説明

ディスクドライブ装置,ディスクドライブシステム、及びコンピュータ可読媒体

【課題】安定した読み取り/書き込みを行うことができ、繰り返しランアウトをキャンセルするディスクドライブ装置、ディスクドライブシステム及びディスクドライブの駆動方法を提供する。
【解決手段】周期的な繰り返しランアウト信号をキャンセルするキャンセル信号を生成するため、インパルス応答を有する線形システムがキャンセル信号を受信して位置誤差信号を出力し、逆行列モジュールが位置誤差信号に逆行列を乗算して中間キャンセル信号を出力し、インパルス積分モジュールが、1つ以上の所定の期間における中間キャンセル信号の少なくとも1つのサンプルを積分し、キャンセル信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスクなどの記録ディスクに読み取り/書き込みを行う構成に関し、詳しくは、読み取り/書き込み時に、記録ディスクのトラック上の周期的なずれである繰り返しランアウトをキャンセルする構成に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのドライブシステムでは、記録ディスクの読み取り/書き込み時のエラーの発生を防止するため、トラック上の周期的なずれである繰り返しランアウト(RRO=Repeatable runout(以下、単にRROともいう。))信号が存在する。RRO信号は、記録ディスクのトラックに対して周期性を有するため、予測できる。RRO信号の発生には、多くの原因が考えられる。例えば、ディスクドライブにおいては、ディスクアセンブリ又はデータ記憶媒体における欠陥及び設計上の誤差や、または、ディスクプラッタのバランスの不均一や、スピンドルモータの傾きや、サーボ書込み時に起因するデータトラックの中心位置の偏心が考えられ、これらに起因して読み取り/書き込み時にRRO信号が発生することがある。一方で、記録ディスクの読み取り/書き込み時のエラーの発生要因としては、トラックに対して非周期的なずれ(所謂、Non-Repeatable runout)が生じることもある。この非周期的なずれは、例えば、外部からの衝撃などに起因して生じることがある。
上記のような不具合は、記録ディスクの回転時に同期して発生する外乱を発生させる可能性がある。このような不具合は、トラック密度と関連付けがなされておらず、それゆえトラック密度への対策がされていない。つまり、現在では記録ディスクの高記録密度化が進んでおり、ドラック密度の増大とともに、記録ディスクから記録データを読み取り/書き込みを行うディスクドライブにおいて、RRO信号が正確な読み取り/書き込みを阻害する影響を及ぼすことが懸念されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、RRO信号をキャンセルするためにこれまで使用されてきた方法は、トラック密度に対して十分に高速でないか、または十分に完全ではなかった。従来の方法では、検出されたRRO信号の非正弦波成分(RRO信号が非周期的であって、正弦波として扱うことができないときの周波数成分)を残しつつ、正弦波成分だけをキャンセルするものである。
【0004】
しかし、RRO信号の正弦波成分(RRO信号が周期的であって、正弦波として扱うことができるときの周波数成分)だけをキャンセルするだけでは十分ではなく、RRO信号の正弦波成分と非正弦波成分との両方を除去することが必要であった。
【0005】
本発明は、現在の使用されているRRO信号のキャンセル方法における技術的な問題点を鑑みてなされてものである。本発明の目的は、安定した読み取り/書き込みを行うことができ、繰り返しランアウトをキャンセルするディスクドライブ装置、ディスクドライブシステム及びディスクドライブの駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記構成によって達成される。
(1)データ記録ディスクに読み取り/書き込みを行う際に、該データ記録ディスクのトラックに対して周期的にずれる繰り返しランアウト(RRO)信号をキャンセルするディスクドライブ装置であって、
インパルス応答を有し、キャンセル信号を受信し、位置誤差信号を出力するように構成された線形システムと、
前記位置誤差信号に逆行列を乗算し、中間キャンセル信号を出力するように構成された逆行列モジュールと、
1つ以上の既定の期間における前記中間キャンセル信号の少なくとも1つのサンプルを積分し、前記キャンセル信号を出力するように各々構成された1つ以上のインパルス積分モジュールと、を備えるディスクドライブ装置。
(2)前記逆行列は、インパルス行列の数学的逆数であって、前記インパルス行列の各列には前記線形システムの前記インパルス応答のシフトされた値を含む(1)に記載のディスクドライブ装置。
(3)前記逆行列の列の各々は互いに実質的に相似であり、前記逆行列モジュールはさらに前記逆行列の1列だけを記憶するように構成されている(2)に記載のディスクドライブ装置。
(4)前記逆行列の各値は、多くの非定数列の後の単一の定数に実質的に相似である(2)に記載のディスクドライブ装置。
(5)前記位置誤差信号の直流分を実質的にキャンセルするように構成された位置サーボ補正部をさらに備える(4)に記載のディスクドライブ装置。
(6)前記単一の定数値は、元の定数が前記逆行列の各値から減算された後、実質的にゼロである(4)に記載のディスクドライブ装置。
(7)前記逆行列モジュールは、更に、前記非定数列を記憶し、前記単一の定数値に実質的に等しい1つ以上の列を記憶しないように構成されている(4)に記載のディスクドライブ装置。
(8)前記逆行列モジュールは、更に、1つ以上の先のキャンセルが安定化するまで待つように構成されている(1)に記載のディスクドライブ装置。
(9)前記線形システムは、更に、駆動制御部を備える(1)に記載のディスクドライブ装置。
(10)前記駆動制御部は、1つのアクチュエータと、1つのアクチュエータ制御部とを備える(9)に記載のディスクドライブ装置。
(11)前記駆動制御部は、前記キャンセル信号に基づき前記ディスクに対して前記アクチュエータを位置決めするように構成されている(10)に記載のディスクドライブ装置。
(12)所定の期間における各サンプルについて1つのインパルス積分モジュールを備え、前記インパルス積分モジュールは前記位置誤差信号のサンプリング周波数に応じた時間間隔である(1)に記載のディスクドライブ装置。
(13)前記インパルス積分モジュールはそれぞれ、更に、1つ以上の中間演算結果を記憶するように構成されている(12)に記載のディスクドライブ装置。
(14)読み取り/書き込みを行う際のトラックに対して周期的にずれる繰り返しランアウト(RRO)信号をキャンセルするディスクドライブシステムであって、
1つ以上の実質的に円状のデータトラックと位置決めデータとを含む1つ以上のデータ記録ディスクと、
前記データ記録ディスクを軸に関して回転させるように構成されたモータと、
データヘッドと結合されたアクチュエータと、
位置コマンド信号を受信し、前記位置コマンド信号に基づき前記データ記録ディスクの前記データトラックに対して前記アクチュエータと前記データヘッドとを位置決めし、前記位置決めデータに基づき位置誤差信号を出力するように構成されたアクチュエータ制御部と、
前記位置誤差信号を受信し、位置補正信号を出力するように構成された位置サーボ補正部と、
前記位置誤差信号を受信し、前記位置補正信号と結合された時に前記位置誤差信号から1つ以上の繰り返しランアウト成分をキャンセルするように構成された1つ以上のキャンセル信号を出力するように構成されたキャンセルモジュールとを備え、
前記キャンセルモジュールが前記位置誤差信号に逆行列を乗算して中間キャンセル信号を出力するように構成された逆行列モジュールと、1つ以上の所定の期間における前記中間キャンセル信号の少なくとも1つのサンプルを積分し、前記キャンセル信号を出力するように各々構成された1つ以上のインパルス積分モジュールとを含み、
前記位置補正信号及び前記キャンセル信号を前記位置コマンド信号に結合するように構成された結合モジュールとを備える、ディスクドライブシステム。
(15)前記逆行列は、インパルス行列の数学的逆数であって、前記インパルス行列の各列には前記線形システムの前記インパルス応答のシフトされた値を含む(1)に記載のディスクドライブシステム。
(16)前記逆行列から実質的に定数と同等の値を含む1つ以上の列が除去される(15)に記載のディスクドライブシステム。
(17)所定の期間における各サンプルについて1つのインパルス積分モジュールを備え、前記インパルス積分モジュールが前記位置誤差信号のサンプリング周波数に応じた時間間隔である(14)に記載のディスクドライブシステム。
(18)繰り返しランアウト信号キャンセルのためにプログラムされた、コンピュータによる読み取り可能なプログラムコードを有するコンピュータ可読媒体であって、前記プログラムコードが、
インパルス応答を有する線形システムから位置誤差信号を受信するステップと、
前記位置誤差信号に基づき位置補正信号を計算するステップと、
前記位置誤差信号に逆行列を乗算することで中間キャンセル信号を形成するステップと、
1つ以上の所定の期間に基づき前記中間キャンセル信号のサンプルを積分することで、1つ以上のキャンセル信号を形成するステップと、
前記位置補正信号と前記キャンセル信号を位置コマンド信号に結合するステップと、
前記位置コマンド信号を前記線形システムに送信するステップとを含むコンピュータ可読媒体。
(19)前記プログラムコードが、1つ以上の中間演算結果を記憶するステップを含む、(18)のコンピュータ可読媒体。
(20)前記プログラムコードが、先のキャンセルによる前記位置誤差信号の変化が安定するのを待つステップとを含む、(18)のコンピュータ可読媒体。
【0007】
本発明に従った繰り返しランアウト信号相殺のためにプログラムされたコンピュータ可用プログラムコードを有するコンピュータ可読媒体もまた提示される。開示された実施形態における動作は、上述した装置およびシステムの動作に関して上に提示された機能を実行するために必要なステップを実質的に含む。
【0008】
本出願において、上述した本願発明の特徴的な構成の全部が、1つの実施形態中に存在する必要はなく、本願発明の構成のうち少なくとも一部を含む構成とすることができる。
【0009】
本発明に記載された特徴的な構成は、以下の実施形態において適宜組み合わせることができる。当業者は、上述した本発明の特徴的な構成のうち、1つ以上を有する構成とすることで、本発明を実施することができる。また、本発明において、以下の実施形態で説明されない付加的な構成要素を適宜追加することもできる。
【0010】
本発明は、以下に説明する実施形態の構成に特に限定されず、上記本発明を実施可能な範囲で適宜変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。なお、図面では、本発明にかかる代表的な実施形態の一例を示すものであり、本発明は図面記載された構成に限定されない。
【0012】
本明細書において、本発明にかかる装置を構成する機能を、それらの機能の独立性をより具体的に強調するために、モジュールとして記載している。例えば、モジュールは、カスタムVLSI回路、ゲートアレイ、論理チップ、もしくは、トランジスタ又は他の個別部品といったオフザシェルフ(off-the-shelf)半導体を含むハードウェア回路で構成されていてもよい。また、モジュールは、フィールドプログラマブルゲートアレイ、プログラマブルアレイ論理デバイス、プログラマブル論理デバイスなどといったプログラマブルハードウェアデバイスで構成されていてもよい。
【0013】
また、モジュールは、各種形式のプロセッサによって実行されるソフトウェアを用いてもよい。このとき、ソフトウェアに含まれるプログラムコードが識別されたモジュールは、例えば、目的、手順又は機能で編成された、コンピュータ命令の1つ以上の物理的又は論理的ブロックとして構成されていてもよい。一方で、識別されたモジュールの実行には、これらブロックが物理的に一緒に存在する必要はなく、論理的に一緒に結合された時にモジュールを構成するものであればよく、そのモジュールの所定の目的を達成するため、それぞれのブロックが異なる場所に記憶され、異なるプログラムコードによって実行されてもよい。
【0014】
実際、プログラムコードを含むモジュールは、単一の命令または多くの命令であってもよく、いくつかの異なるコードセグメントに分けて存在していてもよく、異なるプログラムの間でさらにいくつかの記憶装置に分けて記憶されることで、分散されていてもよい。同様に、オペレーショナルデータは本書においてモジュール内部に識別および例示されるかもしれず、あらゆる適格な形態で具体化され、適宜に他のいかなる形式のデータ構造内部に編成してもよい。例えば、プログラムコードは、磁気記録媒体などのコンピュータ可読媒体に記録されてものとすることができる。プログラムコードは、単一データセットとして集合体として存在してもよく、または異なる記憶装置上を含む異なる場所に分散されていてもよい。さらに、プログラムコードは、部分的に、システムまたはネットワーク上で単に電子信号としてのみ存在していてもよい。
【0015】
本明細書において、「一実施形態」や「実施形態」又はこれに類似する語句は、その実施形態に関連して記載された特徴部分、構造又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に包含されることを意味する。以下の説明では、「1実施形態において」、「実施形態において」又はこれに類似する語句は、必ずしもではないが、すべて同じ実施形態を指すこともある。
【0016】
コンピュータ可読媒体は、信号を生成する形態や、信号が生成される形態や、または、デジタル処理装置において読み取り可能なプログラムを実行させる形態など、あらゆる形態とすることができる。コンピュータ可読媒体は、伝送線路、光ディスク、磁気テープ、ベルヌーイドライブ(Bernoulli drive)、磁気ディスク、穿孔カード、フラッシュメモリ、集積回路または他のデジタル処理装置用記憶デバイスを用いることができる。
【0017】
さらに、本発明にかかる特徴、構造又は特性は、各実施形態において適宜組み合わせることができる。以下の説明において、本発明の特徴、構造又は特性は、プログラミング、ソフトウェアモジュール、ユーザ選択、ネットワークトランザクション、データベースクエリ、データベース構造、ハードウェアモジュール、ハードウェア回路、ハードウェアチップなどに、適用することができる。しかし、当業者によれば、本発明は、上記例に限定されることなく、他の方法、構成要素、材料などに適用することにより実施できると認められる。周知の構造、材料または手順は、本発明の態様を曖昧にすることを回避するために詳細な図示及び説明しない。
【0018】
図1は、繰り返しランアウトをキャンセルするシステム100の一実施形態を表している。本実施形態において、システム100は、線形システム(linear causal system)102、逆行列モジュール104および1つ以上のインパルス積分モジュール106を備える。
【0019】
線形システム102は、入力信号と出力信号とが線形であり、かつ、1つ以上の不要なRRO信号または調波外乱を有する。線形システム102は、測定,推定又は演算されるインパルス応答を有する。線形システム102は、キャンセル信号または位置コマンド信号を受信し、位置誤差信号(Position error signal., 以下、単にPESともいう。)を出力する構成とすることができる。キャンセル信号は、RRO信号または信号成分といった線形システム102における1つ以上の誤差信号または信号成分を訂正するように構成された信号とすることができる。また、キャンセル信号は、線形システム102を所望のシステム状態にするように構成された信号である。PESは、誤差測定値、所望の信号との差、所望の位置からの距離または別の誤差信号を知らせるように構成された信号であるとしてよい。
【0020】
線形システム102のインパルス応答は、インパルス信号に近い信号を線形システム102に入力し、線形システム102の出力を測定することで、検出することができる。また、線形システム102のインパルス応答は、他の類似のシステムのインパルス応答に基づき、または他の因子又は特性に基づいて推定することもできる。さらに、インパルス応答は、本技術分野において一般に知られているシステムインパルス応答演算法に基づき数学的に演算することができる。インパルス応答は、線形システム102の使用前に一度測定されるか、または、線形システム102又は状態の変化に基づき定期的に測定および更新されることができる。本実施形態において、インパルス応答は、予め設定された所定の期間にわたって測定、演算又は推定される。所定の期間は、記録ディスクのトラックに記録ヘッドなどを追従させる際のRRO信号のように、周期的回転または他の周期的運動といった線形システム102での物理的な作用または現象に基づいて設定される。所定の期間は、RRO信号のうちの1つ以上の周期または部分周期に基づいていてもよく、上述のように物理的な作用と相関性があってもよい。
【0021】
線形システム102のインパルス応答が既知であるので、適正なインパルスを線形システム102の入力信号として入力することで、所望の信号が線形システム102から出力される。これは行列式K*A=PESで表される。Kは連続する定数であり、Aは各々の行列の列が先行の列から1サンプルずつシフトダウンされた線形システム102のインパルス応答を含む行列である。本実施形態において、ベクトルKの長さ、行列Aにおける行の数と行列Aにおける列の数とは各々、上述した予め設定された期間におけるサンプルの数に等しい。K*Aは、ベクトルKによって基準化されたインパルス応答の総和であり、ベクトルKと同じ長さを有する。行列Aは、行列Aの行および列が独立であるので可逆であり、行列Aは正則行列であることを意味する。行列Aの行及び列は、行列Aの各列が先行の列から1サンプルずつシフトされた線形システム102のインパルス応答であるので、独立である。行列Aが可逆であるので、行列Aの逆行列A−1を算出することができる。従って、K*A*A−1=PES*A−1、そしてK=PES*A−1である。これは、PESが既知であればKが計算できることを意味する。Kが一旦算出されれば、その後、PES信号はインパルスのKを線形システム102に入力することによって算出することができる。一方、線形システム102にKの負、つまり−Kを入力することによって、PESは線形システム102からキャンセルすることができる。
【0022】
本実施形態において、逆行列モジュール104は、PESに逆行列を乗算するように構成されている。逆行列は、上述の通りA−1と実質的に相似とすることができる。また、逆行列モジュール104は、中間キャンセル信号を出力するように構成とすることができる。中間キャンセル信号は、上述したKまたは−Kのどちらか一方に実質的に相似であるとしてよい。中間信号がKに実質敵に相似であれば、インパルス積分モジュール106または線形システム102の入力のどちらか一方は中間キャンセル信号を逆行列化することができる。
【0023】
逆行列は、元の行列(つまりA行列)の列が同じインパルス応答信号のシフトされた値であるので、1つ以上の特定の特性を有するかもしれない。本実施形態において、逆行列の列は各々、同一か、または、実質的に相似である。別の実施形態において、各列の値は、多くの初期の非定数値の後に単一のほぼ一定の値に収束する。行列の乗算および記憶のために必要なメモリおよび演算処理の負担を最小限にするため、逆行列は1つ以上の方式で変更することができる。後述する図2の詳細な構成で説明するが、本実施形態のシステム100は、PESの直流分を除去するように構成された位置サーボ補正部を備える。位置サーボ補正部によれば、単一の実質的な定数値に相似である定数が逆行列の各値から減算することができる。減算される定数はPESの直流分を表している。この定数を減算した後、初期の非定数値の後の値は実質的にゼロになるはずであり、逆行列モジュール104はそれらを記憶する必要がない。このため、ゼロで乗算することに相当のため、乗算を実行するために必要な処理量を低減することができる。または、逆行列の列の各々が実質的に相似であるため、逆行列モジュール104は1つの列のみを記憶するように構成してもよい。
【0024】
本実施形態において、インパルス積分モジュール106は、中間キャンセル信号を積分し、キャンセル信号または中間キャンセル信号を出力するように構成されている。インパルス積分モジュール106の各々は、当業において周知の積分器を用いることができ、または、中間キャンセル信号を積分するように構成された別のモジュールとしてよい。さらに、システム100は、予め設定された期間における各サンプルごとに1つのインパルス積分モジュール106を備える。各サンプルについて累積的な中間キャンセル信号を積分することによって、インパルス積分モジュール106は各々、設定された期間ごとにおける各個別のサンプルからの各々の以前に認知した誤差をキャンセルするために累積キャンセル信号を出力する。インパルス積分モジュール106は直列構成であるとしてよく、インパルス積分モジュール106はPESサンプリング周波数に応じて時間的に等間隔に設定されている。インパルス積分モジュール106の構成は、積分器の環として当業において既知のものと実質的に同じ構成とすることができる。
【0025】
さらに、インパルス積分モジュール106の各々は、1つ以上の中間演算結果を記憶するように構成されている。中間演算結果は、積分結果、中間キャンセル信号または他の計算結果としてもよい。各サンプルは、それぞれの所定の期間において1つだけ存在するため、インパルス積分モジュール106は、次の所定の期間に再びサンプルが存在するまで中間演算結果を記憶するとしてよい。さらなに、インパルス積分モジュール106は、先の所定の期間から該インパルス積分モジュール106がキャンセル信号を出力し終えるまで、中間キャンセル信号からのサンプルを記憶してもよい。
【0026】
本実施形態において、逆行列モジュール104は、上述の通り、PESサンプルのための中間キャンセル信号を生成するためにPESサンプルの前の1つ以上のPESサンプル及びPESサンプルの後の1つ以上のPESサンプルを使用する。これは、逆行列モジュール104が中間キャンセル信号を直ちに計算できないことを意味する。RRO信号は、周期性を有しており、繰り返し可能な性質であって、また、インパルス積分モジュール106は所定の期間の少なくとも一部分が経過するまでキャンセル信号を線形システム102に適用しないことから、逆行列モジュール104は多くのサンプルに対しての中間キャンセル信号の算出が遅延する可能である。これは、本実施形態において、逆行列モジュール104が、直ちに算出されるために必要とされるように、所定の期間全体にわたりPESサンプルを覚えている代わりに、中間キャンセル信号の算出に関与するサンプルの数だけを覚えていることができることを意味する。
【0027】
図2は、上記のシステムをより詳細に説明するため、RRO信号をキャンセルするシステム200の別の実施形態を表している。本実施形態において、RRO信号をキャンセルするシステム200は、線形システム202、逆行列モジュール204、1つ以上のインパルス積分モジュール206、位置サーボ補正部208、および1つ以上の結合モジュール210、212を備える。
【0028】
本実施形態において、線形システム202、逆行列モジュール204およびインパルス積分モジュール206は、図1の線形システム102、逆行列モジュール104およびインパルス積分モジュール106とほぼ類似するものである。逆行列モジュール204及びインパルス積分モジュール206は、キャンセルモジュール又はRROモジュールの一部としてもよい。
【0029】
さらに、線形システム202は、駆動制御部214を備える。本実施形態において、駆動制御部214は、システム200における他のモジュールとフィードバックループ機能を有する。駆動制御部214は、結合モジュール212から位置コマンド信号又はキャンセル信号を入力として受信し、結合モジュール210にフィードバック信号として返されるPESを出力するように構成され得る。駆動制御部214は、位置サーボ補正部208及び逆行列モジュール204への入力としてPESを出力することができる。
【0030】
本実施形態において、駆動制御部214は、当業において一般に知られている通り、アクチュエータ制御部226及びアクチュエータ224を備える駆動制御部である。制御理論において、駆動制御部214はフィードバックループによって制御される装置である。駆動制御部214は、光、フロッピー(登録商標)またはハードディスク駆動機構の一部として構成することができ、または、駆動制御部214はRRO信号を含む別のシステムの一部として構成することができる。さらに、アクチュエータ224はデータヘッド222と結合され得る。データヘッド222は、リードヘッド、ライトヘッドまたはリード/ライトヘッドであるとしてよい。データヘッド222は、記録媒体に記録されているデータの読み取り/書き込みを実行するための、磁気抵抗ヘッド、光ヘッド、トランスデューサヘッドまたは別の形式のヘッドで構成することができる。本実施形態において、線形システム202は、1つ以上のデータ記録ディスク216を備える。データ記録ディスク216は、1つ以上のほぼ円形のデータトラックおよび位置決めデータ218を有していてもよい。スピンドルモータ又は別のモータ形式を有するモータ220が、データ記録ディスク216を軸回転させるように構成される。
【0031】
本実施形態において、駆動制御部214は、アクチュエータ224及びデータヘッド222についての位置を決定するために位置コマンド信号を使用し、アクチュエータ224及びデータヘッド222をデータトラック218に対して位置決めする。駆動制御部214は、アクチュエータ224及びデータヘッド222を位置決めするために回転ボイスコイルモータ(VCM)、又は、他の手段を使用することができる。駆動制御部214が位置コマンド信号を使用する前に、デジタル/アナログコンバータ(DAC)(図示せず)が、位置コマンド信号をデジタル信号からアナログ信号に変換する。さらに、駆動制御部214が位置コマンド信号を使用する前に増幅器(図示せず)が位置コマンド信号を増幅する。増幅器は相互コンダクタンス増幅器または別の増幅器形式のものを用いることができる。駆動制御部214は、位置コマンド信号をアクチュエータ制御部226に直接送信することができる。
【0032】
本実施形態において、駆動制御部214は、PESを生成するためにデータ記録ディスク216からの位置データ218を使用する。位置データ218は、専用サーボ、埋込みサーボ、埋設サーボ、別のサーボ形式または別の位置インジケータ形式とすることができる。さらに、駆動制御部214は、ヘッド位置信号を算出し、結合モジュール210へ出力するために位置データ218を使用し、そして、結合モジュール210が該ヘッド位置信号を目標位置信号から減算し、演算結果をPESとして出力する。本実施形態において、駆動制御部214、結合モジュール210又は別のモジュールは、さらに、位置サーボ補正部208および逆行列モジュール204がPESを受信する前に、PESを復調,変換または調整する構成であってもよい。
【0033】
本実施形態において、システム200は位置サーボ補正部208を備える。位置サーボ補正部208は、本技術分野において一般に知られているような位置サーボ補正部を用いてもよい。位置サーボ補正部208は、本技術分野において一般に知られているように、比例−積分−微分(PID)補正部であるとしてよい。位置サーボ補正部208は、結合モジュール210から、または線形システム202から直接、入力信号を受信することができる。位置サーボ補正部208は位置補正信号を出力することができる。位置サーボ補正部は、逆行列モジュールと同じ信号又は等価信号を受信することができる。受信された入力信号は、上述の通り、PESであるか、または1つ以上のシステム入力と結合されたPESであるとしてよい。本実施形態において、位置補正信号は、PESの直流分をキャンセルするように構成されているとしてよい。さらに、位置サーボ補正部208は、PESから位置補正信号を生成するために、比例、比例−積分、または比例−積分−微分技法のいずれかを使用することもできる。
【0034】
本実施形態において、システム200は1つ以上の結合モジュール210、212をさらに備える。結合モジュール210、212は、加算器、乗算器または他の信号結合器とすることができる。また、結合モジュール210、212への1つ以上の入力は、1つ以上の入力信号を反転または否定するように構成されたインバータを有していてもよい。第1の結合モジュール210は、線形システム202の出力信号を1つ以上のシステム入力と結合するように構成されていてもよい。一方で、結合モジュール210は、線形システム202からの出力信号を分割し、信号を別の入力信号と組み合わせることなく、位置サーボ補正部208及び逆行列モジュール204に送信する構成としてもよい。第1の結合モジュール210は、第1の結合された信号を位置サーボ補正部208及び逆行列モジュール204の入力へ出力するか、または、結合された信号を更なる処理のために別のモジュールに出力してもよい。上述の通り、第1の結合モジュール210は、目標位置信号などといった第2の入力から駆動制御部214の出力を減算するように構成されていてもよい。
【0035】
本実施形態において、第2の結合モジュール212は、位置サーボ補正部208の出力をインパルス積分モジュール206の出力と結合し、第2の結合された信号を線形システム202に出力するように構成されている。ここで、第2の結合された信号は位置コマンド信号である。さらに、第2の結合モジュール212は、他のシステム又はシステム200における他のモジュールに送信することができる複数の出力を有していてもよい。
【0036】
図3に示すフローチャート図は、論理的フローチャート図である。ここで、図示された順序および標示されたステップは一例である。例示された手順のうち1つ以上のステップや、又は、示された手順の一部を、機能,論理又は効果に関して等価である他のステップおよび方法によって達成することもできる。さらに、使用されたフォーマット及び記号は、手順の論理的ステップを説明するために付与されているものであって、手順の範囲を限定するものではない。図中のフローチャートでは、矢印形式および線形式が使用されているが、それらは対応する手順の範囲を限定するものではない。これらの矢印又は他の結合子は手順の論理的流れだけを示すために使用されている。例えば、矢印は、示されたステップ同士の間には、図示しない持続時間の待機又は監視期間が設定されていてもよい。さらに、制御方法の順序は、図示されたステップの順序に厳密に対応していてもよく、又は、適宜変更することもできる。
【0037】
図3は、繰り返しランアウトをキャンセルする手順の一実施形態を示している。なお、以下に説明する実施形態において、すでに説明した部材などと同等な構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号又は相当符号を付すことにより、説明を簡略化或いは省略する。先ず、位置サーボ補正部208及び逆行列モジュール204は、線形システム202で生成されたPESを、第1の結合モジュール210又はPESをさらに処理した別のモジュールから受信する(ステップ302)。システム200が過剰にキャンセルするのを防ぐために、PESは先のキャンセルによる変更からすでに安定化されていなければならない。
【0038】
位置サーボ補正部208は、PESに基づき位置補正信号を計算する(ステップ304)。位置補正信号は、PESの直流分を実質的に訂正したものであってよく、こうすることで、逆行列モジュール204が上述の通り単純化された逆行列を使用できるようになる。
【0039】
逆行列モジュール204は、中間キャンセル信号を生成するためにPESに逆行列を乗算する(ステップ306)。逆行列は、上述の通り、行列乗算が必要とするメモリおよび処理量を低減するために、簡略化又は縮小化することができる。逆行列モジュール204は、上述の通り、1つ以上のサンプルについての中間キャンセル信号の計算を遅延させてもよい。
【0040】
インパルス積分モジュール206は、キャンセル信号を生成するために中間キャンセル信号のサンプルを積分する(ステップ308)。キャンセル信号は、所定の期間の各サンプルにおける先のキャンセルの合計よりなる累積的なキャンセルまたはキャンセル信号を表現する。
【0041】
インパルス積分モジュール206は、適正なサンプルが存在するまで1つ以上の中間演算結果を記憶することができる(ステップ310)。インパルス積分モジュール206は、中間演算結果を、1つ以上の既定の期間またはサイクルにわたり、または既定の期間の一部分だけの間、記憶することができる(ステップ310)。
【0042】
結合モジュール212は、位置コマンド信号を生成するために位置補正信号をキャンセル信号と結合する(ステップ312)。結合モジュール212は位置コマンド信号を線形システム202に出力する(ステップ314)。逆行列モジュール204は、PESが変化から安定化するために1つ以上の所定の期間またはサイクル待機する(ステップ316)。
【0043】
図2に示すシステム200は、データ記録ディスクに読み取り/書き込みを行う際に、該データ記録ディスクのトラックに対して周期的にずれる繰り返しランアウト(RRO)信号をキャンセルするディスクドライブ装置に特に好適である。データ記録ディスクランアウト(RRO)信号をキャンセルをする場合には、先ず、現時点の繰り返しランアウト(RRO)信号のトラック上の位置を位置決めデータの基準とし、磁気ヘッドなどのデータヘッドが位置きめデータからどれくらいずれているかを示す位置誤差信号を生成し、該位置誤差信号をアクチュエータ制御部から出力する。
次に、位置サーボ補正部は、この位置誤差信号を受信し、該位置誤差信号に基いて位置補正信号を出力する。そして、キャンセルモジュールは、位置誤差信号を受信し、位置誤差信号から1つ以上の繰り返しランアウト成分をキャンセルする。さらに、逆行列モジュールによって、位置誤差信号に逆行列を乗算して中間キャンセル信号を出力し、1つ以上の所定の期間における中間キャンセル信号の少なくとも1つのサンプルを積分し、キャンセル信号を出力する。
言い換えると、本発明では、キャンセルモジュールによって、アクチュエータ制御部にフィードバック制御を行い、繰り返しランアウト(RRO)信号のトラック上の位置を補正し、さらに、逆行列モジュールによって中間キャンセル信号の積分を行うフィードフォア制御を行う。こうすれば、目標とする位置にアクチュエータを位置決めする際にフィード制御を組み合わせることで、フィードバック制御のみで位置を制御する場合に比べて、より緩やかに位置制御を行うことが可能となる。このため、従来のように、フィードバック制御のみで繰り返しランアウト成分をキャンセルする場合のようにアクチュエータが過剰に反応し、目標とする位置に対してデータヘッドが往復してしまうことに起因して、アクチュエータの挙動が不安定になってしまい、読み取り/書き込みエラーが発生することを防止できる。また、従来のようにフィードバック制御のみで繰り返しランアウト成分をキャンセルする場合には、データ記録ディスクの記録密度が高くなるとそれに比例して高いサンプリング周波数で位置制御を実行しなくてはならず、現在の高記録密度化を鑑みると実現性が低かった。本発明のよれば、フィードバック制御とフィードフォア制御とを組み合わせることで、高いサンプリング周波数を必要とすることなく、高記録密度のデータ記録ディスクに対してRRO信号のキャンセルをより安定且つ正確に実行することができる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施形態に記載された構成に特に限定されるものではなく、適宜な変形、改良などが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明にかかる、繰り返しランアウトをキャンセルするシステムの実施形態を示す概略的なブロック図である。
【図2】繰り返しランアウトをキャンセルするシステムの実施形態を示す概略的な別のブロック図である。
【図3】繰り返しランアウトをキャンセルする制御手順の一例を示す概略的なフローチャート図である。
【符号の説明】
【0046】
100、200 (繰り返しランアウトをキャンセルする)システム
102、202 線形システム
104、204 逆行列モジュール
106、206 インパルス積分モジュール
208 位置サーボ補正部
210、212 結合モジュール
214 駆動制御部
216 データ記録ディスク
218 データトラックおよび位置決めデータ
220 モータ
222 データヘッド
224 アクチュエータ
226 アクチュエータ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ記録ディスクに読み取り/書き込みを行う際に、該データ記録ディスクのトラックに対して周期的にずれる繰り返しランアウト(RRO)信号をキャンセルするディスクドライブ装置であって、
インパルス応答を有し、キャンセル信号を受信し、位置誤差信号を出力するように構成された線形システムと、
前記位置誤差信号に逆行列を乗算し、中間キャンセル信号を出力するように構成された逆行列モジュールと、
1つ以上の既定の期間における前記中間キャンセル信号の少なくとも1つのサンプルを積分し、前記キャンセル信号を出力するように各々構成された1つ以上のインパルス積分モジュールと、を備えるディスクドライブ装置。
【請求項2】
前記逆行列は、インパルス行列の数学的逆数であって、前記インパルス行列の各列には前記線形システムの前記インパルス応答のシフトされた値を含む請求項1に記載のディスクドライブ装置。
【請求項3】
前記逆行列の列の各々は互いに実質的に相似であり、前記逆行列モジュールはさらに前記逆行列の1列だけを記憶するように構成されている請求項2に記載のディスクドライブ装置。
【請求項4】
前記逆行列の各値は、多くの非定数列の後の単一の定数に実質的に相似である請求項2に記載のディスクドライブ装置。
【請求項5】
前記位置誤差信号の直流分を実質的にキャンセルするように構成された位置サーボ補正部をさらに備える請求項4に記載のディスクドライブ装置。
【請求項6】
前記単一の定数値は、元の定数が前記逆行列の各値から減算された後、実質的にゼロである請求項4に記載のディスクドライブ装置。
【請求項7】
前記逆行列モジュールは、更に、前記非定数列を記憶し、前記単一の定数値に実質的に等しい1つ以上の列を記憶しないように構成されている請求項4に記載のディスクドライブ装置。
【請求項8】
前記逆行列モジュールは、更に、1つ以上の先のキャンセルが安定化するまで待つように構成されている請求項1に記載のディスクドライブ装置。
【請求項9】
前記線形システムは、更に、駆動制御部を備える請求項1に記載のディスクドライブ装置。
【請求項10】
前記駆動制御部は、1つのアクチュエータと、1つのアクチュエータ制御部とを備える請求項9に記載のディスクドライブ装置。
【請求項11】
前記駆動制御部は、前記キャンセル信号に基づき前記ディスクに対して前記アクチュエータを位置決めするように構成されている請求項10に記載のディスクドライブ装置。
【請求項12】
所定の期間における各サンプルについて1つのインパルス積分モジュールを備え、前記インパルス積分モジュールは前記位置誤差信号のサンプリング周波数に応じた時間間隔である請求項1に記載のディスクドライブ装置。
【請求項13】
前記インパルス積分モジュールはそれぞれ、更に、1つ以上の中間演算結果を記憶するように構成されている請求項12に記載のディスクドライブ装置。
【請求項14】
読み取り/書き込みを行う際のトラックに対して周期的にずれる繰り返しランアウト(RRO)信号をキャンセルするディスクドライブシステムであって、
1つ以上の実質的に円状のデータトラックと位置決めデータとを含む1つ以上のデータ記録ディスクと、
前記データ記録ディスクを軸に関して回転させるように構成されたモータと、
データヘッドと結合されたアクチュエータと、
位置コマンド信号を受信し、前記位置コマンド信号に基づき前記データ記録ディスクの前記データトラックに対して前記アクチュエータと前記データヘッドとを位置決めし、前記位置決めデータに基づき位置誤差信号を出力するように構成されたアクチュエータ制御部と、
前記位置誤差信号を受信し、位置補正信号を出力するように構成された位置サーボ補正部と、
前記位置誤差信号を受信し、前記位置補正信号と結合された時に前記位置誤差信号から1つ以上の繰り返しランアウト成分をキャンセルするように構成された1つ以上のキャンセル信号を出力するように構成されたキャンセルモジュールとを備え、
前記キャンセルモジュールが前記位置誤差信号に逆行列を乗算して中間キャンセル信号を出力するように構成された逆行列モジュールと、1つ以上の所定の期間における前記中間キャンセル信号の少なくとも1つのサンプルを積分し、前記キャンセル信号を出力するように各々構成された1つ以上のインパルス積分モジュールとを含み、
前記位置補正信号及び前記キャンセル信号を前記位置コマンド信号に結合するように構成された結合モジュールとを備える、ディスクドライブシステム。
【請求項15】
前記逆行列は、インパルス行列の数学的逆数であって、前記インパルス行列の各列には前記線形システムの前記インパルス応答のシフトされた値を含む請求項1に記載のディスクドライブシステム。
【請求項16】
前記逆行列から実質的に定数と同等の値を含む1つ以上の列が除去される請求項15に記載のディスクドライブシステム。
【請求項17】
所定の期間における各サンプルについて1つのインパルス積分モジュールを備え、前記インパルス積分モジュールが前記位置誤差信号のサンプリング周波数に応じた時間間隔である請求項14に記載のディスクドライブシステム。
【請求項18】
繰り返しランアウト信号キャンセルのためにプログラムされた、コンピュータによる読み取り可能なプログラムコードを有するコンピュータ可読媒体であって、前記プログラムコードが、
インパルス応答を有する線形システムから位置誤差信号を受信するステップと、
前記位置誤差信号に基づき位置補正信号を計算するステップと、
前記位置誤差信号に逆行列を乗算することで中間キャンセル信号を形成するステップと、
1つ以上の所定の期間に基づき前記中間キャンセル信号のサンプルを積分することで、1つ以上のキャンセル信号を形成するステップと、
前記位置補正信号と前記キャンセル信号を位置コマンド信号に結合するステップと、
前記位置コマンド信号を前記線形システムに送信するステップとを含むコンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記プログラムコードが、1つ以上の中間演算結果を記憶するステップを含む、請求項18のコンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記プログラムコードが、先のキャンセルによる前記位置誤差信号の変化が安定するのを待つステップとを含む、請求項18のコンピュータ可読媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−276918(P2008−276918A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88559(P2008−88559)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】