説明

ディスクブレーキ装置

【課題】自動車等に用いられ、浮動型キャリパ機構3を備えるディスクブレーキ装置1であって、キャリパボディ5の爪部52の外面に爪部52の切欠部52aを覆い隠す化粧プレート8が設けられたものにおいて、化粧プレート8に泥や雪等が接触することを防止する。
【解決手段】キャリパボディ5の爪部52の外面であって化粧プレート8から露出した部分に、又はキャリパブラケット4の爪部52側の外面に、化粧プレート8の外面よりもディスクロータ2の軸方向に突出する爪側突部52bを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に用いられ浮動型キャリパ機構を備えるディスクブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輪と共に回転するディスクロータと、浮動型のキャリパ機構とからなり、キャリパ機構は、ディスクロータの一方の側面に対向しピストンを内挿するシリンダ部と、ディスクロータの他方の側面に対向する爪部と、シリンダ部と爪部とをディスクロータを跨いで接続するブリッジ部とを有するキャリパボディと、ピストンとディスクロータとの間、及びキャリパボディの爪部とディスクロータとの間に配置された一対のパッドと、両パッドをディスクロータの軸方向に摺動自在に支持するキャリパブラケットとで構成され、両パッドをディスクロータの側面に押し付けて制動を行うディスクブレーキ装置であって、キャリパボディの爪部に切欠部を形成し、シリンダ部を加工し易くしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、爪部の切欠部を覆い隠すように、化粧プレートをキャリパボディの爪部の外面にネジ止めし、外観を向上させたものも知られている。
【特許文献1】特開2005−282758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の構成では、自動車のホイール等に付着した泥や雪等が化粧プレートに接触し、化粧プレートの歪みや塗装剥離等が発生する虞がある。
【0005】
本発明は、化粧プレートに泥や雪等が接触することを防止したディスクブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、車輪と共に回転するディスクロータと、ディスクロータの一方の側面に対向しピストンを内挿するシリンダ部と、ディスクロータの他方の側面に対向する爪部と、シリンダ部と爪部とをディスクロータを跨いで接続するブリッジ部とを有するキャリパボディと、ピストンとディスクロータとの間、及びキャリパボディの爪部とディスクロータとの間に配置された一対のパッドと、両パッドをディスクロータの軸方向に摺動自在に支持するキャリパブラケットとを備え、両パッドをディスクロータの側面に押し付けて制動を行うディスクブレーキ装置において、キャリパボディの爪部の外面に化粧プレートが配置され、キャリパボディの爪部の外面であって化粧プレートから露出した部分に、又はキャリパブラケットの爪部側の外面に、化粧プレートの外面よりもディスクロータの軸方向外方に突出する爪側突部が設けられたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、自動車のホイール等に付着した泥や雪等は爪側突部で削ぎ落とされ、泥や雪等が化粧プレートに接触し難くなる。これにより、泥や雪等に接触することによる化粧プレートの歪みや塗装剥離等の発生を防止することができ、化粧プレートの外観を良好に保つことができる。
【0008】
又、化粧プレートに、キャリパボディのブリッジ部の外面に沿う折曲部を設け、この折曲部をキャリパボディのブリッジ部に固定している場合には、化粧プレートの折曲部に自動車のホイール等に付着した泥や雪等が接触し、化粧プレートの歪みや塗装剥離等が発生する虞がある。
【0009】
この場合、キャリパボディのブリッジ部の外面に、化粧プレートの折曲部から露出した部分に位置させて、折曲部の外面よりもディスクロータの径方向外方に突出するブリッジ側突部を設ければ、自動車のホイール等に付着した泥や雪等はブリッジ側突部で削ぎ落とされる。これにより、泥や雪等が化粧プレートの折曲部に接触し難くなり、泥や雪等に接触することによる化粧プレートの歪みや塗装剥離等の発生を防止して、化粧プレートの外観を良好に保つことができる。
【0010】
又、ブリッジ部の中央部に、軽量化のため肉厚が薄く形成された薄肉部53aが形成され、他の部分にシリンダ部51と爪部52との接続強度を高めるべく肉厚が厚い厚肉部が形成されている場合には、化粧プレートの折曲部を薄肉部に配置することにより、既存の厚肉部をブリッジ側突部として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1〜3を参照して、本発明のディスクブレーキ装置の実施形態を説明する。図中、1は自動車に用いられるディスクブレーキ装置である。ディスクブレーキ装置1は、車輪と共に回転するディスクロータ2と、ナックル等の車体側に固定され一対のパッドによりディスクロータ2を挟み込むことにより制動する浮動型のキャリパ機構3とを備える。尚、図中の矢印Aは、車両前進走行時のディスクロータの回転方向を示している。
【0012】
キャリパ機構3は、ナックル等の車体側に固定されるキャリパブラケット4と、キャリパブラケット4にスライドピン5a,5a(図3参照)を介してディスクロータ2の軸方向に移動自在に取り付けられたキャリパボディ5と、ディスクロータ2を側方から挟みこむように配置されると共に、キャリパブラケット4にリテーナ6を介してディスクロータ2の軸方向に摺動自在に支承される一対のパッド71,72とを備える。パッド71,72は、ディスクロータ2の側面に摺接するライニング71a,72aと、ライニング71a,72aを保持する金属製の裏板71b,72bとからなる。
【0013】
キャリパボディ5は、図2に示すように、ディスクロータ2の一方の側面に対向するシリンダ部51と、ディスクロータ2の他方の側面に対向する爪部52と、シリンダ部51と爪部52とをディスクロータ2を跨いで接続するブリッジ部53とで構成される。
【0014】
シリンダ部51内にはピストン51aがディスクロータ2の軸方向に摺動自在に内挿され、シリンダ部51とピストン51aとにより油圧室51bを画成する。また、ピストン51aとディスクロータ2との間にピストン側パッド71が配置され、爪部52とディスクロータ2との間に爪部側パッド72が配置される。
【0015】
キャリパ機構3は、油圧室51bに作動油が供給されると、ピストン51aがピストン側パッド71をディスクロータ2に押し付け、同時に、キャリパボディ5がピストン51aの押圧力の反力によりピストン51aの押圧方向とは逆の方向へ移動し、爪部52を介して爪部側パッド72をディスクロータ2に押し付けることにより、ディスクロータ2を制動する。
【0016】
ブリッジ部53の中央部には、軽量化のため肉厚が薄く形成された薄肉部53aが形成され、他の部分はシリンダ部51と爪部52との接続強度を高めるべく肉厚が厚い厚肉部53bとなっている。薄肉部53aの中央部には、パッド71,72の磨耗度合いを視認できるように窓部53cが形成されている。
【0017】
又、爪部52はその先端から基端に向かって大きく切り欠かれた切欠部52aが形成され二股状となっており、切欠部52aを介してピストン51aを挿入するシリンダ部51を加工し易くしている。
【0018】
キャリパボディ5の外面には、爪部52の外面に沿い切欠部52aを覆い隠すプレート本体81と、ブリッジ部53の外面に沿う折曲部82とからなるL字状の化粧プレート8が配置される。化粧プレート8の折曲部82は、ブリッジ部53の薄肉部53aに配置され、厚肉部53bが折曲部82の外面よりもディスクロータ2の軸方向外方へ突出するようにしている。又、爪部52の外面には、化粧プレート8のプレート本体81から露出した部分に位置させて、プレート本体81の外面よりもディスクロータ2の軸方向外方に突出した爪側突部52bが形成されている。
【0019】
これにより、自動車のホイール等に付着した泥や雪等は、ブリッジ側突部としての厚肉部53b及び爪側突部52bにより削ぎ落とされ、化粧プレート8と接触することを抑制し、化粧プレート8の歪みや塗装剥離を防止して、外観を良好に保つことができる。又、化粧プレート8の折曲部82を薄肉部53aに配置することにより、既存の厚肉部53bをブリッジ側突部として利用することができる。
【0020】
又、化粧プレート8のプレート本体81には、爪部52の切欠部52aから内方へ延びる接続片83aを介して、爪部52と爪部側パッド72との間に挟み込まれる一対の被挟持部83が設けられている。爪部側パッド72の裏板72bには、各被挟持部83を受け入れる受入部72cが形成されている。
【0021】
又、図2に示すように、化粧プレート8の折曲部82には、ディスクロータ2の径方向に貫通する貫通孔82aが形成されている。この貫通孔82aには固定部材としてのフック部材9が引っ掛けられ、フック部材9がブリッジ部53の窓部53cに着脱可能に係合されることにより、化粧プレート8の折曲部82がブリッジ部53に固定される。尚、固定部材としては、フック部材9に限られず、例えば、ネジやリベットを用いて折曲部82をブリッジ部53に固定してもよい。
【0022】
又、化粧プレート8のプレート本体81の内面には、爪部52の外面に当接することにより化粧プレート8を外方へ突き出させる当接部81aが設けられている。この当接部81aにより化粧プレート8は爪部52に対して外方へ押されるため、折曲部82でフック部材9により固定されている化粧プレート8は、当接部81aを支点として、両被挟持部83を爪部52の内面に押し付ける力が発生する。これにより、化粧プレート8がキャリパボディ5に確実に固定される。
【0023】
尚、実施形態においては、化粧プレート8の一対の被挟持部83は、爪部52の切欠部52aから内方へ延びる接続片83aを介して設けられているが、接続片83aは、爪部52の先端側、又は爪部52のディスクロータ2の周方向外側から内方へ延ばして被挟持部83と接続させてもよい。この場合、爪側突部は、例えば、キャリパブラケット4の爪部側の外面に形成すればよい。
【0024】
又、実施形態においては、化粧プレート8に一対の被挟持部83を設けているが、被挟持部83は1つであっても、3つ以上であってもよい。又、実施形態においては、受入部72cを爪部側パッド72の裏板72bに形成しているが、受入部は爪部52の内面に形成してもよい。又、実施形態においては、当接部81aをプレート本体81の内面に形成しているが、当接部は爪部52の外面に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のディスクブレーキ装置の実施形態を示す説明図。
【図2】図1のII−II線切断断面図。
【図3】図2のIII−III線切断断面図。
【符号の説明】
【0026】
1…ディスクブレーキ装置、 2…ディスクロータ、 3…キャリパ機構、 4…キャリパブラケット、 5…キャリパボディ、 5a…スライドピン、 51…シリンダ部、 51a…ピストン、 51b…油圧室、 52…爪部、 52a…切欠部、 52b…爪側突部、 53…ブリッジ部、 53a…薄肉部、 53b…厚肉部(ブリッジ側突部)、 53c…窓部、 6…リテーナ、 71…ピストン側パッド、 71a…ライニング、 71b…裏板、 72…爪部側パッド、 72a…ライニング、 72b…裏板、 72c…受入部、 8…化粧プレート、 81…プレート本体、 81a…当接部、 82…折曲部、 82a…貫通孔、 83…被挟持部、 83a…接続片、 9…フック部材(固定部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と共に回転するディスクロータと、
ディスクロータの一方の側面に対向しピストンを内挿するシリンダ部と、ディスクロータの他方の側面に対向する爪部と、シリンダ部と爪部とをディスクロータを跨いで接続するブリッジ部とを有するキャリパボディと、
ピストンとディスクロータとの間、及びキャリパボディの爪部とディスクロータとの間に配置された一対のパッドと、
両パッドをディスクロータの軸方向に摺動自在に支持するキャリパブラケットとを備え、
両パッドをディスクロータの側面に押し付けて制動を行うディスクブレーキ装置において、
キャリパボディの爪部の外面に化粧プレートが配置され、
キャリパボディの爪部の外面であって化粧プレートから露出した部分に、又はキャリパブラケットの爪部側の外面に、化粧プレートの外面よりもディスクロータの軸方向外方に突出する爪側突部が設けられたことを特徴とするディスクブレーキ装置。
【請求項2】
車輪と共に回転するディスクロータと、
ディスクロータの一方の側面に対向しピストンを内挿するシリンダ部と、ディスクロータの他方の側面に対向する爪部と、シリンダ部と爪部とをディスクロータを跨いで接続するブリッジ部とを有するキャリパボディと、
ピストンとディスクロータとの間、及びキャリパボディの爪部とディスクロータとの間に配置された一対のパッドと、
両パッドをディスクロータの軸方向に摺動自在に支持するキャリパブラケットとを備え、
両パッドをディスクロータの側面に押し付けて制動を行うディスクブレーキ装置において、
キャリパボディの爪部の外面に化粧プレートが配置され、
化粧プレートは、ブリッジ部の外面に沿う折曲部を備え、折曲部で固定部材を介してキャリパボディのブリッジ部に固定され、
キャリパボディのブリッジ部の外面に、化粧プレートの折曲部から露出した部分に位置させて、折曲部の外面よりもディスクロータの径方向外方に突出するブリッジ側突部が設けられたことを特徴とするディスクブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−216162(P2009−216162A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59802(P2008−59802)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】