説明

ディスク記録再生装置

【課題】 簡単な構成で、偏重心或いは偏心等が生じているディスクによるトラバース
メカの振動が防止可能な、ディスク記録再生装置を提供する。
【解決手段】 回動軸2aの外周上で軸受1aの天井面1abと係合部1bの先端面1
baとで囲まれた部分に、突起2aaを設けた構成としている。同図(a)に示すディス
クアンクランプ時には、軸受1aの天井面1abとの間及び係合部1bの先端面1baと
の間に隙間が生じている状態であり、同図(b)に示すディスククランプ時には、回動軸
2aが回転して突起2aaが係合部1bの先端面1baを軽く押圧する状態となる。この
とき、回動軸2aは係合部1bの先端面1baからの反作用により、前方に位置する軸受
1aの内側面1aaと密着するので、これにより、枢着部Aにおけるベース2の前後方向
のガタを無くし、偏重心或いは偏心等が生じているディスクの回転に起因する振動を抑制
することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD,DVD等のディスクに対して記録或いは再生を行うディスク記録再生
装置に関するものであり、特に、ディスク回転時等における振動防止構造に関するもので
ある。
【背景技術】
【0002】
従来より、ディスク記録再生装置として、ディスクを載置したディスクトレイを本体内
に移動させ、本体内に設けたディスクホルダとターンテーブルとの間にディスクをクラン
プして、ディスクに対して記録或いは再生を行うようにしたものが知られている。
【0003】
図3は、このような従来のディスク記録再生装置の主要部の右側面図である。同図に示
すように、装置内に設けられたシャーシ1の後方に配した枢着部Aには、ベース2が回動
自在に枢着(遊嵌)されている(いわゆるトラバースメカ)。ベース2には、装置内に移
送された図示しないディスクを回転駆動するターンテーブル3や、図示しないピックアッ
プが配設されている。なお、同図ではターンテーブル3を回転させるスピンドルモータは
図示を省略しており、またベース2の外形は隠れ線も実線で示してある。また、同図はデ
ィスクアンクランプ時の状態を示している。
【0004】
枢着部Aにおいては、シャーシ1側に設けられた軸受1aに対し、ベース2側に設けら
れた回動軸2aが軸支され、これによりベース2がシャーシ1に対して回動自在に枢支さ
れている。なお1bは、回動軸2aを軸受1aに填め込んだ際にこの回動軸2aと係合す
る係合部であり、回動軸2aが軸受1aから外れないように係止する働きを持つ。また通
常、シャーシ1及びベース2は、機械的特性が優れた樹脂材料を用いて成型される。ベー
ス2は回動軸2aを中心に、図示しない駆動手段によりシャーシ1に対して回動駆動され
、ディスクのクランプ及びアンクランプを行う。
【0005】
図4は、上記従来のディスク記録再生装置の枢着部及びその付近を示す図であり、同図
(a)はディスクアンクランプ時の状態、同図(b)はディスククランプ時の状態をそれ
ぞれ示している。同図(a)では、ベース2が回動軸2aを中心に下方に旋回しており、
上記ターンテーブル3はディスククランプ位置から下がった状態となっている。一方、同
図(b)では、(a)の状態からベース2が回動軸2aを中心に上方に旋回して水平状態
となっており、上記ターンテーブル3はディスククランプ位置となっている。
【0006】
同図に示すように、ベース2の回動軸2aとシャーシ1の係合部1bの先端面1baと
の間には、隙間Bが生じる構造となっている。或いは回動軸2aと軸受1aの内側面1a
aとの間に隙間Bが生じても良い。また、回動軸2aと軸受1aの天井面1abとの間に
は、隙間Cが生じる構造となっている。なお、回動軸2aは自重により軸受1aの底面1
ac上に載っている。つまり、ベース2はシャーシ1に対して、枢着部Aで前後方向及び
上下方向にガタが生じる構造としている。これは、回動軸2aと軸受1aとの嵌合の精度
を上げようとしても、樹脂成型品の寸法管理が困難であり、また温度による回動軸2aの
膨張を考慮すると、所定の隙間を保っておく方が良いためである。
【0007】
ところが、偏重心或いは偏心等が生じているディスクをターンテーブル3に載置し、記
録或いは再生状態とした場合、これによりベース2はガタの範囲内で前後方向に、また著
しい場合には上下方向にも振動を発生するために、このベース2に配設された図示しない
ピックアップに振動が伝達され、その影響でディスクに対するデータの書き込み或いは読
み取りが不可能となるおそれがある。
【0008】
そこで、このような振動を防止可能とした光ディスク再生装置が特許文献1に開示され
ている。具体的には、光ディスクを再生駆動する駆動部を有するトラバースメカ部を載置
したトラバースホルダーと、上記トラバースホルダーの一端が枢着部に回動自在に遊嵌さ
れたメカベースと、上記枢着部を一方向に偏倚する偏倚手段とを具備して成る構成として
いる。
【0009】
その他、トラバース部分に緩衝材を設けて振動を防止するようにしたディスク装置が種
々開示されている(例えば、特許文献2〜特許文献5参照)。
【特許文献1】特開2004−118979号公報
【特許文献2】特開2002−008345号公報
【特許文献3】特開2004−152388号公報
【特許文献4】特開2004−079106号公報
【特許文献5】特開2003−123456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているような構成では、偏倚手段として圧縮
コイルバネが用いられており、この部品及びその取付機構が別途必要となり、コストアッ
プとなる。また、軸受部を常に押圧するのでこれに負担が掛かり、軸との間で摩耗が発生
するおそれがある上、トラバース動作に余分な駆動力が必要となる。他の特許文献におい
ても、緩衝材という余分な部品が必要であり、同様の問題が発生する。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑み、簡単な構成で、偏重心或いは偏心等が生じている
ディスクによるトラバースメカの振動が防止可能な、ディスク記録再生装置を提供するこ
とを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明では、ディスクを記録或いは再生駆動する駆動部を有
するトラバースメカ部と、前記トラバースメカ部の一端が枢着部に回動自在に遊嵌された
シャーシとを備え、前記枢着部において、前記トラバースメカ部の回動軸が前記シャーシ
の軸受に填め込まれたディスク再生装置であって、前記回動軸の外周上に突起を設け、デ
ィスククランプ時に前記回動軸が回転して、前記突起が前記軸受の所定の内面を押圧し、
この反作用により前記回動軸が前記軸受の他の内面に密着するようにしてなることを特徴
とする。
【0013】
更に詳しくは、ディスクを記録或いは再生駆動する駆動部を有するトラバースメカ部と
、前記トラバースメカ部の一端が枢着部に回動自在に遊嵌されたシャーシとを備え、前記
枢着部において、前記トラバースメカ部の回動軸が前記シャーシの軸受に填め込まれ、こ
れが外れないよう係合部により係止されたディスク再生装置であって、前記回動軸の外周
上に突起を設け、ディスククランプ時に前記回動軸が回転して、前記突起が前記係合部の
先端面を押圧し、この反作用により前記回動軸が前記軸受の内側面に密着するようにして
なることを特徴とする。
【0014】
或いは、前記回動軸の外周上に突起を設け、ディスククランプ時に前記回動軸が回転し
て、前記突起が前記係合部の先端面上端の面取り部を押圧し、この反作用により前記回動
軸が前記軸受の内側面及び天井面に密着するようにしてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な構成で、偏重心或いは偏心等が生じているディスクによるトラ
バースメカの振動が防止可能な、ディスク記録再生装置を提供することができる。
【0016】
具体的には、トラバースメカ部の回動軸に突起を設け、これによりディスククランプ時
に回動軸が軸受の内面に密着する構成のみとしたので、余分な部品やその取付機構が不用
であり、軸受部にも負担が掛からず、トラバース動作にも余分な駆動力を要せず、コスト
アップなしでトラバースメカの振動が防止可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本ディスク
記録再生装置の基本構成は、上記図3,図4で示した従来の構成と同様であり、その説明
を適宜省略する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例1に係るディスク記録再生装置の枢着部及びその付近を示す図
であり、同図(a)はディスクアンクランプ時の状態、同図(b)はディスククランプ時
の状態をそれぞれ示している。同図(a)では、ベース2が回動軸2aを中心に下方に旋
回しており、上記ターンテーブル3はディスククランプ位置から下がった状態となってい
る。一方、同図(b)では、(a)の状態からベース2が回動軸2aを中心に上方に旋回
して水平状態となっており、上記ターンテーブル3はディスククランプ位置となっている

【0019】
本実施例では、回動軸2aの外周上で軸受1aの天井面1abと係合部1bの先端面1
baとで囲まれた部分に、側面視山形状の突起2aaを設けた構成としている。この突起
2aaの頂点は略直角となっており、同図(a)に示すディスクアンクランプ時には、軸
受1aの天井面1abとの間及び係合部1bの先端面1baとの間に隙間が生じている状
態であり、同図(b)に示すディスククランプ時には、回動軸2aが回転して突起2aa
が係合部1bの先端面1baを軽く押圧する状態となる。
【0020】
このとき、回動軸2aは係合部1bの先端面1baからの反作用により、前方に位置す
る軸受1aの内側面1aaと密着するので、これにより、枢着部Aにおけるベース2の前
後方向のガタを無くし、偏重心或いは偏心等が生じているディスクの回転に起因する振動
を抑制することができる。この場合、回動軸2aの前後部で生じる摩擦力により、枢着部
Aにおけるベース2の上下方向の振動も或る程度抑えられる。
【実施例2】
【0021】
図2は、本発明の実施例2に係るディスク記録再生装置の枢着部及びその付近を示す図
であり、同図(a)はディスクアンクランプ時の状態、同図(b)はディスククランプ時
の状態をそれぞれ示している。同図(a)では、ベース2が回動軸2aを中心に下方に旋
回しており、上記ターンテーブル3はディスククランプ位置から下がった状態となってい
る。一方、同図(b)では、(a)の状態からベース2が回動軸2aを中心に上方に旋回
して水平状態となっており、上記ターンテーブル3はディスククランプ位置となっている

【0022】
本実施例では、回動軸2aの外周上で軸受1aの天井面1abと係合部1bの先端面1
baの上端に設けた面取り部1bbとで囲まれた部分に、側面視鉤状の突起2abを設け
た構成としている。この突起2abは、同図(a)に示すディスクアンクランプ時には、
軸受1aの天井面1abとの間及び係合部1bの先端面1baの上記面取り部1bbとの
間に隙間が生じている状態であり、同図(b)に示すディスククランプ時には、回動軸2
aが回転して突起2abが面取り部1bbを軽く押圧する状態となる。
【0023】
このとき、回動軸2aは面取り部1bbからの反作用により、軸受1aの底面1acか
ら浮き上がった状態で、前方に位置する軸受1aの内側面1aa及び上方に位置する軸受
1aの天井面1abとそれぞれ密着するので、これにより、枢着部Aにおけるベース2の
前後及び上下方向のガタを無くし、偏重心或いは偏心等が生じているディスクの回転に起
因する振動を抑制することができる。
【0024】
その他、上記回動軸に突起を設ける代わりに、回動軸の断面形状を円以外の形状、例え
ば楕円形状や卵形、或いはティアドロップ形(涙形)等として、ディスククランプ時に回
動軸が前後方向或いは上下方向に長い状態となり、軸受内面に密着するようにした構成と
しても良い。
【0025】
なお、上記各実施例のうち何れを採用するかについては、ディスク記録再生時のベース
2の基準位置を軸受1aの天井面1abとするか底面1acとするかによって変わってく
るものであり、任意に選択可能である。また、特許請求の範囲で言う軸受の内面とは、実
施例における軸受の天井面,内側面,底面,及び係合部の先端面,面取り部を含むもので
ある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1に係るディスク記録再生装置の枢着部及びその付近を示す図。
【図2】実施例2に係るディスク記録再生装置の枢着部及びその付近を示す図。
【図3】従来のディスク記録再生装置の主要部の右側面図。
【図4】従来のディスク記録再生装置の枢着部及びその付近を示す図。
【符号の説明】
【0027】
1 シャーシ
1a 軸受
1aa 内側面
1ab 天井面
1ac 底面
1b 係合部
1ba 先端面
2 ベース
2a 回動軸
2aa 突起
2ab 突起
3 ターンテーブル
1bb 面取り部
A 枢着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクを記録或いは再生駆動する駆動部を有するトラバースメカ部と、前記トラバー
スメカ部の一端が枢着部に回動自在に遊嵌されたシャーシとを備え、前記枢着部において
、前記トラバースメカ部の回動軸が前記シャーシの軸受に填め込まれ、これが外れないよ
う係合部により係止されたディスク再生装置であって、
前記回動軸の外周上に突起を設け、ディスククランプ時に前記回動軸が回転して、前記
突起が前記係合部の先端面を押圧し、この反作用により前記回動軸が前記軸受の内側面に
密着するようにしてなることを特徴とするディスク記録再生装置。
【請求項2】
ディスクを記録或いは再生駆動する駆動部を有するトラバースメカ部と、前記トラバー
スメカ部の一端が枢着部に回動自在に遊嵌されたシャーシとを備え、前記枢着部において
、前記トラバースメカ部の回動軸が前記シャーシの軸受に填め込まれ、これが外れないよ
う係合部により係止されたディスク再生装置であって、
前記回動軸の外周上に突起を設け、ディスククランプ時に前記回動軸が回転して、前記
突起が前記係合部の先端面上端の面取り部を押圧し、この反作用により前記回動軸が前記
軸受の内側面及び天井面に密着するようにしてなることを特徴とするディスク記録再生装
置。
【請求項3】
ディスクを記録或いは再生駆動する駆動部を有するトラバースメカ部と、前記トラバー
スメカ部の一端が枢着部に回動自在に遊嵌されたシャーシとを備え、前記枢着部において
、前記トラバースメカ部の回動軸が前記シャーシの軸受に填め込まれたディスク再生装置
であって、
前記回動軸の外周上に突起を設け、ディスククランプ時に前記回動軸が回転して、前記
突起が前記軸受の所定の内面を押圧し、この反作用により前記回動軸が前記軸受の他の内
面に密着するようにしてなることを特徴とするディスク記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−268994(P2006−268994A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−87790(P2005−87790)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】