説明

ディスプレイパネル部材形成用転写フィルムおよびディスプレイパネル部材の形成方法

【課題】誘電体形成材料層と隔壁形成材料層との間のミキシングを低減させ、かつ、工程を簡略化することができるディスプレイパネル部材の形成方法、並びにアスペクト比及びパターン形状に優れた部材を形成可能な転写フィルムの提供。
【解決手段】電極が形成された基板上に、支持フィルム上に形成された誘電体形成材料層を転写し、誘電体形成材料層上に、支持フィルム上に形成された隔壁形成材料層を転写し、得られた基板を焼成して誘電体層109及び隔壁前駆層を形成し、隔壁前駆層上にレジスト膜を形成し、露光処理し、現像処理してレジストパターンを顕在化させ、隔壁前駆層をエッチング処理してレジストパターンに対応する隔壁パターンを形成し、レジストパターンを剥離処理して隔壁を形成する工程を含む方法により、表示セルを区画する隔壁103を基板上に形成することを特徴とするディスプレイパネル部材の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイパネル部材を形成するために好適な転写フィルム、およびディスプレイパネル部材の形成方法に関する。特に、プラズマディスプレイパネルの隔壁および誘電体層の形成に適した転写フィルムおよびこれら部材の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平板状の蛍光表示体としてプラズマディスプレイパネル(以下「PDP」ともいう。)、フィールドエミッションディスプレイ(以下「FED」ともいう。)などのフラットパネルディスプレイ(以下「FPD」ともいう。)が注目されている。
【0003】
図1は交流型のPDPの断面形状を示す模式図である。図1において、101および102は互いに対向するよう配置されたガラス基板、103は隔壁であり、ガラス基板101、ガラス基板102、隔壁103によりセルが区画形成されている。104はガラス基板101に固定された透明電極であり、105は透明電極104の抵抗を下げる目的で該透明電極104上に形成されたバス電極であり、106はガラス基板102に固定されたアドレス電極である。107はセル内に保持された蛍光物質であり、108は透明電極104およびバス電極105を被覆するようガラス基板101の内面に形成された誘電体層であり、109はアドレス電極106を被覆するようガラス基板102の内面に形成された誘電体層であり、110は例えば酸化マグネシウムよりなる保護膜である。また、カラーPDPにおいては、コントラストの高い画像を得るため、ガラス基板と誘電体層との間に、カラーフィルター(赤色・緑色・青色)やブラックマトリックスなどを設けたり、発光輝度を高めるために前面隔壁を設けたりすることがある。
【0004】
このようなPDPにおいて、隔壁103ならびに誘電体層108および109はガラス焼結体により形成され、隔壁は、例えば幅30〜60μm、高さ100〜150μmである。
【0005】
このような隔壁の製造方法としては、一般に、隔壁パターンをスクリーン印刷して焼成するスクリーン印刷法や、基板上に無機粒子含有樹脂層を形成し、該無機粒子含有樹脂層をサンドブラストや加圧成形などによりパターン形成して焼成する方法や、感光性の無機粒子含有樹脂層を形成し、露光および現像してパターンを形成して焼成する方法や、基板上に無機粒子含有樹脂層を形成して焼成し、得られた無機層を硝酸等の酸でエッチングする方法などが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
誘電体や隔壁の製造方法において、基板上に無機粒子含有樹脂層を形成する方法としては、無機粒子含有樹脂層を予め可撓性を有する支持フィルム上に形成した転写フィルムを作製し、該転写フィルムにおける無機粒子含有樹脂層を基板に加熱圧着することにより、基板上に無機粒子含有樹脂層を形成する方法が、膜厚均一性および生産性に優れた無機粒子含有樹脂層を形成する観点から、好ましく用いられている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、近年、高性能を維持しながら製造コストの更なる低減が求められており、特に製造工程の中でも材料毎に高温で焼成して有機成分を消失させる焼成工程がタクトタイム削減の大きな障壁になっているという問題があった。
【0008】
エッチング法による隔壁形成方法において、このタクトタイムを削減するために、はじ
めにペースト状の誘電体形成材料組成物を塗布・乾燥し、次いでペースト状の隔壁形成材料組成物を塗布・乾燥した後、同時焼成することで焼成回数を削減する試みがなされていた。しかしながら、誘電体形成材料層と隔壁形成材料層との層間でミキシングが顕著に発生し、良好な隔壁形状を得ることができなかった。
【特許文献1】特開平6−267422号公報
【特許文献2】特開平9−102273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、誘電体形成材料層と隔壁形成材料層との間のミキシングを低減させ、かつ、工程を簡略化することができるディスプレイパネル部材の形成方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、アスペクト比およびパターン形状に優れたディスプレイパネル部材を形成することができる転写フィルムを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1のディスプレイパネル部材の形成方法は、電極が形成された基板上に、支持フィルム上に形成された誘電体形成材料層を転写し、基板上に転写された誘電体形成材料層上に、支持フィルム上に形成された隔壁形成材料層を転写し、前記誘電体形成材料層および隔壁形成材料層が形成された基板を焼成して誘電体層および隔壁前駆層を形成し、前記隔壁前駆層上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜を露光処理してレジストパターンの潜像を形成し、前記レジスト膜を現像処理してレジストパターンを顕在化させ、前記隔壁前駆層をエッチング処理してレジストパターンに対応する隔壁パターンを形成し、前記レジストパターンを剥離処理して隔壁を形成する工程を含む方法により、表示セルを区画する隔壁を基板上に形成することを特徴とする。
【0012】
本発明の第2のディスプレイパネル部材の形成方法は、電極が形成された基板上に、支持フィルム上に形成された隔壁形成材料層と誘電体形成材料層との積層膜を、前記誘電体形成材料層の表面が前記基板表面に当接されるように転写し、前記積層膜が形成された基板を焼成して誘電体層および隔壁前駆層を形成し、前記隔壁前駆層上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜を露光処理してレジストパターンの潜像を形成し、前記レジスト膜を現像処理してレジストパターンを顕在化させ、前記隔壁前駆層をエッチング処理してレジストパターンに対応する隔壁パターンを形成し、前記レジストパターンを剥離処理して隔壁を形成する工程を含む方法により、表示セルを区画する隔壁を基板上に形成することを特徴とする。
【0013】
本発明のディスプレイパネル部材の形成方法では、前記隔壁前駆層の1%硝酸溶液に対する溶解速度が10μm/分以上であり、かつ、前記誘電体層の1%硝酸溶液に対する溶
解速度が1μm/分以下であることが好ましい。
【0014】
本発明のディスプレイパネル部材形成用転写フィルムは、支持フィルム上に、隔壁形成材料層と誘電体形成材料層との積層膜が、隔壁形成材料層が支持フィルム側となるように形成された転写フィルムであって、該積層膜を焼成処理して得られる隔壁前駆層の1%硝酸溶液に対する溶解速度が10μm/分以上であり、かつ、該積層膜を焼成処理して得ら
れる誘電体層の1%硝酸溶液に対する溶解速度が1μm/分以下であることを特徴とする

【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、誘電体形成材料層と隔壁形成材料層との間のミキシングを低減させ、
かつ、工程を簡略化することができるディスプレイパネル部材の形成方法が提供される。また、アスペクト比およびパターン形状に優れたディスプレイパネル部材を形成することができる転写フィルムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るディスプレイパネル部材形成用転写フィルムおよびディスプレイパネル部材の形成方法について詳細に説明する。
[転写フィルム]
本発明の転写フィルムは、支持フィルム上に、無機粒子および結着樹脂を含有する誘電体形成材料層および隔壁形成材料層(以下、これらを単に「無機粒子含有樹脂層」ともいう。)の積層膜を有し、該隔壁形成材料層が支持フィルム側に形成されている。また、本発明の転写フィルムにおいて、前記積層膜を焼成処理して得られる隔壁前駆層の1%硝酸溶液に対する溶解速度が10μm/分以上であり、かつ、該積層膜を焼成処理して得られ
る誘電体層の1%硝酸溶液に対する溶解速度が1μm/分以下である。なお、各層の溶解
速度等については後述する。
【0017】
上記無機粒子含有樹脂層は、通常、無機粒子、結着樹脂および溶剤を含有する無機粒子含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布し、乾燥させて溶剤の全部または一部を除去することによって形成される。
【0018】
<無機粒子含有樹脂組成物>
本発明の転写フィルムを形成するための無機粒子含有樹脂組成物は、無機粒子、結着樹脂および溶剤を含有する。以下、無機粒子含有樹脂組成物の各構成成分について具体的に説明する。
【0019】
(無機粒子)
本発明の無機粒子含有樹脂組成物に使用される無機粒子としては、形成されるディスプレイパネル部材に応じて異なるが、フラットパネルディスプレイの誘電体および隔壁を形成する場合には、通常、ガラス粒子およびその他の無機酸化物が用いられる。
【0020】
ガラス粒子としては、ガラス軟化点が好ましくは400〜600℃、特に好ましく500〜600℃のガラス粒子が用いられる。このガラス粒子の軟化点が低すぎると、無機粒子含有樹脂層の焼成工程において、結着樹脂などの有機物質が完全に分解除去されない段階でガラス粒子が溶融してしまうため、形成されるディスプレイパネル部材中に有機物質の一部が残留し、表示素子の寿命や表示特性に悪影響を及ぼすおそれがある。一方、ガラス粒子の軟化点が高すぎると、無機粒子含有樹脂層を高温(たとえば、600℃を超える温度)で焼成する必要があるため、該無機粒子含有樹脂層の被転写体であるガラス基板に歪みなどが発生しやすい。
【0021】
誘電体形成用組成物のガラス粉体としては、酸化鉛、酸化ホウ素および酸化ケイ素(PbO−B23−SiO2)系;酸化亜鉛、酸化ホウ素および酸化ケイ素(ZnO−B23
−SiO2)系;酸化鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素および酸化アルミニウム(PbO−B23−SiO2−Al23)系;酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素および酸化ケイ素(PbO−ZnO−B23−SiO2)系;酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素および酸
化チタン(PbO−ZnO−B23−SiO2−TiO2)系;酸化ビスマス、酸化ホウ素および酸化ケイ素(Bi23−B23−SiO2)系などを挙げることができる。
【0022】
上記ガラス粉体の平均粒子径は0.5〜2.5μmであることが好ましい。また、上記ガラス粉体には、たとえば、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化コバルトなどの無機酸化物を混合
してもよい。混合する無機酸化物の含有量は、好ましくは無機粉体全量(ガラス粉体+無機酸化物)の40重量%以下である。
【0023】
隔壁形成用組成物のガラス粒子としては、少なくとも、酸化亜鉛30〜50重量%、酸化ホウ素20〜40重量%、および酸化バリウム20〜40重量%を含むものが好ましく、具体例としては、酸化亜鉛、酸化ホウ素および酸化バリウム(ZnO−B23−BaO)系、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化バリウムおよび酸化ケイ素(ZnO−B23−BaO−SiO2)系、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化バリウムおよび酸化アルミニウム(ZnO
−B23−BaO−Al23)系、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化バリウムおよび酸化リン(ZnO−B23−BaO−P25)系などを挙げることができる。
【0024】
上記ガラス粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5〜5.0μm、特に好ましくは1.0〜4.0μmである。0.5μm未満だと粒子の凝集が生じやすく、転写フィルムの保存安定性が低下する場合がある。5.0μmを超えると無機粒子含有樹脂成物中の粒子の沈降が生じやすくなり、無機粒子含有樹脂層形成時に筋ムラが発生したり、表面平滑性が悪化してカバーフィルムへの密着性が劣るものとなったりする場合がある。
【0025】
上記他の無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化マンガン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化コバルト、酸化ビスマスなどが挙げられる。これらの中では、酸化アルミニウムおよび酸化チタンが好ましい。
【0026】
混合する無機酸化物の含有量は、通常、無機粒子全量(ガラス粒子+無機酸化物)の10〜50重量%、好ましくは、15〜40重量%である。特に、後述する本発明の部材形成方法において得られる無機層の酸に対する溶解速度を調整するには、酸化アルミニウムや酸化チタンの含有量を調整することが有効である。
【0027】
(結着樹脂)
結着樹脂としては、アクリル樹脂を用いることが好ましい。結着樹脂としてアクリル樹脂が含有されていることにより、上記無機粒子含有樹脂組成物には、ガラス基板に対する優れた(加熱)接着性が発揮される。その結果、得られる転写フィルムは、無機粒子含有樹脂層の転写性(ガラス基板への転写性)に優れたものとなる。
【0028】
上記アクリル樹脂としては、適度な粘着性を有して無機粒子を結着させることができ、無機粒子含有樹脂層の焼成処理温度(400〜600℃)によって完全に酸化除去される(共)重合体の中から選択される。このようなアクリル樹脂としては、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物の単独重合体、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物の2種以上の共重合体、および下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物と他の共重合性単量体との共重合体などが挙げられる。
【0029】
【化1】

【0030】
式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は1価の有機基を示す。
上記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリ
レート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート;
ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート
などを挙げることができる。
【0031】
これらの中では、上記式(1)におけるR2で示される基が、アルキル基、アルコキシ
アルキル基またはヒドロキシアルキル基である(メタ)アクリレート化合物が好ましく、特に好ましい(メタ)アクリレート化合物として、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレートおよび2−エトキシエチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0032】
上記(メタ)アクリレート化合物との共重合に供される他の共重合性単量体としては、上記(メタ)アクリレート化合物と共重合可能な化合物であれば特に制限はなく、例えば(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、ビニルフタル酸などの不飽和カルボン酸類;ビニルベンジルメチルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレンなどのビニル基含有ラジカル重合性化合物を挙げることができる。
【0033】
結着樹脂としてアクリル樹脂を用いる場合において、該アクリル樹脂は、上記式(1)
で表される(メタ)アクリレート化合物に由来する重合成分を、通常70重量%以上、好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは100重量%の量で含有する。
【0034】
結着樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、好ましくは50,000〜300,000、特に好ましくは70,000〜200,000である。Mwが低いと、組成物中の結着樹脂量を増やさないと転写フィルムの可撓性が充分なものにならず、結着樹脂量を増やすと、得られる隔壁や誘電体が表面平滑性に劣るものとなる場合がある。
【0035】
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−5〜30℃、特に好ましくは0〜20℃である。Tgが低過ぎる場合は、ガラス基板への転写性が著しく低下し、Tgが高すぎる場合は、フィルムの保存安定性の低下等、フィルム特性の維持が困難になる場合がある。
【0036】
本発明で用いる無機粒子含有樹脂組成物における結着樹脂の含有割合は、無機粒子100重量部に対し、好ましくは15〜40重量部、さらに好ましくは20〜30重量部である。また、結着樹脂が多いと焼成後に表面荒れが生じてしまう場合があるが、上記の含有量によると、転写フィルムの柔軟性が保持され、転写性に優れるとともに、焼成後に生じる表面荒れも抑えることができる。
【0037】
(可塑剤)
本発明で用いられる無機粒子含有樹脂組成物は、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤は、上記無機粒子含有樹脂組成物を用いて転写フィルムを構成したときに良好な柔軟性を与えるために結着樹脂の補助として用いられる。この可塑剤が組成物に含有されることにより、無機粒子含有樹脂層は十分な柔軟性を有するものとなり、得られる転写フィルムは、これを折り曲げても無機粒子含有樹脂層の表面に微小な亀裂(ひび割れ)が発生することがなく、また、ロール状に容易に巻き取ることが可能なものとなる。
【0038】
上記可塑剤としては、下記一般式(2)で表される化合物および下記一般式(3)で表される化合物よりなる群から選ばれた可塑剤、ポリプロピレングリコール、前述した(メタ)アクリレート化合物、特に炭素数10以上の長鎖アルキル基含有(メタ)アクリレート、および後述する溶剤のうち沸点が150℃以上のものが挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
【化2】

【0040】
式(2)中、R3およびR6は、それぞれ独立して炭素数が1〜30の1価の鎖式炭化水素基を示し、R4およびR5は、それぞれ独立してメチレン基または炭素数が2〜30の2価の鎖式炭化水素基を示す。sは0〜5の整数であり、tは1〜10の整数である。
【0041】
上記式(2)において、R3またはR6で示される1価の鎖式炭化水素基、ならびにR4
またはR5で示される2価の鎖式炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく
、また、アルキル基またはアルキレン基(飽和基)であっても、アルケニル基またはアルケニレン基(不飽和基)であってもよい。
【0042】
また、R3またはR6で示される鎖式炭化水素基の炭素数は、通常、1〜30、好ましくは2〜20、さらに好ましくは4〜10である。この鎖式炭化水素基の炭素数が30を超えると、後述する溶剤に対する溶解性が低いものとなるため、得られる無機粒子含有樹脂層に良好な柔軟性を与えることが困難となることがある。
【0043】
上記式(2)で表される化合物の具体例としては、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジブチルセバケート、ジブチルジグリコールアジペートなどが挙げられる。
【0044】
【化3】

【0045】
式(3)中、R7は炭素数が1〜30、好ましくは2〜20、さらに好ましくは10〜
18の1価の鎖式炭化水素基を示し、該鎖式炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、また、アルキル基(飽和基)であってもアルケニル基(不飽和基)であってもよい。
【0046】
上記式(3)で示される化合物の具体例としては、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールモノオレートなどが挙げられる。
また、可塑剤としてポリプロピレングリコールを用いる場合、該ポリプロピレングリコールの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは200〜3,000、特に好ましくは300〜2,000の範囲である。
【0047】
可塑剤の含有割合は、無機粒子含有樹脂組成物から溶剤を除いた全成分の3重量%以上であることが好ましく、より好ましくは4〜15重量%である。
(溶剤)
上記無機粒子含有樹脂組成物は、通常、溶剤を含有する。溶剤としては、無機粒子との親和性および結着樹脂の溶解性が良好で、無機粒子含有樹脂組成物に適度な粘性を付与することができると共に、乾燥することにより容易に蒸発除去できるものであることが好ましい。
【0048】
また、特に好ましい溶剤として、標準沸点(1気圧における沸点)が60〜200℃であるケトン類、アルコール類およびエステル類(以下、これらを「特定溶剤」という。)を挙げることができる。
【0049】
上記特定溶剤の具体例としては、
メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;
n−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系アルコール類;
酢酸−n−ブチル、酢酸アミルなどの飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類;
乳酸エチル、乳酸−n−ブチルなどの乳酸エステル類;
メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのエーテル系エステル類などを挙げることができる。
【0050】
上記特定溶剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記の中では、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、エチル−3−エトキシプロピオネートが好ましい。
【0051】
また、特定溶剤以外の使用可能な溶剤の具体例としては、テレビン油、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコールなどを挙げることができる。
【0052】
溶剤の含有割合としては、無機粒子含有樹脂組成物の粘度を好適な範囲に維持する観点から、無機粒子100重量部に対して、好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは10〜40重量部である。
【0053】
また、全溶剤に対する特定溶剤の含有割合は、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上である。
本発明で用いられる無機粒子含有樹脂組成物には、任意成分として、顔料、分散剤、接着助剤、ハレーション防止剤、レベリング剤、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤、光重合開始剤などの各種添加剤が含有されてもよい。
【0054】
無機粒子含有樹脂組成物は、上記無機粒子、結着樹脂、溶剤および必要に応じて用いられるその他の成分を、ロール混練機、ミキサー、ホモミキサー、サンドミルなどの混練・分散機を用いて混練することにより調製することができる。
【0055】
ここで、無機粒子含有樹脂組成物の粘度としては、0.3〜30Pa・sであることが好ましい。
<支持フィルム>
本発明の転写フィルムは、無機粒子含有樹脂層を支持する支持フィルムを有する。この支持フィルムは、耐熱性および耐溶剤性を有するとともに可撓性を有する樹脂フィルムであることが好ましい。支持フィルムが可撓性を有することにより、ロールコータ、ブレードコーターなどによって支持フィルムの表面に無機粒子含有樹脂組成物を塗布することができ、得られる転写フィルムをロール状に巻回した状態で保存しまたは供給することができる。
【0056】
支持フィルムを形成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフロロエチレンなどの含フッ素樹脂、ナイロン、セルロースなどを挙げることができる。
【0057】
支持フィルムの厚みは、例えば20〜100μmである。また、支持フィルムの表面には離型処理が施されていることが好ましく、これにより、基板への転写工程において、支持フィルムの剥離操作を容易に行うことができる。
【0058】
<カバーフィルム>
本発明の転写フィルムは、無機粒子含有樹脂層の表面を保護するために該無機粒子含有
樹脂層の表面上にカバーフィルムが設けられていてもよい。このカバーフィルムは、可撓性を有する樹脂フィルムであることが好ましく、これにより、得られる転写フィルムをロール状に巻回した状態で保存しまたは供給することができる。
【0059】
カバーフィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリビニルアルコール系フィルムなどを挙げることができる。
【0060】
カバーフィルムの厚みは、例えば10〜100μmである。また、カバーフィルムの表面には離型処理が施されていることが好ましく、これにより、基板への転写工程において、カバーフィルムの剥離操作を容易に行うことができる。
【0061】
<無機粒子含有樹脂層>
無機粒子含有樹脂層は、上述した無機粒子含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布し、得られる塗膜を乾燥して溶剤の全部または一部を除去することにより形成される。
【0062】
無機粒子含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布する方法としては、膜厚の均一性が高くかつ膜厚が大きい(例えば10μm以上の)塗膜を高い効率で形成することができるものであることが好ましい。具体的には、ロールコーターによる塗布方法、ブレードコーターによる塗布方法、カーテンコーターによる塗布方法、ワイヤーコーターによる塗布方法などを挙げることができる。
【0063】
塗膜の乾燥条件としては、例えば、50〜150℃で0.5〜30分間程度であり、乾燥後における溶剤の残存割合(無機粒子含有樹脂層中の含有率)は、通常2重量%以内である。
【0064】
本発明の転写フィルムは、支持フィルム上に隔壁形成材料層と誘電体形成材料層との積層膜を有する。このような積層膜は、上記のようにして支持フィルム上に隔壁形成材料層が形成された転写フィルムと、支持フィルム上に誘電体形成材料層が形成された転写フィルムとを、隔壁形成材料層表面と誘電体形成材料層表面とが当接されるように重ね合わせ、加熱ローラー等で熱圧着することにより形成することができる。熱圧着(転写)条件としては、例えば、加熱ローラの表面温度が80〜140℃、加熱ローラによるローラ圧が1〜5kg/cm、加熱ローラの移動速度が0.1〜10.0m/分である。
【0065】
なお、本発明の転写フィルムにおける支持フィルム上に形成される無機粒子含有樹脂層、すなわち、隔壁形成材料層および誘電体形成材料層は、それぞれ単層であっても複数層であってもよい。
【0066】
[ディスプレイパネル部材の形成方法]
本発明のディスプレイパネル部材形成方法の各工程は、下記の通りである。
(1)基板上に、転写フィルムによって誘電体形成材料層および隔壁形成材料層(無機粒子含有樹脂層)を転写形成する工程。
(2)基板上に形成された無機粒子含有樹脂層(積層膜)を焼成して無機層(誘電体層+隔壁前駆層)を形成する工程。
(3)隔壁前駆層上にレジストパターンを形成する工程。
(4)隔壁前駆層を酸でエッチング処理してレジストパターンに対応する隔壁パターンを形成する工程。
【0067】
なお、上記方法により好適に形成されるディスプレイパネル部材としては、フラットパネルディスプレイ、好ましくはPDP、FED、SEDなどの部材が挙げられ、特にPD
Pの隔壁が好ましいものとして挙げられる。以下、各工程について説明する。
【0068】
(1)無機粒子含有樹脂層の転写工程
無機粒子含有樹脂層の転写工程の一例を示せば以下のとおりである。
転写フィルムのカバーフィルムを剥離した後、電極が形成された基板の表面に、無機粒子含有樹脂層(i)(誘電体形成材料層)の表面が当接されるように転写フィルムを重ね合
わせ、この転写フィルムを加熱ローラなどにより熱圧着する。これにより、基板の表面に誘電体形成材料層が転写されて密着した状態となる。転写条件としては、例えば、加熱ローラの表面温度が80〜140℃、加熱ローラによるローラ圧が1〜5kg/cm、加熱ローラの移動速度が0.1〜10.0m/分である。また、基板は予熱されていてもよく、予熱温度としては例えば40〜100℃とすることができる。
【0069】
引き続き、無機粒子含有樹脂層(i)(誘電体形成材料層)が形成された基板の表面に、
無機粒子含有樹脂層(ii)(隔壁形成材料層)の表面が当接されるように転写フィルムを重ね合わせ、この転写フィルムを加熱ローラなどにより熱圧着する。これにより、基板の表面に誘電体形成材料層と隔壁形成材料層とが転写されて密着した状態となる。転写条件としては、前述した条件と同様である。
【0070】
また、誘電体形成材料層と隔壁形成材料層との積層膜を有する本願発明の転写フィルムを用いて、基板上に誘電体形成材料層と隔壁形成材料層とを同時に転写形成することができる。このような方法は、工程を簡略化することができることから、より好ましい。転写方法および条件は、上述した方法および条件と同様である。
【0071】
(2)無機粒子含有樹脂層の焼成工程
この工程においては、無機粒子含有樹脂層(誘電体形成材料層+隔壁形成材料層)を焼成処理して無機層(誘電体層+隔壁前駆層)を形成する。この工程により、無機粒子含有樹脂層中の有機物質が焼失する。
【0072】
焼成処理の温度としては、有機物質が焼失される温度であることが必要であり、通常400〜600℃である。また、焼成時間は、通常10〜90分間である。
本工程により得られる隔壁前駆層の1%硝酸溶液に対する溶解速度は、好ましくは10μm/分以上、特に好ましくは12μm/分以上である。一方、誘電体層の1%硝酸溶液に対する溶解速度は、好ましくは1μm/分以下、特に好ましくは0.5μm/分以下である。このように酸に対する溶解速度をコントロールすることにより、パターン形状の優れた隔壁が得られ、なおかつ酸に対するダメージが少なく膜厚均一性が良好な誘電体を形成することができる。
【0073】
溶解速度は、ガラス基板(5cm角、厚さ2.3mm)の表面に無機層を形成した試験片を1重量%の硝酸水溶液に浸漬し、マグネチックスターラーを用いて溶液の攪拌を行い、溶解膜厚と溶解時間を測定し、以下の式により算出した値である。
【0074】
溶解速度(μm/分)=溶解膜厚(μm)/溶解時間(分)
無機層の溶解速度は、ガラス粒子や無機酸化物の構成成分として、SiO2、TiO2、Al23の割合が多いと遅くなる傾向にあり、ZnO、B23、BaO、P25の割合が多いと速くなる傾向にある。そのため、ガラス粒子や無機酸化物の各構成成分量を適宜調整することで、所望の溶解速度を得ることができる。
【0075】
(3)レジストパターンの形成工程
この工程においては、焼成工程により得られた無機層の上に、エッチングマスクとなるレジストパターンを形成する。レジストパターンの形成方法としては、スクリーン印刷等
によりパターンを印刷する方法、無機層上にレジスト膜を形成し、フォトリソグラフィー法によりパターンを形成する方法等が挙げられるが、特に、解像性の点からフォトリソグラフィー法が好ましい。
【0076】
レジスト膜は、後述するレジスト組成物を無機層上に塗布、乾燥することにより形成される。なお、支持フィルム上にレジスト膜を形成した転写フィルムを用い、無機層上に該レジスト膜を転写することにより形成してもよい。レジスト膜の膜厚としては、例えば5〜30μmである。なお、レジスト組成物の具体的な組成については後述する。
【0077】
次に、形成されたレジスト膜の表面に、露光用マスクを介して、紫外線などの放射線を選択的に照射(露光)して、レジストパターンの潜像を形成する。紫外線照射装置としては、特に限定されず、前記フォトリソグラフィー法で使用されている紫外線照射装置、半導体および液晶表示装置を製造する際に使用されている露光装置などが挙げられる。なお、転写フィルムを用いてレジスト膜を形成する場合、レジスト膜上に被覆されている支持フィルムは剥離しない状態で露光工程を行い、露光後に剥離することが好ましい。
【0078】
最後に、露光されたレジスト膜を現像処理することにより、レジストパターン(潜像)を顕在化させる。現像処理条件としては、レジスト膜の種類などに応じて、現像液の種類・組成・濃度、現像時間、現像温度、現像方法(例えば、浸漬法、揺動法、シャワー法、スプレー法、パドル法)、現像装置などを適宜選択することができる。
【0079】
この現像工程により、レジスト残留部とレジスト除去部とから構成されるレジストパターン(露光用マスクに対応するパターン)が形成される。
(4)無機層のエッチング工程
この工程においては、隔壁前駆層をエッチング処理し、レジストパターンに対応する隔壁パターンを形成する。すなわち、隔壁前駆層のうち、レジストパターンのレジスト除去部に対応する部分がエッチング液に溶解されて選択的に除去される。そして、隔壁前駆層における所定の部分が完全に除去されて誘電体層が露出する。これにより、隔壁前駆層残留部と隔壁前駆層除去部とから構成される隔壁パターンが形成される。
【0080】
エッチング処理条件としては、隔壁前駆層を形成する無機粒子の種類や形成する部材の形状などに応じて、エッチング液の種類・組成・濃度、処理時間、処理温度、処理方法(例えば、浸漬法、揺動法、シャワー法、スプレー法、パドル法)、処理装置などを適宜選択することができる。エッチング液としては、硝酸、塩酸、硫酸等の酸が用いられ、特に硝酸が好適に用いられる。エッチング液の濃度としては、通常、0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜2重量%である。
【0081】
なお、レジストパターンを構成するレジスト残留部は、この工程の後、剥離液や溶剤、アルカリ水溶液により除去される。
<レジスト膜(レジスト組成物)>
本発明に用いられるレジスト膜は、通常、バインダーポリマー、多官能性モノマーおよび放射線重合開始剤を含有するレジスト組成物を塗布して形成される。
【0082】
レジスト組成物に用いられるバインダーポリマーは、アルカリ現像型の場合にはアルカリ可溶性樹脂である必要があり、分子中に少なくとも1個以上のカルボキシル基を有するエチレン不飽和性のカルボキシル基含有単量体と、このカルボキシル基含有単量体と共重合可能な共重合性単量体とを含む単量体組成物を重合することにより得られるカルボキシル基含有共重合体であることが好ましい。
【0083】
カルボキシル基含有単量体の具体例としては、(a)アクリル酸、メタクリル酸、クロ
トン酸などの不飽和モノカルボン酸、(b)イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸、および(c)その他の不飽和カルボン酸が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
上記カルボキシル基含有単量体に由来する構成単位を有する共重合体は、アルカリ溶解性を有し、特に上記の割合でカルボキシル基含有単量体を用いることにより得られる共重合体は、アルカリ現像液に対して優れた溶解性を有するものとなる。したがって、これをバインダーポリマーとして用いたレジスト組成物は、アルカリ現像液に対する未溶解物の生成が本質的に少ないものとなり、現像処理において基板のレジストパターン形成部以外の個所における地汚れ、膜残りなどが発生しにくいものである。また、得られるレジストパターンは、アルカリ現像液に過剰に溶解することがなく、無機粒子含有樹脂層に対して優れた密着性を有するため、無機粒子含有樹脂層から脱落しにくいものである。
【0085】
上記共重合性単量体の具体例としては、(d)スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物類、(e)メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸アルキルエステル類、(f)アミノエチルアクリレートなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル類、(g)グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル類、(h)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類、(i)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物類、(j)1,3−ブタジエン、イソプレンなどの脂肪族共役ジエン類、(k)それぞれ末端にアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するポリスチレン、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリシリコーンなどのマクロモノマー類などが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
バインダーポリマーにおけるカルボキシル基含有単量体の共重合割合は、単量体全量に対して5〜50重量%、特に10〜40重量%であることが好ましい。カルボキシル基含有単量体の共重合割合が5重量%未満の場合には、得られるレジスト組成物は、アルカリ現像液に対する溶解性が低くなる傾向がある。一方、カルボキシル基含単量体の共重合割合が50重量%を超える場合には、現像時にレジストパターンが無機粒子ペースト層から脱落する傾向がある。
【0087】
上記バインダーポリマーは、Mwが好ましくは3,000〜300,000、特に好ましくは5,000〜200,000である。このような分子量を有するバインダーポリマーを用いることによって、現像性の高いレジスト組成物が得られ、これにより、シャープなパターンエッジを有するレジストパターンを形成することができると共に、均一なパターンを有するパネル部材を形成できる。
【0088】
多官能性モノマーとしては、多官能性(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。多官能性(メタ)アクリレートの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類;両末端ヒドロキシポリブタジエン、両末端ヒドロキシポリイソプレン、両末端ヒドロキシポリカプロラクトンなどの両末端ヒドロキシル化重合体のジ(メタ)アクリレート類;グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールアルカン、テトラメチロ
ールアルカン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類;3価以上の多価アルコールのポリアルキレングリコール付加物のポリ(メタ)アクリレート類;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ベンゼンジオール類などの環式ポリオールのポリ(メタ)アクリレート類;ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、スピラン樹脂(メタ)アクリレート等のオリゴ(メタ)アクリレート類などを挙げることができる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
上記多官能性(メタ)アクリレートの分子量としては、100〜2,000であることが好ましい。多官能性モノマーの使用割合は、バインダーポリマー100重量部に対して、通常、5〜100重量部、好ましくは10〜70重量部である。この割合が5重量部未満である場合には、レジストパターン強度が不十分なものとなりやすい傾向がある。一方、この割合が100重量部を超える場合には、アルカリ解像性が低下したり、レジストパターン形成部以外の地汚れ、膜残りなどが発生したりする傾向がある。
【0090】
また、放射線重合開始剤としては、たとえば、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、カンファーキノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−〔4’−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバ
ゾール−3−イル]−エタン−1−オンオキシム−O−アセタートなどのカルボニル化合
物;アゾイソブチロニトリル、4−アジドベンズアルデヒドなどのアゾ化合物もしくはアジド化合物;メルカプタンジスルフィドなどの有機硫黄化合物;ベンゾイルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、tert−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、パラメタンハイドロパーオキシドなどの有機パーオキシド;1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2’−クロロフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−(2−フラニル)エチレニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどのトリハロメタン類;2,2’−ビス(2−クロロフェニル)4,5,4’,5’−テトラフェニル1,2’−ビイミダゾールなどのイミダゾール二量体などを挙げることができる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
本発明で用いられるレジスト組成物には、該レジスト組成物に適当な流動性または可塑性、および良好な膜形成性を付与するために、通常、溶剤が含有される。レジスト組成物に含有される溶剤としては、特に制限されるものではなく、上述した特定溶剤が好ましく用いられる。
【0092】
本発明で用いられるレジスト組成物には、任意成分として、現像促進剤、接着助剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、フィラー、蛍光体、顔料、染料などの各種添加剤が含有されていてもよい。
【0093】
レジスト膜を転写法により形成する場合に用いる転写フィルムは、支持フィルム上にレジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成して得られる。レジスト組成物を塗布、乾燥する方法としては、上述した無機粒子含有樹脂組成物の塗布、乾燥方法を用いることができる。
【0094】
[実施例]
以下、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に
限定されるものではない。なお、以下において、「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を示す。また、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミィエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC−802A」(東ソー株式会社製)により測定したポリスチレン換算の平均分子量である。
【0095】
〔合成例1〕
3−エトキシプロピオン酸エチル200部、n−ブチルメタクリレート50部、2−エチルヘキシルメタクリレート40部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート10部、アゾビスイソブチロニトリル0.2部からなる単量体組成物を、攪拌機付きオートクレーブに仕込み、窒素雰囲気下において、室温で均一になるまで攪拌した。次いで、80℃で3時間重合させ、さらに100℃で1時間重合反応を継続させた後、室温まで冷却してポリマー溶液を得た。重合転化率は98%であり、このポリマー溶液から析出した共重合体(以下「ポリマー(A)」という。)の重量平均分子量(Mw)は80,000、ガラス転移温度(Tg)は7.8℃であった。
【0096】
〔合成例2〕
プロピレングリコールモノメチルエーテル200部、n−ブチルメタクリレート30部、2−エチルヘキシルメタクリレート60部、2−エトキシエチルメタクリレート10部、アゾビスイソブチロニトリル0.1部からなる単量体組成物を、攪拌機付きオートクレーブに仕込み、窒素雰囲気下において、室温で均一になるまで攪拌した。次いで、80℃で3時間重合させ、さらに100℃で1時間重合反応を継続させた後、室温まで冷却してポリマー溶液を得た。重合転化率は98%であり、このポリマー溶液から析出した共重合体(以下「ポリマー(B)」という。)の重量平均分子量(Mw)は150,000、ガラス転移温度(Tg)は−4.1℃であった。
【0097】
〔合成例3〕
プロピレングリコールモノメチルエーテル200部、i−ブチルメタクリレート40部、n−ブチルメタクリレート30部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート20部、ラウリルメタクリレート10部、アゾビスイソブチロニトリル0.1部からなる単量体組成物をオートクレーブに仕込んだこと以外は合成例1と同様にしてポリマー溶液を得た。重合転化率は97%であり、このポリマー溶液から析出させた共重合体(以下「ポリマー(C)」という。)の重量平均分子量(Mw)は130,000、ガラス転移温度(Tg)は19.4℃であった。
【0098】
〔合成例4〕
プロピレングリコールモノメチルエーテル200部、n−ブチルメタクリレート40部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート20部、2−エチルヘキシルメタクリレート40部、アゾビスイソブチロニトリル0.1部からなる単量体組成物をオートクレーブに仕込んだこと以外は合成例1と同様にしてポリマー溶液を得た。重合転化率は98%であり、このポリマー溶液から析出させた共重合体(以下「ポリマー(D)」という。)の重量平均分子量(Mw)は150,000、ガラス転移温度(Tg)は8.3℃であった。
【0099】
〔合成例5〕
3−エトキシプロピオン酸エチル200部、n−ブチルメタクリレート85部、メタクリル酸15部、アゾビスイソブチロニトリル1部からなる単量体組成物をオートクレーブに仕込んだこと以外は合成例1と同様にしてポリマー溶液を得た。重合転化率は98%であり、このポリマー溶液から析出させた共重合体(以下「ポリマー(E)」という。)の重量平均分子量(Mw)は50,000、ガラス転移温度(Tg)は39.5℃であった。
【0100】
〔作製例1〕
ガラス粒子としてPbO−B23−SiO2−Al23系ガラス(熱軟化点530℃、
平均粒径1.6μm)85部と、フィラーとしてTiO2(平均粒径1.0μm)15部
と、結着樹脂としてポリマー(A)30部と、可塑剤としてジ−2−エチルヘキシルフタレート3部と、分散剤としてn−ヘキサデシルトリメトキシシラン1部と、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル50部とを混練することにより、ペースト状の誘電体形成材料組成物(以下「誘電体形成材料組成物(1)」という。)を調製した。
【0101】
得られた誘電体形成材料組成物(1)を、予め離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムよりなる支持フィルム(幅200mm,長さ30m,厚さ38μm)上にロールコータにより塗布して塗膜を形成した。形成された塗膜を100℃で10分間乾燥することにより溶剤を除去することにより、厚さ45μmの誘電体形成材料層(以下「誘電体形成材料層(1)」という。)が支持フィルム上に形成されてなる転写フィルム(以下「転写フィルム(1)」という。)を作製した。
【0102】
〔作製例2〕
ガラス粒子としてZnO−B23−BaO−P25系ガラス(熱軟化点510℃、平均粒径3.0μm)90部と、フィラーとしてAl23(平均粒径1.0μm)10部と、バインダー樹脂としてポリマー(C)20部と、可塑剤としてジ−2−エチルヘキシルアゼレート4部と、分散剤としてn−デシルトリメトキシシラン1部と、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル50部とを混練することにより、ペースト状の隔壁形成材料組成物(以下「隔壁形成材料組成物(1)」という。)を調製した。
【0103】
得られた隔壁形成材料組成物(1)を、予め離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムよりなる支持フィルム(幅200mm,長さ30m,厚さ38μm)上にロールコータにより塗布して塗膜を形成した。形成された塗膜を100℃で10分間乾燥することにより溶剤を除去することにより、厚さ120μmの隔壁形成材料層(以下「隔壁形成材料層(1)」という。)が支持フィルム上に形成されてなる転写フィルム〔以下「転写フィルム(2)」という。)を作製した。
【0104】
次いで、隔壁形成材料層(1)の表面と隔壁形成材料層(1)の表面が当接されるよう転写フィルム(2)同士を重ね合わせ、加熱ローラにより熱圧着することで転写フィルム(3)を得た。ここで、圧着条件としては、加熱ローラの表面温度を90℃、ロール圧を4kg/cm、加熱ローラの移動速度を1m/分とした。得られた転写フィルム(3)における無機粒子含有樹脂層の膜厚を非接触三次元形状測定装置(三鷹光器(株)製、型番:NH−3、以下同じ。)で測定したところ、240μmであった。
【0105】
〔作製例3〕
ガラス粒子としてBi23−B23−SiO2系ガラス(熱軟化点520℃、平均粒径
2μm)90部と、フィラーとしてAl23(平均粒径1.0μm)10部と、結着樹脂としてポリマー(B)30部と、可塑剤としてジ−2−エチルヘキシルフタレート3部と、分散剤としてn−デシルトリメトキシシラン1部と、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル50部とを混練することにより、ペースト状の誘電体形成材料組成物(以下「誘電体形成材料組成物(2)」という。)を調製した。
【0106】
得られた誘電体形成材料組成物(2)を、予め離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムよりなる支持フィルム(幅200mm,長さ30m,厚さ38μm)上にロールコータにより塗布して塗膜を形成した。形成された塗膜を100℃で10分間乾燥することにより溶剤を除去することにより、厚さ45μmの誘電体形成材料層(以下「誘電体形成材料層(2)」という。)が支持フィルム上に形成されてなる転写フィル
ム(以下「転写フィルム(4)」という。)を作製した
ガラス粒子としてZnO−B23−BaO−SiO2系ガラス(熱軟化点520℃、平
均粒径2.5μm)90部と、フィラーとしてAl23(平均粒径1.0μm)10部と、バインダー樹脂としてポリマー(D)20部と、可塑剤としてジ−2−エチルヘキシルアゼレート3部と、分散剤として2−ヒドロキシプロピルアクリレート/2−エトキシエチルアクリレート/スチレン共重合体1部と、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル50部とを混練することにより、ペースト状の隔壁形成材料組成物(以下「隔壁形成材料組成物(2)」という。)を調製した。
【0107】
得られた隔壁形成材料組成物(2)を、予め離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムよりなる支持フィルム(幅200mm,長さ30m,厚さ38μm)上にロールコータにより塗布して塗膜を形成した。形成された塗膜を100℃で10分間乾燥することにより溶剤を除去することにより、厚さ120μmの隔壁形成材料層(以下「隔壁形成材料層(2)」という。)が支持フィルム上に形成されてなる転写フィルム(以下「転写フィルム(5)」という。)を作製した。
【0108】
次いで、隔壁形成材料層(2)の表面と隔壁形成材料層(2)の表面が当接されるよう転写フィルム(5)同士を重ね合わせ、加熱ローラにより熱圧着することで転写フィルム(6)を得た。ここで、圧着条件としては、加熱ローラの表面温度を90℃、ロール圧を4kg/cm、加熱ローラの移動速度を1m/分とした。得られた転写フィルム(6)における無機粒子含有樹脂層の膜厚を測定したところ、240μmであった。
【0109】
次いで、転写フィルム(4)の誘電体形成材料層(2)表面と転写フィルム(6)の隔壁形成材料層(2)表面が当接されるよう転写フィルム(4)と転写フィルム(6)を重ね合わせ、加熱ローラにより熱圧着することで転写フィルム(7)を得た。ここで、圧着条件としては、加熱ローラの表面温度を90℃、ロール圧を4kg/cm、加熱ローラの移動速度を1m/分とした。得られた転写フィルム(7)における無機粒子含有樹脂層の膜厚を測定したところ、285μmであった。
【0110】
〔作製例4〕
アルカリ可溶性樹脂としてポリマー(E)50部と、多官能性モノマー(感放射線性成分)としてペンタエリスリトールテトラアクリレート40部と、光重合開始剤(感放射線性成分)として2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン5部と、溶剤として3−エトキシプロピオン酸エチル150部とを混練することにより、ペースト状のアルカリ現像型感放射線性レジスト組成物を調製した。
【0111】
次いで、得られたレジスト組成物を、予め離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムよりなる支持フィルム(幅200mm,長さ30m,厚さ38μm)上にロールコータにより塗布して塗膜を形成した。形成された塗膜を100℃で5分間乾燥することにより溶剤を完全に除去することにより、厚さ20μmのレジスト膜(以下「レジスト膜(1)」という。)が支持フィルム上に形成されてなる転写フィルム(以下「転写フィルム(8)」という。)を作製した。
【0112】
〔無機粒子含有樹脂層から得られる無機層の溶解性評価〕
作製例1〜3で形成した誘電体形成材料層および隔壁形成材料層の各々を用いて下記の方法により無機層を形成し、1重量%の硝酸水溶液に対する溶解性を評価した。評価方法は以下のとおりであり、評価結果を下記表1に示す。
【0113】
(評価方法) ガラス基板(5cm角、厚さ2.3mm)の表面に、誘電体形成材料層(1)〜(2)および隔壁形成材料層(1)〜(2)の各々を転写した後、560℃で1
5分焼成することにより、誘電体層または隔壁前駆層を有する試験片を作製した。得られた試験片を1重量%の硝酸水溶液に浸漬し、マグネチックスターラーを用いて溶液の攪拌を行いながら試験片表面を観察した。試験片表面の無機層の溶解により、溶解膜厚と溶解時間を測定し、以下の式により溶解速度を算出した。
溶解速度(μm/分)=膜厚(μm)/溶解時間(分)
【0114】
【表1】

【0115】
<実施例1>
〔誘電体形成材料層の転写工程〕
プラズマを発生させるための電極(100μm幅)が配列されてなる6インチパネル用のガラス基板の表面に、誘電体形成材料層(1)の表面が当接されるよう転写フィルム(1)を重ね合わせ、この転写フィルム(1)を加熱ローラにより熱圧着した。ここで、圧着条件としては、加熱ローラの表面温度を100℃、ロール圧を4kg/cm 、加熱ロ
ーラの移動速度を0.5m/分とした。熱圧着処理後、誘電体形成材料層(1)から支持フィルムを剥離除去した。
【0116】
〔隔壁形成材料層の転写工程〕
支持フィルムが剥離除去された誘電体形成材料層(1)の表面に、隔壁形成材料層(1)の表面が当接されるよう転写フィルム(3)を重ね合わせ、この転写フィルム(3)を加熱ローラにより熱圧着した。ここで、圧着条件としては、加熱ローラの表面温度を100℃、ロール圧を4kg/cm 、加熱ローラの移動速度を0.5m/分とした。熱圧着
処理の終了後、隔壁形成材料層(1)から支持フィルムを剥離除去した。これにより、ガラス基板の表面に誘電体形成材料層(1)および隔壁形成材料層(1)が積層・転写されて密着した状態となった。この誘電体形成材料層(1)と隔壁形成材料層(1)との積層膜について膜厚を測定したところ285μm±2μmの範囲にあった。
【0117】
〔無機粒子含有樹脂層の焼成工程〕
誘電体形成材料層(1)および隔壁形成材料層(1)が形成されたガラス基板を560℃の温度雰囲気下で15分間にわたり焼成処理を行った。これにより、ガラス基板上に誘電体層(1)および隔壁前駆層(1)(ともにガラス焼結体)が形成された。
【0118】
〔レジスト膜の形成工程〕
隔壁前駆層(1)の表面に、レジスト膜(1)の表面が当接されるよう転写フィルム(8)を重ね合わせ、この転写フィルム(8)を加熱ローラにより上記と同一の圧着条件により熱圧着した。熱圧着処理の終了後、レジスト膜(1)から支持フィルムを剥離除去した。これにより、隔壁前駆層(1)の表面にレジスト膜(1)が転写されて密着した状態となった。隔壁前駆層(1)の表面に転写されたレジスト膜(1)について膜厚を測定したところ20μm±1μmの範囲にあった。
【0119】
〔レジスト膜の露光工程〕
隔壁前駆層(1)上に形成されたレジスト膜(1)に対して、露光用マスク(100μm幅のストライプパターン)を介して、超高圧水銀灯により、i線(波長365nmの紫外線)を照射した。なお、照射量は400mJ/cm2とした。
【0120】
〔レジスト膜の現像工程〕
露光処理されたレジスト膜(1)に対して、0.3重量%の炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を現像液とするシャワー法による現像処理を30秒間かけて行った。次いで、超純水による水洗処理を行うことにより、紫外線が照射されていない未硬化のレジストを除去し、レジストパターンを形成した。
【0121】
〔隔壁前駆層のエッチング工程〕
上記の工程に連続して、1重量%の硝酸水溶液(40℃)をエッチング液とするシャワー法によるエッチング処理を10分間かけて行った。次いで、超純水による水洗処理および乾燥処理を行った。これにより、材料層残留部と材料層除去部とから構成される隔壁パターンを形成した。最後に、炭酸ナトリウム1%(30℃)を剥離液としてシャワー法によるレジスト剥離処理を60秒間かけて行った後、超純水による水洗処理を行うことにより、隔壁パターンを形成した。
【0122】
得られたパネル材料における隔壁の断面形状を走査型電子顕微鏡により観察し、断面形状の底面の幅および高さを測定したところ、底面の幅が60μm±3μm、高さが120μm±2μmであり、得られた隔壁の寸法精度はきわめて高いものであった。また、アスペクト比も2と高いものであった。
【0123】
また、得られたパネル材料を使用し、常法に従ってプラズマディスプレイパネルを製造した。このプラズマディスプレイパネルは、蛍光体部位において高い輝度を有するものであり、品質の高いカラー画像を表示するものであった。
【0124】
<実施例2>
〔誘電体形成材料層/隔壁形成材料層の積層膜の転写工程〕
プラズマを発生させるための電極(100μm幅)が配列されてなる6インチパネル用のガラス基板の表面に、誘電体形成材料層(2)の表面が当接されるよう転写フィルム(7)を重ね合わせ、この転写フィルム(7)を加熱ローラにより熱圧着した。ここで、圧着条件としては、加熱ローラの表面温度を100℃、ロール圧を4kg/cm 、加熱ロ
ーラの移動速度を0.5m/分とした。熱圧着処理の終了後、隔壁形成材料層(2)から支持フィルムを剥離除去した。これにより、ガラス基板の表面に誘電体形成材料層(2)と隔壁形成材料層(2)が積層・転写されて密着した状態となった。この誘電体形成材料層(2)と隔壁形成材料層(2)の積層膜について膜厚を測定したところ285μm±2μmの範囲にあった。
【0125】
〔無機粒子含有樹脂層の焼成工程〕
誘電体形成材料層(2)と隔壁形成材料層(2)が積層形成されたガラス基板を560℃の温度雰囲気下で15分間にわたり焼成処理を行った。これにより、ガラス基板上に誘電体層(2)と隔壁前駆層(2)(ともにガラス焼結体)が形成された。
【0126】
〔レジスト膜の形成工程〕
隔壁前駆層(2)の表面に、レジスト膜(1)の表面が当接されるように転写フィルム(8)を重ね合わせ、この転写フィルム(8)を加熱ローラにより上記と同一の圧着条件により熱圧着した。熱圧着処理の終了後、レジスト膜(1)から支持フィルムを剥離除去した。これにより、隔壁前駆層(2)の表面にレジスト膜(1)が転写されて密着した状態となった。隔壁前駆層(2)の表面に転写されたレジスト膜(1)について膜厚を測定
したところ20μm±1μmの範囲にあった。
【0127】
〔レジスト膜の露光工程〕
隔壁前駆層(2)上に形成されたレジスト膜(1)に対して、露光用マスク(100μm幅のストライプパターン)を介して、超高圧水銀灯により、i線(波長365nmの紫外線)を照射した。なお、照射量は400mJ/cm2とした。
【0128】
〔レジスト膜の現像工程〕
露光処理されたレジスト膜(1)に対して、0.3重量%の炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を現像液とするシャワー法による現像処理を30秒間かけて行った。次いで、超純水による水洗処理を行うことにより、紫外線が照射されていない未硬化のレジストを除去し、レジストパターンを形成した。
【0129】
〔隔壁前駆層のエッチング工程〕
上記の工程に連続して、1重量%の硝酸水溶液(40℃)をエッチング液とするシャワー法によるエッチング処理を12分間かけて行った。次いで、超純水による水洗処理および乾燥処理を行った。これにより、材料層残留部と材料層除去部とから構成される隔壁パターンを形成した。最後に、炭酸ナトリウム1%(30℃)を剥離液としてシャワー法によるレジスト剥離処理を60秒間かけて行った後、超純水による水洗処理を行うことにより、隔壁パターンを形成した。
【0130】
得られたパネル材料における隔壁の断面形状を走査型電子顕微鏡により観察し、断面形状の底面の幅および高さを測定したところ、底面の幅が60μm±3μm、高さが120μm±2μmであり、得られた隔壁の寸法精度はきわめて高いものであった。また、アスペクト比も2と高いものであった。
【0131】
また、得られたパネル材料を使用し、常法に従ってプラズマディスプレイパネルを製造した。このプラズマディスプレイパネルは、蛍光体部位において高い輝度を有するものであり、品質の高いカラー画像を表示するものであった。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】交流型のPDPの断面形状を示す模式図である。
【符号の説明】
【0133】
101 ガラス基板
102 ガラス基板
103 隔壁
104 透明電極
105 バス電極
106 アドレス電極
107 蛍光物質
108 誘電体層
109 誘電体層
110 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極が形成された基板上に、支持フィルム上に形成された誘電体形成材料層を転写し、
基板上に転写された誘電体形成材料層上に、支持フィルム上に形成された隔壁形成材料層を転写し、
前記誘電体形成材料層および隔壁形成材料層が形成された基板を焼成して誘電体層および隔壁前駆層を形成し、
前記隔壁前駆層上にレジスト膜を形成し、
前記レジスト膜を露光処理してレジストパターンの潜像を形成し、
前記レジスト膜を現像処理してレジストパターンを顕在化させ、
前記隔壁前駆層をエッチング処理してレジストパターンに対応する隔壁パターンを形成し、
前記レジストパターンを剥離処理して隔壁を形成する工程
を含む方法により、表示セルを区画する隔壁を基板上に形成することを特徴とするディスプレイパネル部材の形成方法。
【請求項2】
電極が形成された基板上に、支持フィルム上に形成された隔壁形成材料層と誘電体形成材料層との積層膜を、前記誘電体形成材料層の表面が前記基板表面に当接されるように転写し、
前記積層膜が形成された基板を焼成して誘電体層および隔壁前駆層を形成し、
前記隔壁前駆層上にレジスト膜を形成し、
前記レジスト膜を露光処理してレジストパターンの潜像を形成し、
前記レジスト膜を現像処理してレジストパターンを顕在化させ、
前記隔壁前駆層をエッチング処理してレジストパターンに対応する隔壁パターンを形成し、
前記レジストパターンを剥離処理して隔壁を形成する工程
を含む方法により、表示セルを区画する隔壁を基板上に形成することを特徴とするディスプレイパネル部材の形成方法。
【請求項3】
前記隔壁前駆層の1%硝酸溶液に対する溶解速度が10μm/分以上であり、かつ、前
記誘電体層の1%硝酸溶液に対する溶解速度が1μm/分以下であることを特徴とする請
求項1または2に記載のディスプレイパネル部材の形成方法。
【請求項4】
支持フィルム上に、隔壁形成材料層と誘電体形成材料層との積層膜が、隔壁形成材料層が支持フィルム側となるように形成された転写フィルムであって、
該積層膜を焼成処理して得られる隔壁前駆層の1%硝酸溶液に対する溶解速度が10μm/分以上であり、かつ、該積層膜を焼成処理して得られる誘電体層の1%硝酸溶液に対
する溶解速度が1μm/分以下であることを特徴とするディスプレイパネル部材形成用転
写フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2008−41399(P2008−41399A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213551(P2006−213551)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】