説明

ディスプレイパネルのシート貼合方法

【課題】シートにかかるテンションを変動させず、シートの良品部分と不良部分の剥離/巻取りを切り替えることで、安定生産性に優れたシート貼合方法を提供すること。
【解決手段】長手方向に連続して供給された基材シートと機能シートからなる積層シートにおいて機能シートを、機能シートを貼り付ける対象物上に送る送り、機能シートのうち貼り付けに必要な長さ分を切断し、基材シートを鋭角に搬送ることで機能シートを基材シートから剥離し手段と、対象物に剥離した機能シートを貼り付ける。また、不良機能シートの表面に切り込みを入れることで、機能シートの剛性を低下させることにより、剥離もしくは巻き取りの切り換え動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルや液晶パネル等のディスプレイパネルに、電磁波シールドや光透過率調整・色度調整などの機能を備える機能性シートを貼り付けるシート貼付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のシート貼付け方法は、図13Aに示すようなものが知られている。
【0003】
具体的には、ロール状に巻かれた材料を搬送するための搬送用シート(以下、「基材シート」と称す)上に形成され、各種機能(例えば、電磁波シールド、透過率調整、色調調整の機能など)を備えた商品に貼り付けるシート111(以下、「機能シート」と称す)をカットする。そして、剥離ブロック114上を基材シート113が滑る形で搬送することで、剥離ブロック114先端において機能シートを基材シートから剥離し、対象物に貼り付ける技術である。そして、連続した機能シートのうち、良品部分は対象物に貼り付けられるが、不良部分がある場合、除去する必要性がある。その一手段として、機能シートの不良部分を対象物以外(例えば、ダミー対象物など)に貼り付けて除去する方法が知られている。しかし、対象物が大面積なものになれば、設備的に大掛かりなものになりかつコストが高くなることが考えられる。そこで、図13Bに示すように、基材シート113から機能シートの不良部分112を剥離せず、基材シート113と共に巻き取る方法がある。そのため剥離する場合と剥離しない場合の切り替え方法に関する技術も知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
図14は上記特許文献1に開示される、剥離/巻き取り切替手段の動作を示す図である。
【0005】
図14(A)は、機能シート111を基材シート113から剥離する場合の図であり、図14(B)は、剥離しないで機能シートの不良部分112を基材シート113に巻き取る場合の図である。特許文献1に開示される技術では、剥離部のブロック115が固定されたローラに対し突出している状態から凹む状態まで後退すること機構で、剥離部の角度を変動させることで機能シートの不良部分112が剥離するのを防ぎ、基材シート113と共に巻き取る方法が示されている。
【0006】
また、図15は上記特許文献2に開示される、剥離/巻き取り切替手段の動作を示す図である。
【0007】
図15(A)は、機能シート111を剥離する場合の図であり、図15(B)は、剥離しないで機能シートの不良部分112を基材シート113に巻き取る場合の図である。特許文献2に開示される技術では、剥離部近傍のローラ116が移動することで剥離部の角度を広げることにより機能シートが剥離するのを防ぎ、基材シートとともに巻き取る方法が示されている。上述の通り、特許文献1および2は、何れも剥離部におけるシートを搬送する曲率半径・角度を機械的に変更することで、機能シートを剥離若しくは剥離しないで基材シートに巻取る動作の切替えを行うことを特徴とする技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−271437号公報
【特許文献2】特開2010−058336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の技術のような方式では、剥離ブロック先端の曲率半径や角度を変更する機械的動きによりシートに掛かるテンションが変動し、剥離部でのシートの横ずれやシート送り量の制御バラツキなどの不具合が発生しやすく、その結果、連続生産の安定性に影響が生じることになる。
【0010】
また、機能シートの不良部分を巻き取るためには、不良部分を検出する機構が必要であり、シートの良品部分・不良部分を判別する認識工程(通常、画像評価によるシート表面画像検査や、別工程によるシート検査によりシートの一部に形成された検査情報を示す目印を認識する工程)がシート搬送の途中に設けられることになる。その結果、上記理由によりシートにかかるテンションが変動することにより、シートの良品部・不良品部を判別する認識工程で誤認識を起す原因にもなる。
【0011】
本発明は、上記従来の問題を解決するものであり、安定かつ生産性にも優れたシート貼合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
長手方向に連続して供給された基材シートと機能シートからなる積層シートにおいて機能シートを、機能シートを貼り付ける対象物上に送る送り、機能シートのうち貼り付けに必要な長さ分を切断し、基材シートを鋭角に搬送ることで、機能シートを基材シートから剥離し手段と、対象物に前記剥離した機能シートを貼り付ける。
【0013】
また、機能シートの不良部分は剥離しないで基材シートとともに巻き取る貼合方法において、不良機能シートの表面に切り込みを入れることで、機能シートの剛性を低下させることにより、剥離もしくは巻き取りの切り換え動作を行う。
【発明の効果】
【0014】
本発明のディスプレイパネルのシート貼合方法によれば、シートの位置ずれやテンション変化が生じにくく、良品部分・不良部分の剥離/巻き取り切替動作が安定的に行え、かつ、シートに掛かるテンションの変動を抑え、剥離部でのシートの横ずれ、シート送り量バラツキなどの発生を抑制し、安定な生産を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態で使用したシートの構成図
【図2】本実施の形態で使用した貼付装置の概略構成図
【図3】実施の形態1における巻取り実験結果を示す図
【図4】実施の形態1における巻取り実験の内容を示す図
【図5】実施の形態1における切込み形状図
【図6】実施の形態1における切込みを形成する刃物形状図
【図7】実施の形態1における切込みを形成する刃物形状図
【図8】実施の形態2における切込み形状図
【図9】実施の形態2における切込みを形成する刃物形状図
【図10】実施の形態2における切込みを形成する刃物形状図
【図11】シート破断図
【図12】実施の形態3における切込み形状図
【図13】剥離/巻き取り切り換え手段の動作図
【図14】先行例における剥離/巻き取り切り換え手段の動作図
【図15】先行例における剥離/巻き取り切り換え手段の動作図
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施の形態1)
具体的には、まず、基材シートと機能シートからなる積層シートが巻かれた原反があり、そこから引きだされた積層シートは複数本のローラを介して連続的に搬送される。次に、その積層シートが切断工程に送られる。この切断工程では、下台と刃物が所定の間隔で保持されており、その間に積層シートが搬送される。
【0017】
そして、機能シートの切断したい長さ分だけ積層シートを搬送した後、刃物と下台の間隔が狭まり、刃物が機能シートへ切り込むことで機能シートのみを切断する。そのため、基材シートが切断しない範囲で下台と刃物先端のギャップを保持しておくことが必要である。以後、機能シートのみ切断され、基材シートは切断されていない切断状態をハーフカットと述べる。
【0018】
次に、所定の間隔でハーフカットされた積層シートは剥離工程に送られる。
【0019】
なお、剥離工程とは、通常、先端に所定の角度(通常90°以下の鋭角を用いる)を有した剥離ブロックがあり、その先端に沿って基材シートに一定のテンションを掛けた状態で基材シート側が接するように積層シートを搬送することにより、ハーフカットされた部分が剥離ブロック先端に差し掛かると、基材シートは剥離ブロックに沿って搬送され、機能シートは基材シートから剥離する。
【0020】
このとき、基材シートと機能シートの接着力、機能シートの硬さや剛性により剥離し易さが異なるいため、剥離ブロック先端の角度は45°以下であることが望ましいが、極先端は角がないように曲面加工を施している。この極先端を曲面加工することは、シートにキズが入り破断することを防止し、シート搬送時の抵抗や静電気発生防止などの効果がある。
【0021】
また、剥離工程にいて、通常は機能シートが基材シートから剥離され、対象物に貼り付けられるが、残った基材シートは巻取りローラによって巻き取られる。ここで、機能シートには、製造上の問題で異物付着・打痕・キズ、積層された各層の厚み異常などの不良部分が存在するため、連続生産するためには機能シートの不良部分は基材シートから剥離されず、基材シートとともに巻き取る方法を本発明では用いる。
【0022】
この本発明における剥離ブロック先端での機能シートを剥離するか、巻き取るか切り替える方法は、機能シートの不良部分表面に1回もしくは複数回の切れ込みを入れることで、フィルムの剛性を低下させ、機能シートが基材シートから剥離するのを防止することで、剥離有無の切り替えを実現した。
【0023】
更に具体的な内容について、図面を参照しながら以下で説明する。
【0024】
まず、本実施の形態で用いた積層シートの構成について、図1を用いて説明する。
【0025】
本実施の形態で用いたフィルムは、プラズマディスプレイパネルの表示面に直接貼り付ける電磁波シールド用シートを用いて検討した。
【0026】
シートの構成に関する詳細について以下に説明する。ここで図1(A)は積層シート状態の構成図であり、図1(B)はプラズマディスプレイパネルに貼り付けた状態の構成図を示す。
【0027】
まず、基材シート1(30〜50μm)があり、その上に接着層2(20〜40μm)、樹脂フィルム層3(70〜130μm)、金属メッシュ層4(1〜10μm)、ハードコート層5(2〜10μm)の順に積み重なった構成の連続した積層シートである。ここで材料として、基材シート1および樹脂フィルム層3はポリエチレンテレフタレート(PET)やポリカーボネイト(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのフィルムを用いることが可能である。また、接着層2は、アクリル系モノマーをベースにした接着剤であり、紫外線や熱・圧力などにより重合が開始する反応開始剤も含んでいる。また必要に応じて色素などを導入することで 光透過率や色調などを調節する機能を付加した接着剤も可能である。
【0028】
次に、金属メッシュ層4は、銅・銀・金・アルミニウム・ステンレス鋼・ニッケル・コバルトなどの導電性金属もしくはその合金、またはバインダ樹脂に導電性微粒子を分散した材料でメッシュ状の金属層がシート全面に形成されている。また、ハードコート層5は、アクリル系樹脂など紫外線硬化樹脂を用いた硬度の高い樹脂により形成されている。但し、ここで述べたシート材料は、あくまでも一例であり、特に限定されるものではない。
【0029】
また、基材シート1以外、つまり接着層2、樹脂フィルム層3、金属メッシュ層4、ハードコート層5をまとめて、機能シート6と以後述べる。機能シート6をプラズマディスプレイパネルに貼合する際は、接着層2がプラズマディスディスプレイパネル8の表示面に貼り付けられ、プラズマディスプレイ9として製品となる。また、基材シート1、接着層2および樹脂フィルム層3をまとめて積層シート7を言う場合もある。
【0030】
次に、装置全体の構成および動作内容を、図2を参照しながら説明する。具体的には、シートの貼合装置10において、シートの搬送からプラズマディスプレイパネルに貼合する流れを順に説明する。
【0031】
まず、機能シート11と基材シート12が積層した積層シート7がロール状に巻かれた原反13を設置し、シート送り量を制御しながら回転可能なモータ(図示せず)に連動している。その原反13から引きだされたシートは、複数本の搬送ローラ14を介して搬送される。ここでは、シートが垂れたりしないように、シートにテンションを掛けた状態でシートを切断工程15へ搬送する。この切断工程15では、例えば、切断刃16と下台18が所定の間隔で保持されており、その間に積層シートが搬送され、下台18に基材シートが接するように設置される。
【0032】
次に、前回ハーフカットした位置から換算し、貼合対象物であるプラズマディスプレイパネルの表面へ貼り付けるのに必要な長さ分だけシートを搬送し、切断刃16でシートをハーフカットする。このとき、切断刃16、若しくは下台18が駆動、または切断刃16と下台18が駆動することで、切断刃16と下台18とのギャップを狭くし、機能シート11に切断刃16を食い込ませることによりハーフカットを実現する。切断刃16はディスク状の円盤刃を用い、刃先がシートに食い込んだ状態でシートの幅方向に走引させることでハーフカットすればよい。
【0033】
次に、所定の間隔でハーフカットされた機能シートは、剥離工程19に送られ、先端角度約10〜45°の剥離ブロック20上を搬送させることで、機能シート11が基材シート12から剥離される。その剥離された機能シート11は、貼付対象物であるプラズマディスプレイパネル21と貼合ローラ22で挟みこまれ、プラズマディスプレイパネル表面に機能シートを貼り付けられる。残った基材シート12は巻取りローラ23に巻きとられ廃棄される。
【0034】
ここで、シート全体の搬送を制御しているのは、この巻取りローラ23であり、必要に応じて、シート送りを制御する機構(図示せず)、例えば、2本のローラで基材シートが挟まれ、一定の加圧で挟まれながら搬送される方法を導入することも安定な搬送実現効果がある。また、剥離ブロック20の極先端部分は、角がないように曲面加工を施している。これは基材シート12にキズが入り破断、若しくは、搬送時の抵抗低減・静電気発生防止などの観点から、基材シートが滑り易く処理しておくことが望ましい。また、必要に応じて、表面にすべりやすいコーティングを施すことも可能である。
【0035】
次に、機能シート11に欠陥が存在した場合の巻取り方法を説明する。
【0036】
予めシート搬送途中に存在するシート検査工程24において、シート表面の欠陥や別工程で欠陥が存在する箇所に設けられた目印を認識カメラなどの検出手段25を用いて検出し、シートのどの位置に欠陥が存在するのか把握しておく。ここで目印とはシートの端に線上または点状に印字された印を用いたが、検出手段に検出されれば特にこれに限ったものではない。
【0037】
その後切断工程において、欠陥の位置と貼付対象物であるプラズマディスプレイパネルに必要な長さから算出して良品部分が得られないと判断した場合、機能シート11の不要部分(不良部分)のシート表面に所定の間隔で切り込み刃17を用いて切り込みを入れる。すると機能シートの剛性が低下し、剥離ブロックで剥離されることなく基材シート12と共に巻き取られ、巻取りローラ23に回収される。
【0038】
ここで、機能シート11と基材シート12の接着力、機能シートの硬さ・剛性により剥離しやすさが異なるため、剥離ブロック20の角度は材料に適した角度を選択するのが望ましい。また、切り込みを入れるピッチと深さにより安定した巻取りの可否が異なるため、更に詳細について以下に述べる。
【0039】
上述のように、切り込み刃17で入れる切り込みのピッチ・深さを変化させた場合における巻取り可否の結果を図3に示す。
【0040】
図3に示す巻取りの可否は、図4に示すような、剥離ブロック20上に基材シート12を滑らせながら機能シート11を搬送した場合である。そのとき、機能シート11の表面に導入した切り込み26のピッチをX、深さをYとし、XおよびYを変化させた場合において、機能シートが剥離ブロック20により剥離されず、基材シートと共に巻きとられるか確認したものである。ここで、今回切り込みを入れた部分は、図5に示すとおりである。
【0041】
具体的には、図5(A)には機能シート11に切り込みを入れたシートの断面を示し、図5(B)には切り込みを入れた機能シートの表面を示す。すなわち、機能シート11の良品部分の最後でハーフカットし、線状に印字された印(図中P)がある部分を不良部分として、約150〜200mmの間隔を空けてハーフカットした。また、不良部分の表面にシートの幅方向全域にわたって切り込みを入れた状態でシートを搬送し、剥離ブロックで巻き取られるか剥離するか確認した。
【0042】
また、剥離ブロック20の先端の角度Zは10〜30°の金属ブロックを使用し、極先端はシートが接する面全体において、R2.5mmの曲面加工を施している。更に、切り込みを入れる方式は、図6に示すような、丸刃27をシート幅方向に走引させることにより切込みを入れる方法を用いた。これは図7に示すように、ギロチン刃28を押し当てて切り込みを入れる方法が可能である。
【0043】
この本実施の形態1の結果について、図3および図4を用いて説明する。なお、本実施の形態で使用したシートの詳細内容は、以下の通りである。
・基材シート1(35〜40μm):ポリエチレンテレフタレート
・接着層2(25〜30μm):アクリル系接着剤+感圧式反応開始剤
・樹脂フィルム層3(100μm):ポリエチレンテレフタレート
・金属メッシュ層4(1〜3μm):銅
・ハードコート層5(3〜5μm):アクリル系紫外線硬化樹脂
【0044】
本実施の形態の結果は、切り込み30のピッチ間隔Xを30mm,20mm,15mm,10mm,5mm,3mm,2mmと狭めることにより、巻取りが安定する傾向を確認した(図3(1))。具体的には、ピッチ間隔Xが30mm、20mmでは完全にシート先端で剥離した。
【0045】
また、ピッチ間隔Xが15mm、10mmでは、数回に1回程度の割合でシート中央や端などが一部剥離せず巻き取られるが、シート自体の自重で落下する様子が観測され、不安定な状態であった。またピッチ間隔Xが5mm、3mm、2mmの場合は、安定して巻き取ることができた。
【0046】
次に、切り込み量を機能シート厚みに対して、90%,70%,50%と浅くして行くと、巻取りが不安定になることも確認した(図3(2))。具体的には、90%、70%の場合は、安定して巻き取ることができたが、50%の場合、数回に一度の割合でシートの端が剥離してしまう現象を確認した。すなわち、本実施の形態で使用したプラズマディスプレイパネル用の電磁波シールドシートでは、切り込み27を入れるピッチは、剥離ブロック極先端曲率半径の2倍(直径分相当)以下に設定することが望ましい。
【0047】
また、切り込み深さについては、深いほうが望ましいが、機能シート厚みに対して必ずしも100%必要ではなく、50%(半分)以上切込みがあれば巻取りが可能である。逆に、切り込み深さを100%に設定すると、基材シートも切ってしまう可能性を生じ、非常に精度の良い切り込み機構が必要であり、望ましくは70%以上90%以下に設定することで装置的に簡易な切込み機構で対応することができる。つまり、価格が高い高精度装置ではなく、精度が低く価格が安い装置を使用することも可能であり、また、コスト面でもメリットがあると考える。
【0048】
また、切り込み深さを70%〜90%にすることで、基材シートを切断し生産が停止する可能性が低減することで、マージンが広い安定した生産が実現できる。
【0049】
また同様な方法で、切込み深さを70〜90%に設定し、機能シートの不良部分全面に切り込みを入れるのではなく、剥離ブロックに差し掛かる先端のみに数本切り込みを入れることでも巻取りできることを確認した。つまり数回の切り込みにより剥離ブロック先端において機能シート先端が巻き取られるか否かが重要であることがわかる。このことより、切込みを入れる回数を機能シートの不良部分の先端のみにすることで、切り込み回数を減らしタクトなどを短縮ですることも期待できる。
【0050】
本実施の形態では、プラズマディスプレイ用の電磁波シールドシートを用い、樹脂フィルム層の表面に金属メッシュ層およびハードコート層が形成され、裏側に接着層が存在する構成のフィルムを使用したため、樹脂フィルム層に比べ剛性が高い金属メッシュ層、及び、ハードコート層を完全に切断することで、機能フィルム全体としての剛性が低下し、切り込み深さが70〜90%でも剥離せず巻き取ることができたと推測する。
【0051】
(実施の形態2)
次に、実施の形態1における機能シートの不良部分にいれる切り込みの形状は、図8に示すようなシートの幅方向に点線状な形状を設けた場合でも巻き取ることが可能である。つまり、シートの剛性を低下させることは、シートの幅方向に対して全域ではなく一部分に切れ込み(例えば点線状)に入れることでも対応可能である。
【0052】
また、この形状を実現するためには、図9および図10に示すような、断続的に刃先が突出した刃物X1もしくはギロチン刃X2を使用することで容易に加工できる。また複数本切込みを入れる場合は、図9または図10のような刃物を複数枚平行して並べる装置構成にすることで、一度に複数ほんの切り込みを入れることが可能になり、タクト短縮も図れる。
【0053】
さらにこの形状を導入することにより、機能シートに入れる切り込み面積が減少するため、切り込みによる異物発生の確率が減少し、品質面で異物による不具合を減少させるメリットが期待できる。
【0054】
(実施の形態3)
次に、機能シート11の材質が伸びにくく硬く、切込みを入れた機能シートを剥離ブロック20で巻き取る場合、図11に示すように、切り込み26からフィルムが裂けて破断部29が発生することになる。さらに、この場合、均一に巻き取れずシートの一部が剥離したり、機能シートが浮いた状態で搬送されたりすることにもなる。搬送途中のローラにシートがしわになって、巻き込まれるなど不具合が生じ、シートにかかるテンションの偏り発生や、シートがすべることにより搬送異常が発生するため、連続生産を停止させる原因になる可能性が生じることになる。
【0055】
そこで本実施の形態では、実施の形態1におけるシート不良部分に入れる切り込みの形状を、図12に示すようにするものである。すなわち、同図に示すように、切り込み26の谷部が鋭角ではなく、平面もしくは曲面形状にした場合でもシートの巻き取りは可能である。
【0056】
また、この切り込み形状を形成する方法として、刃物を用いるのではなく、レーザー光などを用いることも可能である。レーザー光などを用いる場合、切り込みの形状の谷部が鋭角ではなく、曲率を有した形状もしくは擬似台形の形状に加工することができ、上記機能シートの切り込み部の谷間から発生するシート破断を解消することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のディスプレイパネルのシート貼合方法は、フィルムの剛性が高い場合ほど効果的であり、樹脂層および塗布や薄膜プロセスにより形成される金属層の積層シートやキズ、汚れに防止のために表面にハードコートを形成したシートに適用され、電磁波シールドフィルム、色調・透過率調整フィルム、反射防止フィルムなど幅広い分野のフィルム貼合に適応可能である。
【符号の説明】
【0058】
11 機能シート
12 基材シート
13 原反
14 搬送ローラ
15 切断工程
16 切断刃
17 切り込み刃
18 下台
19 剥離工程
20 剥離ブロック
21 ディスプレイパネル
22 貼合ローラ
23 巻取りローラ
24 検査工程
25 検出手段
26 切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと機能シートとが積層してなる積層シートが前記シートの長手方向に連続的に搬送され、基材シートと機能シートとを分離して前記機能シートを対象物に貼り合せる方法において、
前記積層シートの表面の欠陥を検出する検出工程と、
前記機能シートを前記対象物に貼り付けるのに必要な長さを切断する切断工程と、
前記検出工程で前記積層シートに欠陥が検出された場合、前記機能シートの不良部分の表面に切り込みを入れる切込工程と、
前記基材シートを先端が鋭角の剥離ブロックに搬送し、前記基材シートと前記機能シートとを分離させる剥離工程と、
前記剥離工程で剥離した機能シートを前記対象物に貼り付ける貼付工程と
を、有し、
前記剥離工程で、前記機能シートの不良部分は剥離しないで前記基材シートとともに巻き取ること、
を特徴とする、ディスプレイパネルのシート貼合方法。
【請求項2】
前記対象物はディスプレイパネルである、請求項1記載の貼合方法。
【請求項3】
前記対象物はプラズマディスプレイパネルである、請求項2に記載の貼合方法。
【請求項4】
前記機能シートは電磁波シールド機能を有する、請求項1〜3の何れか一項に記載の貼合方法。
【請求項5】
前記機能シートは、金属層、樹脂層、ハードコート層の積層からなることを特徴とする請求項4記載の貼合方法。
【請求項6】
前記機能シートの不良部分の表面に入れる切り込みを、前記機能シートの幅方向に連続的に入れる、請求項1〜5の何れか一項に記載の貼合方法。
【請求項7】
前記機能シートの不良部分表面に入れる切り込みは、刃物により形成される、請求項1〜6の何れか一項に記載の貼合方法。
【請求項8】
前記機能シートの不良部分表面に入れる切り込みは、レーザーにより形成される、請求項1〜6の何れか一項に記載の貼合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−131131(P2012−131131A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285586(P2010−285586)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】