説明

ディスクモータ及び電動作業機

【課題】ディスクモータの設計の自由度を向上させたコイルディスク、ディスクモータ及び電動作業機の提供。
【解決手段】ディスクモータ3は、出力軸31と、出力軸31に固定されたコイルディスク36Aと、ブラシ34と、ステータ33とから構成される。コイルディスク36Aは略円板形状であって、少なくとも2本のコイル36Bが設けられている。コイル36Bは、出力軸31の回転中心から半径方向外方に放射状に延びる複数の部分コイルAを接続することにより構成される。少なくとも2本のコイル36Bのうちの、一のコイル36Bを構成する直線部36Eの総数と、他のコイル36Bを構成する直線部36Eの総数とは互いに異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスクモータ及びディスクモータを搭載した電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のディスクモータは、出力軸と、出力軸に固定され略円板状であって複数のコイルにより構成されるコイルパターンが印刷されたコイルディスクと、コイルパターンと接続される整流子と、コイルパターンに対向するように配置される磁石と、整流子に電流を供給するためのブラシとから主に構成される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ディスクモータの回転数は、ブラシから供給される電圧、ディスクモータの電流、コイルディスクのコイルパターン、磁石の磁束、ブラシの数(極数)等により決定される。ブラシから供給される電圧及びディスクモータの電流が一定である場合には、コイルディスクのコイルパターン、磁石の磁束、ブラシの数を変更することによりディスクモータを所望の回転数に設定することが可能となる。
【0004】
従来、複数のコイルディスクを積層しているディスクモータにおいて所望の回転数に設定したい場合には、コイルディスク上における全てのコイルのコイルパターンを変更していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3636700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、全てのコイルのコイルパターンを変更してしまうと回転数の変化量も大きい。例えば、全てのコイルの周回数を増加させる(磁束を通過するコイルの本数を倍増させる)ことにより回転数を変化させることができる。しかし、この場合ではディスクモータの回転数が大幅に減少していたため、ディスクモータの回転数を微調整することができなかった。コイルパターンの変更によって所望の回転数に設定することは困難となっていたため、ディスクモータの設計の自由度が限られていた。
【0007】
そこで本発明は、ディスクモータの設計の自由度を向上させたディスクモータ及びディスクモータを搭載した電動作業機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、出力軸と、略円板状であって、前記出力軸に同軸的に固定され、前記出力軸の回転中心から半径方向外方に放射状に延びる複数の部分コイルが接続されたことにより構成される少なくとも2本のコイルが形成されたコイルディスクと、前記複数の部分コイルに電流を供給する電流供給部と、前記部分コイルに対向するように配置される磁石と、を有し、前記少なくとも2本のコイルのうちの一のコイルを構成する第1部分コイルの総数と他のコイルを構成する第2部分コイルの総数とは互いに異なることを特徴とするディスクモータを提供している。
【0009】
このような構成によると、第1部分コイルの総数と第2部分コイルの総数とが互いに異なることにより、磁石上を通過する部分コイルを自在に調整することができる。これにより、ディスクモータの回転数の微調整が可能となり、ディスクモータの設計の自由度を向上させることができる。
【0010】
また、前記第1部分コイルと前記第2部分コイルとは互いに隣接するように交互に前記コイルディスク上に形成されていることが好ましい。
【0011】
このような構成によると、第1部分コイルと第2部分コイルとが互いに隣接するように交互に配置されていることにより、コイルディスク全体の重量バランスの均一化が可能となり、ディスクモータ動作時の振動などを防止することができる。さらに、ディスクモータのバランス調整等の作業が容易になる。
【0012】
また、前記第1部分コイルの幅と前記第2部分コイルの幅とは互いに異なることが好ましい。
【0013】
また、前記第1部分コイルの総数は前記第2部分コイルの総数よりも少なく、前記第1部分コイルの幅は前記他第2部分コイルの幅よりも広いことが好ましい。
【0014】
このような構成によると、第1部分コイルは第2部分コイルよりも幅が広いため、第1部分コイルは抵抗が少なくなるとともに放熱性に優れることにより、ディスクモータの出力を上げることが可能となる。
【0015】
また、前記コイルディスクは、前記出力軸と直交する面である表面と裏面とを有し、前記部分コイルは前記表面と前記裏面の少なくともいずれか一方に形成されていることが好ましい。
【0016】
本発明の別の観点では、上述の特徴を有するディスクモータを備えた電動作業機を提供している。
【0017】
このような構成によると、電動作業機の特性に合ったディスクモータを備える電動作業機を実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ディスクモータの設計の自由度を向上させたディスクモータ及びディスクモータを搭載した電動作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態の電動作業機の外観図。
【図2】本発明の第1の実施の形態の電動作業機のヘッドハウジングの断面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態の電動作業機のディスクモータの部分断面図。
【図4】本発明の第1の実施の形態の一のコイルディスクの平面図。
【図5】本発明の第1の実施の形態の一のコイルディスクの背面図。
【図6】本発明の第1の実施の形態の一のコイルディスクを構成する2本のコイルのうちの1本のみを表示した図。
【図7】本発明の第1の実施の形態の他のコイルディスクの平面図。
【図8】本発明の第1の実施の形態の他のコイルディスクの背面図。
【図9】本発明の第1の実施の形態の他のコイルディスクを構成する2本のコイルのうちの1本のみを表示した図。
【図10】本発明の第1の実施の形態のコイルと磁石との位置関係を説明するための図。
【図11】本発明の第1の実施の形態のディスクモータのコイルパターンと回転数との関係性を示す表。
【図12】本発明の第2の実施の形態のコイルディスクの平面図。
【図13】本発明の第2の実施の形態のコイルディスクの背面図。
【図14】本発明の第2の実施の形態のディスクモータのコイルパターンと回転数との関係性を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1の実施の形態の電動作業機の一例である刈払機1を図1から11を参照して説明する。刈払機1は、ヘッドハウジング2と、ディスクモータ3(図2)と、パイプ部4と、ハンドル部5と、電源部6とから主に構成されており、ヘッドハウジング2に装着される刈刃7で刈払い作業を行う電動作業機である。
【0021】
ディスクモータ3は、ヘッドハウジング2内に収容されており、出力軸31と、ロータ32と、ステータ33と、ブラシ34とから構成されている。出力軸31は、ヘッドハウジング2に回転可能に支承されている。図2に示すように、出力軸の延出方向を上下方向と定義する。出力軸31の下方側端部には雄ネジ31Aが形成されており、図示せぬ留め具によって刈刃7が固定されている。
【0022】
図2及び3に示すように、ロータ32は、図示せぬ整流子が設けられた整流子基板35と、コイル部36と、フランジ37と、絶縁板38と、絶縁シート39と、を有する。整流子基板35は、略円板形状であってその軸芯と出力軸31の軸芯とが一致するように出力軸31に同軸的に固定されている。整流子基板35の中心には、出力軸31が挿入される挿入孔35aが形成され、中心から所定距離離間した位置にはピン40が挿入されるピン孔35bが形成されている。整流子基板35、コイル部36、フランジ37、絶縁板38、及び絶縁シート39は、ピン40によって貫通されると共に互いに接着されている。
【0023】
コイル部36は、略円板状の4枚のコイルディスク36Aを積層しそれらを接着することにより構成されている。より詳細には、コイル部36は、図4から6に示す一のコイルディスク36A3枚と図7から10に示す他のコイルディスク36A1枚とを積層することにより構成されている。コイルディスク36Aは、出力軸31と直交する面である上面と下面とを有し、それぞれの面は平板状のコイル36Bが設けられる層を構成している(図5)。つまり、コイル部36は4枚8層のコイルディスク36Aから構成されている。詳細な構成は後述する。
【0024】
フランジ37は、出力軸31に同軸的に固定されており、略円筒形状の円筒部37Aと、略円板形状の円板部37Bとから構成されている(図3)。円板部37Bは円筒部37Aから半径方向外方に突出するように設けられており、絶縁板38によって上下方向から挟まれている。円板部37Bはロータ32の強度を上げるために設けられていて、各部材を貫通することにより整流子基板35と各コイル36Bとを電気的に接続するピン40がピン40外周とフランジ37との間に絶縁層を有して貫通している。絶縁シート39は、各コイルディスク36A間及び円板部37Bと絶縁板38との間に設けられている。
【0025】
ステータ33は、磁石41と、ヨーク42とから構成されている(図2)。磁石41は、ヘッドハウジング2に支持され、コイル36Bの後述する直線部36Eと対向する位置に貫通孔36aを中心として円周状且つ、隣接する磁石41とは極が異なるように配置されている(図10の点線)。ヨーク42は、ヘッドハウジング2に支持され、磁石41の磁力を強化するために磁石41の周囲に配置されている。磁石41から発生する磁束は、図2の矢印で示す上下方向にコイル部36を通過する。ブラシ34からコイル部36に電流が供給されている場合は、コイルディスク36A上に磁束の方向と直交するように設けられたコイル36Bに電流が流れることにより、コイル部36に出力軸31を中心とする円周方向にトルクが発生し、ロータ32が回転する。
【0026】
図2に示すように、ブラシ34は、出力軸31を中心に対極に2つ設けられていて、ヘッドハウジング2に支持されている。ブラシ34は、下面が整流子基板35上の図示せぬ整流子と当接するようにバネ34Aによって整流子基板35側(下側)に付勢されている。
【0027】
図1に示すように、パイプ部4は、ヘッドハウジング2と電源部6とを接続しており、ヘッドハウジング2と電源部6との間にハンドル部5が配置されている。
【0028】
ハンドル部5には、一対の腕部を有するアーム51と、アーム51の一対の腕の先端に配置されたハンドル52と、一方のハンドル52に設けられ、ディスクモータ3の出力調整を行うスロットル53とを有している。
【0029】
電源部6には、電源たるバッテリー61が着脱可能に設けられている。パイプ部4の内部には配線が挿通され、電源部6によりバッテリー61から供給される電力が配線を介してブラシ34に接続されている。
【0030】
刈刃7は、略円板状に構成され、その周縁に鋸歯が形成され、円板状の略中央部分に出力軸31に装着される図示せぬ孔が形成されている。
【0031】
作業者は、スロットル53を操作することによりバッテリー61からコイル36Bに供給する電力を調整することができる。これにより、ディスクモータ3が回転し、その回転力が出力軸31に伝達され刈刃7が回転する。このときのディスクモータ3の回転数については後述するものとする。
【0032】
次に図4から11を用いて、コイル部36の詳細な構成について説明する。コイル部36を構成する4枚のコイルディスク36Aのうちの3枚を構成する一のコイルディスク36Aを図4から6に示す。コイルディスク36Aの中心には、出力軸31の軸方向に貫通し出力軸31が挿通される貫通孔36aが形成されている。コイルディスク36Aの上面(図4)及び下面(図5)には、コイル36Bが貫通孔36aを中心に半径方向外方に放射状に延びている。コイル36Bは、一端部36Fを一端とし他端部36Gを他端とする連続する1本のコイルである。コイルディスク36Aの下面にはそれぞれ2つの一端部36F及び他端部36Gが設けられていることから、一のコイルディスク36Aは2本の連続したコイル36Bから構成されている。
【0033】
図4及び5中のコイル36Bであって、点線で囲まれた領域を部分コイルAと定義する。コイルディスク36Aの上面には、20個の部分コイルAが設けられている。また、コイルディスク36Aの下面にも、20個の部分コイルAが設けられている。このような部分コイルAの配置によって、コイルディスク36Aのコイルパターンが形成される。部分コイルA領域内のコイル36Bは、半径方向内方の内方接続部36Cと、半径方向外方の外方接続部36Dと、内方接続部36Cと外方接続部36Dとを繋ぎ半径方向に直線状に延びる直線部36Eとから構成される。部分コイルA領域内のコイル36Bは、内方接続部36C及び外方接続部36Dにて反対面のコイル36Bと接続している。図6は、コイルディスク36Aを構成する連続した2本のコイル36Bのうちの1本のみを示した図である。上面のコイル36Bを実線で示し、下面のコイル36Bを点線で示す。上面のコイル36Bの内方接続部36Cと下面のコイル36Bの内方接続部36Cとが重なり合っている箇所が上面のコイル36Bと下面のコイル36Bとの接続箇所であり、同様に上面のコイル36Bの外方接続部36Dと下面のコイル36Bの外方接続部36Dとが重なり合っている箇所が上面のコイル36Bと下面のコイル36Bとの接続箇所である。コイルディスク36A上のコイル36Bは、一端部36Fを一端として上面と下面とを交互に行き来してコイルディスク36Aを円周方向に1周した後、他端である他端部36Gに至る。
【0034】
貫通孔36aの周囲には、貫通孔36aを中心として90°毎に領域36a1、36a2、36a3、36a4が規定されており、各領域36a1、36a2、36a3、36a4には4つ並んだ接続孔36bがそれぞれ形成されている。4つ並んだ接続孔36bのうちの2つの接続孔36bには、一端部36F及び他端部36Gが接続されピン40が挿通される。これにより、一端部36F及び他端部36Gは、ピン40を介して他のコイルディスク36Aと電気的に接続されている。
【0035】
4枚のコイルディスク36Aのうちの残り1枚を構成する他のコイルディスク36Aを図7から9に示す。一のコイルディスク36A上のコイル36Bの配置と他のコイルディスク36Aのコイル36Bの配置とは略同一であるため、差異点のみ以下に述べる。コイルディスク36A上に部分コイルBを定義する。他のコイルディスク36A上のコイル36Bは、一のコイルディスク36A上のコイル36Bと比較すると幅が狭く、部分コイルBの領域内におけるコイル36Bの本数が多い(本実施の形態では2本)。図9に示すように、他のコイルディスク36A上のコイル36Bの一端部36Fは、コイルディスク36Aを2周した後に他端部36Gに至っている。図7上には、2つの一端部36F及び他端部36Gが設けられていることから、2本の連続したコイル36Bがコイルディスク36Aを2周している。
【0036】
ディスクモータ3の回転数は、電源部6からコイル36Bに供給される電圧、ディスクモータ3の電流、磁石41の磁束、ブラシ34の数(極数)、部分コイルA、Bなどによって決定される。なお、本実施の形態における部分コイルとは、磁石41から発生する磁束に対して、直交するように配置されるコイルの纏りのことである。
【0037】
本実施の形態では、様々なコイルパターンによってディスクモータ3の回転数をより細かいレンジで調整しようとするものである。ここで、仮想的に図4,5に示す一のコイルディスク36Aを4枚積層することにより8層から構成されるディスクモータ(以下、第1ディスクモータと呼ぶ)と、図6,7に示す他のコイルディスク36Aを4枚積層することにより8層から構成されるディスクモータ(以下、第2ディスクモータと呼ぶ)とを比較する。第1及び第2ディスクモータにおける全導体数は、磁石41上における直線部36Eの数と比例関係にある。具体的には、第1ディスクモータの一のコイルディスク36Aの上面(図4)の全部分コイルA内の直線部36Eの数は20個であり、下面(図5)において直線部36Eの数は20個であるため、1枚当たりのコイルディスク36Aの全導体数は、40(20+20)となる。第1ディスクモータは一のコイルディスク36Aを4枚積層させているため、全導体数は160(40×4)となる。第2ディスクモータの他のコイルディスク36Aは、上面(図6)の全部分コイルA内の直線部36Eの数は40個であり、下面(図7)における直線部36Eの数も40個であって、他のコイルディスクを4層積層させていることから、第2ディスクモータにおける全導体数は320(80×4)となる。
【0038】
一般的にモータの回転数は磁束を横切る全導体数(磁石41から発生する磁束に直交するように配置される直線部36Eの数(コイル36Bの巻き数、部分コイルAの個数))に反比例するため、第2ディスクモータの回転数Nは第1ディスクモータの回転数Nの半分になる。
【0039】
次に、図11を用いて、第1ディスクモータと、第2ディスクモータと、第1の実施の形態のディスクモータ3と、コイルパターン(コイル36Bの巻き数)を変更した第3ディスクモータから第5ディスクモータと、における回転数を比較する。各ディスクモータは、4枚8層のコイルディスクから構成されている。図11では、第1ディスクモータの回転数を100としたときの各ディスクモータにおける回転数及び第1ディスクモータに対する回転数減少率を示す。
【0040】
上述したように第2ディスクモータでは、全8層の直線部36Eの数が第1ディスクモータの倍となるため、第2ディスクモータの回転数は50となり、回転数減少率は50%となる。従来は、第2ディスクモータのように全層における部分コイルAを変更することによりディスクモータ3の回転数の調整を行っていた。
【0041】
第3ディスクモータは、従来の方法によってディスクモータの回転数を変更した場合の他の一例である。第3ディスクモータは、コイルディスク36Aにおいて2本のコイル36Bを3周させたコイルディスク36Aを4枚積層させたものである。第3ディスクモータの回転数は約33となり、回転数減少率は約67%となる。このように、従来の方法によると全層のコイルパターンを変更していたため回転数の微調整が困難であった。
【0042】
本実施の形態のディスクモータ3では、第1から3枚目(1から6層目)の直線部36Eの数は40であり、第4枚目(7及び8層目)のみ直線部36Eの数が80となっているため、全層の直線部36Eの合計は200となる。従って、本実施の形態のディスクモータ3の回転数は80となり、回転数減少率は20%となる。そのため、従来のディスクモータの回転数の変更方法と比べて回転数減少率が低くなり、ディスクモータ3の回転数の微調整が可能となる。
【0043】
第4ディスクモータは、本実施の形態における一のコイルディスク36A2枚と他のコイルディスク36A2枚とを積層したディスクモータである。第4ディスクモータの場合は、回転数は約67となり、回転数減少率は約33%となる。第5ディスクモータは、本実施の形態における一のコイルディスク36A1枚と他のコイルディスク36A3枚とを積層したディスクモータである。第5ディスクモータの場合は、回転数は約57となり、回転数減少率は約43%となる。第4ディスクモータ及び第5ディスクモータについても本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
また、本実施の形態では、コイル部36は4枚積層した状態で、出力軸31と直交しコイル部36の中心を通る中心軸E(図5)に対して軸対称となるように構成されている。より詳細には、1枚目のコイルディスク36Aでは一端部36F及び他端部36Gは領域36a1、36a2に接続されていて、2枚目のコイルディスク36Aでは一端部36F及び他端部36Gは領域36a2、36a3に接続されていて、3枚目のコイルディスク36Aでは一端部36F及び他端部36Gは領域36a3、36a4に接続されていて、4枚目のコイルディスク36Aでは一端部36F及び他端部36Gは領域36a4、36a1に接続されている。
【0045】
図4に示す部分コイルAのうち、内方接続部36Cが他の部分コイルAの内方接続部36Cと直接接続しているもの(以下、直接接続部36Hという)が領域36a1、36a4の直近に設けられている。これについても同様に、1枚目のコイルディスク36Aでは直接接続部36Hは領域36a4、36a1の近傍に位置し、2枚目のコイルディスク36Aでは直接接続部36Hは領域36a1、36a2の近傍に位置し、3枚目のコイルディスク36Aでは直接接続部36Hは領域36a2、36a3の近傍に位置し、4枚目のコイルディスク36Aでは直接接続部36Hは領域36a3、36a4の近傍に位置している。一端部36F、他端部36G、及び直接接続部36H以外の部分コイルAの形状は同一であることから、コイル部36は、コイルディスク36Aが4枚積層された状態で中心軸Eに対して軸対称になるように構成されている。これにより、コイルディスク36Aにおける重量バランスが均等となり、ディスクモータ3動作時の振動などを防止することができる。
【0046】
本実施の形態によるディスクモータを搭載した電動作業機では、一のコイルディスク36Aの部分コイルAの本数と他のコイルディスク36Aの部分コイルBの本数を互いに異らせることにより、磁石41上を通過する部分コイルを自在に調整することができる。これにより、ディスクモータ3の回転数の微調整が可能となり、ディスクモータ3の設計の自由度を向上させることができる。
【0047】
また、本実施の形態によるディスクモータを搭載した電動作業機では、部分コイルAは部分コイルBよりも幅が広いため、部分コイルAを構成するコイル36Bは抵抗が少なくなるとともに放熱性に優れることにより、ディスクモータ3の出力を上げることが可能となる。
【0048】
次に、本発明の第2の実施の形態のディスクモータ103について図12から14に基づいて説明する。第2の実施の形態では、コイルディスク136A上の部分コイルが第1の実施の形態のディスクモータ3と異なるため、以下、差異点についてのみ説明する。
【0049】
コイルディスク136A上には、連続する2本のコイル136Bが設けられていて、それぞれのコイル136Bは一端部136F、136F´と他端部136G、136G´とを有する。また、コイルディスク136Aには、部分コイルCと部分コイルDとが規定されていて、第1の実施の形態と同様に貫通孔136a及び接続孔136bが形成される。
【0050】
部分コイルCと部分コイルDは、コイルディスク136Aの円周方向に交互に配置される。部分コイルC及びD内の領域のコイル136Bは、半径方向内方の内方接続部136Cと、半径方向外方の外方接続部136Dと、内方接続部136Cと外方接続部136Dとを繋ぎ半径方向に直線状に延びる直線部136Eとから構成される。直線部136Eが本発明の部分コイルに相当する。上面のコイル136Bと下面のコイル136Bとは、内方接続部136C及び外方接続部136Dで互いに接続されている。部分コイルDを構成する直線部は本発明の第1部分コイルに相当し、部分コイルCを構成する直線部は本発明の第2部分コイルに相当する。
【0051】
部分コイルCではコイル136Bの本数が1本であり、部分コイルDではコイル136Bの本数が2本である。これは、図13に示す2つの一端部136F、136F´のうち、複数の部分コイルCにより構成されるコイル136Bの一端部136F´はコイルディスク136Aを2周した後に他端部136G´に至っていて、複数の部分コイルDにより構成されるコイル136Bの一端部136Fはコイルディスク136Aを1周した後に他端部136Gに至っているからである。これにより、部分コイルC内のコイル136Bの幅は、部分コイルD内のコイル136Bの幅の約2倍となっている。このような構成によると、コイルディスク136Aの上面における直線部136Eの数は30個となり、下面における直線部の数も30個となるため、コイルディスク136A上の全直線部の数は60個となる。
【0052】
図14に、第2の実施の形態のコイルディスク136Aを用いた第6ディスクモータ、第7ディスクモータの回転数と、第1ディスクモータの回転数と、を比較した表を示す。
【0053】
第6ディスクモータは、第1の実施の形態における一のコイルディスク36A3枚と第2の実施の形態のコイルディスク136A1枚とを積層したディスクモータである。第6ディスクモータの場合は、回転数は約89となり、回転数減少率は約11%となる。第7ディスクモータは、第1の実施の形態における一のコイルディスク36A1枚と第2の実施の形態のコイルディスク136A3枚とを積層したディスクモータである。第7ディスクモータの場合は、回転数は約73となり、回転数減少率は約27%となる。このように、第2の実施の形態のコイルディスク136Aを用いることで、ディスクモータ103の回転数をより詳細に調整することが可能となる。
【0054】
本実施の形態によるディスクモータでは、1枚のコイルディスク136A上における部分コイルCの本数と部分コイルDの本数とを互いに異ならせることにより、磁石41上を通過する部分コイルを自在に調整することができる。これにより、第1の実施の形態のディスクモータ3と比較すると、ディスクモータ103の回転数の更なる微調整が可能となり、ディスクモータ103の設計の自由度を大幅に向上させることができる。また、部分コイルDは部分コイルCよりも幅が広いため、部分コイルDを構成するコイル36Bは抵抗が少なくなるとともに放熱性に優れることにより、ディスクモータ3の出力を上げることが可能となる。
【0055】
上述したような構成によると、部分コイルCと部分コイルDとが互いに隣接するように交互に配置されていることにより、コイルディスク136A全体の重量バランスの均一化が可能となり、ディスクモータ103動作時の振動などを防止することができる。さらに、ディスクモータ103のバランス調整等の作業が容易になる。
【0056】
本発明によるディスクモータ及び電動作業機は上述した実施の形態に限定されず、たとえば特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0057】
本実施の形態では、コイル部36は4枚のコイルディスク36A、136Aによって構成されたが、コイルディスクの枚数はこれに限られない。コイルディスク1枚でコイル部を構成してもよく、4枚以上のコイルディスクを積層してもよい。また、コイル36Bは、コイルディスク36A、136Aの両面に設けられていたが、上面又は下面の一方の面にのみ設けてもよい。これにより、コイルディスク36A、136A上の直線部36E、136Eの数をさらに減らすことができるため、ディスクモータ3、103の回転数をより詳細に調整することが可能となる。
【0058】
また、第1の実施の形態ではコイル部36を構成する複数のコイルディスク36Aのうち一のコイルディスク36Aではコイル36Bを1周させ、他のコイルディスク36Aではコイル36Bを2周させたが、コイルの周回数はこれに限られない。一のコイルディスク36Aの周回数と他のコイルディスク36Aの周回数とが異なっていれば本発明の効果を得ることができる。
【0059】
また、第2の実施の形態では、コイルディスク36A上の一のコイル36Bは1周であって、他のコイルは2周であったが、コイルの周回数はこれに限られない。同一のコイルディスク36Aで一のコイル36Bと他のコイル36Bの周回数が異なっていれば本発明の効果を得ることができる。
【0060】
また、本実施の形態では、コイルディスク36Aは2本の連続したコイル36Bにより構成されたが、コイル36Bの本数はこれに限られない。コイルディスク36Aを3本の連続したコイルで構成しても良く、またそれ以上の本数のコイルで構成してもよい。
【0061】
また、本実施の形態の部分コイルA,B,C,Dは、貫通孔36a、136aを中心として半径方向に放射状に設けられていたがこの形状に限られない。
【0062】
また、本実施の形態では、電動作業機の一例として刈払機1を用いたが、ディスクモータを搭載した電動工具であればこれに限られない。例えば、ディスクモータを搭載したベルトサンダーやロータリバンドソーなどの電動工具に適用しても良い。
【符号の説明】
【0063】
1・・刈払機 2・・ヘッドハウジング 3,103・・ディスクモータ 4・・パイプ部 5・・ハンドル部 6・・電源部 7・・刈刃 31・・出力軸 32・・ロータ 33・・ステータ 34・・ブラシ 35・・整流子基板 36・・コイル部 36A、136A・・コイルディスク 36B、136B・・コイル 37・・フランジ 38・・絶縁板 39・・絶縁シート 41・・磁石 42・・ヨーク A、B、C、D・・部分コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸と、
略円板状であって、前記出力軸に同軸的に固定され、前記出力軸の回転中心から半径方向外方に放射状に延びる複数の部分コイルが接続されたことにより構成される少なくとも2本のコイルが形成されたコイルディスクと、
前記複数の部分コイルに電流を供給する電流供給部と、
前記部分コイルに対向するように配置される磁石と、を有し、
前記少なくとも2本のコイルのうちの一のコイルを構成する第1部分コイルの総数と他のコイルを構成する第2部分コイルの総数とは互いに異なることを特徴とするディスクモータ。
【請求項2】
前記第1部分コイルと前記第2部分コイルとは互いに隣接するように交互に前記コイルディスク上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のディスクモータ。
【請求項3】
前記第1部分コイルの幅と前記第2部分コイルの幅とは互いに異なることを特徴とする請求項1又は2に記載のディスクモータ。
【請求項4】
前記第1部分コイルの総数は前記第2部分コイルの総数よりも少なく、前記第1部分コイルの幅は前記他第2部分コイルの幅よりも広いことを特徴とする請求項3に記載のディスクモータ。
【請求項5】
前記コイルディスクは、前記出力軸と直交する面である表面と裏面とを有し、前記部分コイルは前記表面と前記裏面の少なくともいずれか一方に形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のディスクモータ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載されたディスクモータを備えた電動作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−80632(P2012−80632A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221956(P2010−221956)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】