説明

ディスク挿入規制装置

【課題】シングルCD挿入防止機能とセンタリング機能とを備えたディスク挿入規制装置を、筐体を大型化せずに組み込むことができるようにコンパクトに構成する。
【解決手段】ディスク挿入スロットに沿って接離移動自在なようにラック/ピニオン機構を介して一対のスライド体を連動連結し、最接近位置が小径ディスクの直径よりも小さな間隔となるように一対のスライド体のそれぞれに一対のガイド部材を固設し、一対のガイド部材のそれぞれに回動自在且つ常時回動中立位置へ向けて付勢されたロック部材を設けると共に、最接近位置において回動中立位置にある一対のロック部材に係合可能に筐体と一体をなす部分に一対のストッパ突起を固定し、小径ディスクを挿入してもストッパ突起との係合が外れる位置までロック部材が回動し得ず、大径ディスクを挿入するとストッパ突起との係合が外れる位置までロック部材が回動し得るようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小径ディスクの挿入を阻止するディスク挿入規制装置に関し、特に、情報記録ディスクをディスク挿入スロットに差し込むと筐体内の所定位置に自動的に引き込み、エジェクト指令を与えると自動的に排出するディスク搬送機構を備えたディスクドライブ装置のためのディスク挿入規制装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、音楽情報などが記録されたコンパクトディスク(以下CDと略称する)を再生する車載用CDプレーヤにおけるCDの搬送機構として、CDの外周に当接する搬送ローラを筐体内の一側に設けたものを、特願2004−8249号明細書において提案した。
【0003】
この構成によると、限られた寸法の筐体内に搬送機構を設置する都合上、外径寸法が8cmの所謂シングルCDに搬送ローラの可動範囲を対応させることは困難である。そのため、もしも操作者がシングルCDに対応していないことを認識せずにシングルCDを筐体内に挿入すると、搬送機構に拘束されないために最悪の場合はシングルCDが筐体内に落ち込んでしまい、取り出せなくなることがあり得た。
【0004】
このような不都合に対処するためのシングルCD挿入防止装置が、例えば特許文献1に提案されている。
【0005】
他方、CDの搬送を安定させるには、CD挿入スロットの左右方向中央位置に自動的にCDが案内されるようになっていることが好ましく、そのためのセンタリング装置が、例えば特許文献2に提案されている。
【特許文献1】特開平11−149688号公報
【特許文献2】特開平11−110875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、上記文献1、2に記載の技術によると、いずれも筐体内にて再生位置にあるCDの一部と対向する位置に装置を設置しなければならない。そのため、特に複数のディスクを予め格納しておき、そのうちの一つを選択的に再生する所謂ディスクチェンジャ機構を備えたCDプレーヤにこれらの文献に記載のシングルCD挿入防止装置とセンタリング装置とを同時に設けようとすると、筐体を大幅に大型化せざるを得ない。このことは、特に設置スペースの制約が大きい車載用CDプレーヤに適用する際に大きな障害となることを意味している。
【0007】
本発明は、このような従来技術の不都合を解消すべく案出されたものであり、その主な目的は、シングルCD挿入防止機能とセンタリング機能とを備えたディスク挿入規制装置を、筐体を大型化せずに組み込むことができるようにコンパクトに構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明は、ディスク挿入スロット3に沿って接離移動自在なようにラック/ピニオン機構(34a・34b・35)を介して連動連結された一対のスライド体33と、最接近位置が小径ディスク(8cmCD)の直径よりも小さな間隔となるように一対のスライド体のそれぞれに固設された一対のガイド部材37と、一対のガイド部材のそれぞれに回動自在に設けられ且つ常時回動中立位置へ向けて付勢されたロック部材39と、最接近位置において回動中立位置にある一対のロック部材(ロック突起42)に係合可能に筐体と一体をなす部分に固定された一対のストッパ部材(ストッパ突起45)とを有し、スロットの挿入方向中心線上にディスク中心を合致させた状態で一対のガイド部材にディスクの外周を押し当てようとした時に、小径ディスクの場合はストッパ部材との係合が外れる位置までロック部材が回動し得ず、大径ディスク(12cmCD)の場合はストッパ部材との係合が外れる位置までロック部材が回動し得るように各部の位置関係が設定されたディスク挿入規制装置を提供することとした。
【0009】
この機構によれば、一対のスライド体は、一対のストッパ部材とロック部材との係合が同時に外れない限り移動し得ない。従って、小径ディスクの挿入時には、一対のロック部材が同時に回動し得ないので、最接近位置に固定された一対のガイド部材にてディスクの挿入が阻止される。これに対して大径ディスクの挿入時には、一対のロック部材が同時に回動して一対のストッパ部材との係合が外れるので、一対のスライド体は大径ディスクの外周に押されて挿入方向中心から振り分けに等距離移動する。従って、大径ディスクは一対のガイド部材によってセンタリングされた状態のまま筐体内に搬送される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ディスクセンタリング機構と小径ディスク挿入防止機構とを兼用し得るため、装置を極めてコンパクトに構成し得ることとなり、筐体を大型化せずに済む。しかも他の機構に影響を及ぼさずにディスク挿入スロットの開口部に付設することができるので、搬送装置や再生装置などを殆ど変更せずに実施することができ、製造コストの増大も最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に添付の図面を参照して本発明について詳細に説明する。
【0012】
図8は、本発明が適用される車載用ディスクドライブ装置の上面図である。このディスクドライブ装置1の筐体は、1DINの規格に則って形成されており、その前面パネル2には、直径12cmのCDの挿入に対応し得るスロット3が開口し、筐体内の中央部には、CDを保持するトレイ4が設けられ、筐体の奥側には、ディスククランパ、駆動モータ付きターンテーブル、データ読み取りヘッド及びヘッド駆動モータ等を支持したドライブアーム5が、筐体の底板上に立設された垂直軸に旋回動自在に枢着されている。また筐体の奥側の右隅には、オートチェンジャ機構に駆動力を与えるチェンジャ駆動装置6が設けられ、上部には、左右のオートチェンジャ機構7L・7Rを連動させる連動軸8が延設されている。
【0013】
なお、オートチェンジャ機構は、前後方向にスライドするカム板の傾斜カム溝に係合させて多段に重ね合わせた複数のトレイ全体を昇降させるトレイベースと、所定段のトレイのみを選択的に再生位置にセットするためのカム溝が形成されたもう一つの前後方向にスライドするカム板とを備えた公知の構成をそのまま流用し得るので、ここではその説明を省略する(オートチェンジャー機構に関して必要ならば、特開平11−296954号公報を参照されたい)。
【0014】
スロット3の右端には、水平状態のCDの外周部が通過し得る溝を有する固定ガイド部材9が設けられ、トレイ4の右側端部には、固定ガイド部材9と連係してCDの外周部を案内するガイド部10と、挿入されるCDの逸脱を防止すべくガイド部10の上方を覆う可動ガイド板10aとが設けられている。またトレイ4の左側方におけるスロット3側の隅部には、複数のローラからなるディスク搬送機構11が設けられている。
【0015】
筐体の天板(図1においては除去されている)の下面には、再生時に搬送機構11をCDと干渉しない位置へ退避させるための第1レリーズレバー12の中間部が左側に枢着され、同じく再生時に可動ガイド板10をCDと干渉しない位置へ退避させるための第2レリーズレバー13の中間部が右側に枢着され、最上段のトレイの上面に重ね合わされたアッパプレート14に下向きの押圧力を作用させる押圧板15の一端が、スロット3側の端縁部に枢着されている。
【0016】
押圧板15は、その遊端に組み込まれたローラ16をアッパプレート14の上面に常時転動接触させるように、枢軸に巻装された捩りコイルばね(図示せず)によって弾発付勢されている。これにより、多段のトレイ4をがたつかないように安定させている。
【0017】
搬送機構11は、筐体の底板上に固定されたセンタ軸21にそれぞれの一端が枢着され、且つそれぞれの遊端が互いに反対方向へ延出された2つのアーム22・23と、両アーム22・23の遊端に軸支された第1搬送ローラ24及び第2搬送ローラ25と、センタ軸21に枢着された中間ローラ26とを備えている。そして中間ローラ26が第1搬送ローラ24の下方に設置された搬送モータ27の駆動軸とベルト連結され、中間ローラ26と第2搬送ローラ25並びに第1搬送ローラ24とがそれぞれベルト連結されている。これらにより、搬送モータ27の駆動力で中間ローラ26が回転し、この回転に連れて第1、第2、搬送ローラ24・25が同時に同一方向へ回転するようになっている。
【0018】
第1搬送ローラ24は、スロット3に近接配置され、スロット3から挿入されたCDの外周の左側に当接して筐体内へCDを引き込み、且つエジェクト時に筐体内から搬送されたCDを、スロット3外のCDを回収できる位置まで押し出す機能を備えている。また第2搬送ローラ25は、トレイ4の左側方、すなわちトレイ4上に載置されたCDに当接可能な位置に設けられ、この回転により、筐体外から搬送されてきたCDをトレイ4上に載置させ、且つエジェクト時にトレイ4からCDを離脱させる機能を備えている。そして中間ローラ26は、第1搬送ローラ24と第2搬送ローラ25との間でCDの受け渡しを行うガイドとしての機能を備えている。
【0019】
第1、第2各搬送ローラ24・25を個々に支持する2つのアーム22・23には、センタ軸21に巻装された捩りコイルばね(図示せず)の遊端が係止しており、互いの挟み角を小さくする向きに弾発付勢されている。これにより、第1、第2両搬送ローラ24・25が、CDの外周に向けて弾発付勢されている。なお、自然状態時の両アーム22・23の挟み角は、機械的なストッパ(図示せず)にて図8に示す位置に規定されている。
【0020】
図1は、本発明に基づき構成されたディスク挿入規制装置31の正面図である。このディスク挿入規制装置31は、左右方向に細長いロ字形をなす枠体32と、左右方向にスライド自在なように枠体32の上下梁の対向内面に係合した左右一対のスライド体33a・33bとからなり、前面パネル2のCD挿入スロット3に対応する位置に固定されるものである。
【0021】
一対のスライド体33a・33bは、例えば、枠体32の上下梁に形成されたガイドスロットにピンを係合させる等してその移動軌跡が規定されており、各スライド体33a・33bと一体をなすラック34a・34bと枠体32の下梁の前面の適所に枢着されたピニオン35とからなる連動機構を介して互いに連結されており、一方の動きが他方に等しく伝達され、スロット3の左右方向中心に対して一対のスライド体33a・33bが互いに等距離を接離移動するようになっている。
【0022】
一対のスライド体33a・33bは、金属板を曲げ加工してなり、正面視コ字形をなす部分(コ字形部)36a・36bが左右対称形に配置されており、これらのコ字形部36a・36bの上下の壁間にガイド部材37a・37bが固定されている。これらのガイド部材37a・37bのスロット中心側(以下内側)を向く面には、図2並びに図3に併せて示すように、上下にテーパ面を有する横向きのV字溝38が形成されており、スロット3に挿入されたCDの上下及び左右位置をV字溝38の底で規定するようになっている。
【0023】
ガイド部材37a・37bには、垂直軸回りで回動するロック部材39a・39bが枢着されている。このロック部材39a・39bは、その頂部が内側を向く略二等辺三角形をなす水平板40と、ガイド部材37a・37bのV字溝38に対応する部分を前後から挟むように水平板40のスロット外端側(以下外側)を向く部分から前後対称形に垂設された垂下片41とからなっている。
【0024】
水平板40の内側端の上面には、内側が尖った上面視が矢尻形をなすロック突起42が突設されている。このロック突起42は、スライド体の基部36a・36bの上壁に形成された切り欠き孔43から上方へ突出している。また水平板40の内側端とスライド体の基部36a・36bの上壁の内側端との間にはコイルばね44が張設されており、外力が作用しない状態では、水平板40の横方向中心線がスライド体33a・33bの移動中心線と平行に延在するようにされている。
【0025】
一対のスライド体33a・33bは、図示されないばね手段により、最接近位置へ向けて常時弾発付勢されると共に、そのV字溝38同士の間隔が8cmCDが通過し得ないようにその内側への移動限度位置が設定されている。そして、枠体32の上梁の下面における一対のスライド体33a・33bが最接近した位置でロック突起42の外側にてロック突起42と横一線に並ぶ位置に、一対のストッパ突起45が突設されている。
【0026】
ここでV字溝38と垂下片41との関係は、図5並びに図6に示すように、スロット3の挿入方向中心線上にその中心を置いた8cmCDの外周がV字溝38の底に突き当たった時に、垂下片41が8cmCDの外周にぎりぎり接触するかしないかとなるように定められている。
【0027】
次に本発明によるディスク挿入規制装置の作動要領について説明する。
【0028】
図4に示したように、8cmCDを左右方向の例えば右方に片寄せてスロット3に挿入すると、右方のガイド部材37bに枢着されたロック部材39bの垂下片41が8cmCDの外周に押されて水平板40が傾動する。しかし、左方のロック部材39aは、8cmCDの外周が垂下片41に当接しないので傾動しない。そのため、右方のロック突起42はストッパ突起45から外れるが、左方のロック突起42はストッパ突起45から外れない(図5の状態)。一対のスライド体33a・33bはラック/ピニオンからなる連動機構で連結されており、一方のロック突起42がストッパ突起45から外れただけでは共に離間方向へ移動し得ず、両ガイド部材37a・37bが最接近位置に保たれるため、8cmCDの挿入が阻止される。
【0029】
ここでスロット3の中心と8cmCDの中心とが合致しても(図6に示す状態)、8cmCDの外周輪郭の曲率では両ロック部材39a・39bの垂下片41が8cmCDの外周に接触しても両ロック部材39a・39bは回動しないため、両ガイド部材37a・37bの最接近位置が保たれて8cmCDの挿入が阻止される。
【0030】
12cmCDを挿入すると、12cmCDの外周輪郭の曲率だと一対のロック部材39a・39bの垂下片41に12cmCDの外周が同時に突き当たるようになっているので、一対のロック部材39が共に回動する。すると左右のロック突起42が対応するストッパ突起45から同時に外れるため、両スライド体33a・33bが外側へ移動可能となる(図7に示す状態)。両スライド体33a・33bはスロット3の中心から左右振り分けに動くため、12cmCDは自動的にセンタリングされて筐体内に挿入される。
【0031】
12cmCDが筐体内に所定量入り込むと、搬送機構11が起動して12cmCDが自動的に再生位置へ引き込まれる。
【0032】
12cmCDがスロット3を通過するに従って、両スライド体33a・33bはばね力の作用で最接近位置へ向けて移動する。ここでロック突起42の内端部とストッパ突起45の外端部とには共にテーパ面が形成されており、ストッパ突起45の外端側にロック突起42の内端が突き当たると、ロック突起42がストッパ突起45から逃げるようになっている。これにより、ロック突起42がストッパ突起45をすり抜け、最終的には、ロック突起42とストッパ突起45とが横一線に並ぶ両スライド体33a・33bの最接近位置保持状態に自動復帰する。
【0033】
排出の際は、ロック部材39a・39bが前後対称形をなしているので、挿入時と同様の要領で一対のロック部材39a・39bの垂下片41が12cmCDの外周で筐体内から押されてロックが解除され、両スライド体33a・33bがスロット3の中心から左右振り分けに動いて12cmCDの通過を許容する。12cmCDが排出されるのに応じて両スライド体33a・33bが最接近位置保持状態に自動復帰することは、上記の挿入時の動作と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明にかかるディスク挿入規制装置は、異径の円板状物体を選択的に通過させたい場合に等しく適用可能であり、DVDプレーヤにも勿論適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明装置の正面図である。
【図2】本発明装置の部分的な拡大正面図である。
【図3】本発明装置の部分的な斜視図である。
【図4】本発明装置のロック解除状態を示す部分的な平面図である。
【図5】本発明装置のロック状態を示す部分的な平面図である。
【図6】8cmCDの通過阻止状態を示す説明図である。
【図7】12cmCDの通過開始状態を示す説明図である。
【図8】本発明が適用されるCDドライブ装置の機構図である。
【符号の説明】
【0036】
3 ディスク挿入スロット
34a・34b ラック
35 ピニオン
37 ガイド部材
39 ロック部材
40 水平板
41 垂下片
42 ロック突起
44 コイルばね
45 ストッパ突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク挿入スロットから差し込まれた情報記録ディスクを筐体内の所定位置に自動的に引き込み且つエジェクト指令を与えると自動的に排出するディスク搬送機構を備えたディスクドライブ装置のためのディスク挿入規制装置であって、
前記スロットに沿って接離移動自在なようにラック/ピニオン機構を介して連動連結された一対のスライド体と、
小径ディスクの直径よりも最接近位置が小さな間隔となるように前記一対のスライド体のそれぞれに固設された一対のガイド部材と、
該一対のガイド部材のそれぞれに回動自在に設けられ且つ常時回動中立位置へ向けて付勢されたロック部材と、
最接近位置において回動中立位置にある前記一対のロック部材に係合可能に筐体と一体をなす部分に固定された一対のストッパ部材とを有し、
前記スロットの挿入方向中心線上に前記ディスクの中心を合致させた状態で前記一対のガイド部材に前記ディスクの外周を押し当てようとした時に、小径ディスクの場合は前記ストッパ部材との係合が外れる位置まで前記ロック部材が回動し得ず、大径ディスクの場合は前記ストッパ部材との係合が外れる位置まで前記ロック部材が回動し得るように各部の位置関係が設定されていることを特徴とするディスク挿入規制装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−127703(P2006−127703A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317897(P2004−317897)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(391022485)シンワ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】