説明

デジタルインジケータおよびデジタルインジケータの使用方法

【課題】多様な形状の被測定物に広く対応することができ、しかも小型かつ安価なデジタルインジケータを提供する。
【解決手段】本体10と、本体10に軸方向に摺動可能に設けられ一端に被測定部位と当接される接触部12を有するスピンドル11と、本体10に対するスピンドル11の絶対的な変位量を検出する検出手段13と、検出手段13により検出された本体10に対するスピンドル11の変位量をデジタル表示する表示部14と、を備え、スピンドル11は、検出手段13が検出することができる検出可能範囲を超えて、接触部12と逆側の方向に摺動可能に構成されることを特徴とするデジタルインジケータ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の寸法等を測定するデジタルインジケータおよびデジタルインジケータの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なインジケータとして、スピンドルの変位量を指針の回転角によって表示する指針式のインジケータと、スピンドルの変位量を電気的に検出してデジタル表示するデジタルインジケータとが知られている。
デジタルインジケータは、本体と、本体の外周壁を貫通して軸方向摺動自在に支持されたスピンドルと、スピンドルの摺動量を検出する検出手段として設けられたエンコーダと、エンコーダにより検出された本体に対するスピンドルの変位量をデジタル表示する表示部と、を備える。
例えば、特許文献1には、本体と本体に設けられスピンドルを摺動自在に支持する軸受部とを、導電性を付与された合成樹脂で一体成形することにより、外部の磁気から電気回路を保護することができるデジタルインジケータが開示されている。
【0003】
デジタルインジケータに用いられる検出手段としては、静電容量式、電磁式、光学式等のエンコーダが挙げられる。例えば、スピンドルに軸方向に沿って設けられた静電容量式のスケールと、本体に設けられスケールと静電結合してスピンドルの変位量を検出する検出ヘッドと、を備えるエンコーダを用いることができる。従来用いられてきたこれらのエンコーダは、スケールの基準点からの変位をインクリメントすることで現在の変位量を計測する相対方式によるものである。
【0004】
デジタルインジケータにおけるスケールと検出ヘッドの位置関係の概略を図2(A)に示す。
図2(A)に示すように、スケール15と検出ヘッド16とは対向配置されており、検出ヘッド16がスケール15の変位を検出する。検出されたスケール15の変位をインクリメントすることでスピンドルの変位を検出することができる。
しかし、図2(B)に示すように、スピンドルが上方向に過度に摺動すると、スケール15と検出ヘッド16とが離隔してしまう。このような状態においては、検出ヘッド16がスケール15の変位を検出することができないため、検出手段に問題が発生し、スピンドルの変位を求めることができない。そこで、従来のデジタルインジケータでは、スピンドルの摺動範囲が、スケール15と検出ヘッド16とが離隔することのない一定の範囲、すなわちエンコーダの検出可能範囲と等しくなるように構成していた。なお、図2(A)におけるaが、スピンドルの摺動範囲およびエンコーダの検出可能範囲である。
【0005】
【特許文献1】特開2003−344004号公報(第2実施形態)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来のデジタルインジケータにおいては、以下のような問題点があった。
図3および図4に、デジタルインジケータを用いて、コップ2の底部の厚みを測定する場合の図を示す。
コップ2の底部の厚みを測定する場合、はじめに、床面3にスピンドル11の接触部12を当接させた状態においてゼロセットを行う。次に、図3に示すように、接触部12がコップ2の壁面の高さを超えるように、スピンドル11を上方に摺動させる。この状態において、スピンドル11がコップ2の底面の上方に位置するように、コップ2を水平移動させる。ここで、図4に示すように、スピンドル11を下方に摺動させて接触部12をコップ2の底面に当接させれば、表示部14の表示値からコップ2の底部の厚みを求めることができる。
【0007】
このような測定においては、スピンドル11の摺動範囲は、コップ2の壁面の高さよりも広いことが必要となるが、従来のデジタルインジケータは、スピンドルの摺動範囲とエンコーダの検出可能範囲とが等しいため、被測定部位(コップ2の底部)の長さは短いにも関わらず、検出可能範囲が広い大型で高価なインジケータでなければ測定ができないという不都合が生じていた。
【0008】
本発明の目的は、上述のような問題点を解消し、多様な形状の被測定物に広く対応することができ、しかも小型かつ安価なデジタルインジケータおよびデジタルインジケータの使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のデジタルインジケータは、本体と、前記本体に軸方向に摺動可能に設けられ一端に被測定部位と当接される接触部を有するスピンドルと、前記本体に対する前記スピンドルの絶対的な変位量を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された前記本体に対する前記スピンドルの変位量を表示する表示部と、を備え、前記スピンドルは、前記検出手段が検出することができる検出可能範囲を超えて、前記接触部と逆側の方向に摺動可能に構成されることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、検出手段が、本体に対するスピンドルの絶対的な変位量を検出し、スピンドルが、検出手段が検出することができる検出可能範囲を超えて、接触部と逆側の方向に摺動可能に構成されるので、スピンドルが、検出可能範囲を超えて、接触部と逆側の方向に摺動されても、検出手段には問題がない。したがって、スピンドルが、一度検出可能範囲を超えて、接触部と逆側の方向に摺動されても、その後、検出可能範囲内に戻れば、続けて測定を行うことができる。
すなわち、本発明のデジタルインジケータは、検出手段の検出可能範囲に対して、スピンドルの摺動範囲を広くすることができるので、小型でありながら、多様な形状の被測定物に広く対応することができる。検出可能範囲は狭くてもよいが、スピンドルの広い摺動範囲が必要な場合、例えば、コップの底部の厚さを測定する場合などに好適に用いることができる。
【0011】
本発明のデジタルインジケータの使用方法は、上述のデジタルインジケータの使用方法であって、被測定部位に前記接触部を当接させ前記表示部の表示から第1検出値を読み取る第1検出過程と、前記第1検出過程の後、前記スピンドルを前記検出手段が検出することができる前記検出可能範囲を超えて、前記接触部と逆側の方向に摺動させる超過摺動過程と、前記超過摺動過程の後、他の被測定部位に前記接触部を当接させ前記表示部の表示から第2検出値を読み取る第2検出過程と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、上述のデジタルインジケータを用いるので、超過摺動過程において、スピンドルを検出手段が検出することができる検出可能範囲を超えて、接触部と逆側の方向に摺動させても、検出手段には問題がなく、第1検出過程で読み取った第1検出値と、第2検出過程で読み取った第2検出値とを同列に比較することができる。
したがって、本発明のデジタルインジケータの使用方法は、検出可能範囲は狭くてもよいが、スピンドルの広い摺動範囲が必要な場合、例えば、コップの底部の厚さを測定する場合などに好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に、本実施形態のデジタルインジケータ1を横からみた断面図を示す。
図1に示すように、デジタルインジケータ1は、本体10と、本体10に軸方向に摺動可能に設けられ一端に被測定部位と当接される接触部12を有するスピンドル11と、本体10に対するスピンドル11の絶対的な変位量を検出する検出手段13と、検出手段13により検出された本体10に対するスピンドル11の変位量をデジタル表示する表示部14と、を備える。
検出手段13は、静電容量式のエンコーダであり、スピンドル11の軸方向に沿って設けられた静電容量式のスケール15と、本体10の内部に設けられスケール15と静電結合してスピンドル11の絶対的な変位量を検出する検出ヘッド16と、を有する。
【0013】
図2に、スケール15と検出ヘッド16の位置関係の概略図を示す。
図2(A)中のaは、エンコーダの検出可能範囲を示し、図2(B)中のbが、スピンドル11の摺動範囲を示す。図2に示すように、スピンドル11(図示省略)は、スケール15と検出ヘッド16とが対向し、検出手段13がスピンドル11の変位を検出することができる検出可能範囲aを超えて、接触部12と逆側の方向にbの範囲内で摺動可能に構成される。
【0014】
このようなデジタルインジケータ1の使用方法を説明する。
図3および図4に、デジタルインジケータ1を用いて、コップ2の底部の厚みを測定する場合の図を示す。
はじめに、床面3にスピンドル11の接触部12を当接させた状態においてゼロセットを行う(第1検出過程)。次に、図3に示すように、接触部12がコップ2の壁面の高さを超えるように、スピンドル11を上方に摺動させる(超過摺動過程)。この状態において、スピンドル11がコップ2の底面の上方に位置するように、コップ2を水平移動させる。ここで、図4に示すように、スピンドル11を下方に摺動させて接触部12をコップ2の底面に当接させれば、表示部14の表示値からコップ2の底部の厚みを求めることができる(第2検出過程)。
【0015】
本実施形態によれば、以下に示すような効果がある。
(1) 検出手段13が、本体10に対するスピンドル11の絶対的な変位量を検出し、スピンドル11が、検出手段13が検出することができる検出可能範囲aを超えて、接触部12と逆側の方向に摺動可能に構成されるので、スピンドル11が、検出可能範囲aを超えて、接触部12と逆側の方向に摺動されても、検出手段13には問題がない。したがって、スピンドル11が、一度検出可能範囲aを超えて、接触部12と逆側の方向に摺動されても、その後、検出可能範囲a内に戻れば、続けて測定を行うことができる。
すなわち、本発明のデジタルインジケータ1は、検出手段13の検出可能範囲aに対して、スピンドルの摺動範囲bを広くすることができるので、小型でありながら、多様な形状の被測定物に広く対応することができる。検出可能範囲aは狭くてもよいが、スピンドルの広い摺動範囲bが必要な場合、例えば、コップ2の底部の厚さを測定する場合などに好適に用いることができる。
【0016】
(2)検出手段13が、本体10に対するスピンドル11の絶対的な変位量を検出し、スピンドル11が、検出手段13が検出することができる検出可能範囲aを超えて、接触部12と逆側の方向に摺動可能に構成されるデジタルインジケータ1を用いるので、超過摺動過程において、スピンドル11を検出手段13が検出することができる検出可能範囲aを超えて、接触部12と逆側の方向に摺動させても、検出手段13には問題がなく、第1検出過程で読み取った第1検出値と、第2検出過程で読み取った第2検出値とを同列に比較することができる。
したがって、本発明のデジタルインジケータ1の使用方法は、検出可能範囲aは狭くてもよいが、スピンドルの広い摺動範囲bが必要な場合、例えば、コップ2の底部の厚さを測定する場合などに好適に用いることができる。
【0017】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
前記実施形態において、デジタルインジケータ1は、検出手段13として静電容量式のエンコーダを備えるものとしたが、検出手段13は、本体10に対するスピンドル11の絶対的な変位量を検出できるものであればよく、静電容量式のエンコーダに限定されない。
例えば、電磁誘導式や光学式等のエンコーダであって、スピンドル11の絶対的な変位量を検出できるものであってもよい。このような構成であっても、前記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、被測定物の寸法等の測定を行うデジタルインジケータとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るデジタルインジケータを横から見た断面図。
【図2】本発明の実施形態に係るデジタルインジケータのスケールと検出ヘッドの位置関係の概略図。
【図3】本発明の実施形態に係るデジタルインジケータを用いてコップの底部の厚みを測定する場合の図。
【図4】本発明の実施形態に係るデジタルインジケータを用いてコップの底部の厚みを測定する場合の図。
【符号の説明】
【0020】
1…デジタルインジケータ、10…本体、11…スピンドル、12…接触部、13…検出手段、14…表示部、15…スケール、16…検出ヘッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に軸方向に摺動可能に設けられ一端に被測定部位と当接される接触部を有するスピンドルと、
前記本体に対する前記スピンドルの絶対的な変位量を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記本体に対する前記スピンドルの変位量を表示する表示部と、を備え、
前記スピンドルは、前記検出手段が検出することができる検出可能範囲を超えて、前記接触部と逆側の方向に摺動可能に構成されることを特徴とするデジタルインジケータ。
【請求項2】
請求項1に記載のデジタルインジケータの使用方法であって、
被測定部位に前記接触部を当接させ前記表示部の表示から第1検出値を読み取る第1検出過程と、
前記第1検出過程の後、前記スピンドルを前記検出手段が検出することができる前記検出可能範囲を超えて、前記接触部と逆側の方向に摺動させる超過摺動過程と、
前記超過摺動過程の後、他の被測定部位に前記接触部を当接させ前記表示部の表示から第2検出値を読み取る第2検出過程と、を備えることを特徴とするデジタルインジケータの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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