説明

ディスプレイ部材用ガラスペーストの製造方法、ならびにそれを用いたプラズマディスプレイ用基板の製造方法

【課題】エネルギー消費を少なくディスプレイ部材用ガラスペーストを製造する方法を提供することができる。
【解決手段】基板用ガラスを製造する際に生じる端材またはディスプレイ基板用ガラス回収品を粉砕して回収ガラス粉末とし、該回収ガラス粉末と他のガラス粉末および有機成分を混合することを特徴とするディスプレイ部材用ガラスペーストの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ部材用ガラスペーストの製造方法、ならびにそれを用いたプラズマディスプレイ用基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、直流(DC)型および交流(AC)型プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、電界放出ディスプレイ等の大型フラットパネルディスプレイの開発が進み、上市されて大きな市場を形成している。大型フラットパネルディスプレイには画素の仕切り等の諸機能を持った構造体が形成されている。例えばAC型プラズマディスプレイは、前面板と背面板との間に備えられた放電空間内で対向するアノードおよびカソード電極間にプラズマ放電を生じさせ、放電空間内に封入されているXe−Ne混合ガスなどの放電ガスから発生した147nm、172nmといった非常に波長が短い紫外線を、放電空間内に設けた蛍光体に照射することにより表示を行うものである。その構造体は、放電の広がりを一定領域に抑え、表示を規定のセル内で行わせると同時に、かつ均一な放電空間を確保するために、主に背面板上に設けられ、隔壁(障壁、リブともいう)と呼ばれている。隔壁の形状は、一般にはおよそ幅20〜120μm、高さ50〜150μmのストライプ状や格子状のものなどがあるが、高性能化のために格子状のものが主力である。
【0003】
背面板はガラス基板上に電極、誘電体層、隔壁の順番に積み上げた構造となっており、ガラス基板としては、パネル製造工程の熱処理温度である570〜600℃でも熱収縮が小さい基板用ガラスが提案され使用されている(例えば、特許文献1参照)。電極、誘電体層、隔壁は一般に有機バインダーを主成分とする有機物と、電極はAl,Ag,Niなどの金属粉末およびガラス粉末、誘電体層および隔壁はガラス粉末を主成分とする無機物との混合物からなるペーストをガラス基板上にスクリーン印刷やスリットダイコートなどで塗布し、サンドブラスト法やフォトリソグラフィー法等によりパターン加工した後、焼成することによって形成する方法が知られている。
【0004】
ペーストに含まれるガラス粉末は、パネル製造工程の熱処理で融着する低軟化点ガラスに加え、パターン形状の保持を目的として該熱処理では熱的な変形を受けない高軟化点ガラス粉末を用いることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
ガラス粉末の製造方法としては酸化物または炭酸塩を予め設定された組成比に秤量して混合し、その混合物を白金坩堝に入れて例えば1200〜1300℃の高い温度で溶融した後、その溶融液を急冷してガラス片を形成し、前記ガラス片をボールミルまたはジェットミルのような機械的な方法により粉砕して製造する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
一方、ディスプレイ基板用ガラスは、錫等の溶融錫浴の上に溶融ガラスを浮かべて板ガラスとするフロート法により製造することが知られている(例えば、特許文献4参照)。所望のガラス組成範囲となるように調合したガラス原料を連続溶融炉などに投入し、加熱して前記溶融ガラスとする。
【0007】
フロート法により製造されるディスプレイ基板用ガラスは、所定のサイズに切断することにより端材が発生する。また、ディスプレイ部材を多面取りで製造した後、個々のディスプレイ部材に切り分ける際にも端材が発生する。このようにして発生するディスプレイ基板用ガラスの端材を廃棄物とせず再利用するためには再度溶融して活用する必要がある。
【0008】
一方、ディスプレイ基板用ガラスを製造する際やディスプレイ部材を製造する際に、傷、欠け、割れ、汚れ、パターン形成不良などが原因でディスプレイ基板用ガラスやディスプレイ部材の不良品が発生する場合があり、これを廃棄せず再利用するためには、やはりディスプレイ基板用ガラスを再度溶融して活用する必要がある。
【0009】
ガラスを製造するためには1000℃以上の高温で溶融する必要があり、高いエネルギーを消費するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−290938号公報
【特許文献2】特開平11−314937号公報
【特許文献3】特開2004−339046号公報
【特許文献4】特開2001−89191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、材料製造工程を含めたエネルギー消費を少なくディスプレイ部材用ガラスペーストを製造する方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は、ディスプレイ基板用ガラスを製造する際もしくはディスプレイ部材を製造する際に生じる端材またはディスプレイ基板用ガラス回収品を粉砕して回収ガラス粉末とし、該回収ガラス粉末と他のガラス粉末および有機成分を混合することを特徴とするディスプレイ部材用ガラスペーストの製造方法である。
【0013】
さらに、本発明は、得られたディスプレイ部材用ガラスペーストを基板上に塗布し、焼成して隔壁を形成することを特徴とするプラズマディスプレイ用基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
材料製造工程を含めたエネルギー消費を少なくディスプレイ部材用ガラスペーストを製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のディスプレイ部材用ガラスペーストの製造方法は、ディスプレイ基板用ガラスを製造する際に生じる端材またはディスプレイ基板用ガラス回収品を粉砕した回収ガラス粉末を使用することを必須とし、該回収ガラス粉末と他のガラス粉末および有機成分を混合することで実施する。
【0016】
ここで、端材とは、ディスプレイ基板用ガラスを製造する際に大判ガラス板からディスプレイ基板用ガラスを切り出す際、またはディスプレイ部材を多面取りで製造する場合に、個々のディスプレイ部材を切り分ける際に発生する、製品にはならない部分のディスプレイ基板用ガラスを差す。
【0017】
また、ディスプレイ基板用ガラス回収品とは、ディスプレイ基板用ガラスを製造する際やディスプレイ部材を製造する際に傷、欠け、割れ、汚れ、パターン形成不良などが原因で発生する不良品から回収したディスプレイ基板用ガラスを指す。なお、ディスプレイ基板用ガラスを製造する際に発生した不良品や、ディスプレイ部材を製造する際であっても、ディスプレイ基板用ガラス上にこれとは異なる材料からなる層を設ける前の段階で発生した不良品は、そのまま粉砕して回収ガラス粉末とすることができる。また、ディスプレイ基板用ガラス上に、電極や隔壁などディスプレイ基板用ガラスとは異なる材料からなる層を設けた後に発生した不良品は、前記ディスプレイ基板用ガラスとは異なる材料からなる層を除去してからディスプレイ基板用ガラスのみを粉砕してもよいし、電極や隔壁などを設けた状態で粉砕したあとに回収ガラス粉末を分離してもよいし、前記ディスプレイ基板用ガラスとは異なる材料の量がディスプレイ基板用ガラスに対して問題とならない程度に少ない場合は粉砕したものをそのまま回収ガラス粉末とすることができる。
【0018】
前記回収ガラス粉末は、既にガラスとして存在する基板用ガラスの端材やディスプレイ基板用ガラス回収品を粉砕するだけで作製できるため、例えば通常のガラス粉末の製造する際に必要な原料の調合作業、白金坩堝に入れて1200〜1300℃の高い温度で溶融した後、その溶融液を急冷してガラスを作製するなどの必要が無く、エネルギー消費を少なく作製することができる。基板用ガラス端材や基板用ガラス回収品の有効な活用方法として好適である。
【0019】
前記回収ガラス粉末は基板用ガラス端材または基板用ガラス回収品から作製されるため、軟化温度が630℃以上であることが一般的である。そのため、ガラス基板上にパターンを形成するディスプレイ部材用ガラスペーストとするには混合する他のガラス粉末は軟化温度が470〜620℃の範囲内である低軟化点ガラス粉末であることが好ましい。この場合、前記回収ガラス粉末はフィラーとして焼成後のパターン形状を保持する役割となる。
【0020】
前記低軟化点ガラス粉末の組成は、質量百分率で例えばSiO 15〜50%、Al 6〜25%、BaO 2〜15%、B 15〜40%、LiO 3〜15%、CaO 2〜10%、MgO 1〜10%、ZnO 1〜5%の範囲内であることが好ましい。
【0021】
ガラスペーストにおけるガラス粉末の含有量は、焼成時の収縮率が小さく、焼成による形状変化が小さいことから30〜80重量%の範囲内であることが好ましい。また、前記回収ガラス粉末の配合比は全ガラス粉末に対して5〜50重量%の範囲内であることが好ましい。5重量%以上とすることで形状保持の効果が得られ、50重量%以下とすることでガラス基板などの下地との密着強度を維持できる。
【0022】
ガラス粉末の熱膨張係数(50〜400℃)はパターンを形成するガラス基板と同等の50×10−7〜100×10−7−1であることが好ましい。
【0023】
前記回収ガラス粉末の組成は、質量百分率で、SiO 50〜75%、Al 1〜15%,MgO 0〜15%、CaO 0〜15%、SrO 0.5〜15%、BaO 0.5〜15%、ZrO 0〜10%、NaO 2〜10%、KO 2〜15%の範囲内であることが好ましい。化学的耐久性に優れ、歪み点が570℃以上、軟化点が630℃以上のガラスとなり、75〜95×10−7−1の熱膨張係数を有するため、570〜600℃で熱処理する際にも熱収縮が小さく、溶融変形しないフィラー材として好適に使用される。
【0024】
本発明のガラスペーストに用いられるバインダー樹脂は、とくに限定されるものではないが、焼成時に酸化または/および分解または/および気化し、炭化物がパターン層中に残存しないことが好ましく、例えば、エチルセルロースに代表されるセルロース化合物、ポリイソブチルメタクリレートに代表されるアクリルポリマーなどを用いることができる。また、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、メタクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、α−メチルスチレン重合体、ブチルメタクリレート樹脂などの樹脂があげられる。
【0025】
本発明のガラスペーストにおけるバインダー樹脂の含有量は、5〜30重量%であることが好ましく、ガラス粉末とバインダー樹脂の含有比率は、重量比で10:1〜5:5であることが好ましい。
【0026】
また、高精度の隔壁形成を行う場合には、感光性ペースト法により隔壁形成する方法が好ましい。この場合には、有機成分として、感光性モノマー、感光性オリゴマー、感光性ポリマーのうち少なくとも1種類から選ばれる感光性有機成分を含有する感光性ガラスペーストとする。さらに必要に応じて、光重合開始剤、紫外線吸収剤、増感剤、増感助剤、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、有機溶媒、酸化防止剤、分散剤、有機あるいは無機の沈殿防止剤などの添加剤成分を加えたものがあげられる。
【0027】
感光性モノマーとは、炭素−炭素不飽和結合を含有する化合物で、その具体的な例としては、単官能および多官能の(メタ)アクリレート類、ビニル系化合物類、アリル系化合物類などを用いることができ、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレート等のアクリレート、また、これらの芳香環の水素原子のうち、1〜5個を塩素原子または臭素原子に置換したモノマー、もしくは、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、塩素化スチレン、臭素化スチレン、α−メチルスチレン、塩素化α−メチルスチレン、臭素化α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、カルボキシメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、および、上記化合物の分子内のアクリレートを一部もしくはすべてをメタクリレートに変えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドンなどがあげられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。
【0028】
これら以外に、不飽和カルボン酸等の不飽和酸を加えることによって、感光後の現像性を向上させることができる。不飽和カルボン酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、またはこれらの酸無水物などがあげられる。
【0029】
これら感光性モノマーの含有率は、無機粉末と感光性有機成分の和に対して、3〜20重量%が好ましい。
【0030】
また、感光性オリゴマー、感光性ポリマーとしては、前記炭素−炭素不飽和結合を含有する化合物のうちの少なくとも1種類を重合して得られるオリゴマーやポリマーを用いることができる。前記炭素−炭素不飽和結合を含有する化合物の含有率は、感光性オリゴマーまたは感光性ポリマー中、10重量%以上であることが好ましく、35重量%以上であることがより好ましい。さらに、感光性オリゴマー、感光性ポリマーに不飽和カルボン酸などの不飽和酸を共重合することによって、アルカリ水溶液などの水系現像液を用いる場合の感光後の現像性を向上することができるため好ましい。不飽和カルボン酸の具体的な例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸またはこれらの酸無水物などがあげられる。こうして得られた側鎖にカルボキシル基等の酸性基を有するオリゴマーまたはポリマーの酸価(AV)は30〜150であることが好ましく、70〜120であることがより好ましい。酸価が30未満であると、未露光部の現像液に対する溶解性が低下するため現像液濃度を濃くすると露光部まで剥がれが発生し、高精細なパターンが得られにくい傾向がある。また、酸価が150を超えると現像許容幅が狭くなる傾向がある。
【0031】
これらの感光性オリゴマー、感光性ポリマーに対して、光反応性基を側鎖または分子末端に付加させることによって、感光性を持つ感光性ポリマーや感光性オリゴマーとして用いることができる。好ましい光反応性基は、エチレン性不飽和基を有するものである。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などがあげられる。
【0032】
このような側鎖をオリゴマーやポリマーに付加させる方法は、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させる方法がある。
【0033】
グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテルなどがあげられる。
【0034】
イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネート等がある。
【0035】
また、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドは、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して0.05〜1モル当量付加させることが好ましい。
【0036】
本発明のガラスペーストを感光性ガラスペーストとする場合、感光性ガラスペースト中の感光性オリゴマーおよび/または感光性ポリマーの含有量は、パターン形成性、焼成後の収縮率の点から、無機粉末と感光性有機成分の和に対して、5〜30重量%であることが好ましい。
【0037】
本発明のガラスペーストを感光性ガラスペーストとする場合には光重合開始剤を含有することが好ましく、その具体的な例としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタノール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4’−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾインおよびエオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤などがあげられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。
【0038】
光重合開始剤は、感光性有機成分に対し、0.1〜30重量%の範囲で添加され、より好ましくは、0.2〜25重量%である。
【0039】
本発明のガラスペーストを感光性ガラスペーストとする場合、光重合開始剤と共に増感剤を使用し、感度を向上させ、また、反応に有効な波長範囲を拡大することができる。
【0040】
増感剤の具体例としては、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、ミヒラーケトン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−カルボニルビス(4−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−トリルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、3−フェニル−5−ベンゾイルチオテトラゾール、1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオテトラゾール等が挙げられる。
【0041】
本発明のガラスペーストを感光性ガラスペーストとする場合、上記増感剤を1種または2種以上使用することができる。増感剤を感光性ガラスペーストに添加する場合、その添加量は感光性有機成分に対して通常0.1〜30重量%、より好ましくは0.2〜25重量%である。
【0042】
本発明のガラスペーストを感光性ガラスペーストとする場合においては、紫外線吸収剤を添加することも有効である。本発明のガラスペーストでは、無機粉末として性質の異なる低融点ガラス粉末とフィラーを用いているため、感光性ペースト被膜の内部で露光光の散乱が大きく、パターンが広がりやすい傾向にある。紫外線吸収剤を添加することで、露光光による感光性ペースト内部の散乱光を吸収し、散乱光を弱め、シャープなパターンが得られる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、サリチル酸系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、インドール系化合物、無機系の微粒子酸化金属等が挙げられる。これらの中でもベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、インドール系化合物が特に有効である。これらの具体例としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノントリヒドレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−n−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、インドール系の吸収剤であるBONASORB UA−3901(オリエント化学社製)、BONASORB UA−3902(オリエント化学社製)SOM−2−0008(オリエント化学社製)等が挙げられるがこれらに限定されない。さらに、これら紫外線吸収剤の骨格にメタクリル基等を導入し反応型として用いてもよい。本発明では、これらを1種以上使用することができる。
【0043】
紫外線吸収剤の添加量は、感光性ガラスペースト中に0.001〜10重量%、より好ましくは、0.005〜5重量%の範囲である。
【0044】
さらに、本発明のガラスペーストを感光性ガラスペーストとする場合、重合禁止剤を添加することも有効である。
【0045】
具体的には、ヒドロキノン、フェノチアジン、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジブチルヒドロキノン、モノ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、N−フェニルナフチルアミン、2,6−ジ−t−ブチル−p−メチルフェノール、クロラニール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール等が挙げられるがこれらに限定されない。本発明では、これらを1種以上使用することができる。
【0046】
重合禁止剤の添加量は、感光性ペースト中に0.01〜10重量%、より好ましくは、0.05〜5重量%の範囲である。
【0047】
本発明のガラスペーストを感光性ガラスペーストとする場合、紫外線吸収剤と重合禁止剤をコントロールすることで、パターン形状のコントロールが可能となる。
【0048】
本発明のガラスペーストがアクリル系共重合体を含む場合、保存時におけるアクリル系共重合体の酸化を防ぐためにガラスペースト中に酸化防止剤を含むことが好ましい。酸化防止剤の具体的な例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−6−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス[3,3−ビス−(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、ジラウリルチオジプロピオナート、トリフェニルホスファイトなどがあげられる。酸化防止剤を添加する場合、その添加量は、ガラスペースト中に、0.01〜1重量%であることが好ましい。
【0049】
本発明のガラスペーストに使用される有機溶剤としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類、イソプロピルアルコール、メチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ベンジルアルコール、テルピネオール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなどのケトン類、乳酸エチル、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、ノルマルプロピルアセテート、イソブチルアセテート、ノルマルペンチルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートなどのエステル類、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類などが挙げられる。
【0050】
また、感光性ペーストとする場合には、前記回収ガラス粉末の屈折率Nと前記有機成分の屈折率Nが次式を満たすことが好ましい。
−0.05<N−N<0.05
−Nがこの範囲内であるとペースト中の光散乱を抑制し、活性光線の透過性が向上する。これにより、高精細なパターンを形成することが可能となる。ガラス粉末の屈折率はベッケ法、有機成分はアッベ法やエリプソメトリー法で測定される。
【0051】
本発明のガラスペーストの製造方法は、バインダー樹脂や他の有機成分を有機溶剤に溶解した有機成分と、前記回収ガラス粉末と他のガラス粉末を所望のペースト組成となるように各々計量して混ぜ合わせることで実施する。ガラス粉末と有機成分をほぼ均一に混ぜ合わせるために、予備混練を行う。予備混練は、シリコンやフッ素樹脂製のヘラで見た目が均一になるまで手で掻き混ぜて行っても良いし、羽根の付いた攪拌機で行っても良いが、予備混練機を用いることが好ましい。予備混練機としては、プラネタリーミキサーを使用することがペースト中の無機粒子の分散性が良好になるため好ましい。プラネタリーミキサーは、ブレード型混練機の一種であり、2枚以上の羽根(ブレード)が容器(タンク)内でデッドスペースができるだけ生じないように自転および公転し、その際の羽根同士および羽根と容器壁の間に生じるせん断力により混練を行う機構である。また、プラネタリーミキサーは、タンク内のデッドスペースが少ないため、比較的粘度の高い混練物を均一に予備混練することができる。予備混練を十分に行っておくと、次の混練工程を短時間で済ますことができる。この工程において、予備混練物が作製される。予備混練工程で作製された予備混練物中の無機粉末の2次凝集粒子を1次粒子までほぐすため、さらに本混練を行う。本混練には3本ロールミルなどの混練機を使用する。
【0052】
次に、前記ディスプレイ部材用ガラスペーストの製造方法により得られたディスプレイ部材用ガラスペーストを用いて基板上に塗布して乾燥する工程を含むディスプレイ部材用基板の製造方法を説明する。
【0053】
ガラス基板やセラミックスの基板、もしくは、ポリマー製フィルムの上に、ガラスペーストを全面塗布、もしくは部分的に塗布する。塗布方法としては、スクリーン印刷法、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、ブレードコーターなど一般的な方法を用いることができる。塗布した後は、通風オーブン、ホットプレート、赤外線乾燥機など任意のものを用いて乾燥し、ガラスペーストの乾燥膜を形成する。乾燥温度は、ペースト中の有機成分に影響しない40〜150℃の範囲が好ましい。パターン形成する場合には、サンドブラスト法、感光性ペースト法、スクリーン印刷法、またはモールド転写法であることが好ましく、高精細化・工程の簡便性が優れる点から、感光性ペースト法であることがより好ましい。
【0054】
ここでは、感光性ペースト法を用いてプラズマディスプレイパネル用隔壁パターン加工を行う一例について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0055】
感光性ガラスペーストを塗布、乾燥した後、露光装置を用いて露光を行う。露光は、通常のフォトリソグラフィー法で行われるように、フォトマスクを用いてマスク露光する方法が一般的である。用いるマスクは、感光性有機成分の種類によって、ネガ型もしくはポジ型のどちらかを選定する。
【0056】
露光装置としては、ステッパー露光機、プロキシミティ露光機などを用いることができる。使用される活性光源としては、例えば、可視光線、近紫外線、紫外線、電子線、X線、レーザー光などが挙げられる。これらの中で紫外線が最も好ましく、その光源として、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが使用できる。これらのなかでも超高圧水銀灯が好適である。露光条件は、塗布厚みによって異なるが、通常、1〜100mW/cmの出力の超高圧水銀灯を用いて0.1〜10分間露光を行う。
【0057】
露光後、露光部分と非露光部分の現像液に対する溶解度差を利用して、現像を行うが、この場合、浸漬法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法で行える。
【0058】
現像液は、感光性ガラスペースト中の溶解させたい有機成分が溶解可能である溶液を用いる。感光性ガラスペースト中にカルボキシル基などの酸性基をもつ化合物が存在する場合、アルカリ水溶液で現像できる。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液や炭酸ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液などが使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。有機アルカリとしては、一般的なアミン化合物を用いることができる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。アルカリ水溶液の濃度は、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%であることがより好ましい。アルカリ水溶液の濃度が0.01重量%未満であると可溶部が除去されない傾向があり、10重量%をこえるとパターン部を剥離させ、また、非可溶部を腐食させる傾向がある。また、現像時の現像温度は、20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。
【0059】
次に、焼成炉にて焼成を行う。焼成雰囲気や温度は、ペーストや基板の種類によって異なる。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉を用いることができる。焼成温度は、通常500〜600℃で行う。なお焼成温度は用いるガラス粉末によって決まるが、パターン形成後の形が崩れず、かつガラス粉末の形状が残らない適正な温度で焼成するのが好ましい。適正温度より低いと、気孔率、隔壁上部の凹凸が大きくなり、放電寿命が短くなったり、誤放電を起こしやすくなったりするため好ましくない。また適正温度より高いとパターン形成時の形状が崩れ、隔壁上部が丸くなる、また、極端に高さが低くなり、所望の高さが得られないため、好ましくない。
【0060】
また、以上の塗布や露光、現像、焼成の各工程中に、乾燥、予備反応の目的で、50〜300℃加熱工程を導入しても良い。
【0061】
隔壁を形成した後に、RGB各色に発光する蛍光体層を形成する。蛍光体粉末、有機バインダーおよび有機溶媒を主成分とする蛍光体ペーストを所定の隔壁間に形成することにより、蛍光体層を形成することができる。蛍光体ペーストを所定の隔壁間に形成する方法としては、スクリーン印刷版を用いてパターン印刷するスクリーン印刷法、吐出ノズルの先端から蛍光体ペーストをパターン吐出するディスペンサー法、また、有機バインダーとして、前述の感光性を有する有機成分を用いることにより、感光性蛍光体ペーストを作製して、感光性ペースト法により各色蛍光体層を所定の場所に形成することができる。
【0062】
蛍光体層を形成した該基板を必要に応じて、400〜550℃で焼成する事により、本発明のプラズマディスプレイパネル用基板を作製することができる。
【0063】
該プラズマディスプレイパネル用基板を背面板として用いて、前面板と封着後、前背面の基板間隔に形成された空間に、ヘリウム、ネオン、キセノンなどから構成される放電ガスを封入後、駆動回路を装着してプラズマディスプレイを作製できる。前面板は、基板上に所定のパターンで透明電極、バス電極、誘電体、保護膜(MgO)を形成した基板であり、背面基板上に形成されたRGB各色蛍光体層に一致する部分にカラーフィルター層を形成しても良い。また、コントラストを向上するために、ブラックストライプを形成しても良い。
【0064】
また、前記基板を構成するガラスの組成が、前記回収ガラス粉末の組成と略同一であることが好ましい。同じ熱特性を有するため、熱処理条件の適正化を行いやすく、さらに基板を構成するガラスの端材やディスプレイ基板用ガラス回収品から回収して作製したガラス粉末であれば、原料の端材などを入手しやすく、再利用方法として好ましい。
【0065】
なお、以上の説明ではディスプレイの隔壁形成に用いるガラスペーストについて説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、誘電体層や電極などを形成するために用いることもできる。
【0066】
電極の形成に用いる場合は、前記ガラス粉末とともに導電性粉末を混合したペーストを製造する。導電性粉末としては導電性を有するものであればどのようなものであってもよいが、導電性を有する金属または金属酸化物が好ましい。金属の例としては、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、錫(Sn)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)などの単体とその合金等を用いることができ、金属酸化物としては、酸化錫(SnO2)、酸化インジウム(In23)、ITO(Indium Tin Oxide)、酸化ルテニウム(RuO2)などを用いることができる。これらは単独で又は2種類以上の混合粉末として用いることができる。優れた導電性を得るためには銀、銅、アルミニウム等の金属粉末が好ましい。スクリーン印刷用ペーストよりも高精細のパターンに対応するために感光性ペーストとすることも好ましい。
【0067】
誘電体層の形成に用いる場合は、前記ガラス粉末とともに無機フィラー粉末を混合したペーストを製造することも好ましい。ペーストの流動性、焼結性、反射率、或いは熱膨張係数を調整する成分となる。無機フィラー粉末としては、例えばアルミナ、ジルコニア、ジルコン、チタニア、コージエライト、ムライト、シリカ、ウイレマイト、酸化錫、酸化亜鉛等を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。隔壁形成に用いる場合とは異なり、感光性ガラスペーストとする必要はなく、感光性を有さないバインダー樹脂のみを用いてスクリーン印刷用ペーストとしてもよい。また、誘電体層単独で焼成せず、隔壁パターンを感光性ガラスペーストを用いて設けた後一括で焼成する場合は、隔壁を現像する際に除去されないように、熱硬化性の有機バインダーを用いた誘電体層形成用ガラスペーストとしてガラス基板上に塗布して熱硬化させた後に隔壁形成用の感光性ガラスペーストを塗布、露光、現像することも好ましい。
【実施例】
【0068】
次に本発明について実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)バインダー樹脂(スチレン/アクリル酸共重合体、重量組成比30/60、重量平均分子量34,000、酸価105):10重量部、モノマー(プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート):5重量部、光重合開始剤(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1):3重量部、重合禁止剤(p−メトキシフェノール):0.1重量部、有機染料(スダンIV):0.04重量部、分散剤(ポリエーテル・エステル型アニオン系界面活性剤 楠本化成(株)製、“ディスパロン”7004):0.5重量部、有機溶剤1(γ−ブチロラクトン 沸点200〜208℃):25重量部、有機溶剤2(3−メトキシ−3−メチルー1−ブタノール 沸点174℃):5重量部を50℃で60分間加熱撹拌して溶解し、有機成分溶液(屈折率1.55(g線))を作製した。これにチキソトロピー付与剤としてペースト状の脂肪酸アマイド(ポリ・N−ビニルアセトアミド20重量%のベンジルアルコール溶液)10重量部を加え、プラネタリーミキサーで15分間撹拌後、低軟化点ガラス粉末(酸化ホウ素、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化リチウム、酸化マグネシウムが主成分のガラスを粉砕した平均粒子径3μmの粉末。ガラス転移点490℃、軟化点530℃、熱膨張係数75×10−7−1、屈折率1.58(g線)):36重量部、回収ガラス粉末:9重量部を加え、30分間撹拌して予備混練物とした。これを3本ロールミルで本混練することによりガラスペーストとした。
【0069】
前記回収ガラス粉末は、ガラス基板の端材を粉砕、分級することで作製した(平均粒子径3μm)。ガラス原料の調合や1200〜1300℃の高い温度で溶融する必要が無く、エネルギー消費を少なく作製することができた。前記ガラス基板の組成(質量%)は、SiO:55、Al:7、MgO:2、CaO:2、SrO:9、BaO:9、NaO:4、KO:7、ZrO:5、ガラス転移点627℃、屈伏点706℃、熱膨張係数86×10−7−1、屈折率1.58(g線))。
【0070】
得られたガラスペーストの粘度をB型粘度計(ブルックフィールド製 DV−II)で測定したところ、ずり速度1.2(s−1)における粘度が30(Pa・s 25℃)、ずり速度12(s−1)における粘度が10(Pa・s 25℃)であり、チキソトロピー指数は3だった。
【0071】
次にスリットコーターを用いて前記ガラス基板上にウエット厚み300μmで塗布した後に、クリーンオーブンで100℃90分間乾燥させた。乾燥膜のエッジ部形状を表面粗さ計(サーフコム1500A 東京精密製)を用いて測定したところ、幅0.5mm、高さ2μmであり良好だった。
【0072】
次にマスク露光を行った。ピッチ220μm、線幅35μmのストライプ状のクロムマスクを使用した。露光は、20mW/cmの出力の超高圧水銀ランプで300mJ/cmで行った。その後、2−アミノエタノール0.2%水溶液(35℃)でシャワー現像を行った。この基板を590℃で焼成し、頂部幅40μm、底部幅60μm、高さ120μmの略台形状の隔壁が形成されたプラズマディスプレイ用基板を作製した。
(比較例1)実施例1の回収ガラス粉末を除き、低軟化点ガラス粉末:45重量部とした他は実施例1と同様に実施した。この基板を590℃で焼成したところ、略台形状とならずに上部が丸く高さ90μmまで下がった断面形状となり、隔壁としては使用できないものだった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ基板用ガラスを製造する際もしくはディスプレイ部材を製造する際に生じる端材またはディスプレイ基板用ガラス回収品を粉砕して回収ガラス粉末とし、該回収ガラス粉末と他のガラス粉末および有機成分を混合することを特徴とするディスプレイ部材用ガラスペーストの製造方法。
【請求項2】
前記他のガラス粉末が、軟化温度が470〜620℃の範囲内である低軟化点ガラス粉末である請求項1記載のディスプレイ部材用ガラスペーストの製造方法。
【請求項3】
前記回収ガラス粉末の組成が、質量百分率で、SiO 50〜75%、Al 1〜15%、MgO 0〜15%、CaO 0〜15%、SrO 0.5〜15%、BaO 0.5〜15%、ZrO 0〜10%、NaO 2〜10%、KO 2〜15%の範囲内である請求項1または2に記載のディスプレイ部材用ガラスペーストの製造方法。
【請求項4】
前記有機成分が感光性有機成分を含む請求項1〜3のいずれかに記載のディスプレイ部材用ガラスペーストの製造方法。
【請求項5】
前記回収ガラス粉末の屈折率Nと前記有機成分の屈折率Nが次式を満たす請求項4に記載のディスプレイ部材用ガラスペーストの製造方法。
−0.05<N−N<0.05
【請求項6】
請求項1〜5記載のディスプレイ部材用ガラスペーストの製造方法により得られたディスプレイ部材用ガラスペーストを基板上に塗布し、焼成して隔壁を形成することを特徴とするプラズマディスプレイ用基板の製造方法。
【請求項7】
前記基板を構成するガラスの組成が、前記回収ガラス粉末の組成と略同一である請求項6記載のプラズマディスプレイ用基板の製造方法。

【公開番号】特開2011−256089(P2011−256089A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133591(P2010−133591)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】