説明

ディスク成形用金型、成形品、成形機及び盤状部材

スタンパのパターンの転写性を高くすることができ、成形品の品質を向上させることができるディスク成形用金型、成形品及び成形機を提供することを目的とする。第1、第2の盤状部材の外周縁の近傍において、スタンパ側の盤状部材の媒体流路による冷却能が、非スタンパ側の盤状部材の媒体流路による冷却能より低くされる。スタンパ側におい
て、スタンパ側の盤状部材の外周縁からディスク成形用金型外に放射される熱量を少なくし、スタンパ側の盤状部材が冷えすぎるのを防止することができる。その結果、キャビティ空間(C)の外周縁の近傍において転写性が局部的に低くなるのを防止することができ、キャビティ空間(C)の全体にわたって微細なパターンの転写性を向上させることができる。そして、成形品の品質を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ディスク成形用金型、成形品及び成形機に関するものである。
【背景技術】
従来、成形品としてのディスク基板を成形するための成形機、例えば、射出成形機においては、加熱シリンダ内において溶融させられた樹脂をディスク成形用金型内のキャビティ空間に充填(てん)し、該キャビティ空間内において樹脂を冷却し、固化させることによってディスク基板を得るようにしている。
そのために、前記射出成形機は、固定側の金型組立体及び可動側の金型組立体から成る前記ディスク成形用金型、前記樹脂をキャビティ空間に充填するための射出装置、並びに前記可動側の金型組立体を固定側の金型組立体に対して接離させるための型締装置を備える。そして、該型締装置によって前記可動側の金型組立体を進退させ、ディスク成形用金型の型閉じ、型締め及び型開きを行い、型締め時に、固定側の金型組立体の鏡面盤と可動側の金型組立体の鏡面盤との間にキャビティ空間が形成される。
また、前記射出装置は、加熱シリンダ、該加熱シリンダの前端に取り付けられた射出ノズル、及び前記加熱シリンダ内において回転自在に、かつ、進退自在に配設されたスクリューを備える。
そして、計量工程において、前記スクリューが回転させられ、樹脂が溶融させられてスクリューの前方に蓄えられ、それに伴って、スクリューが後退させられ、この間に、ディスク成形用金型の型閉じ及び型締めが行われる。続いて、射出工程において、前記スクリューが前進させられ、前記スクリューの前方に蓄えられた樹脂が射出ノズルから射出され、キャビティ空間に充填される。そして、冷却工程において、前記キャビティ空間内の樹脂が冷却され、穴開け加工が行われ、ディスク基板が成形される。続いて、型開きが行われ、前記ディスク基板が取り出される。
なお、固定側の鏡面盤にスタンパが取り付けられ、前記キャビティ空間への樹脂の充填に伴って、スタンパに形成されたピットの微細なパターンが樹脂に転写され、ディスク基板の情報面を構成する凹凸を形成する。
ところで、固定側のスプルーブッシュにスプルーが形成され、該スプルーの前端は、キャビティ空間に充填される樹脂の入口となるゲートを構成し、樹脂は、前記スプルーを通り、ゲートを通ってキャビティ空間内に進入し、キャビティ空間内を径方向外方に向けて流れるようになっている。
したがって、キャビティ空間内において温度勾(こう)配が形成され、樹脂の温度が、ゲートに近いほど高く、外周縁に近いほど低くなってしまう。その結果、スタンパのパターンの転写性が、ゲートに近いほど高く、外周縁に近いほど低くなってしまう。
そこで、固定側の鏡面盤において、温調用の媒体流路と鏡面盤の表面との距離を、ゲートに近いほど短く、外周縁に近いほど長くすることによって、温調による冷却能に勾配を形成し、冷却能をゲートに近いほど高く、外周縁に近いほど低くして、キャビティ空間内に温度勾配が形成されるのを抑制するようにしている。
しかしながら、前記従来のディスク成形用金型においては、キャビティ空間内において温度勾配が形成されるのが抑制されるが、キャビティ空間の外周縁の近傍は、ディスク成形用金型の外周縁の近傍にあるので、ディスク成形用金型外に放射される熱量が多く、冷えすぎてしまう。
その結果、キャビティ空間の外周縁の近傍において転写性が局部的に低くなり、ディスク基板の品質が低下してしまう。
本発明は、前記従来のディスク成形用金型の問題点を解決して、スタンパのパターンの転写性を高くすることができ、成形品の品質を向上させることができるディスク成形用金型、成形品及び成形機を提供することを目的とする。
【発明の開示】
そのために、本発明のディスク成形用金型においては、第1の支持部材と、該第1の支持部材に取り付けられた第1の盤状部材と、第2の支持部材と、該第2の支持部材に取り付けられ、前記第1の盤状部材と対向させて配設され、型締め時に第1の盤状部材との間にキャビティ空間を形成する第2の盤状部材とを有する。
そして、前記第1、第2の盤状部材に温調用の媒体流路が形成され、前記第1、第2の盤状部材のうちの一方にスタンパが着脱自在に取り付けられ、前記第1、第2の盤状部材の外周縁の近傍において、スタンパ側の盤状部材の媒体流路による冷却能が、非スタンパ側の盤状部材の媒体流路による冷却能より低くされる。
この場合、前記第1、第2の盤状部材の外周縁の近傍において、スタンパ側の盤状部材の媒体流路による冷却能が、非スタンパ側の盤状部材の媒体流路による冷却能より低くされるので、スタンパ側において、スタンパ側の盤状部材の外周縁からディスク成形用金型外に放射される熱量を少なくし、スタンパ側の盤状部材が冷えすぎるのを防止することができる。したがって、キャビティ空間の外周縁の近傍において転写性が局部的に低くなるのを防止することができ、キャビティ空間の全体にわたって微細なパターンの転写性を高くすることができる。その結果、成形品の品質を向上させることができる。
本発明の他のディスク成形用金型においては、さらに、前記スタンパ側の盤状部材の外周縁の近傍に断熱部が形成される。
本発明の更に他のディスク成形用金型においては、さらに、前記断熱部はスタンパの外周縁の線上に形成される。
本発明の更に他のディスク成形用金型においては、さらに、前記断熱部は空気が満たされた閉鎖室から成る。
本発明の更に他のディスク成形用金型においては、さらに、前記閉鎖室は環状に形成される。
本発明の更に他のディスク成形用金型においては、さらに、前記断熱部は断熱材が充填された閉鎖室から成る。
本発明の更に他のディスク成形用金型においては、さらに、前記閉鎖室は前記媒体流路より深くされる。
この場合、前記閉鎖室は前記媒体流路より深くされるので、スタンパ側の盤状部材の外周縁からディスク成形用金型外に放射される熱量を一層少なくし、スタンパ側の盤状部材が冷えすぎるのを確実に防止することができる。
本発明の更に他のディスク成形用金型においては、さらに、前記媒体流路は1本の連続する流路から成る。
本発明の更に他のディスク成形用金型においては、さらに、前記非スタンパ側の盤状部材の媒体流路において、前記断熱部と対応する位置に形成された部分の深さが、他の部分より深くされる。
この場合、前記非スタンパ側の盤状部材の媒体流路において、前記断熱部と対応する位置に形成された部分の深さが、他の部分より深くされるので、非スタンパ側において、樹脂の温度が外周縁に近い部分で高くなりすぎることがない。したがって、型開きが行われ、ディスク基板が取り出された後に、温度の高い部分と低い部分との温度差が大きくならないので、温度の高い部分と低い部分とで収縮量が異なるのを防止することができる。その結果、ディスク基板の厚さを均等にすることができる。
本発明の成形品においては、前記請求項1に記載のディスク成形用金型を使用して成形される。
本発明の成形機においては、前記請求項1に記載のディスク成形用金型を備える。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施の形態におけるディスク成形用金型の要部を示す断面図、第2図は本発明の実施の形態における可動側の金型組立体の要部を示す正面図、第3図は本発明の実施の形態におけるディスク成形用金型の要部を示す拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
第1図は本発明の実施の形態におけるディスク成形用金型の要部を示す断面図、第2図は本発明の実施の形態における可動側の金型組立体の要部を示す正面図、第3図は本発明の実施の形態におけるディスク成形用金型の要部を示す拡大図である。
図において、12は図示されない固定プラテンに、図示されないボルトによって、図示されない取付板を介して取り付けられた固定側の金型組立体であり、該金型組立体12は、第1の支持部材としてのベースプレート15、該ベースプレート15にボルトb1によって取り付けられた第1の盤状部材としての鏡面盤16、前記ベースプレート15内において、ベースプレート15に対して位置決めされ、ボルトb2によって取り付けられたスプルーブッシュ24を備える。該スプルーブッシュ24の前端(第1図において下端)に、キャビティ空間Cに臨ませて凹部から成るダイ28が、スプルーブッシュ24の後端(第1図において上端)に、図示されない射出装置の射出ノズルを当接させるための凹部から成るノズルタッチ部29が形成される。そして、前記スプルーブッシュ24の前端から後端にかけて、かつ、前記ダイ28及びノズルタッチ部29と連通させて、前記射出ノズルから射出された成形材料としての樹脂を通すためのスプルー26が形成される。該スプルー26の前端は、キャビティ空間Cに充填される樹脂の入口となるゲートを構成する。
また、前記ダイ28の近傍に、環状の温調用の媒体流路27が形成され、該媒体流路27に、図示されない媒体供給源からの水、油、空気等の温調用の媒体が供給路30を介して供給されることによって、スプルーブッシュ24の特に前端部(第1図において下端部)が所定の温度に冷却されるとともに、前記スプルーブッシュ24の前半部(第3図において下半部)の径方向外方に配設され、図示されないスタンパの内周縁を押さえて保持するためのインナスタンパホルダ14が冷却される。該インナスタンパホルダ14は、後端に臨ませて回転自在に配設されたロッド25を回転させることによって、ベースプレート15に対して係脱させられる。
なお、前記射出装置は、加熱シリンダ、該加熱シリンダの前端に取り付けられた射出ノズル、及び前記加熱シリンダ内において回転自在に、かつ、進退自在に配設されたスクリューを備える。
そして、前記鏡面盤16には、前記スタンパが着脱自在に取り付けられ、前記キャビティ空間Cへの樹脂の充填に伴って、スタンパに形成されたピットの微細なパターンが樹脂に転写され、成形品としてのディスク基板の情報面を構成する凹凸を形成する。
また、環状の突当リング18がボルトb3によって前記鏡面盤16の外周縁に取り付けられ、前記鏡面盤16及び突当リング18より径方向外方に環状の第1の外周リング19がボルトb4によってベースプレート15に取り付けられる。
一方、32は図示されない可動プラテンに図示されないボルトによって取り付けられた可動側の金型組立体であり、該金型組立体32は、前記可動プラテンが進退するのに伴って進退(第1図において上下方向に移動)させられ、金型組立体12と接離させられる。
前記金型組立体32は、ベースプレート35、該ベースプレート35にボルトb5によって取り付けられた中間プレート40、該中間プレート40にボルトb6によって取り付けられた第2の盤状部材としての鏡面盤36、前記中間プレート40内に配設され、中間プレート40にボルトb7によって取り付けられた筒状のブシュ47、該ブシュ47内にリニア軸受部としてのベアリング49によって進退自在に配設された筒状のカットパンチ48、該カットパンチ48内に進退自在に配設されたロッド状の突出しピン50、前記ベースプレート35内に配設されたカットパンチブロック52、前記ベースプレート35内に配設され、前記カットパンチブロック52を貫通し、かつ、カットパンチブロック52に対して摺(しゅう)動自在に配設された突出し用ロッド53等を備える。なお、前記ベースプレート35及び中間プレート40によって第2の支持部材が構成される。
また、本実施の形態においては、鏡面盤16にスタンパが取り付けられるようになっているが、鏡面盤36にスタンパを取り付けることもできる。
前記ブシュ47は、前端(第1図において上端)をキャビティ空間Cに臨ませて配設され、鏡面盤36を貫通して後方(第1図において下方)に延び、後端(第1図において下端)のフランジ部f1において、中間プレート40に前記ボルトb7によって取り付けられる。前記ブシュ47の外周面と鏡面盤36及び中間プレート40の内周面との間にわずかなクリアランスが形成され、該クリアランスに圧縮された空気が供給され、該空気は、ブシュ47及び鏡面盤36の前端に形成されたエアブロー用のスリットからキャビティ空間C内に噴射される。
また、前記カットパンチ48は、前端をキャビティ空間Cに臨ませて配設され、鏡面盤36及び中間プレート40を貫通して後方に延び、後端のフランジ部f2において前記カットパンチブロック52と当接させられる。したがって、図示されないカットパンチ用の駆動部としてのカットパンチ用シリンダを駆動することによって、カットパンチブロック52を進退させ、カットパンチ48を進退させることができる。なお、該カットパンチ48の前端は、前記ダイ28の形状に対応する形状を有し、前記カットパンチ48を前進(第1図において上方向に移動)させることによって、前端をダイ28内に進入させることができる。
また、前記ブシュ47の前端の近傍に、環状の冷却用の流路55が形成され、該流路55に、図示されない空気供給源からの空気が供給されることによって、カットパンチ48の特に前端部(第1図において上端部)が所定の温度に冷却されるとともに、ブシュ47が冷却される。
そして、前記突出しピン50は、前端をキャビティ空間Cに臨ませて配設され、鏡面盤36及び中間プレート40を貫通して後方に延び、後端において前記突出し用ロッド53と当接させられる。したがって、図示されない突出し用の駆動部としての突出し用シリンダを駆動することによって、突出し用ロッド53を進退させ、突出しピン50を進退させることができる。なお、前記カットパンチ48と突出しピン50との間には、付勢部材としてのスプリング54が軸方向に延在させて配設され、所定の付勢力で突出しピン50を後方に向けて付勢する。
また、前記鏡面盤36の外周縁部に、鏡面盤36に対して移動自在に、かつ、突当リング18と対向させて環状のキャビリング37が配設され、前記鏡面盤36及びキャビリング37より径方向外方において前記第1の外周リング19と対向させて環状の第2の外周リング38がボルトb9によって中間プレート40に取り付けられる。前記第2の外周リング38は、前記キャビリング押えとしても機能し、前記キャビリング37の外周縁に係止させられる。
また、前記キャビリング37には案内ロッド41が取り付けられ、該案内ロッド41を前記中間プレート40に形成された案内穴に沿って進退させることにより、キャビリング37を進退させることができる。そして、キャビリング37は、鏡面盤36の前端面(第1図において上端面)より突出させられ、キャビリング37の内周面によって、ディスク基板の外周縁が形成される。
そして、前記キャビリング37における前端面の近傍に、複数のガス抜き用の細孔64が、放射状に、かつ、等ピッチ角度で形成される。また、前記第1の外周リング19における前端面(第2図においては便宜上、第2の外周リング38における前端面に示される。)に、複数のガス抜き用の溝65が、放射状に、かつ、等ピッチ角度で、前記各細孔64と連通させて形成される。なお、前記細孔64によって第1のガス流路が、溝65によって第2のガス流路が構成される。
ところで、前記金型組立体12、32によってディスク成形用金型が構成され、金型組立体32を金型組立体12に対して接離させるために図示されない型締装置が配設される。該型締装置の型締め用の駆動部としての型締シリンダを駆動し、前記金型組立体32を進退させることによって、ディスク成形用金型の型閉じ、型締め及び型開きを行うことができ、型締め時に、鏡面盤16、36間に前記キャビティ空間Cが形成される。この場合、型閉じ及び型開きを円滑に行うことができるように、ベースプレート15の所定の箇所に図示されないガイドロッドが金型組立体32に向けて突出させて取り付けられ、中間プレート40及びベースプレート35における前記ガイドロッドと対応する箇所にガイドブッシュ81が配設され、金型組立体32の進退に伴って、ガイドロッドがガイドブッシュ81に対して挿脱される。なお、第2図において、82はガイドブッシュ81を取り付けるためのガイドブッシュ穴である。
また、冷却工程において、前記カットパンチ用シリンダを駆動することによってカットパンチ48を前進させると、カットパンチ48の前端がダイ28内に進入し、前記キャビティ空間C内の樹脂に穴開け加工を行うことができる。
前記構成の射出成形機においては、計量工程で前記射出装置において、スクリューが回転させられ、樹脂が溶融させられてスクリューの前方に蓄えられ、それに伴って、スクリューが後退させられ、この間に、ディスク成形用金型の型閉じ及び型締めが行われる。続いて、射出工程において、前記スクリューが前進させられ、前記スクリューの前方に蓄えられた樹脂が射出ノズルから射出され、キャビティ空間Cに充填される。そして、冷却工程において、前記キャビティ空間C内の樹脂が冷却され、穴開け加工が行われ、ディスク基板が成形される。続いて、型開きが行われ、前記ディスク基板が取り出される。
ところで、射出工程で、樹脂は、前記スプルー26を通り、ゲートを通ってキャビティ空間C内に進入し、キャビティ空間C内を径方向外方に向けて流れるようになっているので、キャビティ空間C内において温度勾配が形成され、樹脂の温度が、ゲートに近いほど高く、外周縁に近いほど低くなると、スタンパのパターンの転写性が、ゲートに近いほど高く、外周縁に近いほど低くなってしまう。
そこで、キャビティ空間C内に温度勾配が形成されるのを抑制するために、前記鏡面盤16、36とベースプレート15及び中間プレート40とによって、それぞれ温調用の第1、第2の媒体流路61、62が形成され、該第1、第2の媒体流路61、62に前記媒体供給源からの水、油、空気等の温調用の媒体が供給されることによって、鏡面盤16、36が所定の温度に冷却される。
前記第1の媒体流路61は、ベースプレート15の所定の箇所、例えば、ディスク成形用金型を射出成形機に取り付けたときに下方(図において左方)に位置する側面S1に開口させられた図示されない媒体入口、前記側面S1に、前記媒体入口に隣接させて開口させられた図示されない媒体出口、主としてベースプレート15を冷却するためにベースプレート15内に形成され、前記媒体入口及び媒体出口に接続された図示されない入口側及び出口側の補助冷却部、主として鏡面盤16を冷却するために鏡面盤16とベースプレート15との間に所定のパターンで形成された主冷却部67、並びに前記各補助冷却部と主冷却部67とを接続する入口側及び出口側の接続部を備える。前記主冷却部67は、鏡面盤16の後端面(第1図において上端面)において開口する溝をベースプレート15によって覆うことにより形成され、連続する1本の閉鎖された流路を構成する。
同様に、前記第2の媒体流路62は、中間プレート40の所定の箇所、例えば、ディスク成形用金型を射出成形機に取り付けたときに下方に位置する側面S11に開口させられた媒体入口72、前記側面S11に、前記媒体入口72に隣接させて開口させられた媒体出口73、主として中間プレート40を冷却するために中間プレート40内に形成され、前記媒体入口72及び媒体出口73に接続された入口側及び出口側の補助冷却部74、75、主として鏡面盤36を冷却するために鏡面盤36と中間プレート40との間に所定のパターンで形成された主冷却部77、並びに前記各補助冷却部74、75と主冷却部77とを接続する入口側及び出口側の接続部78、79を備える。前記主冷却部77は、鏡面盤36の後端面(第1図において下端面)において開口する溝を中間プレート40によって覆うことにより形成され、連続する1本の閉鎖された流路を構成する。
前記補助冷却部74、75は、主冷却部77の径方向外方において主冷却部77を包囲するように形成され、媒体入口72及び媒体出口73から中間プレート40の内方に向けて、互いに平行に直線状に延びる流路部h1、h2、該流路部h1、h2の先端から直角に、背面側(非操作側)の側面S12及び前面側(操作側)の側面S13に向けて直線状に延びる流路部h3、h4、該流路部h3、h4の先端から直角に、中間プレート40の側縁に沿って、上方の側面S14に向けて互いに平行に直線状に延びる流路部h5、h6、該流路部h5、h6の先端から直角に、互いに近づく方向に直線状に延びる流路部h7、h8、並びに該流路部h7、h8の先端から直角に、接続部78、79に向けて、互いに平行に直線状に延びる流路部h9、h10を備える。なお、ベースプレート15内に形成された補助冷却部も、補助冷却部74、75と同様な構造を有する。
また、前記主冷却部77は、中間プレート40の中心から径方向外方にかけて、所定の角度θにわたり、同心的に形成された複数の部分、すなわち、円弧部k1〜k4、円弧部k1、k2間を結ぶ直線部k5、円弧部k2、k3間を結ぶ直線部k6、及び円弧部k3、k4間を結ぶ直線部k7を備え、前記円弧部k1に接続部78が、円弧部k4に接続部79が接続される。なお、鏡面盤16内に形成された主冷却部67も、主冷却部77と同様の部分、すなわち、円弧部m1〜m3及び図示されない直線部から成るが、円弧部m1〜m3の数は3個であり、直線部の数は2個である。
したがって、媒体入口72を介して中間プレート40内に供給された媒体は、補助冷却部74を流れた後、鏡面盤36内に移動して第2の媒体流路62を流れ、続いて、再び中間プレート40内に移動して補助冷却部75を流れ、媒体出口73から排出される。
ところで、キャビティ空間の外周縁の近傍は、ディスク成形用金型の外周縁の近傍にあるので、ディスク成形用金型外に放射される熱量が多く、冷えすぎてしまう。
そこで、前記スタンパ側の鏡面盤16において、外周縁の近傍において樹脂が冷えすぎないように、前記第1の媒体流路61より径方向外方の所定の箇所に、本実施の形態においては、スタンパの外周縁の線上に所定の形状の、本実施の形態においては、環状の断熱部としての閉鎖室63が形成され、該閉鎖室63に空気が満たされる。前記閉鎖室63は、主冷却部67と同様に、鏡面盤16の後端面において開口する溝をベースプレート15によって覆うことにより形成され、前記主冷却部67より深くされる。
また、前記閉鎖室63は、空気が満たされることによって断熱性を有することになるので、閉鎖室63より径方向内方の熱が径方向外方に向けて伝達されるのが阻止される。したがって、第1の媒体流路61による冷却能が、第2の媒体流路62による冷却能より低くされるので、スタンパ側において、鏡面盤16の外周縁からディスク成形用金型外に放射される熱量を少なくし、鏡面盤16の外周縁の近傍が冷えすぎるのを防止することができる。その結果、キャビティ空間Cの外周縁の近傍において転写性が局部的に低くなるのを防止することができ、キャビティ空間Cの全体にわたって微細なパターンの転写性を向上させることができる。そして、ディスク基板の品質を向上させることができる。
また、閉鎖室63が主冷却部67より深くされるので、鏡面盤16の外周縁からディスク成形用金型外に放射される熱量を一層少なくし、鏡面盤16の外周縁の近傍が冷えすぎるのを確実に防止することができる。
本実施の形態においては、断熱部として空気が満たされた閉鎖室63が形成されるようになっているが、閉鎖室63に代えて真空の閉鎖室を形成することもできる。また、閉鎖室63内に断熱性の高い材料、すなわち、断熱材を充填することもできる。
そして、本実施の形態においては、閉鎖室63は環状の形状を有するようになっているが、鏡面盤16の円周方向において、弧状の形状を有する複数の閉鎖室を形成することもできる。さらに、本実施の形態においては、閉鎖室63を、鏡面盤16に形成するようになっているが、鏡面盤36に形成したり、鏡面盤16及び鏡面盤36に形成したりすることができる。
なお、前記主冷却部67を形成する溝の深さ(開口の部分から底の部分までの距離)は、第1図及び第3図の実線で表されるように設定され、円弧部m2は円弧部m1、m3より深くされ、インナスタンパホルダ14の近傍及び閉鎖室63の近傍における冷却能が、中央における冷却能より低くされる。
ところで、樹脂がゲートからキャビティ空間C内に流れるときに、冷却されすぎると、樹脂の分子が引き伸ばされ、分子が同じ方向に並んでしまう。その結果、ディスク基板の内周縁における複屈折が大きくなり、品質が低下してしまう。そこで、前述されたように、最も内周側における円弧部m1が円弧部m2より浅くされ、冷却能が低くされる。
また、必要に応じて、第1図及び第3図の破線で表されるように、円弧部m1、m2の深さをほぼ等しくすることもできる。さらに、円弧部m1〜m3の深さをいずれも等しくすることもできる。なお、閉鎖室63は、各円弧部m1〜m3より深くされる。
ところで、スタンパが配設され、転写性と関係の深い鏡面盤16側、すなわち、スタンパ側において、閉鎖室63が形成されるので、キャビティ空間Cの外周縁の近傍において局部的に転写性が低くなるのを防止することができるが、スタンパが配設されておらず、転写性とは関係のない鏡面盤36側、すなわち、非スタンパ側においては、鏡面盤36の外周縁の近傍の温度が高くなりすぎてしまう。そして、非スタンパ側において、樹脂の温度が外周縁に近い部分で高くなりすぎると、型開きが行われ、ディスク基板が取り出された後に、温度の高い部分と低い部分との温度差が大きくなり、温度の高い部分と低い部分とで収縮量が異なってしまう。その結果、ディスク基板が、外周縁の近い部分においてゲートの近傍より薄くなり、厚さむらが生じてしまう。
そこで、前記主冷却部77を形成する溝の深さは、第1図及び第3図の実線で表されるように設定され、閉鎖室63と対応する位置に形成された円弧部k4は円弧部k1〜k3より深くされ、円弧部k4の冷却能が高くされる。
したがって、非スタンパ側において、樹脂の温度が外周縁に近い部分で高くなりすぎることがないので、型開きが行われ、ディスク基板が取り出された後に、温度の高い部分と低い部分との温度差が大きくならないので、温度の高い部分と低い部分とで収縮量が異なるのを防止することができる。その結果、ディスク基板の厚さを均等にすることができ、ディスク基板の品質を向上させることができる。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
この発明は、ディスク基板を製造するためのディスク基板製造装置に利用することができる。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の支持部材と、
(b)該第1の支持部材に取り付けられた第1の盤状部材と、
(c)第2の支持部材と、
(d)該第2の支持部材に取り付けられ、前記第1の盤状部材と対向させて配設され、型締め時に第1の盤状部材との間にキャビティ空間を形成する第2の盤状部材とを有するとともに、
(e)前記第1、第2の盤状部材に温調用の媒体流路が形成され、
(f)前記第1、第2の盤状部材のうちの一方にスタンパが着脱自在に取り付けられ、
(g)前記第1、第2の盤状部材の外周縁の近傍において、スタンパ側の盤状部材の媒体流路による冷却能が、非スタンパ側の盤状部材の媒体流路による冷却能より低くされることを特徴とするディスク成形用金型。
【請求項2】
前記スタンパ側の盤状部材の外周縁の近傍に断熱部が形成される請求項1に記載のディスク成形用金型。
【請求項3】
前記断熱部はスタンパの外周縁の線上に形成される請求項2に記載のディスク成形用金型。
【請求項4】
前記断熱部は空気が満たされた閉鎖室から成る請求項2に記載のディスク成形用金型。
【請求項5】
前記閉鎖室は環状に形成される請求項4に記載のディスク成形用金型。
【請求項6】
前記断熱部は断熱材が充填された閉鎖室から成る請求項2に記載のディスク成形用金型。
【請求項7】
前記閉鎖室は前記媒体流路より深くされる請求項4〜6のいずれか1項に記載のディスク成形用金型。
【請求項8】
前記媒体流路は1本の連続する流路から成る請求項1に記載のディスク成形用金型。
【請求項9】
前記非スタンパ側の盤状部材の媒体流路において、前記断熱部と対応する位置に形成された部分の深さが、他の部分より深くされる請求項2に記載のディスク成形用金型。
【請求項10】
前記請求項1に記載のディスク成形用金型を使用して成形された成形品。
【請求項11】
前記請求項1に記載のディスク成形用金型を備えた成形機。

【国際公開番号】WO2005/099992
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【発行日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519110(P2006−519110)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004740
【国際出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【出願人】(000147350)株式会社精工技研 (154)
【Fターム(参考)】