220も備えている。例えばこれは、相補型パンクチャ畳込み(CPPC)符号器であり、よく知られているCPPC技法ににしたがって音声ビットストリームを符号化する。FM HIBOC DABシステム200は、さらにインターリーバ222、DQPSK変調器224、及びOFDM変調器226を備えている。
【0030】
従来の直交周波数分割多重(OFDM)のさらに詳細なものとして、例えばW.Y.ZouとY.Wuによる“COFDM−An Overview”のタイトルでIEEE Trans.Broadcasting,Vol.41.No.1,1−8(May1995)に記載されたもの、又は、J.A.C.Binghamによる“Multicarrier Modulation for Data Transmission:An Idea Whose Time Has Come”のタイトルでIEEE Comm.5−14(May1990)に記載されたものがあり、それぞれこの明細書中で参照される。
【0031】
一般的には、符号器220における畳込み符号化は、システム200の中で使用できる「外部符号」のタイプの一例である。他のタイプの外部符号も使用することができ、ブロック又は畳込み符号にいわゆる「ターボ」符号として含まれており、符号化変調されたトレリス(trellis)に付随して符号化される。OFDM変調器226の変調出力は、ディジタルサイドバンド102、104に一致し、FM放送チャネル230を介して受信機(図示せず)に送信される。DQPSK変調器224は、インターリーブビットストリームを処理することで、各2つのビットに対して1つのQPSKシンボルを発生する。そのシンボルはOFDM変調器226によって適切なサブキャリアに写像される。
【0032】
図3は、本発明によるシグネチャOFDMフレームのフォーマットを示している。ここで特に言及することは、バーカーシーケンスを搬送するn個のビンはシグネチャビン310、330と呼ばれること、及び、シグネチャビンを有するOFDMフレームはシグネチャフレームと呼ばれることである。最大周波数オフセットがM個のビンである場合には、周波数オフセットアルゴリズムはサイズがn+2Mビン分離の検索窓を使用する。そして、その窓の中央にバーカーシーケンスを維持しようとする。図3に示すように、本発明はサイズがMで4つの不確定領域305、315、325、335を使用する。ここでMは、最大の正及び負の周波数オフセット値に対する範囲の受信機の処理を中止できるビンのグループ(サブキャリア)である。
【0033】
1. 密度の粗い周波数オフセット推定
密度の粗い周波数オフセット推定のアルゴリズムは、予想されたビン位置のセットの所定の最大周波数オフセット内のシグネチャビンを検索する。この周波数オフセット推定のアルゴリズムは、周波数領域における密度の細かい及び密度の粗い周波数オフセットを並行して推定できる。密度の細かい及び密度の粗い周波数オフセットを並行して推定するアルゴリズムは、入力する搬送波の迅速な取得及びトラッキングを可能にし、さらに複数のタイプの干渉に対する防御を可能にする。
【0034】
密度の粗い周波数オフセット推定のアルゴリズムについての受信機400のシステムブロックダイアグラムを図4に示す。密度の粗い周波数オフセット推定のアルゴリズムは、OFDMフレームごとの各上側サイドバンド及び各下側サイドバンド上の7個の連続したサブキャリア(n=7)を13ビットのバーカーシーケンスによって変調する。そのシーケンスは7個の連続したフレーム上に拡散しかつ反復する。そのため、DQPSKサブキャリアの各々は7番目のシンボルを除き、バーカーシーケンスの2ビットを搬送する。7番目のシンボルは関連する1ビットのみを搬送する。
【0035】
そのアルゴリズムは、最初のシグネチャビンの不確定範囲(±Mビン)内でこれらのサブキャリアを検索する。相関する7個の連続したビンが13ビットのバーカーシーケンスを既知のシグネチャシーケンスとともに搬送することによって、OFDMサブキャリアの数に応じた密度の粗い周波数オフセットを容易に推定できる。
【0036】
密度の細かい周波数オフセット推定は密度の粗い周波数オフセット推定の前に実行することはできないので、厳しい搬送波間の干渉がわずかなオフセットレベルに重大に影響すると予想される。最悪の場合には、オフセットレベルがシンボルレートの半分に近くなると、非常に厳しい搬送波間の干渉の結果、密度の粗い周波数オフセットの推定ができなくなる。
【0037】
この問題を軽減するために、受信信号及びシンボルレートの半分までの受信信号の周波数シフトバージョンの両方について相関関係が観測される。その相関関係は2つの周波数に対して実行されるので、ビン間の周波数幅Δfの半分の相対的オフセットの場合には、少なくとも1つの周波数は1つのビン近傍の関連するピークに位置することになる。言い換えれば、搬送波間の干渉レベルは、2つの周波数位置の少なくとも1つの位置については許容できることになる。
【0038】
3相関周期で相関性のあるピークを配置したことから、各周波数(図4におけるスイッチ405の位置)に対して、受信機400は、図4に示すように、シフトされたビンの数に応じて密度の粗い周波数オフセットを推定することができる。密度の粗い周波数オフセット推定のアルゴリズムはまた、周波数領域において信号周波数が隣のビンに近づくようなスイッチ位置を決定する。
【0039】
受信機400は、FFTブロック410の2つの出力である+NtoN+n及び−N−nto−Nを処理する。ここで、出力+NtoN+nは上側シグネチャビンの位置に一致する。そして、出力−N−nto−Nはいかなる周波数オフセットも存在しない下側シグネチャビンの位置に一致する。受信した周波数領域の信号がある周波数オフセットだけシフトされて、FFT動作前のフレームレートの整数倍と等しくなった場合には、周波数領域におけるこの周波数シフトは、FFTの出力においてシンボルの整数に応じた時間シフトに変換される。言い換えれば、FFTブロック410の出力における信号パターンは、周波数オフセットの符号によって右又は左に±Δnだけシフトされることになる。
【0040】
図4に示すように、受信機400はさらに、パラレル/シリアル・コンバータ420、差動符号器430、QPSKシンボル/ビット・写像器440、バーカー整合フィルタ450、(2を超えるバーカーシーケンスを積分して)相関性のあるピークを識別する閾値検出器460、複合器470、及び、最大値検出器(MLE)475を備えている。
【0041】
図5は100Hz細部周波数オフセットに対する相関出力500を示している。最大の相関ピーク510は、スイッチがある1つの位置にあるときに達成されているのが分かる。このスイッチの位置は、実施形態において示すように、シンボルレートの半分又は134Hzまでの受信信号のシフトに対応している。最初の100Hzのオフセットと比較すると、この密度の細かいオフセットは搬送波間の干渉をより低くなるように導くので、より大きな相関ピークが相関性出力において達成される。
【0042】
2.密度の細かい周波数オフセット推定のアルゴリズム
+ffr/2〜−ffr/2(ffrはOFDMビン分離を示す)の範囲における密度の細かい周波数オフセットを推定し補償するためには、その密度の粗い周波数オフセット及び補償は、上記手順においてそれまでに十分に完成していなければならない。言い換えれば、受信信号は、密度の細かい周波数トラッキングのアルゴリズムが開始する前の上記した周波数範囲内において、局部発振器と同期していなければならない。
【0043】
OFDMシステムにおける各上側サイドバンド及び各下側サイドバンドの内部の変調されていないほとんどのビンは、受信機においてDQPSK変調信号の差動復号化に利用される。これらのパイロットは、密度の細かいオフセット推定にも同様に利用される。密度の粗い周波数オフセット推定の後は、変調されていないビン及びすべてのビンは、OFDMビン分離の少なくとも半分内にある。変調されていないビンは周波数オフセットの密度の細かい端数を推定するのに使用することができる。周波数オフセットが存在する中で複合ビンは回転を開始する。回転のレートは周波数オフセットの拡張の関数である。密度の細かい周波数オフセット推定のアルゴリズムは、回転のレートをゼロに等しくしようとする。ある1つのフレームから次ぎのフレームへの位相の変化は回転のレートに比例し、回転の符号はシフトの方向を示している。
【0044】
密度の細かい周波数オフセット推定のアルゴリズムのための受信機600のシステムブロックダイアグラムを図6に示す。上側及び下側パイロットトーン103、105(DQPSK基準シンボル)に関連しているFFT620の2つの出力の位相は、フレームからフレームへを基礎として連続的に推定される。また、各フレームの間隔のビン回転は、図6に示すように、位相推定器630によって推定される。前に示したように、ある1つのフレームから次ぎのフレームへの位相の変化は回転のレートに比例する。
【0045】
2つのフレーム間の位相の変化は遅延要素640によって得られ、その後、積分器650は、後述するように、N個のフレームを高い値にするために使用されれる。乗算器660は、上側又は下側のパイロットビンに対応する相対的な電力に基づいて重みを得る。その後、加算器670は上側又は下側のパイロットビンからの結果を合成する。
【0046】
ΔΘのフレーム間の位相回転及びffrのフレームレートで、残余の(すなわち密度の細かい)周波数オフセットは次の式で推定することができる。
【数1】

【0047】
位相回転の推定は、隣接変調ビンからのビン間の干渉によって妨げられ、特にオフセット値が大きいほど妨げられる。この影響を解消するためと、同時に背景ノイズやフェージングの影響も解消するために、ループフィルタの前の積分器650によって、N個の連続したΔΘの値の連続的な積分が実行される。さらに、上側及び下側における2つの高められた信号が基準化され、最大比の混合方法で混合される。この技法は、より強力なパイロットは周波数回転の推定において支配的な割当を持つという方法で、2つの狭帯域パイロットトーンでチャネル選択フェージングの影響を解消する。
【0048】
図7は、図6の2次元ループフィルタ700をさらに詳細に示したものである。2次元ループフィルタ700は、例えば、よく知られている進み遅れフィルタ(lead−lag filter)で具体化することができ、内部に2次元位相同期ループを用いている。1つの具体例として、2次元ループフィルタ700は利得が1の純積分器及び利得が0.10500の比例分岐で構成される。そのループ利得は、与えられるループフィルタパラメータによって決定される。これは0.8032Hz/VoltのVCOと同じである。これらの数は固定点の制度に合わせて選択されたものである。
【0049】
周波数獲得処理を速めるために、VCOは密度の粗いかつ密度の細かい周波数オフセット推定値で初期化される。その推定値は最初の3つのOFDMフレームのパイロット位相回転によって測定されたものである。この技法では、条件が悪い場合のシナリオ(70Hz細部オフセット)では周波数の獲得を中止する期間を7フレームより少なくすることができる。従来においては、提案されたVCO初期化がない場合には、20フレームの長さにまで及んでいた。
【符号の説明】
【0050】
100 ホスト信号
102 下側サイドバンド
103、105 変調されていないパイロットトーン
202 PAC音声符号器
204 CRC符号器
220 畳込み符号器
224 DQPSK変調器
226 OFDM変調器
305、315、325、335 不確定領域
310、330 シグネチャビン
400、600 受信機
405 スイッチ
410、620 FFT
420、610 パラレル・シリアル・コンバータ
430 差動復号器
440 ビット写像器
450 バーカー整合フィルタ
460 閾値検出器
470 合成器
475 最大値検出器
500 相関性出力
510 最大相関性ピーク
605 VCO
630 位相推定器
640 遅延要素
650 Nフレーム積分器
655 電力推定器
660 乗算器
670 加算器
700 ループフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
OFDM通信システムにおける密度の粗い周波数オフセット推定の方法であって、
A)シグネチャシーケンスを含むディジタル信号を受信するステップ、
B)少なくとも2つの周波数の各々と前記受信されたディジタル信号の相関性を求めるステップ、及び
C)ある1つのビンの近傍に相関ピークを位置づけるために、最大の振幅をもつ相関ピークを提供する周波数の1つを選択するステップ
を備える方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、さらに、
D)前記シグネチャシーケンスに関連した相関ピークが予測された位置にあるかどうかを測定することによって、密度の粗い周波数オフセットを推定するステップを有する方法。
【請求項3】
請求項1の方法において、前記シグネチャシーケンスは、バーカー符号であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1の方法において、前記シグネチャシーケンスは、周波数領域において既知の周波数点を離散的に含む基準情報を提供することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1において、さらに、
E)計算された密度の粗い周波数オフセットを順方向補正機構に供給するステップを有する方法。
【請求項6】
請求項1の方法において、さらに、
F)計算された密度の粗い周波数オフセットフィードバック機構に供給するステップを有する方法。
【請求項7】
OFDM通信システムにおける密度の細かい周波数オフセット推定の方法であって、
A)OFDMビン分離の所定距離内にある1つのOFDMビンの近傍にあるシグネチャシーケンスに関連した相関ピークの位置づけるために密度の粗い周波数オフセットを推定するステップ、
B)少なくとも2つのフレームにおける1つの変調されていないビンの位相の変化を評価するステップ、及び
C)前記位相の変化に基づいて密度の細かい周波数オフセットを推定するステップ
を備える方法。
【請求項8】
請求項7の方法において、前記密度の粗い周波数オフセット推定は、前記OFDMビン分離の半分のところに相関ピークを位置づけることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7の方法において、さらに、
D)時間領域における前記密度の細かい周波数オフセットを抽出してフィルタ処理するステップを有する方法。
【請求項10】
請求項7の方法において、さらに、
E)連続的な周波数トラッキングのために前記密度の細かい周波数オフセット推定を補正して使用するステップを有する方法。
【請求項11】
請求項7の方法において、周波数オフセットの拡がりは前記位相の変化の回転のレートの関数であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項7の方法において、さらに、
F)回転のレートをゼロに等しくするステップを有する方法。
【請求項13】
請求項7の方法において、前記位相の変化の回転のレートの極性は周波数オフセットの方向を示すことを特徴とする方法。
【請求項14】
OFDM通信システムにおいてシグネチャシーケンスを含むディジタル信号を受信する受信機で使用する周波数オフセット推定器であって、
A)少なくとも2つの周波数の各々と前記受信されたディジタル信号の相関性を求めるために前記シグネチャシーケンスに適したフィルタ、及び
B)ある1つのビンの近傍に相関ピークを位置づけるために、最大の振幅をもつ相関ピークを提供する周波数の1つを選択する手段
を備え、前記選択する手段は密度の粗い周波数オフセット調整を提供することを特徴とする周波数オフセット推定器。
【請求項15】
請求項14の周波数オフセット推定器において、さらに、
C)前記シグネチャシーケンスに関連した相関ピークが予測された位置にあるかどうかを測定することによって、密度の粗い周波数オフセットを推定する手段を備えた周波数オフセット推定器。
【請求項16】
請求項14の周波数オフセット推定器において、前記シグネチャシーケンスは、バーカー符号であることを特徴する周波数オフセット推定器。
【請求項17】
請求項14の周波数オフセット推定器において、前記シグネチャシーケンスは、周波数領域において既知を周波数点を離散的に含む基準情報を提供することを特徴する周波数オフセット推定器。
【請求項18】
請求項14の周波数オフセット推定器において、さらに、
D)密度の粗い周波数オフセットの計算における補償のために順方向補正機構を備えた周波数オフセット推定器。
【請求項19】
請求項14の周波数オフセット推定器において、さらに、
E)密度の粗い周波数オフセットの計算における補償のためにフィードバック機構を備えた周波数オフセット推定器。
【請求項20】
OFDM通信システムにおける受信機で使用するための推定器回路であって、
A)OFDMビン分離の所定距離内にある1つのOFDMビンの近傍にあるシグネチャシーケンスに関連した相関ピークの位置づけるために密度の粗い周波数オフセット推定器、
B)少なくとも2つのフレームにおける1つの変調されていないビンの位相の変化を評価する位相推定器、及び
C)前記位相の変化に基づいて密度の細かい周波数オフセットを推定する手段
を備えた推定器回路。
【請求項21】
請求項20の推定器回路において、前記密度の粗い周波数オフセット推定器は、前記OFDMビン分離の半分のところに相関ピークを位置づけるように構成されたことを特徴する推定器回路。
【請求項22】
請求項20の推定器回路において、さらに、
D)時間領域における前記密度の細かい周波数オフセットを抽出してフィルタ処理するループフィルタを備えた推定器回路。
【請求項23】
請求項20の推定器回路において、前記密度の細かい周波数オフセットの拡張は前記位相の変化の回転のレートの関数であることを特徴する推定器回路。
【請求項24】
請求項20の推定器回路において、さらに、
E)回転のレートをゼロと等しくするフィードバックループを備えた推定器回路。
【請求項25】
請求項20の推定器回路において、前記位相の変化の回転のレートの極性は前記周波数オフセットの方向を示すことを特徴する推定器回路。
【請求項26】
請求項20の推定器回路において、前記密度の細かい周波数オフセットは下記の式:
【数1】

で推定され、Δfresは前記細かい周波数オフセットであり、ΔΘはフレーム間位相回転であり、ffrはフレームレートである、推定器回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−97643(P2011−97643A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14801(P2011−14801)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【分割の表示】特願2000−282034(P2000−282034)の分割
【原出願日】平成12年9月18日(2000.9.18)
【出願人】(596092698)アルカテル−ルーセント ユーエスエー インコーポレーテッド (965)
【Fターム(参考)】