説明

ディスプレイ表面保護用粘着フィルム

【課題】高価なシリコーン系の粘着剤を用いることなく、安価なアクリル系粘着剤を主とする粘着剤を用いて、各種ディスプレイ表面の欠陥検査が可能であり、濡れ性がよく、気泡が抜け易く、手張りが可能なディスプレイ表面保護フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】支持体の片面または両面に、(メタ)アクリル共重合体を構成に有する架橋型アクリル系粘着剤と可塑剤を含む粘着層が形成された粘着フィルムであって、前記可塑剤は、溶解度パラメーター(SP値)が8.5以上9.5以下でかつ粘度が25℃で25mPa・s以上2500mPa・s以下であり、前記架橋型アクリル系粘着剤を構成する(メタ)アクリル共重合体100重量部に対し8重量部以上80重量部以下含まれることを特徴とするディスプレイ表面保護用粘着フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
携帯電話、パソコン、テレビ等の加工時、組み立て時、輸送時のディスプレイ表面の傷や汚れ防止等に使用できる表面保護用粘着フィルムに関する。特に、貼付け機の使用が難しい凹部分や微細部分等で使用され、粘着フィルムを貼り付けた状態で欠陥検査を行う場合に用いられる表面保護用粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パソコン、テレビ等の各種ディスプレイの表面は、ポリカーボネート(PC)、アクリル、セルローストリアセテート(TAC)、ポリエステル等の樹脂であるものが一般的である。ディスプレイは表面に傷や汚れがつくと製品欠陥となるため、組み立て時や各種加工時、搬送時には表面に粘着フィルムを貼り付け、傷や汚れを防止することが一般的に行われている。
【0003】
粘着フィルムの一般的な貼り付け方法としては、ロールを有する貼り付け機で行う手法が用いられるが、特に貼り付け機を用いることが困難な凹部分、微細部分、局面部などは人が手貼りで貼り付ける場合が多い。このような用途では、濡れ性がよく、気泡が抜けやすいシリコーン系の粘着層を設けた粘着フィルムが多く用いられている。
【0004】
各種ディスプレイ製品の高精度化が進む中で傷や汚れに対する要求精度が高まっている一方、製品のコストダウン要求も高くなっていることから、透明性が高くより安価な表面保護フィルムが求められている。
【特許文献1】特開2005−306996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高価なシリコーン系の粘着剤を用いることなく、安価なアクリル系粘着剤を主とする粘着剤を用いて、各種ディスプレイ表面の欠陥検査が可能であり、濡れ性がよく、気泡が抜け易く、手張りが可能なディスプレイ表面保護フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(1)〜(4)に記載の事項をその特徴とするものである。
【0007】
(1)支持体の片面または両面に、(メタ)アクリル共重合体を構成に有する架橋型アクリル系粘着剤と可塑剤を含む粘着層が形成された粘着フィルムであって、前記可塑剤は、溶解度パラメーター(SP値)が8.5以上9.5以下でかつ粘度が25℃で25mPa・s以上2500mPa・s以下であり、前記架橋型アクリル系粘着剤を構成する(メタ)アクリル共重合体100重量部に対し8重量部以上80重量部以下含まれることを特徴とするディスプレイ表面保護用粘着フィルム。
【0008】
(2)全光線透過率が80%以上で、かつヘイズが10%以下であることを特徴とする上記(1)記載のディスプレイ表面保護用粘着フィルム。
【0009】
(3)前記支持体がポリエステルフィルムであることを特徴とする上記(1)または(2)記載のディスプレイ表面保護用粘着フィルム。
【0010】
(4)前記粘着層上に二軸延伸ポリエステルフィルムをセパレータとして貼り合せたことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1項記載のディスプレイ表面保護用粘着フィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高価なシリコーン系の粘着剤を用いることなく、安価なアクリル系粘着剤を主とする粘着剤を用いて、各種ディスプレイ表面の欠陥検査が可能であり、濡れ性がよく、気泡が抜け易く、手張りが可能なディスプレイ表面保護フィルムを提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0013】
本発明のディスプレイ表面保護用粘着フィルム(以下、本発明の粘着フィルムという)は、支持体の片面または両面に、アクリル共重合体もしくはメタクリル共重合体(本発明において、これらを(メタ)アクリル共重合と総称する)を構成に有する架橋型アクリル系粘着剤と特定のSP値と粘度を有する可塑剤を所定量含む粘着層を設けてなることをその特徴とするものである。
【0014】
上記支持体としては、特に限定されないが、高い透明性を有するプラスチックフィルムであることが好ましく、例えば、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、トリアセテートフィルム等を挙げることができる。これらの中で生産性、加工性に優れるポリエステルフィルムが好ましく使用できる。また、このようなポリエステルフィルムには二軸延伸フィルム、一軸延伸フィルム、無延伸フィルムがあり、そのいずれも使用できるが、特に二軸延伸フィルムが汎用的であり好ましく使用される。
【0015】
上記支持体の厚さとしては、特に限定されないが、5〜200μmが好ましく用いられる。さらに好ましくは、10〜100μmである。5μmより薄いとフィルム強度が不足し、十分な保護性能が得られない、剥離時にフィルムが破れる等の問題が発生する恐れがある。また、200μmより厚いとフィルムの光透過性が悪くなる、フィルム自体が高価になる等の問題が発生する恐れがある。
【0016】
上記可塑剤のSP値は、8.5以上9.5以下であることが好ましく、8.8以上9.2以下であることがより好ましい。可塑剤のSP値が8.5より小さい、もしくは9.5より大きいとディスプレイ表面から剥離した際にディスプレイ表面に曇りが発生する恐れがある。
【0017】
また、上記可塑剤の粘度は、25mPa・s〜2500mPa・sであることが好ましく、30mPa・s〜2000mPa・sであることがより好ましく、50mPa・s〜1500mPa・sであることが特に好ましい。可塑剤の粘度が25mPa・sより小さいとディスプレイ表面から剥離した際にディスプレイ表面に曇りが発生する、ディスプレイの樹脂表面を汚染する等の問題が発生する恐れがある。また、可塑剤の粘度が2500mPa・sより大きいと、手張りした際に気泡が抜け難くなる。なお、上記粘度は温度25℃においてB型粘度計を用いて測定したときの値である。
【0018】
また、上記可塑剤は、上記架橋型アクリル系粘着剤を構成する(メタ)アクリル共重合体、すなわち架橋させる前の(メタ)アクリル共重合体100重量部に対して、8重量部以上80重量部以下添加することが好ましく、10重量部以上50重量部以下添加することがより好ましく、20重量部以上30重量部以下添加することが特に好ましい。可塑剤の添加量が8重量部より少ないと手張りした際に気泡が抜け難くなる。また、80重量部より多いと、ディスプレイ表面に曇りが発生する恐れがある。
【0019】
また、上記可塑剤としては、上記各種特性を満たすものであれば特に限定されず、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジウンデシルフタレート等のフタル酸エステル類、ジ−n−ブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジブトキシエチルアジペート、ジ−n−オクリチルアジペート、ジイソオクチルアジペート、ビス−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート等のアジピン酸エステル類、ジブチルセバケート、ジオクチルセバケート等のセバチン酸エステル類、ジヘキシルアゼレート、ジオクチルアゼレート等のアゼライン酸エステル類、トリエチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート等のクエン酸エステル類、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート等のグリコール酸エステル類、トリオクチルトリメリテート、トリ−n−オクチル−n−デシルトリメリテート等のトリメリット酸エステル類、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、グリセリンモノリシノレート等のリシノール酸エステル類、ジ−n−ブチルマレート等のマレイン酸エステル類、モノブチルイタコネート等のイタコン酸エステル類、ブチルオレート等のオレイン酸エステル類、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリキシレニルフォスフェート等のリン酸エステル類、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリプロピレンセバケート等のポリエステル類、エポキシ化大豆油、エポキシブチルステアレート等のエポキシ類などの低分子可塑剤、高分子可塑剤等が挙げられる。
【0020】
上記架橋型アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル共重合体を構成に有するものであり、例えば、アクリル酸アルキルエステルモノマー又はメタクリル酸アルキルエステルモノマー(以下、まとめて(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーという)と官能基付与モノマーとを共重合させてなる(メタ)アクリル共重合体を架橋剤にて架橋したものを用いることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、特に限定されないが、アルキル基の炭素数1〜17のものなどがあり、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸n−ノニル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル等が挙げられ、これらの中でもアクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチルが好ましい。これらは単独又は組合せで使用することもできる。また、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと共重合可能なビニル系モノマー、例えば、スチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーに適量共重合させることもできる。
【0021】
上記の官能基付与モノマーとしては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの水酸基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、無水マイレン酸、イタコン酸などカルボキシル基を含有する不飽和単量体、ジアセトノアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのアミド基を含有する(メタ)アクリルアミド化合物、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のジアルキルアミノアルキルエステルなどのアミノ基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、オキシラン基を含有するグリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でもメタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。これらは、単独又は組合せで使用することもできる。
【0022】
上記(メタ)アクリル共重合体において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、これに共重合可能なモノマー及び官能基付与モノマーは、それぞれ、80〜95重量%、0〜20重量%及び1〜10重量%で全体が100重量%になるよう使用することが好ましい。
【0023】
また、上記(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量は、10万〜100万の範囲内であることが好ましい。重量平均分子量が10万未満であると、低分子量物が多くなるため被着体表面に転着しそれを汚染してしまう傾向がある。一方、重量平均分子量が100万を超えると、接着剤溶液の粘度が高くなり、塗工作業時にスジや面粗れといった外観上の問題が発生し易くなる傾向がある。ここで重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定されたものである。
【0024】
また、上記(メタ)アクリル共重合体のガラス転移温度(Tg)は、−20℃以下であることが好ましく、−30〜−70℃であることがより好ましい。Tgが−20℃を超えると、接着剤の柔軟性が低下し、粘着性と剥離性を両立させることが困難となる傾向にある。なお、本願におけるガラス転移温度(Tg)とは、以下の計算式で求められる値をいう。
【数1】

【0025】
また、上記架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アミン系化合物、金属キレート系化合物などが挙げられる。これらの中でも、イソシアネート化合物、エポキシ系化合物は取扱いが容易であり好ましい。また、粘着剤に緩やかに広がった網目状構造を形成する為に3官能、4官能といった多官能架橋剤がより好ましく用いられる。
【0026】
上記イソシアネート系化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなど、さらに、それらの2量体、3量体として、例えば、ジヘキサメチレンジイソシアネート付加縮合体、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート付加縮合体などが挙げられる。
【0027】
また、上記エポキシ系化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アクリルアルコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、付加モル数が5以下のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ジグリシジルアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、さらにエピービス型、その他の型のエポキシ系化合物として市販されているものなどが挙げられる。
【0028】
また、上記アミン系化合物としては、例えば、トリエチルジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、トリエチルテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。
【0029】
また、上記金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、銅、鉄、チタン、スズ、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウムなどの多価金属がアセト酢酸エチルやアセチルアセトンに配位した化合物などが挙げられる。
【0030】
また、上記架橋剤は、上記(メタ)アクリル共重合体の官能基に対して架橋剤の官能基(アクリル共重合体の官能基と反応するもの)が当量で20〜100%の範囲になるように使用することが好ましい。架橋剤の配合量が少なすぎると、粘着剤中で架橋している部分が少なくなり、粘着剤の凝集力が不足して、粘着フィルムをディスプレイ表面に貼り付け、剥離した際にディスプレイ表面に粘着剤が転着し易くなる傾向がある。また、架橋剤の配合量が多すぎると、粘着剤中に架橋反応しない架橋剤が多く残留し、粘着フィルムをディスプレイ表面に貼り付け、剥離した際にディスプレイ表面に架橋剤が転着し、曇りが発生する恐れがある。
【0031】
本発明の粘着フィルムの粘着層の厚みは、通常1〜30μmとするのが適当である。また、粘着層の形成方法としては、上記(メタ)アクリル共重合体、架橋剤および可塑剤を、例えば、有機溶剤に溶解し粘度を調整した粘着剤溶液を支持体に塗布し、乾燥する方法、水に分散した粘着剤溶液を支持体に塗布し、乾燥する方法等、公知の方法を用いることができるが、有機溶剤に溶解し粘度を調整した粘着剤溶液を塗布し、乾燥する方法が一般的である。なお、本発明における架橋型アクリル系粘着剤は、上記(メタ)アクリル共重合体を上記架橋剤により架橋させることが必須である。そこで、例えば、粘着剤溶液を塗付し乾燥する時または乾燥した後に、加熱処理、紫外線照射、電子線照射等を行うことにより、架橋反応を促進させることが好ましい。特に、加熱処理は、上記(メタ)アクリル共重合体と架橋剤の架橋反応と、粘着剤層の乾燥を同時に行うことができ、生産性に優れており、より好ましい。このときの加熱処理温度条件としては、60℃〜130℃の範囲であることが好ましい。また、上記のように作製した粘着フィルムは、室温や加熱して養生することが好ましく、養生条件としては、室温から60℃で1時間〜1週間程度行うことが好ましい。
【0032】
また、本発明の粘着フィルムは、必要に応じて支持体と粘着層との密着力を向上させる等のために、支持体の、粘着層と接する表面にコロナ処理、プラズマ処理といった表面処理や下塗り(プライマ)の塗布等を行ってもよい。また、粘着フィルムのロールからの巻き出し性を調整する目的で粘着フィルムの背面(粘着層形成面と反対側の支持体表面、または、粘着層が支持体の両面に形成されている場合にはロールの外側となる粘着層表面。以下同様)に背面処理剤を塗布してもよい。背面処理剤としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アルキル基を有する樹脂等の単体や変性体、混合物が挙げられる。また、粘着フィルムの巻き出し時や剥離時の静電気発生を抑制する目的で粘着フィルムの背面や支持体と粘着層の間に帯電防止剤を塗布しても良い。帯電防止剤としては、透明性が良好な、例えば、アンモニウム塩、ピリジニウム塩等のカチオン性基を有するカチオン性帯電防止剤、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基等のアニオン性基を有するアニオン性帯電防止剤、アミノ酸系、アミノ酸硫酸エステル等の両性帯電防止剤、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等の非イオン帯電防止剤等の各種帯電防止剤、更にこれら帯電防止剤を高分子量化した高分子型帯電防止剤等が挙げられる。
【0033】
本発明の粘着フィルムは、高い透明性を有していることが望ましく、全光線透過率が80%以上でかつヘイズが10%以下であることが好ましく、全光線透過率が90%以上でかつヘイズが5%以下であることがより好ましい。全光線透過率が80%より低いまたはヘイズが10%より高いと、粘着フィルムを貼り付けた状態でディスプレイの欠陥検査を精度よく行うことができないといった問題が発生する恐れがある。なお、全光線透過率およびヘイズは、積分球式濁度計(日本電色工業株式会社製、NDH2000型)を用いて、JIS K‐7105に準じて測定することができる。
【0034】
また、本発明の粘着フィルムの粘着層表面上に、当該粘着層表面を保護し、その平滑性を確保するためにセパレータを貼り合わせてもよい。このセパレータとしては、例えば、プラスチックフィルムセパレータ、紙セパレータ等が挙げられるが、中でもフィルム表面の平滑性に優れ、比較的安価である等の特徴を有する二軸延伸ポリエステルセパレータが好ましく使用できる。また、このセパレータの、粘着層と接する表面には、粘着フィルム(粘着層)からの剥離性を調整する目的で剥離剤を塗布しても良い。剥離剤としては、一般に使用されているものでよく、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アルキル基を有する樹脂等の単体や変性体、混合物などが挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
主モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート89重量%、官能基モノマーとしてヒドロキシメタクリレート10重量%およびアクリル酸(1重量%)を用い、溶液重合法によりアクリル共重合体を合成した。この合成したアクリル共重合体の重量平均分子量は95万、ガラス転移温度(Tg)は−61℃であった。
【0037】
ついで、上記で得たアクリル共重合体100重量部に対し、多官能イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名コロネートL45E)を6重量部、さらにSP値が8.8、粘度が1300mPa・sのアジピン酸系ポリエステル可塑剤(旭電化工業(株)製、商品名アデカサイザーPN−1010)を20重量部配合した粘着剤溶液を調整し、これを、厚さ38μmの透明な二軸延伸ポリエステルフィルム(ユニチカ(株)製、商品名エンブレットS−25、厚み25μm)のコロナ処理面に、乾燥時の厚さが10μmになるように塗工乾燥した。さらに、シリコーン系剥離剤が塗布された厚さ25μmの二軸延伸ポリエステルフィルムセパレータ(東洋紡績(株)製、商品名E−7002、厚み25μm)を上記粘着剤層面にラミネートし、粘着フィルムを作製した。さらに、この粘着フィルムを1週間放置し十分にエージングした後、試験に使用した。
【0038】
(実施例2)
可塑剤を10重量部配合した以外は、実施例1と同様にして粘着フィルムを作製した。
【0039】
(実施例3)
可塑剤を50重量部配合した以外は、実施例1と同様にして粘着フィルムを作製した。
【0040】
(実施例4)
可塑剤として、SP値が8.9、粘度が30mPa・sのエーテルエステル系可塑剤(旭電化工業(株)製、商品名アデカサイザーRS−700)を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着フィルムを作製した。
【0041】
(実施例5)
可塑剤として、SP値が9.2、粘度が800mPa・sのエーテルエステル系可塑剤(旭電化工業(株)製、商品名アデカサイザーPN−170)を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着フィルムを作製した。
【0042】
(比較例1)
可塑剤を5重量部配合した以外は、実施例1と同様にして粘着フィルムを作成した。
【0043】
(比較例2)
可塑剤を100重量部配合した以外は、実施例1と同様にして粘着フィルムを作製した。
【0044】
(比較例3)
可塑剤として、SP値が9.7、粘度が43mPa・sのエーテルエステル系可塑剤(旭電化工業(株)製、商品名アデカサイザーRS−1000)を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着フィルムを作製した。
【0045】
(比較例4)
可塑剤として、SP値が9.2、粘度が20mPa・sのアジピン酸系ポリエステル可塑剤(旭電化工業(株)製、商品名アデカサイザーRS−107S)を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着フィルムを作製した。
【0046】
(比較例5)
可塑剤として、SP値が9.0、粘度が3000mPa・sのアジピン酸系ポリエステル系可塑剤(旭電化工業(株)製、商品名アデカサイザーPN−1030)を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着フィルムを作製した。
【0047】
上記各実施例および比較例で得た粘着フィルムの全光線透過率、ヘイズ、濡れ性・気泡の抜け性、樹脂板汚染性を下記の通りの評価した。結果を表1に示す。
【0048】
・全光線透過率、ヘイズ
全光線透過率およびヘイズは、セパレータを剥離した粘着フィルムについて、積分球式濁度計(日本電色工業株式会社製、NDH2000型)を用いて、JIS K‐7105に準じて測定した。
【0049】
・濡れ性・気泡の抜け性
アクリル板に、長さ100mm、幅2.5mmのセパレータを剥離した粘着フィルムを気泡が入らないように貼り付けた後、長さ方向に5mm、90度の角度で剥離し、手を離した際に剥離した部分がアクリル板に再び張り付いた時の状態を観察した。
○:気泡が入らずにアクリル板に貼り付く
×:気泡が入る
【0050】
・樹脂板汚染性
アクリル板、ポリカーボネート板にそれぞれセパレータを剥離した粘着フィルムを圧力5880N/mのかかったゴムロール(ゴム硬度80度、ショアーゴム硬度計にて測定)にて2m/minの速度で貼り付け、50℃で1日間放置した後に、角度90度、速度0.2m/minで剥離し、アクリル板およびポリカーボネート板表面を観察した。
○:アクリル板、ポリカーボネート板表面にくもりが生じていない
×:アクリル板、ポリカーボネート板表面にくもりが生じている
【表1】

【0051】
表1から明らかなように、本発明の粘着フィルムである実施例1〜5は、手貼りに必要な濡れ性、気泡の抜け性を備え、樹脂板に対する汚染性がなく、貼り付けたままでディスプレイ表面の欠陥検査を精度よく行うことが可能なものであった。
【0052】
それに対し、比較例1、5は手張りに必要な濡れ性、気泡の抜け性が得られなかった。また、比較例2〜4では粘着フィルムを剥離後、樹脂板表面が曇るという問題が発生した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の片面または両面に、(メタ)アクリル共重合体を構成に有する架橋型アクリル系粘着剤と可塑剤を含む粘着層が形成された粘着フィルムであって、前記可塑剤は、溶解度パラメーター(SP値)が8.5以上9.5以下でかつ粘度が25℃で25mPa・s以上2500mPa・s以下であり、前記架橋型アクリル系粘着剤を構成する(メタ)アクリル共重合体100重量部に対し8重量部以上80重量部以下含まれることを特徴とするディスプレイ表面保護用粘着フィルム。
【請求項2】
全光線透過率が80%以上で、かつヘイズが10%以下であることを特徴とする請求項1記載のディスプレイ表面保護用粘着フィルム。
【請求項3】
前記支持体がポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項1または2記載のディスプレイ表面保護用粘着フィルム。
【請求項4】
前記粘着層上に二軸延伸ポリエステルフィルムをセパレータとして貼り合せたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のディスプレイ表面保護用粘着フィルム。


【公開番号】特開2007−327012(P2007−327012A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−161504(P2006−161504)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】