説明

デシカント空調システム

【課題】 処理空気の温度が低い場合でも、連続的にかつ効率良く除湿する機能を備えた空調システムを提供する。
【解決手段】 このデシカント空調システムは、空気中の水分を吸着し、かつ空気中に水分を脱着できるデシカントが担持されたハニカム状のデシカントロータ16と、圧縮機18と蒸発器20と凝縮器22とからなる冷凍サイクル24とを用いる。システムに導入した処理空気は、デシカントロータ16の脱着ゾーン16a、冷凍サイクル24の蒸発器20、デシカントロータ16の吸着ゾーン16b、冷凍サイクル24の凝縮器22の順に流される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デシカント空調システムに係り、特に処理空気を効率的に除湿処理することができるデシカント空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空調システムにおいては、温度と湿度の調整が課題であり、特に、湿度の高い空間を快適な空間とするために、除湿機能が重要である。除湿の方式としては、図6に示すように、圧縮機100、蒸発器102、凝縮器104を有する冷凍サイクル106を用いて、処理空気を蒸発器102で冷却除湿し、凝縮器104で再熱して空調空間に供給する冷却式除湿方法が一般的である。これは、特許文献1に示すような吸着式では、乾燥剤の再生のために多大な再生熱エネルギーが必要となるからである。
【0003】
図6のように構成された冷却除湿空調システムの動作を、図7の湿り空気線図を参照して説明する。図中、横軸は乾球温度を、縦軸は絶対湿度を示し、各斜線は等相対湿度線を示す。斜線の内、実線は飽和線、すなわち、その絶対湿度における露点を示す。この例では、夏の高温多湿の外気を処理して室内に導入する場合を説明する。
【0004】
処理空気(状態A’)は、冷凍サイクルの蒸発器において冷却され、飽和線に沿って温度が低下する過程で水分を凝結して放出する(状態C’→D’)。処理空気はさらに冷凍サイクルの凝縮器において加熱されて昇温し(状態F’)、相対湿度が低下した被処理空気として、導出口より空調空間に導出される。
【0005】
しかしながら、この冷却式除湿方法では、処理空気の温度が低くて露点が氷点下になる場合には、蒸発器に霜が成長する。このため、所定時間の動作後に霜取り作業が必要になり、連続運転が不可能であった。また、処理空気の温度が低い時は、図3のモリエ線図に破線で示すように、冷媒の蒸発温度が下がって、冷凍効果が減少するため、充分な除湿能力を得られないという問題もあった。
【0006】
【特許文献1】特開平08−210664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、処理空気の温度が低い場合でも、連続的にかつ効率良く除湿する機能を備えた空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、空気中の水分を吸着し、かつ空気中に水分を脱着できるデシカントが担持されたハニカム状のデシカントロータであって、前記デシカントロータは水分を吸着する吸着ゾーンと水分を脱着する脱着ゾーンとに仕切られており、吸着ゾーンを流れる空気と脱着ゾーンを流れる空気とがほぼ対向流をなすデシカントロータと;圧縮機と蒸発器と凝縮器とからなる冷凍サイクルとを有し;システムに導入した処理空気をデシカントロータの脱着ゾーン、冷凍サイクルの蒸発器、前記デシカントロータの吸着ゾーン、冷凍サイクルの凝縮器の順に流すよう構成したことを特徴とするデシカント空調システムである。
請求項1に記載の発明においては、冷凍サイクルにデシカントロータによる水分の吸着工程を組み合わせることで、より高い除湿作用を得ることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のデシカント空調システムにおいて、前記凝縮器通過後の処理空気と前記デシカントの脱着ゾーン流入前の空気とを熱交換させる顕熱交換器を設けたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明においては、顕熱交換器で熱回収するため、室内相対湿度が高い時のデシカントの吸着能力が増加して除湿量が増加するとともに、除湿量当りの圧縮動力が減少するため省エネルギーとなる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のデシカント空調システムにおいて、前記顕熱熱交換器の交換熱量を可変式にしたことを特徴とする。
請求項3に記載の発明においては、必要な除湿負荷に応じて顕熱熱交換器の交換熱量を調整することによって多様な顕熱比の除湿空調負荷に対応することができる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1ないし請求項3に記載の発明によれば、処理空気の温度が低い場合でも、連続的にかつ効率良く除湿する機能を備えた空調システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
図1に示すデシカント空調システムは、処理空気の導入流路10と導出流路12を形成するフレーム14と、導入流路10と導出流路12の間に跨って配置され、各部がこれらの2つの流路の間を交互に循環するデシカントロータ16と、圧縮機18と蒸発器20と凝縮器22とからなる冷凍サイクル24と、送風機26を備え、さらに、導入空気と導出空気の間で顕熱交換を行う顕熱交換器28とを備えている。
【0013】
これらの機器は、以下のように配置されている。すなわち、導入口32から導入流路10流路へ導入された処理空気は、顕熱交換器28の高温ゾーン28aとデシカントロータ16の脱着ゾーン16aを通過して冷凍サイクル24の蒸発器20に至り、水分を凝縮させて放出する。処理空気は、さらに導出流路12へ流れて、デシカントロータ16の吸着ゾーン16bと冷凍サイクル24の凝縮器22および顕熱交換器28の低温ゾーン28bを経て導出口34から排気される。
【0014】
デシカントロータ16は、空気中の水分を吸着し、かつ空気中に水分を脱着できるデシカントが担持されたハニカム状のロータであって、導入流路10と導出流路12の両方に跨って配置され、導入流路10側に有る部分が水分を脱着する脱着ゾーン16aとなり、導出流路12側に有る部分が水分を吸着して除湿する吸着ゾーンとなる。吸着ゾーン16bを流れる空気と脱着ゾーン16aを流れる空気とがほぼ対向流をなしている。
【0015】
また、この実施の形態では、顕熱交換器28も、熱交換媒体がハニカム状のロータであって、導入流路10と導出流路12の両方に跨って配置され、その回転によって熱交換が行われるものである。従って、熱交換媒体の回転速度によって交換熱量を調整することができる。
【0016】
このように構成されたデシカント空調システムの動作を、図2の湿り空気線図を参照して説明する。図中、横軸は乾球温度を、縦軸は絶対湿度を示し、各斜線は等相対湿度線を示す。斜線の内、実線は飽和線、すなわち、その絶対湿度における露点を示す。この例では、夏の高温多湿の外気を処理して室内に導入する場合を説明する。
【0017】
処理空気(状態A)は、顕熱交換器28の低温ゾーン28aを通過し、顕熱交換ロータ32との間で熱交換を行って温度が上昇する(状態B)。温度上昇した処理空気は、デシカントロータ16の脱着ゾーン16aを通過し、等エンタルピー線BCに沿って水分吸収してデシカントを脱着し、湿度が上昇し、温度が低下する(状態C)。この処理空気は、さらに冷凍サイクル24の蒸発器20において冷却され、飽和線に沿って温度が低下する過程で水分を凝結して放出する(状態D)。処理空気は、デシカントロータ16の吸着ゾーン16bを通過し、等エンタルピー線DEに沿って水分を吸着され、湿度が低下し、温度が上昇する(状態E)。処理空気はさらに冷凍サイクル24の凝縮器22において加熱されて昇温し(状態F)、さらに顕熱交換器28の高温ゾーン28bを通過して顕熱交換ロータ32との間で熱交換を行って冷却され(状態G)、相対湿度が低下した被処理空気として、導出口34より空調空間に導出される。
【0018】
この実施の形態のデシカント空調システムによって得られる処理空気(状態F)を、従来例の場合と比較すると、図2に点FとF’で示すように、冷凍サイクル24の能力が同じ場合、本発明の場合の方が、低湿度の処理空気を得ることができることが分かる。これは、冷凍サイクル24にデシカントロータ16による水分の吸着工程(DE)を組み合わせたことによるものである。
【0019】
このように、この実施の形態では、顕熱交換器28で熱回収するために状態Aで示す処理空気の相対湿度が高い場合であっても、状態Bで示される脱着工程入口の空気の相対湿度が低下する(乾燥する)ため、デシカントロータの脱着ゾーンにおける水分脱着作用が増加し、それに伴って吸着ゾーンにおける水分吸着除湿効果が大きくなり、除湿量が増加する。
【0020】
また、従来の冷却除湿空調システムで同じ絶対湿度の被除湿空気を得たい場合には、図3の湿り空気線図に示すように、冷凍サイクルの成績係数(COP)を3とした場合、本発明において冷凍サイクルから印加される熱量比CD:EF≒3:4と従来の冷却除湿空調システムの熱量比CD’ :D’F’は、ほぼ同じ(≒3:4)、若しくは排熱が増加する(≒3:4〜)と見なせるから、従来の冷却除湿空調システムでは状態D’で示す冷却除湿後の処理空気温度が低下するとともに、状態E’で示す再熱後の処理空気温度も上昇する。このため、図4のモリエ線図に示すように、本発明では、状態Dで示す空気と熱交換する蒸発器の蒸発圧力が、従来の冷却除湿空調システムに比べて上昇するとともに、状態Fで示す処理空気と熱交換する凝縮器の凝縮圧力が低下するため、圧縮動力が減少し、省エネルギーである。
【0021】
なお、上記の実施の形態において、顕熱交換器28を用いない場合には、デシカントによる水分吸着作用が小さくなるので、最終処理空気の絶対湿度もやはり高くなる。顕熱交換器28の要否は、デシカント空調システムが用いられる状況に応じて決めればよい。
また、室内の湿度(相対湿度、露点温度又は絶対湿度)を検出して、湿度が高い時、顕熱ロータを廻すようにしてもよい。
さらに、室内の湿度の測定値に応じて顕熱ロータの回転数を変化させ、交換熱量を調整するようにしてもよい。回転数を変えることにより、図2に示す顕熱比(SHF)が変化し、E点の位置が変化するので、多様な顕熱比の除湿空調負荷に対応して適切な除湿作用を得ることができる。
【0022】
図5は、この発明の他の実施の形態を示すもので、冬季の室内の加湿を行うためのデシカント空調システムである。この実施の形態では、室内空気を除湿して外気よりも低い絶対湿度にして外へ排気する第1の処理経路40と、排気よりも高い絶対湿度の外気を取り入れて加温、加湿し、室内に供給する第2の処理経路42を備えている。第1の処理経路40は、基本的に先の実施の形態のデシカント空調システムと同様の構成であるが、冷凍サイクル24に補助凝縮器44を設けており、これを第2の処理経路42に設置して、外気の加温に用いている。
【0023】
第2の処理経路42は、送風機46の下流側に上記補助凝縮器44を設置し、その下流側に気化式の加湿器48を設置し、加温・加湿した新鮮な空気を室内に供給する。この実施の形態では、加湿器48の水源として、第1の処理経路40で除湿した水分を用いるようにしているので、水を補給する必要が無い。なお、加湿器48の上流側に水質浄化殺菌装置50を設置して清浄化した水分を加湿に用いるようにしている。
【0024】
なお第2の処理空気経路42は必ずしも、屋外に開口している必要はなく、屋内に開口していても差し支えない。この場合には、第1の処理空気経路40から排出した空気量に相当する外気が、窓の隙間や自然換気口から流入し、それらの外気と室内空気の混合空気が第2の処理空気となって作用するが、室内への加湿作用が損なわれることはなく、施工の都合で屋外への開口部が1箇所しか許容されない場合の対応方法として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の第1の実施の形態のデシカント空調システムの構成を示す図である。
【図2】第1の実施の形態のデシカント空調システムの動作を説明するための湿り空気線図である。
【図3】第1の実施の形態のデシカント空調システムを用いた場合と、従来のシステムを用いた場合とを比較するため、冷凍サイクルと熱交換する空気の状態を説明する湿り空気線図である。
【図4】第1の実施の形態のデシカント空調システムを用いた場合と、従来のシステムを用いた場合とを比較するため、冷凍サイクルを説明するモリエ線図である。
【図5】この発明の第2の実施の形態のデシカント空調システムの構成を示す図である。
【図6】従来の空調システムの構成を示す図である。
【図7】従来の空調システムの動作を説明するための湿り空気線図である。
【符号の説明】
【0026】
10 導入流路
12 導出流路
14 フレーム
16 デシカントロータ
16a 脱着ゾーン
16b 吸着ゾーン
18 圧縮機
20 蒸発器
22 凝縮器
24 冷凍サイクル
26 送風機
28 顕熱交換器
28a 高温ゾーン
28b 低温ゾーン
30 導入口
32 導出口
40 第1の処理経路
42 第2の処理経路
44 補助凝縮器
46 送風機
48 加湿器
50 水質浄化殺菌装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の水分を吸着し、かつ空気中に水分を脱着できるデシカントが担持されたハニカム状のデシカントロータであって、前記デシカントロータは水分を吸着する吸着ゾーンと水分を脱着する脱着ゾーンとに仕切られており、吸着ゾーンを流れる空気と脱着ゾーンを流れる空気とがほぼ対向流をなすデシカントロータと;圧縮機と蒸発器と凝縮器とからなる冷凍サイクルとを有し;
システムに導入した処理空気をデシカントロータの脱着ゾーン、冷凍サイクルの蒸発器、前記デシカントロータの吸着ゾーン、冷凍サイクルの凝縮器の順に流すよう構成したことを特徴とするデシカント空調システム。
【請求項2】
前記凝縮器通過後の処理空気と前記デシカントの脱着ゾーン流入前の空気とを熱交換させる顕熱交換器を設けたことを特徴とする請求項第1項に記載のデシカント空調システム。
【請求項3】
前記顕熱熱交換器の交換熱量を可変式にしたことを特徴とする請求項2に記載のデシカント空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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