説明

デジタル信号処理装置及びデータストリーム処理方法

【課題】 ネットワーク等を介して受信したTTSのように、タイムスタンプとPCRが互いに同期していないTTSを、単一のクロック発振器を用いて再生することが可能となるTTSに変換することである。
【解決手段】 タイムスタンプ同期化部12は、入力されたTTS中のTSパケットに付与されたタイムスタンプを、前記TTS中のPCRに同期した値に書き換え、同期化TTSを提供する。カウンタ14及び16は共にSTC発生部15により発生されたクロックを計数する。タイムスタンプ同期転送部13は、前記書き換えられたタイムスタンプとカウンタ14のカウント値に基づいて、前記同期化TTS中のTSパケットを出力する。このTSパケットはデマルチプレクス部を介してデコード部19、20に供給され、カウンタ16の値に基づくタイミングでデコードされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル放送又は通信ネットワークを介して送信されたデータストリームを受信するデジタル信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、CSやBS等のデジタル衛星放送あるいは地上波デジタル放送が一般的になっている。これらデジタル放送により、大画面かつ鮮明な映像を一般家庭において視聴することができる。更に視聴者参加型のインタラクティブ(対話型)放送、データ放送などが現実化しており、これまでの音声と映像による放送に加えて、天気予報、株式情報、各種ニュースなどの情報がデジタル化されて放送されるようになった。
【0003】
デジタル放送を受信して得られるTS(transport stream)をデコードあるいはHDD(hard disk drive)等の記録媒体に記録する場合、TS中のTSパケットには、受信機固有の発振器により発生したクロック信号に基づいて生成されたタイムスタンプが付与され、TTS(time stamped TS)としてデコーダあるいはHDDに提供される。TSを構成するTSパケットには、時間情報であるPCR(program clock reference)を含むPCRパケットが100mSに1つ以上予め含まれている。
【0004】
下記特許文献1にはTSを受信した際に、PCRの時間情報に同期したタイムスタンプをTSパケットに付与するタイムスタンプ付与装置が開示されている。
【0005】
最近ではデジタル放送に加え、インターネット又は家庭内LANのような通信ネットワークを介してネットワーク上のサーバから映像コンテンツを含む符号化ストリームを受信し、該符号化ストリームを再生するデジタル信号処理装置が普及し始めている。
【0006】
このようにネットワークを介して映像コンテンツを受信する場合、回線の込み具合等に応じて、各TSパケットが受信機に到達する時刻にばらつき(ジッタ−)が生じる。このようにジッタ−を含むTSを受信側で正常に再生するために、ネットワークを介して得られる映像コンテンツは、各TSパケットにタイムスタンプが付与され、TTSとしてネットワーク上に配信される。
【特許文献1】特開2003−283996公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
TTSを再生する場合、先ずTTSは転送処理部にて、TSパケットのタイムスタンプの時刻に基づいて処理され、TSとしてリアルタイムに出力される。このように転送処理部は、TTSをリアルタイムTSに変換する。
【0008】
上記したようなネットワークから受信したTTS、一般的な方式で作成したTTSのように、タイムスタンプとPCRが同期していないTTSを転送処理部にてリアルタイムTSに変換する場合、各TSパケットの出力は、受信機が独自に発生したタイムスタンプ用クロックにより動作するカウンタのカウント値に従って行われる。例えば、カウント値とタイムスタンプの値が一致した時に、当該TSパケットが出力される。
【0009】
このようにしてリアルタイムに出力されたTSは、デマルチプレクサにより映像データと音声データが抽出され、映像データはビデオデコーダに、音声データはオーディオデコーダに供給されそれぞれデコードされる。
【0010】
デコードの際には、PCRパケットに含まれるPCRが抽出され、PCRに同期したクロック信号STC(system time clock)が発生される。クロック信号STCは、VCXO(voltage controlled Xtal oscillator)等の電圧制御発振器を用いて発生される。デコーダでは、クロック信号STCに基づいてデコードが行われる。従ってクロック信号STCは、上記タイムスタンプ用クロック信号とは別系統のクロック信号であって、両クロック信号は互いに同期していない。
【0011】
このように、タイムスタンプとPCRが同期していないTTSを再生する場合、タイムスタンプ用クロックを発生する発振器と、PCR用クロックを発生する発振器の2つのクロック発振器が必要であった。
【0012】
本発明の主要な目的は、ネットワーク等を介して受信したTTSのように、タイムスタンプとPCRが互いに同期していないTTSを、単一のクロック発振器を用いて再生することが可能となるTTSに変換することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態に係るデジタル信号処理装置は、デジタル信号のTS(transport stream)にタイムスタンプが付与されたTTS(time stamped TS)を、外部から入力する入力手段10、11と、前記入力手段により入力されたTTS中のTSパケットに付与されたタイムスタンプを検出するタイムスタンプ検出手段と、該TTS中のPCR(program clock reference)を検出するPCR検出手段と、前記タイムスタンプ検出手段の出力と前記PCR検出手段の出力とを用いて、PCRとタイムスタンプの値とを同期化させるためのタイムスタンプの値の修正値を求めるタイムスタンプ修正値算出手段と、前記TTSに含まれるタイムスタンプを前記タイムスタンプの値の修正値に書き換えて、タイムスタンプが修正されたTTSを出力する出力手段を備える。
【発明の効果】
【0014】
タイムスタンプとPCRが互いに同期していないTTSを、単一のクロック発振器を用いて再生することができ、受信機のローコスト化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は本発明によるデジタル放送受機100の一実施形態を示す概略図である。デジタル放送受機100は、TV、DVDレコーダ等のデジタル放送を受信して再生する映像再生装置に適用される。
【0017】
ネットワークアダプタ10は、インターネットあるいは家庭内LANのような通信ネットワークとのインターフェースを実現する。TTSはネットワーク上のサーバからネットワークアダプタ10により受信され、SW1を介してバッファ11に入力される。SW1によりバッファ11には、ネットワークアダプタ10及びデジタル放送のチューナ(図示されず)の一方からTTSが選択的に入力される。
【0018】
ここでTTSについて説明する。図2はTTSの構成を示す図である。TTSはTSを構成する188バイトの各TSパケットに、4バイトのタイムスタンプを付加したものである。このタイムスタンプは、送り手側のネットワーク上のサーバあるいは本発明が適用されるデジタル信号処理装置が、各TSパケットを受信したときに付与した情報であって、各TSパケットの受信タイミングを示す。
【0019】
各TSパケットはPESヘッダとpayloadからなり、payloadには分割された映像PES又は音声PESが格納される。payloadは例えばMPEG2符号化ストリームである。
【0020】
図3はTS headerの構造を示す図である。sync byteはTSパケットの先頭を示すコード(0x47)である。PIDはパケットIDと呼ばれ、映像PESと音声PESはそれぞれ異なる一意に決められたPID値を持つ。後述のデマルチプレクス部17はパケットのPIDを調べることで映像PESが記録されているか音声PESが記録されているか等を識別することができる。adaptation field controlは、このパケットにadaptation fieldとpayloadが存在するかどうかを示すフラグである。adaptation filed lengthは、adaptation field の長さを示す値である。PCR_flagはPCRが存在するかしないかを示すフラグ、PCRは当該TSパケットが作成されたときに付与された時間情報であり、受信機の時刻(後述のSTCカウンタ14)を校正するために用いられる。PCRを含むTSパケットをPCRパケットといい、PCRパケットは例えば100mSに1つ以上TS中に含まれている。これは映像フレームでいうと、例えば3フレーム分のTS中に1つ以上含まれている。
【0021】
図4はPESの構造を示す図である。映像PESおよび音声PES共にPESの構造は同一である。PESはPESヘッダと呼ばれるヘッダ部分とPES packet data byteすなわちES(Elementary stream)本体からなる。ESとは映像または音声を圧縮符号化したデータそのものである。PESヘッダに格納されたpacket start code prefixは、PESの先頭を示すコード(0x000001)である。stream idはストリームの種類を示す値であって、PES packet lengthはPESの長さを示す値である。DTS(decoding time stamp)は、このPESをデコードする時刻情報であって、PTS(presentation time stamp)は、デコードされたデータを出力する時刻情報である。映像デコード部160と音声デコード部170から出力される映像と音声を、PTSで示された時刻に出力することで映像と音声の同期が取れる。
【0022】
図1の説明に戻り、本発明に係るタイムスタンプ同期化部12は、TSパケットに付与されたタイムスタンプをPCRに同期した値に書き換える。タイムスタンプは前述したように、デジタル放送を受信した装置が各TSパケットに付与した時間情報であり、PCRは当該TSを作成した装置がTSに予め付与した時間情報である。つまり、タイムスタンプとPCRは例えば互いに異なる周波数のクロックに基づいて生成された時間情報である。従って、受信機においてTSのタイムスタンプ用クロックと、PCR用クロックは一般に別々の発振器を用いて生成されていた。本発明では、後述するようにタイムスタンプの値をPCRの値に同期した値に書き換えることにより、タイムスタンプとPCRに基づく処理が同一の発振器を用いて行われる。ここで、タイムスタンプがPCRに同期するとは、タイムスタンプの値とPCRの値が等しい又は同様の増加率で増加することを示す。
【0023】
タイムスタンプ同期化部12によりタイムスタンプが書き換えられたTTSは、TTSMとしてタイムスタンプ同期転送部13に供給される。タイムスタンプ同期転送部13は、タイムスタンプに基づいてTSの送出タイミングを制御し、タイムスタンプを除いてTSのみをリアルタイムで出力する。カウンタ14は、STC発生部(VCXO)15により発生されたクロックSTC(system time clock)をカウントする。タイムスタンプの値とカウンタ14の値が一致したとき、タイムスタンプ同期転送部13は当該TSパケットを送出する。タイムスタンプ同期転送部13から送出されるTSはデマルチプレクサ17に供給される。
【0024】
デマルチプレクサ17は、TSから映像PES(Packetized Elementary Stream)と音声PESをそれぞれ分離し、映像PESをビデオデコード部19、音声PESをオーディオデコード部20に供給する。またデマルチプレクサ17は、TSからPCRパケットを分離しPCRパケット処理部18に供給する。
【0025】
更にデマルチプレクサ17は、TSからSI情報及びTSI情報を分離し、セクション処理部21に供給する。セクション処理部21は、SI情報及びTSI情報から電子番組表等を作成する。またデマルチプレクサ17は、タイムスタンプがPCRに同期したTSをIEEE1394規格のデータに変換して出力する。
【0026】
PCRパケット処理部18は、PCRパケット中のPCRを抽出しSTCカウンタ16に供給する。STCカウンタ16はSTC発生部15により発生されたSTCを計数すると共に、PCRパケット処理部18から供給されるPCRと現在のカウント値を一致させる。バッファ占有量に基づいてSTC発生部の周波数が調整される。つまり、バッファの入力レートとタイムスタンプ同期転送部13の出力とが一致するようにSTC発生部の周波数が調整される。
【0027】
ビデオデコード部19は映像PESのPESヘッダー中のPTS又はDTSの値と、STCカウンタ16の値を比較する。ビデオデコード部19は、例えばDTSとSTCカウンタ16の値が一致したとき、映像PESをデコードし、PTSとSTCカウンタ16の値が一致したとき、デコードされたビデオデータVDを出力する。
【0028】
オーディオコード部20は音声PESのPESヘッダー中のPTS又はDTSの値と、STCカウンタ16の値を比較する。オーディオデコード部19は、例えばDTSとSTCカウンタ16の値が一致したとき、音声PESをデコードし、PTSとSTCカウンタ16の値が一致したとき、デコードされたオーディオデータVDを出力する。
【0029】
ビデオデータVDはD/A変換部、信号増幅部等(図示されず)を経てLCD等の表示部に供給され、映像が表示される。同様にオーディオデータVDはD/A変換部、信号増幅部等(図示されず)を経てスピーカに供給され、音声が発生される。
【0030】
尚、タイムスタンプ同期化部12、タイムスタンプ同期転送部13、デマルチプレクス部17、PCRパケット処理部18、デコーダ19、20、セクション処理部21は、個別電子回路を用いてハードウエアとして構成してもよいし、プログラムの処理ステップとしてソフトウエアにより構成してもよい。
【0031】
図5は図1のタイムスタンプ同期化部12の第1実施形態としてタイムスタンプ同期化部12aを示す。タイムスタンプ同期化部12aは、PCR検出部32、タイムスタンプ検出部33、差分値検出部34、修正値算出部35、タイムスタンプ書き換え部36を含む。
【0032】
図6はタイムスタンプ同期化部12aの動作を説明するための図である。
【0033】
タイムスタンプ検出部33は、入力されるTTS中のTSパケットに付与されたタイムスタンプを検出する。PCR検出部32は、入力されるTTS中のPCRパケットに記録されているPCRを検出する。
【0034】
以下、タイムスタンプ同期化部12aに係る動作の第1実施形態を説明する。
【0035】
ここで、PCRパケット番号をn(n=0、1、2…)、TSパケット番号をm(m=0、1、2…)とする。mはPCRパケット以外のパケット毎に1ずつ増え、PCRパケット到達時に0に戻る値である。また、時刻T(n,m)におけるタイムスタンプの値をVts(n、m)、時刻T(n,0)におけるPCRの値をVpcr(n)とする。
【0036】
図6のように、2番目のPCRパケットの到達時刻T(1、0)までは、タイムスタンプはそのまま、つまり修正しない。時刻T(1、0)より後のPCRではないTSパケットについて、差分値検出部34は以下のように差分a、差分b、差分cを求める。
【0037】
a=Vpcr(n)−Vpcr(n−1)
b=Vts(n,0)−Vts(n−1,0)
c=Vts(n,m)−Vts(n,m−1)
タイムスタンプ書き換え部36は、書き換え後タイムスタンプの値VTS(n,m)を、書き換え後タイムスタンプの値VTS(n,m−1)を用いて以下のように算出する。
【0038】
VTS(n,m)=VTS(n,m−1)+c*a/b
尚、3番目PCRパケットの到達時刻T(2,0)以降の書き換え後タイムスタンプの値VTS(n,0)は、修正値算出部35により、上記aの値を求めてから以下のように算出される。
【0039】
VTS(n,0)=VTS(n−1,0)+a
図7は、入力TTSのタイムスタンプを記録した送信側装置のタイムスタンプ用クロックCLKttsの周波数が32MHz、入力TTSのPCRを記録した装置(TSを作成した装置)のPCR用クロックCLKpcrの周波数が27MHzの場合の書き換え前タイムスタンプ及び書き換え後タイムスタンプの例を示す。
【0040】
この例は、理解し易いように、タイムスタンプ用カウンタクロックCLKttsの周波数として、PCR用カウンタクロックCLKpcrの周波数27MHzに対して極端に異なる値を採用してシミュレーションを行った結果を示す。タイムスタンプ用カウンタクロックCLKttsの周波数は、PCR番号nが3以下で32MHz、4以上では40MHzが適用されている。このように周波数が途中で変動する場合でも、PCRを示すグラフの傾きと書き換え後タイムスタンプを示すグラフの傾きが実質的に一致していることが分かる。
【0041】
次に、タイムスタンプ同期化部12aに係る動作の第2実施形態を再び図6を用いて説明する。
【0042】
前述のタイムスタンプ同期化部12aの第1実施形態と同様に、PCRパケット番号をn(n=0、1、2…)、TSパケット番号をm(m=0、1、2…)とする。mはPCRパケット以外のパケット毎に1ずつ増え、PCRパケット到達時に0に戻る値である。また、時刻T(n,m)におけるタイムスタンプの値をVts(n、m)、時刻T(n,0)におけるPCRの値をVpcr(n)とする。
【0043】
図6のように、2番目のPCRパケットの到達時刻T(1、0)までは、タイムスタンプはそのまま、つまり修正しない。時刻T(1、0)より後のパケットについて、差分値検出部34は以下のように差分a、差分b、誤差を求める。
【0044】
a=Vpcr(n)−Vpcr(n−1)
b=Vts(n,0)−Vts(n−1,0)
誤差=a−b
修正値算出部35は以下の式に従って、誤差量dを算出する。
【0045】
d=(誤差/PKN)*α
ここで、PKNはPCR間に存在したTSパケットの数であり、本例では3である。また、係数αは通常、0〜1の値をとる。
【0046】
また、時刻T(1、0)より後のTSパケットについて、差分値検出部34は、以下のように差分cを求める。
【0047】
c=Vts(n,m)−Vts(n,m−1)
タイムスタンプ書き換え部36は、書き換え後タイムスタンプの値VTS(n,m)を、書き換え後タイムスタンプの値VTS(n,m−1)を用いて以下のように算出する。
【0048】
VTS(n,m)=VTS(n,m−1)+c+修正量d
尚、3番目PCRパケットの到達時刻T(2,0)以降の書き換え後タイムスタンプの値VTS(n,0)は、修正値算出部35により、上記aの値を求めてから以下のように算出される。
【0049】
VTS(n,0)=VTS(n−1,0)+a
図8はタイムスタンプ同期化部12aの第2実施形態に従って、タイムスタンプを書き換えたときの書き換え前タイムスタンプ及び書き換え後タイムスタンプの例を示す。図7と同様に、タイムスタンプ用クロックの周波数CLKttsが32MHz、PCR用クロックの周波数CLKpcrが27MHzの場合を示す。
【0050】
この場合でも、タイムスタンプ用カウンタクロック周波数CLKttsは、PCR番号nが3以下で32MHz、4以上では40MHzが適用されている。このように周波数が途中で変動する場合でも、PCRを示すグラフの傾きとタイムスタンプの値を示すグラフの傾きが実質的に一致していることが分かる。
【0051】
図9は図1のタイムスタンプ同期化部12の第2実施形態をタイムスタンプ同期化部12bとして示す。タイムスタンプ同期化部12bは、PCR検出部42、タイムスタンプ検出部43、差分値検出部44、修正値算出部45、タイムスタンプ書き換え部46を含む。
【0052】
タイムスタンプ同期化部12bでは、タイムスタンプ書き換え部46によりタイムスタンプが書き換えられたTTSMが、PCR検出部42、タイムスタンプ検出部43にフィードバックされる構成となっている。
【0053】
タイムスタンプ検出部43はTTS及びTTSM中の各TSパケットに付与されたタイムスタンプを検出し、差分値検出部44に出力する。PCR検出部42はTTS及びTTSM中のPCRパケットを抽出し、PCRパケット内のPCRを検出し、差分値検出部44に出力する。
【0054】
差分値検出部44は、TTS及びTTSM中のTSパケットに付与されたタイムスタンプの値の差、及びTTS及びTTSM中のPCRパケット内に記録されたPCRの値の差を検出し、修正値算出部45に出力する。修正値算出部45は、タイムスタンプの値の差及びPCRの値の差に基づいて、タイムスタンプの修正値を算出し、タイムスタンプ書き換え部46に出力する。タイムスタンプ書き換え部46は、修正値算出部45からの修正値に応じて、TTS中のTSパケットに付与されたタイムスタンプを書き換える。
【0055】
タイムスタンプを書き換える場合、タイムスタンプの値を急激に変化させると、書き換え後のタイムスタンプの値が先行するTSパケットのタイムスタンプの値より小さな値となり、後段のタイムスタンプ同期転送部13の動作が不安定となることがある。そこで本実施形態では、修正値算出部45により算出される修正値を適切な値に制限することで、タイムスタンプは徐々に変化し、このような不安定な動作を防ぐことができる。
【0056】
図10は、本発明によるデジタル信号処理装置の第2実施形態を示す概略図である。
【0057】
デジタル信号処理装置101は、図1のデジタル信号処理装置100に対し、タイムスタンプ同期転送部22、HDD等の記録メディア24ならびにスイッチSW2が追加されている。図1のデジタル信号処理装置100と同一の構成要素には同一の参照番号が付され、それら構成要素の詳細な説明は省略する。
【0058】
デジタル信号処理装置101は、インターネットあるいは家庭内LANのような通信ネットワークを介して受信したコンテンツを記録メディア24に記録する。また、出力先は外部の記録装置や表示伝送等の機能を持つデバイスでもよい。このとき、コンテンツを含むTTSのTSパケットに付されたタイムスタンプは、該TTSのPCRに同期した値に書き換えて記録される。この記録には、ユーザが記録されたコンテンツを視聴しながら行うリアルタイム記録と、記録のみを行う非リアルタイム記録とがある。
【0059】
先ず、非リアルタイム記録について説明する。この場合、スイッチSW2がOFFされ、ネットワークから受信されたTTSはバッファ11、タイムスタンプ同期化部12を介して記録メディア24に記録される。タイムスタンプ同期化部12の出力はネットワーク等の回線を通じて、外部の記録や再生が可能なデバイスに出力してもよい。この非リアルタイム記録では、ネットワーク上のデータ転送レート及び本装置の処理速度が十分高速であれば、再生時間が例えば1時間のコンテンツを数分の間に記録することができる。
【0060】
次にリアルタイム記録について説明する。この場合、スイッチSW2がONされ、ネットワークから受信されたTTSはバッファ11、タイムスタンプ同期化部12、タイムスタンプ同期転送部22を介して記録メディア24にTTSMとして記録されと共に、記録されたTTSがタイムスタンプ同期転送部13、デマルチプレクス部17を介してデコード部19、20等に供給されデコードが行われる。
【0061】
このとき、タイムスタンプ同期転送部13、22は、カウンタ14の値とTSパケットのタイムスタンプ(PCRに同期している)とを比較しながらTSパケットを出力する。このときのデータ出力レートは、映像の30フレーム/秒に対応するレートである。従って、コンテンツは非リアルタイム記録のようには高速に転送されない。コンテンツのTTSは、バッファ11に常にバッファリングされてからタイムスタンプ同期化部22に供給される。このとき、バッファ11の占有量がスイッチSW2を介してSTC発生部15に供給される。この占有量に応じてSTC発生部は発振周波数が制御される。このようにして、STC発生部15は適切な周波数で発振することになる。
最近になって、ハイビジョン映像信号をハイビジョン画質のまま記録できるレコーダが開発された。このレコーダにTSを記録するためには、TS中のPCRに同期したタイムスタンプを各TSパケットに付与しなければならない。本発明によるデジタル信号処理装置101により記録されたTTSは、このような規格を満足するので、レコーダを用いて直接ディスクにダビングすることができる。更に、このダビング時、記録メディア24からレコーダへ、TTSを非リアルタイムで転送することができるため、高速ダビングが可能となる。
【0062】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、TTSを再生するために、VCXOが1つのみでよいため、受信機のローコスト化が可能となる。また、記録したデータとして、PCRとタイムスタンプの同期化が要求されている場合、HDDに記録したストリームをHDDVDに記録するときにタイムスタンプの書き換えが不要で、高速のダビングがしやすくなる。
【0063】
以上の説明はこの発明の実施の形態であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明によるデジタル信号処理装置100の一実施形態を示す概略図である。
【図2】TTSの構成を示す図である。
【図3】TS headerの構造を示す図である。
【図4】PESの構造を示す図である。
【図5】図1のタイムスタンプ同期化部12の第1実施形態としてタイムスタンプ同期化部12aを示す図である。
【図6】タイムスタンプ同期化部12aの動作を説明するための図である。
【図7】TTSのタイムスタンプの書き換え前タイムスタンプ及び書き換え後タイムスタンプの例を示す図である。
【図8】TTSのタイムスタンプの書き換え前タイムスタンプ及び書き換え後タイムスタンプの他の例を示す図である。
【図9】図1のタイムスタンプ同期化部12の第2実施形態をタイムスタンプ同期化部12bとして示す図である。
【図10】本発明によるデジタル信号処理装置の第2実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0065】
10…ネットワークアダプタ、11…バッファ、12…タイムスタンプ同期化部、13、22…タイムスタンプ同期転送部、14…カウンタ、15…STC発生部、16…STCカウンタ、24…記録メディア、SW1、SW2…スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル信号のTS(transport stream)にタイムスタンプが付与されたTTS(time stamped TS)を、外部から入力する入力手段と、
前記入力手段により入力されたTTS中のTSパケットに付与されたタイムスタンプを検出するタイムスタンプ検出手段と、
前記TTS中のPCR(program clock reference)を検出するPCR検出手段と、
前記タイムスタンプ検出手段の出力と前記PCR検出手段の出力とを用いて、PCRとタイムスタンプの値とを同期化させるためのタイムスタンプの値の修正値を求めるタイムスタンプ修正値算出手段と、
前記TTSに含まれるタイムスタンプを前記タイムスタンプの値の修正値に書き換えて、タイムスタンプが修正されたTTSを出力する出力手段を備えたことを特徴とするデジタル信号処理装置。
【請求項2】
前記入力手段は、通信ネットワークとのインターフェースを制御するインターフェース手段を具備し、前記TTSを前記通信ネットワーク上のサーバからインターフェース手段を介して入力することを特徴とする請求項1記載のデジタル信号処理装置。
【請求項3】
前記タイムスタンプ修正値算出手段は、
前記タイムスタンプ検出手段により検出されたタイムスタンプのそれぞれの値の差分を第1差分として検出し、及び前記PCR検出手段により検出されたPCRのそれぞれの値の差分を第2差分として検出する差分検出手段と、
前記差分検出手段により検出された前記第1及び第2差分に基づいて、前記タイムスタンプの値の修正値を算出する算出手段と、
を具備することを特徴とする請求項1記載のデジタル信号処理装置。
【請求項4】
前記出力手段から出力される前記タイムスタンプが修正されたTTSを記録媒体に記録する記録手段を更に具備することを特徴とする請求項1記載のデジタル信号処理装置。
【請求項5】
デジタル信号のTS(transport stream)にタイムスタンプが付与されたTTS(time stamped TS)を、外部から入力するステップと、
前記入力されたTTS中のTSパケットに付与されたタイムスタンプを検出するステップと、
前記TTS中のPCR(program clock reference)を検出するステップと、
前記検出されたタイムスタンプと、前記検出されたPCRとを用いて、PCRとタイムスタンプの値とを同期化させるためのタイムスタンプの値の修正値を求めるステップと、
前記TTSに含まれるタイムスタンプを前記タイムスタンプの値の修正値に書き換えて、タイムスタンプが修正されたTTSを出力するステップと、
を具備することを特徴とするデータストリーム処理方法。
【請求項6】
前記入力するステップは、通信ネットワーク上のサーバと通信を行い、該サーバから前記TTSを入力することを特徴とする請求項5記載のデータストリーム処理方法。
【請求項7】
前記修正されたTTSを出力するステップは、 前記検出されたタイムスタンプのそれぞれの値の差分を第1差分として検出し、及び前記検出されたPCRのそれぞれの値の差分を第2差分として検出するステップと、
前記差分検出ステップにより検出された前記第1及び第2差分に基づいて、前記タイムスタンプの値の修正値を算出するステップと、
を具備することを特徴とする請求項5記載のデータストリーム処理方法。
【請求項8】
前記タイムスタンプが修正されたTTS同期化TTSを記録媒体に記録するステップを具備することを特徴とする請求項5記載のデータストリーム処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−274607(P2007−274607A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100545(P2006−100545)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】