説明

ディーゼルエンジン

【課題】エンジントルク特性の調節を簡単に行うことができるディーゼルエンジンを提供する。
【解決手段】エンジン負荷の増加によってエンジン回転数が所定の逆アングライヒ回転領域54まで低下すると、逆アングライヒスプリング力53aとガバナ力6aとの不釣合い力で、逆アングライヒレバー52を揺動させ、エンジン回転数が低下するにつれて燃料調量ラック8を燃料減量側に移動させるに当たり、逆アングライヒレバー52と他のガバナ構成レバー3にそれぞれスプリング係止部52a・3aを設け、各スプリング係止部52a・3aに引っ張りスプリング構造の逆アングライヒスプリング53の各端部を係止させ、吸気過給を行うに当たり、ブーストコンペンセータ16を設け、過給のブースト圧24とブーストスプリング44との不釣合い力でブーストレバー39を揺動させ、このブーストレバー39で燃料調量ラック8の燃料増量を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンに関し、詳しくは、エンジントルク特性の調節を簡単に行うことができるディーゼルエンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のディーゼルエンジンとして、本発明と同様、燃料噴射ポンプの燃料調量ラックをメカニカルガバナのガバナレバーに連動連結し、このガバナレバーをガバナスプリングを介して調速レバーに連動連結するとともに、ガバナ力発生手段に連携させ、ガバナスプリング力とガバナ力との不釣合い力でガバナレバーを揺動させ、このガバナレバーで燃料調量ラックの調量位置を制御するようにしたものがある。
【0003】
しかし、従来のディーゼルエンジンでは、ガバナレバーが逆アングライヒレバーを備え、この逆アングライヒレバーに燃料調量ラックを連動連結し、この逆アングライヒレバーを逆アングライヒスプリングで付勢し、エンジン負荷の増加によってエンジン回転数が所定の逆アングライヒ回転領域まで低下すると、逆アングライヒスプリング力とガバナ力との不釣合い力で、逆アングライヒレバーを揺動させ、エンジン回転数が低下するにつれて燃料調量ラックを燃料減量側に移動させるに当たり、ガバナレバーに逆アングライヒホルダを取り付け、この逆アングライヒホルダ内に圧縮スプリング構造の逆アングライヒスプリングを収容し、逆アングライヒホルダにスプリング受けを取り付け、このスプリング受けで逆アングライヒスプリングを受け止めているため、問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−276391号公報(図1〜図3参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、次の問題がある。
《問題》 エンジントルク特性の調節作業が煩雑である。
エンジントルク特性の調節をバネ定数や自由長の異なる逆アングライヒスプリングの交換によって行う場合、逆アングライヒホルダからスプリング受けを取り外し、逆アングライヒホルダから逆アングライヒスプリングを取り出し、逆アングライヒホルダに他の逆アングライヒスプリングを収容し、逆アングライヒホルダにスプリング受けを取り付ける作業を行う必要があり、エンジントルク特性の調節作業が繁雑である。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決することができるディーゼルエンジン、すなわち、エンジントルク特性の調節作業を簡単に行うことができるディーゼルエンジンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1に例示するように 燃料噴射ポンプ(7)の燃料調量ラック(8)をガバナレバー(2)に連動連結し、このガバナレバー(2)をガバナスプリング(9)を介して調速レバー(10)に連動連結するとともに、ガバナ力発生手段(6)に連携させ、ガバナスプリング力(9a)とガバナ力(6a)との不釣合い力でガバナレバー(2)を揺動させ、このガバナレバー(2)で燃料調量ラック(8)の調量位置を制御するようにした、ディーゼルエンジンにおいて、
ガバナレバー(2)が逆アングライヒレバー(52)を備え、この逆アングライヒレバー(52)に燃料調量ラック(8)を連動連結し、この逆アングライヒレバー(52)を逆アングライヒスプリング(53)で付勢し、
エンジン負荷の増加によってエンジン回転数が所定の逆アングライヒ回転領域(54)まで低下すると、逆アングライヒスプリング力(53a)とガバナ力(6a)との不釣合い力で、逆アングライヒレバー(52)を揺動させ、エンジン回転数が低下するにつれて燃料調量ラック(8)を燃料減量側に移動させるに当たり、
逆アングライヒレバー(52)と他のガバナ構成レバー(3)にそれぞれスプリング係止部(52a)(3a)を設け、各スプリング係止部(52a)(3a)に引っ張りスプリング構造の逆アングライヒスプリング(53)の各端部を係止させ、
吸気過給を行うに当たり、ブーストコンペンセータ(16)を設け、過給のブースト圧(24)とブーストスプリング(44)との不釣合い力でブーストレバー(39)を揺動させ、このブーストレバー(39)で燃料調量ラック(8)の燃料増量を制限するようにした、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【発明の効果】
【0008】
(請求項1に係る発明)
《効果》 エンジントルク特性の調節作業を簡単に行うことができる。
図1に例示するように、逆アングライヒレバー(52)と他のガバナ構成レバー(3)にそれぞれスプリング係止部(52a)(3a)を設け、各スプリング係止部(52a)(3a)に引っ張りスプリング構造の逆アングライヒスプリング(53)の各端部を係止させたので、エンジントルク特性の調節をバネ定数や自由長の異なる逆アングライヒスプリング(53)の交換によって行う場合、逆アングライヒスプリング(53)の各端部をスプリング係止部(52a)(3a)から取り外し、他の逆アングライヒスプリング(53)の各端部をスプリング係止部(52a)(3a)に係止させるだけでよく、最大トルク回転数(67)や最大トルク値等のエンジントルク特性の調節作業を簡単に行うことができる。
【0009】
《効果》 黒煙の発生を抑制することができる。
逆アングライヒスプリング(53)の交換によって逆アングライヒ回転領域(54)での燃料噴射特性を調節することができるとともに、ブーストコンペンセータ(16)のブーストレバー(39)で燃料調量ラック(8)の燃料増量を制限するようにしたので、黒煙の発生を抑制することができる。
【0010】
(請求項2に係る発明)
請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 エンジントルク特性の調節作業を簡単に行うことができる。
図1に例示するように、逆アングライヒレバー(52)と他のガバナ構成レバー(3)のいずれかに揺動制限ボルト(55)を取り付け、この揺動制限ボルト(55)の螺動調節で逆アングライヒレバー(52)の揺動可能寸法(56)を調節することにより、図2に例示するように、逆アングライヒ回転領域(54)での燃料調量ラック(8)の移動可能範囲(57)が調節されるようにしたので、最大トルク回転数(67)や最大トルク値等のエンジントルク特性の調節作業を簡単に行うことができる。
【0011】
(請求項3に係る発明)
請求項1または請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 簡単なガバナレバー構造で、逆アングライヒ特性が得られる。
図2に例示するように、逆アングライヒ回転領域(54)でのエンジン回転数の低下で、図1に例示するように、入力レバー(58)の出力端部(58a)が燃料増量側に揺動(58b)すると、反転出力レバー(59)の出力端部(59b)が燃料減量側に反転揺動(59c)し、燃料調量ラック(8)を燃料減量側に移動させるようにしたので、簡易なガバナレバー構造で、逆アングライヒ特性が得られる。
【0012】
(請求項4に係る発明)
請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 エンジントルク特性の調節作業を簡単に行うことができる。
図1に例示するトルクライズ制限ボルト(62)の螺動調節で、図2に例示する燃料調量ラック(8)のトルクライズ回転領域(65)と逆アングライヒ回転領域(54)での燃料調量ラック(8)の増量側の限界位置(66)が調節されるようにしたので、最大トルク回転数(67)や最大トルク値等のエンジントルク特性の調節作業を簡単に行うことができる。
【0013】
(請求項5に係る発明)
請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 加速をスムーズに行うことができる。
図3に例示するように、低回転領域では、この付勢された連動体(37)をブーストレバー(39)で受け止めることにより、ガバナスプリング力(9a)がブーストスプリング(44)にかからない位置で、ブーストレバー(39)による燃料調量ラック(8)の燃料制限を行うようにしたので、低回転領域で調速レバー(10)を加速操作しても、加速がスムーズに行なわれる。
その理由は、次のように推定される。すなわち、ガバナスプリング力(9a)がブーストスプリング(44)にかからない位置で、始動用スプリング(26)で付勢された連動体(37)をブーストレバー(39)で受け止めるため、ブーストスプリング(44)のバネ圧(44a)はこれに見合う弱いもので足り、低回転領域で調速レバー(10)を加速操作した場合には、ブースト圧(24)の増加に伴い、燃料制限が速やかに緩和され、加速がスムーズに行われるためと推定される。
【0014】
(請求項6に係る発明)
請求項1から請求項5のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 感温作動手段が通常運転に支障を及ぼすおそれがない。
図1または図3に例示するように、過給のブースト圧(24)が所定値を超えると、ブーストレバー(39)の揺動により解除アーム(21)が付勢スプリング(19)の付勢力(19a)に抗して感温作動手段(18)を押圧し、感温作動手段(18)を燃料調量ラック(8)の調量を制限しない制限解除位置に保持するので、エンジン始動後は、感温作動手段(18)が燃料調量ラック(8)の調量の邪魔をせず、感温作動手段(18)が通常運転に支障を及ぼすおそれがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1から図4は本発明の実施形態に係るディーゼルエンジンを説明する図である。
図1に示すように、燃料噴射ポンプ(7)の燃料調量ラック(8)をメカニカルガバナ(1)のガバナレバー(2)に連動連結し、このガバナレバー(2)をガバナスプリング(9)を介して調速レバー(10)に連動連結するとともに、ガバナ力発生手段(6)に連携させ、ガバナスプリング力(9a)とガバナ力(6a)との不釣合い力でガバナレバー(2)を揺動させ、このガバナレバー(2)で燃料調量ラック(8)の調量位置を制御するようにしている。
【0016】
メカニカルガバナの具体的構成は、次の通りである。
図1に示すように、ガバナレバー(2)が逆アングライヒレバー(52)を備え、この逆アングライヒレバー(52)に燃料調量ラック(8)を連動連結し、この逆アングライヒレバー(52)を逆アングライヒスプリング(53)で付勢し、図2に示すように、エンジン負荷の増加によってエンジン回転数が所定の逆アングライヒ回転領域(54)まで低下すると、図1に示すように、逆アングライヒスプリング力(53a)とガバナ力(6a)との不釣合い力で、逆アングライヒレバー(52)を揺動させ、エンジン回転数が低下するにつれて燃料調量ラック(8)を燃料減量側に移動させるに当たり、次のようにしている。
【0017】
すなわち、図1に示すように、逆アングライヒレバー(52)と他のガバナ構成レバーであるトルクライズレバー(3)にそれぞれスプリング係止部(52a)(3a)を設け、各スプリング係止部(52a)(3a)に引っ張りスプリング構造の逆アングライヒスプリング(53)の各端部を係止させている。
各スプリング係止部(52a)(3a)はピンの先端部に設けた溝、逆アングライヒスプリング(53)の各端部はフックであり、逆アングライヒスプリング(53)の各端部のフックをピンの先端部の溝に係止させることで、逆アングライヒスプリング(53)を架設することができる。
逆アングライヒ機構は、燃料噴射ポンプの高圧噴射化に伴うトランペットQ特性を緩和するための手段であり、トランペットQ特性とは、燃料噴射ポンプの同じ燃料調量ラック位置で、エンジン回転数が低下するほど、燃料噴射量が増大する特性をいう。このトランペットQ特性を緩和するには、逆アングライヒ機構により、エンジン回転数が低下するほど、燃料調量ラック位置を減量側に移動させる必要がある。
【0018】
図1に示すように、トルクライズレバー(3)に揺動制限ボルト(55)を取り付け、この揺動制限ボルト(55)の先端を逆アングライヒレバー(52)と対向させ、この揺動制限ボルト(55)の螺動調節で逆アングライヒレバー(52)の揺動可能寸法(56)を調節することにより、図2に示す逆アングライヒ回転領域(54)での燃料調量ラック(8)の移動可能範囲(57)が調節されるようにしている。
逆アングライヒレバー(52)に揺動制限ボルト(55)を取り付け、この揺動制限ボルト(55)の先端をトルクライズレバー(3)と対向させ、この揺動制限ボルト(55)の螺動調節で逆アングライヒレバー(52)の揺動可能寸法(56)を調節することにより、逆アングライヒ回転領域(54)での燃料調量ラック(8)の移動可能範囲(57)が調節されるようにしてもよい。
【0019】
逆アングライヒ回転領域(54)での燃料調量ラック(8)の制御特性は図2の最下段に示す通りであり、逆アングライヒスプリング(53)を自然長が短いものに交換し、初期スプリング荷重を大きくすると、逆アングライヒ回転領域(54)の開始回転数(69)は高速側にずれる。逆アングライヒスプリング(53)を自然長が長いものに交換し、初期スプリング荷重を小さくすると、逆アングライヒ回転領域(54)の開始回転数(69)は低速側にずれる。逆アングライヒスプリング(53)をバネ定数が大きいものに交換すると、逆アングライヒ回転領域(54)での回転変動に対する燃料調量ラック(8)の位置の変動率は小さくなる。逆アングライヒスプリング(53)をバネ定数が小さいものに交換すると、逆アングライヒ回転領域(54)での回転変動に対する燃料調量ラック(8)の位置の変動率は大きくなる。
【0020】
逆アングライヒレバーの具体的構造は、次の通りである。
図1に示すように、逆アングライヒレバー(52)は、入力レバー(58)と反転出力レバー(59)とを備え、入力レバー(58)は他のガバナ構成レバーであるトルクライズレバー(3)やガバナスプリングレバー(4)とともにガバナレバー枢軸(5)に枢支し、この入力レバー(58)をガバナ力発生手段(6)に連携させるとともに逆アングライヒスプリング(53)で付勢し、出力反転レバー(59)はその中途部を他のガバナ構成レバー(3)に設けた枢ピン(60)で枢支し、入力レバー(58)の出力端部(58a)に反転出力レバー(59)の入力端部(59a)を係合させ、反転出力レバー(59)の出力端部(59b)に燃料調量ラック(8)を連動連結している。
これにより、図2に示すように、エンジン負荷の増加によってエンジン回転数が所定の逆アングライヒ回転領域(54)まで低下すると、図1に示すように、逆アングライヒスプリング力(53a)とガバナ力(6a)との不釣合い力で、入力レバー(58)と反転出力レバー(59)とを揺動させ、逆アングライヒ回転領域(54)でのエンジン回転数の低下で、入力レバー(58)の出力端部(58a)が燃料増量側に揺動(58b)すると、反転出力レバー(59)の出力端部(59b)が燃料減量側に反転揺動(59c)し、燃料調量ラック(8)を燃料減量側に移動させるようにしている。
【0021】
トルクライズ装置の構成は、次の通りである。
トルクライズ装置は、定格負荷(定格回転での全負荷)を越えるエンジン負荷がかかった場合に、エンジン回転数を緩やかに低下させ、エンジントルクを高めて、エンストを抑制するためのものである。
図1に示すように、ガバナレバーとして、逆アングライヒレバー(52)とガバナスプリングレバー(4)とトルクライズレバー(3)とを備え、ガバナスプリングレバー(4)をガバナスプリング(9)を介して調速レバー(10)に連動連結し、ガバナスプリングレバー(4)に燃料制限ボルト(61)を対向させ、ガバナスプリングレバー(4)にトルクライズ装置(11)を設け、トルクライズ装置(11)のトルクピン(13)をトルクスプリング(14)で押し出し方向に付勢し、トルクピン(13)にトルクライズ制限ボルト(62)を対向させている。トルクピン(13)は、トルクライズレバー(3)に接当させている。
トルクライズレバー(3)にトルクライズ装置(11)を設け、トルクライズ装置(11)のトルクピン(13)をトルクスプリング(14)で押し出し方向に付勢し、トルクライズレバー(3)にトルクライズ制限ボルト(62)を対向させてもよい。この場合、トルクピン(13)はガバナスプリングレバー(4)に接当させている。
【0022】
調速レバー(10)を最高速位置にセットした全負荷運転の場合、調速制御回転領域(63)では、ガバナスプリング力(9a)とガバナ力(6a)とでトルクスプリング(14)を圧縮してトルクピン(13)をトルクライズ装置(11)に限界まで押し込んだままガバナレバー(2)を揺動させ、エンジン負荷の増加によってエンジン回転数が所定の定格回転数(64)まで低下すると、燃料増量側に揺動するガバナスプリングレバー(4)が燃料制限ボルト(61)に受け止められ、エンジン負荷の増加によって更にエンジン回転が所定のトルクライズ回転領域(65)まで低下すると、トルクスプリング力(14a)とガバナ力(6a)との不釣合い力で、トルクピン(13)の押し出し量に応じてトルクライズレバー(3)を揺動させ、エンジン回転数が低下するにつれて燃料調量ラック(8)を燃料増量側に移動させるようにしている。
トルクライズ制限ボルト(62)の螺動調節でトルクライズ回転領域(65)と逆アングライヒ回転領域(54)での燃料調量ラック(8)の増量側の限界位置(66)が調節されるようにしている。
定格回転数(64)とはエンジンの最大出力が得られる回転数である。調速制御回転領域(63)とは、定格回転数(64)から無負荷最高回転数(70)までの回転領域で、ガバナスプリング力(9a)とガバナ力(6a)との不釣合い力で燃料調量ラック(8)の調量を制御する領域をいう。
【0023】
ブーストコンペンセータの構成は、次の通りである。
図1に示すように、ブーストコンペンセータ(16)はブースト作動器(38)とブーストレバー(39)とを備えている。ブースト作動器(38)内には、ブースト圧室(40)とダイヤフラム(41)と戻しバネ(42)とを収容し、ダイヤフラム(41)に出力ロッド(43)を取り付け、出力ロッド(43)の先端部を揺動アーム(39)の入力部に当接させている。ダイヤフラム(41)は戻しバネ力(42a)でブースト圧室(40)に向けて付勢されている。ブーストレバー(39)は、ブーストスプリングバネ(44)のブーストスプリング力(44a)で出力ロッド(43)の先端部に圧接させている。
【0024】
図1に示すように、燃料調量ラック(8)に連動体(37)を固定し、この連動体(37)をガバナレバー(2)にスライド自在に連結し、始動用スプリング(26)で連動体(37)を燃料調量ラック(8)の燃料増量方向に付勢し、この付勢された連動体(37)をガバナレバー(2)で受け止めることにより、ガバナレバー(2)で燃料調量ラック(8)を調量し、図3に示すように、低回転領域では、この付勢された連動体(37)をブーストレバー(39)で受け止めることにより、ガバナレバー(2)が干渉しない位置で、ブーストレバー(39)による燃料調量ラック(8)の燃料制限を行うようにしている。
【0025】
図1に示すように、連動体(37)には燃料増減方向に長い長孔(47)を形成し、反転出力レバー(59)の出力端部(59b)を長孔(47)に差し込み、トルクライズレバー(3)の先端部(48)で反転出力レバー(59)を受け止め、反転出力レバー(59)の出力端部(59b)で長孔(47)の燃料減量側の端部周肉部(49)を受け止めることにより、連動体(37)をガバナレバー(2)で受け止めている。図3に示す低速運転時には、ブーストレバー(39)で反転出力レバー(59)の先端部(50)を受け止め、反転出力レバー(59)の出力端部(59b)で長孔(47)の燃料減量側の端部周肉部(49)を受け止めることにより、トルクライズレバー(3)の先端部(48)から反転出力レバー(59)が離れ、ガバナスプリング力(9a)がブーストスプリング(44)にかからない位置で、ブーストレバー(39)による燃料調量ラック(8)の燃料制限を行うようにしている。
【0026】
図4に示すように、燃料調量ラック(8)を感温作動手段(18)に連携させ、温間始動時には、感温作動手段(18)の感温作動に基づいて、冷間始動時よりも燃料調量ラック(8)の始動調量位置を燃料減量側に制限するに当たり、図1に示すように、感温作動手段(18)を付勢スプリング(27)で燃料減量方向に付勢し、ブーストレバー(39)に解除アーム(21)を設け、過給のブースト圧(24)が所定値を超えると、ブーストレバー(39)の揺動により解除アーム(21)が感温作動手段(18)を押圧し、付勢スプリング(27)の付勢力(27a)に抗して感温作動手段(18)を燃料調量ラック(8)の調量を制限しない制限解除位置に保持する。感温作動手段(18)は冷間時には収縮し、温間時には伸長するワックスタイプのものである。感温作動手段(18)は、冷間時には、図3に示すように、揺動レバー(51)を介してトルクライズレバー(3)を受け止め、温間時には、図1または図3に示すように、解除アーム(21)が揺動レバー(51)を押すことにより、感温作動手段(18)を押圧するようになっている。感温作動手段(18)で連動体(37)を受け止めてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係るディーゼルエンジンのメカニカルガバナ周辺の模式図で、逆アングライヒ運転時のものである。
【図2】図1のメカニカルガバナによる調量ラックの制御特性と燃料噴射特性とエンジントルク特性の説明図である。
【図3】低速運転時に加速した時の図1対応図である。
【図4】始動時の図1対応図である。
【符号の説明】
【0028】
(1) メカニカルガバナ
(2) ガバナレバー
(3) トルクライズレバー
(3a) スプリング係止部
(4) ガバナスプリングレバー
(5) ガバナレバー枢軸
(6) ガバナ力発生手段
(6a) ガバナ力
(7) 燃料噴射ポンプ
(8) 燃料調量ラック
(9) ガバナスプリング
(9a) ガバナスプリング力
(10) 調速レバー
(11) トルクライズ装置
(13) トルクピン
(14) トルクスプリング
(14a) トルクスプリング力
(16) ブーストコンペンセータ
(18) 感温作動手段
(19) 付勢スプリング
(19a) 付勢力
(21) 解除アーム
(26)始動用スプリング
(37) 連動体
(39) ブーストレバー
(44) ブーストスプリング
(50) 揺動レバー
(52) 逆アングライヒレバー
(52a) スプリング係止部
(53) 逆アングライヒスプリング
(53a) 逆アングライヒスプリング力
(54) 逆アングライヒ回転領域
(55) 揺動制限ボルト
(56) 揺動可能寸法
(57) 燃料調量ラックの移動可能範囲
(58) 入力レバー
(58a) 出力端部
(58b) 燃料増量側に揺動
(59) 反転出力レバー
(59a) 入力端部
(59b) 出力端部
(59c) 燃料減量側に反転揺動
(60) 枢ピン
(61) 燃料制限ボルト
(62) トルクライズ制限ボルト
(63) 調速制御回転領域
(64) 定格回転数
(65) トルクライズ回転領域
(66) 増量側の限界位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射ポンプ(7)の燃料調量ラック(8)をメカニカルガバナ(1)のガバナレバー(2)に連動連結し、このガバナレバー(2)をガバナスプリング(9)を介して調速レバー(10)に連動連結するとともに、ガバナ力発生手段(6)に連携させ、ガバナスプリング力(9a)とガバナ力(6a)との不釣合い力でガバナレバー(2)を揺動させ、このガバナレバー(2)で燃料調量ラック(8)の調量位置を制御するようにした、ディーゼルエンジンにおいて、
ガバナレバー(2)が逆アングライヒレバー(52)を備え、この逆アングライヒレバー(52)に燃料調量ラック(8)を連動連結し、この逆アングライヒレバー(52)を逆アングライヒスプリング(53)で付勢し、
エンジン負荷の増加によってエンジン回転数が所定の逆アングライヒ回転領域(54)まで低下すると、逆アングライヒスプリング力(53a)とガバナ力(6a)との不釣合い力で、逆アングライヒレバー(52)を揺動させ、エンジン回転数が低下するにつれて燃料調量ラック(8)を燃料減量側に移動させるに当たり、
逆アングライヒレバー(52)と他のガバナ構成レバー(3)にそれぞれスプリング係止部(52a)(3a)を設け、各スプリング係止部(52a)(3a)に引っ張りスプリング構造の逆アングライヒスプリング(53)の各端部を係止させ、
吸気過給を行うに当たり、ブーストコンペンセータ(16)を設け、過給のブースト圧(24)とブーストスプリング(44)との不釣合い力でブーストレバー(39)を揺動させ、このブーストレバー(39)で燃料調量ラック(8)の燃料増量を制限するようにした、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載したディーゼルエンジンにおいて、
逆アングライヒレバー(52)と他のガバナ構成レバー(3)のいずれかに揺動制限ボルト(55)を取り付け、この揺動制限ボルト(55)の螺動調節で逆アングライヒレバー(52)の揺動可能寸法(56)を調節することにより、逆アングライヒ回転領域(54)での燃料調量ラック(8)の移動可能範囲(57)が調節されるようにした、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載したディーゼルエンジンにおいて、
逆アングライヒレバー(52)は、入力レバー(58)と反転出力レバー(59)とを備え、入力レバー(58)は他のガバナ構成レバー(3)(4)とともにガバナレバー枢軸(5)に枢支し、この入力レバー(58)をガバナ力発生手段(6)に連携させるとともに逆アングライヒスプリング(53)で付勢し、出力反転レバー(59)はその中途部を他のガバナ構成レバー(3)に設けた枢ピン(60)で枢支し、入力レバー(58)の出力端部(58a)に反転出力レバー(59)の入力端部(59a)を係合させ、反転出力レバー(59)の出力端部(59b)に燃料調量ラック(8)を連動連結し、
エンジン負荷の増加によってエンジン回転数が所定の逆アングライヒ回転領域(54)まで低下すると、逆アングライヒスプリング力(53a)とガバナ力(6a)との不釣合い力で、入力レバー(58)と反転出力レバー(59)とを揺動させ、
逆アングライヒ回転領域(54)でのエンジン回転数の低下で、入力レバー(58)の出力端部(58a)が燃料増量側に揺動(58b)すると、反転出力レバー(59)の出力端部(59b)が燃料減量側に反転揺動(59c)し、燃料調量ラック(8)を燃料減量側に移動させるようにした、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載したディーゼルエンジンにおいて、
他のガバナ構成レバーとしてガバナスプリングレバー(4)とトルクライズレバー(3)とを備え、ガバナスプリングレバー(4)をガバナスプリング(9)を介して調速レバー(10)に連動連結し、ガバナスプリングレバー(4)に燃料制限ボルト(61)を対向させ、ガバナスプリングレバー(4)とトルクライズレバー(3)のいずれかにトルクライズ装置(11)を設け、トルクライズ装置(11)のトルクピン(13)をトルクスプリング(14)で押し出し方向に付勢し、トルクピン(13)かトルクライズレバー(3)のいずれかにトルクライズ制限ボルト(62)を対向させ、
調速制御回転領域(63)では、ガバナスプリング力(9a)とガバナ力(6a)とでトルクスプリング(14)を圧縮してトルクピン(13)をトルクライズ装置(11)に限界まで押し込んだままガバナレバー(2)を揺動させ、エンジン負荷の増加によってエンジン回転数が所定の定格回転数(64)まで低下すると、燃料増量側に揺動するガバナスプリングレバー(4)が燃料制限ボルト(61)に受け止められ、エンジン負荷の増加によって更にエンジン回転が所定のトルクライズ回転領域(65)まで低下すると、トルクスプリング力(14a)とガバナ力(6a)との不釣合い力で、トルクピン(13)の押し出し量に応じてトルクライズレバー(3)を揺動させ、エンジン回転数が低下するにつれて燃料調量ラック(8)を燃料増量側に移動させるようにし、
トルクライズ制限ボルト(62)の螺動調節でトルクライズ回転領域(65)と逆アングライヒ回転領域(54)での燃料調量ラック(8)の増量側の限界位置(66)が調節されるようにした、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載したディーゼルエンジンにおいて、
燃料調量ラック(8)に連動体(37)を固定し、この連動体(37)をガバナレバー(2)にスライド自在に連結し、始動用スプリング(26)で連動体(37)を燃料調量ラック(8)の燃料増量方向に付勢し、この付勢された連動体(37)をガバナレバー(2)で受け止めることにより、ガバナレバー(2)で燃料調量ラック(8)を調量し、
低回転領域では、この付勢された連動体(37)をブーストレバー(39)で受け止めることにより、ガバナスプリング力(9a)がブーストスプリング(44)にかからない位置で、ブーストレバー(39)による燃料調量ラック(8)の燃料制限を行うようにした、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載した過給式ディーゼルエンジンにおいて、
燃料調量ラック(8)を感温作動手段(18)に連携させ、温間始動時には、感温作動手段(18)の感温作動に基づいて、冷間始動時よりも燃料調量ラック(8)の始動調量位置を燃料減量側に制限するに当たり、
感温作動手段(18)を付勢スプリング(19)で燃料減量方向に付勢し、ブーストレバー(39)に解除アーム(21)を設け、
過給のブースト圧(24)が所定値を超えると、ブーストレバー(39)の揺動により解除アーム(21)が付勢スプリング(19)の付勢力(19a)に抗して感温作動手段(18)を押圧し、感温作動手段(18)を燃料調量ラック(8)の調量を制限しない制限解除位置に保持する、ことを特徴とするディーゼルエンジン。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−228518(P2009−228518A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73452(P2008−73452)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】