説明

デジタルオーディオ信号処理装置、及び方法

【課題】時系列データの目標時点に対して、データ状況に応じて最適なフェード開始時点を決定することで、必要最小限のフェード処理を行い、スムーズなオーディオ信号の再生を行うこと。
【解決手段】本発明の第1の態様にかかるデジタルオーディオ信号処理装置は、デジタルオーディオ信号の目標時点に基づいてフェード処理を行うものであって、前記目標時点に応じて決定される所定期間における前記デジタルオーディオ信号のレベル値を検出し、当該レベル値に応じてフェード実施期間を算出するフェード実施期間算出部と、前記フェード実施期間に基づいて前記フェード処理を制御するフェード制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルAV(Audio Visual)機器等のデジタルオーディオ信号処理装置、及び方法に関し、特にデジタルオーディオ信号のフェード処理に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オーディオ信号のデジタル化が進み、圧縮されたデジタルオーディオ信号のデコード処理時にエラーが発生した場合、ミュート処理を行うことでノイズを発生させないようにすることが一般的となっている。その場合、エラーデータのみミュート処理を行うと、正常データとエラーデータの出力切り替え時にノイズが発生する。その回避手段として、出力切り替え時に音を徐々に変化させること(フェード処理)が行われる。そのため、衛星放送やワンセグ放送など電波状況の影響を受けエラーが頻繁に発生する環境下においても、できるだけ音声出力が行えるよう、出力データの切り替えが最適となる処理が望まれている。
【0003】
特許文献1及び2には、光ディスクに記録された1ビットオーディオ信号を再生するデジタル信号処理装置が開示されている。図13は、特許文献1及び2における1ビットオーディオ信号の再生装置の構成を示すブロック図である。
【0004】
当該再生装置は、光ディスク11に記録された信号を読み出す光学ピックアップ(PU)12、光ディスク11を回転させるスピンドルモータ(SPM)26、光学PU12を駆動制御するための駆動回路25とサーボ回路24、入力した信号を波形整形するRF回路13、入力した信号を復調し再生用のデジタル信号DRを得るとともに、復調できなかったデータの検出を行う第1信号処理部14、復調したデータにデコード処理を行い、1ビットデジタルオーディオデータを生成する第2信号処理部15、1ビットデジタルオーディオデータをアナログのオーディオ信号に変換する1ビットD/A変換器22、第1信号処理部14で復調された時間情報などのサブコード(Sub)を解読し、各部の制御を行うとともに、第2信号処理部へ制御信号CNTを供給し、デコード処理の開始、停止等の制御を行うシステムコントローラ27とそれに接続される表示部28、ユーザからの入力操作を受け取るキー操作部29を備える。
【0005】
また、第2信号処理部15は、第1信号処理部14から受け取ったエラーフラグfeを元に、エラーが発生した場合にデジタル信号DRに対してフェードを伴ったミュート処理を施し、一定のレートでデータ出力を行うために第1信号処理部14から入力されたデジタル信号DRとエラーフラグfeを格納しておくバッファ16と、デジタル信号DRをデコードするデコーダ17、デコードされたオーディオデータDAに対してミュートのためのフェード処理を行うフェード処理部18、デコーダ17がバッファ16から取得したデジタル信号DRよりも時間的に前のデータDdに含まれるエラーフラグfeの状態を判断し、エラー判断結果f'eを出力するエラーフラグ判断部20と、エラー判断結果f'eを元にフェード処理部18を制御するフェード制御部21を備える。さらに、フェード処理部18は、フェードのステップ幅をコントロールするアッテネータ(ATT)カウンタ19を有する。
【0006】
続いて、第1信号処理部14から第2信号処理部15の動作の流れを説明する。まず、第1信号処理部14は、駆動回路25を制御し、光ディスク11からオーディオデータを入力する。次に入力したオーディオデータを復調し再生用のデジタル信号DRを生成する。データ復調時にエラーがあった場合、エラーフラグfeを有効にし、エラーが無かった場合はエラーフラグfeを無効にする。そして、第1信号処理部14は、デジタル信号DRとエラーフラグfeをバッファ16へ格納する。
【0007】
次に、第2信号処理部15のエラー判断部20は、エラーフラグfeからエラーであるか否かを判定し、エラーと判定された場合、エラー判定フラグf'eを有効にし、フェード制御部21へ通知する。一方、エラーフラグ判別部20は、エラーと判定されない場合、エラー判定フラグf'eを無効にし、フェード制御部21へ通知する。
【0008】
続いて、フェード制御部21は、エラー判定フラグf'eが有効か否かを判定し、エラー判定フラグf'eが有効と判定された場合、ミュートフラグfmを有効にする。また、エラーフラグが一定期間無効か判定し、一定期間無効の場合はミュートフラグfmを無効にする。エラーフラグが有効から無効に変化して間もない間はミュートフラグfmを有効にしておく。
【0009】
その後、フェード処理部18は、エラー発生時、すなわちエラー判定フラグf'eが有効であるときには、フェード制御部21からのミュートフラグfm及びステップフラグfsに基づいて、再生停止時とは異なった速やかなミュートのためのフェード処理を行う。フェード処理部18は、再生停止時とエラー発生時でのミュートのためのフェード処理を異ならせるために、音量を制御するためのATTカウンタ19を内蔵している。このATTカウンタ19は、上記ミュートフラグfm、ステップフラグfs及び制御信号CNTによりカウントのためのステップ幅(刻み幅)を変える。ミュートフラグfm及びステップフラグfsが有効となると、フェード処理部18は、ATTカウンタ19を1.0から0.0まで比較的大きい刻み幅で、例えばカウントダウンまで3msecの時間がかかる様な刻み幅でカウントダウンし、0.0になったらカウントストップする。ATTカウンタ19のカウント値は乗算器によって音楽データDAに乗算される。
【特許文献1】特開2000−163888号公報
【特許文献2】特開2006−040529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1及び2では、オーディオ信号の復調時にエラーデータを検出し、復調データと共にエラーフラグをバッファに格納する。そして、エラーフラグが検出された時刻から所定時間前のオーディオ信号から一定間隔でフェード処理を行うことで、エラーデータを再生する時間帯には、ミュートされた状態とすることができる。
【0011】
しかしながら、特許文献1及び2におけるフェード処理は、あらかじめ設定された時間幅でATTカウンタを用いて行われているため、エラー発生時のフェード処理期間は一定値としている。また、オーディオ出力データは低信号レベル時にはATTカウンタと乗算するオーディオデータ信号に比例して、小さい出力レベル値になってしまうため、フェード処理期間の早い段階で音が聞こえなくなる。そのため、特許文献1及び2では、必要以上に音の聞こえない状態が長い時間続くという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様にかかるデジタルオーディオ信号処理装置は、デジタルオーディオ信号の目標時点に基づいてフェード処理を行うものであって、前記目標時点に応じて決定される所定期間における前記デジタルオーディオ信号のレベル値を検出し、当該レベル値に応じてフェード実施期間を算出するフェード実施期間算出部と、前記フェード実施期間に基づいて前記フェード処理を制御するフェード制御部とを備える。
【0013】
本発明の第2の態様にかかるデジタルオーディオ信号処理装置は、デジタルオーディオ信号の目標時点に基づいてフェードアウト処理又はフェードイン処理を行うものであって、前記目標時点に応じて決定される所定期間における前記デジタルオーディオ信号のレベル値を検出し、当該レベル値に応じて前記フェードアウト処理における処理開始タイミングあるいは前記フェードイン処理における処理終了タイミングを決定する処理タイミング決定部と、前記処理開始タイミングに基づいて前記フェードアウト処理あるいは前記処理終了タイミングに基づいて前記フェードイン処理を制御するフェード制御部とを備える。
【0014】
本発明の第3の態様にかかるデジタルオーディオ信号処理装置は、デジタルオーディオ信号の目標時点に基づいてフェード処理を行うものであって、前記目標時点に応じて決定される所定期間における前記デジタルオーディオ信号のレベル値を検出し、当該レベル値が所定の条件で前記フェード処理を行う際の基準値を超えない場合、前記フェード処理を行わないものである。
【0015】
本発明の第1の態様にかかるデジタルオーディオ信号処理方法は、デジタルオーディオ信号の目標時点に基づいてフェード処理を行うものであって、前記目標時点に応じて決定される所定期間における前記デジタルオーディオ信号のレベル値を検出し、当該レベル値に応じてフェード実施期間を算出するフェード実施期間算出ステップと、前記フェード実施期間に基づいて前記フェード処理を制御するフェード制御ステップとを備える。
【0016】
本発明の第2の態様にかかるデジタルオーディオ信号処理方法は、デジタルオーディオ信号の目標時点に基づいてフェードアウト処理又はフェードイン処理を行うものであって、前記目標時点に応じて決定される所定期間における前記デジタルオーディオ信号のレベル値を検出し、当該レベル値に応じて前記フェードアウト処理における処理開始タイミングあるいは前記フェードイン処理における処理終了タイミングを決定する処理タイミング決定ステップと、前記処理開始タイミングに基づいて前記フェードアウト処理あるいは前記処理終了タイミングに基づいて前記フェードイン処理を制御するフェード制御ステップとを備える。
【0017】
本発明の第3の態様にかかるデジタルオーディオ信号処理方法は、デジタルオーディオ信号の目標時点に基づいてフェード処理を行うものであって、前記目標時点に応じて決定される所定期間における前記デジタルオーディオ信号のレベル値を検出し、当該レベル値が所定の条件で前記フェード処理を行う際の基準値を超えない場合、前記フェード処理を行わないものである。
【0018】
上述した本発明のデジタルオーディオ信号処理装置及び方法によれば、例えば、デジタルオーディオ信号のエラーデータの発生箇所において、当該発生箇所から所定期間前のデジタルオーディオ信号のレベル値に応じたフェード実施期間を算出、又は、処理開始タイミング、もしくは、処理終了タイミングを決定することができるため、フェード処理における低信号レベル時におけるフェード実施期間を短くし、フェードアウト処理時には、処理開始を遅らせ、フェードイン処理時には、処理終了を早めることで、不要なフェード処理を減らし、音の聞こえる状態を長くすることができる。
【0019】
また、検出されるレベル値のうちに、所定の条件に基づくフェード処理を行う際の基準値を超えるものが存在しない場合は、フェード処理自体を行わないことで、音の聞こえる状態を長くすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、時系列データの目標時点に対して、データ状況に応じて最適なフェード開始時点を決定することで、必要最小限のフェード処理を行い、スムーズなオーディオ信号の再生を行うデジタルオーディオ信号処理装置、及び方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略する。
【0022】
発明の実施の形態1.
図1は、発明の実施の形態1にかかるデジタルオーディオ信号処理装置1の構成図を示す。デジタルオーディオ信号処理装置1は、時系列データであるデジタルオーディオ信号の入力を受け付け、当該デジタルオーディオ信号の中にエラーデータがある場合に、所定の間隔でフェードアウト処理を行うものである。すなわち、デジタルオーディオ信号処理装置1は、エラーデータが発生する時点(目標時点)に基づいてフェード処理を行う。
【0023】
デジタルオーディオ信号処理装置1は、デコーダ処理部110と、バッファ部111と、フェード実施期間算出部112と、ステップ幅算出部113と、開始アドレス算出部114と、フェード開始信号生成部115と、フェード処理部116と、D/A変換器117とを備える。
【0024】
デコーダ処理部110は、入力されたデジタルオーディオ信号データに対してデコード処理とエラー判定を行い、バッファ部111へオーディオ信号DRAを出力し、フェード実施期間算出部112と開始アドレス算出部114へエラーアドレスA1を出力(通知)する。
【0025】
バッファ部111は、記憶領域であり、デコーダ処理部110によりデコードされたオーディオ信号DRAを格納し、フェード処理部116へオーディオ信号DRAを出力し、処理対象のオーディオ信号DRAのアドレスであるリードアドレスA3をフェード開始信号生成部115へ出力する。
【0026】
フェード実施期間算出部112は、上述した目標時点に応じて決定される所定期間における各デジタルオーディオ信号DRAのレベル値を検出し、当該レベル値に応じて実際にフェードアウト処理を実施するフェード実施期間fe1を算出する。そして、算出されたフェード実施期間fe1をステップ幅算出部113と開始アドレス算出部114へ出力する。すなわち、フェード実施期間算出部112は、デコーダ処理部110からのエラーアドレスA1の通知を受け付け、バッファ部111からエラーアドレスA1に対応する時点以前のオーディオ信号DRAを取得し、取得したオーディオ信号DRAのレベル値と、所定の条件で前記フェード処理を行う際の基準値である基準レベルとに基づいて、フェード実施期間fe1を算出する。
【0027】
また、フェード実施期間算出部112は、検出されるレベル値のうち最大値であるピークレベルに基づいてフェード実施期間fe1を算出する。さらに、フェード実施期間算出部112は、ピークレベルが低いほどフェード実施期間を短く算出する。
【0028】
また、フェード実施期間算出部112は、目標時点に応じて決定される所定期間におけるデジタルオーディオ信号DRAのレベル値のうち、基準レベルを超えるレベル値の中から最大値をピークレベルとして検出し、基準レベルを超えるレベル値が存在しない場合、フェード実施期間を0と算出する。
【0029】
ステップ幅算出部113は、フェード実施期間fe1に基づいてフェード処理におけるデジタルオーディオ信号DRAの増減係数の更新差分値であるステップ幅Deを算出し、ステップ幅Deをフェード開始信号生成部115へ出力する。
【0030】
開始アドレス算出部114は、フェード実施期間fe1に基づいてフェード処理の開始箇所であるフェード処理開始アドレスA2を算出し、フェード開始信号生成部115へ出力する。
【0031】
フェード開始信号生成部115は、ステップ幅De及びフェード処理開始アドレスA2を受け付け、フェード処理起動命令とステップ幅Deを含んだフェード処理制御信号fcを生成し、フェード信号制御信号fcをフェード処理部116へ出力する。すなわち、フェード開始信号生成部115は、フェード処理制御信号fcに基づいて前記フェード処理を制御し、実行させる。
【0032】
フェード処理部116は、フェード処理中の出力をコントロールするATTカウンタ118を有し、ステップ幅DeからATTカウンタ118のカウンタAtの値を更新することによりフェード処理を行い、フェード処理後の出力信号DfをD/A変換器117へ出力する。
【0033】
D/A変換器117は、デジタル信号をアナログ信号に変換する。
【0034】
また、デジタルオーディオ信号処理装置1におけるフェード実施期間算出部112、及び、開始アドレス算出部114は、言い換えれば、目標時点に応じて決定される所定期間における前記デジタルオーディオ信号のレベル値を検出し、当該レベル値に応じてフェードアウト処理における処理開始タイミングを決定する処理タイミング決定部であると言える。そして、フェード開始信号生成部115は、当該処理開始タイミングに基づいてフェードアウト処理を制御するフェード制御部と言える。
【0035】
図1のエラーアドレスA1、フェード開始アドレスA2、及びリードアドレスA3は、バッファ部111に格納しているオーディオ信号DRAの格納しているアドレス値を示している。本発明の実施の形態1では、バッファ部111に格納したオーディオ信号DRAを格納アドレスに従い順次出力する構成になっているため、格納アドレス情報が出力する際の時間情報に対応している。
【0036】
以下、図1のデジタルオーディオ信号処理装置1の全体動作を、デコーダ処理部110にオーディオ信号が入力されるところからバッファ部111にオーディオ信号を格納するまでと、バッファ部111からオーディオ信号を取得し、D/A変換器117から外部へオーディオ信号を出力するまでの動作に分けて説明する。
【0037】
図2は、データがデコーダ処理部110に入力されバッファ部111にデータを格納するまでの処理、すなわち、本発明の実施の形態1にかかるデジタルオーディオ信号のデコードからバッファ部へデータを格納する処理を示すフローチャート図である。
【0038】
まず、フェード実施期間算出部112に最大フェード期間が設定される(S301)。次に、オーディオ信号DRAがデコーダ処理部110に入力される(S302)。そして、デコーダ処理部110は、オーディオ信号DRAのデコード処理を行う(S303)。
【0039】
続いて、デコーダ処理部110は、エラー発生の有無判定を行う(S304)。エラーが発生していない場合は、S308へ進む。エラーが発生した場合は、フェード実施期間算出部112は、フェード実施期間fe1を算出する(S305)。次に、ステップ幅算出部113は、算出されたフェード実施期間fe1から、ステップ幅Deを設定する(S306)。そして、開始アドレス算出部114は、エラー時刻からフェード実施期間を引いた値をフェード開始時刻として設定する(S307)。
【0040】
その後、バッファ部111にデコード処理が行われたデータが格納される(S308)。その際、エラー発生時のデータは0埋めして格納される。そして、処理終了の判定が行われる(S309)。処理終了でない場合、ステップS302乃至S309までの処理が繰り返される。
【0041】
図3は、バッファ部111からオーディオ信号を取得し、D/A変換器117から外部へオーディオ信号を出力するまでの処理、すなわち、本発明の実施の形態1にかかるフェード処理を示すフローチャート図である。
【0042】
まず、初期設定として、フェード状態フラグをOFFに、カウンタAtを1に設定される(S401)。次に、フェード処理部116は、バッファ部111からオーディオ信号DRAを受け取る(S402)。そして、フェード開始信号生成部115は、フェード開始時刻が設定されているか判定を行う(S403)。ここで、フェード開始時刻が設定されていない場合は、S407へ進む。
【0043】
ステップS403において、フェード開始時刻が設定されている場合、フェード開始信号生成部115は、ステップS402でデータを取得した際の出力データ時刻と、設定されているフェード開始時刻を比較する(S404)。ここで、出力データ時刻とフェード開始時刻が一致しない場合、S407へ進む。
【0044】
ステップS404において、出力データ時刻とフェード開始時刻が一致した場合、フェード開始信号生成部115は、フェード処理部116へフェード処理制御信号fcを出力する(S405)。そして、フェード開始信号生成部115は、フェード状態フラグをONに設定する(S406)。
【0045】
その後、フェード処理部116は、フェード状態フラグがONか判定する(S407)。フェード状態フラグがONでない場合、S411へ進む。フェード状態フラグがONである場合、フェード処理部116は、カウンタAtをステップ幅Deの値で更新する(S408)。
【0046】
その後、フェード処理部116は、カウンタAtの値を判定する(S409)。カウンタAtが0から1の範囲である場合、S411へ進む。カウンタAtが0から1の範囲でない場合、フェード状態フラグをOFFに、カウンタAtを1にする(S410)。
【0047】
そして、フェード処理部116は、バッファ部111から得たオーディオ信号DRAにカウンタAtの値を乗算し、D/A変換器117を介して外部へ出力する(S411)。その後、処理終了の判定を行う(S412)。終了でない場合はステップS402乃至S412の処理が繰り返し実行される。
【0048】
図4は、図2のステップS305のフェード実施期間算出処理の詳細を示すフローチャート図である。まず、フェード実施期間算出部112は、パラメータとして、データ検索位置をエラー位置から最大フェード期間分を引いた位置に、検出レベルの値を0に、基準レベルの値をレベル値の最大値に、データ検索フラグを基準レベル内に設定する(S501)。
【0049】
次に、フェード実施期間算出部112は、データ検索フラグが基準レベル内か判定する(S502)。データ検索範囲が基準レベル内であった場合、フェード実施期間算出部112は、基準レベルの値とデータ検索位置の信号レベル値を比較する(S503)。ここで、基準レベルの値がデータ検索位置の信号レベル値以上の場合、フェード実施期間算出部112は、次のデータ検索位置における信号レベル値を基準レベルの値に設定する(S504)。
【0050】
また、ステップS503において、データ検索位置の信号レベル値が基準レベルの値より大きい場合、フェード実施期間算出部112は、データ検索フラグを基準レベル外に設定する(S505)。そして、フェード実施期間算出部112は、検出レベルの値をデータ検索位置の信号レベル値に設定する(S506)。
【0051】
ステップS502において、データ検索フラグが基準レベル内でない場合、フェード実施期間算出部112は、検出レベルの値とデータ検索位置の信号レベル値を比較する(S507)。ここで、データ検索位置の信号レベルが検出レベルよりも大きい場合、フェード実施期間算出部112は、検出レベルの値をデータ検索位置の信号レベル値に設定する(S506)。
【0052】
その後、フェード実施期間算出部112は、データ検索位置を次データ検索の位置に移動させる(S508)。そして、フェード実施期間算出部112は、データ検索位置がエラー位置と等しいか否かを判定する(S509)。ここで、データ検索位置がエラー位置と等しくない場合、ステップS502へ戻る。また、データ検索位置がエラー位置と等しい場合、フェード実施期間算出部112は、フェード実施期間fe1を式(1)により算出する(S510)。
フェード実施期間 = 検出レベル × 最大フェード期間 / 最大信号レベル
【0053】
・・・(1)
【0054】
図5(a)、(b)、及び(c)は、デジタルオーディオ信号によるフェード実施期間の模式例を示す図である。ここで、波形ANは、フェード処理部116に入力されているオーディオ信号DRAをアナログイメージ化したものである。また、時刻T2はエラー発生位置を示し、時刻T1はエラー位置より最大フェード期間femaxを引いた位置を示す。時刻T1の位置より最大信号レベルMAXと時刻T2の位置の信号レベル0を結ぶ線が基準レベルを示す線であり、データ検索位置での基準レベルの値とは、前記基準レベルの線が示す信号レベル値をいう。
【0055】
図5(a)では、時刻T1の位置よりデータ検索を時刻T2まで、データ検索位置でのオーディオ信号の信号レベル値と、データ検索位置での基準レベルの値との比較を行い、データ検索位置での基準レベルを超えているオーディオ信号の信号レベルの中で、信号レベル値の最大値である、時刻T3のときの信号レベル値を検出レベルの値とする。
【0056】
ここで、基準レベルを示す線に対して、時刻T3の時の信号レベル値から水平に線を延ばした際に、基準レベルの線と交差する点の時刻T4がフェード開始時刻となり、時刻T4から時刻T2までの期間fe1aがフェード実施期間となる。
【0057】
図5(b)では、図5(a)同様に比較を行い、時刻T5のときの信号レベル値を検出レベルの値とする。ここで、基準レベルを示す線に対して、時刻T5の時の信号レベル値から水平に線を延ばした際に、基準レベルの線と交差する点の時刻T6がフェード開始時刻となり、時刻T6から時刻T2までの期間fe1bがフェード実施期間となる。
【0058】
図5(c)では、時刻T1の位置よりデータ検索を時刻T2まで行い、データ検索位置でのオーディオ信号の信号レベル値と、データ検索位置での基準レベルの値との比較を行い、基準レベルの値を超えている信号レベル値がないため、検出レベルの値は0となる。そのため、時刻T2がフェード開始時刻となり、フェード実施期間は0となる。
【0059】
図6は、本発明のフェード処理結果を説明するための模式図である。特に、図6では、オーディオ信号がMax値の50%一定である場合のオーディオ信号出力を示している。そして、図4のフェード実施期間算出処理を適用することにより、フェード実施期間は、時刻T7からT2の期間となる。
【0060】
時刻T1から時刻T7までの期間feoは、フェード処理を行わず原音を出力し、時刻T7からフェード処理を開始、時刻T2でフェード処理が完了する。このように、オーディオ信号のレベル値により最適なフェード期間が設定されるため、原音の出力可能期間を増やすことができ、音の再現性が向上する。
【0061】
本発明の実施の形態1では、カウンタAtの値をステップ幅Deの値で更新する方法で、減衰量を決定しフェード処理を行っているが、カウンタAtの値を(2)式のように単調減少する任意の関数f(t)を用いて減衰量を求めることにより、様々なフェード処理に対応することもできる。
At = f(t) …(2)
【0062】
このように、本発明の実施の形態1にかかるデジタルオーディオ信号処理装置1は、フェード実施期間算出部112、ステップ幅算出部113、開始アドレス算出部114、及びフェード開始信号生成部115を有してフェード処理を行うことを特徴とする。
【0063】
また、デジタルオーディオ信号処理装置1は、デジタルAV機器等に適用可能である。その際、フェード実施期間算出部112において、図4のステップS501乃至S509を用いてエラーデータの位置から最大フェード期間中のオーディオ信号ピークレベルを検出し、ステップS510を用いて検出したオーディオ信号ピークレベル値からフェード実施期間を算出する。
【0064】
次に、ステップ幅算出部113で図2のステップS306を用いてステップ幅を算出し、開始アドレス算出部114でステップS307を用いてフェード開始アドレスを算出する。そして、ステップ幅とフェード開始アドレスからフェード開始信号生成部115で、図3のステップS401乃至S411を用いてバッファ16のATTカウンタ118を制御し、フェード処理を行うことができる。
【0065】
また、フェード実施期間算出部112では、図4のステップS502を用いて、オーディオ信号レベルが基準レベル外かを判断し、基準レベル外の場合は、ステップS507を用いて信号レベルをサーチして、オーディオ信号ピークレベルを求めることができる。
【0066】
以上のことより、発明の実施の形態1では、低信号レベル時におけるフェード期間を短縮することにより、音の聞こえない状態が長くなるという問題を改善することができる。それは、フェード実施期間算出部112で、エラーデータの位置から最大フェード期間中のオーディオ信号ピークレベルを検出し、検出したオーディオ信号ピークレベル値によって、フェード実施期間を算出しているからである。
【0067】
発明の実施の形態2.
本発明の実施の形態2では、ミュート処理が行われた後にフェードイン処理の時間を短くすることによって、より早く正常な音量に復旧することができるデジタルオーディオ信号処理装置を説明する。尚、本発明の実施の形態2にかかるデジタルオーディオ信号処理装置は、図1のデジタルオーディオ信号処理装置1と同様の構成であるため、図示及び説明は省略する。
【0068】
図7は、本発明の実施の形態2にかかるフェードイン処理におけるデジタルオーディオ信号のデコードからバッファ部へデータを格納する処理を示すフローチャート図である。尚、図2に示したフローチャートと同じ処理は同じ番号を付加し、説明を省略する。
【0069】
まず、フェード実施期間算出部112に最大フェード期間が設定されるとともに、サンプルカウントの値が0に設定される(S601)。次に、オーディオ信号DRAがデコーダ処理部110に入力される(S302)。そして、デコーダ処理部110は、オーディオ信号DRAのデコード処理を行う(S303)。
【0070】
続いて、デコーダ処理部110は、デコードした結果、エラーデータから正常データに変化したか判定を行う(S602)。ここで、エラーデータから正常データに変化していない場合、ステップS604へ進む。また、エラーデータから正常データに変化した場合、フェード実施期間算出部112は、サンプルカウントの値に最大フェード期間中の乗算回数を設定する(S603)。
【0071】
その後、フェード実施期間算出部112は、サンプルカウントが0より大きいか否かを判定する(S604)。ここで、サンプルカウントが0の場合、ステップS308へ進む。また、サンプルカウントが0より大きい場合、フェード実施期間算出部112は、サンプルカウントを1つ減らす(S605)。
【0072】
そして、フェード実施期間算出部112は、ステップS605の結果サンプルカウントが0になったか判定を行う(S606)。ここで、サンプルカウントが0以外の場合、ステップS308へ進む。また、サンプルカウントが0になった場合、フェード実施期間算出部112は、バッファ部111に格納された、エラーから正常に変化してから最大フェード期間までのオーディオ信号からフェード実施期間fe1を算出する(S607)。次に、ステップ幅算出部113は、ステップ幅Deを設定する(S306)。そして、開始アドレス算出部114は、フェード開始時刻設定を行う(S608)。
【0073】
その後、バッファ部111にデコード処理が行われたデータが格納される(S308)。その際、エラー発生時のデータは0埋めして格納される。そして、処理終了の判定が行われる(S309)。処理終了でない場合、ステップS302乃至S309までの処理を繰り返される。
【0074】
図8は、図7のステップS607のフェードイン時におけるフェード実施期間算出処理の詳細を示すフローチャート図である。尚、図4に示したフローチャートと同じ処理は同じ番号を付加し、説明を省略する。
【0075】
まず、フェード実施期間算出部112は、パラメータとして、データ検索位置をエラーデータから正常データに変化した位置に、検出レベルの値を0に、基準レベルの値を0に、データ検索フラグを基準レベル内に設定する(S701)。
【0076】
次に、フェード実施期間算出部112は、図4と同様にステップS502乃至S508の処理を行う。そして、ステップS508の後、フェード実施期間算出部112は、データ検索位置がデータ出力開始位置+最大フェード期間と等しいか否かを判定する(S702)。ここで、データ検索位置がエラー位置と等しくない場合、ステップS502へ戻る。また、データ検索位置がエラー位置と等しい場合、フェード実施期間算出部112は、ステップS510と同様の処理を行う。
【0077】
以上のことより、発明の実施の形態2では、フェード実施期間算出部112で、エラーからの復帰データの位置から最大フェード期間中のオーディオ信号ピークレベルを検出し、検出したオーディオ信号ピークレベル値によって、フェード実施期間を算出する。次に、フェード実施期間からステップ幅算出部113でステップ幅を、開始アドレス算出部114でフェード開始アドレスを算出し、ステップ幅と開始アドレスからフェード開始信号生成部115がフェード処理部116のATTカウンタ19を制御することで、エラーからの復帰時もエラー発生時と同様に低信号レベル時におけるフェード期間を短縮することができる。また、従来よりも早くフェードを完了させることで原音を出力する期間が長くなり音の再現性が向上する。
【0078】
すなわち、発明の実施の形態2では、フェードイン処理においても、フェードアウト処理のフェード実施期間算出処理を適用することで、本発明の実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0079】
発明の実施の形態3.
本発明の実施の形態3では、本発明の実施の形態1にかかるデジタルオーディオ信号処理装置1に改良を加え、デジタルオーディオ信号にエラーフラグfeを付加することで、エラー発生位置とフェード開始位置を算出することを特徴とする。
【0080】
図9は、本発明の実施の形態3にかかるデジタルオーディオ信号処理装置2の構成を示すブロック図である。デジタルオーディオ信号処理装置2は、図1のデコーダ処理部110と、バッファ部111と、フェード実施期間算出部112と、開始アドレス算出部114と、フェード開始信号生成部115とが、デコーダ処理部210と、バッファ部211と、フェード実施期間算出部212と、開始タイミング生成部214と、フェード開始信号生成部215とに置き換わったものである。
【0081】
デコーダ処理部210は、入力されたデジタルオーディオ信号データに対してデコード処理とエラー判定を行い、バッファ部211へオーディオ信号DRAとエラーフラグfeを出力する。
【0082】
バッファ部211は、記憶領域であり、デコーダ処理部210によりデコードされたオーディオ信号DRAを格納し、フェード実施期間算出部212とフェード処理部116にオーディオ信号DRAを出力する。
【0083】
フェード実施期間算出部212は、フェード実施期間fe1の算出を行い、フェード実施期間felをステップ幅算出部113と開始タイミング生成部214へ出力する。
【0084】
開始タイミング生成部214は、フェード開始タイミング信号fstを生成し、フェード開始信号生成部A215へ出力する。
【0085】
フェード開始信号生成部A215は、ステップ幅算出部113から入力されるステップ幅Deと開始タイミング生成部214より入力されるフェード開始タイミング信号fstを受け付け、フェード処理起動命令とステップ幅Deを含んだフェード処理制御信号fcを生成し、フェード信号制御信号fcをフェード処理部116に出力する。以降の構成は、本発明の実施の形態1と同様のため、説明を省略する。
【0086】
図10は、本発明の実施の形態3にかかるフェード処理のタイミングチャート図である。まず、デコーダ処理部210は、入力されたオーディオ信号をデコードしてオーディオ信号DRAとして出力する。
【0087】
ここで、オーディオ信号D0は正常なデータであり、オーディオ信号D1はエラーデータとする。また、時刻T1から時刻T2の期間は、デコーダ処理部210でデコード処理したオーディオ信号DRAがフェード処理により出力されるまでの期間である。また、あらかじめ設定している最大フェード期間も時刻T1から時刻T2の期間である。
【0088】
さらに、フェード実施期間算出部212がバッファ部A211に格納されているエラーフラグfeが有効になったことを検知した時刻を時刻T1とする。このとき、フェード終了時刻は、エラーフラグfeが有効になった時刻T1から実際の出力を出すまでの期間を足した時刻T2であるとする。
【0089】
次に、フェード実施期間算出部212は、時刻T2から最大フェード期間を差し引いた時刻T1を設定する。そして、フェード実施期間算出部212は、時刻T1から時刻T2の期間中のフェード処理前オーディオ信号からオーディオ信号レベルの最大値を検出し、検出レベルからフェード実施期間fe1を算出する。尚、この動作は、本発明の実施の形態1と同じなので詳細な説明を省略する。
【0090】
その後、開始タイミング生成部214は、オーディオ信号をデコードしたときの時刻T1から外部へ出力するときの時刻T2までの期間からフェード実施期間fe1を引いた期間Twを待ち、時刻T8にフェード開始タイミング信号fstを有効にする。
【0091】
フェード開始信号生成部A215は、フェード開始タイミング信号fstと算出したステップ幅Deから、フェード処理を実施する。その後、D/A変換器117は、フェード処理後のアナログ出力を出力する。
【0092】
このように、本発明の実施の形態3では、開始タイミング生成部214でフェード開始までの期間Twを待つだけよく、特許文献1及び2のようにオーディオ信号が出力されるたびにタイミングの監視や同期合わせ用比較機能を行う必要がないため、装置の構成が簡単になる。つまり、発明の実施の形態3は、特許文献1及び2に改良を加えることでも適用可能である。
【0093】
以上のように、発明の実施の形態3では、オーディオ信号が出力されるたびにタイミングの監視や同期合わせ用比較を行う必要がないため、回路規模を小さくすることができる。それは、アドレスではなく、エラーフラグfeとデコードから出力するまでの遅延値を用いて、エラー発生位置とフェード開始位置を算出するからである。
【0094】
発明の実施の形態4.
本発明の実施の形態4では、エラー位置情報に代えてフェードアウト処理又はフェードイン処理の開始位置の指定情報をフェード実施期間算出部へ入力し、フェード処理を行うことを特徴とする。
【0095】
本発明の実施の形態4は、例えば、図1のデコーダ処理部110において、サンプリング周波数変化時や、AV同期時などオーディオ信号内の情報を元に任意のフェード処理開始位置又はタイミングの指定情報の入力を受け付け、当該指定情報に対応するアドレスをエラーアドレスA1に代えて、フェード実施期間算出部112への入力とすることで、本発明の実施の形態1と同様の構成で実現可能となる。
【0096】
以上のように、本発明の実施の形態4では、エラー発生以外に、サンプリング周波数変化時や、AV同期時などオーディオ信号の指定位置からのフェードアウト処理又はフェードイン処理においても、フェード期間を最適化できる。それは、エラーアドレスA1に代えてフェードアウト処理又はフェードイン処理を開始したいアドレスをフェード実施期間算出部112へ出力することによりフェード実施期間を算出しているからである。
【0097】
発明の実施の形態5.
本発明の実施の形態5では、本発明の実施の形態1にかかるデジタルオーディオ信号処理装置1に改良を加え、テーブルデータ格納部を追加し、フェード処理時のカウンタAtに代えてテーブルデータを使用してフェード処理を行うことを特徴とする。
【0098】
図11は、本発明の実施の形態5にかかるデジタルオーディオ信号処理装置3の構成を示すブロック図である。デジタルオーディオ信号処理装置3は、図1のフェード実施期間算出部112と、フェード処理部116と、ATTカウンタ118とが、フェード実施期間算出部312と、フェード処理部316と、テーブルデータ保持部301と、開始タイミング生成部214と、フェード開始信号生成部215とに置き換わり、テーブルデータ格納部300を加えたものである。
【0099】
テーブルデータ格納部300は、フェード処理におけるデジタルオーディオ信号の増減係数値を予め複数の所定期間ごとに格納する。例えば、テーブルデータ格納部300は、図12に示すフェード期間ごとのフェードアウトにおけるカウンタAtの値をテーブルデータとしてあらかじめ格納している。
【0100】
フェード実施期間算出部312は、エラーデータの位置から最大フェード期間中のオーディオ信号ピークレベルを検出するときに用いる基準レベルの計算をテーブルデータ格納部300からのテーブルデータTa1を用いる。例えば、最大フェード期間を100msと設定している場合、フェード実施期間算出部312は、テーブルデータ格納部300から図12にある100ms用のテーブルデータTa1を取得して、テーブルデータTa1に基づいて基準レベルを算出し、ステップ幅算出部113及び開始アドレス算出部114に加え、テーブルデータ格納部300へ出力する。また、フェード実施期間算出部312は、フェードイン処理時において、テーブルデータ格納部300からフェード実施期間fe1に応じたテーブルデータTa1を取得し、テーブルデータTa1に基づいてフェードイン処理時の基準レベルを算出し、当該基準レベルを用いてフェード実施期間fe1を算出し、同様に、テーブルデータ格納部300へ出力する。
【0101】
また、テーブルデータ格納部300は、フェード実施期間算出部312から入力されたフェード実施期間fe1に対応するテーブルデータTa2をフェード処理部316へ出力し、テーブルデータ保持部301へフェード期間毎に格納する。尚、テーブルデータ格納部300は、テーブルデータ格納部300の中に、フェード実施期間fe1に対応するフェード期間がない場合、近いものを選択する。例えば、フェード実施期間fe1が40msの場合は、図12にある50ms用のテーブルデータを選択してフェード処理部316へ送信する。尚、テーブルデータ格納部300に格納されるテーブルデータは、必要に応じて、更新可能である。
【0102】
フェード処理部116は、フェード処理制御信号fcに基づいてフェード処理を開始する際、カウンタAtの代わりにテーブルデータ保持部301に格納されたテーブルデータTa2を用いる。その他の構成及び処理は、本発明の実施の形態1と同様のため、説明を省略する。
【0103】
このように、フェード処理における基準レベルが複雑な式で表される場合、複雑な式を計算することなく、予め算出したおいたテーブルデータを用いることにより、処理を実行できるため処理量を削減することができる。
【0104】
以上のように、発明の実施の形態5では、カウンタAtの計算量の削減ができることである。それは、テーブルデータ格納部を追加し、フェード処理時のカウンタAtに代えてテーブルデータを予め持ち、カウンタAtの値をテーブルデータより参照するからである。
【0105】
その他の発明の実施の形態.
さらに、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、既に述べた本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の実施の形態1にかかるデジタルオーディオ信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかるデジタルオーディオ信号のデコードからバッファ部へデータを格納する処理を示すフローチャート図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかるフェード処理を示すフローチャート図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかるフェード実施期間算出処理を示すフローチャート図である。
【図5】(a)、(b)、及び(c)は、デジタルオーディオ信号によるフェード実施期間の模式例を示す図である。
【図6】本発明のフェード処理結果を説明するための模式図である。
【図7】本発明の実施の形態2にかかるデジタルオーディオ信号のデコードからバッファ部へデータを格納する処理を示すフローチャート図である。
【図8】本発明の実施の形態2にかかるフェード実施期間算出処理を示すフローチャート図である。
【図9】本発明の実施の形態3にかかるデジタルオーディオ信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態3にかかるフェード処理のタイミングチャート図である。
【図11】本発明の実施の形態5にかかるデジタルオーディオ信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施の形態5にかかるテーブルデータ格納部が格納するテーブルデータの例である。
【図13】関連する技術のオーディオディスクプレーヤの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0107】
1 デジタルオーディオ信号処理装置
110 デコーダ処理部
111 バッファ部
112 フェード実施期間算出部
113 ステップ幅算出部
114 開始アドレス算出部
115 フェード開始信号生成部
116 フェード処理部
117 D/A変換器
118 ATTカウンタ
2 デジタルオーディオ信号処理装置
210 デコーダ処理部
211 バッファ部
212 フェード実施期間算出部
214 開始タイミング生成部
215 フェード開始信号生成部
3 デジタルオーディオ信号処理装置
312 フェード実施期間算出部
316 フェード処理部
301 テーブルデータ保持部
300 テーブルデータ格納部
11 光ディスク
12 光学PU
13 RF回路
14 第1信号処理部
15 第2信号処理部
16 バッファ
17 デコーダ
18 フェード処理部
19 ATTカウンタ
20 エラーフラグ判別部
21 フェード制御部
22 1ビットD/A変換器
23 出力端子
24 サーボ回路
25 駆動回路
26 SPM
27 システムコントローラ
28 表示部
29 Key
DRA オーディオ信号
A1 エラーアドレス
A2 フェード開始アドレス
A3 リードアドレス
fe1 フェード実施期間
De ステップ幅
fc フェード処理制御信号
Df 出力信号
AN 波形
T1 時刻 T2 時刻 T3 時刻 T4 時刻 T5 時刻 T6 時刻
T7 時刻
femax 最大フェード期間
fe1a フェード実施期間
fe1b フェード実施期間
fe0 期間
fe エラーフラグ
fst フェード開始タイミング信号
Ta1 テーブルデータ
Ta2 テーブルデータ
DR デジタル信号
Dd データ
D'R デジタル信号
DA オーディオデータ
f'e エラー判断結果
fm ミュートフラグ
fs ステップフラグ
CNT 制御信号
Sub サブコード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルオーディオ信号の目標時点に基づいてフェード処理を行うデジタルオーディオ信号処理装置であって、
前記目標時点に応じて決定される所定期間における前記デジタルオーディオ信号のレベル値を検出し、当該レベル値に応じてフェード実施期間を算出するフェード実施期間算出部と、
前記フェード実施期間に基づいて前記フェード処理を制御するフェード制御部とを備えるデジタルオーディオ信号処理装置。
【請求項2】
前記フェード実施期間算出部は、検出されるレベル値のうち最大値であるピークレベルに基づいてフェード実施期間を算出することを特徴とする請求項1に記載のデジタルオーディオ信号処理装置。
【請求項3】
前記フェード実施期間算出部は、前記ピークレベルが低いほどフェード実施期間を短く算出することを特徴とする請求項2に記載のデジタルオーディオ信号処理装置。
【請求項4】
前記フェード実施期間算出部は、前記所定期間における前記デジタルオーディオ信号のレベル値のうち、所定の条件で前記フェード処理を行う際の基準値を超えるレベル値の中から前記ピークレベルを検出することを特徴とする請求項2又は3に記載のデジタルオーディオ信号処理装置。
【請求項5】
前記フェード実施期間算出部は、前記基準値を超えるレベル値が存在しない場合、フェード実施期間を0と算出することを特徴とする請求項4に記載のデジタルオーディオ信号処理装置。
【請求項6】
前記デジタルオーディオ信号処理装置は、
前記フェード実施期間に基づいて前記フェード処理における前記デジタルオーディオ信号の増減係数の更新差分値であるステップ幅を算出するステップ幅算出部と、
前記フェード実施期間に基づいて前記フェード処理の開始箇所を算出する開始箇所算出部とをさらに備え、
前記フェード制御部は、前記ステップ幅及び前記開始箇所を含めたフェード処理制御信号を生成し、当該フェード処理制御信号に基づいて前記フェード処理を実行させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のデジタルオーディオ信号処理装置。
【請求項7】
前記デジタルオーディオ信号処理装置は、
前記フェード処理における前記デジタルオーディオ信号の増減係数値を予め複数の所定期間ごとに格納する格納部をさらに備え、
前記フェード実施期間算出部は、前記格納部から前記所定期間に対応する増減係数値を取得して前記フェード処理における基準レベルを算出し、当該基準レベルを用いて前記ピークレベルを検出し、
前記フェード制御部は、前記格納部に格納された前記フェード実施期間に対応する増減係数値に基づいて前記フェード処理を制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のデジタルオーディオ信号処理装置。
【請求項8】
デジタルオーディオ信号の目標時点に基づいてフェードアウト処理又はフェードイン処理を行うデジタルオーディオ信号処理装置であって、
前記目標時点に応じて決定される所定期間における前記デジタルオーディオ信号のレベル値を検出し、当該レベル値に応じて前記フェードアウト処理における処理開始タイミングあるいは前記フェードイン処理における処理終了タイミングを決定する処理タイミング決定部と、
前記処理開始タイミングに基づいて前記フェードアウト処理あるいは前記処理終了タイミングに基づいて前記フェードイン処理を制御するフェード制御部とを備えるデジタルオーディオ信号処理装置。
【請求項9】
デジタルオーディオ信号の目標時点に基づいてフェード処理を行うデジタルオーディオ信号処理装置であって、
前記目標時点に応じて決定される所定期間における前記デジタルオーディオ信号のレベル値を検出し、当該レベル値が所定の条件で前記フェード処理を行う際の基準値を超えない場合、前記フェード処理を行わないことを特徴とするデジタルオーディオ信号処理装置。
【請求項10】
前記目標時点は、前記デジタルオーディオ信号のデコード処理時にエラーが発生した時点とすることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のデジタルオーディオ信号処理装置。
【請求項11】
前記目標時点は、エラーアドレスの通知を受け付け、当該エラーアドレスに該当するデジタルオーディオ信号の時点とすることを特徴とする請求項10に記載のデジタルオーディオ信号処理装置。
【請求項12】
デジタルオーディオ信号の目標時点に基づいてフェード処理を行うデジタルオーディオ信号処理方法であって、
前記目標時点に応じて決定される所定期間における前記デジタルオーディオ信号のレベル値を検出し、当該レベル値に応じてフェード実施期間を算出するフェード実施期間算出ステップと、
前記フェード実施期間に基づいて前記フェード処理を制御するフェード制御ステップとを備えるデジタルオーディオ信号処理方法。
【請求項13】
前記フェード実施期間算出ステップは、検出されるレベル値のうち最大値であるピークレベルに基づいてフェード実施期間を算出することを特徴とする請求項12に記載のデジタルオーディオ信号処理方法。
【請求項14】
前記フェード実施期間算出ステップは、前記ピークレベルが低いほどフェード実施期間を短く算出することを特徴とする請求項13に記載のデジタルオーディオ信号処理方法。
【請求項15】
前記フェード実施期間算出ステップは、前記所定期間における前記デジタルオーディオ信号のレベル値のうち、所定の条件で前記フェード処理を行う際の基準値を超えるレベル値の中から前記ピークレベルを検出することを特徴とする請求項13又は14に記載のデジタルオーディオ信号処理方法。
【請求項16】
前記フェード実施期間算出ステップは、前記基準値を超えるレベル値が存在しない場合、フェード実施期間を0と算出することを特徴とする請求項15に記載のデジタルオーディオ信号処理方法。
【請求項17】
前記デジタルオーディオ信号処理方法は、
前記フェード実施期間に基づいて前記フェード処理における前記デジタルオーディオ信号の増減係数の更新差分値であるステップ幅を算出するステップ幅算出ステップと、
前記フェード実施期間に基づいて前記フェード処理の開始箇所を算出する開始箇所算出ステップとをさらに備え、
前記フェード制御ステップは、前記ステップ幅及び前記開始箇所を含めたフェード処理制御信号を生成し、当該フェード処理制御信号に基づいて前記フェード処理を実行させることを特徴とする請求項12乃至16のいずれか1項に記載のデジタルオーディオ信号処理方法。
【請求項18】
前記デジタルオーディオ信号処理方法は、
前記フェード処理における前記デジタルオーディオ信号の増減係数値を予め複数の所定期間ごとに格納する格納部をさらに備え、
前記フェード実施期間算出ステップは、前記格納部から前記所定期間に対応する増減係数値を取得して前記フェード処理における基準レベルを算出し、当該基準レベルを用いて前記ピークレベルを検出し、
前記フェード制御ステップは、前記格納部に格納された前記フェード実施期間に対応する増減係数値に基づいて前記フェード処理を制御することを特徴とする請求項12乃至17のいずれか1項に記載のデジタルオーディオ信号処理方法。
【請求項19】
デジタルオーディオ信号の目標時点に基づいてフェードアウト処理又はフェードイン処理を行うデジタルオーディオ信号処理方法であって、
前記目標時点に応じて決定される所定期間における前記デジタルオーディオ信号のレベル値を検出し、当該レベル値に応じて前記フェードアウト処理における処理開始タイミングあるいは前記フェードイン処理における処理終了タイミングを決定する処理タイミング決定ステップと、
前記処理開始タイミングに基づいて前記フェードアウト処理あるいは前記処理終了タイミングに基づいて前記フェードイン処理を制御するフェード制御ステップとを備えるデジタルオーディオ信号処理方法。
【請求項20】
デジタルオーディオ信号の目標時点に基づいてフェード処理を行うデジタルオーディオ信号処理方法であって、
前記目標時点に応じて決定される所定期間における前記デジタルオーディオ信号のレベル値を検出し、当該レベル値が所定の条件で前記フェード処理を行う際の基準値を超えない場合、前記フェード処理を行わないことを特徴とするデジタルオーディオ信号処理方法。
【請求項21】
前記目標時点は、前記デジタルオーディオ信号のデコード処理時にエラーが発生した時点とすることを特徴とする請求項12乃至20のいずれか1項に記載のデジタルオーディオ信号処理方法。
【請求項22】
前記目標時点は、エラーアドレスの通知を受け付け、当該エラーアドレスに該当するデジタルオーディオ信号の時点とすることを特徴とする請求項21に記載のデジタルオーディオ信号処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−289385(P2009−289385A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144074(P2008−144074)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】