説明

ディップはんだ付用フラックス

【課題】濡れ性に優れ、かつはんだボールの発生を抑制し得る、ディップはんだ付用の新規なフラックスを提供すること。
【解決手段】芳香族アルコール(A)にα,β不飽和カルボン酸変性ロジン(B)を溶解させてなるディップはんだ付け用フラックス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディップはんだ付の際に使用するフラックスに関する。
【背景技術】
【0002】
ディップはんだ付とは、プリント配線基板に接合する端子部品のはんだ付部位(電極)をはんだ浴に浸して行うはんだ付をいい(JIS Z 3001参照)、はんだ付部位には予めフラックス組成物が塗布される。
【0003】
フラックスには、前記はんだ付部位の表面酸化皮膜を除去し、溶融はんだとの濡れ性を確保するとともに、はんだ付後に微細なはんだボールができるだけ発生させないことが求められる。はんだボールが付着した端子部品をプリント配線板に接続すると、配線間の短絡等の問題が生じるためである。それゆえ、はんだボールが多数付着した端子部品はブラッシングや洗浄等に付さなければならず、生産性の低下やコスト高を招く。
【0004】
濡れ性に優れたフラックスとしては、例えば、ロジン系ベース樹脂と疎水化シリカゲル微粉末をイソプロピルアルコールに溶解させたものが知られているが(特許文献1を参照)、はんだボールが多数発生する傾向にある。
【0005】
一方、はんだボールの問題は、ディップはんだ付のプロセス面より解消する方法が検討されており、例えば端子部品のはんだ付部位にフラックスを塗布した後、水洗し、更にアルコールに浸漬してからはんだ付する方法が知られている(特許文献2を参照)。しかし、工程が煩雑であるため生産性の低下を免れ得ず、また塗布したフラックスがアルコールによって希釈されるため濡れ性も低下する等の問題もあることから、はんだボールの課題はフラックスの組成面から解決するのが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−337685号公報
【特許文献2】特開2002−86292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、濡れ性に優れ、はんだボールの発生を抑制し得るディップはんだ付用のフラックスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、所定の溶剤とロジン系ベース樹脂を組み合わせることにより前記課題を解決できるフラックスが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、芳香族アルコール(A)にα,β不飽和カルボン酸変性ロジン(B)を溶解させてなるディップはんだ付け用フラックス、に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のディップはんだ付け用フラックス(以下、単にフラックスという。)は濡れ性に優れるため、これを塗布した端子部品をディップはんだ付した際、はんだ付部位にはんだボールが発生し難くなる(以下、このことを耐はんだボール性という。)。また、はんだ付後に着色のある残渣が発生し難いため、検品作業が容易となったり、後の洗浄工程を割愛できたりする利点もある。また、フラックスを塗布した後直ちにディップはんだ付を行えるため、生産性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のフラックスは、芳香族アルコール(A)(以下、(A)成分という。)にα,β不飽和カルボン酸変性ロジン(B)(以下、(B)成分という。)を溶解させてなるディップはんだ付け用フラックスを溶解させてなるものである。
【0012】
(A)成分としては、各種公知の芳香族アルコールであれば特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、ベンジルアルコール、α−メチルベンジルアルコール、β−フェニルエチルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、ベンジルグリコール、ベンジルジグリコール、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、フェニルプロピレングリコール、フェニルプロピレンジグリコール等の分子内に芳香環と水酸基を一つずつ有する芳香族モノアルコールが挙げられ、これらは1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも(B)成分の溶解力に優れ、特に耐はんだボール性が良好になることから、沸点200〜400℃程度、好ましくは250〜400℃の芳香族モノアルコールが、特にベンジルアルコール、ベンジルグリコール及びベンジルジグリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0013】
なお、本発明では必要に応じて(A)成分以外の溶剤を併用できる。具体的には、例えば、メチルグリコール、メチルジグリコール、イソプロピルグリコール、イソプロピルジグリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、イソブチルグリコール、イソブチルジグリコール、ヘキシルグリコール、ヘキシルジグリコール、2エチルヘキシルグリコール、2エチルヘキシルジグリコール等の脂肪族グリコールエーテル類や、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール等の非エーテル系低分子アルコール類、酢酸イソプロピル、プロピオン酸エチル、安息香酸ブチル、アジピン酸ジエチル等のエステル類等が挙げられ、これらは1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用できる。当該溶剤の併用量は、(A)成分に対して通常25重量%未満、好ましくは10重量%未満であり、0重量%であってもよい。
【0014】
フラックス中の(A)成分の含有量は特に限定されないが、特に耐はんだボール性の観点より、通常90〜30重量%程度、好ましくは79.5〜40重量%程度、いっそう好ましくは71〜45重量%である。
【0015】
(B)成分としては、ロジン類にα,β不飽和カルボン酸をディールス・アルダー反応させたものを使用する。ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等が挙げられ、減圧蒸留法、水蒸気蒸留法、抽出法、再結晶法等の各種公知の手段で精製してもよい。また、α,β不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸等のα,β不飽和モノカルボン酸や、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸等のα,β不飽和ジカルボン酸が挙げられる。
【0016】
ディールス・アルダー反応の条件は特に限定されないが、通常、反応温度が180〜240℃程度、反応時間が通常1〜9時間程度であり、密閉構造のなか、窒素等の不活性ガス気流下で実施するのが好ましい。また、α,β不飽和カルボン酸の使用量も特に限定されないが、ロジン類に対して通常10〜80モル%程度、好ましくは30〜70モル%程度、さらに好ましくは50〜70モル%である。また、反応の際には、塩化亜鉛、塩化鉄、塩化錫等のルイス酸やパラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等のブレンステッド酸といった各種公知の触媒を使用できる。
【0017】
こうして得られたディールス・アルダー反応物は、そのまま(B)成分として使用できるが、フラックス残渣が生じた場合の着色(見た目)を考慮すると、水素化物として使用するのが好ましい。水素化反応の条件は特に限定されないが、通常、前記ディールス・アルダー反応物を各種公知の水素化触媒の存在下、通常100〜300℃程度の温度、1〜25MPa程度の水素圧下において、1〜10時間程度反応させることにより得られる。水素化触媒としては、例えばパラジウムカーボン、ロジウムカーボン、ルテニウムカーボン、白金カーボンなどの担持触媒や、ニッケル、白金等の金属粉末、ヨウ素、ヨウ素化鉄等のヨウ素化物等が挙げられ、その使用量は、前記ディールス・アルダー反応物に対して通常0.01〜10重量%程度である。また、得られた水素化物は必要に応じ、前記した手段により精製してもよい。
【0018】
こうして得られる(B)成分は、原料の入手が容易であり、また耐はんだボール性に優れることから、(メタ)アクリル酸変性ロジン水素化物および/または(無水)マレイン酸変性ロジン水素化物であるが好ましい。
【0019】
(B)成分の物性は特に限定されないが、特に耐はんだボール性の観点より、通常、酸価(JIS K 0070)が通常200mgKOH/g以上、好ましくは210〜400mgKOH/g程度である。また、軟化点(JIS K 59202)は通常100〜150℃程度、好ましくは110〜130℃である。また、色調は通常ガードナー2以下、好ましくはガードナー1以下〜ハーゼン50程度である。
【0020】
フラックス中の(B)成分の含有量は特に限定されないが、特に耐はんだボール性の観点より、通常5〜70重量%程度、好ましくは20〜65重量%程度、いっそう好ましくは28〜55重量%である。
【0021】
本発明のフラックスには、必要に応じて、活性剤(C)(以下、(C)成分という。)、前記(B)成分以外のロジン系ベース樹脂(以下、(D)成分という。)、各種添加剤(以下、(E)成分という。)を含めることができる。
【0022】
(C)成分としては、具体的には、例えば、非ハロゲン系脂肪族カルボン酸(c1)(以下、(c1)成分という。)、臭素系脂肪族アルコール(c2)(以下、(c2)成分という。)、非ハロゲン系芳香族カルボン酸(c3)(以下、(c3)成分という。)、臭素系脂肪族カルボン酸(c4)(以下、(c4)成分という。)、その他の活性剤(以下、(c5)成分という。)が挙げられ、これらの中でも、特に耐はんだボール性の観点より(c1)成分および/または(c2)成分が好ましい。
【0023】
(c1)成分としては、分子内にハロゲン原子を有さない脂肪族タイプのカルボン酸であれば各種公知のものを特に限定なく使用できる。具体的には、一般式(1):HOOC−R−COOH(式(1)中、Rは炭素数2〜8程度、好ましくは3〜4のアルキレン基又はアルケニレン基を示す。)で表わされるジカルボン酸が好ましい。また、該アルキレン基及びアルケニレン基は分岐していてもよい。一般式(1)で表わされるジカルボン酸としてはコハク酸、グルタル酸、2−メチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が、一般式(1)以外のものとしてはステアリン酸、パルミチン酸等が挙げられる。
【0024】
(c2)成分としては、分子内に臭素原子を有する脂肪族タイプのアルコールであれば各種公知のものを特に限定なく使用できる。具体的には、例えば1−ブロモ−2−ブタノール、1−ブロモ−2−プロパノール、3−ブロモ−1−プロパノール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール等のブロモモノオール類や、1,4−ジブロモ−2,3−ブタンジオール、2,3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、3−ジブロモ−1,4−ブテンジオール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール等のブロモジオール類が挙げられる。
【0025】
(c3)成分としては安息香酸、ピコリン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が、(c4)成分としては3−ブロモプロピオン酸、2−ブロモ吉草酸、5−ブロモ−n−吉草酸、2−ブロモイソ吉草酸、2,3−ジブロモコハク酸、2−ブロモコハク酸、2,2−ジブロモアジピン酸等が、(c5)成分としてはジエチルアミン塩酸塩等が挙げられる。
【0026】
フラックス中の(C)成分の含有量は特に限定されず、通常0〜10重量%程度であるが、特に耐はんだボール性の観点より、好ましくは0.5〜7重量%程度、いっそう好ましくは1〜5重量%である。
【0027】
(D)成分としては、具体的には、例えば、前記ロジン類、その精製物(精製ロジン)、水添ロジン、不均化ロジン、および重合ロジン、ならびにこれらのうち少なくとも1種と多価アルコール(グリセリン、ペンタエリスリトール等)とのエステル化物等が挙げられ、これらは1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用できる。(D)成分の物性は特に制限されないが、酸価(JIS K 0070)が通常200mgKOH/g未満、具体的には5〜200mgKOH/g程度である。
【0028】
フラックス中の(D)成分の含有量は特に限定されないが、通常0〜20重量%程度、好ましくは0〜15重量%程度、いっそう好ましくは0〜10重量%程度である。
【0029】
(E)成分としては、酸化防止剤、防黴剤、艶消し剤、粘度調整剤等が挙げられる。粘度調製剤としては、例えば、分子内に一般式:−[−(OR)−]−(式中、Rはエチレン基、プロピレン基、およびイソプロピレン基から選ばれる1種を示す)で表わされる繰り返し単位構造を有するポリアルキレングリコールを例示できる。なお、本発明のフラックスには、ソルダペースト用フラックスにおいて利用される硬化ひまし油やステアリン酸アミド等の所謂チキソトロピック剤を含めなくてもよい。
【0030】
フラックス中の(E)成分の含有量は特に限定されないが、通常5重量%未満、好ましくは3重量%未満、いっそう好ましくは0.1〜2重量%程度である。
【0031】
本発明のフラックスは、(A)成分に、前記(B)成分及び必要に応じて(C)成分〜(E)成分を溶解させることにより得られる。また、フラックスの物性は特に限定されないが、特に耐はんだボール性の観点より、B型粘度計で測定した粘度が8mPa・s以上、具体的には8〜400mPa・s、好ましくは20〜350mPa・sであるのがよい。なお、当該粘度はローターNo.19を使用し、25℃、回転数10ppmで測定した値である。
【0032】
本発明のフラックスを端子部品のはんだ付部位に塗布する方法は特に制限されず、例えば端子部品をそのまま浸漬する方法や、はんだ付け部位に各種フラクサー(スプレー等)によって塗工する方法が挙げられる。当該フラックスはディップはんだ付だけでなく、その一種であるウェーブはんだ付やドラッグはんだ付等においても好適に作用する。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例および比較例をあげて詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらによって何ら限定されない。また、各例中、部および%はいずれも重量基準である。
【0034】
実施例1
市販のアクリル酸変性ロジン水素化物(商品名「KE−604」、荒川化学工業(株)製;酸価約238mgKOH/g、軟化点129℃、ハーゼンカラー90)を13.0部、グルタル酸(東京化成工業(株)製)を1.5部、トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール(ワイケム製。以下、TDBDと略す。)を0.1部、ベンジルアルコール85.4部に溶解させることによってフラックスを調製した。なお、フラックス中に不溶物は認められなかった(表1では無しとした。以下、同様)。
【0035】
実施例2〜5
実施例1において、用いる原料の部数を表1で示すように変更した他は同様にしてフラックスを調製した。
【0036】
実施例6
実施例4においてアジピン酸を1.5部に変更した他は同様にして、フラックスを調製した。
【0037】
実施例7
KE−604を26.0部、グルタル酸を1.5部、TDBDを0.1部、ベンジルグリコール72.4部に溶解させることによってフラックスを調製した。
【0038】
実施例8、9
実施例7において、用いる原料の部数を表1で示すように変更した他は同様にしてフラックスを調製した。
【0039】
実施例10
KE−604を26.0部、グルタル酸を1.5部、TDBDを0.1部、ベンジルジグリコール72.4部に溶解させることによってフラックスを調製した。
【0040】
実施例11、12
実施例10において、用いる原料の部数を表1で示すように変更した他は同様にしてフラックスを調製した。
【0041】
製造例1
<無水マレイン酸変性ロジン水素化物の製造>
未精製のガムロジン(酸価171、軟化点74℃、ガードナー6、中国産)を減圧蒸留容器に仕込み、窒素シール下に0.4kPaの減圧下で蒸留し、精製ロジンを得た。
次いで、得られた精製ロジンの700gと、無水マレイン酸154gとを別の減圧蒸留容器に仕込み、窒素気流下に撹拌しながら220℃で4時間反応させた後、4kPaの減圧下に未反応物を除去することによってロジン誘導体を得た。
次いで、当該ロジン誘導体500gと5%パラジウムカーボン(含水率50%)6.0gを1リットル回転式オートクレーブに仕込み、系内の酸素を除去した後、水素にて10MPaに加圧し、220℃まで昇温し、同温度で3時間水素化反応させることにより、ロジン誘導体水素化物を得た。
次いで、当該ロジン誘導体水素化物400gとキシレン200gを反応容器に仕込み、加熱下に溶解させた後、キシレン150gを留去した。次いでシクロヘキサン150gを仕込み、室温まで冷却し、結晶の収量が約40gに達したところで上澄み液を別の反応容器に移し、さらに室温で再結晶させた。その後、さらに上澄み液を除去し、シクロヘキサン20gで洗浄した後、このシクロヘキサンを留去することによって、酸価が約330mgKOH/g、軟化点が約120℃、ハーゼンカラーが150の無水マレイン酸変性ロジン水素化物を得た。
【0042】
実施例13
製造例1で得た無水マレイン酸変性ロジン水素化物30.0部、グルタル酸1.5部、およびTDBD0.1部をベンジルアルコール68.4部に溶解させることによって、フラックスを調製した。
【0043】
実施例14
実施例13において、無水マレイン酸変性ロジン水素化物を40.0部、ベンジルアルコール58.4部に変更した他は同様にして、フラックスを調製した。
【0044】
実施例15
実施例13において、無水マレイン酸変性ロジン水素化物を50.0部、ベンジルアルコール48.4部に変更した他は同様にして、フラックスを調製した。
【0045】
実施例16
実施例13において、市販マレイン酸変性ロジン(商品名「マルキード No.33」、荒川化学工業(株)製;非水素化物、酸価約300mgKOH/g、軟化点140℃、ガードナーカラー11)を50.0部、ベンジルアルコールを48.4部に変更した他は同様にして、フラックスを調製した。
【0046】
比較例1
グルタル酸1.5部、およびTDBD0.1部をベンジルアルコール98.4部に溶解させることによって、ロジン系ベース樹脂を含有しないフラックスを調製した。
【0047】
比較例2
市販精製ロジン(商品名「白菊ロジン」、酸価約168mgKOH/g、軟化点81℃、荒川化学工業(株)製)を13.0部、グルタル酸を1.5部、トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオールを0.1部、ベンジルアルコール85.4部に溶解させることによって、フラックスを調製した。
【0048】
比較例3
白菊ロジンを26.0部、グルタル酸を1.5部、TDBDを0.1部、ベンジルアルコール72.4部に溶解させようとしたが、不溶物が認められたため(表1中、有と示す。以下、同様。)、得られたフラックスについては粘度測定をせず、また耐はんだボール性・残渣性の評価にも供しなかった。
【0049】
比較例4
市販水添ロジン(商品名「CRW−300」、酸価約176mgKOH/g、軟化点85℃、荒川化学工業(株)製、ガードナー3)を13.0部、グルタル酸を1.5部、TDBDを0.1部、ベンジルアルコール85.4部に溶解させようとしたが、不溶物が認められたため、得られたフラックスについては粘度測定をせず、また耐はんだボール性・残渣性の評価にも供しなかった。
【0050】
比較例5
市販のSiO微粒子(商品名「MIBK−ST」、日産化学工業(株)製)を22.0部、CRW−300を4.0部、グルタル酸を1.5部、TDBDを0.1部、ベンジルアルコール72.4部に溶解させた後、MIBK−STに由来するメチルイソブチルケトンを減圧蒸留器により系外に留去することによってフラックスを調製した。
【0051】
<耐はんだボール性、残渣の評価>
実施例1に係るフラックスをフラスコに入れ、円筒状の端子部品(直径4.5mm、長さ1.5cm)の両端にある電極(直径0.7mm、長さ1mm)を浸漬した後引き上げ、当該電極を380℃のはんだ浴(金属種:97Sn/3Cu)に浸し、引き上げて室温まで冷却させた。その後、電極やその周辺に発生したはんだボール(直径0.01mm程度)の数を顕微鏡で計数し、30以上の場合には不良と認定した。また、電極を目視観察し、フラックス残渣がないもの、あるいはフラックス残渣に着色が認めらないものを残渣性良好と、フラックス残渣に着色(茶色、白色)が認められるものを不良と認定した。他の実施例および比較例についても同様に評価した。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族アルコール(A)にα,β不飽和カルボン酸変性ロジン(B)を溶解させてなるディップはんだ付け用フラックス。
【請求項2】
(A)成分の含有量が90〜30重量%である、請求項1のディップはんだ付け用フラックス。
【請求項3】
(B)成分が水素化物である、請求項1または2のディップはんだ付け用フラックス。
【請求項4】
(B)成分の含有量が5〜70重量%である、請求項1〜3のいずれかのディップはんだ付け用フラックス。
【請求項5】
更に活性剤(C)を含有する請求項1〜4のいずれかのディップはんだ付用フラックス。
【請求項6】
(C)成分が非ハロゲン系脂肪族カルボン酸(c1)および/または臭素系脂肪族アルコール(c2)である、請求項5のディップはんだ付用フラックス。
【請求項7】
(C)成分の含有量が0.5〜7重量%である、請求項1〜6のいずれかのディップはんだ付用フラックス。
【請求項8】
B型粘度計で測定した粘度が8mPa・s以上である、請求項1〜7のいずれかのディップはんだ付用フラックス。

【公開番号】特開2013−49088(P2013−49088A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−129618(P2012−129618)
【出願日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】