説明

ディスク装置

【課題】ディスクの共振周波数を高い周波数へシフトさせることにより、ディスク装置の小型化を妨げることなく、耐振動性能を向上させる。
【解決手段】ディスク装置は、ディスク11に対して情報の読み取り又は書き込みを行うヘッド部と、ディスク11を載置するターンテーブル507と、ターンテーブル507との間でディスク11を挟持する回転可能なクランパ610とを備える。クランパ610は、ディスク11のクランプ領域11aに当接する第1の当接部610aと、ディスク11のデータ領域11bの表面(記録面の反対面)に当接する第2の当接部610bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク状の記録媒体に対し、情報の記録又は再生(以下、記録再生と称する。)を行うためのディスク装置に関し、特に、このディスク装置においてディスクを保持するクランプ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク装置では、ディスク状の記録媒体(以下、ディスクと称する。)を保持して回転させ、当該ディスクに対する情報の記録再生を行う。そのため、ディスク装置では、装置外部から伝達される振動や衝撃、装置内部の機構系で発生する振動、又はディスクの反りに起因する面振れによって生じる振動を抑制することで、安定した記録再生を実現することが重要である。
【0003】
ところで、近年のディスク装置では、ディスクの大容量化に伴い、その回転数が増加する傾向にある。例えば最内周ゾーンにおいて1倍速で回転させる場合について比較すると、CD(Compact Disc)を用いた場合には回転数が約570rpmであるのに対し、DVD(Digital Versatile Disc)では回転数が約1400rpmとなる。さらに、BD(Blu−ray Disc)では回転数が約2100rpmとなり、HD DVD(High Definition DVD)では回転数が約2700rpmとなる。
【0004】
このようにディスクの回転数が高くなるほど、自励振動の発生が顕著になる。また、ディスクの高密度化、つまり記録トラックの狭ピッチ化に伴い、振動の影響がより大きくなる(振動に対してより敏感になる)ことは明らかである。
【0005】
一般的なクランプ機構では、モータに取り付けられたターンテーブと、このターンテーブルに対して、ディスク回転軸方向にバネ又はマグネットにより付勢されているクランパとを有している。これらクランパ及びターンテーブルは、ディスクの内縁近傍のクランプ領域において、ディスクを挟持するよう構成されている。
【0006】
このような一般的なクランプ機構では、直径120mm、厚さ1.2mm、材質がポリカーボネートのCD、DVDなどのディスクをクランプ領域のみで挟持した場合、共振周波数は80Hz〜100Hz近傍となる。
【0007】
このようなディスク装置に関し、ディスクの反りを矯正する目的で、ディスクの内縁近傍と外周にそれぞれ当接する中央クランパと大クランパとを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2001−176158号公報(第3〜4頁、図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のディスク装置においては、外部からディスク回転軸方向の振動が伝達された場合に、ディスクの共振によりディスクが暴れ、光ヘッドとディスク面との距離が大きく変動することから、記録再生が正常に行われないという問題が生じており、耐振動性能の向上が課題となっている。
【0010】
例えば車載用ディスク装置では、外部から伝達される振動を抑制するため、ゴムやシリコンなどの単一材料で成型されたダンパ、あるいはゴムにオイルを封入するオイル封入ダンパが使用されている。しかしながら、いずれのダンパも、上述したような低い周波数(80〜100Hz)で十分な減衰効果を得るためには十分な防振有効体積が必要となるため、ディスク装置の小型化の妨げになるという問題がある。
【0011】
また、特許文献1に記載された技術では、ディスクの反りを抑制する効果は得られるものの、クランパの外径が大きいため、慣性モーメントが大きくなるという問題がある。
【0012】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、ディスクの共振周波数を高い周波数へシフトさせることで、ディスク装置の小型化に支障をきたすことなく、耐振動性能を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係るディスク装置は、ディスクに対して情報の読み取り又は書き込みを行うヘッド部と、ディスクを載置するターンテーブルと、ターンテーブルとの間でディスクを挟持する回転可能なクランパとを備えて構成され、クランパは、ディスクのクランプ領域に当接する第1の当接部と、ディスクのデータ領域の記録面の反対面に当接する第2の当接部とを有する。
【0014】
この発明に係るディスク装置は、また、ディスクに対して情報の読み取り又は書き込みを行うヘッド部と、ディスクを載置するターンテーブルと、ターンテーブルとの間でディスクを挟持する回転可能なクランパとを備えて構成され、クランパは、ディスクに対して3つ以上の当接部を有する。これら3つの当接部は、クランパの回転半径方向における位置が互いに異なり、当該3つ以上の当接部のうち少なくとも1つは、ディスクのクランプ領域に当接する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、共振周波数をより高い周波数へシフトすることができ、これにより、ディスク装置の小型化に支障をきたすことなく、耐振動性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るディスク装置10を上方から見た斜視図である。図2は、本発明の実施の形態1に係る再生ユニット200を下方から見た斜視図である。図3は、クランプ機構を取り除いて示す再生ユニット200の斜視図である。
【0017】
図1に示すように、ディスク装置10は、筐体100の内部に、ディスクの記録情報を再生するための再生ユニット200を有している。再生ユニット200は、この再生ユニット200全体の支持体である略平板状の支持ベース504(図3)を有している。この支持ベース504は、底面に圧入された複数(ここでは3つ)のダンパピン301(図2)を介して、ディスク装置10の筐体100の底板に設けられた複数(ここでは3つ)のオイル封入ダンパ302(図2)に保持されている。
【0018】
支持ベース504の図3に示す前端近傍には、ディスク11を載置して回転させるターンテーブル507が設けられている。ターンテーブル507は、支持ベース504に設けられた回路基板512上の円盤型モータ512aの回転軸に取り付けられ、支持ベース504の上側に配置されている。
【0019】
図2に示すように、支持ベース504の下側には、ディスク11に記憶された情報を読み取るための読み取りヘッド部513が、スライド可能に取り付けられている。この読み取りヘッド部513は、支持ベース504の基端部(ターンテーブル507が設けられた前端と反対側の端部)からターンテーブル507にかけて配設された送りねじ軸551とガイド軸552とにより、ディスク11の半径方向に移動可能に支持されている。また、支持ベース504には、読み取りヘッド部513の移動領域に対応した開口である情報読み取り窓504dが設けられている。
【0020】
なお、ここでは、ターンテーブル507の回転軸の方向を鉛直方向とし、読み取りヘッド部513からディスク11に向かう方向を「上方」、その反対方向を「下方」として各部の説明を行う。但し、これらはあくまで説明の便宜のためのものであって、ディスク装置10の使用状態における向きを限定するものではない。
【0021】
支持ベース504においてターンテーブル507に隣接した位置には、支持部材553が取り付けられている。この支持部材553には、読み取りヘッド部513の移動等のための駆動力を発生するモータ554と、このモータ554の駆動力を伝達するギア列(図示せず)が設けられ、これらギア列は抜け止めとしてのカバー556により覆われている。
【0022】
図3に示すように、支持ベース504の基端部の両側(図3における右奥及び左奥)は、上方に垂直に屈曲されており、それぞれ垂直折り曲げ片504c,504fを形成している。これら垂直折り曲げ片504c,504fには、支軸504e,504gがそれぞれ設けられている。これら支軸504e,504gは、互いに同軸であり、次に説明するクランプ板508の回動軸となるものである。
【0023】
次に、再生ユニット200において、ディスク11をターンテーブル507に押圧保持するクランプ機構について説明する。図1に示すように、支持ベース504の上側には、略板状のクランプ板508が配置されている。このクランプ板508は、支持ベース504の垂直折り曲げ片504c,504fにそれぞれ対向する一対の垂直折り曲げ片508b,508b(図1では一方の垂直折り曲げ片508bは隠れている)を有している。これら垂直折り曲げ片508b,508bには、上述した支軸504e,504gに係合する穴(図示せず)が形成されており、これによりクランプ板508は、支持ベース504の支軸504e,504gを中心として回動自在に支持されている。
【0024】
クランプ板508の先端には、ディスク11をターンテーブル507に対して押圧することで保持するクランパ610が支持されている。このクランパ610は、クランプ板508の板面に対して垂直な軸を中心として回動自在に構成されている。また、クランプ板508の基端部(支軸504e,504g側の端部)と、支持ベース504の基端部との間には、引張コイルバネ509(図2)が設けられており、図1に矢印Xで示すように、クランプ板508を支持ベース504側に揺動させるよう付勢している。
【0025】
図4及び図5は、クランパ610、ディスク11及びターンテーブル507を示す分解斜視図及び側断面図である。図4及び図5に示すように、クランパ610は、円板状の部材であって、その下面(ディスク11側の面)に、それぞれディスク11に当接する第1の当接部610aと第2の当接部610bとを有している。第1の当接部610a及び第2の当接部610bは、いずれも、クランパ610の回転中心(すなわちディスク11の回転中心)を中心とする環状の凸部として形成されている。
【0026】
クランパ610の第1の当接部610a及び第2の当接部610bの形成位置について、さらに説明する。
【0027】
クランパ610の第1の当接部610aは、ディスク11のクランプ領域11aに当接する位置に形成されている。ここで、ディスク11のクランプ領域11aとは、例えば、CDの場合には、直径26mm〜33mmの範囲(すなわちディスク中心から半径13mm〜16.5mmの範囲)である。DVDの場合には、直径22mm〜33mmの範囲(すなわちディスク中心から半径11mm〜16.5mmの範囲)である。BDの場合には、直径23.5mm〜32.5mmの範囲(すなわちディスク中心から半径11.75mm〜16.25mm)である。HD DVDの場合には、直径22mm〜33mmの範囲(すなわちディスク中心から半径11mm〜16.5mmの範囲)である。
【0028】
また、ディスク11のデータ領域11bとは、例えば、CDの場合には、直径46mm〜116mmの範囲(すなわちディスク中心から半径23mm〜58mmの範囲)である。DVDの場合には、直径45.2mm〜116mmの範囲(すなわちディスク中心から半径22.6mm〜58mmの範囲)である。BDの場合には、直径44mm〜116.2mmの範囲(すなわちディスク中心から半径22mm〜58.1mmの範囲)である。HD DVDの場合には、直径46.6mm〜116mmの範囲(すなわちディスク中心から半径23.3mm〜58mmの範囲)である。クランパ610の第2の当接部610bは、ディスク11のデータ領域11bの記録面の反対面(以下、表面と称する。)に当接する位置に形成されている。ここで、記録面とは、両面記録可能な媒体であっても、実際にその時に光学的に記録・再生が行われている面のことを称する。なお、片面のみが記録可能な媒体であれば、その面が記録面であることは言うまでもない。
【0029】
次に、このように構成されたディスク装置の作用について説明する。
ディスク11は、記録面(データが記録された面)を下方に向けた状態で、図示しないローディング機構によりディスク装置10内に搬送され、ターンテーブル507上に載置される。このとき、図5に示すように、ディスク11のセンターホール11cの内側に、ターンテーブル507の上面に形成されたリング状の凸部507aが下方から係合する。また、ディスク11のクランプ領域11aの下面には、ターンテーブル507の外周近傍に形成されたリング状の凸部507bが下方から当接する。
【0030】
さらに、クランパ610を保持するクランプ板508(図1)が、引っ張りコイルバネ509の付勢力によりターンテーブル507側に揺動し、クランパ610とターンテーブル507との間でディスク11を挟持する。このとき、クランパ610の第1の当接部610aはディスク11のクランプ領域11aを押圧し、第2の当接部610bはディスク11のデータ領域11bの表面を押圧する。この状態で、円盤型モータ512aによりターンテーブル507が回転し、クランパ610及びディスク11も一体となって回転し、読み取りヘッド部513によりディスク11からの情報の読み出しが行われる。
【0031】
このとき、仮にディスク装置10の外部からディスク11の回転軸方向の振動が伝達され、ディスク11の共振が生じたとしても、クランパ610がディスク11のクランプ領域11aとデータ領域11bの表面とを押圧しているため、ディスク11の共振周波数を高い周波数へシフトさせることが可能となる。
【0032】
このように、ディスク11の共振周波数を高い周波数にシフトさせることにより、比較的小さな防振有効体積でも十分な減衰効果を得ることができる。そのため、例えば図2に示したダンパピン301やオイル封入ダンパ302のようにコンパクトな防振手段を設けるだけで、耐振動性能を向上することができる。すなわち、ディスク装置の小型化を実現しつつ、耐振動性能を向上することができる。
【0033】
以上説明したように、実施の形態1に係るディスク装置によれば、クランパ610の第1の当接部610aと第2の当接部610bとにより、ディスク11のクランプ領域11aとデータ領域11bの表面とを押圧するようにしたので、ディスク11のクランプ領域11aだけを押圧するようにした場合(図15参照)に比べ、ディスク11の共振周波数を高い周波数へシフトさせることができる。その結果、ディスク装置の小型化を実現しつつ、耐振動性能を向上することができる。
【0034】
また、ディスク11がクランパ610側に反っていた場合(すなわち、ディスク11の外側が持ち上がるように反っていた場合)であっても、クランパ610の第1の当接部610aと第2の当接部610bとでディスク11のクランプ領域11aとデータ領域11bの表面の両方を押圧することにより、ディスク11の反りを矯正することができる。
【0035】
また、本実施の形態では、第1の当接部610a及び第2の当接部610bが、クランパ61の回転円周方向に延在しているため、ディスク11を一様に押圧することができ、ディスク11の回転時の姿勢を安定させることができる。
【0036】
変形例.
図6及び図7は、実施の形態1の変形例に係るクランパ620を示す分解斜視図及び側断面図である。
【0037】
上述した実施の形態1では、クランパ610の第2の当接部610bが環状の凸部として形成されていたが、この変形例では、クランパ620の第2の当接部622が、円周方向に配置された3つの凸部622A,622B,622Cにより形成されている。
【0038】
図6及び図7に示すように、この変形例に係るクランパ620は、ディスク11に当接する第1の当接部621と第2の当接部622とを有している。第1の当接部621は、上述した実施の形態1の第1の当接部610aと同様の環状の凸部であり、ディスク11のクランプ領域11aに当接する位置に形成されている。
【0039】
一方、第2の当接部622は、円周方向に配置された第1、第2及び第3の凸部622A,622B,622Cにより構成されている。これらの凸部622A,622B,622Cの下面は、それぞれ、第1、第2及び第3の当接面622a,622b,622cとなっており、ディスク11のデータ領域11bの表面(記録面の反対面)に当接するよう構成されている。また、第1〜第3の当接面622a,622b,622cは、これらを相互に結ぶことによってできる三角形の内側に、ディスク11のセンターホール11cが位置するように形成されている。
【0040】
なお、図6では、第1〜第3の凸部622A,622B,622Cが、円板状に形成されているが、このような形状に限定されるものではない。また、第1の当接部621が、図6に示した第2の当接部622のように複数の当接部であってもよい。
【0041】
この変形例によれば、クランパ620の第1の当接部621と第2の当接部622(第1、第2及び第3の当接面622a,622b,622c)とにより、ディスク11のクランプ領域11aとデータ領域11bの表面とを押圧するようにしたので、実施の形態1と同様、ディスク11の共振周波数を高い周波数へシフトさせ、耐振動性能を向上することができる。
【0042】
実施の形態2.
図8及び図9は、本発明の実施の形態2に係るディスク装置のクランパ630を示す分解斜視図及び側断面図である。図8及び図9において、実施の形態1のディスク装置10の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付す。また、実施の形態2のディスク装置は、クランパ630の構成を除き、実施の形態1のディスク装置10と同様に構成されている。以下、クランパ630の構成について説明する。
【0043】
図8及び図9に示すように、クランパ630は、ディスク11に当接する第1の当接部630a、第2の当接部630b及び第3の当接部630cを有している。第1、第2及び第3の当接部630a,630b,630cは、いずれもクランパ630の回転中心を中心とする環状の凸部であり、クランパ630の回転半径方向の位置が互いに異なるものである。
【0044】
クランパ620の第1の当接部630aは、ディスク11のクランプ領域11aに当接する位置に形成されている。第2の当接部630bは、ディスク11のデータ領域11bの表面(記録面の反対面)に当接する位置に形成されている。第3の当接部630cは、ディスク11のデータ領域11b(第2の当接部630bが当接する領域よりも外側の領域)の表面に当接する位置に形成されている。
【0045】
本実施の形態によれば、第1の当接部630aがディスク11のクランプ領域11aを押圧し、第2及び第3の当接部630b,630cがディスク11のデータ領域11bの表面を押圧するため、ディスク11の共振周波数を高い周波数へシフトさせ、耐振動性能を向上することができる。
【0046】
また、第1の当接部630aがディスク11のクランプ領域11aを押圧し、第2及び第3の当接部630b,630cがディスク11のデータ領域11bの表面を押圧するため、ディスク11がクランパ630側に反っていた場合には、その反りを、より確実に矯正することができる。
【0047】
なお、ここでは第1の当接部630aがディスク11のクランプ領域11aを押圧し、第2及び第3の当接部630b,630cがディスク11のデータ領域11bの表面を押圧する構成例について説明したが、クランプ領域11aに当接する当接部が2つ以上であってもよく、あるいはデータ領域11bの表面に当接する当接部が3つ以上でもあってもよい。いずれの場合も、同様の効果が得られることはいうまでもない。
【0048】
実施の形態3.
図10及び図11は、本発明の実施の形態3に係るディスク装置のクランパ640を示す分解斜視図及び側断面図である。図10及び図11において、実施の形態1のディスク装置10の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付す。また、実施の形態3のディスク装置は、クランパ640の構成を除き、実施の形態1のディスク装置10と同様に構成されている。以下、クランパ640の構成について説明する。
【0049】
上述した実施の形態1(図4)では、クランパ610の第1及び第2の当接部610a,610bは円板状の部分の下面に形成されていたが、この実施の形態3では、クランパ640の第2の当接部640bが環状部材として構成されており、第1の当接部640aにスポーク631を介して支持されている。
【0050】
すなわち、クランパ640は、ディスク11のクランプ領域11aとほぼ同径の円板状部材であって、その外周に沿って環状の凸部としての第1の当接部640aが形成されている。さらに、第1の当接部640aを有する円板状の部材の外周から、複数(ここでは5本)の可撓性を有するスポーク631が放射状に延在しており、これらのスポーク631の先端に、環状部材としての第2の当接部640bが固定されている。
【0051】
第1及び第2の当接部640a,640bは、いずれもクランパ640の回転中心を中心とした環状に形成され、第1の当接部640aは、ディスク11のクランプ領域11aに当接する位置に形成され、第2の当接部640bは、ディスク11のデータ領域11bの表面(記録面の反対面)に当接する位置に形成されている。
【0052】
クランパ640の材質が樹脂である場合には、スポーク631を樹脂成形し、可撓性を付与することができる。この場合、ディスク11を挟持する前の初期状態では、第2の当接部640bが第1の当接部640aよりもターンテーブル507側(すなわち下方)に位置するように構成することができる。
【0053】
図12(A)及び(B)は、この実施の形態3におけるクランパ640とターンテーブル507によるディスク11の挟持動作を示す側面図である。図12(A)は、ディスク11を挟持する前の状態を示しており、図12(B)は、ディスク11を挟持した状態を示している。
【0054】
図12(A)に示すように、ディスク11を挟持する前の状態では、第2の当接部640bが、第1の当接部640a(図12(A)では隠れている)よりも下側、すなわちターンテーブル507側に位置している。図12(B)に示すように、ディスク11を挟持すると、第1の当接部640aがディスク11のクランプ領域11aを押圧し、第2の当接部640bがディスク11のデータ領域11bの表面を押圧する。
【0055】
このとき、第2の当接部640bが可撓性を有するスポーク631の先端に取り付けられており、なお且つ第1の当接部640aよりもターンテーブル507側に位置しているため、ディスク11がターンテーブル507側に反っていた場合(すなわち、図12(A)に示した反りとは反対側に反っていた場合)であっても、第1の当接部640a及び第2の当接部640bを確実にディスク11に当接させることができる。
【0056】
また、ディスク11がクランパ640側に反っていた場合(図12(A))には、スポーク631の弾性力により、第1の当接部640aと第2の当接部640bとでディスク11を押圧し、ディスク11の反りを矯正することができる。このように、ディスク11がいずれの方向に反りを有していても、共振周波数を高い周波数へシフトさせ、耐振動性能を向上することができる。
【0057】
なお、実施の形態3で説明したようにスポーク631を介して当接部を連結する構成は、実施の形態1の変形例(図6)及び実施の形態2(図8)にも適用することができる。例えば、スポーク631の先端に、実施の形態1の変形例(図6)で説明した複数の当接面622a,622b,622cを有する第2の当接部622を設けてもよい。また、クランパ640の円板状部分の下面に、実施の形態3(図8)で説明した第1の当接部630aを形成し、その外側にスポーク631を介して第2及び第3の当接部630b,630cを連結してもよい。いずれも場合も、同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0058】
このように、本実施の形態によれば、第1の当接部640aと第2の当接部640bとを可撓性を有するスポーク631で連結しているため、ディスク11がいずれの方向に反りを有していても、共振周波数を高い周波数へシフトさせ、これにより耐振動性能を向上することができる。
【0059】
実施の形態4.
図13及び図14は、本発明の実施の形態4に係るディスク装置のクランパ650を示す分解斜視図及び側断面図である。図13及び図14において、実施の形態1のディスク装置10の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付す。また、実施の形態4のディスク装置は、クランパ650の構成を除き、実施の形態1のディスク装置10と同様に構成されている。以下、クランパ650の構成について説明する。
【0060】
クランパ650は、ディスク11に当接する第1の当接部650aと第2の当接部650bとを有している。第1及び第2の当接部650a,650bは、いずれも実施の形態1で説明した第1及び第2の当接部610a,610bと同様に構成されている。
【0061】
本実施の形態では、第1の当接部650aの底面(当接面)には、例えばシリコンで形成された第1の制振材700aが貼り付けられている。また、第2の当接部650bの底面には、例えばシリコンで形成された第2の制振材700bが貼り付けられている。
【0062】
第1の当接部650aがディスク11のクランプ領域11aを押圧し、第2の当接部650bがディスク11のデータ領域11bの表面を押圧する際、第1及び第2の当接部650a,650bに第1及び第2の制振材700a,700bが貼り付けられているため、ディスク11の凸凹や反りに応じて第1及び第2の制振材700a,700bが若干変形し、ディスク11に対するクランパ650の当接面を大きく確保することができる。
【0063】
また、クランパ650が、第1及び第2の制振材700a,700bを介してディスク11を押圧するため、ディスク11又はクランパ650の共振があったとしても、その影響を抑制することができる。
【0064】
このように、本実施の形態によれば、第1及び第2の当接部650a,650bに第1及び第2の制振材700a,700bを設けたことにより、ディスク11に対するクランパ650の当接面を十分に確保すると共に、ディスク11やクランパ650の共振の影響を抑制し、耐振動性能をさらに向上することができる。
【0065】
なお、ここでは、実施の形態1と同様に構成されたクランパ650の当接面に制振材を貼付ける場合について説明したが、実施の形態2,3に挙げたクランパの当接部に制振材を貼付けてもよい。例えば、実施の形態2で説明した第1〜第3の当接面630a,630b,630cに、シリコン等からなる制振材を取り付けても良い。また、実施の形態3で説明した第1及び第2の当接部640a,640b(スポーク631により互いに連結されている)の各当接面に、シリコン等からなる制振材を取り付けても良い。いずれも場合も、同様の効果が得られることはいうまでもない。
【0066】
比較例.
図15は、本発明の実施の形態に対する比較例としてのクランプ機構を示す断面図である。図15に示すクランプ機構は、円盤型モータ512aに固定されたターンテーブル507と、このターンテーブル507に対し、ディスク回転軸方向にバネ又はマグネットにより付勢されているクランパ600とを有している。クランパ600及びターンテーブル507は、ディスク11のクランプ領域11aを挟持するよう構成されている。
【0067】
図15に示した比較例では、クランパ600及びターンテーブル507が、ディスク11のクランプ領域11aのみを挟持しているため、ディスク11が例えば直径120mm、厚さ1.2mm、材質がポリカーボネートのCD、DVDなどであった場合には、共振周波数は80Hz〜100Hz近傍となる。このような低い周波数で十分な減衰効果を得るためには、ダンパ(例えばオイル封入ダンパ)の防振有効体積を大きくしなければならず、ディスク装置の小型化の妨げになる。
【0068】
これに対し、上述した各実施の形態のディスク装置では、クランパが、ディスク11のクランプ領域11aとデータ領域11bの表面とを押圧するので、図15に示したようにディスク11のクランプ領域11aだけを押圧する場合に比べ、ディスク11の共振周波数を高い周波数へシフトさせることができる。そのため、ダンパの防振有効体積が比較的小さくて済み、これにより、ディスク装置の小型化を実現しつつ、耐振動性能を向上することができる。
【0069】
なお、上述した各実施の形態では、読み取りヘッド部513(図3)を備えた再生ユニット200を有するディスク装置10について説明したが、書き込みヘッド部を有するディスク装置であってもよい。また、ディスク11としては、CD,DVD,BD,HD DVD等に限らず、他の種類のディスクであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態1に係るディスク装置の再生ユニットの天面斜視図である。
【図2】図1に示した再生ユニットの底面斜視図である。
【図3】クランプ機構を取り除いた再生ユニットの斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るクランプ機構を説明するための分解斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るディスク装置のクランプ機構を説明するための側断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1の変形例に係るディスク装置のクランプ機構を示す分解斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態1の変形例に係るディスク装置のクランプ機構を示す側断面図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係るディスク装置のクランプ機構を示す分解斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係るディスク装置のクランプ機構を示す側断面図である。
【図10】本発明の実施の形態3に係るディスク装置のクランプ機構を示す分解斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態3に係るディスク装置のクランプ機構を示す側断面図である。
【図12】本発明の実施の形態3に係るクランプ動作を示す側面図である。
【図13】本発明の実施の形態4に係るディスク装置のクランプ機構を示す分解斜視図である。
【図14】本発明の実施の形態4に係るディスク装置のクランプ機構を説明するための断面図である。
【図15】比較例に係るディスク装置のクランプ機構を示す断面図である。
【符号の説明】
【0071】
10 ディスク装置、 11 ディスク、 11a クランプ領域、 11b データ領域表面、 11c センターホール、 100 筐体、 200 再生ユニット、 301 ダンパピン、 302 オイル封入ダンパ、 504 支持ベース、 504c,504f 垂直折り曲げ片、 508b 垂直折り曲げ片、 504d 情報読み取り窓、 504e,504g 支軸、 507 ターンテーブル、 508 クランプ板、 509 引張コイルバネ、 512 回路基板、 512a 円盤型モータ、 513 読み取りヘッド部、 551 送りねじ軸、 552 ガイド軸、 553 支持部材、 554 モータ、 556 カバー、 610,620,630,640,650 クランパ、 610a,621,630a,640a,650a 第1の当接部、 610b,622,630b,640b,650b 第2の当接部、 630c 第3の当接部、 622a 第1の当接面、 622b 第2の当接面、 622c 第3の当接面、 631 スポーク、 700a 第1の制振材、 700b 第2の制振材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクに対し、情報の読み取り又は書き込みを行うヘッド部と、
前記ディスクを載置するターンテーブルと、
前記ターンテーブルとの間で前記ディスクを挟持する回転可能なクランパと
を備え、
前記クランパは、
前記ディスクのクランプ領域に当接する第1の当接部と、
前記ディスクのデータ領域の記録面の反対面に当接する第2の当接部とを有することを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
前記第1の当接部は、前記クランパの回転円周方向に環状に延在していることを特徴とする請求項1に記載のディスク装置。
【請求項3】
前記第2の当接部は、前記クランパの回転円周方向に環状に延在していることを特徴とする請求項1又は2に記載のディスク装置。
【請求項4】
前記第2の当接部は、前記クランパの回転円周方向に複数配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のディスク装置。
【請求項5】
前記クランパの回転半径方向において、前記第2の当接部の外側又は内側に、前記ディスクの前記データ領域の前記反対面に当接する第3の当接部をさらに設けたことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のディスク装置。
【請求項6】
前記第1の当接部と前記第2の当接部とが、可撓性を有するスポークにより連結されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載のディスク装置。
【請求項7】
前記第1の当接部及び前記第2の当接部において、前記ディスクに当接する各当接面に、制振材が取り付けられていることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載のディスク装置。
【請求項8】
ディスクに対し、情報の読み取り又は書き込みを行うヘッド部と、
前記ディスクを載置するターンテーブルと、
前記ターンテーブルとの間で前記ディスクを挟持する回転可能なクランパと
を備え、
前記クランパは、前記ディスクに対して3つ以上の当接部を有し、
前記3つの当接部は、前記クランパの回転半径方向における位置が互いに異なり、
前記3つ以上の当接部のうち少なくとも1つは、前記ディスクのクランプ領域に当接することを特徴とするディスク装置。
【請求項9】
前記3つ以上の当接部のうち少なくとも1つは、前記ディスクのデータ領域の記録面の反対面に当接することを特徴とする請求項8に記載のディスク装置。
【請求項10】
前記3つ以上の当接部のうち、前記ディスクのクランプ領域に当接する当接部と、前記ディスクの前記データ領域の前記反対面に当接する当接部とが、可撓性を有するスポークにより連結されていることを特徴とする請求項9に記載のディスク装置。
【請求項11】
前記3つの当接部において前記ディスクに当接する各当接面に、制振材が取り付けられていることを特徴とする請求項8から10までのいずれか1項に記載のディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−130134(P2008−130134A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312398(P2006−312398)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】