説明

ディスプレイの製造方法

【課題】ディスプレイ本体1の表示面や透光性基板7へほとんど負荷を加えることなく、該表示面に透光性基板7を接着できる工程を備えたディスプレイの製造方法を提供する。
【解決手段】ディスプレイ本体1の表示面を構成する表示基板2の接着面の一端部に沿って接着剤13を塗布し、前記表示基板2及び前記透光性基板7を、両者の接着面の一端部同士を前記接着剤13を介して重ねると共に、前記両接着面のその他の領域が対向方向に重ならないようにずらせて位置させ、前記表示基板2の一端部側の側端面及び前記透光性基板7の接着面で構成されるコーナー部と、前記透光性基板7の一端部側の側端面及び前記表示基板の接着面で構成されるコーナー部とに、それぞれ全長に亘って接着剤溜りA,Bを形成した状態で、透光性基板7をスライド移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ本体の表示面を構成する表示基板の外面に、例えば耐衝撃性の向上、表示性能改善等のための透光性基板が接着されたディスプレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスプレイ本体の表示面の外面に、耐衝撃性の向上や表示性能改善等のために透光性基板(薄板ガラス)を接着する方法として、特許文献1に開示された方法が知られている。係る方法は、ディスプレイ本体の表示面又は透光性基板の一方に接着剤を塗布しておき、ディスプレイ本体の表示面に向けて凸となるように湾曲させた透光性基板を、その一辺から相対する辺に向かってローラーで加圧しながら徐々に接着する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−053453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている方法は、透光性基板の表面をディスプレイ本体の表示面に向かってローラーで加圧するため、表示面に負荷がかかり易い問題がある。ディスプレイ本体の表示面に加わる負荷は、この表示面を構成する板材に歪みを発生させ、この板材自体及びその内側の部材を損傷させる恐れがある。また、透光性基板も、湾曲とローラーによる加圧による負荷により損傷されやすい問題がある。
【0005】
本発明の課題は、ディスプレイ本体の表示面や透光性基板へほとんど負荷を加えることなく、該表示面に透光性基板を接着できる工程を備えたディスプレイの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のディスプレイの製造方法は、ディスプレイ本体の表示面側を構成する表示基板に接着された透光性基板を備えるディスプレイの製造方法であって、
前記表示基板の接着面及び前記透光性基板の接着面の少なくともいずれかの一端部に接着剤を塗布する第一の工程と、
前記表示基板及び前記透光性基板を、前記両接着面の一端部同士を前記接着剤を介して重ねると共に、前記両接着面のその他の領域が対向方向に重ならないようにずらせて位置させる第二の工程と、
前記透光性基板に重ねられた前記表示基板の一端部側の側端面及び前記透光性基板の接着面で構成されるコーナー部と、前記表示基板に重ねられた前記透光性基板の一端部側の側端面及び前記表示基板の接着面で構成されるコーナー部とに、それぞれ全長に亘って接着剤溜りを形成した状態で、前記表示基板の一端部及び前記透光性基板の一端部がそれぞれ前記透光性基板の他端部及び前記表示基板の他端部と重なる位置まで、前記表示基板及び前記透光性基板を、前記両接着面間の間隔を一定に肘しつつ相対的に移動させる第三の工程と
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のディスプレイの製造方法では、第一の工程及び第二の工程で表示基板及び透光性基板の接着面の一端部同士のみを接着剤を介して重ねた後、第三の工程において表示基板と透光性基板を両接着面に沿って相対的に移動させることで接着が行われる。この相対的移動は、両接着面間に接着剤が引き込まれる位置に接着剤溜りを形成した状態で行われる。即ち、表示基板の一端部側の側端面及び透光性基板の接着面で構成されるコーナー部と、透光性基板の一端部側の側端面及び表示基板の接着面で構成されるコーナー部とに、それぞれ全長に亘って接着剤溜りを形成した状態で行われる。そして、この接着剤溜りの存在により、従来のように湾曲させたり加圧することなく、表示基板と透光性基板の接着面間への空気の侵入を防止しつつ、接着剤のみを引き込ませて接着することができる。
【0008】
上記のように、本発明においては、表示基板と透光性基板の接着工程を、透光性基板を湾曲させたり表示面へ押し付けたりせずに行えるので、係る工程において、表示面や透光性基板に過剰な負荷がかからない。よって、本発明によれば、大画面のフラットパネルディスプレイであっても、表示性能に影響を与えることなく、透光性基板を有するディスプレイを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ディスプレイ本体を貼付用ベースにセットした状態と、透光性基板を保持ユニットにセットした状態を模式的に示す図である。
【図2】ディスプレイ本体と透光性基板を説明するための模式的断面図である。
【図3】本発明の第一の工程の一例を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第二の工程及び第三の工程の一例を模式的に示す図である。
【図5】本発明の第三の工程の他の例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、コーナー部に形成する接着剤溜りとは、少なくとも表示基板と透光性基板の接着面間に挟み込まれている接着剤より厚く、しかもコーナー部を形成する両面に密着して盛り上がった状態の接着剤をいう。ここで、コーナー部を形成する両面は、表示基板の一端部側の側端面と透光性基板の接着面、又は、透光性基板の一端部側の側端面と表示基板の接着面である。
【0011】
また、本発明は、例えば電子線ディスプレイパネル、液晶ディスプレイパネル、ELディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル等のフラットパネルディスプレイの製造に適しているが、ブラウン管(CRT)ディスプレイの製造に用いることもできる。また、本発明におけるディスプレイ本体とは、フラットパネルディスプレイにおいては画面を構成するパネル部分、CRTディスプレイにおいてはCRT部分をいう。以下に、フラットパネルディスプレイの製造を例に挙げて本発明を詳細に説明する。尚、以下に説明する図面において、同じ符号は同じ構成要素を示す。
【0012】
図1(a)はディスプレイ本体を貼付用ベースにセットした状態の平面図、図1(b)はディスプレイ本体を貼付用ベースにセットした状態の側面図である。図1(c)は透光性基板を保持ユニットにセットした状態の底面図、図1(d)は透光性基板を保持ユニットにセットした状態の側面図である。
【0013】
図1(a),(b)において、1はディスプレイ本体である。図1(a),(b)に示されるように、ディスプレイ本体1は、表示面を構成する表示基板2側を上にして、貼付用ベース3上にセットされている。貼付用ベース3の一縁部には、逆L字形の突き当て部4が設けられている。ディスプレイ本体1は、平面四角形をなす表示基板2の一辺の側端面が突き当て部4に当接されて位置決めされている。また、5はディスプレイ本体1の背面基板、6は表示基板2と背面基板5の間に挟み込まれた枠体である。また、図1(c),(d)において、7は透光性基板である。図1(c),(d)に示されるように、透光性基板7は、保持ユニット8に設けられた真空吸着部9によって、その接着面を下向きにして吸着されている。また、保持ユニット8の四隅には、レーザ変位センサ10が設けられている。
【0014】
ディスプレイ本体1は、図2(a)に示すように、表示面側を構成する表示基板2、背面側を構成する背面基板5、表示基板2及び背面基板5と共に気密容器を構成する枠体6を備えている。そして、この気密容器内には画像表示手段が配置されている。画像表示手段は、電子線ディスプレイパネルを例に挙げるなら、表示基板2側に配置された蛍光体11、背面基板5側に配置された電子源12等である。また、図示はされていないが、液晶ディスプレイパネルでは液晶及びトランジスタや電極等であり、ELディスプレイパネルではEL素子等であり、プラズマディスプレイパネルでは蛍光体及びプラズマ生成ガス及び電極等である。
【0015】
図2(b)に示すように、ディスプレイ本体1の表示面側を構成する表示基板2は、透明なガラス2aとその表面に貼付された透光性の樹脂フィルム2bとからなる場合と、透明なガラス2a単体の場合とがある。透光性の樹脂フィルム2bは、例えば、帯電抑制、光反射抑制、カラーフィルター等の機能を備える樹脂フィルムである。ディスプレイ本体1の表示面外面に接着される透光性基板7の例を図2(c),(d)に示す。図示するように、透明なガラス7a又は透明な樹脂基板7cとその表面に貼付された透光性の樹脂フィルム7bとからなる場合と、透明なガラス7a又は透明な樹脂基板7c単体の場合とがある。透光性の樹脂フィルム7bは、前述した樹脂フィルム2bと同様に、例えば、帯電抑制、光反射抑制、カラーフィルター等の機能を備える樹脂フィルムである。透光性の樹脂フィルム7bは、ディスプレイ本体1の表示基板2に透光性の樹脂フィルム2bが設けられている場合、通常、透光性の樹脂フィルム2bとは異なる機能のフィルムが用いられるが、同種の機能のフィルムとすることもできる。尚、ディスプレイ本体1の耐衝撃性の向上という点からは、透光性基板7は、透明なガラス7a又は透明なガラス7aとその表面に貼付された透光性の樹脂フィルム7bとからなることが好ましい。
【0016】
次に、図3,図4によりディスプレイ本体1への透光性基板7の貼り合わせ工程を説明する。
【0017】
先ず、図1で説明した、ディスプレイ本体1の貼付用ベース3へのセット前又は後に、ディスプレイ本体1の表示面を構成する表示基板2の接着面をアセトン等の有機溶剤で洗浄する前処理を施す。その後、図3(a),(b)に示すように、第一の工程を施す。この第一の工程では、表示基板2の接着面の一端部に沿って接着剤13を塗布する。接着剤13としては表示に影響を及ぼさない透明接着剤であれば特に限定されず、必要に応じて熱硬化型接着剤、常温硬化型接着剤、二液反応型接着剤、UV硬化型接着剤等を用いることができる。接着剤13の粘度は25℃で0.1Pa・s〜10Pa・sの範囲から選択されることが好ましい。ディスプレイ本体1への熱負荷を与えず、やタクト短縮が可能であることから、UV硬化型接着剤が好ましく用いられる。接着剤13の塗布に当たっては、先ず、接着剤13をシリンジに入れて、予め脱泡処理を行っておくことが好ましい。脱泡処理は、遠心分離式又は真空脱泡式にて行なうことができる。この脱泡処理は、接着剤13に混入している空気が十分に少ない場合には省略することができる。必要に応じて脱泡処理を行った後、シリンジを加圧式ディスペンサ(液体定量吐出装置)14に装填し、表示基板2の接着面上に接着剤13を塗布する。塗布は、図3(a)に示すように、表示基板2の接着面の一端部、好ましくは一方の短辺側の端部に、ほぼ全長に亘って行う。
【0018】
次に、図4(a)に示すように、第二の工程を施す。第二の工程では、貼付用ベース3上に保持されたディスプレイ本体1の上方へ、保持ユニット8に下向きに吸着された透光性基板7を移動させる。ディスプレイ本体1の表示基板2の接着面と、透光性基板7の接着面とを平行にする。また、両接着面の位置(表示基板2と透光性基板7の位置)を、接着剤13を塗布した表示基板2の接着面の一端部と、透光性基板7の接着面の一端部が対向方向に重なり、両接着面のその他の領域が対向方向に重ならない位置とする。つまり、両接着面における上記一端部同士以外の領域が対向方向に重ならないよう、ディスプレイ本体1(表示基板2)と透光性基板7の位置をずらす。そして、透光性基板7を降下させて、接着剤13を塗布した表示基板2の接着面の一端部上に、接着剤13を介して、透光性基板7の接着面の一端部を所定の間隔で重ねる。表示基板2の接着面と透光性基板2の接着面間の間隔は、保持ユニット8の四隅に設置されたレーザー変位センサ10で検出される両者間の距離により規定される。接着剤13を塗布した表示基板2の接着面の一端部上に、接着剤13を介して、透光性基板7の接着面の一端部を所定の間隔で重ねると、予め塗布されていた接着剤13が両接着面間に挟み込まれると共に押し広げられる。押し広げられた接着剤13は、両接着面間からはみ出し、透光性基板7に重ねられた表示基板2の一端部側の側端面及び透光性基板7の接着面で構成されるコーナー部に接着剤溜りAを形成する。同時に、表示基板2に重ねられた透光性基板7の一端部側の側端面及び表示基板2の接着面で構成されるコーナー部にも接着剤溜りBを形成する。
【0019】
続いて、図4(b)に示すように、第三の工程を施す。この第三の工程ではディスプレイ本体1の表示基板2の接着面と透光性基板7の接着面の間隔を一定に保ちながら、透光性基板7をスライド移動させる。このスライド移動は、表示基板2の一端部及び透光性基板7の一端部がそれぞれ透光性基板7の他端部及び表示基板2の他端部と重なる位置まで行われる。即ち、表示基板2と透光性基板7の所定の接着面全面が重なり合うまで行われる。スライド移動中の接着剤13の挙動を図4(c)の部分拡大図にて説明すると、矢印で示すように、スライド移動と共に、接着剤溜りAから表示基板2と透光性基板7間へ接着剤13が巻き込まれて流れ込む。同様に、接着剤溜りBからも、表示基板2と透光性基板7間へ接着剤13が巻き込まれて流れ込む。そして、この接着剤溜りA,Bが前記各コーナー部の全長に亘って、透光性基板7のスライド移動完了まで形成されていれば、表示基板2と透光性基板7間への空気の巻き込みによる気泡の発生を防ぐことができる。換言すると、接着剤溜りA,Bを、透光性基板7のスライド移動完了まで、前記各コーナー部の全長に亘って維持できれば、表示基板2と透光性基板7間への空気の巻き込みによる気泡の発生を防ぐことができる。この接着剤溜りA,Bの維持は、必要に応じて接着剤13を追加供給することで行うことができる。本例では、ディスペンサ14,14を、接着剤溜りAと接する表示基板2の端面側と、接着剤溜りBと接する透光性基板7の端面側の外側近傍に設置している。そして、接着剤13を直接前記両接着剤溜りA,Bへ供給し続けることで、接着剤溜まりA,Bが常に形成されるようにしている。透光性基板7をスライドさせている間は、保持ユニット5により、μmオーダーの傾き制御が可能となっていることが好ましい。これにより、均一な厚さでの接着剤13の挟み込み充填が可能となる。
【0020】
最終的に図4(d)に示すように、透光性基板2が、表示基板2と透光性基板7の所定の接着面全面が重なり合う位置まで移動した時点で、ディスプレイ本体1の表示面への透光性基板7の貼り合わせが完了する。この後、必要に応じて、表示基板2と透光性基板7との間からはみ出した接着剤13で硬化不要な部分を拭き取り、接着剤13を硬化させる。尚、本例では貼付用ベース3に突き当て部4を設けてあるため、接着剤13の粘性抗力により、透光性基板7を移動させた際にディスプレイ本体1が付随して移動してしまうことを防ぐことができる。貼り合わせ工程の各条件は、貼り合わせる面積、要求されるタクト、接着剤の粘度、接着剤の濡れ性から、液体粘性による反力を考慮し、貼り合わせる部材の強度に応じて適宜好適な条件を求めた上で決定するのが望ましい。
【0021】
以上の説明においては、貼付用ベース3上に設けられたディスプレイ本体1を下側、保持ユニット8に保持された透光性基板7を上側としたが、この上下関係は逆としても良く、両者を垂直又は斜めに立てて行うことも可能である。しかし、接着剤13の流動を考慮すると、ディスプレイ本体1と透光性基板7は、その接着面を水平にして上下に位置させて各工程を施すことが好ましく、吸着保持のしやすさから、透光性基板7を上側とすることが好ましい。また、以上の例においては、透光性基板7側を移動させるものとしたが、第二工程及び第三工程における移動は、表示基板2と透光性基板7が相対的に移動すれば足りる。したがって、表示基板2(ディスプレイパネル1)を移動させたり、表示基板2と透光性基板7の両者を同時に移動させることもできる。更に、第一工程でディスプレイ本体1の表示基板2の一端部に接着剤13を塗布するものとして説明したが、これは透光性基板7の一端部でも、表示基板2と透光性基板7の両者の一端部でも良い。特に表示基板2と透光性基板7を上下に対向させた場合、接着剤13が垂れにくいことから、下側に位置する方に塗布することが好ましい。
【0022】
接着剤溜りA,Bへの接着剤13の供給は、図4(b)に示すように、ディスペンサ14,14で行うこともできるが、図5に示すように、予め接着剤13を表示基板2及び透光性基板7の両接着面に塗布しておくことで行うこともできる。塗布位置は、前記第二の工程で接着剤13を介して重ねられる両接着面の一端部以外の両接着面の領域である。図5(a)に示す例では、前記第二の工程で接着剤13を介して重ねられる両接着面の一端部以外の両接着面の領域全体に接着剤13を薄く塗布している。図5(b)に示す例では、前記第二の工程で接着剤13を介して重ねられる両接着面の一端部以外の両接着面の領域に接着剤13を点状に塗布している。このように接着剤13を塗布しておくと、表示基板2及び透光性基板7の相対的スライド移動に伴って、図4(b)に示すディスペンサ14,14を使用することなく、接着剤溜りA,Bに接着剤13を供給することができる。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
まず、700mm×1240mm×厚さ2.5mmの青板ガラスの一方の面に、マトリクス状に複数の開口部を有する黒色の遮光部材と、各開口部内に位置する蛍光体と、遮光部材及び蛍光体の表面を覆うアノード電極とを形成したフェースプレートを用意した。更に、上記と同じサイズの青板ガラスの一方の面に、複数の行方向配線と複数の列方向配線と、これらの配線に接続された複数の電界放出型の電子放出素子と、複数のスペーサとを形成したリアプレートを用意した。リアプレートの上記一方の面の周囲にガラスからなる枠を取り付け、この枠体上にフリットガラスを配置した。10-6Paの真空雰囲気の中で、このリアプレートとフェースプレートとが蛍光体と電子放出素子とが対向するように保持した。この状態で、上記フリットガラスを加熱溶融し、フェースプレートと枠体とを接合して厚さ8.0mmのパネル状のディスプレイ本体1を作成した。
【0024】
次に、ディスプレイ本体1の表示面外面に帯電抑制のための透光性の樹脂フィルム(帯電防止フィルム)を貼付した。この帯電防止フィルムは、表面に、ITO粒子が分散されたポリエステル樹脂(PET)の塗布層を有するPETフィルムであり、大きさは、ディスプレイ本体1の表示面を構成する表示基板2とほぼ同等である。この帯電防止フィルムをディスプレイ本体1の表示面側にアクリル系接着剤で貼付した。本実施例においては、表示基板2は、前記フェースプレートを構成する青板ガラスと帯電抑制のための透光性の樹脂フィルムとで構成されたものとなり、表示基板2の外面(接着面)はITO粒子が分散されたPETの塗布層である。
【0025】
更に、ディスプレイ本体1の表示基板2と同サイズの青板ガラスを用意し、この青板ガラスの一方の面に光反射抑制のための透光性の樹脂フィルムを貼付した。この透光性の樹脂フィルムは、PETフィルム表面に、シリカ微粒子が分散されたアクリル樹脂層を有しており、大きさは、貼付される青板ガラスとほぼ同等である。このPETフィルムを青板ガラスの一方の面にアクリル系接着剤で貼付した。本実施例においては、透光性基板7は上記青板ガラスと光反射抑制のための透光性の樹脂フィルムとで構成される。透光性基板7の接着面は上記ガラス面である。
【0026】
図1、図3、図4に示した工程により、上記電子線ディスプレイパネルのディスプレイ本体1に上記透光性基板7を貼付した。
【0027】
ディスプレイ本体1の表示基板2の外面を構成する帯電防止フィルム上をアルコールやアセトン等の有機溶剤で洗浄した後、図3(a)に示すように、この接着面の一端部近傍に接着剤13を塗布した。接着剤13としては下記の組成からなる粘度が800mPa・sのアクリル系UV硬化型接着剤を用いた。この接着剤13の塗布は、図3(a)に示すように、表示基板2の一方の短辺付近に溜まるように行った。
【0028】
【表1】

【0029】
次に、図4(a)に示すように、透光性基板7を下側に吸着した保持ユニット8を、貼付用ベース3上に保持されたディスプレイ本体1の上方へ移動させた。保持ユニット8(透光性基板7)は、接着剤13を塗布した表示基板2の接着面の一端部と透光性基板7の接着面の一端部のみが上下方向に重なる位置へ移動させた。表示基板2の接着面と透光性基板7の接着面は平行で、対向方向に重なる表示基板2の接着面の一端部と透光性基板7の接着面の一端部間の間隔は20mmになるようにした。この状態から、接近速度を10mm/minとして、レーザー変位センサ10で検出しながら透光性基板7側を降下させ、表示基板2の接着面と透光性基板7の接着面の一端部同士間の距離を0.3mmまで接近させた。
【0030】
ディスプレイ本体1の表示基板2に透光性基板7を設定した拒理まで接近させることで、予め塗布されていた接着剤13は、表示基板2の接着面と透光性基板7の接着面の一端部同士間に挟まれて押し広げられた。本例では、予め50gの接着剤3を予め塗布した。また、表示基板2の接着面の一端部と、透光性基板7の接着面の一端部との重なり幅を20mmとした。これらと、透光性基板7側を降下させた後の両接着面の一端部同士の間隔を0.3mmとしたことから、接着剤13の比重を1とすると、両接着面の一端部同士間に挟み込まれる接着剤13は約3gであり、余剰分が接着剤溜りA,Bを形成した。
【0031】
続いて、図4(b)に示す通り、表示基板2と透光性基板7の間隔を一定に保ちながら、透光性基板7を表示基板2の接着面に平行な方向へスライド移動させた。このスライド移動中は、接着剤13が常に接着剤溜まりA,Bを形成し続けるように、ディスペンサ6,6により、接着剤溜りA,Bへ接着剤13を供給した。最終的に図4(d)に示すよう、透光性基板7がディスプレイ本体1の表示基板2と完全に重なる位置まで移動させた。本例では透光性基板2のスライドの速度を10mm/secとした。この条件によれば、接着剤13の粘性により発生する反力は最大12.7N程度であり、透光性基板2の移動は100sec程度にて完了した。
【0032】
その後、透光性基板2側からピーク波長350nm、30W/cm2の紫外線を4分間照射することで接着剤13を硬化させ、ディスプレイ本体1の表示基板2への透光性基板7の貼り合わせ工程を終了した。本例では、パネル内部構造の破壊は生じなかった。また、接着完了後の接着層を確認したところ、10μm以上の大きさの気泡は確認されず、接着層の厚さは0.3±0.05mm以内であった。
【符号の説明】
【0033】
1:ディスプレイ本体、2:表示基板、6:ディスペンサ、7:透光性基板、13:接着剤、A,B:接着剤溜り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ本体の表示面側を構成する表示基板に接着された透光性基板を備えるディスプレイの製造方法であって、
前記表示基板の接着面及び前記透光性基板の接着面の少なくともいずれかの一端部に接着剤を塗布する第一の工程と、
前記表示基板及び前記透光性基板を、前記両接着面の一端部同士を前記接着剤を介して重ねると共に、前記両接着面のその他の領域が対向方向に重ならないようにずらせて位置させる第二の工程と、
前記透光性基板に重ねられた前記表示基板の一端部側の側端面及び前記透光性基板の接着面で構成されるコーナー部と、前記表示基板に重ねられた前記透光性基板の一端部側の側端面及び前記表示基板の接着面で構成されるコーナー部とに、それぞれ全長に亘って接着剤溜りを形成した状態で、前記表示基板の一端部及び前記透光性基板の一端部がそれぞれ前記透光性基板の他端部及び前記表示基板の他端部と重なる位置まで、前記表示基板及び前記透光性基板を、前記両接着面間の間隔を一定に保持しつつ相対的に移動させる第三の工程と
を有することを特徴とするディスプレイの製造方法。
【請求項2】
前記第三の工程において、前記透光性基板に重ねられた前記表示基板の一端部側の側端面及び前記透光性基板の接着面で構成されるコーナー部と、前記表示基板に重ねられた前記透光性基板の一端部側の側端面及び前記表示基板の接着面で構成されるコーナー部とに形成された前記接着剤溜りにそれぞれ接着剤を供給することで当該接着剤溜りを維持することを特徴とする請求項1に記載のディスプレイの製造方法。
【請求項3】
前記接着剤溜りへの前記接着剤の供給を、ディスペンサから直接前記両接着剤溜りへ行うことを特徴とする請求項2に記載のディスプレイの製造方法。
【請求項4】
前記接着剤溜りへの前記接着剤の供給を、前記第二の工程で接着剤を介して重ねられる両接着面の一端部以外の両接着面の領域に予め接着剤を塗布しておくことで行うことを特徴とする請求項2に記載のディスプレイの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−141409(P2011−141409A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1709(P2010−1709)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】