説明

ディーゼル排ガス処理装置およびディーゼル排ガスの処理方法

【課題】圧力損失の増大を抑制し、長期にわたり安定してディーゼル排ガスを処理できながら、処理効率の向上を図ることのできる、ディーゼル排ガス処理装置およびディーゼル排ガスの処理方法を提供すること。
【解決手段】スリーブ4内に、複数の非多孔質のアルミナボール7を、六方最密充填で充填するとともに、スリーブ4の外周面にヒータ線9を螺旋状に巻回したディーゼル排ガス処理装置1を用いて、ヒータ線9により、複数のアルミナボール7を、ディーゼル排ガスに含まれるPMを焼失可能な温度に常時加熱して、スリーブ4内に導入されるディーゼル排ガス中のPMが複数のアルミナボール7に接触したと同時に、そのPMを焼失させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼル排ガス処理装置およびディーゼル排ガスの処理方法、詳しくは、ディーゼルエンジンから排出されるディーゼル排ガスに含まれる粒子状物質を処理するための、ディーゼル排ガス処理装置およびそれを用いるディーゼル排ガスの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ディーゼルエンジンから排出されるディーゼル排ガスに含まれる粒子状物質(Particulate matter;以下、「PM」と省略する場合がある。)を除去する装置として、ディーゼルエンジンの排気側に設けられた、ハニカム形状のセラミック製フィルターを備える粒子状物質除去装置(Diesel particulate filter;以下、「DPF」と省略する場合がある。)が知られている。
【0003】
このようなDPFでは、PMを、セラミック製フィルターで濾し取り、その後、セラミック製フィルターに堆積したPMを、セラミック製フィルターを加熱することにより、燃焼させるようにして除去している。
また、例えば、多孔質炭化珪素から中空状の球体に形成された複数の触媒担体を備えるフィルタと、排気ガスの通路内に、フィルタと間隔を隔てて配置されるバーナーとを備える排気ガス浄化装置が提案されている。この排気ガス浄化装置では、フィルタによりパティキュレートを所定量捕集して、その後、バーナーでフィルタを加熱することにより、フィルタに滞留したパティキュレートを燃焼させて、フィルタを再生させている。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実開平5−27219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のハニカム形状のセラミック製フィルターを備えるDPFでは、そのセラミック製フィルターが濾し取ったPMにより、セラミック製フィルター内にPMの堆積層が形成されるので、セラミック製フィルターにおける圧力損失が大きくなるという不具合がある。
また、セラミック製フィルターに堆積するPMを燃焼させるときには、セラミック製フィルターを非常に高い温度で加熱する必要があるため、セラミック製フィルターが劣化する場合がある。
【0005】
さらにまた、特許文献1に記載の排気ガス浄化装置では、フィルタの触媒担体が多孔質の中空状に形成されているので、PMが多孔質炭化珪素の各孔内および中空内に滞留し、そのため、PMの捕集性能が低下するという不具合がある。
また、特許文献1に記載の排ガス浄化装置では、排気ガスの通路内にバーナーが配置されていることから、PMの濾過(捕集)と、PMの燃焼(燃焼除去)とを、別々にする必要があり、処理効率を向上させることが困難である。
【0006】
本発明の目的は、圧力損失の増大を抑制し、長期にわたり安定してディーゼル排ガスを処理できながら、処理効率の向上を図ることのできる、ディーゼル排ガス処理装置およびディーゼル排ガスの処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ディーゼル排ガス処理装置であって、ディーゼル排ガスが導入される筒状のケーシングと、前記ケーシングに充填される複数の非多孔質セラミックス粒子と、ディーゼル排ガスの導入方向において、前記ケーシングが配置される領域に設けられ、複数の前記非多孔質セラミックス粒子を加熱するためのヒータとを備えていることを特徴としている。
【0008】
このディーゼル排ガス処理装置では、ディーゼル排ガスが導入される筒状のケーシングに、複数の非多孔質セラミックス粒子が充填されており、ヒータにより複数の非多孔質セラミックス粒子を加熱することができる。そのため、ヒータにより、複数の非多孔質セラミックス粒子を、粒子状物質を焼失可能な温度に加熱すれば、ケーシングに導入されるディーゼル排ガス中の粒子状物質を、ヒータにより加熱されている非多孔質セラミックス粒子に接触させて、焼失することができる。その結果、ディーゼル排ガス処理装置の処理効率の向上を図ることができる。
【0009】
また、このディーゼル排ガス処理装置では、粒子状物質が、ヒータにより加熱されている非多孔質セラミックス粒子に接触して、焼失するので、粒子状物質が堆積されにくく、ディーゼル排ガス処理装置の圧力損失の増大を抑制することができる。その結果、ディーゼルエンジンを搭載する車両や船舶などの性能低下防止を図ることができる。
さらに、このディーゼル排ガス処理装置では、非多孔質セラミックス粒子は非多孔質であるので、粒子状物質が非多孔質セラミックス粒子の内部に侵入することなく、粒子状物質を非多孔質セラミックス粒子の表面に接触させることにより、焼失させることができる。そのため、ディーゼル排ガス処理装置の内部に粒子状物質を堆積させることなく、粒子状物質を除去することができる。
【0010】
さらにまた、このディーゼル排ガス処理装置では、複数の非多孔質セラミックス粒子を加熱するためのヒータが、ディーゼル排ガスの導入方向において、ケーシングが配置される領域に設けられるので、ケーシングにディーゼル排ガスを導入させながら、ヒータにより、非多孔質セラミックス粒子を加熱することができる。そのため、ディーゼル排ガスの導入と、非多孔質セラミックス粒子の加熱とを、同時にすることができ、非多孔質セラミックス粒子を、ヒータにより粒子状物質を焼失可能な温度に常時加熱すれば、ケーシングに導入されるディーゼル排ガス中の粒子状物質は非多孔質セラミックス粒子と接触すると、同時に焼失するので、粒子状物質を効率的に焼失させることができる。その結果、ディーゼル排ガス処理装置の処理効率の向上を図ることができる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、各前記非多孔質セラミックス粒子は、実質的に同一の粒子径の球状に形成され、前記ケーシングに六方最密充填で充填されていることを特徴としている。
各非多孔質セラミックス粒子が、実質的に同一の粒子径の球状に形成され、ケーシングに六方最密充填で充填されていれば、ケーシングにおけるディーゼル排ガスの良好な流れを確保して、圧力損失の増大を抑制しながら、ディーゼル排ガス中の粒子状物質と非多孔質セラミックス粒子との接触効率の向上を図ることができる。その結果、確実にディーゼル排ガスの処理効率の向上を図ることができる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、複数の前記非多孔質セラミックス粒子が、アルミナから形成されていることを特徴としている。
アルミナは、耐熱性に優れ、非多孔質セラミックス粒子への成形が容易である。そのため、安定性および耐久性に優れるディーゼル排ガス処理装置を提供することができる。
また、請求項4に記載の発明は、ディーゼル排ガスの処理方法であって、請求項1〜3のいずれかに記載のディーゼル排ガス処理装置を用いて、前記ヒータにより、複数の前記非多孔質セラミックス粒子を、ディーゼル排ガスに含まれる粒子状物質を焼失可能な温度に加熱して、前記ケーシングに導入されるディーゼル排ガス中の粒子状物質が前記非多孔質セラミックス粒子に接触した時に、その粒子状物質を焼失させることを特徴としている。
【0013】
このディーゼル排ガスの処理方法によれば、ヒータにより、複数の非多孔質セラミックス粒子を、ディーゼル排ガスに含まれる粒子状物質を焼失可能な温度に加熱して、ケーシングに導入されるディーゼル排ガス中の粒子状物質が、非多孔質セラミックス粒子に接触した時に、その粒子状物質を焼失させる。そのため、ディーゼル排ガスの処理効率の向上を図ることができる。また、粒子状物質が堆積されにくく、ディーゼル排ガス処理装置の圧力損失の増大を抑制することができる。その結果、ディーゼルエンジンを搭載する車両や船舶などの性能低下防止を図ることができる。
【0014】
また、ヒータにより、複数の非多孔質セラミックス粒子を、ディーゼル排ガスに含まれる粒子状物質を焼失可能な温度に加熱するので、ケーシングに導入されるディーゼル排ガス中の粒子状物質は非多孔質セラミックス粒子と接触すると、同時に焼失し、そのため、粒子状物質を効率的に焼失させることができる。また、このような粒子状物質を焼失可能な温度は、堆積された粒子状物質を焼失する温度よりも、低い温度であり、そのため、ディーゼル排ガス処理装置の耐久性の向上を図ることができる。その結果、長期にわたり安定してディーゼル排ガスを処理することができる。
【0015】
さらに、このディーゼル排ガスの処理方法において、非多孔質セラミックス粒子は非多孔質であるので、粒子状物質が、非多孔質セラミックス粒子の内部に侵入することなく、粒子状物質を非多孔質セラミックス粒子の表面に接触させることにより、焼失させることができる。そのため、ディーゼル排ガス処理装置の内部に粒子状物質を堆積させることなく、ディーゼル排ガスの処理効率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のディーゼル排ガス処理装置および本発明のディーゼル排ガスの処理方法によれば、ディーゼル排ガス処理装置の処理効率の向上を図ることができる。また、ディーゼルエンジンを搭載する車両や船舶などの性能低下防止を図ることができる。
また、長期にわたり安定してディーゼル排ガスを処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明のディーゼル排ガス処理装置の一実施形態の中央断面図である。
このディーゼル排ガス処理装置1は、ディーゼルエンジンが排出する排ガスに含まれる粒子状物質としてのPMを除去するためのものであって、ディーゼルエンジンの排ガスをディーゼルエンジンから外部へ排出するためのエグゾーストパイプの途中に設けられている。このディーゼル排ガス処理装置1は、ディーゼル排ガスを処理するための処理部2と、処理部2およびエグゾーストパイプの途中を接続して、処理部2を支持するための接続支持部3とを備えている。
【0018】
処理部2は、ディーゼル排ガスが導入される導入方向(以下、単に「導入方向」と省略する。)に沿って配置され、筒状のケーシングとしてのスリーブ4と、スリーブ4の径方向内側に設けられ、ディーゼル排ガスのPMを処理するための充填部5と、スリーブ4の径方向外側に設けられる加熱部6とを備えている。
スリーブ4は、耐熱性のコーディライトを材料として円筒形状に形成されており、その長さ(導入方向長さ)、内径および厚みは、ディーゼル排ガス処理装置1の目的および用途に応じて、適宜選択される。
【0019】
このスリーブ4では、矢印に示すように、ディーゼル排ガスが、導入方向上流側(以下、単に「上流側」と省略する。)から、すなわち、図1における右側から導入されており、充填部5により処理されたディーゼル排ガスが、導入方向下流側(以下、単に「下流側」と省略する。)に、すなわち、左側に排出される。
充填部5は、スリーブ4内において、複数の非多孔質セラミックス粒子としてのアルミナボール7が、六方最密充填で充填されることにより、形成されている。
【0020】
各アルミナボール7は、アルミナから形成される球状粒子であって、非多孔質、すなわち、粒子内に微細な孔が形成されず、緻密な表面を有している。
各アルミナボール7は、実質的に同一の粒子径の球状に形成され、その粒子径が、例えば、0.2〜8mm、好ましくは、0.5〜2mmである。
各アルミナボール7をスリーブ4内に六方最密充填で充填するには、まず、バインダーとしての釉薬組成物を調製し、この釉薬組成物を、複数のアルミナボール7の表面に均一に塗布する。その後、釉薬組成物が塗布された複数のアルミナボール7を、鉛直方向に配置されるスリーブ4(その下端部には、不織布が敷設されている。)内に投入して、スリーブ4内に各アルミナボール7を充填し、その後、これを、例えば、80〜100℃で、30〜90分、乾燥させる。
【0021】
なお、釉薬組成物は、例えば、釉薬100重量部に対して、ポリビニルアルコール(PVA)などの増粘剤5〜20重量部、水などの分散剤50〜100重量部を配合して、均一に撹拌混合することにより調製する。
また、複数のアルミナボール7に塗布する釉薬組成物の配合割合は、アルミナボール7の総量100重量部に対して、例えば、5〜10重量部、好ましくは、6〜8重量部である。
【0022】
また、スリーブ4内には、この充填部5において各アルミナボール7の間に、空隙31が、形成される。この空隙31の割合、すなわち空隙率は、理論的に25.95%である。なお、空隙率は、次式により算出される。
空隙率(%)=(空隙31の容積)/(スリーブ4の容積)×100
また、充填部5における圧力損失ΔPは、充填部5の上流側における圧力から、充填部5の下流側における圧力を差し引いた値である。
【0023】
また、充填部5における通気率Kは、例えば、2000〜9000×10-122、好ましくは、3000〜8000×10-122である。なお、通気率は、次式により算出される。
K=(Q・η・L)/(A・ΔP)
Q :ディーゼル排ガスの流速(m3/s)
η :ディーゼル排ガスの粘性(Pa・s)
L :スリーブ4の長さ(m)
A :スリーブ4内の断面積(m2
ΔP :圧力損失(Pa)
加熱部6は、導入方向において、スリーブ4が配置される領域としての処理領域12に設けられている。なお、この処理領域12は、スリーブ4の上流側端部と下流側端部との間に位置している。加熱部6は、より具体的には、スリーブ4の径方向外側に、スリーブ4の外周面と接触するように設けられている。
【0024】
この加熱部6は、ヒータとしてのヒータ線9と、耐熱絶縁ロープ10と、これらヒータ線9および耐熱絶縁ロープ10を被覆する断熱材11とを備えている。
ヒータ線9は、充填部5の複数のアルミナボール7を加熱するためのものであって、処理領域12の導入方向にわたって、スリーブ4の外周面に螺旋状に巻き付くように、スリーブ4に巻回されており、スリーブ4の導入方向に互いに間隔を隔てて対向配置されている。ヒータ線9としては、例えば、カンタルヒータ(ニクロタル80、丸線、直径1.00mm、KANTHAL社製)などが用いられる。
【0025】
また、ヒータ線9には、ヒータ線9の発熱量を調節自在とするための図示しない温度調節器を介して、ヒータ線9に流れる電流を供給するための図示しない電源が接続されている。温度調節器には、図示しない温度センサが接続されており、この温度センサは、スリーブ4の内側に取り付けられ、アルミナボール7の温度を測定している。
このヒータ線9は、アルミナボール7の温度が図示しない温度センサにより測定されながら、図示しない温度調節器でヒータ線9の発熱量が調節されることにより、充填部5の複数のアルミナボール7を、後述するPMを焼失可能な温度に加熱している。
【0026】
耐熱絶縁ロープ10は、スリーブ4の導入方向に互いに間隔を隔てて対向配置される各ヒータ線9の間に介在するように設けられており、ヒータ線9と並行するように、ヒータ線9と同様に、スリーブ4に巻回されている。耐熱絶縁ロープ10としては、例えば、ツイストロープ(5103−T、直径6.4mm、双葉パッキン社製)などが用いられる。
この耐熱絶縁ロープ10は、スリーブ4の導入方向に互いに隣接する各ヒータ線9の間に配置され、それらの短絡を防止して、ヒータ線9が各アルミナボール7を安定して加熱できるように、互いに隣接配置される各ヒータ線9を電気的に絶縁している。
【0027】
断熱材11は、ヒータ線9および耐熱絶縁ロープ10を被覆するとともに、スリーブ4の外周面を被覆するように、スリーブ4に外嵌されている。断熱材11としては、例えば、ガラスウールなどが用いられる。また、この断熱材11の外周面には、ワイヤなどの線材34が巻き付けられており、この線材34によって、スリーブ4に対して断熱材11が固定されている。
【0028】
この断熱材11は、ヒータ線9が、スリーブ4内のアルミナボール7を効率的に加熱できるように、ヒータ線9と外部とを、断熱している。
接続支持部3は、ディーゼル排ガス処理装置1における上流側(右側)端部および下流側(左側)端部に設けられている。この接続支持部3は、ディーゼル排ガスをディーゼルエンジン側のエグゾーストパイプからディーゼル排ガス処理装置1の処理部2に導入するための導入管部13と、処理されたディーゼル排ガスをディーゼル排ガス処理装置1の処理部2から外部側のエグゾーストパイプに排出するための排出管部14とを備えている。
【0029】
導入管部13は、ディーゼル排ガス処理装置1の上流側端部に設けられており、導入管15と第1支持部材16とを備えている。
導入管15は、導入管部13の上流側に配置され、図示しないディーゼルエンジン側のエグゾーストパイプと接続されており、この導入管15には、径方向内側に、ディーゼル排ガスの通路としての第1穴35が形成され、下流側端部に、第1フランジ28が形成されている。
【0030】
第1フランジ28は、導入管15の下流側端部から径方向外方に向かって、処理部2の断熱材11の外周面よりも径方向外方まで延びるように、形成されている。第1フランジ28の径方向外側周端部には、第1フランジ28を厚み方向に貫通する複数の第1貫通孔17が周方向に互いに間隔を隔てて形成されている。
第1支持部材16は、導入管15の下流側において、導入管15の第1フランジ28と密着するように隣接配置されている。
【0031】
この第1支持部材16は、円環形状で、その径方向内側に、ディーゼル排ガスの通路としての第2穴36が第1穴35と同一径で形成されている。また、第1支持部材16には、その径方向外側周端部に、導入管15の第1フランジ28の各第1貫通孔17に対応して、第1支持部材16を厚み方向に貫通する複数の第2貫通孔18が形成されている。
また、この第1支持部材16には、その第1支持部材16の下流側端面の径方向内側に、周方向にわたって同幅の円環状に切り欠かれる、第1凹部29が形成されている。
【0032】
この第1凹部29には、第1支持部材16の第2穴36を被覆する金属メッシュ27が係止されているとともに、その金属メッシュ27の周端部を被覆するシール部材26が設けられている。
金属メッシュ27は、スリーブ4よりやや大径の円板形状で、アルミナボール7の粒子径よりも小さい開口径を有する網状に形成されており、スリーブ4の上流側端部に配置され、第1凹部29に係止されている。
【0033】
シール部材26は、第1支持部材16の第1凹部29において、金属メッシュ27の周端部を被覆するように、配置されている。このシール部材26としては、例えば、ガラスウール(カオウール、イソライト工業社製)などが用いられる。
排出管部14は、ディーゼル排ガス処理装置1の下流側端部に配置され、導入管部13と処理部2を挟むようにして設けられており、排出管20と第2支持部材21とを備えている。
【0034】
排出管20は、排出管部14の下流側に配置され、図示しない外部側のエグゾーストパイプと接続されており、この排出管20には、径方向内側に、ディーゼル排ガスの通路としての第3穴37が形成され、上流側端部に、第2フランジ30が形成されている。
この第2フランジ30は、導入管15の第1フランジ28と、導入方向に直交する面に対して対称に形成され、その径方向外側周端部には、導入管15の第1フランジ28の各第1貫通孔17に対応して、複数の第3貫通孔22が形成されている。
【0035】
第2支持部材21は、排出管20の上流側において、排出管20の第1フランジ30と密着するように隣接配置されている。
この第2支持部材21は、第1支持部材16と、導入方向に直交する面に対して対称に形成されている。すなわち、この第2支持部材21には、第1支持部材16の第2穴36、各第2貫通孔18および第1凹部29に対応して、第4穴38、複数の第4貫通孔23および第2凹部32が形成されている。また、第2凹部32には、第1支持部材16の第1凹部29に対応して、金属メッシュ27が係止されるとともに、シール部材26が設けられている。
【0036】
そして、この接続支持部3は、スリーブ4の上流側端部が導入管部13の第1支持部材16の第1凹部29にシール部材26を介して当接されるとともに、スリーブ4の下流側端部が排出管部14の第2支持部材21の第2凹部32にシール部材26を介して当接されることにより、スリーブ4を、導入管部13の第1支持部材16および排出管部14の第2支持部材21により、導入方向両側から挟み込む。
【0037】
さらに、導入管部13の第1支持部材16の上流側に導入管15を配置するとともに、排出管部14の第2支持部材21の下流側に排出管20を配置した後、複数の長尺ねじ軸24を、導入管15の各第1貫通孔17、第1支持部材16の各第2貫通孔18、排出管20の各第3貫通孔22および第2支持部材21の各第4貫通孔23に挿通して、ナット25をその各長尺ねじ軸24に、導入管部13の導入管15の第1フランジ28の上流側からスリーブ4に向かって、かつ、排出管部14の排出管20の第2フランジ30の下流側からスリーブ4に向かって螺着させることにより、スリーブ4を導入方向両側から締め込んで、固定して支持する。また、長尺ねじ軸24に、別途予め挿通させたナット25を、導入管部13の第1支持部材16の下流側から第1支持部材16に向かって、かつ、排出管部14の第2支持部材21の上流側から第2支持部材21に向かって、螺着させることにより、導入管部13の第1支持部材16および導入管15を、導入方向両側から密着して固定するとともに、排出管部14の第2支持部材21および排出管20を、導入方向両側から密着して固定する。
【0038】
これにより、スリーブ4が接続支持部3に支持されるとともに、接続支持部3の導入管部13および排出管部14が組み付けられる。
そして、この接続支持部3では、導入管部13において、導入管15の第1穴35と、第1支持部材16の第2穴36と、金属メッシュ27とに、ディーゼル排ガスを通過させて、そのディーゼル排ガスを処理部2の充填部5に導入し、また、排出管部14において、金属メッシュ27と、排出管20の第3穴37と、第2支持部材21の第4穴38とに、処理部2の充填部5で処理されたディーゼル排ガスを通過させて、そのディーゼル排ガスを処理部2の充填部5から排出している。
【0039】
また、接続支持部3では、導入管部13の第1支持部材16の第1凹部29のシール部材26、および、排出管部14の第2支持部材21の第2凹部32のシール部材26が、ディーゼル排ガスの外部への漏れや、導入管部13の第1支持部材16および排出管部14の第2支持部材21との圧着(挟持)に基づく応力集中による処理部2のスリーブ4の破損を防止している。
【0040】
また、接続支持部3では、導入管部13の第1支持部材16の第1凹部29の金属メッシュ27、および、排出管部14の第2支持部材21の第2凹部32の金属メッシュ27が、処理部2のスリーブ4内からアルミナボール7が接続支持部3にこぼれることを防止している。
次いで、このディーゼル排ガス処理装置1を用いてディーゼル排ガスを処理する方法について、説明する。
【0041】
この方法では、まず、ディーゼル排ガスを処理する前に、予め、ディーゼル排ガス処理装置1において、加熱部6のヒータ線9により、充填部5の複数のアルミナボール7を、ディーゼル排ガスに含まれるPMを焼失可能な温度に加熱する。ヒータ線9により加熱されるアルミナボール7の温度は、ディーゼル排ガスの流量およびPMの濃度により適宜選択されるが、例えば、300〜800℃、好ましくは、500〜600℃に設定する。
【0042】
この方法では、次いで、ヒータ線9により、アルミナボール7を、常時PMを焼失可能な温度に加熱した状態で、ディーゼル排ガスをディーゼル排ガス処理装置1に導入する。
ディーゼル排ガスは、ディーゼルエンジン側のエグゾーストパイプを介して、ディーゼル排ガス処理装置1の接続支持部3の導入管部13から、ディーゼル排ガス処理装置1の処理部2に導入される。そして、処理部2に導入されるディーゼル排ガス中のPMは、ヒータ線9によりPMを焼失可能な温度に加熱されている複数のアルミナボール7の表面に接触すると同時に、燃焼し、焼失されることにより、処理される。
【0043】
なお、PMは、その主成分が、通常、炭素からなる黒鉛であるため、PMは、この燃焼により、二酸化炭素ガスとなって、焼失される。
次いで、処理部2で処理されたディーゼル排ガスは、ディーゼル排ガス処理装置1の接続支持部3の排出管部14から、外部側のエグゾーストパイプを介して、外部に排出される。
【0044】
なお、このディーゼル排ガス処理装置1におけるディーゼル排ガスのPM除去率は、例えば、60〜100%、好ましくは、90〜100%である。
なお、PM除去率は、次に示すスモーク濃度の関数により与えられる。スモークは、ディーゼルエンジンが排出する煙全般を指称し、その中にPMが含まれる。
ディーゼル排ガスのPM除去率は、次式により算出される。
【0045】
PM除去率(%)={(X0−X1)/X0}×100
0 :充填部5に導入されるディーゼル排ガス中のスモーク濃度(%)
1 :充填部5から排出されるディーゼル排ガス中のスモーク濃度(%)
そして、このディーゼル排ガス処理装置1では、ディーゼル排ガスが導入されるスリーブ4内に、複数のアルミナボール7が充填されており、ヒータ線9により複数のアルミナボール7を加熱することができる。そのため、ヒータ線9により、複数のアルミナボール7を、PMを焼失可能な温度に加熱することにより、スリーブ4内に導入されるディーゼル排ガス中のPMを、ヒータ線9により加熱されているアルミナボール7に接触させて、焼失することができる。その結果、ディーゼル排ガス処理装置1の処理効率の向上を図ることができる。
【0046】
また、このディーゼル排ガス処理装置1では、PMが、ヒータ線9により加熱されているアルミナボール7に接触して、焼失するので、PMがスリーブ4内において堆積されず、ディーゼル排ガス処理装置1の圧力損失の増大を抑制することができる。その結果、ディーゼルエンジンを搭載するディーゼル自動車やディーゼル機関車などの車両や、ディーゼル船などの船舶などの性能低下防止を図ることができる。
【0047】
さらに、このディーゼル排ガス処理装置1では、アルミナボール7は非多孔質であるので、PMがアルミナボール7の内部に侵入することなく、PMをアルミナボール7の表面に接触させることにより、焼失させることができる。そのため、ディーゼル排ガス処理装置1の内部にPMを堆積させることなく、PMを除去することができる。
さらにまた、このディーゼル排ガス処理装置1では、加熱部6のヒータ線9が、スリーブ4の径方向外側で、導入方向における処理領域12に設けられているので、スリーブ4内にディーゼル排ガスを導入させながら、ヒータ線9により、アルミナボール7を加熱することができる。そのため、ディーゼル排ガスの導入と、アルミナボール7の加熱とを、同時にすることができ、アルミナボール7をヒータ線9によりPMを焼失可能な温度に常時加熱しておくのみで、スリーブ4内に導入されるディーゼル排ガス中のPMをアルミナボール7と接触させると同時に焼失させることができるので、PMを効率的に焼失させることができる。その結果、ディーゼル排ガス処理装置1の処理効率の向上を図ることができる。
【0048】
また、このディーゼル排ガス処理装置1では、各アルミナボール7が、実質的に同一の粒子径の球状に形成され、スリーブ4内に六方最密充填で充填されているので、スリーブ4内におけるディーゼル排ガスの良好な流れを確保して、圧力損失の増大を抑制しながら、ディーゼル排ガス中のPMとアルミナボール7との接触効率の向上を図ることができる。その結果、確実にディーゼル排ガスの処理効率の向上を図ることができる。
【0049】
また、複数のアルミナボール7は、アルミナから形成されており、アルミナは、耐熱性に優れ、球状のアルミナボール7への成形が容易である。そのため、安定性および耐久性に優れるディーゼル排ガス処理装置1を提供することができる。
また、上記したディーゼル排ガスの処理方法によれば、ヒータ線9により、アルミナボール7を、PMを焼失可能な温度に加熱するので、スリーブ4内に導入されるディーゼル排ガス中のPMはアルミナボール7と接触すると同時に焼失し、そのため、PMを効率的に焼失させることができる。また、このようなPMを焼失可能な温度は、堆積されたPMを焼失する温度よりも、低い温度であり、そのため、ディーゼル排ガス処理装置1の耐久性の向上を図ることができる。その結果、長期にわたり安定してディーゼル排ガスを処理することができる。
【0050】
なお、上記した説明では、非多孔質セラミックス粒子として、アルミナボール7を用いたが、非多孔質セラミックス粒子であれば、特に限定されず、例えば、材料として、シリカ、コーディライトなどのセラミックスなどを適宜選択することもできる。材料としては、アルミナが好適である。
また、上記した説明では、アルミナボール7の形状を球状に形成したが、その形状は特に限定されず、楕円形状などの、その他の形状を適宜選択することもできる。形状としては、球状が好適である。
【0051】
また、上記した説明では、各アルミナボール7を実質的に同一の粒子径に形成したが、各アルミナボール7を互いに異なる粒子径に形成することもできる。粒子径としては、各アルミナボール7を実質的に同一に形成することが好適である。
また、上記した説明では、ヒータとしてヒータ線9を用いたが、処理領域12において複数のアルミナボール7に接触するように、スリーブ4を貫通して、スリーブ4の径方向外側から径方向内側に向かって延びる、棒状のヒータを複数設けてもよい。
【0052】
また、上記した説明では、図1に示すように、スリーブ4を直管の円筒形状に形成したが、目的および用途に応じて、スリーブ4を略L字の筒状や略U字の筒状などの適宜の形状に形成することもできる。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これら実施例および比較例に何ら限定されるものではない。
実施例1
まず、過給機付ディーゼルエンジンを用意した。この過給機付きディーゼルエンジンの主要諸元を下記に示す。
【0054】
製造会社 ISUZU MOTORS POLSKA
型式 4EE2−TCH
シリンダ数 L4
シリンダ直径 79mm
ピストン行程 86mm
行程容積(排気量) 1686cc
圧縮比 18.4
次いで、この過給機付きディーゼルエンジンにおいて、ディーゼルエンジン側のエグゾーストパイプの下流側端部、および、外部側のエグゾーストパイプの上流側端部の間に、上記したディーゼル排ガス処理装置を設けた。また、ディーゼル排ガス処理装置の接続支持部の導入管および排出管には、ディーゼルエンジン側のエグゾーストパイプからディーゼル排ガス処理装置に導入されるディーゼル排ガスの流量を調節可能とするための調節弁付きバイパスラインを接続した。
【0055】
なお、このディーゼル排ガス処理装置の処理部のスリーブは、直管の円筒形状であり、長さが180mm、外径が85mm、内径が80mmであった。また、充填部のスリーブ内に、アルミナボール(直径2mm)2000gを、六方最密充填で充填した。また、アルミナボールの充填において、ポリビニルアルコール(PVA)10.0重量部、水50.0重量部および釉薬(磁器用釉薬)100.0重量部からなる釉薬組成物160gを、用いた。
【0056】
このアルミナボールが充填されたスリーブでは、通気率が3274×10-122であった。
次いで、ヒータ線により、アルミナボールを500℃に加熱した。その後、過給機付きディーゼルエンジンから、ディーゼル排ガスをディーゼル排ガス処理装置に導入して、ディーゼル排ガス中のPMを、アルミナボールの表面に接触させると同時に、焼失させることにより、ディーゼル排ガスを処理した。そして、ディーゼル排ガス流量およびスモーク濃度X0を、下記の表に示すように変更した場合において、それぞれのPM除去率を測定した。
【0057】
なお、PM除去率は、ディーゼル排ガス処理装置の接続支持部の導入管および排出管に取り付けたスモークメータ(MEXA−130S、堀場製作所社製)により、スモーク濃度X0およびX1を測定し、PM除去率を算出した。その結果を、表1に示す。
【0058】
【表1】

比較例1
実施例1におけるディーゼル排ガス処理装置に、ヒータ線により複数のアルミナボールを加熱しなかった以外は、実施例1と同様にして、PM除去率を測定した。
【0059】
その結果、実施例1で測定したディーゼル排ガス流量およびスモーク濃度X0(表1参照)のいずれにおいても、PM除去率は、約2%であった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明のディーゼル排ガス処理装置の一実施形態の中央断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 ディーゼル排ガス処理装置
4 スリーブ
7 アルミナボール
9 ヒータ線
12 処理領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼル排ガスが導入される筒状のケーシングと、
前記ケーシングに充填される複数の非多孔質セラミックス粒子と、
ディーゼル排ガスの導入方向において、前記ケーシングが配置される領域に設けられ、複数の前記非多孔質セラミックス粒子を加熱するためのヒータと
を備えていることを特徴とする、ディーゼル排ガス処理装置。
【請求項2】
各前記非多孔質セラミックス粒子は、実質的に同一の粒子径の球状に形成され、前記ケーシングに六方最密充填で充填されていることを特徴とする、請求項1に記載のディーゼル排ガス処理装置。
【請求項3】
複数の前記非多孔質セラミックス粒子が、アルミナから形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のディーゼル排ガス処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のディーゼル排ガス処理装置を用いて、前記ヒータにより、複数の前記非多孔質セラミックス粒子」


【図1】
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【公開番号】特開2008−19834(P2008−19834A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194508(P2006−194508)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000227722)株式会社日本ネットワークサポート (19)
【Fターム(参考)】