説明

ディスクモータ及びそれを備えた電動作業機

【課題】従来と比較して整流子ディスクの基板面積(内径と外径の差)を小さくすることの可能なディスクモータ及びそれを備えた電動作業機を提供する。
【解決手段】整流子ディスク100は、表面に、複数の整流子セグメントを成す複数の電極パターン110を有する。整流子ディスク100は、裏面に、複数の第1連絡パターン111を有する。各々の第1連絡パターン111は、間に7つの電極パターン110を挟んだ第1群(奇数番目)の電極パターン110同士を相互に接続する。整流子ディスク100と同形状の接続用ディスクを設け、間に7つの電極パターン110を挟んだ第2群(偶数番目)の電極パターン110同士を相互に接続する第2連絡パターンを前記接続用ディスクに設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整流子ディスク及びコイルディスクを有して出力軸を回転駆動するディスクモータ及びそれを備えた電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1のディスクモータは、出力軸と、出力軸に固定され略円板状であってコイルパターンが印刷されたコイルディスクと、コイルパターンと接続される整流子ディスクと、コイルパターンに対向するように配置される磁石と、整流子ディスクに電流を供給するためのブラシとから主に構成される。
【0003】
ディスクモータの回転数は、ブラシから供給される電圧、ディスクモータの電流、コイルディスクのコイルパターン、磁石の磁束、ブラシの数(極数)等により決定される。ブラシから供給される電圧及びディスクモータの電流が一定である場合には、コイルディスクのコイルパターン、磁石の磁束、ブラシの数を変更することによりディスクモータを所望の回転数に設定することが可能となる。
【0004】
図16(A)は、従来の整流子ディスク835の平面図である。図16(B)は、図16(A)において上面側のパターンを省略し且つ底面側のパターンを透視した透視図である。図16(C)は、同整流子ディスクの底面図である。
【0005】
整流子ディスク835は、表面(上面)に、複数の電極パターン840と、複数の表面側第2連絡パターン842Aとを有し、裏面(底面)に、複数の第1連絡パターン841と、裏面側第2連絡パターン842Bとを有する。複数の電極パターン840は、複数の整流子セグメントを成す。図示の例では、整流子セグメントの数は40(電極パターン840は40個)である。図16(A)において1番目のセグメントを定義し、各セグメントに時計回りに通し番号(1〜40)を付す。奇数番目のセグメントに対応する電極パターン840を「第1群の電極パターン」、偶数番目のセグメントに対応する電極パターン840を「第2群の電極パターン」とする。
【0006】
各々の第1連絡パターン841は、間に7つの電極パターン840を挟んだ第1群(奇数番目)の電極パターン840同士を相互に接続する。図中、1,9,17,25,33番目のセグメントに対応する電極パターン840及びそれらを相互に接続する第1連絡パターン841を強調(縦線ハッチング)して示している。電極パターン840と第1連絡パターン841との層間接続(表面、裏面間接続)は、外側スルーホール851及び内側スルーホール852が成す。外側スルーホール851は、各電極パターン840の外側位置において各電極パターン840から裏面側に延びる。内側スルーホール852は、各電極パターン840の内側位置において各電極パターン840から裏面側に延びる。1番目と9番目のセグメント同士の接続に着目すれば、1番目の電極パターン840の内側スルーホール852と、9番目の電極パターン840の外側スルーホール851とが、第1の連絡パターン841によって相互に接続される(第1群における他の番号同士の組合せに係る電極パターン840同士も同様に接続される)。
【0007】
各々の表面側第2連絡パターン842A及び裏面側第2連絡パターン842Bは、間に7つの電極パターン840を挟んだ第2群(偶数番目)の電極パターン840同士を相互に接続する。図中、6,14,22,30,38番目のセグメントに対応する電極パターン840及びそれらを相互に接続する表面側第2連絡パターン842A及び裏面側第2連絡パターン842Bを強調(横線ハッチング)して示している。表面側第2連絡パターン842Aと裏面側第2連絡パターン842Bとの層間接続(表面、裏面間の接続)は、中継スルーホール855が成す。6番目と14番目のセグメント同士の接続に着目すれば、6番目の電極パターン840の内側スルーホール852と、14番目の電極パターン840の内側スルーホール852とが、表面側第2連絡パターン842A及び裏面側第2連絡パターン842Bによって相互に接続される(第2群における他の番号同士の組合せに係る電極パターン840同士も同様に接続される)。
【0008】
上記のように電極パターン840を接続しておくことにより、限られたブラシの数でコイルディスクに回転力の源になる適切な電流を供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許3636700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来の整流子ディスク835は、裏面に第1連絡パターン841及び裏面側第2連絡パターン842Bが混在しており、基板面積(内径と外径の差)を小さくできないという問題があった。すなわち、整流子ディスクの外径を小さくできない、又は内径(中央部貫通孔径)を大きくできないという問題があった。
【0011】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、従来と比較して整流子ディスクの基板面積(内径と外径の差)を小さくすることの可能なディスクモータ及びそれを備えた電動作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある態様は、ディスクモータである。このディスクモータは、
整流子ディスク及び少なくとも1枚のコイルディスクを有するロータと、
前記コイルディスクのコイルパターンと対向する磁束発生部を有するステータと、
前記整流子ディスクを介して前記コイルパターンに電流を供給する電流供給部と、
前記ロータの回転力で回転する出力軸とを備え、
前記整流子ディスクは、前記出力軸の周りに配列された複数の整流子セグメントを成す複数の電極パターンが設けられた第1の層を有し、
前記複数の電極パターンは、第1群の電極パターンと第2群の電極パターンとを含み、
間に所定数の電極パターンを挟んだ前記第1群の電極パターン同士を相互に接続する第1の連絡パターンが前記第1群の各電極パターンに対して設けられ、
間に所定数の電極パターンを挟んだ前記第2群の電極パターン同士を相互に接続する第2の連絡パターンが前記第2群の各電極パターンに対して設けられ、
前記第1及び第2の連絡パターンが相互に異なる層に存在し、前記第1及び第2の連絡パターンのうち少なくとも一方が存在する第2の層と、前記第1及び第2の連絡パターンのうち少なくとも他方が存在する第3の層を有する。
【0013】
前記第1及び第2の連絡パターンの少なくともいずれかが複数層に分かれて存在してもよい。
【0014】
前記第1及び第2の連絡パターンは、少なくとも1つの層において周方向位置及び径方向位置の双方が異なる2点を相互に接続してもよい。
【0015】
前記複数の電極パターンに前記出力軸周りで通し番号を付したとき、前記第1群の電極パターンは奇数番目の電極パターンであり、前記第2群の電極パターンは偶数番目の電極パターンであってもよい。
【0016】
前記第1及び第2の連絡パターンは、前記整流子ディスクの両面の層と、前記コイルパターンの形成された複数の層とに分かれて存在してもよい。
【0017】
前記ロータは、前記整流子ディスク及び前記コイルディスクとは別に接続用ディスクを備え、
前記第1及び第2の連絡パターンは、前記整流子ディスクの両面の層と、前記接続用ディスクの両面の層とに分かれて存在してもよい。
【0018】
前記第1の連絡パターン同士を異なる層間で接続する中継導体部を備え、前記中継導体部が前記電極パターンよりも前記出力軸に近い位置に存在してもよい。
【0019】
前記ロータは、前記整流子ディスク及び前記コイルディスクとは別に接続用ディスクを備え、
前記第1の連絡パターンは前記整流子ディスクの他方の面に存在し、前記第2の連絡パターンは前記接続用ディスクの両面の層に分かれて存在してもよい。
【0020】
前記第1及び第2の連絡パターンは、前記出力軸の方向から見て、径方向位置が前記電極パターンの存在範囲内にあってもよい。
【0021】
前記電流供給部は、前記複数の電極パターンに接触するブラシを有してもよい。
【0022】
本発明のもう一つの態様は、前記ディスクモータを備えた電動作業機である。
【0023】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、第1及び第2の連絡パターンが相互に異なる層に存在し、かつ前記第1及び第2の連絡パターンの少なくともいずれかは複数層に分かれて存在するため、従来のように整流子ディスクの裏面に第1及び第2の連絡パターンが混在している場合と比較して整流子ディスクの基板面積(内径と外径の差)を小さくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係る電動作業機としての刈払機の斜視図。
【図2】図1に示す刈払機の駆動部の正断面図。
【図3】図2に示すステータの模式的平面図。
【図4】図2に示すロータの、左半分を断面とした正面図。
【図5】実施例1における、図4に示す整流子ディスクのパターン説明図。
【図6】実施例1における、図4に示す接続用ディスクのパターン説明図。
【図7】実施例2における、図4に示す整流子ディスクのパターン説明図。
【図8】実施例2における、図4に示す接続用ディスクのパターン説明図。
【図9】実施例3における、図4に示す接続用ディスクのパターン説明図。
【図10】(A)は図4に示す第1コイルディスクの平面図、(B)は同コイルディスクの底面図。
【図11】第1コイルディスクのコイルパターン説明図。
【図12】他の実施の形態に係るディスクモータを有する駆動部の正断面図。
【図13】同ディスクモータのロータの正面図。
【図14】図13に示す整流子ディスクのパターン説明図。
【図15】図13に示す第1コイルディスクのパターン説明図。
【図16】従来の整流子ディスクのパターン説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態に係る刈払機1の斜視図である。電動作業機の例示である刈払機1は、電源部3と、パイプ部4と、ハンドル部5と、駆動部6と、刈刃7とを備える。
【0028】
電源部3は、電源たるバッテリ301を着脱可能に有する。パイプ部4は、電源部3と駆動部6とを機械的に接続する(連結する)。また、パイプ部4の内部には、電源部3と駆動部6とを電気的に接続する配線(図示せず)が挿通されている。この配線により、電源部3から駆動部6に電力が供給される。駆動部6は、ヘッドハウジング61の内部にディスクモータを収容しており、電源部3からの供給電力により刈刃7を回転駆動する。ディスクモータの構成は後述する。
【0029】
ハンドル部5は、パイプ部4の中間、すなわち電源部3と駆動部6との間に取り付け固定されている。ハンドル部5は、一対のアーム51の先端にそれぞれグリップ52を取り付けてなる。一方のグリップ52には、スロットル53が設けられている。作業者は、スロットル53を操作することにより、駆動部6への供給電力を調整可能、すなわち刈刃7の回転数を調整可能である。刈刃7は、略円板状で、その周縁に鋸歯が形成されている。また、刈刃7中心には後述するディスクモータの出力軸に装着される孔(図には現れず)が形成されている。
【0030】
図2は、図1に示す刈払機1の駆動部6の正断面図である。なお、図2に示すように、出力軸31の延出方向を上下方向と定義する。駆動部6は、ヘッドハウジング61の内部にディスクモータ80を有する。ヘッドハウジング61は、カバー部62及びベース部63を嵌合一体化してなる。ディスクモータ80は、ステータ81と、ロータ82と、一対のブラシ83とを有する。一対のブラシ83は、ディスクモータ80の回転軸(出力軸31)について対称に設けられ、カバー部62のブラシホルダ65に支持される。各ブラシ83は、下面が後述する整流子ディスク100上の銅等の導体の整流子パターンと当接するように、バネ83Aによって整流子ディスク100側(下側)に付勢される。ブラシ83は、図1の電源部3に接続されており、ロータ82の後述するコイルパターンに電流を供給する電流供給部として機能する。
【0031】
ステータ81は、磁束発生部としてのマグネット41と、軟磁性体である上ヨーク42及び下ヨーク43とを有する。リング状の上ヨーク42は、カバー部62の下面に例えばネジ622で固定される。上ヨーク42と略同径のリング状の下ヨーク43は、ベース部63の下面に形成されたリング状溝部631内に例えばネジ632で固定される。マグネット41は、ベース部63の上面に形成された穴部633内に嵌め込み固定される。
【0032】
図3は、図2に示すステータ81の模式的平面図である。本図に示すように、例えば円板形状のマグネット41は、例えば10個、円周上に等角度ピッチで並んで配置される(マグネット41を収容する図2の穴部633も円周上に同数並んで存在する)。円周の中心は、ディスクモータ80の回転中心と略一致する。隣り合うマグネット41は、上面の磁極が相互に異なる。マグネット41としては、ネオジム磁石等の希土類磁石が好ましいが、フェライト磁石等の焼結磁石を用いてもよい。上ヨーク42及び下ヨーク43は、後述するロータ82のコイルパターンに印加される磁束密度を高めるものである。
【0033】
図2に示すように、ロータ82は、出力軸31(ロータシャフト)と、整流子ディスク100と、接続用ディスク200と、コイル部36と、フランジ37とを有する。出力軸31は、カバー部62に固定された上側軸受け311及びベース部63に固定された下側軸受け312によって回転自在に支持される。出力軸31の下方側端部には雄ネジ31Aが形成されており、図示せぬ留め具によって図1の刈刃7が固定される。整流子ディスク100の上面は、ブラシ83の摺動面である。図1に示す電源部3からブラシ83及び整流子ディスク100を介してコイル部36に電流が供給される。
【0034】
図4は、図2に示すロータ82の、左半分を断面とした正面図である。本図に示すように、出力軸31に同軸的に固定された例えばアルミ等の金属製又はナイロン等の樹脂製のフランジ37は、略円筒形状の円筒部37Aと、略円板形状の円板部37Bとから構成される。円板部37Bは、円筒部37Aの側面から出力軸31と垂直に外側に突出する。軸方向視で円板部37Bと同形状の絶縁板38,39が、同じく同形状のシート状の接着層502,503(絶縁性)によって円板部37Bの上下面に接着固定される。絶縁板38の上面には、シート状の接着層501(絶縁性)を介して接続用ディスク200が接着固定され、接続用ディスク200の上面には、シート状の接着層500(絶縁性)を介して整流子ディスク100が接着固定される。絶縁板39の下面には、シート状の接着層505(絶縁性)を介してコイル部36が接着固定される。整流子ディスク100、接続用ディスク200、及びコイル部36の各コイルディスクは、同軸積層である。
【0035】
コイル部36は、第1コイルディスク361〜第4コイルディスク364をシート状の接着層507(絶縁性)を挟んで積層してなる。シート状の接着層507は、各コイルディスクと軸方向視で同形状であり、各コイルディスクの表面略全体を覆う。第1コイルディスク361〜第4コイルディスク364は、円板部37Bよりも大径であり、それぞれ両面に後述のコイルパターンが形成されている。整流子ディスク100から第4コイルディスク364までを貫く導体ピン40は、整流子ディスク100の所定の整流子セグメントに対応する電極パターンと、第1コイルディスク361〜第4コイルディスク364の少なくともいずれかのコイルパターンとを電気的に接続する。円板部37Bの貫通孔(ピン40の挿通孔)には絶縁パイプ401が嵌め込まれ、ピン40とフランジ37との絶縁を確保する。
【0036】
以下、整流子ディスク100及び接続用ディスク200の実施例を3つ説明する。
【0037】
実施例1
図5(A)は、実施例1における、図4に示される整流子ディスク100の平面図である。図5(B)は、図5(A)において上面側のパターンを省略し且つ底面側のパターンを透視した透視図である。図5(C)は、同整流子ディスクの底面図である。整流子ディスク100は、中心部が開口した円板状の絶縁基板(例えばガラス繊維強化エポキシ樹脂基板等の絶縁樹脂基板)の両面に銅などの導電材からなる所定の導体パターンを形成したものである。導体パターンの詳細は後述する。
【0038】
図6(A)は、実施例1における、図4に示される接続用ディスク200の平面図である。図6(B)は、図6(A)において上面側のパターンを省略し且つ底面側のパターンを透視した透視図である。図6(C)は、同接続用ディスクの底面図である。接続用ディスク200は、整流子ディスク100と略同径で中心部が開口した円板状の絶縁基板(例えばガラス繊維強化エポキシ樹脂基板等の絶縁樹脂基板)の両面に銅などの導電材からなる所定の導体パターンを形成したものである。導体パターンの詳細は後述する。
【0039】
図5(A)に示すように、整流子ディスク100は、表面(上面であり、ブラシとの接触面)に、複数の整流子セグメントを成す複数の電極パターン110を有する。電極パターン110上に図2に示す一対のブラシ83が接触、摺動し、電流が供給される。図示の例では、整流子セグメントの数は40(電極パターン110は40個)である。図5(A)において1番目のセグメントを定義し、各セグメントに時計回りに通し番号(1〜40)を付す。奇数番目のセグメントに対応する電極パターン110を「第1群の電極パターン」、偶数番目のセグメントに対応する電極パターン110を「第2群の電極パターン」とする。なお、各セグメントの番号と第1群、第2群の分類は、以降の実施例(図7〜)においても共通とする。
【0040】
図5(B),(C)に示すように、整流子ディスク100は、裏面に、複数の第1連絡パターン111を有する。第1連絡パターン111は、図示の例では20個である。各々の第1連絡パターン111は、間に7つの電極パターン110を挟んだ第1群(奇数番目)の電極パターン110同士を相互に接続する。図中、1,9,17,25,33番目のセグメントに対応する電極パターン110及びそれらを相互に接続する第1連絡パターン111を強調(縦線ハッチング)して示している。
【0041】
電極パターン110と第1連絡パターン111との層間接続(表面、裏面間接続)は、外側スルーホール121及び内側スルーホール122が成す。外側スルーホール121は、各電極パターン110の外側位置において各電極パターン110から裏面側に延びる導体部を含む。内側スルーホール122は、各電極パターン110の内側位置において各電極パターン110から裏面側に延びる導体部を含む。なお、第2群(偶数番目)の電極パターン110から延びる内側スルーホール122は、接続用ディスク200の裏面側にまで延びる。外側スルーホール121及び内側スルーホール122は、内面が銅などの高熱伝導率材料でメッキされた貫通孔であってもよいし、あるいは、内側が銅などの高熱伝導率材料で埋められていてもよい。なお、いくつかの電極パターン110の内側スルーホール122の一方(例えば中心から遠い一方)は、図4のピン40の挿通孔となっている。
【0042】
1番目と9番目のセグメント同士の接続に着目すれば、1番目の電極パターン110の内側スルーホール122と、9番目の電極パターン110の外側スルーホール121とが、第1の連絡パターン111によって相互に接続される(第1群における他の番号同士の組合せに係る電極パターン110同士も同様に接続される)。各々の第1の連絡パターン111は、整流子ディスク100の中心軸周りの角度位置が変化するにつれて径方向位置(中心との距離)が変化するパターン形状である(図示の例では軸方向上側から見て右回りに進むにつれて中心からの距離が遠ざかるパターン形状である)。
【0043】
図6(A)に示すように、接続用ディスク200は、表面に、複数の表面側第2連絡パターン211を有する。図6(B),(C)に示すように、接続用ディスク200は、裏面に、複数の裏面側第2連絡パターン212を有する。表面側第2連絡パターン211及び裏面側第2連絡パターン212は、図示の例では各々20個である。各々の表面側第2連絡パターン211及び裏面側第2連絡パターン212は、間に7つの電極パターン110を挟んだ第2群(偶数番目)の電極パターン110同士を相互に接続する。図中、6,14,22,30,38番目のセグメントに対応する電極パターン110及びそれらを相互に接続する表面側第2連絡パターン211及び裏面側第2連絡パターン212を強調(横線ハッチング)して示している。
【0044】
表面側第2連絡パターン211と裏面側第2連絡パターン212との層間接続(表面、裏面間接続)は、中継スルーホール220が成す。中継スルーホール220は、内側スルーホール122よりも径方向外側となる位置にあり、各々の表面側第2連絡パターン211と裏面側第2連絡パターン212の一端(内側スルーホール122と反対側の端部)同士を貫通する導体部を含む。中継スルーホール220は、内面が銅などの高熱伝導率材料でメッキされた貫通孔であってもよいし、あるいは、内側が銅などの高熱伝導率材料で埋められていてもよい。
【0045】
6番目と14番目のセグメント同士の接続に着目すれば、6番目の電極パターン110の内側スルーホール122と、14番目の電極パターン110の内側スルーホール122とが、表面側第2連絡パターン211及び裏面側第2連絡パターン212によって相互に接続される(第2群における他の番号同士の組合せに係る電極パターン110同士も同様に接続される)。表面側第2連絡パターン211及び裏面側第2連絡パターン212は、接続用ディスク200の中心軸周りの角度位置が変化するにつれて径方向位置(中心との距離)が変化するパターン形状である(図示の例では軸方向上側から見て右回りに進むにつれて中心からの距離が、表面側第2連絡パターン211では遠ざかり、裏面側第2連絡パターン212では近くなる)。
【0046】
第1連絡パターン111、表面側第2連絡パターン211及び裏面側第2連絡パターン212はいずれも、出力軸31の方向から見て、径方向位置が電極パターン110の存在範囲内にある。
【0047】
本実例では、第1群(奇数番目)の電極パターン110同士を接続する第1連絡パターン111を整流子ディスク100の裏面に形成する一方、第2群(偶数番目)の電極パターン110同士を接続する表面側第2連絡パターン211及び裏面側第2連絡パターン212は整流子ディスク100とは別の接続用ディスク200の両面にそれぞれ形成している。従来との比較でいえば、図16に示す従来の整流子ディスク835では同ディスクの両面の層(すなわち2層)の連絡パターンのみで電極パターン840同士を接続していたところ、本実施例では整流子ディスク100の裏面、接続用ディスク200の両面の合計3層の連絡パターンで電極パターン110同士を接続している。このため、本実施例の場合、第2群(偶数番目)の電極パターン110同士を接続する連絡パターン(図16の表面側第2連絡パターン842A及び裏面側第2連絡パターン842B)を整流子ディスク100に設けていない分、従来と比較して整流子ディスク100の外径を同じとしながら内径を大きくすることができる(すなわち、整流子ディスク100の基板面積(内径と外径の差)を小さくすることができる)。整流子ディスク100の内径を大きくできると、出力軸31を大径化でき、設計上の自由度が高くなる点で有利である。
【0048】
なお、接続用ディスク200の両面外周部のリング状領域(連絡パターン非形成領域)には、基板面からの高さが表面側第2連絡パターン211及び裏面側第2連絡パターン212と略同一のリング状の導体パターン201,202がそれぞれ形成されている。これらは、整流子ディスク100及び絶縁板38との間の接着層500,501との接着性を高める効果がある。
【0049】
本実施例の変形として、表面側第2連絡パターン211及び裏面側第2連絡パターン212に替えて、例えば図5(B),(C)に示す第1の連絡パターン111と同形状で中心軸周りの角度位置が第1の連絡パターン111に対して1セグメント分だけずれた第2の連絡パターン(図示省略)を接続用ディスク200のいずれか一方の面に設け、当該第2の連絡パターンにより第2群の電極パターン110同士を相互に接続してもよい(このときリング状の導体パターン201,202は適宜省略する)。この場合、接続用ディスク200は片面基板であってもよい。あるいは、第1の連絡パターン111を接続用ディスク200の他方の面に設け、整流子ディスク100を片面基板としてもよい。
【0050】
実施例2
図7(A)は、実施例2における、図4に示される整流子ディスク100の平面図である。図7(B)は、図7(A)において上面側のパターンを省略し且つ底面側のパターンを透視した透視図である。図7(C)は、同整流子ディスクの底面図である。図8(A)は、実施例2における、図4に示される接続用ディスク200の平面図である。図8(B)は、図8(A)において上面側のパターンを省略し且つ底面側のパターンを透視した透視図である。図8(C)は、同接続用ディスクの底面図である。以下、実施例1との相違点を中心に説明し、実施例1との共通点については適宜説明を省略する。
【0051】
図7(A)に示すように、整流子ディスク100は、表面に、電極パターン110に加え、表面側第2連絡パターン131を有する。表面側第2連絡パターン131は、電極パターン110の内側から延びる。図7(B),(C)に示すように、整流子ディスク100は、裏面に、裏面側第2連絡パターン132を有する。表面側第2連絡パターン131及び裏面側第2連絡パターン132は、図示の例では各々20個である。各々の表面側第2連絡パターン131及び裏面側第2連絡パターン132は、間に7つの電極パターン110を挟んだ第2群(偶数番目)の電極パターン110同士を相互に接続する。図中、6,14,22,30,38番目のセグメントに対応する電極パターン110及びそれらを相互に接続する表面側第2連絡パターン211及び裏面側第2連絡パターン212を強調(横線ハッチング)して示している。
【0052】
表面側第2連絡パターン131と裏面側第2連絡パターン132との層間接続(表面、裏面間接続)は、中継スルーホール140が成す。中継スルーホール140は、内側スルーホール122よりも径方向内側となる位置にあり、各々の表面側第2連絡パターン131及び裏面側第2連絡パターン132の一端(内側スルーホール122と反対側の端部)同士を貫通する導体部を含む。中継スルーホール140は、内面が銅などの高熱伝導率材料でメッキされた貫通孔であってもよいし、あるいは、内側が銅などの高熱伝導率材料で埋められていてもよい。裏面側第2連絡パターン132と電極パターン110との層間接続(表面、裏面間接続)は、内側スルーホール122が成す。
【0053】
6番目と14番目のセグメント同士の接続に着目すれば、6番目の電極パターン110の内側スルーホール122と、14番目の電極パターン110の内側スルーホール122とが、表面側第2連絡パターン131及び裏面側第2連絡パターン132によって相互に接続される(第2群における他の番号同士の組合せに係る電極パターン110同士も同様に接続される)。表面側第2連絡パターン131及び裏面側第2連絡パターン132は、整流子ディスク100の中心軸周りの角度位置が変化するにつれて径方向位置(中心との距離)が変化するパターン形状である(図示の例では軸方向上側から見て右回りに進むにつれて中心からの距離が、表面側第2連絡パターン131では遠ざかり、裏面側第2連絡パターン132では近くなる)。
【0054】
図8(A)に示すように、接続用ディスク200は、表面に、複数の表面側第1連絡パターン231を有する。図8(B),(C)に示すように、接続用ディスク200は、裏面に、複数の裏面側第1連絡パターン232を有する。表面側第1連絡パターン231及び裏面側第1連絡パターン232は、図示の例では各々20個である。各々の表面側第1連絡パターン231及び裏面側第1連絡パターン232は、間に7つの電極パターン110を挟んだ第1群(奇数番目)の電極パターン110同士を相互に接続する。図中、1,9,17,25,33番目のセグメントに対応する電極パターン110及びそれらを相互に接続する表面側第1連絡パターン231及び裏面側第1連絡パターン232を強調(縦線ハッチング)して示している。表面側第1連絡パターン231及び裏面側第1連絡パターン232と電極パターン110との層間接続(表面、裏面間接続)は、内側スルーホール122が成す。表面側第1連絡パターン231と裏面側第1連絡パターン232との層間接続(表面、裏面間接続)は、中継スルーホール240が成す。中継スルーホール240は、内側スルーホール122よりも径方向外側となる位置にあり、各々の表面側第1連絡パターン231と裏面側第1連絡パターン232の一端(内側スルーホール122と反対側の端部)同士を貫通する導体部を含む。中継スルーホール240は、内面が銅などの高熱伝導率材料でメッキされた貫通孔であってもよいし、あるいは、内側が銅などの高熱伝導率材料で埋められていてもよい。
【0055】
1番目と9番目のセグメント同士の接続に着目すれば、1番目の電極パターン110の内側スルーホール122と、9番目の電極パターン110の内側スルーホール122とが、表面側第1連絡パターン231及び裏面側第1連絡パターン232によって相互に接続される(第1群における他の番号同士の組合せに係る電極パターン110同士も同様に接続される)。表面側第1連絡パターン231及び裏面側第1連絡パターン232は、接続用ディスク200の中心軸周りの角度位置が変化するにつれて径方向位置(中心との距離)が変化するパターン形状である(図示の例では軸方向上側から見て右回りに進むにつれて中心からの距離が、表面側第1連絡パターン231では遠ざかり、裏面側第1連絡パターン232では近くなる)。
【0056】
本実例では、第1群(奇数番目)の電極パターン110同士を接続する表面側第1連絡パターン231及び裏面側第1連絡パターン232を接続用ディスク200の両面にそれぞれ形成し、第2群(偶数番目)の電極パターン110同士を接続する表面側第2連絡パターン131及び裏面側第2連絡パターン132を整流子ディスク100の両面にそれぞれ形成している。すなわち、本実施例では、整流子ディスク100の両面と接続用ディスク200の両面、合計4層の連絡パターンで電極パターン110同士を接続している。このため、本実例の場合、第1群(奇数番目)の電極パターン110同士を接続する連絡パターン(図16の第1連絡パターン841)を整流子ディスク100に設けていない分、電極パターン110の径方向の長さを短くできる(従来の図16の第1連絡パターン841は、一層のみで離れたセグメント間を接続するため、径方向の長さが長くなり、それに対応して電極パターン110の径方向の長さも長くなっていた)。このため、従来と比較して整流子ディスク100の内径を同じとしながら外径を小さくすることができる(すなわち、整流子ディスク100の基板面積(内径と外径の差)を小さくすることができる)。整流子ディスク100の外径を小さくすると、図10等で後述の放射状パターン群92B(回転力に寄与する電流の経路)を長くすることができ、ディスクモータ80の駆動力が高められる。また、図2,3に示す上ヨーク42の内径を小さくできる(外径は維持)ため、放射状パターン群92Bへの印加磁束密度をさらに高めることができ、これによってもディスクモータ80の駆動力が高められる。
【0057】
なお、整流子ディスク100の裏面外周部のリング状領域(連絡パターン非形成領域)には、基板面からの高さが裏面側第2連絡パターン132と略同一のリング状の導体パターン102が形成されている。これは、接続用ディスク200との間の接着層500との接着性を高める効果がある。
【0058】
実施例3
図9(A)は、実施例3における、図4に示される接続用ディスク200の平面図である。図9(B)は、図9(A)において上面側のパターンを省略し且つ底面側のパターンを透視した透視図である。図9(C)は、同接続用ディスクの底面図である。なお、本実施例において、整流子ディスク100は実施例2と共通なので図示及び説明を省略する。以下、実施例2との相違点を中心に説明し、実施例2との共通点については適宜説明を省略する。
【0059】
図9(A)に示すように、接続用ディスク200は、表面に、複数の表面側第1連絡パターン251を有する。図9(B),(C)に示すように、接続用ディスク200は、裏面に、複数の裏面側第1連絡パターン252を有する。表面側第1連絡パターン251及び裏面側第1連絡パターン252は、図示の例では各々20個である。各々の表面側第1連絡パターン251及び裏面側第1連絡パターン252は、間に7つの電極パターン110を挟んだ第1群(奇数番目)の電極パターン110同士を相互に接続する。図中、1,9,17,25,33番目のセグメントに対応する電極パターン110及びそれらを相互に接続する表面側第1連絡パターン251及び裏面側第1連絡パターン252を強調(縦線ハッチング)して示している。表面側第1連絡パターン251及び裏面側第1連絡パターン252と電極パターン110との層間接続(表面、裏面間接続)は、内側スルーホール122が成す。表面側第1連絡パターン251と裏面側第1連絡パターン252との層間接続(表面、裏面間接続)は、中継スルーホール260が成す。中継スルーホール260は、内側スルーホール122よりも径方向内側となる位置にあり、各々の表面側第1連絡パターン251と裏面側第1連絡パターン252の一端(内側スルーホール122と反対側の端部)同士を貫通する導体部を含む。中継スルーホール260は、内面が銅などの高熱伝導率材料でメッキされた貫通孔であってもよいし、あるいは、内側が銅などの高熱伝導率材料で埋められていてもよい。
【0060】
本実施例では、中継スルーホール260を内側スルーホール122よりも径方向内側となる位置に設けているため、実施例2(図8)のように中継スルーホール240を内側スルーホール122よりも径方向外側となる位置に設ける場合と異なり、表面側第1連絡パターン251と裏面側第1連絡パターン252とが軸方向から見て内側スルーホール122よりも径方向内側に収まっている。このため、いずれの連絡パターンも内側スルーホール122よりも径方向外側に延びないので、例えばブラシ83が小さい場合には、電極パターン110を小さくすることで、整流子ディスク100の外径を実施例2と比較してさらに小さくすることが可能となる。
【0061】
図10(A)は、図4に示す第1コイルディスク361の平面図である。図10(B)は、同コイルディスクの底面図である。なお、他のコイルディスクも第1コイルディスク361と同じ構造であり且つ同じコイルパターンを有するので、ここでは第1コイルディスク361についてのみ説明する。
【0062】
第1コイルディスク361は、円板状の絶縁基板90(例えばガラス繊維強化エポキシ樹脂基板等の絶縁樹脂基板)の両面にそれぞれコイルパターン92を有する。絶縁基板90の中心にある貫通孔91は、図4の円筒部37Aを挿通させるものである。ピン挿通孔367は、絶縁基板90の中心からの角度90°おきに例えば3個ずつ、合計12個形成される。各ピン挿通孔367から絶縁基板90の中心までの距離は相互に等しい。各ピン挿通孔367は、整流子ディスク100の所定の電極パターン110の内側スルーホール122のうち1つと図4のピン40によって接続される。
【0063】
銅などの導電材からなるコイルパターン92は、円板状の絶縁基板の両面に銅箔等の導電材を積層したものにマスクを被せてエッチング処理することで形成されている。コイルパターン92は、相互に近接した略同一幅の4列の部分コイルパターンからなる部分コイルパターン群920を片面(1層)につき20個ずつ有する。部分コイルパターン群920は、内側連絡パターン群92Aと、放射状パターン群92Bと、外側連絡パターン群92Cとを順に接続したものである。両面の内側連絡パターン群92A同士は、端部近傍に形成されたスルーホール921によって相互に電気的に接続される。両面の外側連絡パターン群92C同士は、端部近傍に形成されたスルーホール922によって相互に電気的に接続される。放射状パターン群92Bは、絶縁基板90の中心側から半径方向外側に延びて内側連絡パターン群92Aと外側連絡パターン群92Cとを渡す。両面の放射状パターン群92B同士は、軸方向視で略同一位置に存在する。放射状パターン群92Bは、図2及び図3に示すマグネット41の配列円周(各マグネット41の中心が配列される円周)の真上に位置する。つまり、各コイルディスクの回転に伴って放射状パターン群92Bはマグネット41の真上を通過する。放射状パターン群92Bに流れる電流とマグネット41の発生する磁界との間の電磁力により回転力が得られる。
【0064】
各々の面の放射状パターン群92Bは、絶縁基板90の中心から等角度ピッチで存在する。したがって、絶縁基板90の表面において、隣り合う放射状パターン群92Bの間には、コイルパターン92の存在しない領域がある。
【0065】
図11(A)及び図11(B)は、第1コイルディスク361のコイルパターン説明図である。なお、これらの図は、付されている符号を除き、図10(A)及び図10(B)と同一である。第1コイルディスク361のコイルパターン92は、2つのコイルを含む。一方のコイルの始点をA1−1、終点をA1−2と図11(A)中に示している。また、他方のコイルの始点をA2−1、終点をA2−2と同図中に示している。一方のコイルは、始点A1−1から点P11、P11'、P12'、P12、P13、P13'、・・・P19'、P20'と繋がる。これで上から見て始点A1−1から時計回りに一周となる。同様にして時計回りに合計四周し、点P50'に至る。そして今度は点P50'から点P51'、P51、・・・と反時計回りに合計4周して終点A1−2に至る。他方のコイルも同様に、始点A2−1から終点A2−2まで繋がっている。
【0066】
そして、このように構成される第1コイルディスク361〜第4コイルディスク364が、軸方向(積層方向)に4枚積層されてコイル部36が構成される。異なるコイルディスクのコイル間は、図4で既述のピン40によって電気的に接続される。第1コイルディスク361が有する一方のコイルと整流子ディスク100の電極パターン110との接続関係は、例えば、始点A1−1が接続された電極パターン110が一方のブラシ83に導通するときに、終点A1−2が接続された電極パターン110が他方のブラシ83に導通するようになっている。他方のコイル(始点A2−1、終点A2−2)に関しても同様である。また、他のコイルディスクが有するコイルについても同様である。磁石41の磁極面上を通過する各コイルディスクの放射状パターン群92Bが同一方向の回転トルクを発生するように、整流子ディスク100を介してブラシ83から各コイルに通電される。なお、各コイルディスクの出力軸31周りの角度(位相)を所定角度ずらすことで、各コイルディスクに形成されたコイルパターン92を直列に接続することもできる。
【0067】
以下、ディスクモータ80の製造方法について簡単に説明する。
【0068】
円板状の絶縁基板の両面に銅箔等の導電材を積層したものにマスクを被せてエッチング処理する(エッチング工程)。必要なスルーホール及びピン挿通孔は、エッチング処理の前もしくは後に加工する。これにより、図10(A)等に示すコイルパターン92を形成した4枚のコイルディスク361〜364を得る。また、実施例1〜3のいずれかに示すパターン(電極パターン110と各々の連絡パターン等)を形成した整流子ディスク100及び接続用ディスク200も同様に得る。
【0069】
図4に示すように、ピン40を通し、層間にプリプレグ状態のシート状の接着層500〜503,505,507(例えば、ガラス布基材にエポキシ樹脂を含浸させ半硬化状態にした薄いシート)を挟んで各部材をフランジ37に積層し、金型にセットしてホットプレス(加熱した状態で積層方向に加圧)する(接着工程)。なお、ホットプレスに先だって、コイルディスク361〜364を積層した状態でピン40と各コイルディスクとをハンダ付けしておく。また、ホットプレス後、整流子ディスク100とピン40とをハンダ付けし、突出したピン40の不要部分をカットする。こうして得られた図4のロータ82を、図2に示すようにステータ81及びブラシ83と組み合わせ、ディスクモータ80が完成する。
【0070】
以下、接続用ディスク200を設けない他の実施の形態について説明する。
【0071】
図12は、他の実施の形態に係るディスクモータ80を有する駆動部6の正断面図である。図13は、同ディスクモータのロータ82の正面図である。このディスクモータ80は、図2に示したものと比較して、ロータ82の構造が相違し、その他の点は同様である。以下、相違点を中心に説明する。
【0072】
ロータ82において、フランジ37の円板部37B上面に、軸方向視で円板部37Bと同形状のシート状の接着層509によってコイル部36(第1コイルディスク361〜第4コイルディスク364の積層体)が接着固定される。コイル部36の上面(第1コイルディスク361の上面)に、シート状の接着層500により、整流子ディスク100が接着固定される。層間接続にピンは使用せず、整流子ディスク100と各コイルディスクとの接続はスルーホールによって成される。
【0073】
図14(A)は、図13の整流子ディスク100の平面図である。図14(B)は、図14(A)において上面側のパターンを省略し且つ底面側のパターンを透視した透視図である。図14(C)は、同整流子ディスクの底面図である。図15(A)は、図13の第1コイルディスク361の平面図である。図15(B)は、図15(A)において上面側のパターンを省略し且つ底面側のパターンを透視した透視図である。図14に示す整流子ディスク100は、図7と比較して外径がさらに小さくなっている点以外は、図7に示したものと同様である。
【0074】
図15(A)に示すように、第1コイルディスク361は、表面側に、コイルパターン92に加え、複数の表面側第1連絡パターン271を有する。図15(B)に示すように、第1コイルディスク361は、裏面側に、コイルパターン92に加え、複数の裏面側第1連絡パターン272を有する。電極パターン110と表面側第1連絡パターン271及び裏面側第1連絡パターン272との層間接続は、内側スルーホール122(内側スルーホール122のうち径方向内側にあるもの)が成す。表面側第1連絡パターン271と裏面側第1連絡パターン272との層間接続(表面、裏面間接続)は、中継スルーホール280が成す。表面側第1連絡パターン271、裏面側第1連絡パターン272、及び中継スルーホール280は、形成された層が第1コイルディスク361の両面であること以外は、図9に示した表面側第1連絡パターン251、裏面側第1連絡パターン252、及び中継スルーホール260と同様である。
【0075】
本実施の形態によれば、接続用ディスク200を設けずに、従来と比較して整流子ディスク100の内径を同じとしながら外径を小さくすることができる(すなわち、整流子ディスク100の基板面積(内径と外径の差)を小さくすることができる)。
【0076】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0077】
コイルディスクは1枚又は全て、並びに整流子ディスク及び接続用ディスクが片面基板であってもよい。
【0078】
接続用ディスクを備える場合であっても、1枚又は複数枚のコイルディスクの片面又は両面の層をセグメント同士の連絡パターンの形成層として利用してもよい。
【0079】
コイルディスクの片面又は両面の層を連絡パターンの形成層とする場合、電気抵抗の面では最上層(最も整流子ディスク寄り)のコイルディスクを利用するのが好ましいが、他のコイルディスクを利用してもよい。
【0080】
整流子ディスク、接続用ディスク、及びコイルディスクの形状は、厳密な円板状でなくてもよいが、軸方向視で実質的に円とみなせる範囲であるとよい。
【0081】
上記に加え、マグネットの個数とその配置角度ピッチ、コイルパターンの周回数(コイルパターンの列数)、コイルディスクの積層数と積層形態(層間の角度ずれ量)、ピン挿通孔やスルーホールの数、整流子セグメント数、その他のパラメータは、要求される性能やコストに応じて適宜設定可能である。また、コイルパターンの周回数は、コイルディスクごとに異なってもよい。なお、コイルパターンが1列の場合は、実施の形態の説明における「部分コイルパターン群」、「内側連絡パターン群」、「放射状パターン群」、及び「外側連絡パターン群」の各用語を、「群」を除いて読み替える。
【0082】
電動作業機は、実施の形態で示した刈払機のほか、ディスクモータを搭載したベルトサンダーやロータリバンドソー等、ディスクモータによる回転駆動部を有する種々の電動工具であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 刈払機
3 電源部
4 パイプ部
5 ハンドル部
6 駆動部
7 刈刃
301 バッテリ
31 出力軸(ロータシャフト)
36 コイル部
37 フランジ
41 マグネット
42 上ヨーク
43 下ヨーク
51 アーム
52 グリップ
53 スロットル
61 ヘッドハウジング
62 カバー部
63 ベース部
65 ブラシホルダ
80 ディスクモータ
81 ステータ
82 ロータ
83 ブラシ
92 コイルパターン
92A 内側連絡パターン群
92B 放射状パターン群
92C 外側連絡パターン群
920 部分コイルパターン群
100 整流子ディスク
200 接続用ディスク
361〜364 コイルディスク
501〜503,505,507 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流子ディスク及び少なくとも1枚のコイルディスクを有するロータと、
前記コイルディスクのコイルパターンと対向する磁束発生部を有するステータと、
前記整流子ディスクを介して前記コイルパターンに電流を供給する電流供給部と、
前記ロータの回転力で回転する出力軸とを備え、
前記整流子ディスクは、前記出力軸の周りに配列された複数の整流子セグメントを成す複数の電極パターンが設けられた第1の層を有し、
前記複数の電極パターンは、第1群の電極パターンと第2群の電極パターンとを含み、
間に所定数の電極パターンを挟んだ前記第1群の電極パターン同士を相互に接続する第1の連絡パターンが前記第1群の各電極パターンに対して設けられ、
間に所定数の電極パターンを挟んだ前記第2群の電極パターン同士を相互に接続する第2の連絡パターンが前記第2群の各電極パターンに対して設けられ、
前記第1及び第2の連絡パターンが相互に異なる層に存在し、前記第1及び第2の連絡パターンのうち少なくとも一方が存在する第2の層と、前記第1及び第2の連絡パターンのうち少なくとも他方が存在する第3の層を有する、ディスクモータ。
【請求項2】
前記第1及び第2の連絡パターンの少なくともいずれかが複数層に分かれて存在する請求項1に記載のディスクモータ。
【請求項3】
前記第1及び第2の連絡パターンは、少なくとも1つの層において周方向位置及び径方向位置の双方が異なる2点を相互に接続する、請求項1又は2に記載のディスクモータ。
【請求項4】
前記複数の電極パターンに前記出力軸周りで通し番号を付したとき、前記第1群の電極パターンは奇数番目の電極パターンであり、前記第2群の電極パターンは偶数番目の電極パターンである、請求項1から3のいずれか一項に記載のディスクモータ。
【請求項5】
前記第1及び第2の連絡パターンは、前記整流子ディスクの両面の層と、前記コイルパターンの形成された複数の層とに分かれて存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載のディスクモータ。
【請求項6】
前記ロータは、前記整流子ディスク及び前記コイルディスクとは別に接続用ディスクを備え、
前記第1及び第2の連絡パターンは、前記整流子ディスクの両面の層と、前記接続用ディスクの両面の層とに分かれて存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載のディスクモータ。
【請求項7】
前記第1の連絡パターン同士を異なる層間で接続する中継導体部を備え、前記中継導体部が前記電極パターンよりも前記出力軸に近い位置に存在する、請求項5又は6に記載のディスクモータ。
【請求項8】
前記ロータは、前記整流子ディスク及び前記コイルディスクとは別に接続用ディスクを備え、
前記第1の連絡パターンは前記整流子ディスクの他方の面に存在し、前記第2の連絡パターンは前記接続用ディスクの両面の層に分かれて存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載のディスクモータ。
【請求項9】
前記第1及び第2の連絡パターンは、前記出力軸の方向から見て、径方向位置が前記電極パターンの存在範囲内にある、請求項8に記載のディスクモータ。
【請求項10】
前記電流供給部は、前記複数の電極パターンに接触するブラシを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載のディスクモータ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のディスクモータを備えた電動作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−99009(P2013−99009A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236762(P2011−236762)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】