説明

ディーゼルエンジンの電子ガバナ

【課題】燃料調量ラックの新たな寸法管理が不要となるディーゼルエンジンの電子ガバナを提供する。
【解決手段】目標回転数設定手段1と実回転数検出手段2とラック位置検出手段3とを制御手段4を介して電動アクチュエータ5に連係させ、ラック位置検出手段3の検出ロッド3aを付勢スプリング3bで先端方向に付勢し、この検出ロッド3aの先端部3cを燃料噴射ポンプ6の燃料調量ラック6aに接当させ、付勢スプリング3bの付勢力3dで燃料調量ラック6aを燃料電動アクチュエータ5の出力部5aに圧接させた、ディーゼルエンジンの電子ガバナにおいて、ラック位置検出手段3の検出ロッド3aの先端面3eを燃料調量ラック6aのラックピン6cの周面6dに接当させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの電子ガバナに関し、詳しくは、燃料調量ラックの新たな寸法管理が不要となるディーゼルエンジンの電子ガバナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子ガバナとして、目標回転数設定手段と実回転数検出手段とラック位置検出手段とを制御手段を介して電動アクチュエータに連係させ、ラック位置検出手段の検出ロッドを付勢スプリングで先端方向に付勢し、この検出ロッドの先端部を燃料噴射ポンプの燃料調量ラックに接当させ、付勢スプリングの付勢力で燃料調量ラックを電動アクチュエータの出力部に圧接させたものがある。
この種の電子ガバナによれば、燃料調量ラックの位置検出により、迅速に実回転数を目標回転数に整定できる利点がある。
しかし、この従来技術では、ラック位置検出手段の検出ロッドの先端面を燃料調量ラックの端面に接当させているため、問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−73805号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題》 検出ロッドが接当する燃料調量ラックの端面の寸法管理が新たに必要となる。
ラック位置検出センサの検出ロッドの先端面を燃料調量ラックの端面に接当させているため、燃料調量ラックの端面位置のばらつきを小さくする必要があり、検出ロッドが接当する燃料調量ラックの端面の寸法管理が新たに必要となる。
【0005】
本発明の課題は、上記問題を解決することができるディーゼルエンジンの電子ガバナ、すなわち、燃料調量ラックの新たな寸法管理が不要となるディーゼルエンジンの電子ガバナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1(A)に例示するように、目標回転数設定手段(1)と実回転数検出手段(2)とラック位置検出手段(3)とを制御手段(4)を介して電動アクチュエータ(5)に連係させ、ラック位置検出手段(3)の検出ロッド(3a)を付勢スプリング(3b)で先端方向に付勢し、この検出ロッド(3a)の先端部(3c)を燃料噴射ポンプ(6)の燃料調量ラック(6a)に接当させ、付勢スプリング(3b)の付勢力(3d)で燃料調量ラック(6a)を電動アクチュエータ(5)の出力部(5a)に圧接させた、ディーゼルエンジンの電子ガバナにおいて、
図1、2、4、5に例示するように、ラック位置検出手段(3)の検出ロッド(3a)の先端面(3e)を燃料調量ラック(6a)のラックピン(6c)の周面(6d)に接当させた、ことを特徴とするディーゼルエンジンの電子ガバナ。
【発明の効果】
【0007】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 燃料調量ラックの新たな寸法管理を必要としない。
図1、2、4、5に例示するように、ラック位置検出手段(3)の検出ロッド(3a)の先端面(3e)を燃料調量ラック(6a)のラックピン(6c)の周面(6d)に接当させたので、燃料調量ラック(6a)の新たな寸法管理を必要としない。燃料調量ラック(6a)のラックピン(6c)は、メカニカルガバナのガバナレバーからの入力部として既に寸法管理がなされているからである。
【0008】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 ラック位置検出センサの検出精度を高く維持することができる。
図1、2に例示するように、ラック位置検出手段(3)の検出ロッド(3a)の先端面(3e)を平坦面(3f)とし、この平坦面(3f)を円柱形のラックピン(6c)の周面(6d)に接当させたので、ラックピン(6c)の高さが変わった場合でも、検出ロッド(3a)の先端部(3c)が持ち上げられたり、押し下げられたりすることがなく、検出ロッド(3a)が傾くことによるラック位置検出手段(3)の摺動抵抗の増大を防止し、ラック位置検出手段(3)の検出精度を高く維持することができる。
ラックピン(6c)の高さが変わる場合としては、燃料噴射ポンプ(6)のプランジャのプレストロークを調節するために、シム(6e)の厚さを調節し、燃料噴射ポンプ(6)の高さを変更する場合等がある。
【0009】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 ラック位置検出センサの検出精度を高く維持することができる。
図4に例示するように、ラック位置検出手段(3)の検出ロッド(3a)の先端面(3e)をV形面(3g)とし、このV形面(3g)を円柱形のラックピン(6c)の周面(6d)に係合させたので、検出ロッド(3a)の先端部(3c)はラックピン(6c)で支えられ、自重で下がることがなく、検出ロッド(3a)が傾くことによるラック位置検出手段(3)の摺動抵抗の増大を防止し、ラック位置検出手段(3)の検出精度を高く維持することができる。
【0010】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 ラック位置検出センサの検出精度を高く維持することができる。
図5に例示するように、ラック位置検出手段(3)の検出ロッド(3a)の先端面(3e)を円弧面(3h)とし、この円弧面(3h)を円柱形のラックピン(6c)の周面(6d)に沿って係合させたので、検出ロッド(3a)の先端部(3c)はラックピン(6c)で支えられ、自重で下がることがなく、検出ロッド(3a)が傾くことによるラック位置検出手段(3)の摺動抵抗の増大を防止し、ラック位置検出手段(3)の検出精度を高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係るディーゼルエンジンの電子ガバナを説明する図で、図1(A)は要部の一部切欠縦断側面図、図1(B)は図1(A)における検出ロッドの先端部とラックピンとの接当状態を説明する拡大図である。
【図2】図1の電子ガバナを説明する図で、図2(A)は要部の横断底面図、図2(B)は図2(A)における検出ロッドの先端部とラックピンとの接当状態を説明する拡大図である。
【図3】図1の電子ガバナを説明する図で、図3(A)はギヤケース側から見た要部の正面図、図3(B)は図3(A)における検出ロッドの先端部とラックピンとの接当状態を説明する拡大図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るディーゼルエンジンの電子ガバナにおける検出ロッドの先端部とラックピンとの接当状態を説明する拡大図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るディーゼルエンジンの電子ガバナにおける検出ロッドの先端部とラックピンとの接当状態を説明する拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜図3は本発明の第1実施形態に係るディーゼルエンジンの電子ガバナを説明する図、図4、5はそれぞれ本発明の第2、第3実施形態に係るディーゼルエンジンの電子ガバナを説明する図である。
【0013】
第1実施形態の概要は、次の通りである。
図1(A)に示すように、シリンダブロック(図外)の横側にポンプ収容ケース(7)を設け、このポンプ収容ケース(7)に上側から燃料噴射ポンプ(6)を差し込んで、その下半部を収容している。燃料噴射ポンプ(6)の高さはシム(6e)の厚さ調節によって調する。ポンプ収容ケース(7)には燃料噴射カム軸(8)を架設し、この燃料噴射カム軸(8)の燃料噴射カム(8a)に燃料噴射ポンプ(6)のタペット(6f)を載せている。ポンプ収容ケース(7)の前側にはギヤケース(9)を取り付けている。ギヤケース(9)には燃料噴射カムギヤ(9a)を含むタイミングギヤトレイン(9b)を収容している。燃料噴射ポンプ(6)には燃料調量ラック(6a)を前後摺動自在に取り付けている。燃料調量ラック(6a)にはラックピン(6c)を取り付けている。ギヤケース(9)の前壁にはラック位置検出手段(3)を取り付け、ポンプ収容ケース(7)の後壁には電動アクチュエータ(5)を取り付けている。
【0014】
電子ガバナの構成は、次の通りである。
図1(A)に示すように、目標回転数設定手段(1)と実回転数検出手段(2)とラック位置検出手段(3)とを制御手段(4)を介して電動アクチュエータ(5)に連係させ、ラック位置検出手段(3)の検出ロッド(3a)を付勢スプリング(3b)で先端方向に付勢し、この検出ロッド(3a)の先端部(3c)を燃料噴射ポンプ(6)の燃料調量ラック(6a)に接当させ、付勢スプリング(3b)の付勢力(3d)で燃料調量ラック(6a)を電動アクチュエータ(5)の出力部(5a)に圧接させている。
【0015】
目標回転数設定手段(1)は、調速レバーの設定位置を電圧に変換するポテンショメータである。実回転数検出手段(2)は、クランク軸(10)の回転数を検出する回転数センサである。ラック位置検出手段(3)は、燃料調量ラック(6a)の前後摺動に追従して前後摺動する検出ロッド(3a)の摺動位置を検出することにより、燃料調量ラック(6a)の摺動位置を検出するものである。検出ロッド(3a)の摺動位置の検出には、差動トランスを用いている。制御手段(4)はマイクロコンピュータである。電動アクチュエータ(5)は、リニアソレノイドである。付勢スプリング(3b)は、押しバネで、ラック位置検出手段(3)の内部に収容している。電動アクチュエータ(5)の出力部(5a)は出力ロッドである。電動アクチュエータ(5)の出力部(5a)には、燃料調量ラック(6a)の燃料増量側端部(6b)を圧接している。
【0016】
図1、2に示すように、ラック位置検出手段(3)の検出ロッド(3a)の先端面(3e)を燃料調量ラック(6a)のラックピン(6c)の周面(6d)に接当させている。この第1実施形態では、ラック位置検出手段(3)の検出ロッド(3a)の先端面(3e)を平坦面(3f)とし、この平坦面(3f)を円柱形のラックピン(6c)の周面(6d)に接当させている。
【0017】
図4、5に示す第2実施形態と第3実施形態とは、次の点が第1実施形態と異なる。
図4に示す第2実施形態では、ラック位置検出手段(3)の検出ロッド(3a)の先端面(3e)をV形面(3g)とし、このV形面(3g)を円柱形のラックピン(6c)の周面(6d)に係合させている。
図5に示す第3実施形態では、ラック位置検出手段(3)の検出ロッド(3a)の先端面(3e)を円弧面(3h)とし、この円弧面(3h)を円柱形のラックピン(6c)の周面(6d)に沿って係合させている。
第2実施形態と第3実施形態の他の点は、第1実施形態と同じであり、図4、5中、第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付しておく。
【符号の説明】
【0018】
(1) 目標回転数設定手段
(2) 実回転数検出手段
(3) ラック位置検出手段
(3a) 検出ロッド
(3b) 付勢スプリング
(3c) 先端部
(3d) 付勢力
(3e) 先端面
(3f) 平坦面
(3g) V形面
(3h) 円弧面
(4) 制御手段
(5) 電動アクチュエータ
(5a) 出力部
(6) 燃料噴射ポンプ
(6a) 燃料調量ラック
(6c) ラックピン
(6d) 周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標回転数設定手段(1)と実回転数検出手段(2)とラック位置検出手段(3)とを制御手段(4)を介して電動アクチュエータ(5)に連係させ、ラック位置検出手段(3)の検出ロッド(3a)を付勢スプリング(3b)で先端方向に付勢し、この検出ロッド(3a)の先端部(3c)を燃料噴射ポンプ(6)の燃料調量ラック(6a)に接当させ、付勢スプリング(3b)の付勢力(3d)で燃料調量ラック(6a)を電動アクチュエータ(5)の出力部(5a)に圧接させた、ディーゼルエンジンの電子ガバナにおいて、
ラック位置検出手段(3)の検出ロッド(3a)の先端面(3e)を燃料調量ラック(6a)のラックピン(6c)の周面(6d)に接当させた、ことを特徴とするディーゼルエンジンの電子ガバナ。
【請求項2】
請求項1に記載したディーゼルエンジンの電子ガバナにおいて、
ラック位置検出手段(3)の検出ロッド(3a)の先端面(3e)を平坦面(3f)とし、この平坦面(3f)を円柱形のラックピン(6c)の周面(6d)に接当させた、ことを特徴とするディーゼルエンジンの電子ガバナ。
【請求項3】
請求項1に記載したディーゼルエンジンの電子ガバナにおいて、
ラック位置検出手段(3)の検出ロッド(3a)の先端面(3e)をV形面(3g)とし、このV形面(3g)を円柱形のラックピン(6c)の周面(6d)に係合させた、ことを特徴とするディーゼルエンジンの電子ガバナ。
【請求項4】
請求項1に記載したディーゼルエンジンの電子ガバナにおいて、
ラック位置検出手段(3)の検出ロッド(3a)の先端面(3e)を円弧面(3h)とし、この円弧面(3h)を円柱形のラックピン(6c)の周面(6d)に沿って係合させた、ことを特徴とするディーゼルエンジンの電子ガバナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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