説明

ディスクドライブ及びデータライト方法

【課題】特にアジマス角によるフリンジ領域の影響を抑制して、結果としてデータの記録再生特性を向上できるディスクドライブのデータライト方法を提供することにある。
【解決手段】ロータリ型アクチュエータに搭載されたヘッドにより、ディスク媒体上にデータを記録するディスクドライブに適用するデータライト方法である。本方法は、データトラックの位置がディスク媒体上の内周エリアまたは外周エリアに含まれる場合には、ヘッドのアジマス角に基づいて、データトラックのトラックピッチを中周エリアでのトラックピッチより大きく設定するようなトラックピッチ変換処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にはディスクドライブに関し、特に垂直磁気記録方式のディスクドライブでのデータライト方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ハードディスクドライブを代表とするディスクドライブでは、データ記録媒体であるディスク媒体上の目標位置(アクセス対象のトラック)に、ヘッドを位置決めするための機構として、ロータリ型(回転型)アクチュエータが使用されている。
【0003】
このようなロータリ型アクチュエータに搭載されたヘッドが、ドライブのメインコントローラであるCPUの制御により、ディスク媒体上の半径方向に位置決め制御(サーボ制御)される場合、ディスク媒体上の内周エリア又は外周エリアでは、いわゆるアジマス(azimuth)角が発生する。
【0004】
ディスクドライブでは、ディスク媒体上に記録されたサーボパターン(サーボデータ)をヘッドに含まれるリードヘッドにより再生することで、サーボ制御が実行される。この場合、例えばディスク媒体上の外周エリアでは、アジマス角が大きくなるため、リードヘッドによる検出範囲(検出感度)が拡大してしまう。このため、ヘッド位置決め精度の低下を招く要因となる。
【0005】
このような問題を解消するために、アジマス角が大きくなる例えば外周エリアでは、サーボパターンが記録されているサーボトラックの間隔を狭くするディスクドライブが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
また、アジマス角が大きくなると、ユーザデータが記録されたデータトラックの実効トラック幅が変動するため、記録密度が低下するなどの影響がある。このような点を解消するために、ディスク媒体上の半径方向に隣接するトラック間の距離を変化させる構成が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【特許文献1】特開平6−60573号公報
【特許文献2】特開2002−237142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ヘッドのアジマス角による影響として、ライトヘッドによりディスク媒体上にデータを書き込む場合に、データトラックの中に有効な記録領域以外に、いわゆるフリンジ(fringe)領域が発生する。このフリンジ領域は、リードヘッドにより正常にデータを読出すことができない領域である。特に、垂直磁気記録方式のディスクドライブでは、ライトヘッドとして、トラックの周方向に長さを有する単磁極型ヘッドが使用されるため、アジマス角によるフリンジ領域が無視できない程度に発生する。
【0008】
前述の先行技術文献などでは、特にアジマス角によるフリンジ領域の影響については、解決できる技術が提案されていない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、特にアジマス角によるフリンジ領域の影響を抑制して、結果としてデータの記録再生特性を向上できるディスクドライブのデータライト方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の観点に従ったディスクドライブのデータライト方法は、ロータリ型アクチュエータに搭載されたヘッドにより、ディスク媒体上にデータを記録するディスクドライブに適用するデータライト方法であって、ホストシステムからの指示に従って、前記ディスク媒体上にデータをライトするためのデータトラックの位置を決定するステップと、前記データトラックの位置が前記ディスク媒体上の中周エリアに含まれるか否かを判定するステップと、前記判定ステップによる判定結果に従って、前記データトラックの位置が前記ディスク媒体上の内周エリアまたは外周エリアに含まれる場合には、前記ヘッドのアジマス角に基づいて、前記データトラックのトラックピッチを前記中周エリアでのトラックピッチより大きく設定するようなトラックピッチ変換処理を実行する変換ステップと、前記トラックピッチ変換処理により変換されたトラックピッチまたは前記中周エリアでのトラックピッチに基づいて、前記ディスク媒体上の前記データトラックの位置に前記ヘッドを位置決めするためのサーボ制御を実行するサーボ制御ステップと、前記サーボ制御により位置決めされた前記ヘッドにより、データのライト動作を実行するステップとを有する手順を実行する構成である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のデータライト方法であれば、ヘッドのアジマス角によるフリンジ領域の影響を抑制できるデータトラックを構成して、結果としてディスクドライブのデータの記録再生特性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0013】
(ディスクドライブの構成)
図1は、本実施形態に関する垂直磁気記録方式のディスクドライブの要部を示すブロック図である。
【0014】
ディスクドライブ10は、スピンドルモータ16により回転されるディスク媒体11と、データの記録または再生を行うヘッド12と、メインコントローラであるマイクロプロセッサ(CPU)17とを有する。
【0015】
ヘッド12は、スライダ上にライトヘッド素子とリードヘッド素子とが実装されている構造である。ライトヘッド素子(120)は、ディスク媒体11上に、垂直磁気記録が可能な単磁極型ヘッドである。リードヘッド素子は、ディスク媒体11上に記録されたサーボパターン(サーボデータ)またはユーザデータを読出す再生用ヘッドである。
【0016】
ヘッド12は、ロータリ型(回転型)アクチュエータ13に搭載されている。アクチュエータ13は、ボイスコイルモータ(VCM)14により、ディスク媒体11上の半径方向に回動する。VCM14は、CPU20のサーボ制御に応じて駆動制御される。
【0017】
CPU20は、ドライブの外部にある例えばパーソナルコンピュータなどのホストシステムからの指示に従って、ディスク媒体11上の目標位置(アクセス対象トラック)に対してデータの記録又は再生を行うための制御を実行する。本実施形態では、CPU20は、後述するようなトラックピッチの変換処理を含むサーボ制御(ヘッド位置決め制御)を実行する。
【0018】
また、ディスクドライブ10には、ヘッド12のライトヘッド素子及びリードヘッド素子のそれぞれと接続するヘッドアンプなどの回路部品を実装している回路基板15が設けられている。CPU20は、当該回路基板15とは異なる回路基板(図示せず)に搭載されている。
【0019】
(トラックフォーマット)
ディスクドライブでは製造工程時に、図1に示すように、ディスク媒体11上には、サーボパターン(サーボデータ)200が記録されている。このサーボパターン200が記録されているエリアをサーボセクタと呼ぶことがある。サーボセクタは、ディスク媒体11上の円周方向に、等間隔で配置されている。
【0020】
CPU20は、当該サーボパターン200を使用してサーボ制御(ヘッド位置決め制御)を実行することで、サーボセクタ間にユーザデータを記録するデータトラック100を構成する。
【0021】
図2は、図1に示すディスク媒体11上のデータ面を平面上に展開した図である。
【0022】
図2に示すように、ディスク媒体11上の半径方向210に、多数のデータトラック100が同心円状に配置される。各データトラックは、複数のデータセクタ100a〜100cに分割管理される。即ち、ディスクドライブでは、データセクタがアクセス単位である。サーボセクタ200a,200bには、サーボパターンに含まれるデータとして、データトラック100を識別するためのトラックアドレス(シリンダコード)An及び後述するサーボバーストデータ(A〜D)が記録されている。
【0023】
ここで、サーボデータ200a,200bで規定されるトラック(サーボトラック)の間隔(STw)と、隣接するデータトラック100の半径方向の距離とは、必ずしも同一である必要ではない。サーボトラック間隔に対して、データトラック100は、例えば1.5倍の距離をもって半径方向に配置される。なお、隣接するデータトラック100の半径方向の距離は、データトラック幅Twの中心線(図2の点線)と隣接トラックの中心線との間隔を意味する。
【0024】
図3は、ディスク媒体11上の半径方向に放射状に配置されるサーボパターン200の形状を示す。ディスクドライブでは、前述したように、ロータリ型アクチュエータ13により、ヘッド12がディスク媒体11上の半径方向に移動するため、サーボパターン200は、ヘッド12の回転軌跡に沿うような円弧の形状300を示すことが好ましい。
【0025】
(サーボパターン及びアジマス角)
図4は、本実施形態に関するサーボパターン及びヘッド12のアジマス角を説明するための図である。
【0026】
サーボパターンは、図4(A)に示すように、サーボバーストデータ(A〜D)400及びトラックアドレス(シリンダコード)401を含む。ここで、CPU20は、ディスク媒体11上の中周エリアに含まれる目標データトラック(例えばトラックアドレスk)に、アクチュエータ13を制御してヘッド12を位置決め制御するためのサーボ制御を実行する。通常では、CPU20は、サーボバーストデータA,Bを使用し、トラックアドレスkで識別されるトラック中心位置に、ヘッド12を位置決めする。
【0027】
図4(A)では、CPU20は、ヘッド12のリードヘッドを目標データトラックに位置決めする。ここで、中周エリアでは、ロータリ型アクチュエータ13の状態に従って、ヘッド12のアジマス角はほぼゼロである。これに対して、図4(B)に示すように、例えば外周エリアでは、ヘッド12にはアジマス角が発生する。この場合、ヘッド12のアジマス角に依らず、ディスク媒体11の半径方向に対して、データトラックが等間隔(Tw)になるように、サーボパターンが配置されている。
【0028】
このようなサーボパターンの配置では、サーボ制御において、リードヘッドはアジマス角を有するときに、広い範囲のサーボパターンを検出することになる。このような点を解消するために、図4(C)に示すように、ディスク媒体11上にサーボパターンを記録するときに、外周エリアまたは内周エリアに含まれるトラック位置では、ヘッド12のアジマス角(θ)に応じて、トラック間隔(シリンダ間隔)を狭めるように、サーボパターンを記録することが好ましい。これにより、外周エリアまたは内周エリアにおいて、リードヘッドがサーボパターンを検出するときに、アジマス角に依らず、サーボパターンの検出感度を一定に保つことが可能となる。なお、ディスク媒体11上の半径方向に分割するゾーン毎に、それぞれのアジマス角に応じた間隔でサーボパターンを記録することが実際的である。
【0029】
(アジマス角とデータトラック幅)
次に、図5を参照して、ヘッド12のライトヘッド120のアジマス角と、データトラック幅との関係を説明する。
【0030】
まず、垂直磁気記録方式のディスクドライブでは、ライトヘッド120は、図5(A)に示すように、主磁極がトラックの周方向に長さを有する単磁極型ヘッドである。なお、当該主磁極は、長手磁気記録方式のドライブで使用されるライトヘッドの磁気ギャップに相当する。
【0031】
図5(A)に示すように、中周エリアでは、アジマス角がほぼゼロのため、ライトヘッド120の磁気的記録幅(W)に応じたユーザデータが書き込まれて、記録領域DTを有するデータトラックが構成される。ここで、隣接トラック間の距離に相当するデータトラック幅Twは、記録領域DTに基づいて、イレーズバンド幅や位置決め誤差などのマージンをもって決められる。このマージンに対応する幅を、ガードバンド領域GBと呼ぶ。
【0032】
一方、外周エリアまたは内周エリアでは、図5(B)に示すように、アジマス角が付いた状態で、ライトヘッド120によるデータライトが実行される。この場合、データ再生が不安定になるフリンジ領域(またはサイドライト領域)DTfが発生する。この場合、図5(C)に示すように、フリンジ領域DTfに応じて、隣接トラック間の距離を十分に保持するためのガードバンド領域GBを確保することが好ましい。
【0033】
ここで、データトラックの半径方向の隣接距離(トラック幅)Twは、磁気的記録幅(ライトヘッド幅)をW、磁気的記録長さをL、ガードバンド幅をGとした場合、下記式(1)に示すように定式化することができる。
【0034】
Tw>W×cosθ+L×sinθ+G…(1)
なお、磁気的記録長さLは、フリンジ領域DTfの量を示すための等価的な値でも良い。また、前記式(1)から、Lの値が無視できないときには、sinθに応じて隣接トラック距離Twを長く確保する必要がある。
【0035】
図8は、ライトヘッド120のディスク媒体11上での半径方向の位置(横軸)に対するサーボパターンのトラック幅(シリンダ幅STw)及びデータトラック幅(間隔Tw)の設定値(縦軸の距離)の一例を示す図である。図8(A)に示すように、サーボパターンのトラック幅810は、アジマス角が発生する内周エリア又は外周エリアの位置では、狭くなるように設定されている。一方、データトラック幅800は、逆にアジマス角が発生する内周エリア又は外周エリアでは、広く(距離が大きく)なるように設定されている。
【0036】
図8(B)は、サーボパターンのトラック幅(シリンダ幅STw)を基底としたデータトラック幅820の比率を示す図である。即ち、ライトヘッド120のアジマス角がなく、フリンジ領域(サイドライト領域)を無視できる場合において、サーボシリンダ間隔は最も広く逆にユーザーデータ隣接距離は最も狭くできることから、データトラック幅820をサーボトラック間隔を基底とした比率では最小値となるように設定する。
【0037】
また逆に、ライトヘッド120にアジマス角がつく場合は、逆の傾向を示すことから、サーボトラック間隔を基底とした比率では、データトラック幅820を大きくするように設定する。
【0038】
図8(C)は、後述するように、CPU20がライト動作の実行時に、データトラック幅(データトラックピッチ)を設定する処理(トラックピッチの変換処理)において、実際上で使用する設定値の一例を示す図である。
【0039】
即ち、サーボトラック間隔を基底とした比率を、ディスク媒体11上の半径方向における一定区間で一定値となるように設定する。具体的には、ディスク媒体11上の半径方向を、中周エリア、外周エリア、内周エリア毎に設定するデータトラック幅(間隔)830を、ゾーン設定値として利用する。
【0040】
(データライト動作)
以下図6及び図7を参照して、本実施形態のデータライト動作を説明する。
【0041】
図6は、本実施形態に関するディスク媒体11上の半径方向(外周方向60及び内周方向61)に、ユーザデータを記録する場合のデータトラックのトラックピッチの状態を説明するための図である。
【0042】
ここで、トラックピッチ(TP1,TP2)とは、データトラックの中心線(点線)を基準とする隣接トラック間隔を意味する。データトラック幅(Tw)とは、記録領域DTd、フリンジ領域(サイドライト領域)DTf、及びガードバンド領域GBを含む範囲となる。
【0043】
CPU20は、ホストシステムからデータライトのコマンドを受信すると、当該ライト動作を実行するディスク媒体11上のデータトラック位置(目標位置)を示すトラックアドレス(シリンダコード)を求める(ステップS1)。ここで、ホストシステムからのコマンドには、ディスク媒体11上に記録すべきライトデータも含まれている。
【0044】
CPU20は、取得したトラックアドレスを含むゾーンが、中周エリアの範囲内であるか否かを判定する(ステップS2)。ここで、各ゾーンには、複数のトラックアドレスが含まれている。
【0045】
CPU20は、アクセス対象である目標データトラック位置がディスク媒体11上の中周エリアに含まれている場合、通常のサーボ制御を実行する(ステップS2のYES,S3)。即ち、CPU20は、ヘッド12のリードヘッドにより再生されるトラックアドレス及びサーボバーストデータを使用して、アクチュエータ13(実際にはVCM14)を駆動制御することにより、ヘッド12のライトヘッド120を目標データトラック位置に位置決め制御する。
【0046】
さらに、CPU20は、位置決めされたライトヘッド120により、目標データトラック位置にデータを書き込むライト動作を実行させる(ステップS4)。ここで、中周エリアでは、ライトヘッド120のアジマス角はほぼゼロであるため、図6に示すように、フリンジ領域DTfが発生しない記録領域DTdだけのデータトラックが記録される(図5(A)を参照)。
【0047】
ここで、中周エリアでは、ライトヘッド120のアジマス角はほぼゼロであるため、隣接するデータトラックの間隔(トラックピッチ)は、フリンジ領域DTfを考慮せずに、記録領域DTdとガードバンド領域GBにより決定される。
【0048】
一方、CPU20は、アクセス対象である目標データトラック位置がディスク媒体11上の中周エリアではなく、例えば外周エリア(矢印60)に含まれている場合、トラックピッチの変換処理を実行する(ステップS2のNO,S5)。即ち、外周エリアでは、ライトヘッド120は、アジマス角が付いた状態で、データを書き込むライト動作を実行することになる(図5(C)を参照)。
【0049】
トラックピッチの変換処理とは、ライトヘッド120のアジマス角に基づいて、ライト動作時に発生するフリンジ領域DTfを含むデータ幅において、一定のガードバンド領域GBを確保したときのトラックピッチ(TP1,TP2)を設定する処理である。
【0050】
次に、CPU20は、ヘッド12のリードヘッドにより再生されるトラックアドレス及びサーボバーストデータを使用して、サーボ制御を実行する(ステップS6)。このサーボ制御では、CPU20は、トラックピッチの変換処理により算出されたトラックピッチ(例えばTP1)に従って、ライトヘッド120の中心位置を位置決め制御する。
【0051】
換言すれば、CPU20は、本来の目標データトラック位置に対応するサーボパターンのトラックピッチ(シリンダコードにより設定)を、ライトヘッド120のアジマス角に基づいて変換したトラックピッチになるように、ライトヘッド120の位置決め制御を実行する。ここで、ライトヘッド120のアジマス角に基づいたトラックピッチの変換量とは、当該アジマス角に応じたフリンジ領域DTfの範囲、即ち当該フリンジ領域DTfの増大に応じて確保するガードバンド領域GBを範囲により決定される。
【0052】
(トラックピッチの変換処理の具体例)
CPU20は、トラックピッチの変換処理として、以下のような具体的処理を実行する。
【0053】
即ち、CPU20は、目標データトラックのアドレスを、サーボパターンのシリンダコードに変換する場合に、サーボシリンダ間隔対データトラック間隔の比率を、ゾーン設定値として数kの倍数(整数倍)として設定する。
【0054】
具体的には、1/3送りサーボパターンにおいて、例えば「k=1/4」とした場合、以下のようなサーボパターンのオフセット量を設定することができる。即ち、「比率=6/4」のとき、ライトヘッド120の位置決め制御に用いるサーボパターン位置は、「1/8」, 「1+(5/8)」,「3+(1/8)」となる。「比率=7/4」のとき、ライトヘッド120の位置決め制御に用いるサーボパターン位置は、「1/8」, 「1+(7/8)」,「3+(5/8)」となる。「比率=8/4」のとき、ライトヘッド120の位置決め制御に用いるサーボパターン位置は、「1/8」, 「2+(1/8)」,「4+(1/8)」となる。
【0055】
ここで、実際上では、CPU20は、以下のトラックピッチ変換式(2)を使用した変換処理を実行して、図9のフローチャートに示すようなデータライト動作を実行する。
【0056】
即ち、目標データトラックアドレスをAとし、目標サーボシリンダコードをBとし、ピッチ変換係数をpとし、補正係数をbとした場合に、トラックピッチ変換式(2)は1次式として表すことができる。
【0057】
B=p×A+b…(2)
CPU20は、ホストシステムからのコマンドに従って、ライト動作を実行するデータトラックアドレスを求める(ステップS11)。この後、CPU20は、前記トラックピッチ変換式(2)を使用して、ディスク媒体11上に記録されているサーボシリンダコードに変換する(ステップS12)。そして、CPU20は、変換して得られたサーボシリンダコードに基づいて、ライトヘッド120の位置決めを行うためのサーボ制御を実行する(ステップS13)。この位置決めされたライトヘッド120により、ディスク媒体11上にユーザデータを書き込むライト動作を実行させる(ステップS14)。
【0058】
以上のように本実施形態によれば、ライトヘッド120のアジマス角の影響が大きい外周エリア又は内周エリアにおいて、アジマス角の影響がない中周エリアでのトラックピッチより大きくなるように設定することにより、隣接データトラック間でのクロストークによるエラーを緩和することができる。即ち、アジマス角によるフリンジ領域(サイドライト領域)の範囲に応じて、ガードバンド領域GBを十分に確保することにより、隣接データトラック間でのクロストークを抑制することができる。従って、ユーザデータの記録再生に最適なデータトラック幅を提供することができる。換言すれば、ディスクドライブのデータ記録再生特性を向上させることができる。
【0059】
本実施形態のデータライト方法は、特に垂直磁気記録方式のディスクドライブにおいて、ライトヘッドとして単磁極型ヘッドを使用した場合のライト動作に有効である。なお、長手磁気記録方式のディスクドライブにおいても有効である。
【0060】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態に関するディスクドライブの要部を示すブロック図。
【図2】本実施形態に関するデータフォーマットを示す図。
【図3】本実施形態に関するサーボパターンの形状を示す図。
【図4】本実施形態に関するサーボパターン及びヘッドのアジマス角を説明するための図。
【図5】本実施形態に関するライトヘッドのアジマス角とデータトラック幅との関係を説明するための図。
【図6】本実施形態に関するデータライト動作におけるデータトラックのトラックピッチを説明するための図。
【図7】本実施形態に関するデータライト動作の手順を説明するためのフローチャート。
【図8】本実施形態に関するライトヘッドの半径方向の位置に対するトラック幅の設定値の一例を示す図。
【図9】本実施形態に関するトラック変換式を使用したデータライト動作の手順を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0062】
10…ディスクドライブ、11…ディスク媒体、12…ヘッド、13…アクチュエータ、
14…ボイスコイルモータ(VCM)、15…回路基板、16…スピンドルモータ、
20…マイクロプロセッサ(CPU)、100…データトラック、
200…サーボパターン(サーボセクタ)、120…ライトヘッド(単磁極型ヘッド)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリ型アクチュエータに搭載されたヘッドにより、ディスク媒体上にデータを記録するディスクドライブに適用するデータライト方法であって、
ホストシステムからの指示に従って、前記ディスク媒体上にデータをライトするためのデータトラックの位置を決定するステップと、
前記データトラックの位置が前記ディスク媒体上の中周エリアに含まれるか否かを判定するステップと、
前記判定ステップによる判定結果に従って、前記データトラックの位置が前記ディスク媒体上の内周エリアまたは外周エリアに含まれる場合には、前記ヘッドのアジマス角に基づいて、前記データトラックのトラックピッチを前記中周エリアでのトラックピッチより大きく設定するようなトラックピッチ変換処理を実行する変換ステップと、
前記トラックピッチ変換処理により変換されたトラックピッチまたは前記中周エリアでのトラックピッチに基づいて、前記ディスク媒体上の前記データトラックの位置に前記ヘッドを位置決めするためのサーボ制御を実行するサーボ制御ステップと、
前記サーボ制御により位置決めされた前記ヘッドにより、データのライト動作を実行するステップと
を有する手順を実行することを特徴とするデータライト方法。
【請求項2】
前記決定ステップは、前記ディスク媒体上に記録されているトラック群の中から、前記データトラックの位置に対応するトラックアドレスを決定し、
前記判定ステップは、前記決定ステップにより決定された前記トラックアドレスが前記ディスク媒体上の中周エリアに含まれるトラックアドレスであるか否かを判定し、
前記サーボ制御ステップは、前記トラックアドレスを使用して前記サーボ制御を実行することを特徴とする請求項1に記載のデータライト方法。
【請求項3】
前記データトラックは、前記ディスク媒体の半径方向にデータ記録領域、フリンジ領域及びガードバンド領域を含み、
前記変換ステップは、前記ヘッドのアジマス角に応じて増大する前記フリンジ領域の範囲に基づいて、前記内周エリアまたは外周エリアに含まれる前記データトラックの前記トラックピッチを設定することを特徴とする請求項1に記載のデータライト方法。
【請求項4】
前記データトラックは、前記ディスク媒体の半径方向にデータ記録領域、フリンジ領域及びガードバンド領域を含み、
前記変換ステップは、前記ヘッドのアジマス角に応じて増大する前記フリンジ領域の範囲に基づいて、前記内周エリアまたは外周エリアに含まれる前記データトラックの前記ガードバンド領域を一定に確保するように前記トラックピッチを設定することを特徴とする請求項1に記載のデータライト方法。
【請求項5】
前記データトラックは、前記ディスク媒体の半径方向にデータ記録領域、フリンジ領域及びガードバンド領域を含み、
前記変換ステップは、前記内周エリアまたは外周エリアに含まれる前記データトラックのトラックピッチを、前記ガードバンド領域を一定に確保するために拡大するデータトラック幅に基づいて設定することを特徴とする請求項1に記載のデータライト方法。
【請求項6】
前記ディスク媒体上に記録されているサーボパターンにより構成されたサーボトラックのトラック幅と、前記データトラックのトラック幅との比率において、
前記変換ステップは、前記中周エリアでの当該比率を最小値として、前記内周エリアまたは外周エリアに対して設定された比率に基づいて、前記内周エリアまたは外周エリアに含まれるデータトラックのトラックピッチを設定することを特徴とする請求項1に記載のデータライト方法。
【請求項7】
前記ディスクドライブは、前記ディスク媒体上に垂直磁気記録方式によりデータを記録するドライブであり、
前記ヘッドは、垂直磁気記録方式に適した単磁極型ヘッドをライトヘッドとして含む構成であることを特徴とする請求項1に記載のデータライト方法。
【請求項8】
前記ディスク媒体上に構成されるデータトラック群は、半径方向に複数のゾーンに分割されており、
前記変換ステップは、前記内周エリアまたは外周エリアに含まれるゾーン毎に前記データトラックの前記トラックピッチを設定することを特徴とする請求項1に記載のデータライト方法。
【請求項9】
ディスク媒体上にデータを記録するヘッドを搭載したロータリ型アクチュエータと、
ホストシステムからの指示に従って、前記ディスク媒体上の指定されたデータトラック位置にデータをライトするライト制御を実行するコントローラとを含み、
前記コントローラは、
前記データトラック位置を決定する手段と、
前記データトラック位置が前記ディスク媒体上の中周エリアに含まれるか否かを判定する手段と、
前記判定結果に従って、前記データトラック位置が前記ディスク媒体上の内周エリアまたは外周エリアに含まれる場合には、前記ヘッドのアジマス角に基づいて、前記データトラックのトラックピッチを前記中周エリアでのトラックピッチより大きく設定するようなトラックピッチ変換処理を実行する変換手段と、
前記変換手段により変換されたトラックピッチまたは前記中周エリアでのトラックピッチに基づいて、前記ディスク媒体上の前記データトラック位置に前記ヘッドを位置決めするためのサーボ制御を実行する手段と、
前記サーボ制御により位置決めされた前記ヘッドにより、データのライト動作を実行させる手段と
を有することを特徴とするディスクドライブ。
【請求項10】
前記ヘッドは、前記ディスク媒体からデータを読出すためのリードヘッドと、前記ライト動作を実行するためのライトヘッドで、垂直磁気記録用の単磁極型ヘッドとを含むことを特徴とする請求項9に記載のディスクドライブ。
【請求項11】
前記コントローラは、
前記ディスク媒体上に記録されているトラック群の中から、前記データトラックの位置に対応するトラックアドレスを決定し、
決定された前記トラックアドレスが前記ディスク媒体上の中周エリアに含まれるトラックアドレスであるか否かを判定し、
前記トラックアドレスを使用して前記サーボ制御を実行することを特徴とする請求項9に記載のディスクドライブ。
【請求項12】
前記データトラックは、前記ディスク媒体の半径方向にデータ記録領域、フリンジ領域及びガードバンド領域を含み、
前記コントローラは、前記ヘッドのアジマス角に応じて増大する前記フリンジ領域の範囲に基づいて、前記内周エリアまたは外周エリアに含まれる前記データトラックのトラックピッチを設定することを特徴とする請求項9に記載のディスクドライブ。
【請求項13】
前記データトラックは、前記ディスク媒体の半径方向にデータ記録領域、フリンジ領域及びガードバンド領域を含み、
前記コントローラは、前記ヘッドのアジマス角に応じて増大する前記フリンジ領域の範囲に基づいて、前記内周エリアまたは外周エリアに含まれる前記データトラックの前記ガードバンド領域を一定に確保するように前記トラックピッチを設定することを特徴とする請求項9に記載のディスクドライブ。
【請求項14】
前記ディスク媒体上に記録されているサーボパターンにより構成されたサーボトラックのトラック幅と、前記データトラックのトラック幅との比率において、
前記コントローラは、前記中周エリアでの当該比率を最小値として、前記内周エリアまたは外周エリアに対して設定された比率に基づいて、前記内周エリアまたは外周エリアに含まれるデータトラックのトラックピッチを設定することを特徴とする請求項9に記載のディスクドライブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−260715(P2006−260715A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79626(P2005−79626)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】