説明

ディスプレイ用フィルター

【課題】
高い光沢感と高い透明感を有し、かつ低価格化が図られたディスプレイ用フィルターを提供する。
【解決手段】
基材上にメッシュ状導電層を有し、該メッシュ状導電層上に表面層が直接に積層されたディスプレイ用フィルターであって、前記表面層の最表面における平均高低差が0.1μm未満であることを特徴とする、ディスプレイ用フィルター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CRT、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等のディスプレイの前面に装着されるディスプレイ用フィルターに関する。詳しくは、電磁波遮蔽性を有し、かつ表面の光沢感や透明感が良好なディスプレイ用フィルターに関し、特にプラズマディスプレイに好適なディスプレイ用フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
CRT、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、及び有機ELディスプレイ等のディスプレイは、通常、その前面に、反射防止性、電磁波遮蔽性、あるいは近赤外線遮蔽性等の機能を有するディスプレイ用フィルターが装着されている。特にプラズマディスプレイは強度な電磁波が発生するため、電磁波遮蔽機能を有するディスプレイ用フィルターが通常用いられている。
【0003】
また、ディスプレイ用フィルターには、蛍光灯等の外光の反射を防止するための反射防止機能やディスプレイ用フィルターに傷等が発生することを防止するためのハードコート機能も一般的に付与されている。
【0004】
従来、ディスプレイ用フィルターとしては、電磁波遮蔽機能を有する電磁波遮蔽フィルム(基材フィルムに電磁波遮蔽層を積層したフィルム)と、反射防止性やハードコート性を有する光学フィルム(基材フィルムに反射防止層やハードコート層が積層されたフィルム)とが粘着剤層で積層されたディスプレイ用フィルターが一般に用いられている。
【0005】
近年、ディスプレイの低価格化に伴ってディスプレイ用フィルターも低価格化が余儀なくされている。上記のような複数枚のフィルムからなるディスプレイ用フィルターに対して、電磁波遮蔽フィルムの電磁波遮蔽層(メッシュ状導電層)上に、直接に反射防止層やハードコート層等の表面層を積層することによって、基材フィルム数が低減されて低価格化が図られる。
上記のメッシュ状導電層上に直接に反射防止層やハードコート層等の表面層を積層することが提案されている(例えば、特許文献1〜4)
一方、近年、高い光沢感と高い透明感を有するディスプレイ用フィルターの要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−80253号公報
【特許文献2】特開2009−223292号公報
【特許文献3】特開2008−216770号公報
【特許文献4】国際公開第2009/004957号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、メッシュ状導電層上に、直接に反射防止層やハードコート層等の表面層を積層すると、メッシュ状導電層の凹凸に起因する凹凸が表面層に形成されるため、ディスプレイ用フィルターの光沢感と透明感が低下するという問題がある。
【0008】
上記した特許文献に開示されているディスプレイ用フィルターは、いずれも、本発明が目的とするところの高い光沢感と高い透明感を満足するまでには至っていなかった。
【0009】
また、ディスプレイ用フィルターの高い光沢感と高い透明感を実現すると、干渉縞が目立ちやすくなるという問題がある。
【0010】
従って、本発明の目的は、高い光沢感と高い透明感を有し、かつ低価格化が図られたディスプレイ用フィルターを提供することにある。本発明の他の目的は、更に干渉縞が抑制されたディスプレイ用フィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の発明によって基本的に達成された。
1) 基材と、
該基材の上に設けられたメッシュ状導電層と、
該メッシュ状導電層の上に直接に積層された表面層とを有し、
該表面層の最表面における下記で定義される平均高低差が0.1μm未満であるディスプレイ用フィルター。
(平均高低差の定義)
表面層の最表面におけるある1つの高低差は、メッシュ状導電層のある1つの開口部の重心に対応する表面層最表面の点を点A、該開口部に隣接する開口部の重心に対応する表面層最表面の点を点C、点Aと点Cとを結ぶ線分を線分Y、線分Yとメッシュ状導電層の細線部2との交点に対応する表面層最表面の点を点Bとしたとき、点Aから点Bまでの垂直距離L(高低差)であり、
表面層の最表面における平均高低差は、任意に選択した5つの開口部における前記垂直距離L(高低差)の平均値である。
2) 前記表面層は平坦化処理が施されずに積層されている、前記1)に記載のディスプレイ用フィルター。
3) 前記表面層が、前記メッシュ状導電層から近い順に第1樹脂層と第2樹脂層とを含み、前記第1樹脂層の厚みが1〜15μmで、かつ前記第2樹脂層の厚みが1〜12μmである、前記1)または2)に記載のディスプレイ用フィルター。
4) 前記メッシュ状導電層は表面層が積層される側の表面に黒化層を有し、前記第1樹脂層の厚みが4〜15μmでかつ前記メッシュ状導電層の厚み100%に対して130%以上である、前記3)に記載のディスプレイ用フィルター。
5) 前記メッシュ状導電層は前記表面層が積層される側の表面に黒化層を有さず、前記第1樹脂層が平均粒子径0.2〜10μmの粒子を前記第1樹脂層の全成分100質量%に対して0.1〜10質量%含有する、前記3)に記載のディスプレイ用フィルター。
6) 前記第2樹脂層がハードコート層である、前記3)〜5)のいずれかに記載のディスプレイ用フィルター。
7) 前記第1樹脂層がハードコート層である、前記3)〜6)のいずれかに記載のディスプレイ用フィルター。
8) 前記表面層が反射防止層を含む、前記1)〜7)のいずれかに記載のディスプレイ用フィルター。
9) 前記基材の前記メッシュ状導電層とは反対面に近赤外線遮蔽機能を有する層を有する、前記1)〜8)のいずれかに記載のディスプレイ用フィルター。
10) 前記近赤外線遮蔽機能を有する層が粘着剤層である、前記9)に記載のディスプレイ用フィルター。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い光沢感と高い透明感を有するディスプレイ用フィルターを低価格で提供することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、更に干渉縞が抑制されたディスプレイ用フィルターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のディスプレイ用フィルターの一例を示す表面層側の部分模式平面図。
【図2】図1の直線Yでの部分模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のディスプレイ用フィルターは、メッシュ状導電層上に直接に積層された表面層が極めて高い平坦性を有することを特徴とする。従来、メッシュ状導電層上に直接に表面層を積層した場合、本発明のような極めて高い平坦性は得ることはできなかった。
【0015】
即ち、本発明のディスプレイ用フィルターは、基材と、該基材の上に設けられたメッシュ状導電層と、該メッシュ状導電層の上に直接に積層された表面層とを有し、該表面層の最表面における平均高低差が0.1μm未満であるディスプレイ用フィルターである。ここで、表面層の平均高低差は以下のように定義される。
(平均高低差の定義)
表面層の最表面におけるある1つの高低差は、メッシュ状導電層のある1つの開口部の重心に対応する表面層最表面の点を点A、該開口部に隣接する開口部の重心に対応する表面層最表面の点を点C、点Aと点Cとを結ぶ線分を線分Y、線分Yとメッシュ状導電層の細線部2との交点に対応する表面層最表面の点を点Bとしたとき、前記点Aから前記点Bまでの垂直距離L(高低差)であり、表面層の最表面における平均高低差は、任意に選択した5つの開口部における前記垂直距離L(高低差)の平均値である。
【0016】
以下、表面層の最表面における平均高低差の測定方法について詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明のディスプレイ用フィルターの一例を示す表面層側の部分模式平面図であり、図2は図1の直線Yでの部分模式断面図である。本発明のディスプレイ用フィルターは、基材1上にメッシュ状導電層2を有し、更に表面層3が積層されている。メッシュ状導電層は、細線部と細線部で囲まれた開口部を有する。図1及び図2の符号2は、説明の便宜上、メッシュ状導電層と細線部との両方を意味する。メッシュ状導電層の開口部Mは、細線部2と細線部2とで囲まれた領域である。
【0018】
ここで、表面層の最表面におけるある1つの高低差は、メッシュ状導電層のある1つの開口部の重心に対応する表面層最表面の点を点A、該開口部に隣接する開口部の重心に対応する表面層最表面の点を点C、点Aと点Cとを結ぶ線分を線分Y、線分Yとメッシュ状導電層の細線部2との交差点に対応する表面層最表面の点を点Bとしたとき、点Aから点Bまでの垂直距離L(高低差)であり、表面層の最表面における平均高低差は、任意に選択した5つの開口部についてそれぞれ前記垂直距離L(高低差)を求め、平均したものである。
【0019】
「開口部の重心に対応する表面層最表面の点」とは、基材面に垂直で開口部の重心を通る直線と表面層最表面との交点のことである。
「線分Yと細線部2との交差点に対応する表面層最表面の点」とは、基材面に垂直で線分Yと細線部2の両方に交わる直線と、表面層最表面との交点のことである。
「点Aから点Bまでの垂直距離L(高低差)」とは、点Aから基材表面までの距離と点Bから基材表面までの距離との差(絶対値)である。
【0020】
上記の表面層の最表面における高低差は、ディスプレイ用フィルターの断面写真から、あるいはディスプレイ用フィルターの表面層最表面のレーザー顕微鏡による画像データから、求めることができる。後述する実施例では、レーザー顕微鏡による画像データから表面層の最表面における高低差を求めているが、この方法は原理上断面写真からの測定値と同じである。レーザー顕微鏡による画像データから表面層の最表面における高低差を求める具体的方法は実施例に示す。
【0021】
本発明は、図2に示すように表面層3がメッシュ状導電層2上に直接に積層される。表面層3はメッシュ状導電層の細線部2と開口部Mを被覆し、かつ開口部Mを十分に埋めるように積層される。通常、メッシュ状導電層上に直接に表面層を積層した場合、細線部上の表面層は盛り上がる。本発明は、この盛り上がりを極力小さくすることによって(表面層の最表面における平均高低差が0.1μm未満にすることによって)、表面層の光沢感と透明感を高めることに成功した。
【0022】
表面層の最表面における平均高低差が0.1μm以上となると、高い光沢感と高い透明感(クリヤー感)が得られない。本発明において、表面層の最表面における平均高低差は、0.09μm未満が好ましく、0.08μm未満がより好ましく、特に0.07μm未満が好ましい。下限は0μmが好ましいが、実質的には0.01μm程度である。
【0023】
(表面層)
本発明にかかる表面層は、本発明のディスプレイ用フィルターをディスプレイに装着したときにディスプレイ側とは反対側の最表面となる層である。即ち、観察者側の最表面となる層である。
【0024】
表面層は、単一層で構成されていてもよいし、複数の層で構成されていてもよい。本発明においては、表面層は少なくとも2層の樹脂層から構成されていることが好ましい。具体的には、メッシュ状導電層に近い方から順に第1樹脂層と第2樹脂層で表面層が構成されていることが好ましい。
【0025】
前記第1樹脂層はメッシュ状導電層に直接に塗工形成されていることが好ましく、その厚みは1〜15μmの範囲が好ましい。前記第2樹脂層は第1の樹脂層上に直接に塗工形成されていることが好ましく、その厚みは1〜12μmの範囲が好ましい。
【0026】
第1樹脂層の厚みは、2〜12μmの範囲がより好ましく、特に3〜10μmの範囲が好ましい。更に第1樹脂層の厚みは、メッシュ状導電層の厚み100%に対して80%以上が好ましく、100%以上がより好ましく、更に120%以上が好ましく、特に130%以上が好ましい。上限は500%程度である。
【0027】
第2樹脂層の厚みは、1〜10μmの範囲がより好ましく、特に2〜8μmの範囲が好ましい。
【0028】
第2樹脂層はハードコート層であることが好ましく、更に第1樹脂層と第2樹脂層のいずれもハードコート層であることがより好ましい。
【0029】
上述のように、第1樹脂層と第2樹脂層で構成された表面層をメッシュ状導電層上に直接に積層することによって、表面層の最表面における平均高低差を0.1μm未満とすることが可能になる。
【0030】
表面層の合計厚みは、2〜20μmの範囲が好ましく、3〜18μmの範囲がより好ましく、特に5〜15μmの範囲が好ましい。ここで、表面層の合計厚みは、図1においてメッシュ状導電層の開口部Mの重心における表面層最表面の点Aと基材1の表面までの垂直距離Nである。また、第1樹脂層、第2樹脂層等の表面層を構成するそれぞれの層の厚みも、メッシュ状導電層の開口部Mの重心における表面層最表面の点Aと基材1の表面までの垂直距離の中で計測されたものである。これらの表面層の厚みは、断面写真より求めることができる。
【0031】
本発明の表面層は、表面層を構成するいずれの層も、塗工後に平坦化処理が施されないことが好ましい。ここで、平坦化処理とは、塗工された塗工液をスキージ等で掻き取る処理、塗工された塗工液が乾燥された後あるいは硬化された後に鏡面ロールで加圧あるいは加熱する処理、及び塗工された塗工液が乾燥された後の塗工面に平滑なフィルムを積層して加熱硬化あるいは紫外線硬化する処理等が挙げられる。
【0032】
上記平坦化処理は、安定して連続的に平坦化することが難しく、また生産性が低下するなどの問題がある。本発明は、表面層に上記の平坦化処理を施さずとも、極めて平坦性の高い表面層を形成することができる。
【0033】
(第1樹脂層)
第1樹脂層に用いられる樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0034】
第1樹脂層はハードコート層であることが好ましく、樹脂として熱硬化性樹脂や活性エネルギー線硬化性樹脂が好ましく用いられる。
前記熱硬化性樹脂としては、熱によって重合又は架橋する、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。
【0035】
第1樹脂層がハードコート層である場合、紫外線や電子線等の活性エネルギー線によって硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂がより好ましく用いられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のエチレン性不飽和基を有する、モノマー、オリゴマー、プレポリマーを適宜混合した組成物を用いることができる。
【0036】
モノマーの例としては、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシ(メタ)アクリレート等の単官能アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)トリアクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、トリメチロールプロパン安息香酸エステル等の多官能アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネート等のウレタンアクリレート等を挙げることができる。
【0037】
オリゴマー、プレポリマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、アルキット(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0038】
上記した、モノマー、オリゴマー、プレポリマーは、単独もしくは複数混合して使用してもよいが、3官能以上の多官能モノマーを用いることが好ましい。
【0039】
上記した、モノマー、オリゴマー、プレポリマーの重合を開始させるために、光重合開始剤を含有することが好ましい。かかる光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォルメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。
【0040】
第1樹脂層は、平均粒子径が0.2μm未満の金属酸化物微粒子は実質的に含有しないことが好ましい。平均粒子径が0.2μm未満の金属酸化物微粒子を含有する第1樹脂層をメッシュ状導電層上に直接に塗工形成した場合、メッシュ状導電層の細線部に第1樹脂層の盛り上がりが形成されやすい傾向にあり、表面層の最表面における平均高低差0.1μm未満が達成できない場合がある。また、第1樹脂層が平均粒子径0.2μm未満の金属酸化物微粒子を含む場合、メッシュ状導電層の細線部近傍に第1樹脂層に含まれる金属酸化物微粒子が局在化しやすく、透明感が低下するなどの不都合が生じる場合がある。
【0041】
従って、第1樹脂層は平均粒子径が0.2μm未満の金属酸化物微粒子を全く含有しないことが最も好ましいが、上記の問題が起こらない範囲で含有することは許容される。例えば、第1樹脂層が平均粒子径0.2μm未満の金属酸化物微粒子を含む場合は、第1樹脂層の全成分100質量%に対して20質量%未満が好ましく、10質量%未満がより好ましく、更に5質量%未満が好ましく、特に3質量%未満が好ましい。
【0042】
ここで、平均粒子径が0.2μm未満の金属酸化物微粒子としては、チタン、ジルコニウム、亜鉛、錫、アンチモン、セリウム、鉄、インジウム等の金属酸化物粒子が挙げられる。上記金属酸化物微粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡観察によって求めた平均粒子径である。
【0043】
一方、第1樹脂層は平均粒子径が0.2〜10μmの粒子を含有することができる。かかる粒子としては、上記の金属酸化物微粒子以外の粒子が好ましく、例えば、シリカ系粒子等の無機粒子、アクリル系粒子(ポリメチルメタクリレート、架橋ポリメチルメタクリレート等)、スチレン系粒子(ポリスチレン、架橋ポリスチレン等)、アクリル・スチレン系粒子(メチルメタクリレート−スチレン共重合体等)、ウレタン系粒子(ウレタンアクリレート等)、メラミン系粒子等の有機粒子が挙げられる。これらの中でも有機粒子が好ましく、特にアクリル系粒子が好ましく用いられる。
【0044】
第1樹脂層に含有することができる上記粒子の好ましい平均粒子径は、0.5〜8μmの範囲であり、より好ましい平均粒子径は1〜5μmの範囲である。上記粒子の含有量は、第1樹脂層の全成分100重量%に対して0.1〜10質量%の範囲が好ましく、0.5〜5質量%の範囲がより好ましく、特に1〜4質量%の範囲が好ましい。
【0045】
第1樹脂層に平均粒子径が0.2〜10μmの粒子を含有させることによって、後述する、メッシュ状導電層が黒化層を有しない場合に干渉縞の発生を効果的に抑制することができる。
ここで、平均粒子径が0.2〜10μmの粒子の平均粒子径とは体積平均であり、例えば、レーザー回折法粒子径測定装置を用いたレーザー散乱法によって測定することができる。
【0046】
(第2樹脂層)
第2樹脂層に用いられる樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0047】
第2樹脂層はハードコート層であることが好ましく、樹脂として熱硬化性樹脂や活性エネルギー線硬化性樹脂が好ましく、特に活性エネルギー線硬化性樹脂が好ましく用いられる。
【0048】
第2樹脂層に用いられる熱硬化性樹脂及び活性エネルギー線硬化性樹脂は、前述の第1樹脂層に用いられるものと同様のものが用いられるので、ここでの説明は省略する。また、活性エネルギー線硬化性樹脂と併せて用いることができる光重合開始剤も、前述の第1樹脂層に用いられるものと同様のものが用いられるので、ここでの説明は省略する。
【0049】
第2樹脂層は、平均粒子径が0.2μm未満の金属酸化物微粒子を含有することができる。第2樹脂層が平均粒子径0.2μm未満の金属酸化物微粒子を含有しても、上述の第1樹脂層のような問題は起こらない。従って、第2樹脂層を高屈折率化する場合、平均粒子径が0.2μm未満の金属酸化物微粒子を含有することが好ましい。
【0050】
上記金属酸化物微粒子としては、屈折率が1.6以上のものが好ましく、特に屈折率が1.7〜2.8のものが好ましく用いられる。かかる金属酸化物微粒子としては、チタン、ジルコニウム、亜鉛、錫、アンチモン、セリウム、鉄、インジウム等の金属酸化物粒子が挙げられる。金属酸化物微粒子の具体例としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化鉄、アンチモン酸亜鉛、酸化錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、リンドープ酸化錫、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、フッ素ドープ酸化錫等が挙げられ、これらの金属酸化物微粒子は単独で用いても良いし、複数併用してもよい。
【0051】
上記金属酸化物微粒子の平均粒子径は0.1μm未満が好ましい。下限の粒子径は0.01μm程度である。上記金属酸化物微粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡観察によって求めた平均粒子径である。
【0052】
上記金属酸化物微粒子の含有量は、第2樹脂層を高屈折率化する場合、第2樹脂層の全成分100質量%に対して30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、特に50質量%以上が好ましい。上記金属酸化物微粒子の含有量の上限は、第2樹脂層に高い透明性を確保すると言う観点から、第2樹脂層の全成分100質量%に対して、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、特に85質量%以下が好ましい。
【0053】
上記のようにして高屈折率化した第2樹脂層上に更に第3樹脂層として反射防止層を積層して、ディスプレイ用フィルターの反射率を小さくすることができる。この場合、第2樹脂層の屈折率は、1.55〜1.75の範囲が好ましく、1.6〜1.7の範囲がより好ましい。
【0054】
(第3樹脂層)
第2樹脂層上に第3樹脂層として積層される反射防止層は、低屈折率層であることが好ましく、該低屈折率層の屈折率は1.3〜1.45の範囲が好ましく、1.35〜1.43の範囲がより好ましく、特に1.38〜1.43の範囲が好ましい。第3樹脂層も本発明の表面層を構成する層である。
【0055】
上記低屈折率層は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線によって硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂と、低屈折率材料として低屈折率無機粒子及び/または含フッ素化合物とを含む層であることが好ましい。
【0056】
上記の活性エネルギー線硬化性樹脂は、前述の第1樹脂層に用いられるものと同様のものが用いられるので、ここでの説明は省略する。また、活性エネルギー線硬化性樹脂と併せて用いることができる光重合開始剤も、前述の第1樹脂層に用いられるものと同様のものが用いられるので、ここでの説明は省略する。
【0057】
上記の低屈折率無機粒子としては、シリカやフッ化マグネシウム等の無機粒子が好ましく用いられる。更にこれらの無機微粒子は中空状や多孔質のものが好ましい。上記無機粒子の屈折率は1.2〜1.4の範囲が好ましく、1.2〜1.35の範囲がより好ましい。
【0058】
上記の含フッ素化合物としては、含フッ素モノマー、含フッ素高分子化合物が挙げられる。
【0059】
含フッ素モノマーとしては、例えば、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレートなどのフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
【0060】
含フッ素高分子化合物としては、例えば、含フッ素モノマーと架橋性基付与のためのモノマーを構成単位とする含フッ素共重合体が挙げられる。含フッ素モノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等である。架橋性基付与のためのモノマーとしてはグリシジルメタクリレートのように分子内にあらかじめ架橋性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマーの他、カルボキシル基やヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基等を有する(メタ)アクリレートモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート等)が挙げられる。
【0061】
上記低屈折率層の厚みは、0.05〜0.15μmの範囲が適当であり、0.08〜0.12μmの範囲が好ましい。
【0062】
(表面層の他の態様)
表面層の他の態様として、前述の第1樹脂層上に、単一層の相分離によって屈折率の異なる2層を積層する態様が挙げられる。つまり、この態様は、前述の第1樹脂層上に1つの塗工液を塗工し、その乾燥過程で相分離させて、第1樹脂層側から順に屈折率の高い層と屈折率の低い層を形成する態様である。以下、相分離によって形成される屈折率の高い層を第1相分離層、屈折率の低い層を第2相分離層という。
【0063】
上記の相分離は、第1相分離層を形成する成分と第2相分離層を形成する成分とが混合された相分離用塗布液を塗工し、その乾燥過程において、第1相分離層の形成成分と第2相分離層形成成分が相分離し、相対的に表面エネルギーの低い第2相分離層形成成分が空気との界面、即ち塗布膜の表面に移動することによって成され、その結果、下側(第1樹脂層側)に屈折率の高い第1相分離層、上側に屈折率の低い第2相分離層が形成される。このとき、第1相分離層形成成分と第2相分離層形成成分との相溶性を低くすることによって、相分離を促進させることができる。
【0064】
上記した相分離は、比較的平坦面上に相分離用塗工液を塗工した方が促進されやすく、その意味から、メッシュ状導電層上に前述の第1樹脂層を積層して比較的平坦化した後、第1樹脂層上に相分離用塗工液を塗工することが好ましい。
【0065】
第1樹脂層上に単一層の相分離によって形成された第1相分離層と第2相分離層の合計厚みは、本発明の表面層の最表面における平均高低差を0.1μm未満とするという観点から、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。上限は12μm以下が好ましい。
【0066】
相分離によって屈折率の異なる2層を形成することは知られており、例えば、特許第3861562号公報、特開2008−241882号公報、特開2009−58954号公報、特開2009−75576号公報、特開2009−198748号公報に記載されており、本発明はこれらの技術を用いることも可能である。
【0067】
本発明において、第1相分離層がハードコート層、第2相分離層が低屈折率層であることが好ましい。かかる態様について詳細に説明する。
【0068】
第1相分離層がハードコート層である場合、第1相分離層形成成分として、多官能モノマーと光重合開始剤とを組み合わせた組成物が挙げられる。かかる多官能モノマー及び光重合開始剤は、前述の第1樹脂層の活性エネルギー線硬化性樹脂に用いられる多官能モノマー及び光重合開始剤と同様のものが用いられる。
【0069】
第2相分離層が低屈折率層である場合、第2相分離層形成成分として、フッ素含有化合物が好ましく用いられる。かかるフッ素含有化合物としては、例えば、a)パーフルオロアルキル基含有シランの加水分解物とコロイダルシリカ等のシリカ微粒子との反応物、b)含フッ素(メタ)アクリレートで形成された微粒子が挙げられる。
【0070】
上記a)のパーフルオロアルキル基含有シランの加水分解物とコロイダルシリカ等のシリカ微粒子との反応物について詳細に説明する。
【0071】
パーフルオロアルキル基含有シランとしては、例えば、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン等が好ましく用いられる。これらの化合物は単独、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0072】
上記のパーフロロアルキル基含有シランの加水分解物と反応せしめられるシリカ微粒子は、粒子表面に水酸基を有し、パーフルオロアルキル基含有シランの加水分解物と脱水縮合反応が可能なものである。シリカ微粒子の表面の水酸基とパーフルオロアルキル基含有シランの加水分解物のシラノール基が脱水縮合反応する結果、低屈折率化に寄与するパーフルオロアルキル基が、シリカ微粒子表面に化学的に固定化される。
【0073】
上記シリカ微粒子としては、コロイド状のシリカ微粒子が好ましく、その平均粒子径としては、1〜100nmの範囲が好ましく、5〜70nmの範囲がより好ましい。かかるシリカ微粒子として、コロイダルシリカが好ましく用いられる。ここで、シリカ微粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡観察によって求めた平均粒子径である。
【0074】
パーフルオロアルキル基含有シランの加水分解物とシリカ微粒子の混合比率は、シリカ微粒子100質量部に対し、パーフルオロアルキル基含有シランの加水分解物は0.5〜40質量部の範囲が適当であり、更に1〜20質量部の範囲が好ましい。
【0075】
また、パーフルオロアルキル基含有シランの加水分解物と併せて、さらに(メタ)アクリル官能性シランの加水分解物をもシリカ微粒子と反応せしめることが好ましい。これによって、第1相分離層と第2相分離層との界面における架橋硬化に寄与する(メタ)アクリロイル基が、シリカ微粒子表面に化学的に固定化される。ここで、(メタ)アクリル官能性シランとは、アクリル官能性シランとメタクリル官能性シランを総称したものである。
【0076】
パーフルオロアルキル基含有シランの加水分解物と(メタ)アクリル官能性シランの加水分解物との混合比率は、パーフルオロアルキル基含有シランの加水分解物100質量部に対して、(メタ)アクリル官能性シランの加水分解物が20質量部〜100質量部の範囲が適当である。
【0077】
第2相分離層形成成分として好ましく用いられる、b)含フッ素(メタ)アクリレートで形成された微粒子について以下に説明する。
【0078】
含フッ素(メタ)アクリレートとしては、例えば、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H、1H、5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H、1H、5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上を混合して重合時に使用してもよい。
【0079】
含フッ素(メタ)アクリレートで形成された微粒子の形状は、球状、数珠状が好ましいが、特にこれらに限定されない。かかる微粒子の平均粒子径としては、50〜500nmの範囲にあることが好ましく、80〜300nmの範囲がより好ましい。ここで、微粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡観察によって求めた平均粒子径である。上記微粒子は、例えば、乳化重合法により合成することができる。この場合、上記した含フッ素(メタ)アクリレートを含むモノマー全量100質量%のうち、1質量%〜50質量%の範囲で、フッ素を含まない2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを用いることが好ましい。また、乳化重合法を用いれば、合成された微粒子の粒子径のバラツキを小さくすることができる。
【0080】
上記した第1相分離層形成成分と第2相分離層形成成分の混合比率は、第1相分離層形成成分100質量部に対して、第2相分離層形成成分は0.1〜30質量部の範囲が好ましい。
【0081】
(メッシュ状導電層)
メッシュ状導電層は、ディスプレイから発生される電磁波を遮蔽する役目を有する。その意味において、メッシュ状導電層の表面抵抗値は低い方が好ましい。具体的には、メッシュ状導電層の表面抵抗値は3Ω/□以下が好ましく、1Ω/□以下がより好ましく、特に0.5Ω/□以下が好ましい。メッシュ状導電層の表面抵抗値の現実的な下限は0.01Ω/□程度である。
【0082】
メッシュ状導電層の厚みは、メッシュ状導電層上に直接に積層される表面層の平坦性を高めて、表面層の最表面における平均高低差を0.1μm未満にするという観点からは、小さい方が好ましい。具体的には、メッシュ状導電層の厚みは、8μm未満が好ましく、7μm未満がより好ましく、更に6μm未満が好ましい。
【0083】
一方、良好な電磁波遮蔽性を確保するという観点からは、メッシュ状導電層の厚みは0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、更に0.8μm以上が好ましく、特に1μm以上が好ましい。
【0084】
メッシュ状導電層の線幅は、3〜50μm程度が適当であり、5〜40μmの範囲が好ましく、6〜30μmの範囲がより好ましく、特に8〜25μmの範囲が好ましい。メッシュ状導電層のピッチ(隣接する細線部と細線部との距離)は、50〜500μmの範囲が適当であり、75〜450nmの範囲が好ましく、100〜350μmの範囲が更に好ましい。
【0085】
メッシュ状導電層のメッシュパターンの形状(開口部の形状)は、例えば、正方形、長方形、菱形等の4角形からなる格子状メッシュパターン、三角形、5角形、6角形、8角形、12角形のような多角形からなるメッシュパターン、円形、楕円形からなるメッシュパターン、前記の複合形状からなるメッシュパターン、及びランダムメッシュパターンが挙げられる。上記の中でも、4角形からなる格子状メッシュパターン、6角形からなるメッシュパターンが好ましく、更に規則的なメッシュパターンが好ましく用いられる。
【0086】
本発明のディスプレイ用フィルターにおいて、メッシュ状導電層は基材上に形成されるが、メッシュ状導電層の製造方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、1)基材上に気相製膜法及び/またはメッキ法により金属薄膜を形成した後にエッチング処理してメッシュパターン化する方法、2)基材上に形成されたメッシュパターン状の無電解メッキ触媒層に無電解メッキを施す方法、3)基材上に導電性インキをパターン状に印刷する方法。4)導電性繊維を用いる方法、5)基材上に金属箔を接着剤で貼り合わせた後にエッチング処理してメッシュパターン化する方法、6)感光性銀塩を用いる方法、7)基材上に形成された逆パターン状の剥離可能樹脂上に金属薄膜を積層した後剥離可能樹脂を剥離する方法、及び8)金属薄膜をレーザーアブレーションする方法等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
上記した製造方法の中でも、基材上に接着剤を介在させずにメッシュ状導電層を製造する方法が好ましい。基材上に接着剤を介して形成されたメッシュ状導電層(例えば、上記5)の方法で形成されたメッシュ状導電層)は、メッシュ状導電層上に直接に表面層を積層した場合、表面層の高い平坦性が得られにくいという問題がある。
【0088】
本発明にかかるメッシュ状導電層の製造方法としては、更に上記の1)及び2)の方法が好ましい。以下、上記1)、2)のメッシュ状導電層の製造方法について詳細に説明する。
【0089】
上記1)の方法は、基材上に気相製膜法及び/またはメッキ法により金属薄膜を形成した後にエッチング処理してメッシュパターン化する方法であり、具体的には、基材上に金属薄膜を気相製膜法及び/またはメッキ法によって形成し、更にこの金属薄膜上にレジストパターンを形成した後、金属薄膜をエッチングする方法である。
【0090】
基材上に金属薄膜を形成する方法として、気相製膜法、メッキ法のどちらか一方、あるいは気相製膜法とメッキ法とを併用する方法を用いることができるが、気相製膜法のみで金属薄膜を形成することが好ましい。気相法製膜法で金属薄膜を形成することによって、表面抵抗値が小さいメッシュ状導電層を薄膜で形成することができる。
【0091】
気相製膜法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着等が挙げられ、これらの1つの方法あるいは2以上の方法を組み合わせて用いることができる。本発明では、スパッタリング、イオンプレーティング、及び真空蒸着が好ましく、特にスパッタリング及び真空蒸着が好ましい。
【0092】
金属薄膜を形成するための金属としては、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀、ステンレス、クロム、チタンなどの金属の内、1種または2種以上を組合せた合金あるいは多層のものを使用することができる。これらの中でも、良好な電磁波シールド性が得られ、メッシュパターン加工が容易で、かつ低価格であるなどの点から、銅が好ましく用いられる。
【0093】
また、金属薄膜の金属として銅を用いる場合は、基材と銅薄膜との間に、0.005〜0.1μmの厚みのニッケル薄膜を用いるのが好ましい。つまり、金属薄膜の金属として銅を用いる場合は、ニッケル薄膜と銅薄膜の積層構成とすることが好ましい。これによって、基材と銅薄膜の接着性が向上する。
【0094】
また、金属薄膜の表面に、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物等の金属化合物を、気相製膜法で積層することができる。この金属化合物の積層によって、金属薄膜の反射色を調整することができる。かかる金属化合物としては、金、白金、銀、水銀、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、鉄、スズ、亜鉛、インジウム、パラジウム、イリジウム、コバルト、タンタル、アンチモン、及びチタン等の金属の酸化物、窒化物、あるいは硫化物が挙げられる。
【0095】
上記の金属化合物の厚みは、0.005〜0.1μmの範囲が好ましく、0.01〜0.1μmの範囲がより好ましい。この金属化合物層は、金属薄膜の一部を構成し、更にメッシュ状導電層の一部を構成する。
【0096】
金属薄膜上にはレジストパターンが形成される。かかるレジストパターンを形成する方法としては、フォトリソグラフ法や印刷法がある。
【0097】
上記フォトリソグラフ法は、金属薄膜上にフォトレジスト層を積層し、所望のパターンのフォトマスクを介して露光、あるいはレーザーで直接に走査露光し、現像してレジストパターンを形成する方法である。金属薄膜上にフォトレジスト層を積層する方法としては、例えば、金属薄膜上にレジストフィルムを貼り付ける方法、あるいは液状レジストを塗布する方法が用いられる。
【0098】
フォトレジスト層としては、露光部分が硬化し未露光部分が現像によって溶解するネガレジスト、あるいは逆に露光部分が現像によって溶解するポジレジストを用いることができる。フォトレジスト層の現像処理における環境問題を考慮すると、アルカリ現像型フォトレジストが好ましい。
【0099】
フォトレジスト層の現像に用いられる現像液としては、アルカリ現像液が好ましい。かかるアルカリ現像液としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属の水酸化物の水溶液等を挙げることができ、具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化物を、0.5〜5質量%含有するアルカリ性水溶液を用いることができる。一般的には、上記炭酸塩を0.1〜3質量%程度含有する弱アルカリ性水溶液が用いられている。現像温度は、10〜50℃程度が適当であり、一般的には20〜40℃の範囲である。
【0100】
金属薄膜上にレジストパターンを印刷法で形成する方法は、紫外線や電子線等で硬化する樹脂とアルカリ可溶性樹脂を含むインキをグラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等の印刷法により所望のレジストパターンを金属薄膜上に形成する方法である。上記の印刷法の中でも、生産性よく高精細で連続的にメッシュパターンが形成できることからグラビア印刷が好ましく用いられる。
【0101】
上記のようにして、金属薄膜上にレジストパターンを形成した後、金属薄膜をエッチング処理することによってメッシュ状導電層が形成される。最後に、メッシュ状導電層上に残るレジストパターンが剥離除去される。エッチング処理方法としては、ケミカルエッチング法がある。ケミカルエッチング法とは、レジストパターンのレジストが被覆されていない部分の金属をエッチング液で溶解し、除去する方法である。エッチング液としては、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液、アルカリエッチング液等がある。メッシュ状導電層上に残ったレジストパターンの剥離除去には、通常、1〜4質量%程度の水酸化ナトリウムを含有するアルカリ水溶液が用いられる。
【0102】
また、上記したレジストパターンを形成するためのレジストに、カーボンブラックやチタンブラック等の黒顔料を含有させて、黒色化することができる。この黒色化されたレジストパターンは、除去せずに、メッシュ状導電層上にそのまま残すことによって、後述する黒化処理を省略することができる。
【0103】
次に、メッシュ状導電層の好ましい製造方法の1つである、上記2)の製造方法について説明する。この製造方法は、基材上に形成されたメッシュパターン状の無電解メッキ触媒層に無電解メッキを施す方法である。この方法は、先ず、基材上にメッシュパターン状の無電解メッキ触媒層が形成される。
【0104】
基材上にメッシュパターン状の無電解メッキ触媒層を形成する方法としては、a)基材上に無電解メッキ触媒インキでパターン印刷する方法、b)基材上に還元剤を含有するインキによりパターン印刷を行って還元剤含有パターン層を形成し、次いで還元剤含有パターン層上に、還元により無電解めっき触媒になり得る金属イオンを含む金属イオン溶液を塗布し、前記還元剤と金属イオンとの接触により該金属イオンを還元して無電解めっき触媒層を形成させる方法である。
【0105】
上記a)の方法に用いられる無電解めっき触媒インキとしては、無電解めっき触媒、バインダー樹脂、及び有機溶剤を含むインキが挙げられる。無電解めっき触媒としては、高い触媒活性が得られることから、パラジウム、銀、白金、および金などの金属原子の塩化物、水酸化物、酸化物、硫酸塩、アンモニウム塩などのアンミン錯体などが用いられる。特に、パラジウム化合物が好ましく、更に塩化パラジウムが好ましい。この他、無電解めっき触媒としては、複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物を用いることもできる。前記複合金属酸化物としては、PdSiO3、Ag2SiO3、PdTiO3、Ag2TiO3、PdZrO3及びAg2TiO3などが挙げられる。バインダー樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び塩化ビニル樹脂などが挙げられる。
【0106】
上記無電解メッキ触媒インキを印刷するのに用いられる印刷方法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、グラビアオフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、静電印刷等の公知の印刷方法が挙げられる。これらの中でも、生産性よく高精細で連続的にメッシュパターンが形成できることからグラビア印刷が好ましく用いられる。
【0107】
上記b)の方法に用いられる還元剤を含有するインキとしては、還元剤、バインダー樹脂及び溶剤が含むインキが挙げられる。還元剤としては、無電解めっき触媒になり得る金属のイオンと接触することで、該金属イオンを金属に還元し自らは酸化反応を起こすことのできる物質であれば特に限定されない。例えば、Pb、Sn、Ni、Co、Zn、Ti、Cu等の触媒金属より電気化学的に卑な金属の粒子や、Sn(II)、Fe(II)の塩等が挙げられる。これらの中でも、Sn(II)及びFe(II)からなる群から選ばれる金属の塩が好ましく、更にSn(II)の塩が好ましく用いられる。上記金属の塩としては、塩化物、硫酸塩、蓚酸塩、酢酸塩等が挙げられ、より好ましくは塩化物又は硫酸塩が挙げられる。特に好ましい金属塩としては、SnCl2及びSnSO4からなる群から選ばれる金属塩が用いられる。バインダー樹脂としては、例えばポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂物、酢酸ビニル、塩化ビニル、PVA、PVB等のビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、アルキッド樹脂等が挙げられる。
【0108】
上記の還元剤を含有するインキを印刷するのに用いられる印刷方法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、グラビアオフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、静電印刷等の公知の印刷方法が挙げられる。これらの中でも、生産性よく高精細で連続的にメッシュパターンが形成できることからグラビア印刷が好ましく用いられる。
【0109】
上記のようにして基材上に形成された還元剤含有パターン層上に、還元により無電解めっき触媒になり得る金属イオンを含む金属イオン溶液を塗布し、前記還元剤と金属イオンとの接触により該金属イオンを還元して無電解めっき触媒層を形成させる。かかる金属イオン溶液に含まれる金属イオンとしては、Ag、Au、Pd、Pt、Rhなどの金属のイオンが挙げられる。これらの中でも、Pd(II)イオン、Ag(I)イオンが好ましく用いられる。上記金属イオンを含む溶液は、金属塩を溶液に溶解することにより得られる。用いられる金属塩としては、塩化物、臭化物、酢酸塩、硝酸塩、クエン酸塩等が挙げられる。具体的には、PdCl2、PdBr2、Pd(CH3COO)2等のPd(II)塩、CH3COOAg、AgNO3、クエン酸銀(I)等のAg(I)塩、等が挙げられる。金属イオン溶液で使用する溶媒としては、水が好ましい。また、上記金属イオン溶液中における金属塩の濃度は、用いる金属塩の種類により異なるが、PdCl2を用いる場合は、PdCl2を0.01〜3g/lの濃度となるように配合するのが好ましい。また、同時に金属塩を溶解する目的で塩酸を配合するのが好ましい。塩酸の配合割合としては、例えば35%塩酸を1〜30ml/l程度配合するのが好ましい。
【0110】
上記金属イオン溶液は、還元剤含有パターン層上に塗布し、該金属イオン溶液中に含まれる金属イオンを還元剤と接触させることにより該金属イオンが還元されて触媒金属となり、メッシュパターン状の無電解めっき触媒層が形成される。
上記b)の方法については、例えば特開2009−123408号公報に記載されており、本発明に用いることが可能である。
【0111】
上述のa)あるいはb)の方法で、基材上にメッシュパターン状の無電解メッキ触媒層が形成された後、無電解メッキが施される。無電解メッキに用いられる金属としては、銅、ニッケル、金、銀、錫、亜鉛、もしくはそれらの合金が挙げられる。これらの中でも銅が好ましく用いられる。この無電解メッキによって、基材上にメッシュ状導電層が形成される。更に、上記で形成されたメッシュ状導電層上に電解銅メッキを施すことができ、更に、メッシュ状導電層表面を黒化するために、黒色合金(亜鉛−ニッケル合金、ニッケル−錫合金等)をメッキすることができる。この黒色合金メッキを施すことにより、以下の黒化処理を省略することができる。
【0112】
本発明にかかるメッシュ状導電層は、黒化処理されたものであってもよい。ここで、黒化処理とは、メッシュ状導電層を構成する金属表面を化学的に処理して黒化するものである。黒化処理としては例えば、酸化処理、硫化処理等が挙げられる。上記酸化処理としては、次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液、ペルオキソ二硫酸と水酸化ナトリウムの混合水溶液等を用いることができるが、経済性の点から、次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液を用いることが好ましい。上記硫化処理としては、硫酸カリウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム等の水溶液を使用することができるが、好ましくは、硫酸カリウム及び硫酸アンモニウムであり、特に低温で使用可能である点から、硫酸アンモニウムを用いることが好ましい。
【0113】
本発明にかかるメッシュ状導電層は、ディスプレイに設置したときに透光部となる部分以外、つまり画像表示領域以外の部分や額縁印刷に隠れた部分は、必ずしもメッシュパターンを有している必要がなく、これらの部分はパターニングされていない、例えば金属ベタであっても良い。しかし、メッシュ状導電層上に表面層を生産性よく均一に連続塗工するというという観点から、メッシュ状導電層は連続的にメッシュパターンが形成されていることが好ましい。
【0114】
上記の連続的にメッシュパターンが形成されているとは、例えば、長尺基材の長手方向にメッシュ状導電層のメッシュパターンが途切れることなく連続的に形成されていることを言う。
【0115】
(干渉縞低減のための好ましい態様(1))
メッシュ状導電層上に積層される表面層の平坦性を高めると干渉縞が目立ちやすくなる。特に、本発明のように表面層の最表面における平均高低差が0.1μm未満となると、更に干渉縞が目立ちやすくなる。
【0116】
上記干渉縞は、メッシュ状導電層の表面層が積層される側の表面に黒化層を形成することによって低減される。ここで黒化層とは、前述の黒色合金をメッキする方法や黒化処理する方法によって形成されるものである。しかしながら、これらの黒色合金メッキや黒化処理で形成された黒化層は、干渉縞低減効果を十分に発現させるためには、0.5〜2μm程度の厚みが必要であり、メッシュ状導電層の厚みがその分大きくなる。即ち、十分な電磁波遮蔽性能を確保するためにはメッシュ状導電層の厚みは3μm以上とすることが好ましく、更には4μm以上とすることがより好ましい。特に、前述したメッシュ状導電層の好ましい製造方法の1つである、2)の方法で製造されたメッシュ状導電層は、基材上に形成されたメッシュパターン状の無電解メッキ触媒層の厚みと上記黒化層の厚みを考慮する必要があり、従って上記2)の方法で製造され、かつ黒化層を有するメッシュ状導電層の厚みは4μm以上とすることが好ましく、更に5μm以上とすることが好ましい。但し、メッシュ状導電層の厚みの上限は8μm未満とすることが好ましい。
【0117】
上記のように、メッシュ状導電層の表面層が積層される側の表面に黒化層を有するメッシュ状導電層は比較的厚みが大きくなることから、このメッシュ状導電層上に直接に積層される表面層の平坦性は得られにくくなる。そこで、表面層を前述の第1樹脂層と第2樹脂層を含む構成として、第1樹脂層の厚みを4〜15μmでかつメッシュ状導電層の厚み100%に対して130%以上の厚みとし、第2樹脂層の厚みを1〜12μmとすることによって、表面層が平坦化されて表面層の最表面における平均高低差0.1μm未満が達成される。
【0118】
第1樹脂層の厚みは、更に5〜15μmの範囲が好ましく、特に6〜15μmの範囲が好ましい。また、第1樹脂層の厚みは、メッシュ状導電層の厚み100%に対して150%以上がより好ましく、特に170%以上が好ましい。上限は500%である。第2樹脂層の厚みは、更に2〜10μmの範囲が好ましく、特に2〜8μmの範囲が好ましい。
【0119】
更に、第2樹脂層はハードコート層であることが好ましく、第1樹脂層と第2樹脂層のいずれもハードコート層であることがより好ましい。
【0120】
メッシュ状導電層に形成された黒化層表面の中心線平均粗さRaは、干渉縞低減の観点から0.03μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、特に0.07μm以上が好ましい。上限は0.2μm程度である。
【0121】
(干渉縞低減のための好ましい態様(2))
メッシュ状導電層の表面層が積層される側の表面に黒色合金メッキや黒化処理による黒化層を有しないメッシュ状導電層を用いた場合であっても、以下の表面層を用いることによって干渉縞を低減することができる。
【0122】
かかる表面層は、前述の第1樹脂層と第2樹脂層を含む構成として、第1樹脂層に平均粒子径0.2〜10μmの粒子を第1樹脂層の全成分100質量%に対して0.1〜10質量%含有させることが好ましい。これによって、干渉縞を低減することができる。
【0123】
第1樹脂層に含有させる粒子としては、例えば、シリカ系粒子等の無機粒子、アクリル系粒子(ポリメチルメタクリレート、架橋ポリメチルメタクリレート等)、スチレン系粒子(ポリスチレン、架橋ポリスチレン等)、アクリル・スチレン系粒子(メチルメタクリレート−スチレン共重合体等)、ウレタン系粒子(ウレタンアクリレート等)、メラミン系粒子等の有機粒子が挙げられる。これらの中でも有機粒子が好ましく、特にアクリル系粒子が好ましく用いられる。
【0124】
上記粒子の好ましい平均粒子径は、0.5〜8μmの範囲であり、より好ましい平均粒子径は1〜5μmの範囲である。上記粒子の含有量は、第1樹脂層の全成分100重量%に対して、0.5〜5質量%の範囲がより好ましく、更に1〜4質量%の範囲が好ましい。
【0125】
メッシュ状導電層の表面層が積層される側の表面に黒化層を有しない場合、メッシュ状導電層の厚みを小さくすることが可能である。具体的にはメッシュ状導電層の厚みを3μm未満とすることができ、厚みが3μm未満であっても十分な電磁波遮蔽性能を確保することができる。
【0126】
かかるメッシュ状導電層としては、前述したメッシュ状導電層の好ましい製造方法の1つである、1)の方法で製造されたメッシュ状導電層が好ましく用いられる。このメッシュ状導電層の厚みは、0.3μm以上3μm未満が好ましく、0.5μm以上2.5μm未満がより好ましく、特に1μm以上2μm未満が好ましい。
【0127】
上記1)の方法で製造され、黒化層を有さず、かつ厚みが0.3μm以上3μm未満のメッシュ状導電層に、上記の粒子を含有する第1樹脂層と第2樹脂層を含む表面層を積層する場合、第1樹脂層の厚みは1〜7μmの範囲が好ましく、2〜6μmの範囲がより好ましく、特に2〜5μmの範囲が好ましい。同様に第2樹脂層の厚みは、2〜12μmの範囲が好ましく、3〜10μmの範囲が好ましく、特に4〜8μmの範囲が好ましい。また、第1樹脂層と第2樹脂層の厚みの関係としては、第1樹脂層の厚み100%に対して、第2樹脂層の厚みは110%以上とすることが好ましく、120%以上とすることがより好ましく、更に130%以上とすることが好ましく、特に150%以上とすることが好ましい。上限は600%程度である。
【0128】
第1樹脂層と第2樹脂層の構成を上記のようにすることによって、干渉縞が低減され、かつ表面層の最表面における平均高低差0.1μm未満を達成することができる。
【0129】
更に、第2樹脂層はハードコート層であることが好ましく、第1樹脂層と第2樹脂層のいずれもハードコート層であることがより好ましい。
【0130】
(表面層の機能)
前述したように、本発明にかかる表面層はハードコート層を含むことが好ましい。ここでハードコート層は、JIS K5600−5−4(1999年)で定義される鉛筆硬度が、1H以上が好ましく、2H以上がより好ましい。上限は9H程度である。
また、前述したように、本発明にかかる表面層は、反射防止層(低屈折率層)を含むことができる。
【0131】
また、本発明にかかる表面層には、無機系近赤外線吸収剤を含有させて近赤外線遮蔽機能を付与することができる。特に、表面層を前述の第1樹脂層と第2樹脂層を含む構成とし、第1樹脂層と第2樹脂層のどちらか一方、あるいは両方に無機系近赤外線吸収剤を含有させることができる。
【0132】
(基材)
本発明のディスプレイ用フィルターに用いられる基材としては、プラスチックフィルムが好ましい。かかるプラスチックフィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アートン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂及びセルロース樹脂が好ましく、特にポリエステル樹脂が好ましく用いられる。また、上記の樹脂からなる層が2層以上積層された積層プラスチックフィルムであってもよい。
【0133】
プラスチックフィルムの厚みとしては、50〜300μmの範囲が適当であるが、コスト及びディスプレイ用フィルターの剛性を確保するという観点から90〜250μmの範囲が特に好ましい。
【0134】
本発明に用いられるプラスチックフィルムは、前述したメッシュ状導電層あるいは後述する近赤外線遮蔽層等との密着性(接着強度)を強化するための易接着層(プライマー層)を有するプラスチックフィルムが好ましい。
【0135】
本発明にかかるディスプレイ用フィルターは、基材として1枚のみのプラスチックフィルムを用いるのが好ましい。
【0136】
(近赤外線遮蔽層)
基材のメッシュ状導電層とは反対面に、近赤外線遮蔽層を有することが好ましい。かかる近赤外線遮蔽層は、波長800〜1100nmの範囲における平均透過率が20%以下となるように調整するのが好ましい。
【0137】
近赤外線遮蔽層は、近赤外線吸収剤を含む樹脂層であってもよいし、近赤外線吸収剤を含む粘着剤層であってもよい。近赤外線吸収剤としては、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、ジイモニウム系化合物等の有機系近赤外線吸収剤、あるいは酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、硫化亜鉛、セシウム含有酸化タングステン等の無機系近赤外線吸収剤を用いることができる。
【0138】
樹脂バインダーとしては、ポリエステル系樹脂、( メタ) アクリル系樹脂、( メタ) アクリルウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が好ましく用いられ、中でも( メタ) アクリル系樹脂が好適である。
【0139】
粘着剤としては、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ポリビニルブチラール系、エチレン−酢酸ビニル系等の粘着剤層を用いることができる。特にアクリル系粘着剤が好ましい。
【0140】
近赤外線遮蔽層には、更に、570〜610nmに極大吸収を有する色素、例えばテトラアザポルフィリン系色素を含有させることが好ましい。前記吸収極大波長における透過率は30%以下となるように調整することが好ましい。
【0141】
また、近赤外線遮蔽層には、500nm付近、550nm付近に吸収を有する色素を含有させて色補正機能を付与することができる。
【0142】
(粘着剤層)
本発明のディスプレイ用フィルターは、基材に対してメッシュ状導電層とは反対側の最表面に粘着剤層を有することが好ましい。かかる粘着剤層は、本発明のディスプレイ用フィルターを、ディスプレイに直接にあるいはガラス板やアクリル板等の高剛性の透明基板を介して間接的に貼り付ける役目を有する。本発明のディスプレイ用フィルターは、ディスプレイ用フィルターに直接に貼り付けられることが好ましい。
【0143】
また、近赤外線遮蔽層が粘着剤層である場合は、この粘着剤層が上記の貼着用粘着剤層の役目を兼ねることができる。
【0144】
(ディスプレイ用フィルターの構成)
本発明にかかるディスプレイ用フィルターは、1枚のみの基材からなる1枚基材フィルターであることが好ましい。かかる1枚基材フィルターの好ましい構成例のいくつかを例示するが、本発明はこれらに限定されない。
1)粘着剤層/近赤外線遮蔽層/基材/メッシュ状導電層/表面層
2)近赤外線遮蔽機能を有する粘着剤層/基材/メッシュ状導電層/表面層
3)粘着剤層/基材/メッシュ状導電層/近赤外線遮蔽機能を有する表面層
尚、本発明のディスプレイ用フィルターは、その製造過程や物流過程で、離型フィルムあるいは保護フィルムを粘着剤層及び表面層の表面に積層することができるが、これらの離型フィルムや保護フィルムは最終的には剥離除去されるので、上記構成例から除外している。
【実施例】
【0145】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
【0146】
(評価方法)
(1)表面層の最表面における平均高低差の測定
サンプルを1cm×1cmのサイズにカットし、イオンコーターを用いてサンプルの表面層側の最表面を白金でスパッタする。スパッタの条件は、真空度が13.3Pa、電流値が2mA、スパッタ時間が15分間である。
【0147】
次に、このサンプルの表面層側の3次元画像データをソフトウェアVK−H1V1(観察・測定ソフトウェア)を用いて撮影する。このとき、メッシュ状導電層の1つの開口部の重心と隣接する開口部の重心とを結ぶ直線領域の表面層最表面の3次元画像データを撮る。
【0148】
次に、解析ソフトウェアVK−H1A1を用いて、まず、上記で得られた3次元画像データの画像ノイズを自動で除去し、測定時に対象物が微妙に傾いていた場合などの傾きを補正する。その後に、3次元画像データに撮影されたメッシュ状導電層の開口部の重心と該開口部に隣接する開口部の重心とを通る直線でプロファイルを表示する。このプロファイルから、メッシュ状導電層の細線部に対応する表面層最表面の点(点B)と開口部の重心に対応する表面層最表面の点(点A)との高低差を測定する。この操作を任意に選択した5つの開口部で繰り返し行って、それぞれの開口部の高低差を求め、平均する。
【0149】
(2)表面層を構成する各層及び表面層合計の厚みの測定
サンプルのメッシュ状導電層の開口部の重心を通るようにミクロトームにてサンプル断面を切り出し、その断面を電解放射型走査電子顕微鏡((株)日立製S―800、加速電圧26kV、観察倍率3000倍)にて観察し、表面層の厚みを計測した。各実施例及び比較例について、20cm×20cmサイズのサンプル1枚から任意の5箇所について計測し平均した。
【0150】
(3)メッシュ状導電層の厚みの測定
ミクロトームにてサンプル断面を切り出し、その断面を電解放射型走査電子顕微鏡((株)日立製S―800、加速電圧26kV、観察倍率3000倍)にて観察し、導電性メッシュの厚みを計測した。各実施例及び比較例について、20cm×20cmサイズのサンプル1枚から任意の5箇所について計測し平均した。
【0151】
(4)メッシュ状導電層の線幅、ピッチの測定
(株)キーエンス製デジタルマイクロスコープ(VHX−200)を用いて、倍率450倍で表面観察を行った。その測長機能を用いて、格子状メッシュ状導電層の線幅とピッチを測長した。各実施例及び比較例について、20cm×20cmサイズのサンプル1枚から、任意の10箇所について計測し平均した。
【0152】
(5)屈折率の測定
シリコンウエハー上に乾燥膜厚が1.5μmとなるように、測定対象となる層の塗料をスピンコーターを用いて塗布する。次いでイナートオーブンINH−21CD(光洋サーモシステム(株)社製)を用いて、130℃で1分間、加熱硬化することにより被膜を形成する。この被膜について、位相差測定装置(ニコン(株)製:NPDM−1000)で633nmにおける屈折率を測定する。
【0153】
(6)光沢感の評価
各サンプルの粘着剤層側をガラス板に貼り付け、該ガラス板の反対面(ディスプレイ用フィルターサンプルが貼り付けられた面とは反対側の面)に黒テープ(日東電工製 No.21トク(BC))を貼り付けて評価用サンプルを作製する。暗室中で、評価用サンプルのディスプレイ用フィルター側最表面から直上50cmの場所に3波長蛍光灯(ナショナル パルック 3波長形昼白色(F.L 15EX-N 15W))を設置する。評価用サンプルのディスプレイ用フィルター側最表面を正面30cmの距離から目視観察し、ディスプレイ用フィルター側最表面に映り込んだ蛍光灯像の輪郭の鮮明性を以下の基準で評価する。
・映り込み像の輪郭が鮮明に見える : ○
・映り込み像の輪郭が僅かに不鮮明 : △
・映り込み像の輪郭が不鮮明 : ×。
【0154】
(7)透明感の評価
ディスプレイ用フィルターの表面層側の透明感が低下すると、ディスプレイ用フィルターを介して視認される黒画像が白っぽく見えるようになるので、黒画像が白っぽく見える程度を下記の方法で評価した。
上記(6)の光沢感評価と同様にして評価用サンプルを作製する。この評価用サンプルを一般的な事務作業部屋(照度は蛍光灯下約500ルックス)の机上に評価用サンプルのディスプレイ用フィルター側が上になるように置いて、評価用サンプルを斜め45°の角度から目視で観察し、評価用サンプルの裏面の黒テープの黒がどの程度白っぽく見えるかを以下の基準で評価した。
・黒が全く白っぽく見えない : ○
・黒がやや白っぽく見える : △
・黒がかなり白っぽく見える : ×。
【0155】
(8)干渉縞の評価
上記(6)の光沢感評価と同様にして評価用サンプルを作製する。暗室中で、評価用サンプルのディスプレイ用フィルター側最表面から直上50cmの場所に3波長蛍光灯(ナショナル パルック 3波長形昼白色(F.L 15EX-N 15W))を設置する。評価用サンプルのディスプレイ用フィルター側最表面を正面30cmの距離から目視観察し、干渉縞の発生程度を以下の基準で評価する。
・干渉縞の発生が認められない : ○
・干渉縞の発生が明らかに認められる : ×。
【0156】
(実施例1)
以下の要領でディスプレイ用フィルターを作製した。
【0157】
<黒化層を有するメッシュ状導電層の作製>
<メッシュパターン状の無電解メッキ触媒層の形成>
両面に易接着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み100μm)の一方の面に、ポリエステル樹脂と該ポリエステル樹脂に対して無電解メッキ触媒(塩化パラジウム)を10質量%含む無電解めっき触媒インキをメッシュパターン状にグラビア印刷し、加熱乾燥してメッシュパターン状の無電解めっき触媒層を形成した。このメッシュパターン状の無電解めっき触媒層は、開口部が正方形の格子状パターンであり、線幅が20μm、ピッチが300μmであった。
【0158】
<銅メッキ>
上記無電解めっき触媒層を5%の硫酸により脱脂処理した後、無電解銅メッキを施して無電解メッキ触媒層上に無電解銅メッキ層を形成した。続いて、上記無電解銅メッキ層上に電解銅メッキを施して電解銅メッキを形成した。上記無電解銅メッキ層と電解銅メッキ層の合計の厚みは3μmであった。
【0159】
<黒化層の形成>
上記の電解銅メッキ層上に、更にニッケル−亜鉛合金メッキを施して、黒化層を有するメッシュ状導電層を作製した。このメッシュ状導電層は、厚みが5.5μm、線幅は23μm、ピッチが297μmであった。
【0160】
<表面層の形成>
上記のメッシュ状導電層上に、表面層として第1樹脂層(ハードコート層)と第2樹脂層(ハードコート層)を順次塗工形成した。
【0161】
<第1樹脂層(ハードコート層)>
市販のハードコート塗料(JSR(株)製 オプスター(登録商標)Z7537)をマイクログラビアコーターで塗工し、90℃で乾燥後、紫外線を照射して硬化させた。この第1樹脂層の厚み(乾燥硬化後の厚み)は12μmであった。
【0162】
<第2樹脂層(ハードコート層)>
上記第1樹脂層上に、第1樹脂層と同一塗料を同一条件で塗工し、乾燥し、紫外線照射して第2樹脂層を形成した。この第2樹脂層の厚み(乾燥硬化後の厚み)は3μmであった。
【0163】
<ディスプレイ用フィルターの作製>
上記ポリエチレンテレフタレートフィルムのメッシュ状導電層及び表面層が形成されている面とは反対面に、下記の近赤外線遮蔽機能を有する粘着剤層を積層してディスプレイ用フィルターを作製した。
【0164】
<近赤外線遮蔽機能を有する粘着剤層の積層>
アクリル系粘着剤200質量部(粘着剤成分に換算した量として)に、ジイモニウム系近赤外線吸収色素を3質量部、フタロシアニン系近赤外線吸収色素を1質量部、570〜610nmに極大吸収波長を有するネオン光カット色素としてテトラアザポルフィリン(三井化学(株)製、商品名「PD−320」)0.3質量部を混合したものを乾燥厚みが25μmとなるように、離型PETフィルム(厚み38μm)上にスロットダイコーターで塗工し、乾燥して粘着剤層を形成した。次に、この離型PETフィルムに塗工された粘着剤層を、上記ポリエチレンテレフタレートフィルムのメッシュ状導電層及び表面層が形成されている面とは反対面に積層した。
【0165】
(実施例2)
実施例1と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にメッシュ状導電層を形成し、更に同様にして第1樹脂層を積層した。第1樹脂層上に下記の第2樹脂層(高屈折率ハードコート層)と第3樹脂層(低屈折率層)を順次積層した。その他は、実施例1と同様にしてディスプレイ用フィルターを作製した。
【0166】
<第2樹脂層(高屈折率ハードコート層)>
市販の帯電防止性の高屈折率ハードコート塗料(ペルノックス(株)製XJC−0357:屈折率1.66)を、PETフィルム上にマイクログラビアコーターで塗工し、90℃で乾燥後、紫外線を照射して硬化させて第2樹脂層を形成した。この第2樹脂層の厚み(乾燥硬化後の厚み)は2.9μmであった。
【0167】
<第3樹脂層(低屈折率層)>
市販の低屈折率塗料(JSR(株)製TU2180:屈折率1.37)に、メチルイソブチルケトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルを1:1の比率で加えて、固形分濃度が3質量%の塗布液を調製した。この塗布液をマイクログラビアコーターで塗工し、90℃で乾燥後、紫外線を照射して硬化させて第3樹脂層を形成した。この第3樹脂層の厚みは0.1μmであった。
【0168】
(実施例3)
実施例1と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にメッシュ状導電層を形成し、更に同様にして第1樹脂層を積層した。第1樹脂層上に下記の相分離用塗工液を塗工、乾燥、紫外線照射して、第1相分離層(ハードコート層)と第2相分離層(低屈折率層)を積層した。その他は、実施例1と同様にしてディスプレイ用フィルターを作製した。
【0169】
<相分離用塗工液>
<第1相分離層形成成分の調製>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート20質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート60質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート20質量部、イソプロピルアルコール40質量部と、光重合開始剤(Darocure1173、日本チバガイギー社製)4質量部とを混合して、第1相分離層形成成分を得た。
【0170】
<第2相分離層形成成分の調製>
トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン70質量部、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン30質量部に対し、イソプロピルアルコールを37質量部加え、撹拌した後、0.05N希塩酸29質量部を約10℃で30分かけて滴下し、さらに室温で6時間熟成させることによって、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシランと3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解物を得た。
【0171】
次いで、上記で得られたトリデカフルオロオクチルトリメトキシシランと3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解を含む溶液50質量部と、平均粒子径が12nmのコロイダルシリカのIPA分散液(IPA−ST:シリカ固形分30wt%、日産化学社製)200質量部とを混合し、室温で4時間熟成させて、第2相分離層形成成分を得た。
【0172】
<相分離用塗工液の調製>
上記の第1相分離層形成成分に、上記の第2相分離層形成成分の1.6質量部を配合し、更に、粘度が3mPa・sとなるようにイソプロピルアルコールで希釈して、相分離用塗工液を調製した。
【0173】
<相分離用塗工液の塗工>
上記の相分離用塗工液をマイクログラビアコーターにて塗工し、90℃で乾燥後、紫外線を照射して硬化させ、第1樹脂層上に、第1相分離層(ハードコート層)と第2相分離層(低屈折率層)をこの順に積層した。この第1相分離層(ハードコート層)と第2相分離層(低屈折率層)の合計厚みは3μmであった。
【0174】
(実施例4)
メッシュ状導電層を、下記の黒化層を有しないメッシュ状導電層に変更する以外は、実施例1と同様にしてディスプレイ用フィルターを作製した。
【0175】
<黒化層を有しないメッシュ状導電層>
黒化層(ニッケル−亜鉛合金メッキ)を積層しない以外は実施例1のメッシュ状導電層と同様にして作製した。但し、電解銅メッキ量を増やして、メッシュ状導電層の厚みは5.5μmに調整した。
【0176】
(比較例1)
実施例1の第1樹脂層の厚みを15μmとし、第2樹脂層は積層しないこと以外は、実施例1と同様にしてディスプレイ用フィルターを作製した。
【0177】
(比較例2)
下記のメッシュ状導電層に変更する以外は、実施例1と同様にしてディスプレイ用フィルターを作製した。
【0178】
<メッシュ状導電層の作製>
両面に易接着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み100μm)の一方の面に、厚み9μm銅箔をアクリル系接着剤(厚み15μm)で貼り合わせた。 次いで、この銅箔の表面にレジスト層(アルカリ現像型ネガレジストフィルム)を積層し、正方形の格子状メッシュパターンのマスクを介してレジスト層を露光、現像し、次いでエッチング処理を施し、最後にレジスト層を剥離除去して、メッシュ状導電層を作製した。更に、このメッシュ状導電層を黒化処理(酸化処理)して、表面に黒化層を有するメッシュ状導電層を作製した。このメッシュ状導電層は、開口部が正方形の格子状パターンであり、厚みが9μm、線幅20μm、ピッチ300μmであった。
【0179】
(比較例3)
比較例2で作製したのと同様のメッシュ状導電層を用い、このメッシュ状導電層上に実施例1と同様の第1樹脂層を厚み20μmで積層し、第2樹脂層は積層しないこと以外は、実施例1と同様にしてディスプレイ用フィルターを作製した。
【0180】
(実施例5)
以下の要領でディスプレイ用フィルターを作製した。
【0181】
<黒化層を有しないメッシュ状導電層の作製>
両面に易接着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み100μm)の一方の面に、スパッタリング法によるニッケル層(厚み0.01μm)、真空蒸着法による銅層(厚み1.5μm)、スパッタリング法による窒化銅層(厚み0.03μm)をこの順に製膜した。続いて、上記の窒化銅層の表面にレジスト層(アルカリ現像型ネガレジストフィルム)を積層し、正方形の格子状メッシュパターンのマスクを介してレジスト層を露光、現像し、次いでエッチング処理を施し、最後にレジスト層を剥離除去して、メッシュ状導電層を作製した。このメッシュ状導電層は、開口部が正方形の格子状パターンであり、厚みが1.5μm、線幅が20μm、ピッチが300μmであった。
【0182】
<表面層の形成>
上記のメッシュ状導電層上に、表面層として下記の第1樹脂層(ハードコート層)と第2樹脂層(ハードコート層)を順次塗工形成した。
【0183】
<第1樹脂層(ハードコート層)>
市販のハードコート塗料(JSR(株)製 オプスター(登録商標)Z7537)に、更に、平均粒子径3μmのアクリル系粒子(綜研化学製 ケミスノー(登録商標)MXシリーズ)を3質量%添加して塗料を作製した。尚、上記のアクリル系粒子の濃度は、第1樹脂層の固形分総量(全成分)100質量%に対する濃度である。
【0184】
この塗料をマイクログラビアコーターで塗工し、90℃で乾燥後、紫外線を照射し硬化させて第1樹脂層を形成した。第1樹脂層の厚みは、4μmであった。
【0185】
<第2樹脂層(ハードコート層)>
第1樹脂層上に、市販のハードコート塗料(JSR(株)製 オプスター(登録商標)Z7537)をマイクログラビアコーターで塗工し、90℃で乾燥後、紫外線を照射して硬化させて第2樹脂層を形成した。第2樹脂層の厚みは6μmであった。
【0186】
<ディスプレイ用フィルターの作製>
上記ポリエチレンテレフタレートフィルムのメッシュ状導電層及び表面層が形成されている面とは反対面に、実施例1と同様の近赤外線遮蔽機能を有する粘着剤層を積層してディスプレイ用フィルターを作製した。
【0187】
(実施例6)
実施例5と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にメッシュ状導電層を形成し、更に同様にして第1樹脂層を積層した。第1樹脂層上に下記の第2樹脂層(高屈折率ハードコート層)と第3樹脂層(低屈折率層)を順次積層した。その他は、実施例5と同様にしてディスプレイ用フィルターを作製した。
【0188】
<第2樹脂層(高屈折率ハードコート層)>
市販の帯電防止性の高屈折率ハードコート塗料(ペルノックス(株)製XJC−0357:屈折率1.66)を、PETフィルム上にマイクログラビアコーターで塗工し、90℃で乾燥後、紫外線を照射して硬化させて第2樹脂層を形成した。この第2樹脂層の厚み(乾燥硬化後の厚み)は5.9μmであった。
【0189】
<第3樹脂層(低屈折率層)>
市販の低屈折率塗料(JSR(株)製TU2180:屈折率1.37)に、メチルイソブチルケトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルを1:1の比率で加えて、固形分濃度が3質量%の塗布液を調製した。この塗布液をマイクログラビアコーターで塗工し、90℃で乾燥後、紫外線を照射して硬化させて第3樹脂層を形成した。この第3樹脂層の厚みは0.1μmであった。
【0190】
(実施例7)
実施例5と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にメッシュ状導電層を形成し、更に同様にして第1樹脂層を積層した。第1樹脂層上に実施例3と同様の相分離用塗工液を塗工、乾燥、紫外線照射して、第1相分離層(ハードコート層)と第2相分離層(低屈折率層)を積層した。その他は、実施例5と同様にしてディスプレイ用フィルターを作製した。
【0191】
上記相分離塗工液を塗工、乾燥、紫外線照射によって形成された第1相分離層(ハードコート層)と第2相分離層(低屈折率層)の合計厚みは6μmであった。
【0192】
(実施例8)
実施例5と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にメッシュ状導電層を形成し、このメッシュ状導電層上に実施例1の第1樹脂層と第2樹脂層を、厚みがそれぞれ8μmと2μmとなるように積層する以外は、実施例5と同様にしてディスプレイ用フィルターを作製した。
【0193】
(比較例4)
実施例5と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にメッシュ状導電層を形成し、このメッシュ状導電層上に実施例1の第1樹脂層のみを厚みが10μmで積層する以外は、実施例5と同様にしてディスプレイ用フィルターを作製した。
【0194】
(評価)
上記で作製した実施例及び比較例のそれぞれのサンプルについて、表面層の最表面における平均高低差、光沢感、透明感、及び干渉縞について、測定及び評価をおこなった。その結果を表1に示す。
【0195】
【表1】

【0196】
表1から、本発明の実施例はいずれも、表面層の最表面における平均高低差が0.1μm未満であり、良好な光沢感および良好な透明感が得られている。
実施例1〜3は、メッシュ状導電層が黒化層を有しているので、表面層の平坦性が高くなっても干渉縞の発生はなかった。
【0197】
実施例5〜7は、メッシュ状導電層が黒化層を有していないが、表面層を構成する第1樹脂層が粒子を含んでいるので、表面層の平坦性が高くなっても干渉縞の発生はなかった。
【0198】
実施例4及び8は、メッシュ状導電層が黒化層を有してなく、かつ表面層を構成する第1樹脂層が粒子を含んでいないので、表面層の平坦性が高くなることによって干渉縞の発生が認められた。
【0199】
実施例2及び6は、第1樹脂層上に高屈折率ハードコート層である第2樹脂層と低屈折率層である第3樹脂層が積層されているので、更に反射防止性に優れていた。
【0200】
実施例3及び7は、第1樹脂層上に単一層の相分離でハードコート層と低屈折率層が形成されているので、反射防止性が良好であり、また1回の塗工でハードコート層と低屈折率層が形成されるので生産性に優れている。
【0201】
一方、比較例1〜4は、表面層の最表面における平均高低差が0.1μm以上であり、良好な光沢感および良好な透明感が得られなかった。
【符号の説明】
【0202】
1 基材
2 メッシュ状導電層/細線部
3 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
該基材の上に設けられたメッシュ状導電層と、
該メッシュ状導電層の上に直接に積層された表面層とを有し、
該表面層の最表面における下記で定義される平均高低差が0.1μm未満であるディスプレイ用フィルター。
(平均高低差の定義)
表面層の最表面におけるある1つの高低差は、メッシュ状導電層のある1つの開口部の重心に対応する表面層最表面の点を点A、該開口部に隣接する開口部の重心に対応する表面層最表面の点を点C、点Aと点Cとを結ぶ線分を線分Y、線分Yとメッシュ状導電層の細線部2との交差点に対応する表面層最表面の点を点Bとしたとき、点Aから点Bまでの垂直距離L(高低差)であり、
表面層の最表面における平均高低差は、任意に選択した5つの開口部における前記垂直距離L(高低差)の平均値である。
【請求項2】
前記表面層は平坦化処理が施されずに積層されている、請求項1に記載のディスプレイ用フィルター。
【請求項3】
前記表面層が、前記メッシュ状導電層から近い順に第1樹脂層と第2樹脂層とを含み、前記第1樹脂層の厚みが1〜15μmで、かつ前記第2樹脂層の厚みが1〜12μmである、請求項1または2に記載のディスプレイ用フィルター。
【請求項4】
前記メッシュ状導電層は表面層が積層される側の表面に黒化層を有し、前記第1樹脂層の厚みが4〜15μmでかつ前記メッシュ状導電層の厚み100%に対して130%以上である、請求項3に記載のディスプレイ用フィルター。
【請求項5】
前記メッシュ状導電層は前記表面層が積層される側の表面に黒化層を有さず、前記第1樹脂層が平均粒子径0.2〜10μmの粒子を前記第1樹脂層の全成分100質量%に対して0.1〜10質量%含有する、請求項3に記載のディスプレイ用フィルター。
【請求項6】
前記第2樹脂層がハードコート層である、請求項3〜5のいずれかに記載のディスプレイ用フィルター。
【請求項7】
前記第1樹脂層がハードコート層である、請求項3〜6のいずれかに記載のディスプレイ用フィルター。
【請求項8】
前記表面層が反射防止層を含む、請求項1〜7のいずれかに記載のディスプレイ用フィルター。
【請求項9】
前記基材の前記メッシュ状導電層とは反対面に近赤外線遮蔽機能を有する層を有する、請求項1〜8のいずれかに記載のディスプレイ用フィルター。
【請求項10】
前記近赤外線遮蔽機能を有する層が粘着剤層である、請求項9に記載のディスプレイ用フィルター。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−145316(P2011−145316A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3653(P2010−3653)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【Fターム(参考)】